説明

ハイブリッド車両

【課題】本発明は、駆動輪に駆動力を伝達するモータが備えられている水平対向エンジンが搭載されているハイブリッド車両において、モータの配置自由度を高める技術を提供することを課題とする。
【解決手段】自動二輪車に搭載されているエンジン43は、クランクケース112と、このクランクケース112に含まれるシリンダブロック111L、111Rと、これらのシリンダブロック111L、111Rに連結される左右のシリンダヘッド部材201、202と、を有する。このエンジン43にモータ44L、44Rが連結されている。クランク軸118は、車両の進行方向に平行に配置され、モータ44L、44Rは、各々、左右のシリンダヘッド部材201、202に設けられると共に、モータ44L、44Rの軸線Jが、クランク軸118と平行に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンとモータとを組み合わせてなる駆動源によって駆動輪が駆動されるハイブリッド車両が知られている(例えば、特許文献1(図1)参照。)。
【0003】
特許文献1の図1に示されるように、ハイブリッド式の自動二輪車(1)(括弧付き数字は、特許文献1記載の符号を示す。以下同じ。)の車両長手方向略中心に、エンジン(E)が配置され、このエンジン(E)のクランクケース(15)の上方で、且つ、エンジン(E)のシリンダ部(44)の後方に、駆動用のモータ(M)が配置されている。
なお、シリンダ部(44)は、クランクケース(15)から車両前方で斜め上に延びている。
【0004】
ところで、自動二輪車には、クランクケースから車幅方向左右にシリンダ部を延ばした形態の車両もある。この形態の車両では、クランクケースからシリンダ部を延ばし、シリンダ部にシリンダヘッドを取付け、このシリンダヘッドから吸気マニホールドを延ばし、この吸気マニホールドをスロットルバルブ等を有する吸気系に連結する形態のエンジンが搭載されている。このようなエンジンとして、クランク軸が車両長手方向に指向している、いわゆる、クランク縦置きエンジンが知られている。具体的には、車幅方向中心から左右水平にシリンダ部が延ばされている水平対向エンジンや車幅方向中心から左右に傾斜して(V字状に)シリンダ部が延ばされているV型エンジン等がある。これらのエンジンのクランクケースの上方には、スロットルバルブを含む吸気系が配置されている。
【0005】
特許文献1の車両に、クランクケースの上方に吸気系部品を備えるクランク縦置きエンジンを搭載し、このエンジンに駆動用のモータを配置する場合について検討する。
特許文献1のハイブリッド車両と同様に、クランクケースの上方に駆動用のモータを配置しようとすると、クランクケースの上方に、吸気系が設けられているため、モータの配置に制約があった。駆動輪に駆動力を伝達するモータが備えられている水平対向エンジンが搭載されているハイブリッド車両において、モータの配置自由度を高める技術が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−269253公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、駆動輪に駆動力を伝達するモータが備えられている水平対向エンジンが搭載されているハイブリッド車両において、モータの配置自由度を高める技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、クランク軸及び変速機を収容するクランクケースと、このクランクケースに連結されるシリンダブロックと、このシリンダブロックに連結されるシリンダヘッド部材と、このシリンダヘッド部材に接続されるエンジン吸気系と、シリンダヘッド部材内に設けられているカムシャフトと、を有する内燃機関が備えられ、クランク軸に連結され駆動輪に駆動力を伝達するモータが備えられているハイブリッド車両において、
クランク軸は、車両の進行方向に平行に配置され、クランクケースの上方に、エンジン吸気系が配置され、モータは、シリンダヘッド部材に設けられると共に、モータの軸線が、クランク軸と平行に配置されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明では、モータは、シリンダヘッド部材の外面に配置されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明では、モータは、シリンダヘッド部材の車両後方に面する後面に配置されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、モータとクランク軸との間に、モータの駆動力をクランク軸に伝達する動力伝達機構が備えられ、この動力伝達機構は、クランクケース内に配置されていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明では、モータは、バンク角に掛からないよう、車輪接地面とステップを結ぶ線よりも車体側に配置されていることを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る発明では、モータの駆動軸は、カムシャフトと同軸上に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明では、シリンダヘッド部材にモータが設けられている。
仮に、クランクケースの上方に、駆動用のモータが配置されると、このモータと、従来からクランクケースの上方に配置されている吸気系とが接近するため、モータの配置に制約があった。
【0015】
この点、本発明では、モータは、シリンダヘッド部材に設けられている。シリンダヘッド部材にモータが配置されれば、このモータとクランクケースの上方に備えられているエンジン吸気系とを離間して配置することができる。モータとエンジン吸気系とが離間して配置されるので、モータの配置自由度を高めることができる。
【0016】
請求項2に係る発明では、モータは、シリンダヘッド部材の外面に配置されている。
本発明では、シリンダヘッド部材の外面に、モータが配置されているので、走行風がモータに当たり易くなる。走行風を受け易いシリンダヘッド部材の外面に走行風が当たるので、モータの温度上昇を抑えることができる。
【0017】
請求項3に係る発明では、モータは、シリンダヘッド部材の車両後方に面する後面に配置されている。
本発明では、車幅方向外側にモータが張り出さないので、エンジンにコンパクトにモータを配置することが可能になる。
【0018】
請求項4に係る発明では、モータの駆動力をクランク軸に伝達する動力伝達機構がクランクケースに配置されている。
本発明では、動力伝達機構がクランクケース内に配置されているため、ケースが不要となり、部品点数の削減が図れる。
【0019】
請求項5に係る発明では、モータは、バンク角に掛からないよう、車輪接地面とステップを結ぶ線よりも車体側に配置されている。
本発明では、モータは、車輪接地面とステップを結ぶ線よりも車体側に配置されているので、モータの配置に影響されることなくバンク角が十分に確保される。
【0020】
請求項6に係る発明では、モータの駆動軸は、カムシャフトと同軸上に配置されているので、確実にシリンダヘッド背面にモータを配置させることができ、コンパクトな配置とすることができる。また、モータとクランクケースの間にスペースを設けることができ、他の構成部品の配置が容易になる。さらに、エンジンの車幅方向幅が小さくなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るハイブリッド式自動二輪車の左側面図である。
【図2】図1の2矢視図である。
【図3】図2の3−3線断面図である。
【図4】図3の4−4線断面図である。
【図5】実施例2に係るエンジンの断面図である。
【図6】実施例3に係るエンジンの断面図である。
【図7】実施例4に係るエンジンの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。図中及び実施例において、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」は、各々、自動二輪車に乗車する運転者から見た方向を示す。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例1】
【0023】
先ず、本発明の実施例1を図面に基づいて説明する。
図1に示されているように、ハイブリッド式自動二輪車10は、車体フレーム11に、ヘッドパイプ12と、このヘッドパイプ12から後方に延びているメインフレーム13と、このメインフレーム13の後端部に取り付けピボット軸16を有するピボットプレート17と、このピボットプレート17の後上部から斜め後上方に延びているシートレール18と、このシートレール18の後端部とピボットプレート17の中間部との間を連結しシートレール18を支持するミドルフレーム19と、このミドルフレーム19の上端部から後方に延びているサブレール21と、このサブレール21の後部とミドルフレーム19の間に掛け渡されているシートステー22と、が備えられている車両である。
メインフレーム13の後部下端部近傍に、乗員の足置きとしてのステップ23が取付けられている。
【0024】
なお、メインフレーム13、ピボットプレート17、シートレール18、ミドルフレーム19、シートステー22及びステップ23は車両の幅方向中心に対し左右に設けられている。
【0025】
ピボットプレート17には、スイングアームピボットとしてのピボット軸16を中心に上下にスイング可能なリヤスイングアーム25が取付けられ、このリヤスイングアーム25の後端部に、最終減速機26が一体に設けられ、この最終減速機26に、後輪車軸27が設けられ、この後輪車軸27に、駆動輪としての後輪28が取付けられている。エンジン43の駆動力は、ドライブシャフト45に伝達され、ドライブシャフト45の後端部に設けられている最終減速機26により減速されると共に、回転軸の方向が車両長手方向から車幅方向へ変換され後輪28に伝達される。
【0026】
リヤスイングアーム25の中間部に、リンク機構31を介してリヤクッションユニット32が立設して取付けられ、このリヤクッションユニット32の上端部は、メインフレーム13側に取付けられている。
【0027】
ヘッドパイプ12に、操向自在にフロントフォーク35が取付けられ、このフロントフォーク35に、前輪車軸37を介して前輪38が取付けられ、フロントフォーク35の上端部に、操向ハンドル39が取付けられている。
【0028】
メインフレーム13の下方に、締結部材41a〜41cを介してパワーユニット42が懸架されている。このパワーユニット42は、内燃機関としての水平対向型4気筒エンジン43(以下、「エンジン43」とも云う。)と、このエンジン43の左側部に設けられているモータ44と、からなるハイブリッド式駆動源である。エンジン43は水冷エンジンである。
【0029】
エンジン43の上方に、エンジン吸気系47が配置されている。エンジン吸気系47は、外気を導くエアダクト48を含むエアクリーナ49と、このエアクリーナ49に連結されているスロットルボデイ51と、このスロットルボデイ51から延設されている吸気マニホールド52と、この吸気マニホールド52の先端部に設けられ混合気を溜めるサージタンク53と、このサージタンク53から延設され混合気をエンジン43の各気筒へ導くインテークマニホールド54、54とからなる。すなわち、エンジン吸気系47は、エンジン43のクランクケース112の上方に配置され、シリンダヘッド114にエンジン吸気系47が接続されている。
【0030】
エンジン43の下方に、エンジン排気系57が配置されている。エンジン排気系57は、エンジン43の各気筒から延びている排気管61、61と、これらの排気管61、61を集合させる集合管62と、この集合管62から後方へ延びている消音器63と、からなる。
【0031】
シートレール18に、乗員が着座する乗員シート65が設けられている。乗員シート65は、前部シート66と、この前部シート66の後方に連なるように設けた後部シート67とを一体化させてなる。
【0032】
サブレール21に、物を収納するトランク69が取付けられ、このトランク69の前壁69aに、乗員の背中を保持する背もたれ71が取付けられている。サブレール21に、サイドバッグ72が取付けられている。
【0033】
ヘッドパイプ12に、車両の前方を覆うフロントカウル74が取付けられ、このフロントカウル74に風よけとしてのフロントシールド75が取付けられ、フロントフォーク35に、前輪38の上方を覆う泥よけとしてのフロントフェンダ76が設けられている。
【0034】
次に、エンジン43を含むパワーユニット42を前から見たときの各構成要素の配置等について説明する。
図2に示されているように、エンジン43に、シリンダブロック111と一体化されているクランクケース112が設けられ、クランクケース112の車両幅方向左右外方に、シリンダヘッド114L、114Rが取付けられ、これらのシリンダヘッド114L、114Rに、ヘッドカバー115L、115Rが取付けられている。ヘッドカバー115Lに、駆動輪に駆動力を伝達するモータ44L、44Rが設けられている。
【0035】
シリンダヘッド114L、114Rの上方に、ラジエータユニット116L、116Rが配置され、各ラジエータユニット116L、116Rとエンジン43との間に、冷却水が循環する冷却水パイプ117L、117Rが連結されている。
クランク軸118は、その軸方向が車両長手方向に延びており、シリンダ軸121は、その軸方向が車幅方向水平に延びている。
【0036】
次に、パワーユニット42の詳細構造を説明する。
図3に示されているように、エンジン43のケースとなるエンジンブロック122は、左のクランクケース112Lと右のクランクケース112Rとが突き合わされ内側にクランク軸118を収容するクランク室124を形成すると共に、左右のシリンダブロック111L、111Rを一体化させたクランクケース112と、このクランクケース112に開けピストン139が摺動する左右のシリンダ部125L、125Rと、これらの左右のシリンダ部125L、125Rを塞ぐ左右のシリンダヘッド114L、114Rと、左右のシリンダヘッド114L、114Rを覆い左右のカムシャフト128L、128Rを収納する左右のカム室129L、129Rが形成されている左右のヘッドカバー115L、115Rと、からなる。左右のシリンダ部125L、125Rには、各々、ピストンが摺動する2つの穴が並列に配置されている。
【0037】
クランクケース112に収容されているクランク軸118は、車体の長手方向に指向するように配置されている。クランク軸118は、車両の進行方向に平行に配置されているともいえる。
【0038】
クランク軸118の後部にパワーユニット42の駆動力を変速機(図2、符号150)に伝達する出力ギヤ146が備えられ、この出力ギヤ146の後方にウオータポンプ147が配置されている。出力ギヤ146に、サブギヤ148が噛み合っており、このサブギヤ148にダンパ151が結合され、このダンパ151の出力側に交流発電機(ACG)152が取付けられている。出力ギヤ146の下方(図の裏側)には、エンジン43の回転速度を所定の回転速度に加減速してドライブシャフト(図1、符号45)へ伝達する変速機(図2、符号150)が配置され、この変速機150は、クランクケース112の下部に内蔵されている。
【0039】
左右のシリンダヘッド114L、114Rに、各々、複数のカム軸受部171L、171Rが設けられ、これらのカム軸受部171L、171Rに対応する位置で対向する位置に、カムホルダ172L、172Rが設けられ、カム軸部171L、171Rとカムホルダ172L、172Rとにより、カムシャフト128L、128Rは回転自在に支持されている。
【0040】
以下、カムシャフト128L、128Rについて説明する。
左右のカムシャフト128L、128Rに、各シリンダ部125L、125Rごとに、所定のタイミングで吸気弁(図4、符号161)を押圧する吸気カム177と、所定のタイミングで排気弁(図4、符号162)を押圧する排気カム178とが形成されている。左右のカムシャフト128L、128Rは、カム駆動機構179により駆動されている。
【0041】
以下、カム駆動機構179について説明する。
カム駆動機構179は、クランク軸118に設けられている第1の駆動ギヤ181と、左のカムシャフト128Lに設けられる左のカムスプロケット186と、この左のカムスプロケット186と第1の駆動ギヤ181とに巻き掛けた左チェーン188と、クランク軸118に設けられている第2の駆動ギヤ182と、右のカムシャフト128Rに設けられる右のカムスプロケット187と、この右のカムスプロケット187と第2の駆動ギヤ182とに巻き掛けた右チェーン189と、から構成されている。
【0042】
次に、シリンダヘッド部材及びこのシリンダヘッド部材に配置されるモータについて説明する。
図2及び図3を併せて参照して、左のシリンダヘッド部材201は、シリンダヘッド114Lとヘッドカバー115Lとからなり、右のシリンダヘッド部材202は、シリンダヘッド114Rとヘッドカバー115Rとからなる。左右のシリンダヘッド部材201、202の内側に、左右のカムシャフト128L、128Rが各々設けられている。
【0043】
左のシリンダヘッド部材201は、矩形状を呈し、車両前方に面する左前面203と、この左前面203の上端部から車両後方へ延ばされる左上面204と、この左上面204の後端部から下方へ延ばされる左後面205と、この左後面205と左前面203との間に渡される左下面206と、前記左前面203、左上面204、左後面205及び左下面206の間に渡される左側面207と、からなる左外面209を備えている。
【0044】
同様に、右のシリンダヘッド部材202は、矩形状を呈し、車両前方に面する右前面213と、この右前面213の上端部から車両後方へ延ばされる右上面214と、この右上面214の後端部から下方へ延ばされる右後面215と、この右後面215と右前面213との間に渡される右下面216と、前記右前面213、右上面214、右後面215及び右下面216の間に渡される右側面217と、からなる右外面219を備えている。
【0045】
モータ44L、44Rは、左右のシリンダヘッド部材201、202の左右の外面209、219の構成要素としての左側面207及び右側面217に配置され、モータ44L、44Rの軸線Jが、クランク軸118と平行に配置されている。
モータ44L、44Rは、その軸方向がクランク軸118と平行になるように配置されている。
モータ44L、44Rとクランク軸118との間に、モータ44L、44Rの駆動力をクランク軸118に伝達する動力伝達機構180が備えられ、この動力伝達機構180は、クランクケース内に配置されている。
【0046】
動力伝達機構180は、モータの軸Jの端部に固着されているドライブスプロケット221L、221Rと、クランク軸118に固着されているドリブンスプロケット222L、222Rと、ドライブスプロケット221L、221Rとドリブンスプロケット222L、222Rとの間に巻き掛けられるチェーン部材223L、223Rとから構成される。
【0047】
図4に示されているように、クランクケースのジャーナル受け部133に、クランク軸118のジャーナル部120が回転自在に支持され、このクランク軸118に複数設けられているクランクピン134に、各々、コンロッド135、135の大端部136、136が回動自在に取り付けられ、コンロッド135、135の小端部137L、137Rが車両幅方向外方に向けて延設され、各々のコンロッドの小端部137L、137Rに、ピストンピン138、138が挿通され、これらのピストンピン138、138に、ピストン139、139が取付けられている。
【0048】
クランクピン134とジャーナル部120の間に、クランクピン134とジャーナル部120の間を連結する複数のクランクウエブ140が設けられている。
インテークマニホールド54L、54Rに、燃料噴射用のインジェクタ197L、197Rが取付けられている。
【0049】
各ピストン139は、シリンダ部125L、125Rに摺動自在に設けられ、ピストン139と左右のシリンダ部125L、125Rと左右のシリンダヘッド114L、114Rとの間に各々燃焼室141が形成される。
また、クランクケース112の構成要素としての左右のシリンダブロック111L、111Rに、冷却水通路としての冷却水ジャケット142L、142Rが形成されている。
シリンダ部(シリンダブロック111L、111R)に、冷却水ジャケット142L、142Rが形成されている。
【0050】
次に、吸気弁及び排気弁について説明する。
吸気弁161及び排気弁162は、燃焼室141ごとに設けられ、左右のシリンダヘッド114L、114Rに、各々、閉弁方向に付勢するばね163で付勢され支持されている。吸気弁161及び排気弁162は、シリンダ部125L、125Rの軸線とクランク軸118の軸線を通る平面165に対し上方に傾けて配置され、排気弁162は、吸気弁161よりも車両長手方向前方に配置され、クランク軸118の軸線と平行な方向に並んで配置される。前記平面165に対し下方に傾け、排気弁162と吸気弁161の間に対応する位置で各燃焼室141の中央部に臨むように点火プラグ166が配置されている。
シリンダヘッド114L、114Rに、燃焼室に繋がっている吸気ポート131及び排気ポート132が形成されている。
【0051】
以上に述べたハイブリッド車両の作用を次に述べる。
図2及び図3を参照して、左右のシリンダヘッド部材201、202にモータ44L、44Rが設けられているので、このモータ44L、44Rとクランクケース112の上方に備えられているエンジン吸気系47の各部品とが干渉する心配はない。モータ44L、44Rとエンジン吸気系47とが干渉する心配はないので、モータ44L、44Rの配置自由度を高めることができる。
【0052】
モータ44L、44Rは、左右のシリンダヘッド部材201、202の左右の外面209、219に配置されているので、例えば、モータがシリンダヘッド部材の内面に配置されている場合に較べると、走行風がモータに当たり易くなる。走行風を受け易い左右のシリンダヘッド部材201、202の左右の外面209、219に走行風が当たるので、モータ44L、44Rの温度上昇を抑えることができる。
【0053】
クランクケース112内にモータ44L、44Rの駆動力をクランク軸118に伝達する動力伝達機構180が配置されている。
仮に、モータの駆動力をクランク軸に伝達する動力伝達機構180がクランクケース外112に配置されると、この動力伝達機構180を囲うケースが必要となり、部品点数が増加する。
この点、本発明では、動力伝達機構180がクランクケース112内に配置されているため、ケースが不要となり、部品点数の削減が図れる。
【実施例2】
【0054】
次に、本発明の実施例2を図面に基づいて説明する。
図5に示されているように、クランク軸118に連結され駆動輪である後輪(図1、符号28)に駆動力を伝達するモータ44L、44Rは、左右のシリンダヘッド部材201、202の車両後方に面する左右の後面205、215に配置されている。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0055】
モータ44L、44Rは、左右のシリンダヘッド部材201、202の構成要素としてのシリンダヘッド114L、114Rの車両後方に面する左右の後面205、215に配置されているので、車幅方向外側へモータ44L、44Rが張り出すことはなく、コンパクトにモータ44L、44Rを配置することが可能になる。
モータの軸線44LJ、44RJをカムシャフトの軸線128LJ、128RJよりもクランクケース寄りに配置したのでマスの集中化を図ることができる。
【実施例3】
【0056】
次に、本発明の実施例3を図面に基づいて説明する。
図6に示されているように、クランク軸118に連結され後輪(図1、符号28)に駆動力を伝達するモータ44L、44Rの駆動軸Jは、各々、カムシャフト128L、128Rと同軸上に配置されている。その他の構成は、実施例1、実施例2と同様である。
【0057】
モータがカムシャフトより車幅方向外側に配置される形態よりも、本発明の方が、エンジンの車幅方向幅が小さくなる。
また、モータ44L、44Rの駆動軸Jは、カムシャフト128L、128Rと同軸上に配置されているので、クランク軸118とカムシャフト128L又はクランク軸118とカムシャフト128R間の距離と、クランク軸118とモータ44L又はクランク軸118とモータ44Rの駆動軸間Jの距離とは同距離となる。クランク軸118とカムシャフト128L(又は128R)間の距離よりもクランク軸118とモータ44L(又は44R)の駆動軸J間の距離が大きい場合に較べると、モータ44L、44Rの駆動力をクランク軸118に伝達する動力伝達機構180をコンパクトに配置することができる。
【0058】
また、モータの駆動軸225L、225Rは、カムシャフト128L、128Rと同軸上に配置されているので、確実にシリンダヘッド背面にモータ44L、44Rを配置させることができ、コンパクトな配置とすることができる。またモータ44L、44Rとクランクケース112の間にスペースを設けることができ、他の構成部品の配置が容易になる。さらに、エンジンの車幅方向幅が小さくなる。
【実施例4】
【0059】
次に、本発明の実施例4を図面に基づいて説明する。
図7に示されているように、クランク軸118に連結され後輪(図1、符号28)に駆動力を伝達するモータ44L、44Rは、左右のシリンダヘッド部材201、202の左右の上面204、214に配置されている。その他、実施例1と大きく異なるところはなく説明を省略する。
【0060】
モータ44L、44Rが左右のシリンダヘッド部材201、202の左右の上面204、214に配置されているので、車幅方向外側へモータ44L、44Rが張り出すことはなく、コンパクトにモータ44L、44Rを配置することが可能になる。
【0061】
図2を併せて参照して、モータ44L、44Rは、バンク角(α)に掛からないよう、車輪接地面とステップを結ぶ線230L、230Rよりも車体側に配置されている。
モータ44L、44Rがシリンダヘッド部材201の左右の上面204、214に配置されれば、車両のバンク角(α)に影響を与える心配もない。
【0062】
尚、本発明は、実施の形態では自動二輪車に適用したが、三輪車にも適用可能であり、一般の車両に適用することは差し支えない。
モータは、左のシリンダヘッド部材の外面の構成要素としての側面、後面、上面又は下面に配置されているが、前面に配置することは差し支えない。
【0063】
また、モータを左のシリンダヘッド部材の外面に代えて、右のシリンダヘッド部材の外面のうちの一面に配置することは差し支えない。あるいは、モータを左右のシリンダヘッド部材の外面の双方に配置することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、水平対向エンジンが搭載されている自動二輪車に好適である。
【符号の説明】
【0065】
10…ハイブリッド車両(自動二輪車)、28…駆動輪(後輪)、43…内燃機関(エンジン)、44…モータ、47…エンジン吸気系、111L、111R…シリンダブロック、112…クランクケース、118…クランク軸、128L、128R…カムシャフト、150…変速機、180…動力伝達機構、201…左のシリンダヘッド部材、202…右のシリンダヘッド部材、205…シリンダヘッド部材の左後面、209…シリンダヘッド部材の左外面、215…シリンダヘッド部材の右後面、219…シリンダヘッド部材の右外面、225L…左のモータの(駆動)軸、225R…右のモータの(駆動)軸、J…モータの軸線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク軸(118)及び変速機(150)を収容するクランクケース(112)と、このクランクケース(112)に連結されるシリンダブロック(111L、111R)と、これらのシリンダブロック(111L、111R)に連結されるシリンダヘッド部材(201、202)と、このシリンダヘッド部材(201、202)に接続されるエンジン吸気系(47)と、前記シリンダヘッド部材内に設けられているカムシャフト(128L、128R)と、を有する内燃機関(43)が備えられ、前記クランク軸(118)に連結され駆動輪(28)に駆動力を伝達するモータ(44L、44R)が備えられているハイブリッド車両において、
前記クランク軸(118)は、車両の進行方向に平行に配置され、前記クランクケース(112)の上方に、前記エンジン吸気系(47)が配置され、
前記モータ(44L、44R)は、前記シリンダヘッド部材(201、202)に設けられると共に、前記モータ(44L、44R)の軸線(J)が、前記クランク軸(118)と平行に配置されていることを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項2】
前記モータ(44L、44R)は、前記シリンダヘッド部材(201、202)の外面(209、219)に配置されていることを特徴とする請求項1記載のハイブリッド車両。
【請求項3】
前記モータ(44L、44R)は、前記シリンダヘッド部材(201、202)の車両後方に面する後面(205、215)に配置されていることを特徴とする請求項1記載のハイブリッド車両。
【請求項4】
前記モータ(44L、44R)と前記クランク軸(118)との間に、前記モータ(44L、44R)の駆動力を前記クランク軸(118)に伝達する動力伝達機構(180)が備えられ、この動力伝達機構(180)は、前記クランクケース(112)内に配置されていることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3記載のハイブリッド車両。
【請求項5】
前記モータ(44L、44R)は、バンク角(α)に掛からないよう、車輪接地面とステップを結ぶ線(230L、230R)よりも車体側に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のハイブリッド車両。
【請求項6】
前記モータの駆動軸(225L、225R)は、前記カムシャフト(128L、128R)と同軸上に配置されていることを特徴とする請求項3記載のハイブリッド車両。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−195036(P2011−195036A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64488(P2010−64488)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】