説明

ハイブリッド車のクーラコンプレッサ制御装置

【課題】シリーズ式ハイブリッド電気車両の路線バスにおいて、エアコンの使い方によっては一般のアイドルストップ装置付路線バスの燃料消費量に比べ、燃料消費量の優位性が損なわれる場合が考えられることから、燃料消費量抑制を図ると共に、車室内の快適性を確保するハイブリッド車のエアコン駆動装置を提供する。
【解決手段】補機駆動用モータで駆動されるクーラコンプレッサ等の駆動または停止を、車両の停車、走行状態、ドア開閉、車室内の温度等の条件を複数の運転モードに分類して、切替えスイッチにより運転モードを選択制御可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両に係り、燃料消費量の抑制を図るとともに車室内の快適性を確保するクーラコンプレッサ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ハイブリッド車両は燃料の燃焼によって運転されるエンジンと、電気エネルギーで作動する電動モータとを車両走行時の動力源として備えており、走行条件に応じてエンジンと電動モータとを使い分けているハイブリッド車が提案されている。
この場合、所定の走行条件下においてはエンジンを停止させて車両を走行させる場合は、エアコンやパワーステアリングのオイルポンプ等の車載装置を駆動するために走行用モータにて駆動することが提案されている。特開平9−289706号公報に記載の装置はその一例で、通常はエンジンによってエアコンのコンプレッサが駆動されると共に、エンジンが停止された場合には車両駆動用のモータジェネレータによりクランク軸を強制的に回転させることにより、クランクシャフトに取付けられたプーリに巻回されたファンベルトを介してエアコンのコンプレッサを駆動させるので、エアコン及び走行操舵の機能低下は防止しているが、モータジェネレータによりクランク軸を強制的に回転させるため、大きなモータトルクが必要となり、消費する電力も大きく、エネルギー消費量が大きくなる。
従って、発電のために運転するエンジンが消費する燃料が多くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9―289706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、本発明のシリーズ式ハイブリッド電気車両においては、車載されたエンジンによって発電機を駆動し、該発電機によって発電された電力により車両走行用のモータを駆動し、減速装置を介して車両の走行を行っている。発電により余った電力はバッテリに貯溜され、発電用エンジンが停止した時は、バッテリに貯溜された電力により車両を走行させるようになっている。
従って、シリーズ式ハイブリッド電気車両においてエンジンは発電機駆動専用のため、走行中でも発電の必要がない時にはエンジンを停止する。従って、走行中に駆動力が必要なエアコン用のクーラコンプレッサ、ブレーキ装置に使用する圧縮空気を製造するエアコンプレッサ、ハンドル操作補助を行うパワーステアリング用油圧ポンプ等は補機駆動用モータで駆動される構成となっている。
その結果、シリーズ式ハイブリッド電気車両の路線バスではエンジンが停止しても、補機駆動用モータによりエアコンの作動が可能となり、車室内の快適性は高くなる。
【0005】
一方、一般(ハイブリッド電気車両でない車両)の路線バスはエンジンによってエアコン用のクーラコンプレッサが駆動されており、信号待ち、あるいは停留所等で停車するとエンジンを止めるアイドルストップ装置を備えることにより、燃料の消費を抑制している。
従って、シリーズ式ハイブリッド電気車両の路線バスとアイドルストップ装置付路線バスの燃料消費量を比べると、エアコンの使い方によってはハイブリッド車両の燃料消費の優位性を損なう場合が考えられる。
【0006】
本願発明はこのような事情に鑑み、ハイブリッド車におけるエアコン使用方法を車両の状況に応じた複数の作動モードの中から選択できるようにして、燃料消費量の抑制を図ると共に、車室内の快適性を確保するハイブリッド車のクーラコンプレッサ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は係る目的を達成するもので、車両に搭載されたエンジンにより駆動される発電機と、前記発電機により発電された電力を貯溜する蓄電装置と、前記蓄電装置からの電力で駆動される補機モータと、前記補機モータにより駆動されるクーラコンプレッサと、前記車両の停車を検出する車両停車検出手段と、前記クーラコンプレッサを任意の運転モードに切替え可能な運転モード切替え手段と、前記運転モード切替え手段の切替えに基づき、前記クーラコンプレッサの作動を制御する制御手段とを備え、前記運転モード切替え手段には前記クーラコンプレッサを常に運転する第1運転モードと、前記車両停車検出手段によって前記車両の停車が検出されると前記クーラコンプレッサの運転を停止又は制限する第2運転モードが設定されていることを特徴とする。
【0008】
かかる発明によれば、使用環境に合わせてクーラコンプレッサの運転モードをドライバーが切替え可能とすることで、クーラコンプレッサを駆動する補機モータの消費電力を抑制して、発電機を駆動するエンジンの運転時間を少なくしたり、バッテリから供給される電力消費を少なくして、燃料や電力の消費を抑えることができる。具体的な例としては、車両の走行開始直後は第1運転モードを設定しておき、車室内が快適な温度に達したら、第2運転モードに切替えることで、乗客の快適性を損なうことなく、電力の消費を抑制できる。
【0009】
また、本発明において好ましくは、前記ハイブリッド車はドア開放を検知するドア開閉検知手段を備え、前記車両停車検出手段によって前記車両の停車が検出されると共に、前記ドア開閉検知手段によりドアの開放が検知されると前記クーラコンプレッサの運転を停止又は制限する第3運転モードを備えるとよい。
【0010】
このような構成によると、使用環境に合わせてクーラコンプレッサの運転モードを第3運転モードに切替え可能とすることで、電力の消費を一層抑制できる。すなわち、路線バス等では停留所ごとにドアの開閉が行われ、乗降客の多い場合は車室内の冷気が外気と入替わる量が多くなり、クーラコンプレッサを運転させても効果が少ないためクーラを停止させて電力消費を抑制させる。
ハイブリッド乗用車等でも乗員が乗降する際に、手荷物等の出し入れに時間を多く要するような場合も本願構成で同様の効果を得ることができる。
【0011】
また、本発明において好ましくは、前記ハイブリッド車は車両の室内温度を検出する温度検出手段を備え、前記車両停車検出手段によって前記車両の停車が検出されると共に、前記制御手段によってクーラコンプレッサの作動が停止又は制限されているときに、前記温度検出手段によって検出された車室内温度が基準温度以上になった場合は、前記クーラコンプレッサの運転を再開させるとよい。
【0012】
かかる構成によると、車両停止中に車室内温度が基準温度になり、該基準温度よりさらに高くなった状態で、前記クーラコンプレッサの運転を再開させると、強力な冷房運転が必要となり、消費電力が大きくなり、結果的にエンジン運転時間が増加し燃料消費が悪化したり、バッテリから供給される電力の消費量が多くなるおそれがあるため、車室内温度が基準温度を超えた時点でクーラコンプレッサの運転を再開させることで、強力な冷房運転を必要とせず、消費電力も大きくならず、結果的に燃料消費が多くなるのを防止できる。更に、車室内も快適温度に維持できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のクーラコンプレッサ制御装置によれば、車両停止状態中の使用環境に合わせてクーラコンプレッサの運転モードをドライバーが切替え可能とすることで、電力の消費を抑制して、発電機を駆動するエンジンの運転を少なくして、燃料の消費を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係るシリーズ式ハイブリッド車のシステム概略構成図を示す。
【図2】本発明の実施形態に係る制御装置の概略構成図を示す。
【図3】本発明の実施形態に係る制御フローチャートを示し、(A)はシフトレバー位置がD(ドライブ)の場合を示し、(B)はシフトレバー位置がN(ニュートラル)の場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明によるシリーズ式ハイブリッド車の概略システム構成の実施形態を図面に基づいて説明する。
ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定の記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明にすぎない。
【0016】
(第1実施形態)
図1は本発明を実施するシリーズ式ハイブリッド車のシステム概略構成図を示す。
シリーズ式ハイブリッド車1にはエンジン2に増速機3を介して発電機4が一体的に取付けられている。エンジン2の駆動力により増速機3において増速され発電機4は効率よく発電される。発電された電力はインバータ5において電流の交流・直流の変換調整を行って、一部は蓄電装置であるバッテリ6に蓄電される。他の一部は車両走行用の駆動力を発生させる走行用モータ7を駆動する。走行用モータ7に連結され走行用モータ7の回転数を減速機8で減速してデファレンシャル装置19を介して後輪10を回転させて車両1を走行させる。
【0017】
さらに、シリーズ式ハイブリッド車のエンジン2は発電機駆動専用になっている。そのためバッテリ6への充電が十分にされているとハイブリッド車両1はエンジンを止めたままで走行する制御が備わっている。
従って、車両の走行に必要な各種装置、所謂、ハンドル操作の補助力を発生させるパワーステアリング用油圧ポンプ15、ブレーキの倍力装置作動用及びエアサスペンション装置等に使用する圧縮空気を製造するエアコンプレッサ11、エアコンの冷媒を圧縮するクーラコンプレッサ13等はエンジン2の運転または停止に関係なく駆動させる必要がある。
その為に、これらを駆動させるために専用の補機モータ9を別途装着している。
【0018】
補機モータ9はインバータ5に電気的に接続され、インバータ5を介して、発電機4から供給される電力またはバッテリ6から供給される電力を受けて作動する。補機モータ9は出力部が回転軸の両端に形成され、一端の出力軸A16には電磁クラッチ付プーリ12が装着され、エアコンプレッサ11の入力軸に装着されたプーリとをベルトを介して駆動力が伝達されている。
エアコンプレッサ11はエアタンク(図示省略)に圧縮空気を圧送して貯溜するが、エアタンク内の圧力が一定圧力以上になると電磁クラッチ付プーリ12が断操作され、補機モータ9の駆動力を断ち、エアコンプレッサ11の作動を停止する。また、エアタンク内の圧力が一定圧力以下になると電磁クラッチ付プーリ12を接続し、エアコンプレッサ11の作動を再開してエアタンクへの圧縮空気の貯溜を開始する。
【0019】
補機モータ9の出力軸B17の他端にはパワーステアリング用油圧ポンプ15の入力軸が補機モータ9の出力軸に連結具(図示省略)を介して連結されている。
出力軸B17に配置され、補機モータ9の本体とパワーステアリング用油圧ポンプ15との中間部には2個のプーリが装着され、出力軸B17を中心にして車室内の空調の冷熱源を発生させるクーラコンプレッサ13が左右に夫々1機づつ配置されている。クーラコンプレッサ13夫々には電磁クラッチ付プーリ14が装着されており、電磁クラッチ付プーリ14と出力軸B17側の2個のプーリとがベルトを介して駆動力の伝達を可能にしている。そして、後述する制御装置20によって、電磁クラッチ付プーリ14の断接を行い、クーラコンプレッサ13の駆動または停止を行い、エアコン作動を制御する。
尚、本願実施形態では2基のクーラコンプレッサ13が出力軸B17を中心に左右対称に配置されることにより、ベルト駆動によりベルトに発生する張力が出力軸B17への曲げモーメントとして作用するのを、出力軸B17を中心とした左右から引合うようにすることで曲げモーメント作用力の相殺を図っている。
【0020】
図2は本発明の実施形態に係るクーラコンプレッサ制御装置の概略構成図を示す。
21はドライバーが使用環境に基づいて、エアコンの作動状態を選択する運転モード切替え手段であるエコノミースイッチ(以後エコノミーS/W21と記す)で、第1運転モード(以後エコノミーOFFモードと記す), 第2運転モードA(以後エコノミーAモードと記す)及び、第3運転モードB(以後エコノミーBモードと記す)の3ポジションを備えている。
【0021】
エコノミーOFFモードは車両の停車または走行に関係なくクーラコンプレッサ13を常に駆動する。エコノミーAモードは車両停車が検出されるとクーラコンプレッサ13を停止するか又は、制御手段である制御装置20からの指示により補機モータ9の駆動力を制限(減少)し、クーラコンプレッサ13の作動を弱状態にして、クーラコンプレッサ13による電力消費の抑制を図る。エコノミーBモードは車両停車及び、ドアの開があった時にクーラコンプレッサ13を停止するか又は、補機モータ9の駆動力を制限(減少)する。
又は、エアコンの強さを制限して強⇒弱にすることでも同様の効果を得ることができる。
【0022】
エコノミーBモードは車両1の停車が検出されると共に、ドア開閉検知手段であるドアスイッチ23(以後ドアS/W23と記す)によってドア(図示省略)が開放されたことを検知することにより、外気が車室内に侵入している状態、または、車室内の空気が車外に流出している可能性があると判断する。
ドアS/W23はドアが開放された時にONとなり、ドアが閉塞された時にOFFとなるようになっている。
クーラコンプレッサ13を停止するか又は、制御装置20からの指示により補機モータ9の駆動力を制限(減少)し、クーラコンプレッサ13の冷房能力を弱状態にして、クーラコンプレッサ13による電力消費を抑制する。
尚、外気流入または車室内の空気の流出を検知する手段として、ドア開閉を検知するドアS/W22としたが、窓ガラスの開閉状態を検知して行うことも可能であり、同様の効果を得ることができる。
【0023】
22は車両停車検出手段で、本実施形態では走行用モータ7の回転又は停止を検知して、モータ7が回転している時は車両走行状態、回転が停止している時は車両停車状態と判断する。
また、別の車両停車検出手段としては、インバータ5から走行用モータ7への電力の出力をチェックし、電力の出力が有る時は車両走行状態、電力の出力が無い時は車両停車状態として検知することも可能である。
更には、車輪の回転を検知する方法もある。
【0024】
図3は本発明の実施形態に係る制御フローチャートを示し、(A)はシフトレバー位置がD−ドライブの場合を示し、(B)はシフトレバー位置がN―ニュートラルの場合を示す。
ステップS1においてはドライバーが車両1を走行させるのか、停車させるのかを変速機構のシフトレバーの操作位置によって判断される。ステップS1において変速機構のシフトレバーの操作位置がDレンジ(ドライブレンジ)に操作され、ステップS2でドライバーがエコノミーOFFモードを選択すると、ステップS3において、車両1の停車、走行に関係なく補機モータ9は常に駆動されたままで、ステップS4において、クーラコンプレッサ13の電磁クラッチ14は制御装置20からの指示で接続して、ステップS5において、クーラコンプレッサ13は運転を開始する。
従って、例えエンジン2が停止状態で車両1が走行する場合でも、クーラコンプレッサ13、パワーステアリング用油圧ポンプ15、及びブレーキ装置の倍力装置に使用する圧縮空気を製造するエアコンプレッサ11等は補機モータ9によって駆動されるので、車両1の安全走行、車室内の温度の快適性は確保できる。
【0025】
また、ドライバーがステップS2でエコノミーAモードを選択すると、ステップS6において補機モータ9は運転されている。ステップS7において車両停車検出手段22からの信号に基づいて、車両1が停車状態Y(車速=0)又は、走行状態N(車速>0)を判断する。
車両1が停車状態であることを確認すると、停車状態YとしてステップS8に移る。車両1が走行状態ならステップS4に進み、ステップS5でクーラコンプレッサ13は運転を継続する。
ステップS8においてクーラコンプレッサ13の電磁クラッチ付プーリ14は制御装置20からの指示に基づいて断状態になる。それに伴い、ステップS9においてクーラコンプレッサ13の駆動を停止させる。
尚、電磁クラッチ付プーリ14の断状態は電磁クラッチ付プーリ14への電流OFFとなり電力消費を防止している(節電)。
又は、制御装置20からの指示によりクーラコンプレッサ13の電磁クラッチ付プーリ14を接操作させて、補機モータ9回転駆動力を制限(減少)し、クーラコンプレッサ13の作動を弱状態にして、クーラコンプレッサ13による電力消費を抑制してもよい。
【0026】
ステップS10において、クーラコンプレッサ13の停止時間Sが停止基準時間Soより短いと判断(停車基準時間So>停車時間S)した場合(Y)は制御装置20からの指示により、クーラコンプレッサ13の電磁クラッチ付プーリ14を断状態が継続され、ステップS11に進む。
これは、クーラコンプレッサ13の停止時間が短い場合には車室内の温度上昇が少ないので、電力消費抑制のため、クーラコンプレッサ13の電磁クラッチ14の断操作を継続する。
一方、ステップS10において、クーラコンプレッサ13の停止時間Sが基準時間Soより長いと判断(停車基準時間So<停車時間S)した場合(N)はステップS4に進み、制御装置20からの指示により、クーラコンプレッサ13の電磁クラッチ付プーリ14を接操作してステップS5でクーラコンプレッサ13を運転するものである。
これはクーラコンプレッサ13の停止時間が長くなることで車室内の温度上昇が大きくなり、車両走行によりクーラコンプレッサ13の運転が再開された時に、強力な冷房運転が必要となり、電力消費が大きくなるのを防止するものである。
一般の路線バスは省燃費のためエンジンのアイドルストップ装置付となっており、渋滞又は、信号待ち等ではエンジンが停車するため、クーラコンプレッサが停止し、車室内の温度が上昇して不快になるが、ステップS8の制御によると、即ち停車時間が任意の時間より長くなった場合、補機モータ9がエンジン2の稼働に関係なくクーラコンプレッサ13を駆動できるので、車室内の快適性を持続できる。
【0027】
更に、ステップS11において、温度検出手段24により検出した車室内の温度Tmが設定された基準温度To≧Tmの場合はYとしてクーラコンプレッサ13の駆動の停止を継続させる。又は、制御装置20からの指示によりクーラコンプレッサ13の電磁クラッチ14を接動作させて、補機モータ9回転駆動力を制限(減少)し、クーラコンプレッサ13の作動を弱状態にして、クーラコンプレッサ13による電力消費を抑制してもよい。
また、車室内の温度Tmが基準温度To≦Tmの場合はNとして、ステップS4に進み、ステップS4にてクーラコンプレッサ13の電磁クラッチ付プーリ14は制御装置20からの指示で接続して、ステップS5において、クーラコンプレッサ13は運転を開始する。
この制御は車室内の温度上昇が大きくなり、車両走行によりクーラコンプレッサ13の運転が再開された時に、強力な冷房運転が必要となり、電力消費が大きくなるのを防止するものである。
また、ステップS11において、本願実施形態では車室内温度を検知してクーラコンプレッサ13の運転を制御することとしているが、車室外温度(外気温度)と車室内温度との差δを任意に設定して、車室内温度を制御する場合は車室外温度(外気温度)を検知して制御する方法でも同様な効果を得られる。
【0028】
また、車室内温度と車室外温度との温度差が大きくなるに従って、前記基準温度Toを低下せしめて、前記クーラコンプレッサの運転の再開を早めるようにしてもよく、この場合には、外気温度が高くなるに従ってドアが開放された場合、短時間に外気によって車室温が高くなり、前記クーラコンプレッサの運転を再開させると、強力な冷房運転が必要となり消費電力が大きくなるため、車室内温度と車室外温度との温度差が大きくなる従って、前記基準温度Toを低下せしめて、クーラコンプレッサの運転の再開を早めることで、再開時に強力な冷房運転が必要となり、電力消費が大きくなるのを防止することができる。
【0029】
更に、ステップS2において第3運転モードであるエコノミーBモードをドライバーが選択した場合は、ステップS15からステップS16まではエコノミーAモードのステップS6からステップS7までと同じなので、説明は省略する。
【0030】
エコノミーBモードのステップS17において、ドア開閉検知手段であるドアS/W23からの信号に基づき、ドア(図示省略)が開放と判断された場合(Y)は、ステップS8にて、クーラコンプレッサ13の電磁クラッチ付プーリ14は制御装置20からの指示で断状態に操作され、更に、ステップS9にてクーラコンプレッサ13の駆動を停止して、電力の消費抑制を図る。
従って、ドアが開放されると車室内の冷気と、車室外の暖気とが入替わりをするので強制的にクーラコンプレッサ13は停止されて、電力の消費抑制を図るようになっている。
ドアが閉塞されている場合はNとなりステップS4に進みクーラコンプレッサ13の電磁クラッチ付プーリ14は制御装置20からの指示で接続して、ステップS5において、クーラコンプレッサ13は運転を開始する。運転が再開され、車室内の快適性を維持する。
ステップS10及びステップS11はエコノミーAモードと同じなので説明を省略する。
【0031】
変速機構のシフトレバーの操作位置がNレンジ(ニュートラル)と判断した場合は、ステップS1においてNレンジ(1)の制御フローとなり、図3(B)に基づいて説明する。
ステップS1においてはドライバーが車両1を走行させるのか、停車させるのかを変速機構のシフトレバーの操作位置によって判断される。ステップS1において変速機構のシフトレバーの操作位置がNレンジ(ニュートラルレンジ)に操作され、ステップS02でドライバーがエコノミーOFFモードを選択すると、ステップS03において、車両1の停車、走行に関係なく補機モータ9は駆動されたままで、ステップS04において、クーラコンプレッサ13の電磁クラッチ付プーリ14は制御装置20からの指示で接続して、ステップS05において、クーラコンプレッサ13は運転を開始する。
従って、例えエンジン2が停止状態で且つ、車両1が停車状態でも、クーラコンプレッサ13、パワーステアリング用油圧ポンプ15、及びエアコンプレッサ11等は補機モータ9によって駆動されるので、車両1の安全走行、車室内の温度の快適性は確保できる。
【0032】
また、ドライバーがステップS02でエコノミーAモードを選択すると、ステップS06において補機モータ9は運転される。ステップS7において車両停車検出手段22からの信号に基づいて、車両1が停車状態Y(車速=0)又は、走行状態N(車速>0)を判断する。(車両1の惰性走行の場合)
車両1が停車状態であることを確認すると、停車状態YとしてステップS08に移る。車両1が走行状態NならステップS04に進み、ステップS05でクーラコンプレッサ13は運転を継続する。
【0033】
ステップS08において、制御装置20からの指示により、補機モータ9を停止させる。
続いてステップS09では電磁クラッチ付プーリ14を断制御し、ステップS010にてクーラコンプレッサ13の駆動を停止する。これは、車両1の停止時間が短い場合には車室内の温度上昇が少ないので、電力消費抑制のため、クーラコンプレッサ13の電磁クラッチ14を断(電力消費抑制)制御する。
尚、ステップS08による補機モータ9を停止させる操作はクーラコンプレッサ13、パワーステアリング用油圧ポンプ15、エアコンプレッサ11及び電磁クラッチ付プーリ12、14、が停止するので、変速操作レバーのDレンジ位置の場合より電力消費の抑制効果が大きい。
【0034】
ステップS011において、クーラコンプレッサ13の停止時間Sが停止基準時間Soより短いと判断(停車基準時間So>停車時間S)した場合(Y)はステップS012に進み、制御装置20からの指示により、補機モータ9の停止を継続させる。
一方、クーラコンプレッサ13の停止時間Sが停止基準時間Soより長いと判断(停車基準時間So<停車時間S)した場合(N)はステップS04に進み、ステップS05でクーラコンプレッサ13は運転を継続する。
これは、クーラコンプレッサ13の停止時間Sが長くなり、車室内の温度上昇が大きくなると、車両走行によりクーラコンプレッサ13の運転が再開された時に、強力な冷房運転が必要となり、電力消費が大きくなるのを防止するものである。
ステップS011の制御によると、一般の路線バスは省燃費のためエンジンのアイドルストップ装置付となっており、渋滞信号待ち等ではエンジンが停車するため、クーラコンプレッサが停止し、車室内の温度が上昇して不快になるが、本制御によって、補機モータ9がエンジン2の稼働に関係なくクーラコンプレッサ13を駆動できるので、車室内の快適性を持続できる。
【0035】
更に、ステップS012において、温度検出手段24により検出した車室内温度Tmが設定された基準温度To>Tmの場合(Y)はクーラコンプレッサ13の駆動の停止を継続させる。又は、制御装置20からの指示によりクーラコンプレッサ13の電磁クラッチ付きプーリ14を接動作させて、補機モータ9回転駆動力を制限(減少)し、クーラコンプレッサ13の作動を弱状態にして、クーラコンプレッサ13による電力消費を抑制してもよい。
また、車室内の温度Tmがより基準温度To<Tmの場合(N)は、ステップS03に戻り、制御装置20からの指示で補機モータ9を運転させると共に、クーラコンプレッサ13の電磁クラッチ付プーリ14を接続して、ステップS05において、クーラコンプレッサ13は運転を開始する。
この制御は車室内の温度上昇が大きくなり、車両走行によりクーラコンプレッサ13の運転が再開された時に、強力な冷房運転が必要となり、電力消費が大きくなるのを防止するものである。
【0036】
更に、ステップS02においてエコノミーBモードをドライバーが選択した場合は、ステップS015からステップS016まではエコノミーAモードのステップS06からステップS07までと同じなので、説明は省略する。
エコノミーBモードのステップS017において、ドア開閉検知手段であるドアS/W23からの信号に基づき、ドア(図示省略)が開放と判断された場合(Y)は、ステップS08にて、制御装置20からの指示により、補機モータ9を停止させる。続いてステップS09で電磁クラッチ付プーリ14を断制御し、ステップS010にてクーラコンプレッサ13を停止させる。
これは、車両1の停止時間が短い場合には車室内の冷気と、車室外の暖気との入替わり量が少ないので車室内の温度上昇が少ない。電力消費抑制のため、クーラコンプレッサ13の電磁クラッチ14を断(電力消費抑制)制御する。
一方、ドアS/W23からの信号に基づき、ドアが閉塞と判断された場合(N)は、ステップS04に進み、ステップS05でクーラコンプレッサ13は運転を継続する。
ステップS011及びステップS012はエコノミーAモードと同じなので説明を省略する。
【0037】
本実施形態によれば、クーラコンプレッサ13、パワーステアリング用油圧ポンプ15及び、エアコンプレッサ11等を駆動する専用の補機モータ9を車両1の停車状態、気温の変化、ドアの開閉等に対応させて、クーラコンプレッサ13の駆動をこまかく制御することにより、車室内の快適性を維持すると共に、電力の消費量を抑制することにより発電機4を駆動するエンジン2の運転を少なくして燃料消費量を少なくする効果を有する。
また、本願実施形態では車室内温度を検知してクーラコンプレッサ13の運転を制御することとしているが、車室内温度が基準温度に達した場合に、車室外温度検出手段により検出された車室外温度が車室内温度より一定値以上高くなった場合には、前記クーラコンプレッサの運転再開を早めるとよい。
かかる構成によると、車室内の気温と車室外の気温との差を一定値内に抑えることにより、乗客が車両から降りた際に、車室内と車室外との温度差を大きくしないことにより乗客に対して健康上の優しさを提供できる。更に、車両の室内と室外の気温の温度差が基準温度差より大きくなった状態で、ドアが開放された場合、外気の車室内への流入量の増加または車室内の空気の流出により、車室温が高くなり過ぎた状態で、前記クーラコンプレッサの運転を再開させると、強力な冷房運転が必要となり、消費電力が大きくなり、結果的にエンジン運転時間が増加し燃料消費が多くなるおそれがあるため、車室内温度が基準温度を超えた時点でクーラコンプレッサの運転を再開させることで、強力な冷房運転を必要とせず、消費電力も大きくならず、結果的に燃料消費が多くなるのを防止できる。更に、車室内も快適温度に維持できる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明では、シリーズ式ハイブリッド車の主にクーラコンプレッサの駆動制御について説明したが、パラレル式ハイブリッド車においても、補機駆動用モータ、パワーステアリング用油圧ポンプ、エアコンプレッサ等を駆動するモータを装備している車両なら、本願と同様な効果を得ることが可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 車両
2 エンジン
4 発電機
5 インバータ
6 バッテリ
9 補機モータ
11 エアコンプレッサ
12、14 電磁クラッチ付プーリ
13 クーラコンプレッサ
15 パワーステアリング用油圧ポンプ
20 制御装置(制御手段)
21 エコノミーS/W
22 車両停車検出手段
23 ドアS/W
24 温度検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたエンジンにより駆動される発電機と、前記発電機により発電された電力を貯溜する蓄電装置と、前記蓄電装置からの電力で駆動される補機モータと、前記補機モータにより駆動されるクーラコンプレッサと、前記車両の停車を検出する車両停車検出手段と、前記クーラコンプレッサを任意の運転モードに切替え可能な運転モード切替え手段と、前記運転モード切替え手段の切替えに基づき、前記クーラコンプレッサの作動を制御する制御手段とを備え、前記運転モード切替え手段には前記クーラコンプレッサを常に運転する第1運転モードと、前記車両停車検出手段によって前記車両の停車が検出されると前記クーラコンプレッサの運転を停止又は制限する第2運転モードが設定されていることを特徴とするハイブリッド車のクーラコンプレッサ制御装置。
【請求項2】
前記ハイブリッド車はドア開閉を検知するドア開閉検知手段を備え、前記車両停車検出手段によって前記車両の停車が検出されると共に、前記ドア開閉検知手段によりドアの開放が検知されると前記クーラコンプレッサの運転を停止又は制限する第3運転モードを備えたことを特徴とする請求項1記載のハイブリッド車のクーラコンプレッサ制御装置。
【請求項3】
前記ハイブリッド車は車両の室内気温を検出する室内温度検出手段を備え、前記車両停車検出手段によって前記車両の停車が検出されると共に、前記制御手段によってクーラコンプレッサの作動が停止又は制限されているときに、車室内温度が基準温度以上になった場合は、前記クーラコンプレッサの運転を再開させることを特徴とする請求項1または2記載のハイブリッド車のクーラコンプレッサ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−37364(P2011−37364A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186013(P2009−186013)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】