説明

ハチミツ

【課題】ハチミツにL−アスコルビン酸2‐グルコシドを含有させてハチミツ摂取により体内へのビタミンCの有効摂取を図るため、ハチミツ内に効率よくかつ有効にL−アスコルビン酸2‐グルコシドを添加させうるハチミツを提供する。
【解決手段】ハチミツに含有するα―グルコシターゼ及び糖鎖分解酵素をUF膜濾過により除去した上で、L−アスコルビン酸2‐グルコシドを添加したハチミツからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハチミツにL−アスコルビン酸2‐グルコシドを添加しても、L−アスコルビン酸2‐グルコシドをハチミツ内に有効に維持することのできるハチミツに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より体内へのビタミンC(アスコルビン酸)の有効摂取に関して、ビタミンCの摂取の方策が種々とられてきている。
特にビタミンCであるL−アスコルビン酸類を摂取することにより、体内でのコラーゲン産生を図ることができることとなる。
しかし、L−アスコルビン酸類自体に関しては、これが直接の還元性を有するために非常に不安定で、酸化分解しやすいものある。
【0003】
特に熱や酸等によって簡単に分解されてしまうものである。
従って、安定を有するためにL−アスコルビン酸2-グリコシド(2-0-α―グルコシル−L−アスコルビン酸)に関しての特開平3−139288号(特許文献1)が存在する。
又、L−アスコルビン酸2-グルコシドに脂肪酸類を配合させたコラーゲン産生増強剤がWO2005−34938号(特許文献2)として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−139288号
【特許文献2】WO2005−34938号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上の様に、体内でのコラーゲンの産生等のビタミンCの作用発現を図るためにビタミンCを安定的に取り込むためにL−アスコルビン酸2‐グルコシドを用いて体内にビタミンCを摂取させることは既に行われている。
しかし、このビタミンCが体内に吸収される前提として、体内でL−アスコルビン酸2‐グルコシドがα―グルコシターゼ等により加水分解されて、ビタミンCとして摂取されるものとなる。
【0006】
しかし、ハチミツ類に関しては元来このα―グルコシターゼを含有しているものであって、単にL−アスコルビン酸2‐グルコシドをハチミツに含有すると、ハチミツのα―グルコシターゼ等の分解酵素によりL−アスコルビン酸2‐グルコシドが分解されてしまうこととなる。
従ってハチミツにL−アスコルビン酸2‐グルコシドを安定的に保持できる何らかの方策が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
係るため請求項1に係る発明はハチミツに含有するα―グルコシターゼ及び糖鎖分解酵素を除去した上で、L−アスコルビン酸2‐グルコシドを添加又は失活したハチミツからなり、係る発明により前記課題を解決できる。
又、請求項2に係る発明のようにハチミツをUF膜濾過することにより、α―グルコシターゼ及び糖鎖分解酵素を除去するハチミツであり、係る発明により効率的にα―グルコシターゼ及び糖鎖分解酵素を除去するものでもよい。
【0008】
或いは、請求項3に係る発明のように、ハチミツを瞬間加熱処理することにより、α―グルコシターゼ及び糖鎖分解酵素を失活するハチミツを用いてもよい。
以上のものの他、請求項4に係る発明のようにハチミツにL−アスコルビン酸2‐グルコシドの添加をするため、α―グルコシターゼ及び糖鎖分解酵素を除去又は失活したハチミツからなるものでもよい。
【0009】
この場合、請求項5に係る発明のようにα―グルコシターゼ及び糖鎖分解酵素の除去がハチミツをUF膜濾過することにより除去するものでも、請求項6に係る発明のようにα―グルコシターゼ及び糖鎖分解酵素の失活がハチミツを瞬間加熱処理することにより除去するものでもよい。
【発明の効果】
【0010】
以上のように構成したことからまず請求項1に係る発明によりそもそもハチミツには酵素のα―グルコシターゼ及び糖鎖分解酵素が存在し、これによりL−アスコルビン酸2‐グルコシドの添加ができなかったが、これを除去することによって、L−アスコルビン酸2‐グルコシドの添加を可能とするものである。
従って、これによってL−アスコルビン酸2‐グルコシドの効果を期すことのできるハチミツの提供を可能とするものである。
【0011】
この場合請求項2に係る発明によりハチミツの風味、味覚、栄養、品質等を維持した上で、ハチミツから分解酵素であるα―グルコシターゼ及び糖鎖分解酵素を除去できるものとなる。
更に請求項3に係る発明によっても同様にハチミツの風味、味覚、栄養、品質等を維持した上で、ハチミツからα―グルコシターゼ及び糖鎖分解酵素を除去できるものとなる。
又、請求項4に係る発明によって、従来のハチミツではL−アスコルビン酸2‐グルコシドの添加ができないものであったが、係るハチミツの提供により分解酵素であるα―グルコシターゼ及び糖鎖分解酵素を除去したハチミツの提供ができることとなり、L−アスコルビン酸2‐グルコシドの添加が可能となると共にハチミツ内にL−アスコルビン酸2‐グルコシドを安定的に維持できるものとなる。
【0012】
この場合、請求項5及び請求項6に係る発明によりハチミツの風味、味覚、栄養、品質等を維持した上で、ハチミツからα―グルコシターゼ及び糖鎖分解酵素を除去できるものとなる。
これにより多用されているL−アスコルビン酸2‐グルコシドを用いることができるという極めて大きな利点を有する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、L−アスコルビン酸2‐グルコシドを安定した状態でハチミツ内に含有させうるためのハチミツの提供を目的とするものである。
即ちハチミツに含有するα―グルコシターゼ及び糖鎖分解酵素を適切に除去することが必要となる。
但し、ハチミツであることが前提であり、ハチミツとしての風味、味覚、栄養、品質等を維持していることが必要となる。
【0014】
係るために、ハチミツをUF膜濾過により脱たんぱく処理を行うことができ、α―グルコシターゼ及び糖鎖分解酵素を除去することができるものである。
この様にUF膜濾過を用いるとハチミツとしての風味、味覚、品質を維持できるものであり、係るハチミツをUF膜濾過を用いてα―グルコシターゼを除去した上で、L−アスコルビン酸2‐グルコシドを添加することによって、初めて最も効率よくハチミツ内にL−アスコルビン酸2‐グルコシドを含有させることができるものである。
【0015】
従ってα―グルコシターゼを除去したハチミツを用いるとL−アスコルビン酸2‐グルコシドを極めて有効に維持できるものであり、この様な状態で体内に摂取することによって、体内例えば小腸等の消化器官においてα―グルコシターゼによって有効的に加水分解され、最も効率よく体内にアスコルビン酸を吸収できるものである。
この場合ハチミツが生来含有しているα―グルコシターゼ及び糖鎖分解酵素を有効に除去すると共に、ハチミツの風味、味覚、栄養、品質等を有効に維持できる方法として最適な手段がUF膜濾過である。
【0016】
従って、ハチミツをUF膜濾過するものであるが、有効に除去するには次の方法をとることが望ましいものである。
即ちまずハチミツを溶解し、一般不純物を取り除くために濾過をおこなう。
更に、このハチミツに加水して希釈化し、その上でUF膜濾過を行う。
【0017】
次に、これを濃縮して生成するものである。
尚、必要に応じて更に濾過を行い、不純物を除去して最終的にハチミツを生成するものである。
【0018】
この様にしたハチミツにL−アスコルビン酸2‐グルコシドを添加するものである。
この場合の添加の量は任意でよく、必要量を添加するものであればよい。
上記はそもそもハチミツとして用いる場合に最適な方法であり、風味、味覚、品質等を維持して使用することを前提としてL−アスコルビン酸2‐グルコシドを添加するものであるが、この他、ハチミツを添加材料として用いる場合には精製ハチミツを生成するものでもよく、この場合には次の方法を採用するものであってもよい。
【0019】
例えばハチミツを前記と同様の手段にてUF膜濾過迄行い、次に色素吸着を行い、ハチミツの色合いを除去し、更に脱イオン処理を行う。
この様にした上で、これを濃縮して生成し、更に必要に応じて濾過を行い、不純物を除去して最終的に精製ハチミツを生成するものである。
従ってこの様に精製ハチミツを精製するものであってもよく、これも当然にハチミツに含まれるものである。
【0020】
次に、UF膜濾過に代えて、ハチミツを加熱処理することにより脱たんぱくし、酵素失活処理をするものであってもよい。
この場合単に一定時間加熱するとハチミツの風味がなくなり品質がどうしても低下してしまう。
そこで瞬間的に極めて短時間加熱処理することにより、ハチミツとしての風味、味覚、栄養、品質等を維持したままα―グルコシターゼ及び糖鎖分解酵素を失活できるものとなる。
加熱処理は一般的に多用される加熱処理であればよく、短時間の例えば瞬間的な加熱処理によるものであればよい。
【0021】
従ってこのようにしてハチミツからα―グルコシターゼ及び糖鎖分解酵素を失活するものであってもよい。
これにより、前記と同様にハチミツからα―グルコシターゼ及び糖鎖分解酵素を失活できるものであり、L−アスコルビン酸2‐グルコシドを添加しても、このハチミツ内において分解されずに体内に摂取できることとなる。
尚、α―グルコシターゼ及び糖鎖分解酵素の除去又は失活に関しては必ずしも100%除去するものを指すものではない。
【0022】
もっとも100%除去又は失活することが最善であるが、少なくともハチミツ内に含有しているα―グルコシターゼ及び糖鎖分解酵素が低減するものであればよく、ハチミツ内のα―グルコシターゼ及び糖鎖分解酵素が低減する程度除去できるものであればよい。
従って、全体量との対比上、特定のパーセント割合を要求するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハチミツに含有するα―グルコシターゼ及び糖鎖分解酵素を除去又は失活した上で、L−アスコルビン酸2‐グルコシドを添加したことを特徴とするハチミツ。
【請求項2】
ハチミツをUF膜濾過することにより、α―グルコシターゼ及び糖鎖分解酵素を除去することを特徴とする請求項1記載のハチミツ。
【請求項3】
ハチミツを瞬間加熱処理することにより、α―グルコシターゼ及び糖鎖分解酵素を失活することを特徴とする請求項1記載のハチミツ。
【請求項4】
ハチミツにL−アスコルビン酸2‐グルコシドの添加をするため、α―グルコシターゼ及び糖鎖分解酵素を除去又は失活したことを特徴とするハチミツ。
【請求項5】
α―グルコシターゼ及び糖鎖分解酵素の除去がハチミツをUF膜濾過することにより除去するものであることを特徴とする請求項4記載のハチミツ。
【請求項6】
α―グルコシターゼ及び糖鎖分解酵素の除去がハチミツを瞬間加熱処理することにより失活するものであることを特徴とする請求項4記載のハチミツ。

【公開番号】特開2012−80827(P2012−80827A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230018(P2010−230018)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(399054413)株式会社 加藤美蜂園本舗 (3)
【出願人】(305021155)株式会社アスコルバイオ研究所 (2)
【Fターム(参考)】