説明

ハブユニットの探傷検査装置

【課題】かしめ部の外周面と探傷センサとの間隔を製品毎にその都度調整しなくても正確な探傷検査を行うことができるハブユニットの探傷検査装置を提供する。
【解決手段】ハブユニット11の内輪部材16をハブ軸15に固定するためのかしめ部22における外周面の探傷検査を行う探傷検査装置であって、探傷センサ37と、かしめ部22の外周面に当接することによって、探傷センサ37とかしめ部22の外周面との間隔sを所定値に設定する間隔設定部材66と、探傷センサ37とかしめ部22の外周面との間隔sを所定値に保った状態で当該探傷センサ37の位置を固定する固定手段42と、固定手段42によって探傷センサ37の位置を固定したまま、間隔設定部材66をかしめ部22の外周面から離反する方向へ移動させる移動手段56と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車輪を支持するハブユニットの探傷検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車輪を回転自在に支持するハブユニットとして、ハブ軸を有するハブホイールと、ハブ軸の車体側端部に固定された内輪部材と、ハブ軸の径方向外方に配設された外輪と、ハブ軸及び内輪部材の外周に形成された内輪軌道と外輪の内周に形成された外輪軌道との間に転動自在に設けられた転動体と、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このハブユニットにおけるハブ軸の車体側端部には、段部を介して小径部が設けられており、内輪部材は、小径部の外周面に嵌合されるとともに、内輪部材から突出した小径部の先端を径方向外方に塑性変形させることによって、ハブ軸に”かしめ”固定されている。
【0004】
また、ハブユニットには、ドライブシャフトの回転駆動力が等速ジョイントを介して伝達される。この回転駆動力を伝達する形式として、ハブ軸における小径部の先端部、すなわち、かしめ部の軸方向端面にスプライン歯部を形成するとともに、かしめ部の軸方向端面に対向する等速ジョイントの外輪の軸方向端面にもスプライン歯部を形成し、双方のスプライン歯部を互いに噛み合わせたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−276780号公報
【特許文献2】特開2008−174178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようなハブユニットは、かしめ部に傷や割れが生じていないかを調べるための探傷検査が行われている。この検査は、例えばかしめ部に対して渦流センサを一定の間隔をあけて接近させた状態でハブユニットを回転させ、渦流センサの検出値の変化を取得することにより行われる。
特許文献1に記載のハブユニットの場合、かしめ部の軸方向端面に探傷センサを接近させることにより探傷検査を行うことができるが、特許文献2に記載のハブユニットの場合、かしめ部の軸方向端面にはスプライン歯部が形成され、このスプライン歯部とかしめ部の外周面との交差部付近において傷等が生じやすいため、当該外周面に探傷センサを接近させて検査を行う必要がある。
しかし、かしめ部の外周面は、かしめ部を塑性変形させる際に形状が拘束されないため、製品毎に外径寸法にばらつきが生じやすく、正確な探傷検査を行うには、製品毎にかしめ部の外周面と渦流センサとの間隔を調整する必要があった。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、かしめ部の外周面と探傷センサとの間隔を製品毎にその都度調整しなくても正確な探傷検査を行うことができるハブユニットの探傷検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ハブユニットの内輪部材をハブ軸に固定するためのかしめ部における外周面の探傷検査を行う探傷検査装置であって、
探傷センサと、
前記かしめ部の外周面に当接することによって、前記探傷センサとかしめ部の外周面との間隔を所定値に設定する間隔設定部材と、
前記探傷センサと前記かしめ部の外周面との間隔を所定値に保った状態で当該探傷センサの位置を固定する固定手段と、
を備えていることを特徴とする。
【0009】
この探傷検査装置によれば、かしめ部の外周面に間隔設定部材を当接させることによって、当該外周面と探傷センサとの間隔を所定値に設定することができるので、製品毎にかしめ部の外周面の径寸法にバラツキがあったとしても、探傷センサの位置をその都度調整することなく探傷検査を行うことができる。
【0010】
上記の探傷検査装置は、前記固定手段によって前記探傷センサの位置を固定したまま、前記間隔設定部材を前記かしめ部の外周面から離反する方向へ移動させる移動手段をさらに備えていてもよい。
このような構成によって、間隔設定部材をかしめ部の外周面から離反させることができるので、当該外周面に間隔設定部材が接触することに伴うノイズの発生を防止することができ、より正確に探傷検査を行うことができる。
【0011】
また、本発明は、ハブユニットの内輪部材をハブ軸に固定するためのかしめ部における外周面の探傷検査を行う探傷検査装置であって、
探傷センサと、
前記探傷センサを支持するとともに、当該探傷センサを前記かしめ部の外周面に対して近接させる方向及び離反させる方向へ移動可能なセンサ支持部と、
このセンサ支持部に対して設けられ、かつ前記探傷センサを前記かしめ部の外周面に接近させたときに、当該外周面に当接することによって当該外周面と前記探傷センサとの間隔を所定値に設定する間隔設定部材と、
前記探傷センサと前記かしめ部の外周面との前記間隔を所定値に保ったまま、前記センサ支持部の位置を固定する固定手段と、
前記固定手段によって前記センサ支持部の位置を固定した状態で、前記間隔設定部材を前記かしめ部の外周面から離反させる方向へ移動させる移動手段と、を備えていることを特徴とする。
【0012】
この探傷検査装置によれば、かしめ部の外周面に間隔設定部材を当接させることによって、当該外周面と探傷センサとの間隔を所定値に設定することができるので、製品毎にかしめ部の外周面の径寸法にバラツキがあったとしても、探傷センサの位置をその都度調整する必要がない。また、間隔設定部材は、かしめ部の外周面から離反させることができるので、当該外周面に間隔設定部材が接触することに伴うノイズの発生を防止することができ、より正確に探傷検査を行うことができる。
【0013】
探傷検査装置は、前記かしめ部の外周面を基準とする前記間隔設定部材と前記探傷センサとの相対位置を調整する調整手段を備えていてもよい。
これにより、探傷検査を行う製品の種類が変わった場合等に、間隔設定部材をかしめ部の外周面に当接させたときの当該外周面と探傷センサとの間隔が所定値に設定されるように、間隔設定部材と探傷センサとの相対位置を調整することができる。
【0014】
探傷検査装置は、前記間隔設定部材を前記かしめ部の外周面に当接させたときに、所定の当接圧を付与する付勢部材を備えていてもよい。
これによって、製品毎にかしめ部の外周面と探傷センサとの間隔を適切に設定することができる。
【0015】
前記間隔設定部材は、前記探傷センサを間に挟んで周方向の2箇所で前記かしめ部の外周面に当接する少なくとも2つの当接部を有していてもよい。これにより、より確実にかしめ部の外周面と探傷センサとの間隔を設定することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数のハブユニットについてかしめ部の外周面と探傷センサとの間隔を製品毎にその都度調整しなくても正確な探傷検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係る探傷検査装置の側面図である。
【図2】探傷検査装置の正面図である。
【図3】探傷検査装置の背面図である。
【図4】探傷検査装置の底面図である。
【図5】図3のV−V矢視断面図である。
【図6】ハブユニットを含む車輪支持装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
まず、本発明の探傷検査装置によって傷や割れの有無が検査される測定対象物としてのハブユニット11について説明する。図6は、ハブユニット11を含む車輪支持装置10の断面図である。車輪支持装置10は、ハブユニット11と、等速ジョイント12とを有している。ハブユニット11は、軸方向に一対の外輪軌道が設けられた外輪13と、外輪13の内周側に配設され、一方の外輪軌道に対向する内輪軌道を有すると共に、軸方向の一端部(車体側端部)に小径部14を有するハブ軸15を備えたハブホイール18と、小径部14の外周面に装着され、他方の外輪軌道に対向する内輪軌道を有する内輪部材16と、一対の外輪軌道と2つの内輪軌道との間に2列に設けられた複数の転動体17と、を有している。
【0019】
ハブ軸15の車輪側端部(図6の左側)には、径方向に突出するフランジ部19が一体に形成され、このフランジ部19にブレーキディスクや車輪を取り付けるためのハブボルト(図示省略)が取り付けられる。外輪13の外周には、車体側のナックルにボルトによって取り付けられる取付フランジ20が一体に形成されている。
【0020】
内輪部材16は、ハブ軸15に設けられた小径部14の外周面に嵌合され、小径部14の先端部が径方向外側へ塑性変形されることによってハブ軸15にかしめ固定されている。そして、塑性変形された小径部14の先端部(以下、「かしめ部」ともいう)22の軸方向端面には、放射状に延びる複数のスプライン歯部23が形成されている。
【0021】
等速ジョイント12は、駆動軸32の一端に連結された内輪25と、内輪25の径方向外方に配設された外輪26と、これら内・外輪25,26の間に配設された複数のボール27と、このボール27を保持する保持器28とを備えて構成されている。外輪26は、椀形状の外輪筒部29と、外輪筒部29の端面の中心部から突設された外輪軸部30とを備え、外輪軸部30には軸方向に沿って雌ネジ30aが形成されている。この雌ネジ30aに、キャップボルト31に形成された雄ネジ31aが螺合されることによって、ハブユニット11と等速ジョイント12とが接続されている。
【0022】
ハブ軸15におけるかしめ部22の端面に対向する外輪筒部29の端面には、スプライン歯部33が形成され、かしめ部22のスプライン歯部23と外輪筒部29のスプライン歯部33とが動力伝達可能に噛み合っている。したがって、駆動軸32の回転動力は等速ジョイント12を介してハブユニット11に伝達される。
【0023】
上述のように、ハブユニット11には、ハブ軸15に内輪部材16を固定するためのかしめ部22が設けられているが、このかしめ部22に対しては、割れや傷の有無を調べるための探傷検査が行われる。また、本実施の形態のようにかしめ部22の軸方向端面にスプライン歯部23が形成されているハブユニット11においては、かしめ部22の外周面に対して割れ等が発生しやすくなっており、この外周面に対して探傷検査を行うことが求められる。しかし、かしめ部22の外周面の径寸法は、製品毎にバラツキが生じやすく、当該外周面と探傷センサとの間隔を一定に設定する作業が煩雑となる。
【0024】
本実施の形態の探傷検査装置は、このようなかしめ部22の外周面の径寸法のバラツキに対応して探傷センサの位置を容易に設定することが可能な構成を有している。以下、探傷検査装置の詳細について説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施の形態に係る探傷検査装置の側面図、図2は、探傷検査装置の正面図、図3は、探傷検査装置の背面図、図4は、探傷検査装置の底面図、図5は、図3のV−V矢視断面図である。なお、以下の説明においては、図1の左右方向を前後方向とし、図1の紙面貫通方向を左右方向とする。
この探傷検査装置35は、装置本体部36と、この装置本体部36に取り付けられ、探傷センサである渦流センサ37を支持するセンサ支持部38と、このハブユニット11のかしめ部22に対する渦流センサ37の位置決めをなす位置決め部39とから主に構成されている。
【0026】
図1に示すように、装置本体部36は、図示しない駆動装置により上下方向及び前後方向(図1における左右方向)に移動可能に設けられている。装置本体部36の下部には、前後方向のレール40が設けられ、このレール40に対してセンサ支持部38が前後方向に移動可能に設けられている。
【0027】
装置本体部36の後端部には、センサ支持部38の前後方向の移動を規制して固定する固定機構(固定手段)42が設けられている。固定機構42は、図3及び図5に示すように、上下方向に移動するロッド43を有する第1シリンダ44と、ロッド43の先端に取り付けられたストッパ部材45とを有している。第1シリンダ44は、空気圧や油圧などの流体圧によって作動する。また、装置本体部36には、ストッパ部材45の下方に対向して配置されたストッパ受け部46が設けられている。そして、ストッパ受け部46には、センサ支持部38に設けられた固定板47が載置され、ストッパ部材45を下方に移動させてストッパ部材45とストッパ受け部46との間に固定板47を挟み込む(クランプする)ことによって、センサ支持部38の前後方向の移動が規制される。
【0028】
図1及び図2に示すように、装置本体部36の左右方向の一側部には、取付ブラケット49を介してマイクロメータ(測定具)50が取り付けられている。このマイクロメータ50は、ネジ機構を内蔵したものであり、摘みを回転させることによって測定子52を伸縮させ、摘みの回転量を測定子52の伸縮量に換算して微小な寸法を計測するものである。本実施の形態のマイクロメータ50は、測定子52が前後方向に伸縮するように装置本体部36に取り付けられている。
【0029】
図5に示すように、センサ支持部38は、前側部材54と、後側部材55と、これらを接続する第2シリンダ56とを有している。前側部材54は、前後方向に延びる主部57と、この主部57の後端部から下方に延びる副部58とから側面視で略逆L字形状を呈している。主部57の上面には、レール40に前後方向移動可能に嵌合するガイドシュー59が設けられている。また、副部58の下部には、取付具60を介して渦流センサ37が前方へ向けて突出するように取り付けられている。また、図1及び図4に示すように、副部58の左右方向の一側部には、マイクロメータ50の測定子52の先端が当接する当て止め部材61が固定されている。
【0030】
図5に示すように、前側部材54における副部58の後端面には、第2シリンダ56のシリンダ本体63の先端面が取り付けられている。第2シリンダ56は、空気圧や油圧などの流体圧によって作動するものであり、シリンダ本体63と、このシリンダ本体63を前後方向に貫通すると共に前後方向に移動するロッド64とを有している。ロッド64の前部側は、副部58を前後方向に貫通している。
【0031】
第2シリンダ56のロッド64の先端部には、位置決め部39を構成する間隔設定部材66が固定されている。この間隔設定部材66は、図4に示すように、ハブユニット11のかしめ部22の外周面に当接する2個の当接部67を備えている。2個の当接部67は、ハブユニット11の軸心回りに約90度の間隔(180度未満の角度)をあけて配置されている。そして、渦流センサ37は、2個の当接部67の略中央に配置されている。第2シリンダ56のロッド64に間隔設定部材66が設けられているのに対して、渦流センサ37は、前側部材54の副部58に取り付けられているため、両者はロッド64の前後移動によって相対的に前後移動可能とされている。本実施の形態では、2個の当接部67をかしめ部22の外周面に当接することによって、かしめ部22の外周面と渦流センサ37の先端面との間隔sを所定の値に設定する。
【0032】
図4及び図5に示すように、センサ支持部38における後側部材55は、第2シリンダ56の後端面に取り付けられている。第2シリンダ56のロッド64の後部側は後側部材55を貫通している。後側部材55の上端部には、前述の固定板47がボルト等により固定され、この固定板47は、後側部材55から後方へ突出している。
【0033】
後側部材55から後方へ突出するロッド64の後端部には、支持部材70が下方突出状に設けられ、この支持部材70には、ボルトよりなる調整具71が取り付けられている。この調整具71は、支持部材70を前後方向に貫通するように螺合され、ロックナット72によって螺合位置が固定される。調整具71の前端は、後側部材55に取り付けられた受けボルト(受け部材)73に当接している。この調整具71を回して前後方向に移動させることにより、調整具71の前端と受けボルト73との隙間を調整し、第2シリンダ56のロッド64が前後方向に移動可能な量(ストローク量)を調整することができる。
【0034】
図5に示すように、装置本体部36の後端部には、下方に突出する後バネ受け部75が設けられ、センサ支持部38における後側部材55の後面には、前バネ受け部76が設けられており、前後のバネ受け部75,76の間には圧縮コイルバネからなる付勢部材(付勢手段)77が介装されている。この付勢部材77によってセンサ支持部38が前方へ付勢されている。また、付勢部材77による付勢力は、後バネ受け部75に設けられた調整ネジ78によって調整可能とされている。
【0035】
(探傷検査装置35による探傷検査方法)
次に、上述の探傷検査装置35を使用した探傷検査の方法を、特に、検査対象物であるハブユニット11のかしめ部22に対して渦流センサ37が所定の間隔s(図4参照)をあけて配置されるように、渦流センサ37の位置を初期設定する方法を中心に説明する。なお、以下の説明では、かしめ部22と渦流センサ37との間隔を0.3〜0.4mmに設定するものとする。これに対して、かしめ部22の外周面の径寸法のバラツキは、半径0.5mm程度(直径1mm程度)である。
【0036】
まず、渦流センサ37の位置を初期設定する前の状態において、探傷検査装置35の装置本体部36は、後方に移動させてハブユニット11から離反した位置に配置しておく。また、センサ支持部38は、装置本体部36に対して後方に移動させた状態とする。この後方への移動は、マイクロメータ50の測定子52を後方へ最大に伸張させることによって行う。
【0037】
次いで、調整具71を回して第2シリンダ56のロッド64のストローク量を所定に設定する。ここでは、最終的なかしめ部22と渦流センサ37との間隔sである0.3〜0.4mmよりも若干大きい1mmに設定する。その後、装置本体部36をハブユニット11側へ前進させる。現段階では、装置本体部36を前進させただけでは、渦流センサ37や間隔設定部材66はハブユニット11には接触しない。
【0038】
次いで、マイクロメータ50の摘みを操作して測定子52を収縮させていき、付勢部材77の付勢力によってセンサ支持部38を前方へ移動させ、渦流センサ37の前端をかしめ部22の外周面に当接させる。
そして、マイクロメータ50の摘みを逆に操作して測定子52を伸張させ、渦流センサ37とかしめ部22の外周面との間隔が0.3〜0.4mmとなるように調整する。
【0039】
次いで、ロッド64を前方へ移動させるように第2シリンダ56を作動させる。このとき、ロッド64のストローク量は調整具71によって予め1mm程度に設定されているが、この調整具71を徐々に緩める(後方へ相対移動させる)ことにより、ロッド64の前方へのストローク量を大きくしていき、かしめ部22の外周面に間隔設定部材66の当接部67を当接させる。この操作により、かしめ部22の外周面を基準とする間隔設定部材66と渦流センサ37との相対位置、すなわち、かしめ部22の外周面に間隔設定部材66の当接部67を当接させたときの、かしめ部22の外周面と渦流センサ37との間隔sが調整されることになる。したがって、調整具71は、かしめ部22の外周面を基準とする間隔設定部材66と渦流センサ37との相対位置を調整する調整手段を構成する。
【0040】
次いで、調整ネジ78の螺合量を調整して付勢部材77の付勢力を所定に設定する。その後、マイクロメータ50の測定子52を収縮させ、測定子52の先端を当て止め部材61から2〜3mm程度離す。これにより、間隔設定部材66の当接部67が一定の付勢力でかしめ部22の外周面に押し付けられる。この段階で、渦流センサ37が間隔設定部材66によってかしめ部22に対して0.3〜0.4mm離れた位置で位置決めされることになる。
【0041】
その後、第1シリンダ44のロッド43を下方に移動させて、ストッパ部材45とストッパ受け部46の間に固定板47を挟持し、センサ支持部38の前後方向の移動を規制する。この操作で渦流センサ37の位置が固定される。
【0042】
次いで、ロッド64を後方へ移動させるように第2シリンダ56を作動し、間隔設定部材66の当接部67をかしめ部22の外周面から離反させる。したがって、第2シリンダ56は、間隔設定部材66の当接部67をかしめ部22の外周面から離反させる方向へ移動させる移動手段を構成している。
以上の操作により、渦流センサ37とかしめ部22との間隔sが所定に設定されるとともに、間隔設定部材66の当接部67がかしめ部22から離反される。
【0043】
その後、ハブユニット11を60〜100rpmの回転速度で数秒間回転させ、その間の渦流センサ37の検出値を読み取ることで、ハブユニット11のかしめ部22における傷や割れの有無を検査する。この際、渦流センサ37は、かしめ部22の外周面から一定の間隔sをあけて配置され、間隔設定部材66の当接部67は、かしめ部22の外周面から離反されているので、当接部67がかしめ部22の外周面に接触することに伴うノイズの発生を防止することができ、より正確な探傷検査を行うことができる。
また、間隔設定部材66の当接部67をかしめ部22から離反させているので、当該当接部67がハブユニット11の回転の抵抗となったり、かしめ部22に新たな傷が生じたりすることも防止することができる。
【0044】
続けて同種の製品について探傷検査を行う場合には、上述の初期設定を改めて行う必要はなく、装置本体部36を後方へ移動させてハブユニット11から離反させた状態で、固定機構42(第1シリンダ44)によるセンサ支持部38の固定を解除する。そして、装置本体部36を前方へ移動させてハブユニット11に接近させ、第2シリンダ56のロッド64を、調整具71により調整されたストローク量だけ前方へ移動させて間隔設定部材66の当接部67と渦流センサ37とを所定の配置関係に戻す。これにより、間隔設定部材66の当接部67は付勢部材77によって一定の付勢力でかしめ部22の外周面に当接され、当該外周面と渦流センサ37との間隔sも適切に設定される。したがって、次回以降の検査についても正確に行うことができ、全体として安定した検査結果を得ることができる。
【0045】
かしめ部22の外周径が異なるような異種類のハブユニット11に対しては、上記の初期設定を改めて行うことによって、正確な探傷検査を行うことができる。
【0046】
本発明は、上記実施の形態に限定されることなく適宜設計変更可能である。
例えば、装置本体部36に対してセンサ支持部38の前後移動を固定する構成として、第1シリンダ44を用いてセンサ支持部38の固定板47をクランプする構成を採用しているが、これに限られるものではなく、センサ支持部38の前方移動を規制するストッパ(ブレーキ)等を備えた構成を採用してもよい。
また、間隔設定部材66を前後に移動させるための第2シリンダ56に代えて、リニアアクチュエータ等の直線移動が可能なアクチュエータを使用することができる。
【0047】
また、上記実施の形態では、間隔設定部材66をかしめ部22の外周面から離反させた状態で渦流センサ37により探傷検査を行っているが、間隔設定部材66をかしめ部22に当接された状態で探傷検査を行うことも可能である。
探傷センサとしては、渦流センサ37の他、かしめ部22の外周面に対して間隔をあけて傷や割れの検出を行うことができるあらゆるセンサを採用することができる。
本発明の探傷検査装置は、ハブユニットのかしめ部にスプライン歯部が形成されていないものについても適用することができる。
【符号の説明】
【0048】
11:ハブユニット、12:等速ジョイント、14:小径部、15:ハブ軸、16:内輪部材、22:かしめ部、23:スプライン歯部、35:探傷検査装置、37:渦流センサ、38:センサ支持部、39:位置決め部、42:固定機構(固定手段)、44:第1シリンダ、56:第2シリンダ(移動手段)、66:間隔設定部材、67:当接部、71:調整具(調整手段)、77:付勢部材(付勢手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハブユニットの内輪部材をハブ軸に固定するためのかしめ部における外周面の探傷検査を行う探傷検査装置であって、
探傷センサと、
前記かしめ部の外周面に当接することによって、前記探傷センサとかしめ部の外周面との間隔を所定値に設定する間隔設定部材と、
前記探傷センサと前記かしめ部の外周面との間隔を所定値に保った状態で当該探傷センサの位置を固定する固定手段と、
を備えているハブユニットの探傷検査装置。
【請求項2】
前記固定手段によって前記探傷センサの位置を固定したまま、前記間隔設定部材を前記かしめ部の外周面から離反する方向へ移動させる移動手段をさらに備えている請求項1に記載のハブユニットの探傷検査装置。
【請求項3】
ハブユニットの内輪部材をハブ軸に固定するためのかしめ部における外周面の探傷検査を行う探傷検査装置であって、
探傷センサと、
前記探傷センサを支持するとともに、当該探傷センサを前記かしめ部の外周面に対して近接させる方向及び離反させる方向へ移動可能なセンサ支持部と、
このセンサ支持部に対して設けられ、かつ前記探傷センサを前記かしめ部の外周面に接近させたときに、当該外周面に当接することによって当該外周面と前記探傷センサとの間隔を所定値に設定する間隔設定部材と、
前記探傷センサと前記かしめ部の外周面との前記間隔を所定値に保ったまま、前記センサ支持部の位置を固定する固定手段と、
前記固定手段によって前記センサ支持部の位置を固定した状態で、前記間隔設定部材を前記かしめ部の外周面から離反させる方向へ移動させる移動手段と、を備えていることを特徴とするハブユニットの探傷検査装置。
【請求項4】
前記かしめ部の外周面を基準とする前記間隔設定部材と前記探傷センサとの相対位置を調整する調整手段を備えている請求項1〜3のいずれか1項に記載のハブユニットの探傷検査装置。
【請求項5】
前記間隔設定部材を前記かしめ部の外周面に当接させたときに、所定の当接圧を付与する付勢手段をさらに備えている請求項1〜4のいずれか1項に記載のハブユニットの探傷検査装置。
【請求項6】
前記間隔設定部材は、前記探傷センサを間に挟んで周方向の2箇所で前記かしめ部の外周面に当接する少なくとも2つの当接部を有している請求項1〜5のいずれか1項に記載のハブユニットの探傷検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−149978(P2012−149978A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8503(P2011−8503)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】