説明

ハニカム構造体及び排ガス浄化装置

【課題】本発明は、NOxの浄化性能に優れるハニカム構造体及び排ガス浄化装置を提供することを目的とする。
【解決手段】ハニカム構造体10は、リン酸塩系ゼオライトと、無機バインダとを含み、複数の貫通孔11aが隔壁11bを隔てて長手方向に並設されたハニカムユニット11を有し、ハニカムユニット11は、マクロ気孔の平均気孔径が0.1μm以上0.3μm以下であり、気孔率が30%以上40%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体及び排ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の排ガスを浄化するシステムの一つとして、アンモニアを用いて、NOxを窒素と水に還元するSCR(Selective Catalytic Reduction)システムが知られている。
【0003】
また、SCRシステムにおいて、アンモニアを吸着する材料として、ゼオライトが知られている。
【0004】
特許文献1には、ハニカムユニットがゼオライトと、無機繊維及び/又はウィスカと、無機バインダを含んでなるハニカム構造体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第06/137149号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のハニカム構造体よりも高いNOxの浄化性能が求められている。
【0007】
本発明は、上記の従来技術が有する問題に鑑み、NOxの浄化性能に優れるハニカム構造体及び排ガス浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のハニカム構造体は、リン酸塩系ゼオライトと、無機バインダとを含み、複数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設されたハニカムユニットを有し、前記ハニカムユニットは、マクロ気孔の平均気孔径が0.1μm以上0.3μm以下であり、気孔率が30%以上40%以下である。
【0009】
前記リン酸塩系ゼオライトは、SAPO、MeAPO及びMeAPSOからなる群より選択される一種以上であることが望ましい。
【0010】
前記SAPOは、SAPO−5、SAPO−11及びSAPO−34からなる群より選択される一種以上であることを特徴とすることが望ましい。
【0011】
前記リン酸塩系ゼオライトは、Cu及び/又はFeでイオン交換されているゼオライトを含むことが望ましい。
【0012】
前記無機バインダは、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス、セピオライト、アタパルジャイト及びベーマイトからなる群より選択される一種以上に含まれる固形分であることが望ましい。
【0013】
前記ハニカムユニットは、無機繊維及び/又は鱗片状物質をさらに含むことが望ましい。
【0014】
前記無機繊維は、アルミナ繊維、シリカ繊維、炭化ケイ素繊維、シリカアルミナ繊維、ガラス繊維、チタン酸カリウム繊維及びホウ酸アルミニウム繊維からなる群より選択される一種以上であり、鱗片状物質は、鱗片状ガラス、鱗片状白雲母、鱗片状アルミナ、鱗片状シリカ及び鱗片状酸化亜鉛からなる群より選択される一種以上であることが望ましい。
【0015】
本発明のハニカム構造体は、前記ハニカムユニットを複数有することが望ましい。
【0016】
本発明の排ガス浄化装置は、本発明のハニカム構造体を有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、NOxの浄化性能に優れるハニカム構造体及び排ガス浄化装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のハニカム構造体の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の排ガス浄化装置の一例を示す断面図である。
【図3】本発明のハニカム構造体の他の例を示す斜視図である。
【図4】図3のハニカム構造体を構成するハニカムユニットを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明を実施するための形態を図面と共に説明する。
【0020】
図1に、本発明のハニカム構造体の一例を示す。ハニカム構造体10は、無機粒子としてのリン酸塩系ゼオライトと、無機バインダとを含み、複数の貫通孔11aが隔壁11bを隔てて長手方向に並設された単一のハニカムユニット11の外周面に外周コート層12が形成されている。
【0021】
ハニカムユニット11のマクロ気孔の平均気孔径は、0.1〜0.3μmである。マクロ気孔の平均気孔径が0.1μm未満であると、排ガスが隔壁11bの内部まで浸透しにくいため、リン酸塩系ゼオライトがNOxの浄化に有効に利用されなくなる。一方、マクロ気孔の平均気孔径が0.3μmを超えると、ハニカムユニット11中の気孔の数が少ないため、排ガスが隔壁11bの内部まで浸透しにくくなり、リン酸塩系ゼオライトがNOxの浄化に有効に利用されなくなる。
【0022】
このとき、ハニカムユニット11の気孔径分布には、リン酸系ゼオライト由来のミクロ気孔のピークと隔壁11bの内部のマクロ気孔のピークが存在する。
【0023】
ハニカムユニット11の気孔率は、30〜40%である。ハニカムユニット11の気孔率が30%未満であると、排ガスが隔壁11bの内部まで浸透しにくいため、リン酸塩系ゼオライトがNOxの浄化に有効に利用されなくなる。一方、ハニカムユニット11の気孔率が40%を超えると、ハニカムユニット11中のリン酸塩系ゼオライトの含有量が少なくなるため、NOxの浄化率が低下する。
【0024】
なお、ハニカムユニット11の平均気孔径及び気孔率は、水銀圧入法を用いて測定することができる。
【0025】
リン酸塩系ゼオライトとしては、SAPO−5、SAPO−11、SAPO−34等のSAPO;MeAPO;MeAPSO等が挙げられる。
【0026】
リン酸塩系ゼオライトは、NOx浄化能を考慮すると、Cu及び/又はFeでイオン交換されているリン酸塩系ゼオライトを含むことが好ましい。なお、リン酸塩系ゼオライトは、イオン交換されていないリン酸塩系ゼオライト、上記以外の金属でイオン交換されたリン酸塩系ゼオライトをさらに含んでもよい。
【0027】
Cu及び/又はFeでイオン交換されたリン酸塩系ゼオライトは、イオン交換量が1.0〜5.0質量%であることが好ましい。リン酸塩系ゼオライトのイオン交換量が1.0質量%未満であると、NOxの浄化性能が不十分となることがある。一方、リン酸塩系ゼオライトのイオン交換量が5.0質量%を超えると、イオン交換されるべき金属が酸化物として存在して、イオン交換されないことがある。
【0028】
リン酸塩系ゼオライトの一次粒子又は二次粒子の平均粒径は、0.5〜10μmであることが好ましく、1〜5μmがさらに好ましい。リン酸塩系ゼオライトの一次粒子又は二次粒子の平均粒径が0.5μm未満であると、排ガスが隔壁11bの内部まで浸透しにくくなって、リン酸塩系ゼオライトがNOxの浄化に有効に利用されなくなることがある。一方、リン酸塩系ゼオライトの一次粒子又は二次粒子の平均粒径が10μmを超えると、ハニカムユニット11中の気孔の数が少なくなるため、排ガスが隔壁11bの内部まで浸透しにくくなり、リン酸塩系ゼオライトがNOxの浄化に有効に利用されなくなることがある。
【0029】
ハニカムユニット11は、β型ゼオライト、ZSM−5型ゼオライト等のリン酸塩系ゼオライト以外のゼオライトをさらに含んでもよい。
【0030】
ハニカムユニット11は、見掛けの体積当たりのゼオライトの含有量が230〜360g/Lであることが好ましい。見掛けの体積当たりのゼオライトの含有量が230g/L未満であると、NOxの浄化率を向上させるためにハニカムユニット11の見掛けの体積を大きくしなければならないことがある。一方、見掛けの体積当たりのゼオライトの含有量が360g/Lを超えると、ハニカムユニット11の強度が不十分になること又はハニカムユニット11の開口率が小さくなることがある。
【0031】
ハニカムユニット11に含まれる無機バインダとしては、特に限定されないが、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス、セピオライト、アタパルジャイト、ベーマイト等に含まれる固形分が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0032】
ハニカムユニット11の無機バインダの含有量は、5〜30質量%であることが好ましく、10〜20質量%がさらに好ましい。無機バインダの含有量が5質量%未満であると、ハニカムユニット11の強度が低下することがある。一方、無機バインダの含有量が30質量%を超えると、ハニカムユニット11の押出成形が困難になることがある。
【0033】
ハニカムユニット11は、強度を向上させるために、無機繊維及び/又は鱗片状物質をさらに含むことが好ましい。
【0034】
ハニカムユニット11に含まれる無機繊維としては、ハニカムユニット11の強度を向上させることが可能であれば、特に限定されないが、アルミナ繊維、シリカ繊維、炭化ケイ素繊維、シリカアルミナ繊維、ガラス繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0035】
無機繊維のアスペクト比は、2〜1000であることが好ましく、5〜800がさらに好ましく、10〜500が特に好ましい。無機繊維のアスペクト比が2未満であると、ハニカムユニット11の強度を向上させる効果が小さくなることがある。一方、無機繊維のアスペクト比が1000を超えると、ハニカムユニット11を押出成形する際に金型に目詰まり等が発生したり、無機繊維が折れて、ハニカムユニット11の強度を向上させる効果が小さくなったりすることがある。
【0036】
ハニカムユニット11に含まれる鱗片状物質としては、ハニカムユニット11の強度を向上させることが可能であれば、特に限定されないが、鱗片状ガラス、鱗片状白雲母、鱗片状アルミナ、鱗片状シリカ、鱗片状酸化亜鉛等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0037】
ハニカムユニット11の無機繊維及び鱗片状物質の含有量は、3〜50質量%であることが好ましく、3〜30質量%がさらに好ましく、5〜20質量%が特に好ましい。無機繊維及び鱗片状物質の含有量が3質量%未満であると、ハニカムユニット11の強度を向上させる効果が小さくなることがある。一方、無機繊維及び鱗片状物質の含有量が50質量%を超えると、ハニカムユニット11中のリン酸塩系ゼオライトの含有量が低下して、NOxの浄化率が低下することがある。
【0038】
ハニカムユニット11は、長手方向に垂直な断面の開口率が50〜75%であることが好ましい。ハニカムユニット11の長手方向に垂直な断面の開口率が50%未満であると、リン酸塩系ゼオライトがNOxの浄化に有効に利用されなくなることがある。一方、ハニカムユニット11の長手方向に垂直な断面の開口率が75%を超えると、ハニカムユニット11の強度が不十分となることがある。
【0039】
ハニカムユニット11は、長手方向に垂直な断面の貫通孔11aの密度が31〜124個/cmであることが好ましい。ハニカムユニット11の長手方向に垂直な断面の貫通孔11aの密度が31個/cm未満であると、排ガスとリン酸塩系ゼオライトが接触しにくくなって、NOxの浄化率が低下することがある。一方、ハニカムユニット11の長手方向に垂直な断面の貫通孔11aの密度が124個/cmを超えると、ハニカム構造体10の圧力損失が増大することがある。
【0040】
ハニカムユニット11の隔壁11bの厚さは、0.10〜0.50mmであることが好ましく、0.15〜0.35mmがさらに好ましい。隔壁11bの厚さが0.10mm未満であると、ハニカムユニット11の強度が低下することがある。一方、隔壁11bの厚さが0.50mmを超えると、排ガスが隔壁11bの内部まで浸透しにくくなって、リン酸塩系ゼオライトがNOxの浄化に有効に利用されなくなることがある。
【0041】
外周コート層12は、厚さが0.1〜2mmであることが好ましい。外周コート層12の厚さが0.1mm未満であると、ハニカム構造体10の強度を向上させる効果が不十分になることがある。一方、外周コート層12の厚さが2mmを超えると、ハニカム構造体10の単位体積当たりのリン酸塩系ゼオライトの含有量が低下して、NOxの浄化率が低下することがある。
【0042】
ハニカム構造体10は、円柱状であるが、特に限定されず、角柱状、楕円柱状等であってもよい。また、貫通孔11aの形状は、四角柱状であるが、特に限定されず、三角柱状、六角柱状等であってもよい。
【0043】
次に、本発明のハニカム構造体の一例であるハニカム構造体10の製造方法の一例について説明する。まず、リン酸塩系ゼオライト及び無機バインダを含み、必要に応じて、無機繊維及び/又は鱗片状物質、β型ゼオライト、ZSM−5型ゼオライト等のリン酸塩系ゼオライト以外のゼオライトをさらに含む原料ペーストを用いて押出成形し、複数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設された生の円柱状のハニカム成形体を作製する。これにより、焼成温度を低くしても、十分な強度を有する円柱状のハニカムユニット11が得られる。
【0044】
なお、原料ペーストに含まれる無機バインダは、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス、セピオライト、アタパルジャイト、ベーマイト等として添加されており、二種以上併用されていてもよい。
【0045】
また、原料ペーストには、有機バインダ、分散媒、成形助剤等を、必要に応じて、適宜添加してもよい。
【0046】
有機バインダとしては、特に限定されないが、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられ、二種以上併用してもよい。なお、有機バインダの添加量は、リン酸塩系ゼオライト、無機バインダ、無機繊維、鱗片状物質及びリン酸塩系ゼオライト以外のゼオライトの総量に対して、1〜10質量%であることが好ましい。
【0047】
分散媒としては、特に限定されないが、水、ベンゼン等の有機溶媒、メタノール等のアルコール等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0048】
成形助剤としては、特に限定されないが、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0049】
原料ペーストを調製する際には、混合混練することが好ましく、ミキサー、アトライタ等を用いて混合してもよく、ニーダー等を用いて混練してもよい。
【0050】
次に、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機、凍結乾燥機等の乾燥機を用いて、得られたハニカム成形体を乾燥する。
【0051】
さらに、乾燥されたハニカム成形体を脱脂する。脱脂条件は、特に限定されず、成形体に含まれる有機物の種類や量によって適宜選択することができるが、400℃で2時間であることが好ましい。
【0052】
次に、脱脂されたハニカム成形体を焼成することにより、円柱状のハニカムユニット11が得られる。焼成温度は、600〜1200℃であることが好ましく、600〜1000℃がさらに好ましい。焼成温度が600℃未満であると、焼結が進行せず、ハニカムユニット11の強度が低くなることがある。一方、焼成温度が1200℃を超えると、焼結が進行しすぎて、リン酸塩系ゼオライトの反応サイトが減少することがある。
【0053】
次に、円柱状のハニカムユニット11の外周面に外周コート層用ペーストを塗布する。
【0054】
外周コート層用ペーストとしては、特に限定されないが、無機バインダ及び無機粒子の混合物、無機バインダ及び無機繊維の混合物、無機バインダ、無機粒子及び無機繊維の混合物等が挙げられる。
【0055】
また、外周コート層用ペーストは、有機バインダをさらに含有してもよい。有機バインダとしては、特に限定されないが、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0056】
次に、外周コート層用ペーストが塗布されたハニカムユニット11を乾燥固化することにより、円柱状のハニカム構造体10が得られる。このとき、外周コート層用ペーストに有機バインダが含まれている場合は、脱脂することが好ましい。脱脂条件は、有機物の種類や量によって適宜選択することができるが、700℃で20分間であることが好ましい。
【0057】
なお、ハニカムユニット11をCuイオン又はFeイオンを含有する水溶液中に浸漬することにより、リン酸塩系ゼオライトをイオン交換することができる。また、Cu及び/又はFeでイオン交換されたリン酸塩系ゼオライトを含む原料ペーストを用いてもよい。
【0058】
図2に、本発明の排ガス浄化装置の一例を示す。排ガス浄化装置100は、ハニカム構造体10の外周部に保持シール材20を配置した状態で、金属管30にキャニングすることにより得られる。また、排ガス浄化装置100には、排ガスの流れる方向に対して、ハニカム構造体10の上流側に、アンモニア又はその前駆体を噴射する噴射ノズル等の噴射手段(不図示)が設けられている。これにより、排ガスにアンモニアが添加され、その結果、ハニカムユニット11に含まれるリン酸塩系ゼオライト上で、排ガス中に含まれるNOxが還元される。このとき、アンモニア又はその前駆体の貯蔵安定性を考慮すると、アンモニアの前駆体として、尿素水を用いることが好ましい。なお、尿素水は、排ガス中で加熱されることにより、加水分解し、アンモニアが発生する。
【0059】
図3に、本発明のハニカム構造体の他の例を示す。なお、ハニカム構造体10'は、複数の貫通孔11aが隔壁11bを隔てて長手方向に並設されたハニカムユニット11(図4参照)が接着層13を介して複数個接着されている以外は、ハニカム構造体10と同様である。
【0060】
ハニカムユニット11は、長手方向に垂直な断面の断面積が5〜50cmであることが好ましい。ハニカムユニット11の長手方向に垂直な断面の断面積が5cm未満であると、ハニカム構造体10'の圧力損失が増大することがある。一方、ハニカムユニット11の長手方向に垂直な断面の断面積が50cmを超えると、ハニカムユニット11に発生する熱応力に対する強度が不十分になることがある。
【0061】
接着層13は、厚さが0.5〜2mmであることが好ましい。接着層13の厚さが0.5mm未満であると、接着強度が不十分になることがある。一方、接着層13の厚さが2mmを超えると、ハニカム構造体10'の圧力損失が増大することがある。
【0062】
また、ハニカム構造体10'の外周部に位置するハニカムユニット11を除くハニカムユニット11の形状は、四角柱状であるが、特に限定されず、例えば、六角柱状等であってもよい。
【0063】
次に、本発明のハニカム構造体の他の例であるハニカム構造体10'の製造方法の一例について説明する。まず、ハニカム構造体10と同様にして、四角柱状のハニカムユニット11を作製する。次に、ハニカムユニット11の外周面に接着層用ペーストを塗布して、ハニカムユニット11を順次接着させ、乾燥固化することにより、ハニカムユニット11の集合体を作製する。
【0064】
このとき、ハニカムユニット11の集合体を作製した後に、円柱状に切削加工し、研磨してもよい。また、断面が扇形状や正方形状に成形されたハニカムユニット11を接着させて円柱状のハニカムユニット11の集合体を作製してもよい。
【0065】
接着層用ペーストとしては、特に限定されないが、無機バインダ及び無機粒子の混合物、無機バインダ及び無機繊維の混合物、無機バインダ、無機粒子及び無機繊維の混合物等が挙げられる。
【0066】
また、接着層用ペーストは、有機バインダを含有してもよい。有機バインダとしては、特に限定されないが、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0067】
次に、円柱状のハニカムユニット11の集合体の外周面に外周コート層用ペーストを塗布する。外周コート層用ペーストは、特に限定されないが、接着層用ペーストと同じ材料を含有してもよいし、異なる材料を含有してもよい。また、外周コート層用ペーストは、接着層用ペーストと同一の組成であってもよい。
【0068】
次に、外周コート層用ペーストが塗布されたハニカムユニット11の集合体を乾燥固化することにより、円柱状のハニカム構造体10'が得られる。このとき、接着層用ペースト及び/又は外周コート層用ペーストに有機バインダが含まれている場合は、脱脂することが好ましい。脱脂条件は、有機物の種類や量によって適宜選択することができるが、700℃で20分間であることが好ましい。
【0069】
なお、ハニカム構造体10及び10'は、外周コート層12が形成されていなくてもよい。
【実施例】
【0070】
[実施例1]
まず、Cuで2.7質量%イオン交換された、平均粒径が3.3μmであるSAPO3100g、ベーマイト895g、平均繊維径が6μm、平均繊維長が100μmのアルミナ繊維485g、メチルセルロース380g、オレイン酸280g及びイオン交換水2425gを混合混練して、原料ペースト1を作製した。
【0071】
次に、押出成形機を用いて、原料ペースト1を押出成形し、生の正四角柱状のハニカム成形体を作製した。そして、マイクロ波乾燥機及び熱風乾燥機を用いて、ハニカム成形体を110℃で10分間乾燥させた後、400℃で5時間脱脂した。次に、700℃で2時間焼成し、一辺が34.3mm、長さが150mmの正四角柱状のハニカムユニット11を作製した。
【0072】
ハニカムユニット11は、貫通孔11aの密度が93個/cm、隔壁11bの厚さが0.23mm、マクロ気孔の平均気孔径が0.20μm、気孔率が35%であった。ここで、マクロ気孔の平均気孔径及び気孔率は、水銀ポロシメーターを用いて測定した。
【0073】
次に、平均繊維径が0.5μm、平均繊維長が15μmのアルミナ繊維767g、シリカガラス2500g、カルボキシメチルセルロース17g、固形分30質量%のシリカゾル600g、ポリビニルアルコール167g、界面活性剤167g及びアルミナバルーン17gを混合混練して、耐熱性の接着層用ペーストを作製した。
【0074】
接着層の厚さが2mmになるように接着層用ペーストを塗布して、ハニカムユニット11を16個接着させ、接着層用ペーストを150℃で10分間乾燥固化した後、ダイヤモンドカッターを用いて、長手方向に垂直な断面が略点対称になるように円柱状に切削加工し、ハニカムユニット11の集合体を作製した。
【0075】
さらに、ハニカムユニット11の集合体の外周面に、外周コート層の厚さが1mmになるように接着層用ペーストを塗布した後、マイクロ波乾燥機及び熱風乾燥機を用いて、接着層用ペーストを150℃で10分間乾燥固化し、400℃で2時間脱脂して、直径143.8mm、高さ150mmの円柱状のハニカム構造体10'を作製した。
【0076】
次に、ハニカム構造体10'の外周部に保持シール材(無機繊維からなるマット)20を配置した状態で、金属管(シェル)30にキャニングし、排ガス浄化装置を作製した(図2参照)。
【0077】
[実施例2]
Cuで2.7質量%イオン交換された、平均粒径が1.3μmであるSAPO3100g、ベーマイト895g、平均繊維径が6μm、平均繊維長が100μmのアルミナ繊維485g、メチルセルロース420g、オレイン酸280g及びイオン交換水2600gを混合混練して、原料ペースト2を作製した。
【0078】
原料ペースト1の代わりに、原料ペースト2を用いた以外は、実施例1と同様にして、ハニカム構造体10'及び排ガス浄化装置を作製した。
【0079】
なお、ハニカムユニット11は、マクロ気孔の平均気孔径が0.10μm、気孔率が35%であった。
【0080】
[実施例3]
Cuで2.7質量%イオン交換された、平均粒径が5.0μmであるSAPO3100g、ベーマイト895g、平均繊維径が6μm、平均繊維長が100μmのアルミナ繊維485g、メチルセルロース350g、オレイン酸280g及びイオン交換水2250gを混合混練して、原料ペースト3を作製した。
【0081】
原料ペースト1の代わりに、原料ペースト3を用いた以外は、実施例1と同様にして、ハニカム構造体10'及び排ガス浄化装置を作製した。
【0082】
なお、ハニカムユニット11は、マクロ気孔の平均気孔径が0.30μm、気孔率が35%であった。
【0083】
[実施例4]
Cuで2.7質量%イオン交換された、平均粒径が3.3μmであるSAPO3100g、ベーマイト895g、平均繊維径が6μm、平均繊維長が100μmのアルミナ繊維485g、メチルセルロース350g、オレイン酸280g及びイオン交換水2250gを混合混練して、原料ペースト4を作製した。
【0084】
原料ペースト1の代わりに、原料ペースト4を用いた以外は、実施例1と同様にして、ハニカム構造体10'及び排ガス浄化装置を作製した。
【0085】
なお、ハニカムユニット11は、マクロ気孔の平均気孔径が0.20μm、気孔率が30%であった。
【0086】
[実施例5]
Cuで2.7質量%イオン交換された、平均粒径が3.3μmであるSAPO3100g、ベーマイト895g、平均繊維径が6μm、平均繊維長が100μmのアルミナ繊維485g、メチルセルロース420g、オレイン酸280g及びイオン交換水2600gを混合混練して、原料ペースト5を作製した。
【0087】
原料ペースト1の代わりに、原料ペースト5を用いた以外は、実施例1と同様にして、ハニカム構造体10'及び排ガス浄化装置を作製した。
【0088】
なお、ハニカムユニット11は、マクロ気孔の平均気孔径が0.20μm、気孔率が40%であった。
【0089】
[比較例1]
Cuで2.7質量%イオン交換された、平均粒径が1.3μmであるSAPO3100g、ベーマイト895g、平均繊維径が6μm、平均繊維長が100μmのアルミナ繊維485g、メチルセルロース380g、オレイン酸280g及びイオン交換水2425gを混合混練して、原料ペースト6を作製した。
【0090】
原料ペースト1の代わりに、原料ペースト6を用いた以外は、実施例1と同様にして、ハニカム構造体10'及び排ガス浄化装置を作製した。
【0091】
なお、ハニカムユニット11は、マクロ気孔の平均気孔径が0.08μm、気孔率が32%であった。
【0092】
[比較例2]
Cuで2.7質量%イオン交換された、平均粒径が5.5μmであるSAPO3100g、ベーマイト895g、平均繊維径が6μm、平均繊維長が100μmのアルミナ繊維485g、メチルセルロース350g、オレイン酸280g及びイオン交換水2250gを混合混練して、原料ペースト7を作製した。
【0093】
原料ペースト1の代わりに、原料ペースト7を用いた以外は、実施例1と同様にして、ハニカム構造体10'及び排ガス浄化装置を作製した。
【0094】
なお、ハニカムユニット11は、マクロ気孔の平均気孔径が0.35μm、気孔率が38%であった。
【0095】
[比較例3]
Cuで2.7質量%イオン交換された、平均粒径が3.3μmであるSAPO3100g、ベーマイト895g、平均繊維径が6μm、平均繊維長が100μmのアルミナ繊維485g、メチルセルロース450g、オレイン酸280g及びイオン交換水2740gを混合混練して、原料ペースト8を作製した。
【0096】
原料ペースト1の代わりに、原料ペースト8を用いた以外は、実施例1と同様にして、ハニカム構造体10'及び排ガス浄化装置を作製した。
【0097】
なお、ハニカムユニット11は、マクロ気孔の平均気孔径が0.20μm、気孔率が43%であった。
【0098】
[NOxの浄化率の測定]
実施例1〜5及び比較例1〜3で作製したハニカム構造体10'から、一辺が34.3mm、長さが40mmの正四角柱状のハニカムユニット11の一部を切り出し、評価用の試料とした。
【0099】
各評価用の試料に、150℃の模擬ガスを空間速度(SV)35000/hrで流しながら、触媒評価装置SIGU(堀場製作所社製)を用いて、評価用の試料から流出する一酸化窒素(NO)の流出量を測定し、式
(NOの流入量−NOの流出量)/(NOの流入量)×100
で表されるNOxの浄化率[%]を測定した。なお、模擬ガスの構成成分は、一酸化窒素175ppm、二酸化窒素175ppm、アンモニア350ppm、酸素14体積%、二酸化炭素5体積%、水10体積%、窒素(balance)である。測定結果を表1に示す。
【0100】
【表1】

表1より、実施例1〜5で作製したハニカム構造体10'から切り出した評価用の試料は、NOxの浄化率が高いことがわかる。
【0101】
以上のことから、ハニカムユニット11は、マクロ気孔の平均気孔径が0.1〜0.3μmであり、気孔率が30〜40%であることにより、ハニカム構造体10'及び排ガス浄化装置は、NOxの浄化性能に優れると考えられる。
【0102】
なお、本実施例では、ハニカム構造体10'について示したが、ハニカム構造体10についても同様の効果が得られると考えられる。
【符号の説明】
【0103】
10、10' ハニカム構造体
11 ハニカムユニット
11a 貫通孔
11b 隔壁
12 外周コート層
13 接着層
20 保持シール材
30 金属管
100 排ガス浄化装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸塩系ゼオライトと、無機バインダとを含み、複数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設されたハニカムユニットを有するハニカム構造体であって、
前記ハニカムユニットは、マクロ気孔の平均気孔径が0.1μm以上0.3μm以下であり、気孔率が30%以上40%以下であることを特徴とするハニカム構造体。
【請求項2】
前記リン酸塩系ゼオライトは、SAPO、MeAPO及びMeAPSOからなる群より選択される一種以上であることを特徴とする請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記SAPOは、SAPO−5、SAPO−11及びSAPO−34からなる群より選択される一種以上であることを特徴とすることを特徴とする請求項2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記リン酸塩系ゼオライトは、Cu及び/又はFeでイオン交換されているゼオライトを含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項5】
前記無機バインダは、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス、セピオライト、アタパルジャイト及びベーマイトからなる群より選択される一種以上に含まれる固形分であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項6】
前記ハニカムユニットは、無機繊維及び/又は鱗片状物質をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項7】
前記無機繊維は、アルミナ繊維、シリカ繊維、炭化ケイ素繊維、シリカアルミナ繊維、ガラス繊維、チタン酸カリウム繊維及びホウ酸アルミニウム繊維からなる群より選択される一種以上であり、
鱗片状物質は、鱗片状ガラス、鱗片状白雲母、鱗片状アルミナ、鱗片状シリカ及び鱗片状酸化亜鉛からなる群より選択される一種以上であることを特徴とする請求項6に記載のハニカム構造体。
【請求項8】
前記ハニカムユニットを複数有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載のハニカム構造体を有することを特徴とする排ガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−125852(P2011−125852A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243665(P2010−243665)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】