説明

ハウス用換気装置およびハウス用空気調和システム

【課題】 ハウス内の空気の環境に配慮して適切に換気を行える新しいハウス用空気調和システムを提供する。
【解決手段】 ハウス用空気調和システムは、ハウス内の空気調和を行うハウス用空気調和システムであって、外部の空気を取り込む換気装置1を有している。ハウスの外部からハウス内に空気を送り込むためのファン17と、ハウスの外部からハウス内へ流れる空気の通路を塞ぐようにして設けられた充填材14と、充填材14に殺菌効果をも有する吸湿性液体Lを供給する吸湿性液体供給部15と、充填材14を通った吸湿性液体Lを入れる液槽16と、充填材14において空気と気液接触することによって濃度の変化した吸湿性液体を再生する再生機40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作物等のハウス栽培に用いるハウス用換気装置およびハウス用空気調和システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ビニールハウスやプラスチックハウス等で野菜や果物を栽培するハウス栽培が知られていた。また、最近では、天候や気温変化の影響を受けにくい環境で植物を栽培する「植物工場」が注目を集めている。植物工場は、植物の生育に適した環境を作り出すために、室温や照度を従来のハウス栽培より厳しく管理する手法である。
【0003】
上記のように閉鎖された空間で植物を栽培すると、植物が光合成を行うことに伴って、ハウス内の二酸化炭素濃度が低下する。従って、ハウス内に二酸化炭素を供給する必要があり、換気が行われる。
【0004】
従来のハウスでは、例えば、特許文献1に記載するように、ハウスの一部を開放して換気することが知られている。この方法では、病気やカビの原因となる有害動植物がハウス内に入ってしまう。
【0005】
特許文献2は、ハウス内への有害動植物の侵入を防止しつつ換気を行う換気システムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−350506号公報
【特許文献2】特開2008−283908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に記載の換気システムでは、網目のサイズが0.1mmの外気ろ過フィルタを用いているので、0.1mmより大きい有害動植物の侵入を防止することができるが、数μm〜数十μmの微細な菌類やウィルスの侵入を防止することはできない。
【0008】
また、特許文献2に記載の換気システムでは、換気によってハウス内の環境が乱されることまでは防止できない。植物を生育するうえで、湿度は重要なファクターである。例えば、湿度が高くなると、灰色かび病等の原因となり、湿度が低くなるとウドンコ病等の原因となる。従って、適切な範囲の湿度を保つことは、気温を保つことと同様に重要である。しかし、特許文献2では、ハウス内の湿度には全く配慮していない。
【0009】
なお、特許文献2では、外気温度が高い場合に、加湿によってハウス内の温度を下げることが記載されている。しかし、これはハウス内の温度に着目したものであって、湿度に配慮したものではない。日本の気候では、外気温が高くなる夏場は湿度が高くなるが、特許文献2では、気温が高い場合に湿度を上げているので、湿度がさらに高くなってしまい、上記したような灰色かび病等の問題が生じる。
【0010】
そこで、本発明は、ハウス内の空気の環境に配慮して適切に換気を行える新しいハウス用換気装置およびハウス用空気調和システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のハウス用換気装置は、ハウスの外部からハウス内に空気を送り込むためのファンと、ハウスの外部からハウス内へ流れる空気の通路に設けられた充填材と、前記充填材に殺菌効果をも有する吸湿性液体を供給する吸湿性液体供給部と、前記充填材を通った前記吸湿性液体を入れる液槽と、前記充填材において空気と気液接触することによって濃度の変化した吸湿性液体を再生する再生機とを備える。
【0012】
このように空気の通路に設けられた充填材において、外部から取り込んだ空気と殺菌効果を有する吸湿性液体とを気液接触させることによって、殺菌および調湿を行った空気をハウス内に供給するので、ハウス内の環境を保持しつつ換気を行うことができる。吸湿性液体としては、殺菌力の高い塩化リチウムを用いてもよい。
【0013】
本発明のハウス用換気装置において、前記充填材は、空気の通路を塞ぐようにして設けられていてもよい。
【0014】
この構成により、ハウス内に導入される空気は必ず充填材を通り、吸湿性液体と気液接触するので、確実に清浄化することができる。
【0015】
本発明のハウス用換気装置は、前記ハウス内の二酸化炭素濃度を測定するセンサを備え、前記二酸化炭素濃度が所定の閾値以上になるように換気を行ってもよい。
【0016】
この構成により、換気によりハウス内の二酸化炭素濃度を適切な値に維持し、植物の生育を促進できる。
【0017】
本発明のハウス用換気装置は、ハウスの外部から前記充填材までの空気の通路上に防虫フィルタを備えてもよい。
【0018】
この構成により、ハウスが設置される環境に多く存在する虫の侵入による吸湿性液体の汚染を防止し、吸湿性液体の長寿命化を図ることができる。
【0019】
本発明のハウス用換気装置は、ハウスの外部から前記充填材までの空気の通路上に防塵フィルタを備えてもよい。
【0020】
この構成により、ハウスが設置される環境において発生し得る砂塵による吸湿性液体の汚染を防止し、吸湿性液体の長寿命化を図ることができる。
【0021】
本発明のハウス用換気装置において、前記再生機は、空気を取り込む取込口と空気を排出する排気口を有する筐体と、再生すべき吸湿性液体を供給する吸湿性液体供給部と、前記吸湿性液体供給部から供給された吸湿性液体を空気と気液接触させるために吸湿性液体を一時的に滞留させる充填材と、前記取込口から前記充填材までの空気の通路上と、前記充填材から前記排気口までの空気の通路上に防虫フィルタを備えてもよい。
【0022】
このように充填材より取込口側に防虫フィルタを備えることにより、ハウスが設置される環境に多く存在する虫の侵入による吸湿性液体の汚染を防止し、吸湿性液体の長寿命化を図ることができる。また、排気口側にも防虫フィルタを設けることにより、再生機の運転が停止しているときにも虫の侵入を防止できる。
【0023】
本発明のハウス用空気調和システムは、上記したハウス用換気装置と、前記ハウス内に設置される内気燃焼式の暖房装置を備える。
【0024】
ハウス用換気装置によってハウス内に空気が取り込まれるので、エネルギー効率の良い内気燃焼式の暖房装置により、ハウス内の気温を上げることができる。
【0025】
本発明のハウス用空気調和システムは、上記したハウス用換気装置と、前記ハウス内に設置される地下水または用水を利用した冷房装置を備える。
【0026】
ハウス用換気装置によってハウス内の湿度を調整するので、高い冷房能力は必要とされず、地下水や用水を用いたコストの低い冷房を実現できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、殺菌効果を有する吸湿性液体によって、外部から取り込んだ空気を処理することにより、ハウス内の環境を保持しつつ換気を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】ハウス用空気調和システムの構成を示す図である。
【図2】ハウス用換気装置の構成を示す図である。
【図3】(a)塩化リチウムの粉塵除去率を示す図である。(b)塩化リチウムの殺菌力を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態のハウス用空気調和システム70について、図面を参照しながら説明する。図1は、ハウス用空気調和システム70の全体構成を示す図である。
【0030】
ハウス用空気調和システム70が適用されるハウスHは、例えば、ビニールハウス、プラスチックハウスであり、植物Pを生育するための環境を提供している。ハウスH内には、栽培用の照明71が設けられている。栽培用の照明71には、コジェネ発電機72によって発電された電力が供給される。なお、本明細書では、空気調和システムの設置対象を「ハウス」と称しているが、本発明のハウス用空気調和システム70は、「植物工場」と称される施設にも適用することが可能である。
【0031】
ハウス用空気調和システム70は、外部の空気をハウスH内に取り込むためのハウス換気装置(以下、「換気装置」という)1を有している。ハウスH内の空気は、図示しない排気口から排出される。排気口は、換気装置1により空気の取り込みが行われるときにのみ開放され、換気装置1が作動していないときには閉じられる。排気口は比較的小さく、換気装置1による空気の供給圧力により、ハウスH内からハウスHの外への空気の流れが形成される。これにより、排気口からの微細生物等の侵入を防止できる。なお、比較的大きい虫の侵入を防止するために、排気口に防虫フィルタを設けることが好ましい。
【0032】
換気装置1は、外部から取り込んだ空気の湿度を調整するとともに清浄化して、ハウスH内に供給する。換気装置1には、コジェネ発電機72にて発生した排熱が供給される。ハウス用空気調和システム70は、コジェネ発電機72の排熱を利用することにより、エネルギー利用効率の向上を図っている。
【0033】
ハウス用空気調和システム70は、ハウスH内に、内気燃焼温風器73と、冷房用送風機74とを有している。内気燃焼温風器73は、ハウスH内の酸素を燃焼して温風を生成する装置である。内気燃焼温風器73は、炭酸ガス施用器としての機能をも有している。ハウスH内の二酸化炭素濃度が低下した場合には、内気燃焼温風器73によって二酸化炭素を施用できる。
【0034】
冷房用送風機74は、地下水または用水によって空気を水冷して冷風を生成する。本実施の形態では、換気装置1にて空気を取り込む際に、その湿度(潜熱)を調整しているので、冷房によって室温(顕熱)をそれほど低下させなくても、ハウスH内の熱エネルギーを低下させることができる。従って、地下水または用水を利用した緩やかな冷房によって、植物Pの生育に適切な環境を作り出すことができる。
【0035】
図2は、ハウス用空気調和システム70で用いられる換気装置1の詳細な構成を示す図である。換気装置1は、ハウスHの外部から取り込んだ空気を処理してハウスH内に導入する処理機10を有している。処理機10は、取り込んだ空気を吸湿性液体Lと気液接触させることにより、湿度を調整する。本実施の形態では、吸湿性液体Lとして、塩化リチウム(LiCl)を用いている。
【0036】
図3(a)は塩化リチウムの粉塵除去率を示す図であり、図3(b)は塩化リチウムの殺菌力を示す図である。図3(a)に示すように、塩化リチウムは、粒径が5μm以上の粉塵をほぼ100%除去することができる。また、図3(b)は、供試菌種を滅菌するために要するための時間と濃度を示す図である。例えば、大腸菌の場合、20%以上の濃度の塩化リチウムに10分以上さらすことで滅菌することができる。本実施の形態の換気装置は、27〜30%程度の濃度の塩化リチウムを用いているので、高い殺菌効果を発揮する。
【0037】
このように、塩化リチウムは、高い粉塵除去作用、殺菌力を有するので、外部から取り込まれた空気は、塩化リチウムと気液接触することにより清浄化される。なお、吸湿性液体Lとしては、塩化リチウムに限らず、食塩水などの潮解性を有する塩の溶液や、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの吸湿性の高い多価アルコール、その他の吸湿性、殺菌力、粉塵除去力を有する安価な液体を用いてもよい。
【0038】
換気装置1は、処理機10での処理に用いた吸湿性液体Lの再生を行う再生機40を有する。ここで、吸湿性液体Lの再生とは、調湿を行うことによって濃度の変化した吸湿性液体Lを調湿処理前の状態に戻すことをいう。例えば、除湿処理は、溶液濃度の高い吸湿性液体Lを冷却し、冷却した吸湿性液体Lに空気を通すことにより、吸湿性液体Lによって空気中の水分を吸収する。この処理によって吸湿性液体Lの溶液濃度は低くなるが、溶液濃度が低い吸湿性液体Lでは十分な除湿を行えない。溶液濃度の低くなった吸湿性液体Lから水分を脱離させる再生処理によって、溶液濃度の高い吸湿性液体Lに戻す。加湿処理の場合は、逆に、吸湿性液体Lの溶液濃度が高くなるので、吸湿性液体Lに水分を吸収させる再生処理によって溶液濃度の低い吸湿性液体Lに戻す。
【0039】
図2では、一台の処理機10に対して一台の再生機40が接続された例を示しているが、例えば、複数のハウスHのそれぞれに処理機10が設けられている場合には、複数台の処理機10に対して一台の再生機40を接続する構成としてもよい。
【0040】
処理機10と再生機40は、第1の吸湿液管路61および第2の吸湿液管路62によって接続されている。第1の吸湿液管路61は、処理機10から再生機40へ吸湿性液体Lを送るための管路であり、第2の吸湿液管路62は、再生機40から処理機10へ吸湿性液体Lを送るための管路である。第1の吸湿液管路61、第2の吸湿液管路62を用いて、処理機10と再生機40との間で吸湿性液体Lを循環させることにより、処理機10にて用いた吸湿性液体Lを再生機40にて再生し、処理機10に戻す。
【0041】
[処理機]
次に、処理機10の構成について説明する。処理機10は、空気と吸湿性液体Lとの気液接触を行うための充填材14と、充填材14に対して吸湿性液体Lを滴下する吸湿液供給部15とを収容した筐体11を備えている。吸湿液供給部15から滴下された吸湿性液体Lは充填材14を通ってゆっくりと流れ落ちる。従って、吸湿性液体Lは、充填材に一時的に滞留する。筐体11の下部には、充填材14を通過した吸湿性液体Lを溜める液槽16を有する。
【0042】
筐体11には、空気を取り込むための取込口12と空気を排出するための排気口13とが形成されている。取込口12には、筐体11内への砂や埃の侵入を防止する防塵フィルタ18と、防塵フィルタ18を通過した虫の侵入を防止する防虫フィルタ19が取り付けられている。排気口13には、外部から取り込んだ空気をハウスHに送り込むためのファン17が設けられている。このファン17が回転することにより、ハウスHの外部から筐体11内に空気が取り込まれ、図2に矢印で示す経路を通ってハウスH内に送り込まれる。また、排気口13にも防虫フィルタ20が取り付けられている。
【0043】
図2に示すように、充填材14は、空気が通る通路上に設けられているので、取込口12から取り込まれた空気は充填材14を通過する。前述したように、充填材14には、吸湿性液体Lが滞留しているので、吸湿性液体Lと充填材14を通過する空気との間で水分の授受が行われ、除湿または加湿が行われる。また、塩化リチウムの粉塵除去作用および殺菌作用により、充填材14を通過する空気は清浄化される。充填材14は、図2に示すように、空気の通路を塞ぐようにして設けられ、筐体11の内面と充填材14との隙間がない。従って、ハウスH内に導入される空気は、確実に充填材14を通過する。
【0044】
処理機10は、液槽16内の吸湿性液体Lを吸湿液供給部15に供給するための管21を有している。管21にはポンプ22が取り付けられており、液槽16内の吸湿性液体Lを吸い上げる。
【0045】
この管21には、ヒートポンプ30の第1の熱交換器31が設けられており、第1の熱交換器31によって吸湿性液体Lを加熱または冷却する。第1の熱交換器31は、処理機10の吸湿液供給部15から供給される吸湿性液体Lの温度を制御する。吸湿性液体Lを加熱するか冷却するかは、処理機10によって空気を加湿するか除湿するかによる。すなわち、処理機10が加湿処理を行う場合には、吸湿性液体Lに含まれた水分を空気中に放出させるために吸湿性液体Lを加熱する。逆に、処理機10が除湿処理を行う場合には、空気中の水分を吸湿性液体Lに吸収させやすくするために吸湿性液体Lを冷却する。
【0046】
液槽16内の吸湿性液体Lを再生機40に送るための第1の吸湿液管路61は、液槽16から吸湿性液体Lを吸い上げるための管21に三方バルブ23を介して接続されている。三方バルブ23は、処理機10の吸湿液供給部15に送る吸湿性液体Lの量と第1の吸湿液管路61を通じて再生機40に送る吸湿性液体Lの量を制御する。本実施の形態では、三方バルブ23は、(吸湿液供給部15へ送る吸湿性液体Lの量):(再生機40に送る吸湿性液体Lの量)が、8:2から9:1の割合になるように制御する。
【0047】
第1の吸湿液管路61には、第2の熱交換器32が設けられており、再生機40に供給される吸湿性液体Lを冷却または加熱する。第2の熱交換器32は、再生機40に供給される吸湿性液体Lの温度を制御する。第1の熱交換器31と第2の熱交換器32とはヒートポンプ30を構成しており、第1の熱交換器31と第2の熱交換器32との間で熱が移動する。
【0048】
ここでヒートポンプ30の構成について説明する。ヒートポンプ30は、第1の熱交換器31と、第2の熱交換器32と、圧縮機33と、膨張弁34と、これらをつなぐ冷媒管35とを備えている。ヒートポンプ30は、冷媒の流れを逆転させることにより、第1の熱交換器31を蒸発器あるいは凝縮器として機能させることができる。第2の熱交換器32は、第1の熱交換器31とは逆の処理を行う。
【0049】
[再生機]
次に、再生機40について説明する。再生機40は、処理機10から送られてきた吸湿性液体Lと空気とを気液接触させて、吸湿性液体Lを再生する。再生機40は、空気と吸湿性液体Lとの気液接触を行うための充填材44と、充填材44に対して吸湿性液体Lを滴下する吸湿液供給部45とを収容する筐体41を有している。また、筐体41の下部には、充填材44を通過した吸湿性液体Lを溜める液槽46を有する。
【0050】
吸湿液供給部45は、第1の吸湿液管路61を通じて送られてくる吸湿性液体Lを充填材44に供給する吸湿液供給部45aと、液槽46から吸い上げた吸湿性液体Lを充填材44に供給する吸湿液供給部45bとを有する。第1の吸湿液管路61に設けられたヒートポンプ30の第2の熱交換器32が吸湿性液体Lを加熱または冷却するかは、再生機40によって吸湿性液体Lを濃縮するか希釈するかによる。すなわち、再生機40が吸湿性液体Lの濃縮を行う場合には、吸湿性液体Lに含まれた水分を空気中に放出させるために吸湿性液体Lを加熱する。逆に、再生機40が吸湿性液体Lを希釈する場合には、空気中の水分を吸湿性液体Lに吸収させやすくするために吸湿性液体Lを冷却する。
【0051】
筐体41には、空気を取り込むための取込口42と空気を排出するための排気口43とが形成されている。取込口42には、筐体41内への砂や埃の侵入を防止する防塵フィルタ56と、防塵フィルタ56を通過した虫の侵入を防止する防虫フィルタ57が取り付けられている。
【0052】
排気口43には、筐体41内から空気を排出するためのファン47が設けられている。このファン47が回転することにより、筐体41内の空気が外部に排出され、筐体41内が筐体41の外部に対して負圧となるので、取込口42を通じて空気が筐体41内に流れ込む。また、排気口43にも防虫フィルタ58が取り付けられている。これにより、ファン47が停止している際にも、排気口43から筐体41内への虫の侵入を防止できる。
【0053】
図2において、矢印は、空気の流れを示す。図2に示すように、取込口42から取り込まれた空気は充填材44を通過する。充填材44には、吸湿性液体Lが滞留しているので、吸湿性液体Lと空気との間で水分の授受が行われる。これにより、吸湿性液体Lが再生される。
【0054】
再生機40は、液槽46内の吸湿性液体Lを第1の吸湿液管路61に供給する管49を有している。液槽46内の吸湿性液体Lは、ポンプ50によって第1の吸湿液管路61に吸い上げられる。吸湿性液体Lは、第2の熱交換器32を通じて再生機40に再び供給される。
【0055】
再生機40は、液槽46の吸湿性液体Lを吸湿液供給部45bに供給するための供給管51を有している。供給管51には、ポンプ52が取り付けられており、液槽46内の吸湿性液体Lを吸い上げる。また、この管51には、加熱源53が設けられている。この加熱源はコジェネ発電機72の排熱を利用して、管51を流れる吸湿性液体Lを加熱する。
【0056】
加熱源53は、第2の熱交換器32による温度制御に加えて温度を上昇させたい場合には、液槽46から吸い上げた吸湿性液体Lを加熱する。加熱された吸湿性液体Lは、吸湿液供給部45bから充填材44に滴下され、充填材44において気液接触される。充填材44を通過した吸湿性液体Lは、液槽46に入る。このように吸湿性液体Lを循環させることにより、再生機40は吸湿性液体Lの再生処理を行う。
【0057】
再生機40は、液槽46に給水を行う給水管54を有する。給水管54上には、バルブ55が設けられており、バルブ55によって給水の制御を行う。
【0058】
液槽46の吸湿性液体Lは、第2の吸湿液管路62を通じて処理機10に戻る。再生機40から処理機10に戻る吸湿性液体Lの量は、バルブ63によって調整される。本実施の形態では、バルブ63は、液槽46内の吸湿性液体Lの液面の高さが一定になるように、処理機10へ戻す吸湿性液体Lの量を制御する。
【0059】
換気装置1は、第1の吸湿液管路61と第2の吸湿液管路62との間で熱交換を行う熱交換器64を有している。この熱交換器64は、第1の吸湿液管路61を流れる吸湿性液体Lと第2の吸湿液管路62を流れる吸湿性液体Lの温度差を低減し、ヒートポンプ30の汲み上げ温度差の低減に寄与する。以上、換気装置1の構成について詳細に説明した。
【0060】
[ハウス用空気調和システムの動作]
次に、本実施の形態のハウス用空気調和システム70の動作について説明する。ハウス用空気調和システム70は、二酸化炭素濃度を測定するセンサによってハウスH内の二酸化炭素濃度を測定し、ハウスH内の二酸化炭素濃度が所定の閾値を保持するように換気を行う。例えば、二酸化炭素濃度が所定の閾値を下回った場合に換気を開始し、外部の二酸化炭素濃度と等しくなるまで換気を行う。また、(1)植物が光合成を行わない夜間、(2)多数の作業者がハウス内にいる場合、(3)内気燃焼暖房器73を作動している場合など、ハウスH内の二酸化炭素濃度が大きくなる場合には、二酸化炭素濃度が所定の閾値を上回った場合に換気を開始し、外部の二酸化炭素濃度と等しくなるまで換気を行う。
【0061】
最初に、ハウスH内より外気の方が、湿度が高い場合の換気動作について説明する。この場合、換気装置1は、外気をハウスH内の湿度と同程度まで除湿してから、ハウスH内に供給する。
【0062】
換気装置1は、ヒートポンプ30の第1の熱交換器31を蒸発器、第2の熱交換器32を凝縮器として機能させる。処理機10の液槽16には、溶液濃度の高い吸湿性液体Lを入れておく。
【0063】
処理機10は、液槽16から溶液濃度の高い吸湿性液体Lを吸い上げ、蒸発器として機能する第1の熱交換器31にて吸湿性液体Lを冷却した上で吸湿液供給部15に供給する。吸湿液供給部15は、吸湿性液体Lを充填材14に滴下する。滴下された吸湿性液体Lは、充填材14をゆっくりと通過して液槽16に戻る。
【0064】
処理機10は、上記の動作と同時に、排気口13に設けられたファン17を回転させることにより、筐体11内に空気を取り込み、充填材14にて空気と吸湿性液体Lとの気液接触を行った後に、処理後の空気を、排気口13を通じてハウスH内に供給する。充填材14には溶液濃度が高くかつ低温の吸湿性液体Lが存在するので、空気中の水分が吸湿性液体Lによって吸収され、除湿された空気がハウスH内に供給される。なお、吸湿性液体Lと空気との間で熱交換も同時に行われるので、空気は冷却される。
【0065】
処理機10が除湿動作を継続して行うと、吸湿性液体Lは希釈されて、空気中の水分を吸収しにくくなり除湿効率が低下するので、吸湿性液体Lを再生機40によって再生する。換気装置1は、処理機10の液槽16から吸い出した吸湿性液体Lのうちの一部を第1の吸湿液管路61に供給し、再生機40に送る。再生機40に送る吸湿性液体Lの量は、三方バルブ23によって調節する。
【0066】
第1の吸湿液管路61の途中には、凝縮器として機能する第2の熱交換器32が配設されており、再生機40に送られる吸湿性液体Lは第2の熱交換器32によって加熱される。再生機40は、第1の吸湿液管路61から供給される溶液濃度の低くなった吸湿性液体Lの再生処理を行う。具体的には、吸湿液供給部45aは、第2の熱交換器32によって加熱された吸湿性液体Lを充填材44に滴下する。滴下された吸湿性液体Lは、充填材44を通って液槽46に入る。
【0067】
再生機40は、上記の動作と同時に、排出口43に設けられたファン47により、筐体41内から空気を排出する。これにより、取込口42を通じて筐体41内に空気が流れ込む。流れ込んだ空気は、充填材44にて吸湿性液体Lと気液接触した後、排出口43から排出される。空気が吸湿性液体Lと接触することにより、高温の吸湿性液体Lから水分が脱離して空気中に逃げ、吸湿性液体Lの濃度が高くなる。充填材44を通過した吸湿性液体Lは、液槽46に入る。
【0068】
液槽46内の吸湿性液体Lの一部は、ポンプ52によって吸い上げられ、供給管51を通じて吸湿液供給部45bに供給される。この際、加熱源53は、吸湿性液体Lを加熱する。これにより、吸湿性液体Lの水分がいっそう放出されやすい状態となり、再生機40は効率の良い濃縮処理を行える。
【0069】
また、液槽46内の吸湿性液体Lの一部は、第1の吸湿液管路61に供給される。第1の吸湿液管路61に供給された吸湿性液体Lは、第2の熱交換器32によって加熱されて吸湿液供給部45aに再び供給される。このように充填材44と液槽46との間で吸湿性液体Lが循環することにより、徐々に吸湿性液体Lの濃度が高くなっていく。
【0070】
再生処理が行われた液槽46内の吸湿性液体Lは、第2の吸湿液管路62を通って処理機10に戻る。吸湿性液体Lは、処理機10に戻る途中で、熱交換器64によって、再生機40に向かう吸湿性液体Lと熱交換が行われ、温度が低下する。以上、ハウス用空気調和システム70の換気装置1を用いて、除湿した空気をハウスH内に供給する動作について説明した。
【0071】
次に、ハウスH内より外気の方が、湿度が低い場合の換気動作について説明する。この場合、換気装置1は、外気をハウスH内の湿度と同程度まで加湿してから、ハウスH内に供給する。
【0072】
換気装置1にて空気を加湿する場合には、ヒートポンプ30は、第1の熱交換器31を凝縮器、第2の熱交換器32を蒸発器として機能させる。処理機10の液槽16には、溶液濃度の低い(水分を多く含んだ)吸湿性液体Lを入れておく。加湿処理の場合は、基本的には、換気装置1は、除湿処理と反対の動作を行う。
【0073】
処理機10は、溶液濃度の低い吸湿性液体Lを加熱して充填材14に滴下する一方で、取り込んだ空気を充填材14に通すことにより、吸湿性液体Lから水分を放出させて空気を加湿する。なお、吸湿性液体Lと空気との間で熱交換も同時に行われ、空気は加熱される。
【0074】
処理機10が加湿動作を継続して行うと、吸湿性液体Lは濃縮されて、空気中に放出される水分が少なくなるので、吸湿性液体Lを再生機40によって再生する。換気装置1は、処理機10の液槽16から吸い出した吸湿性液体Lのうちの一部を第1の吸湿液管路61に供給し、再生機40に送る。
【0075】
再生機40に送られる吸湿性液体Lは、第1の吸湿液管路61にある第2の熱交換器32によって冷却される。冷却された吸湿性液体Lは、再生機40の吸湿液供給部45aに供給される。吸湿液供給部45aが冷却された濃度の高い吸湿性液体Lを充填材44に滴下する一方で、外部から取り込んだ空気を充填材44に通すことにより、吸湿性液体Lに水分を吸収させる再生処理を行う。充填材44を通過した吸湿性液体Lは液槽46に入る。
【0076】
液槽46内の吸湿性液体Lの一部は、ポンプ52によって吸い上げられ、供給管51を通じて吸湿液供給部45bに供給される。また、液槽46内の吸湿性液体Lの一部は、第1の吸湿液管路61に供給される。第1の吸湿液管路61に供給された吸湿性液体Lは、第2の熱交換器32によって冷却されて吸湿液供給部45aに再び供給される。このように、充填材44と液槽46との間で吸湿性液体Lが循環することにより、徐々に吸湿性液体Lの濃度が低くなっていく。
【0077】
吸湿性液体Lの希釈再生を行う際には、外気から吸湿性液体Lへ水分を取り込むことに代えて、吸湿性液体Lに直接に給水することにより、吸湿性液体Lを希釈してもよい。再生機40は、給水管54のバルブ55を開け、液槽46に給水を行う。
【0078】
再生処理が行われた液槽46内の吸湿性液体Lは、第2の吸湿液管路62を通って処理機10に戻る。以上、ハウス用空気調和システム70の換気装置1を用いて、除湿した空気をハウスH内に供給する動作について説明した。
【0079】
上記したとおり、外部から取り込まれる空気は、除湿時には冷却した吸湿性液体Lと気液接触され、加湿時には加熱した吸湿性液体Lと気液接触されるので、吸湿性液体Lとの間で熱交換も行われる。つまり、換気装置1は、外部から取り込む空気の湿度を調整すると共に温度を調整することができる。ただし、換気装置1は、湿度をターゲットとして制御を行っているので、取り込み空気の温度がハウスH内の目標温度と異なる場合があり得る。このような場合には、内気燃焼温風器73または冷房用送風機74を用いて、ハウスH内の温度を目標温度に調整する。
【0080】
なお、吸湿性液体Lの溶液温度と外気の温度との温度差と、取り込み空気の流量と、吸湿性液体Lの供給量等に基づいて、換気に伴うハウスH内の温度変化を予測し、顕著な温度変化が生じる前に、内気燃焼温風器73または冷房用送風機74を用いて温度調整を行ってもよい。以上、実施の形態のハウス用空気調和システム70について説明した。
【0081】
本実施の形態のハウス用空気調和システム70は、湿度調整を行ってからハウスH内に空気を供給するので、ハウスH内の湿度を保持しつつ換気することができる。
【0082】
ハウス用空気調和システム70の換気装置1は、塩化リチウムとの気液接触を行っているので、外部の空気に含まれる可能性のある有害菌等を除去し、清浄化した空気をハウスH内に供給することができる。
【0083】
ハウス用空気調和システム70は、換気を行う構成を有しているので、ハウスH内の酸素を燃焼することが可能となり、外気燃焼式よりもエネルギー効率の良い内気燃焼温風器73を使用できる。これにより、暖房コストを低減し、ハウスH栽培のランニングコストを抑制することができる。
【0084】
ハウス用空気調和システム70は、湿度(潜熱)の調整を行っていることから、冷房によって室温(顕熱)をそれほど低下させる必要がなく、地下水または用水を利用した冷房用送風機74で適切な環境を作り出すことができる。これにより、冷房コストを低減し、ハウスH栽培のランニングコストを抑制することができる。
【0085】
以上、本発明のハウス用空気調和システムについて、実施の形態を挙げて詳細に説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではない。
【0086】
上記した実施の形態では、ヒートポンプ30を用いて、吸湿性液体Lの温度を制御する例について説明したが、必ずしもヒートポンプ30を用いる必要はない。例えば、コジェネ発電機72から十分な温度の排熱が得られる場合には、これを利用して吸湿性液体Lを加熱することとしてもよいし、地下水や用水を利用して吸湿性液体Lを冷却してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、ハウス内の環境を保持しつつ換気を行うことができるというすぐれた効果を有し、植物の生育環境を管理する植物工場等のハウスに適用することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 ハウス用換気装置
10 処理機
11 筐体
12 取込口
13 排気口
14 充填材
15 吸湿液供給部
16 液槽
17 ファン
18 防塵フィルタ
19 防虫フィルタ
20 防虫フィルタ
21 管
22 ポンプ
23 三方バルブ
30 ヒートポンプ
31 第1の熱交換器
32 第2の熱交換器
33 圧縮機
34 膨張弁
40 再生機
41 筐体
42 取込口
43 排気口
44 充填材
45 吸湿液供給部
46 液槽
47 ファン
49 管
50 ポンプ
51 供給管
52 ポンプ
53 加熱源
54 給水管
55 バルブ
56 防塵フィルタ
57 防虫フィルタ
58 防虫フィルタ
61 第1の吸湿液管路
62 第2の吸湿液管路
63 バルブ
64 熱交換器
70 ハウス用空気調和システム
71 照明
72 コジェネ発電機
73 内気燃焼温風器
74 冷房用送風機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウスの外部からハウス内に空気を送り込むためのファンと、
ハウスの外部からハウス内に流れる空気の通路に設けられた充填材と、
前記充填材に殺菌効果をも有する吸湿性液体を供給する吸湿性液体供給部と、
前記充填材を通った前記吸湿性液体を入れる液槽と、
前記充填材において空気と気液接触することによって濃度の変化した吸湿性液体を再生する再生機と、
を備えるハウス用換気装置。
【請求項2】
前記吸湿性液体として塩化リチウムを用いる請求項1に記載のハウス用換気装置。
【請求項3】
前記充填材は、空気の通路を塞ぐようにして設けられている請求項1または2に記載のハウス用換気装置。
【請求項4】
前記ハウス内の二酸化炭素濃度を測定するセンサを備え、
前記二酸化炭素濃度が所定の閾値以上になるように換気を行う請求項1〜3のいずれかに記載のハウス用換気装置。
【請求項5】
ハウスの外部から前記充填材までの空気の通路上に防虫フィルタを備える請求項1〜4のいずれかに記載のハウス用換気装置。
【請求項6】
ハウスの外部から前記充填材までの空気の通路上に防塵フィルタを備える請求項1〜5のいずれかに記載のハウス用換気装置。
【請求項7】
前記再生機は、
空気を取り込む取込口と空気を排出する排気口を有する筐体と、
再生すべき吸湿性液体を供給する吸湿性液体供給部と、
前記吸湿性液体供給部から供給された吸湿性液体を空気と気液接触させるために吸湿性液体を一時的に滞留させる充填材と、
前記取込口から前記充填材までの空気の通路上と、前記充填材から前記排気口までの空気の通路上に防虫フィルタを備える請求項1〜6のいずれかに記載のハウス用換気装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のハウス用換気装置と、
前記ハウス内に設置される内気燃焼式の暖房装置と、
を備えるハウス用空気調和システム。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載のハウス用換気装置と、
前記ハウス内に設置される地下水または用水を利用した冷房装置と、
を備えるハウス用空気調和システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−15655(P2011−15655A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163486(P2009−163486)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(504430008)ダイナエアー株式会社 (6)
【Fターム(参考)】