説明

ハイブリッド車両およびその制御方法

【課題】電動機のみから走行用動力が出力される電動走行を継続させるという運転者の要求をより良好に満たす。
【解決手段】エンジンの暖機要求状態、車室の暖房要求状態およびバッテリの状態からモータ走行の強制的実行が許容されており(S120〜S150)、かつ運転者により強制EVスイッチがオン操作されている場合(S160)、エンジンの始動判定(S190)が実行されることなく、バッテリの出力制限Woutの範囲内で要求トルクTr*に応じたトルクを出力するようにモータMG2が制御される(S210〜S260)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行用動力を出力可能な内燃機関と、走行用動力を出力可能な電動機と、当該電動機と電力をやり取り可能な蓄電装置とを含むハイブリッド車両およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のハイブリッド車両として、エンジンの運転を停止した状態でモータからの動力だけで走行するモータ走行を指示するためのEVスイッチを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このハイブリッド車両では、EVスイッチが操作されてモータ走行しているときにアクセル操作量に応じた要求トルクが車速に応じたEVキャンセルトルク以上になると、EVスイッチによるモータ走行の指示がキャンセルされると共にエンジンの始動が開始される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−67280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のハイブリッド車両では、燃費向上や環境への配慮から運転者がEVスイッチを操作してモータ走行を選択していたとしても、要求トルクがEVキャンセルトルクに達するとモータ走行がキャンセルされてしまうことから、モータ走行を継続させるという運転者の要求に充分応えることができなくなるおそれもある。
【0005】
そこで、本発明によるハイブリッド車両およびその制御方法は、電動機のみから走行用動力が出力される電動走行を継続させるという運転者の要求をより良好に満たすことを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるハイブリッド車両およびその制御方法は、上記主目的を達成するために以下の手段を採っている。
【0007】
本発明によるハイブリッド車両は、走行用動力を出力可能な内燃機関と、走行用動力を出力可能な電動機と、該電動機と電力をやり取り可能な蓄電装置とを含むハイブリッド車両において、前記電動機のみから走行用動力が出力される電動走行の強制的実行を指示するための強制電動走行指示スイッチを備え、前記電動走行の強制的実行が指示された状態での電動走行時と、前記電動走行の強制的実行が指示されていない状態での電動走行時とで、アクセル操作量に対する走行用動力の出力特性が変更されることを特徴とする。
【0008】
このハイブリッド車両では、強制電動走行指示スイッチのオン操作により電動走行の強制的実行が指示された状態での電動走行時と、電動走行の強制的実行が指示されていない状態での電動走行時とで、アクセル操作量に対する走行用動力の出力特性が変更される。これにより、電動走行の強制的実行が指示されている際にアクセル操作量が大きく(例えば最大に)なっても電動走行が継続されるようにして、当該電動走行を継続させるという運転者の要求をより良好に満たすことが可能となる。
【0009】
また、前記電動走行の強制的実行が指示された状態での電動走行時には、前記電動走行の強制的実行が指示されていない状態での電動走行時に比べて、前記電動機に許容される許容出力トルクが増加されてもよい。これにより、強制電動走行指示スイッチのオン操作に応じて電動走行が強制的に実行される間の走行性能や走行距離を確保することが可能となる。
【0010】
更に、前記電動走行の強制的実行が指示されていない状態での電動走行中に車両に要求される要求パワーが前記蓄電装置の許容放電電力よりも小さい機関始動パワーを超えた場合には、前記内燃機関が始動されてもよく、前記電動走行の強制的実行が指示された状態での電動走行時には、前記内燃機関の始動判定が実行されることなく、前記許容放電電力の範囲内でトルクを出力するように前記電動機が制御されてもよい。これにより、電動走行の強制的実行が指示された状態での電動走行時と、電動走行の強制的実行が指示されていない状態での電動走行時とで、アクセル操作量に対する走行用動力の出力特性をより適正に変更することができる。また、電動走行の強制的実行が指示された状態での電動走行時に、電動走行の強制的実行が指示されていない状態での電動走行時に比べて、電動機に許容される許容出力トルクを増加させることができる。
【0011】
そして、前記ハイブリッド車両は、第2の電動機と、該第2の電動機の回転軸に接続される第1要素、駆動輪に連結される駆動軸および前記電動機の回転軸に接続される第2要素、および前記内燃機関の出力軸に接続される第3要素を有するプラネタリギヤとを更に備えてもよく、前記機関始動パワーは、前記許容放電電力から少なくとも前記内燃機関を始動させるための前記第2の電動機によるクランキングに伴って消費される電力を差し引くことにより設定されてもよい。
【0012】
また、前記強制電動走行指示スイッチは、オン操作されている間、前記電動走行の強制的実行を指示するように構成されてもよい。これにより、電動走行の継続を望むときには、強制電動走行指示スイッチをオン操作し続けることで電動走行の強制的実行を指示することが可能となり、強制電動走行指示スイッチのオン操作を取り止めることで電動走行の強制的実行の指示を解除することができる。この結果、電動走行の強制的実行についての運転者の意向をハイブリッド車両の制御にダイレクトに反映させることが可能となる。
【0013】
更に、前記ハイブリッド車両は、後方の他車両を検知する検知手段と、前記検知手段からの信号に基づいて前記他車両が接近した旨を運転者に報知する報知手段とを更に備えてもよい。これにより、電動走行の強制的実行により他車両の円滑な走行を妨げるおそれがある際に、運転者に対して電動走行の強制的実行の指示を解除するよう促すことが可能となる。
【0014】
また、前記電動走行の強制的実行の指示が解除されたのに伴って前記走行用動力の出力特性を復帰させる際に、該出力特性が緩やかに変更されてもよい。これにより、電動走行の強制的実行の指示が解除される前後で走行用動力の出力特性が急変することによる急加速等を抑制して、ドライバビリティを向上させることが可能となる。
【0015】
本発明によるハイブリッド車両の制御方法は、走行用動力を出力可能な内燃機関と、走行用動力を出力可能な電動機と、該電動機と電力をやり取り可能な蓄電装置と、前記電動機のみから走行用動力が出力される電動走行の強制的実行を指示するための強制電動走行指示スイッチとを備えたハイブリッド車両の制御方法であって、前記電動走行の強制的実行が指示された状態での電動走行時と、前記電動走行の強制的実行が指示されていない状態での電動走行時とで、アクセル操作量に対する走行用動力の出力特性を変更することを特徴とする。
【0016】
この方法によれば、電動走行の強制的実行が指示されている際にアクセル操作量が大きく(例えば最大に)なっても電動走行が継続されるようにして、当該電動走行を継続させるという運転者の要求をより良好に満たすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明によるハイブリッド車両の一例であるハイブリッド自動車20の概略構成図である。
【図2】エンジン22の運転が停止された状態でハイブリッド自動車20が走行する際に実行されるエンジン停止時駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図3】ハイブリッド自動車20のステアリングホイール100を例示する概略構成図である。
【図4】要求トルク設定用マップの一例を示す説明図である。
【図5】ハイブリッド自動車20におけるアクセル開度Accに対する走行用動力の出力特性を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態について説明する。
【0019】
図1は、本発明によるハイブリッド車両の一例であるハイブリッド自動車20の概略構成図である。同図に示すハイブリッド自動車20は、ガソリンや軽油といった炭化水素系の燃料を用いて動力を出力するエンジン(内燃機関)22と、シングルピニオン式のプラネタリギヤ30と、主として発電機として動作するモータMG1と、駆動輪39a,39bにギヤ機構37やデファレンシャルギヤ38を介して連結された駆動軸35に変速機60を介して動力を入出力するモータMG2とを含む。
【0020】
更に、ハイブリッド自動車20は、エンジン22を制御するエンジン用電子制御ユニット(以下、「エンジンECU」という)24と、モータMG1およびMG2を駆動するためのインバータ41および42と、インバータ41および42に接続されたバッテリ50と、インバータ41および42を介してモータMG1およびMG2を制御するモータ用電子制御ユニット(以下、「モータECU」という)40と、バッテリ50を管理するバッテリ用電子制御ユニット(以下、「バッテリECU」という)52と、エンジンECU24やモータECU40、バッテリECU52等と通信しながら車両全体を制御するハイブリッド用電子制御ユニット(以下、「ハイブリッドECU」という)70とを含む。
【0021】
エンジンECU24は、図示しないCPUを中心とするマイクロコンピュータとして構成されている。エンジンECU24には、エンジン22に対して設けられて当該エンジン22の運転状態を検出する各種センサからの信号が入力され、エンジンECU24からは、エンジン22の吸入空気量や燃料噴射量、点火時期等を制御するための制御信号等が出力される。また、エンジンECU24は、ハイブリッドECU70と通信し、ハイブリッドECU70からの信号や上記センサからの信号等に基づいてエンジン22を制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータをハイブリッドECU70に出力する。
【0022】
プラネタリギヤ30は、モータMG1のロータ(回転軸)に接続されるサンギヤ(第1要素)31と、駆動軸35に接続されると共に変速機60を介してモータMG2のロータ(回転軸)に接続されるリングギヤ(第2要素)32と、複数のピニオンギヤ33を支持すると共に図示しないダンパを介してエンジン22のクランクシャフト(出力軸)26に接続されるプラネタリキャリア(第3要素)34とを有する。また、変速機60は、モータMG2のロータと駆動軸35との接続および当該接続の解除を実行すると共に、当該ロータと駆動軸35との間の変速比を複数段階に設定可能なものであり、ハイブリッド自動車20の走行状態等に応じてハイブリッドECU70により制御される。
【0023】
プラネタリギヤ30は、モータMG1がエンジン22からの動力の少なくとも一部を用いて発電する発電機として機能する際にはプラネタリキャリア34に伝達されるエンジン22からの動力をサンギヤ31とリングギヤ32とにそのギヤ比に応じて分配する。また、プラネタリギヤ30は、モータMG1が電動機として機能する際にはプラネタリキャリア34に伝達されるエンジン22からの動力とサンギヤ31に伝達されるモータMG1からの動力を統合してリングギヤ32に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、駆動軸35やギヤ機構37、デファレンシャルギヤ38等を介して最終的に駆動輪39a,35bに出力される。
【0024】
モータMG1およびMG2は、周知の同期発電電動機として構成されており、それぞれインバータ41または42を介してバッテリ50と電力をやり取りする。インバータ41および42とバッテリ50とを接続する電力ラインは、インバータ41,42が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータMG1およびMG2の一方により発電される電力を他方で消費可能とする。従って、バッテリ50は、モータMG1,MG2により発電または消費される電力に応じて充放電され、モータMG1およびMG2間で電力収支のバランスをとれば充放電されないことになる。
【0025】
モータECU40は、図示しないCPUを中心とするマイクロコンピュータとして構成されている。モータECU40には、モータMG1,MG2のロータの回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や、図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流等が入力され、モータECU40からは、インバータ41および42へのスイッチング制御信号等が出力される。また、モータECU40は、回転位置検出センサ43,44から入力した信号に基づいてモータMG1およびMG2のロータの回転数Nm1およびNm2を計算する。更に、モータECU40は、ハイブリッドECU70と通信し、ハイブリッドECU70からの信号等に基づいてモータMG1およびMG2を制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の状態に関するデータをハイブリッドECU70に出力する。
【0026】
バッテリ50は、例えば200〜300Vの定格出力電圧を有するニッケル水素二次電池またはリチウムイオン二次電池である。また、バッテリ50を管理するバッテリECU52も図示しないCPUを中心とするマイクロコンピュータとして構成されている。バッテリECU52には、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧Vb、バッテリ50の出力端子に接続された電力ラインに設置された図示しない電流センサからの充放電電流Ib、バッテリ50に設置された温度センサ51からのバッテリ温度Tb等が入力される。更に、バッテリECU52は、充放電電流Ibの積算値に基づいてバッテリ50の充電割合を示す残容量SOCを算出したり、残容量SOCに基づいてバッテリ50の目標充放電電力としての充放電要求パワーPb*(ここでは、放電側を正とし、充電側を負とする)を算出したり、残容量SOCとバッテリ温度Tbとに基づいてバッテリ50の充電に許容される電力である許容充電電力としての入力制限Winとバッテリ50の放電に許容される電力である許容放電電力としての出力制限Woutとを算出したりする。そして、バッテリECU52は、ハイブリッドECU70やエンジンECU24と通信し、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータをハイブリッドECU70等に出力する。
【0027】
ハイブリッドECU70は、CPU72を中心とするマイクロコンピュータとして構成されており、CPU72の他に各種プログラムを記憶するROM74や、データを一時的に記憶するRAM76、図示しない入出力ポートおよび通信ポート等を備える。ハイブリッドECU70は、上述したようにエンジンECU24やモータECU40、バッテリECU52等と通信し、エンジンECU24やモータECU40、バッテリECU52等と各種信号やデータのやり取りを行う。また、ハイブリッドECU70は、ハイブリッド自動車20の運転席近傍に配置された図示しないメータ表示ユニットを制御するメータ用電子制御ユニット(以下、「メータECU」という)90と通信し、当該メータECU90と必要なデータをやり取りする。
【0028】
更に、ハイブリッドECU70には、イグニッションスイッチ(スタートスイッチ)80からのイグニッション信号、シフトレバー81の操作位置(シフトポジション)に対応したシフトレンジSRを検出するシフトレンジセンサ82からのシフトレンジSR、アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度(アクセル操作量)Acc、ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルストロークセンサ86からのブレーキペダルストロークBS、車速センサ87からの車速V等が入力ポートを介して入力される。加えて、ハイブリッドECU70には、図1に示すように、EV優先スイッチ(電動走行優先モード選択スイッチ)88や、強制EVスイッチ(強制電動走行指示スイッチ)89、レーダセンサユニット95が接続されている。
【0029】
EV優先スイッチ88は、ハイブリッド自動車20の図示しない車室内のスイッチパネル、ステアリングホイール、あるいはステアリングホイールの近傍等に配置され、エンジン22の運転が停止されると共にモータMG2のみから走行用動力が出力されるモータ走行を優先的に実行させるEV優先モード(電動走行優先モード)の選択およびその解除を可能とするものである。EV優先スイッチ88からのオン/オフ信号は、ハイブリッドECU70に入力され、ハイブリッドECU70は、EV優先スイッチ88がオンされると、EV優先フラグFevを値1に設定すると共に、できるだけ長時間にわたってモータ走行が実行されるように定められたEV優先モード用の各種制御手順に従ってモータMG2等を制御する。また、ハイブリッドECU70は、EV優先スイッチ88がオフされると、EV優先フラグFevを値0に設定すると共に、予め定められた通常EVモード用の各種制御手順に従ってエンジン22やモータMG1およびMG2等を制御する。
【0030】
強制EVスイッチ89は、エンジン22の運転が停止されると共にモータMG2のみから走行用動力が出力されるモータ走行の強制的実行を指示するためのものである。本実施形態において、強制EVスイッチ89は、プッシュスイッチであり、運転中の運転者によりオン操作されている(押し下げられている)間、モータ走行の強制的実行を指示するための信号をハイブリッドECU70に送信する。また、本実施形態の強制EVスイッチ89は、図3に示すように、運転中の運転者が容易にオン操作し続けることができるようにステアリングホイール100に配置される。レーダセンサユニット95は、例えばミリ波等の電波や赤外線等を利用して車両後方に存在する物体(他車両すなわち後続車)を検知すると共に、検知した後続車等との車間距離を算出し、ハイブリッドECU70に後続車を検知した旨や、後続車との車間距離を示す信号をハイブリッドECU70に送信する。
【0031】
上述のように構成されたハイブリッド自動車20では、アクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸35に出力すべき要求トルクTr*が計算され、この要求トルクTr*に応じたトルクが駆動軸35に出力されるようにエンジン22が制御されると共にモータMG1およびMG2のトルク指令Tm1*およびTm2*が設定される。エンジン22、モータMG1およびモータMG2の制御モードには、要求トルクTr*に見合うパワーがエンジン22から出力されるようにエンジン22を制御すると共にエンジン22から出力されるパワーのすべてがプラネタリギヤ30とモータMG1およびMG2とによってトルク変換されて駆動軸35に出力されるようモータMG1およびMG2を制御するトルク変換運転モードや、要求トルクTr*とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合うパワーがエンジン22から出力されるようにエンジン22を制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力されるパワーの全部またはその一部がプラネタリギヤ30とモータMG1およびMG2とによりトルク変換されることで要求トルクTr*に応じたトルクが駆動軸35に出力されるようモータMG1およびMG2を制御する充放電運転モードが含まれる。また、ハイブリッド自動車20では、トルク変換運転モードや充放電運転モードのもとで所定条件が成立した場合、エンジン22を自動的に停止・始動させる間欠運転が実行される。更に、エンジン22を停止して要求トルクTr*に応じたトルクを駆動軸35に出力するようにモータMG2を制御するモータ走行時の制御モードには、EV優先スイッチ88および強制EVスイッチ89の双方がオフされている際に実行される通常EVモード、EV優先スイッチ88がオンされている際に実行されるEV優先モード、および強制EVスイッチ89がオンされている際に実行される強制EVモードが含まれる。
【0032】
次に、上述のように構成されるハイブリッド自動車20の動作について説明する。図2は、エンジン22の運転が停止された状態でハイブリッド自動車20が走行する際にハイブリッドECU70により所定時間毎(例えば、数msec毎)に実行されるエンジン停止時駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【0033】
図2のエンジン停止時駆動制御ルーチンの開始に際して、ハイブリッドECU70(CPU72)は、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや、車速センサ87からの車速V、モータMG1およびMG2の回転数Nm1およびNm2、変速機60の現変速比γ、バッテリ50の充放電要求パワーPb*、残容量SOC、入力制限Winおよび出力制限Wout、暖機要求フラグFwup、暖房要求フラグFh、EV優先フラグFevおよび強制EVフラグFfevの値といった制御に必要なデータの入力処理を実行する(ステップS100)。モータMG1およびMG2の回転数Nm1およびNm2は、モータECU40から通信により入力され、バッテリ50の充放電要求パワーPb*、残容量SOC、入力制限Winおよび出力制限Woutは、バッテリECU52から通信により入力される。変速機60の現変速比γは、例えば車速Vや要求トルクT*等に応じてステップS100の処理の実行時に変速機60により設定されている変速比であって、ハイブリッドECU70の予め定められた記憶領域に格納されているものである。
【0034】
暖機要求フラグFwupは、エンジンECU24によりエンジン22を暖機する必要がある場合に値1に設定されると共に、エンジン22の暖機が完了している場合に値0に設定されるものであり、エンジンECU24から通信により入力される。暖房要求フラグFhは、例えば図示しない車室空調装置を制御する空調用電子制御ユニットにより車室内を暖房するためにエンジン22を運転する必要がある場合に値1に設定されると共に、それ以外の場合に値0に設定されるものであり、空調用電子制御ユニットから通信により入力される。強制EVフラグFfevは、ハイブリッドECU70により強制EVスイッチ89がオン操作されている(押し下げられている)間に値1に設定されると共に、強制EVスイッチ89がオン操作されていないときには値0に設定されるものである。また、本実施形態において、ハイブリッドECU70は、強制EVスイッチ89がオン操作されている場合であっても、レーダセンサユニット95からの信号に基づいてハイブリッド自動車20(自車両)と後続車との車間距離が予め定められた距離未満であると判断すると、強制EVフラグFfevを値0に設定すると共に、例えば「後続車が接近しています。」といった警告表示をメータ表示ユニットの予め定められた表示領域に表示させるための表示指令を設定し、設定した表示指令をメータECU90に送信する。
【0035】
ステップS100のデータ入力処理の後、ハイブリッドECU70は、図4に例示する要求トルク設定用マップからステップS100にて入力したアクセル開度Accおよび車速Vに対応した要求トルクT*を導出・設定した上で、ハイブリッド自動車20(エンジン22とモータMG1およびMG2とを含む動力出力装置)に要求される要求パワーP*を設定する(ステップS110)。要求パワーP*は、要求トルクT*と駆動軸35の回転数Np(=回転数Nm2/現変速比γ)との積から充放電要求パワーPb*を減じた値に損失分Lossを加算することにより得られる。次いで、ハイブリッドECU70は、ステップS100にて入力した暖機要求フラグFwupが値0であるか否かを判定し(ステップS120)、暖機要求フラグFwupが値0であれば、更にステップS100にて入力した暖房要求フラグFhが値0であるか否かを判定する(ステップS130)。
【0036】
暖機要求フラグFwupが値1であるか、または暖房要求フラグFhが値1である場合、ハイブリッドECU70は、エンジン22を始動させるべくエンジン始動フラグをオンすると共に(ステップS280)、例えば「まもなくエンジンが始動されます。」といった予告表示をメータ表示ユニットの予め定められた表示領域に表示させるための表示指令を設定し、設定した表示指令をメータECU90に送信する(ステップS290)。そして、ハイブリッドECU70は、本ルーチンを終了させ、図示しないエンジン始動時駆動制御ルーチンを実行する。エンジン始動時駆動制御ルーチンは、モータMG1によりエンジン22をクランキングしながらエンジン22を始動させると共に、エンジン22のクランキングに伴って駆動軸35に作用する駆動トルクに対する反力としてのトルクをキャンセルしつつ要求トルクTr*に応じたトルクが駆動軸35に出力されるようにモータMG2を制御する処理である。なお、エンジン始動フラグは、エンジン始動時駆動制御ルーチンが終了するとオフされる。
【0037】
また、暖機要求フラグFwupおよび暖房要求フラグFhが共に値0である場合、ハイブリッドECU70は、ステップS100にて入力した出力制限Woutが予め定められた閾値Wref以上であるか否かを判定し(ステップS140)、出力制限Woutが閾値Wref以上であってバッテリ50から充分な電力を放電可能である場合には、更にステップS100にて入力した残容量SOCが予め定められた閾値Sref(例えば40%程度)以上であるか否かを判定する(ステップS150)。そして、残容量SOCが閾値Sref以上である場合、ハイブリッドECU70は、ステップS100にて入力した強制EVフラグFfevが値0であるか否かを判定する(ステップS160)。
【0038】
強制EVフラグFfevが値0であって運転者により強制EVスイッチ89がオン操作されていない(押し下げられていない)場合、例えばステップS110にて設定された要求パワーP*と本ルーチンの前回の実行に伴ってモータMG2(エンジン22とモータMG1およびMG2とを含む動力出力装置)から出力された総出力パワー(前回Tm2*×Nm2)との偏差が所定範囲内に含まれるか否かを判定する(ステップS170)。また、ステップS140またはS150にて否定判断がなされた場合にも、ステップS170の判定処理が実行される。ステップS170にて上記偏差が上記所定範囲内に含まれていると判断した場合、ハイブリッドECU70は、ステップS110にて設定した要求パワーP*に予め定められた比較的小さい時定数τ0を用いたなまし処理(通常の緩変化処理)を施した上で(ステップS180)、エンジン22を始動させるか否かを判定する(ステップS190)。
【0039】
ステップS190では、例えば、ステップS100にて入力したバッテリ50の残容量SOCと予め定められた閾値との比較、ステップS100にて入力した車速Vと例えばバッテリ50の状態(入力制限Win)等に応じた間欠禁止車速との比較、ステップS110にて設定された要求トルクTr*と予め定められた閾値との比較、ステップS110にて設定された要求パワーP*とエンジン始動パワーとの比較等が行われる。そして、運転者によりEV優先スイッチ88がオンされてEV優先モードが選択されている場合には、残容量SOC、車速V、要求トルクTr*、要求パワーP*といった各パラメータと比較される閾値として、運転者によりEV優先スイッチ88がオフされてEV優先モードが選択されていない場合、すなわち通常EVモードの選択時に比べて、できるだけ長時間にわたってモータ走行が実行されるように予め定められたものが用いられる。これにより、EV優先モードが選択されている場合に、モータ走行をできるだけ長時間継続させるという運転者の要求を満たすことが可能となる。
【0040】
また、エンジン始動パワーは、ステップS100にて入力した出力制限Woutから、少なくとも、エンジン22を始動させるためのモータMG1によるクランキングに伴って消費されるエンジン始動用電力と、車室空調装置による車室内の空調に要求される空調用電力と、予め定められたマージン分の電力とを差し引くことにより設定される。エンジン始動用電力は、エンジン22をクランキングするモータMG1により入出力される電力と、エンジン22のクランキングに伴って駆動軸35に作用する駆動トルクに対する反力としてのトルクをキャンセルするためにモータMG2により入出力される電力との和であり、車速Vが間欠禁止車速未満である場合には、放電側の値(正の値)となる。更に、空調用電力は、コンプレッサ等を駆動するための電力であり、例えば数kW程度等とされ、車室空調装置が停止されていれば値0となる。従って、本実施形態において、エンジン始動パワーは、EV優先モードの選択状態に拘わらず、バッテリ50の出力制限Woutよりも小さい値に設定される。
【0041】
ステップS180の処理の結果、残容量SOCが閾値未満であること、車速Vが間欠禁止車速以上であること、要求トルクTr*が閾値以上であること、要求パワーP*がエンジン始動パワー以上であることの少なくとも何れか一つが成立するとエンジン22を始動させるべきと判断され、これらの条件のすべてが非成立であるとエンジン22を停止状態に維持すべきと判断される(ステップS200)。エンジン22を始動させるべきと判断した場合、ハイブリッドECU70は、エンジン22を始動させるべくエンジン始動フラグをオンすると共に(ステップS280)、上述の表示指令を設定し、設定した表示指令をメータECU90に送信する(ステップS290)。そして、ハイブリッドECU70は、本ルーチンを終了させ、上述のエンジン始動時駆動制御ルーチンを実行する。
【0042】
これに対して、ステップS190にてエンジン22を停止状態に維持すべきと判断した場合、ハイブリッドECU70は、エンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*をそれぞれに値0に設定すると共に(ステップS210)、モータMG1に対するトルク指令Tm1*を値0に設定する(ステップS220)。次いで、ハイブリッドECU70は、バッテリ50の入出力制限Win,WoutとモータMG2の現在の回転数Nm2とを用いてモータMG2から出力してもよいトルクの上下限としてのトルク制限Tmin,Tmaxを次式(1)および(2)に従って計算すると共に(ステップS230)、要求トルクTr*と現変速比γとを用いてモータMG2から駆動軸35に出力すべきトルクの仮の値である仮モータトルクTm2tmpを次式(3)に従って計算する(ステップS240)。そして、ハイブリッドECU70は、モータMG2に対するトルク指令Tm2*をトルク制限Tmin,Tmaxで仮モータトルクTm2tmpを制限した値に設定する(ステップS250)。このようしてモータMG2に対するトルク指令Tm2*を設定することにより、駆動軸35に出力するトルクをバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内に制限することができる。
【0043】
Tmin=Win/Nm2 …(1)
Tmax=Wout/Nm2 …(2)
Tm2tmp=Tr*/γ …(3)
【0044】
こうしてモータMG1,MG2に対するトルク指令Tm1*,Tm2*を設定したならば、ハイブリッドECU70は、エンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*をエンジンECU24に送信すると共に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*をモータECU40にそれぞれ送信し(ステップS260)、本ルーチンを一旦終了させる。ハイブリッドECU70から目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを受信したエンジンECU24は、エンジン22を停止状態に維持する。また、ハイブリッドECU70からトルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm1*に従ってモータMG1が駆動されると共にトルク指令Tm2*に従ってモータMG2が駆動されるようにインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。すなわち、ハイブリッドECU70、エンジンECU24およびモータECU40は、アクセル開度Accに応じてエンジン22とモータMG1およびMG2を制御する制御装置として機能する。
【0045】
上述のような処理が行われることにより、ハイブリッド自動車20では、通常EVモードまたはEV優先モードのもとでのモータ走行に際して、モータMG2(エンジン22とモータMG1およびMG2とを含む動力出力装置)からの総出力パワーが図5において破線で示すようにバッテリ50の出力制限Woutよりも小さいエンジン始動パワーの範囲内に制限される。すなわち、通常EVモードまたはEV優先モードのもとでのモータ走行中にアクセル開度Accがある程度大きくなると、例えば要求パワーP*がエンジン始動パワー以上になることによりエンジン22が始動され、図5において実線で示すように、エンジン22とモータMG2との双方からアクセル開度Accに応じた走行用動力が出力されることになる。つまり、通常EVモードまたはEV優先モードのもとでのモータ走行中にアクセル開度Accが100%になったとしても、モータ走行がそのまま継続されることはない。
【0046】
一方、ステップS120〜S150のすべてにおいて肯定判断がなされると共に、ステップS160にて強制EVフラグFfevが値1であって運転者により強制EVスイッチ89がオン操作されていると判断された場合、すなわちエンジン22の暖機要求状態、車室の暖房要求状態およびバッテリ50の状態からモータ走行の強制的実行が許容されており、かつ運転者により強制EVスイッチ89がオン操作されている場合、ハイブリッドECU70は、上述のステップS170〜S200の処理をスキップして、上述のステップS210以降の処理を実行する。すなわち、ハイブリッド自動車20では、運転者によりモータ走行の強制的実行が指示されると共に、当該モータ走行の強制的実行が許容されている場合、上述のようなエンジン22の始動判定が実行されることなく、バッテリ50の出力制限(許容放電電力)Woutの範囲内で要求トルクTr*に応じたトルクを駆動軸35に出力するようにモータMG2が制御されることになる。
【0047】
このように、ハイブリッド自動車20では、運転者により強制EVスイッチ89がオン操作された状態、すなわち強制EVモードのもとでのモータ走行に際して、当該モータ走行の強制的実行が許容される間、エンジン22の始動判定が行われず、モータMG2(エンジン22とモータMG1およびMG2とを含む動力出力装置)からの総出力パワーが図5において点線で示すように上述のエンジン始動パワーよりも大きいバッテリ50の出力制限Woutの範囲内に制限される。これにより、ハイブリッド自動車20では、モータ走行の強制的実行が許容される間、モータMG2からの総出力パワーがバッテリ50の出力制限Woutの範囲内に制限されるものの、図5に示すように、アクセル開度Accが100%になってもモータ走行を継続して実行することが可能となる。すなわち、ハイブリッド自動車20では、図5からわかるように、強制EVモードのもとでのモータ走行時(図5中点線参照)と、モータ走行の強制的実行が指示されていない状態すなわち通常EVモードまたはEV優先モードのもとでのモータ走行時(図5中破線参照)とで、アクセル開度Accに対する走行用動力の出力特性が変更され、強制EVモードのもとでのモータ走行時には、通常EVモードまたはEV優先モードのもとでのモータ走行時に比べて、モータMG2に許容される許容出力トルク(同一の車速V(回転数Nm2)に対する許容出力トルク)が増加されることになる。
【0048】
また、ステップS170にて否定判断がなされた場合、ハイブリッドECU70は、ステップS110にて設定した要求パワーP*にステップS100にて入力したアクセル開度Accに応じた時定数τを用いたなまし処理を施した上で(ステップS270)、上述のステップS190以降の処理を実行する。ステップS270のなまし処理において用いられる時定数τは、基本的にステップS180において用いられる時定数τ0よりも大きく、アクセル開度Accが大きいほど大きく設定される。これにより、例えばアクセルペダル83が大きく踏み込まれたまま強制EVスイッチ89のオン操作が解除されたことにより、本ルーチンの前回の実行に伴ってモータMG2から出力された総出力パワーよりもステップS110にて設定された要求パワーP*が著しく大きくなったとしても、エンジン22とモータMG1およびMG2とを含む動力出力装置から出力されるパワーすなわち駆動軸35に出力されるトルクの急増を抑制し、ハイブリッド自動車20の急加速等を抑制することが可能となる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態のハイブリッド自動車20では、強制EVスイッチ89のオン操作によりモータ走行の強制的実行が指示された状態すなわち強制EVモードのもとでのモータ走行時と、モータ走行の強制的実行が指示されていない状態すなわち通常EVモードあるいはEV優先モードのもとでのモータ走行時とで、アクセル開度Accに対する走行用動力の出力特性が変更される。これにより、モータ走行の強制的実行が指示されている際(強制EVモードの選択時)に、アクセル開度Accが大きく、すなわち100%になってもモータ走行が継続されるようにして、当該モータ走行を継続させるという運転者の要求をより良好に満たすことが可能となる。
【0050】
また、ハイブリッド自動車20では、強制EVモードのもとでのモータ走行時に、通常EVモードあるいはEV優先モードのもとでのモータ走行時に比べて、モータMG2に許容される許容出力トルクが増加される。これにより、強制EVスイッチ89のオン操作に応じてモータ走行が強制的に実行される間の走行性能や走行距離を確保することが可能となる。
【0051】
更に、ハイブリッド自動車20では、通常EVモードあるいはEV優先モードのもとでのモータ走行中に車両(動力出力装置)に要求される要求パワーP*がバッテリ50の出力制限Woutから少なくともエンジン始動用電力を差し引いて得られるエンジン始動パワーを超えた場合にエンジン22が始動される。これに対して、強制EVモードのもとでのモータ走行時には、エンジン22の始動判定が実行されることなく、エンジン始動パワーよりも大きい出力制限Woutの範囲内で要求トルクTr*に応じたトルクを出力するようにモータMG2が制御される。これにより、強制EVモードのもとでのモータ走行時と、通常EVモードあるいはEV優先モードのもとでのモータ走行時とで、アクセル開度Accに対する走行用動力の出力特性をより適正に変更することができる。また、エンジン始動に要するエンジン始動用パワーを走行用動力に振り分けることで、強制EVモードのもとでのモータ走行時に、通常EVモードあるいはEV優先モードのもとでのモータ走行時に比べて、モータMG1およびMG2に許容される許容出力トルクを増加させることができる。
【0052】
そして、上記実施形態において、強制EVスイッチ89は、オン操作されている間、モータ走行の強制的実行を指示するように構成される。これにより、モータ走行の継続を望むときには、強制EVスイッチ89をオン操作し続けることでモータ走行の強制的実行を指示することが可能となり、強制EVスイッチ89のオン操作を取り止めることでモータ走行の強制的実行の指示を解除することができる。この結果、モータ走行の強制的実行についての運転者の意向をハイブリッド自動車20の制御にダイレクトに反映させることが可能となる。ただし、強制EVスイッチ89は、一回のオン操作によりモータ走行の強制的実行を指示するように構成されてもよく、この場合、例えば予め定められた時間が経過した段階で、モータ走行の強制的実行を車両(制御装置)側で自動的に解除するとよい。
【0053】
また、上記実施形態のハイブリッド自動車20は、後続車を検知するレーダセンサユニット95を備えており、ハイブリッドECU70は、ハイブリッド自動車20(自車両)と後続車との車間距離が予め定められた距離未満になると、強制EVフラグFfevを値0に設定すると共に、メータ表示ユニットを介して後続車が接近した旨が運転者に報知されるようにメータECU90に表示指令を与える。これにより、モータ走行の強制的実行により後続車の円滑な走行を妨げるおそれがある際に、運転者に対してモータ走行の強制的実行の指示を解除するよう促すと共に、ハイブリッド自動車20(自車両)と後続車との車間距離を確保しやすくすることができる。ただし、運転者に後続車の接近を報知すれば、当該運転者は、報知内容に応じた車両操作を実行すると考えられるので、ハイブリッド自動車20と後続車との車間距離が予め定められた距離未満になった段階で強制EVフラグFfevを値0に設定すること、すなわちモータ走行の強制的実行の指示を自動的にキャンセルすることを省略してもよい。
【0054】
更に、ハイブリッド自動車20では、モータ走行の強制的実行の指示が解除されたのに伴って走行用動力の出力特性を復帰させる際に、当該出力特性が緩やかに変更される(ステップS270)。これにより、モータ走行の強制的実行の指示が解除される前後で走行用動力の出力特性が急変することによる急加速等を抑制して、ドライバビリティを向上させることが可能となる。
【0055】
なお、強制EVモードのもとでのモータ走行時と、通常EVモードあるいはEV優先モードのもとでのモータ走行時とで、アクセル開度Accに対する走行用動力の出力特性を変更したり、強制EVモードのもとでのモータ走行時に、通常EVモードあるいはEV優先モードのもとでのモータ走行時に比べて、モータMG2に許容される許容出力トルクを増加したりするための制御ルーチンは、図2のものに限られず、強制EVモードのもとでのモータ走行時にアクセル開度Accが大きく(100%に)なってもモータ走行が継続されるようにするものであれば、任意の制御ルーチンを採用することができる。また、図2のステップS190におけるエンジン22の始動判定に際しては、上述の要求パワーP*の代わりにハイブリッド自動車20の走行に要求される要求走行パワー(要求トルクT*と駆動軸35の回転数Npとの積)と上記エンジン始動パワーとを比較してもよい。更に、上記ハイブリッド自動車20は、モータMG1(第2の電動機)と、モータMG2と、モータMG1のロータに接続されるサンギヤ31と、駆動輪39a,39bに連結される駆動軸35およびモータMG2のロータに接続されるリングギヤ32と、エンジン22のクランクシャフト26に接続されるプラネタリキャリア34とを有するプラネタリギヤ30とを含むものであるが、本発明が適用されるハイブリッド車両は、これに限られるものではない。すなわち、本発明によるハイブリッド車両は、いわゆる1モータ式のハイブリッド車両として構成されてもよい。また、変速機60の代わりに、シンプルな減速ギヤ機構が採用されてもよい。
【0056】
ここで、上記実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。すなわち、プラネタリギヤ30のリングギヤ32を介して駆動軸35に走行用動力を出力可能なエンジン22が「内燃機関」に相当し、駆動軸35に走行用動力を出力可能なモータMG2が「電動機」に相当し、モータMG2と電力をやり取り可能なバッテリ50が「蓄電装置」に相当し、モータ走行の強制的実行を指示するための強制EVスイッチ89が「強制電動走行指示スイッチ」に相当し、後続車を検知するレーダセンサユニット95が「検知手段」に相当し、ハイブリッドECU70、メータECU90およびメータ表示ユニットの組み合わせが「報知手段」に相当する。
【0057】
ただし、上記実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載された発明の主要な要素との対応関係は、実施形態が課題を解決するための手段の欄に記載された発明を実施するための形態を具体的に説明するための一形態であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。すなわち、上記実施形態はあくまで課題を解決するための手段の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、課題を解決するための手段の欄に記載された発明の解釈は、その欄の記載に基づいて行なわれるべきものである。
【0058】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、ハイブリッド車両の製造産業等において利用可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 プラネタリギヤ、31 サンギヤ、32 リングギヤ、33 ピニオンギヤ、34 プラネタリキャリア、35 駆動軸、37 ギヤ機構、38 デファレンシャルギヤ、39a,39b 駆動輪、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、51 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、60 変速機、70 ハイブリッド用電子制御ユニット(ハイブリッドECU)、72 CPU、74 ROM、76 RAM、81 シフトレバー、82 シフトレンジセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルストロークセンサ、87 車速センサ、88 EV優先スイッチ、89 強制EVスイッチ、90 メータ用電子制御ユニット(メータECU)、95 レーダセンサユニット、100 ステアリングホイール、MG1,MG2 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用動力を出力可能な内燃機関と、走行用動力を出力可能な電動機と、該電動機と電力をやり取り可能な蓄電装置とを含むハイブリッド車両において、
前記電動機のみから走行用動力が出力される電動走行の強制的実行を指示するための強制電動走行指示スイッチを備え、
前記電動走行の強制的実行が指示された状態での電動走行時と、前記電動走行の強制的実行が指示されていない状態での電動走行時とで、アクセル操作量に対する走行用動力の出力特性が変更されることを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド車両において、
前記電動走行の強制的実行が指示された状態での電動走行時には、前記電動走行の強制的実行が指示されていない状態での電動走行時に比べて、前記電動機に許容される許容出力トルクが増加されることを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項3】
請求項1または2に記載のハイブリッド車両において、
前記電動走行の強制的実行が指示されていない状態での電動走行中に車両に要求される要求パワーが前記蓄電装置の許容放電電力よりも小さい機関始動パワーを超えた場合には、前記内燃機関が始動され、前記電動走行の強制的実行が指示された状態での電動走行時には、前記内燃機関の始動判定が実行されることなく、前記許容放電電力の範囲内でトルクを出力するように前記電動機が制御されることを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項4】
請求項3に記載のハイブリッド車両において、
第2の電動機と、該第2の電動機の回転軸に接続される第1要素、駆動輪に連結される駆動軸および前記電動機の回転軸に接続される第2要素、および前記内燃機関の出力軸に接続される第3要素を有するプラネタリギヤとを更に備え、
前記機関始動パワーは、前記許容放電電力から少なくとも前記内燃機関を始動させるための前記第2の電動機によるクランキングに伴って消費される電力を差し引くことにより設定されることを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載のハイブリッド車両において、
前記強制電動走行指示スイッチは、オン操作されている間、前記電動走行の強制的実行を指示するように構成されることを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載のハイブリッド車両において、
後方の他車両を検知する検知手段と、
前記検知手段からの信号に基づいて前記他車両が接近した旨を運転者に報知する報知手段とを更に備えることを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項7】
請求項1から6の何れか一項に記載のハイブリッド車両において、
前記電動走行の強制的実行の指示が解除されたのに伴って前記走行用動力の出力特性を復帰させる際に、該出力特性が緩やかに変更されることを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項8】
走行用動力を出力可能な内燃機関と、走行用動力を出力可能な電動機と、該電動機と電力をやり取り可能な蓄電装置と、前記電動機のみから走行用動力が出力される電動走行の強制的実行を指示するための強制電動走行指示スイッチとを備えたハイブリッド車両の制御方法であって、
前記電動走行の強制的実行が指示された状態での電動走行時と、前記電動走行の強制的実行が指示されていない状態での電動走行時とで、アクセル操作量に対する走行用動力の出力特性を変更することを特徴とするハイブリッド車両の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−86704(P2013−86704A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230590(P2011−230590)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】