説明

ハロゲン化安息香酸誘導体の製造方法

本発明は、式で示される3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチル安息香酸又はその塩の製造方法を含む。3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチル安息香酸又はその塩は、薬学的又は農芸化学的活性薬剤を調製するための多用途な中間体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式
【0002】
【化1】


で示される3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチル安息香酸又はその塩の製造方法を含む。3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチル安息香酸又はその塩は、薬学的又は農芸化学的活性薬剤を調製するための多用途な中間体である(DE A1 3935934)。
【0003】
DE A1 3935934は、tert−ブチルリチウム/ペンタンを用いた1,3−ジクロロ−2−フルオロ−(トリフルオロメチル)ベンゼンの変換及びそれに続く二酸化炭素処理を含む、3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチル安息香酸の製造を開示している。当技術分野で公知のこの合成は、−78℃の低温で腐食性化学物質を使用するという悩みがあることから、規模変更の問題が生まれる。
【0004】
したがって、本発明の目的は、当技術分野で公知の方法による公知の欠点を克服することのできる方法であって、技術的規模で行うことのできる方法を見出すことであった。
【0005】
下記に概略を述べるような本発明の方法を用いて、その目標に到達できることが見出された。
【0006】

【0007】
【化2】


で示される3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチル安息香酸又はその塩の製造方法は、式
【0008】
【化3】


で示される3−クロロ−4−フルオロ−ベンゾトリフルオリドの変換を含む。
【0009】
3−クロロ−4−フルオロ−ベンゾトリフルオリド出発化合物は、市販されているか、又は米国特許第4469893号(1984)又は国際公開公報第1997024318号(1997)により調製することができる。
【0010】
本発明のさらなる実施態様では、その変換は、
)有機金属塩基で3−クロロ−4−フルオロ−ベンゾトリフルオリドを脱プロトン化し、続いて、有機溶媒中で反応温度−100℃〜25℃で求電子剤としてCOを添加すること、
又は
)有機溶媒中で、反応温度20℃〜100℃でハロゲン化アルキルマグネシウム又はハロゲン化アリールマグネシウムを用いて3−クロロ−4−フルオロ−ベンゾトリフルオリドのグリニャール化合物を生成し、続いて、有機溶媒中で、反応温度−100℃〜25℃で求電子剤としてCOを添加すること
のいずれかにより行われる。
【0011】
本明細書において本発明を説明するために使用される様々な用語の意味及び範囲を例示及び定義するために、以下の定義を示す。
【0012】
「アルキル」という用語は、1〜6個の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子の分岐又は直鎖の一価飽和脂肪族炭化水素基に関する。この用語は、さらに、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル及びペンチル又はヘキシル並びにその異性体としての基により例示される。
【0013】
「アリール」という用語は、フェニル又はナフチル基、好ましくはフェニル基に関し、それらの基は、場合によりハロゲン、ヒドロキシ、CN、ハロゲン−C1−6−アルキル、NO、NH、N(H,アルキル)、N(アルキル)、カルボキシ、アミノカルボニル、アルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、C1−6−アルキルスルホニル、SO−アリール、SOH、SO−アルキル、SO−NR’R”、アリール及び/又はアリールオキシによりモノ−、ジ−、トリ−置換又は多置換され得る。好ましいアリール基はフェニルである。
【0014】
工程a
工程a)における脱プロトン化に適した有機金属塩基は、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリチウムなどのリチウム塩基又はアルカリ金属アミンより選択することができる。より好ましいのは、n−ブチルリチウム又はリチウムジイソプロピルアミドであり、さらにより好ましいのはn−ブチルリチウムである。「アルカリ金属アミン」という用語は、本明細書において定義されるようなアルカリ金属により置換された第二級アミンを表す。「アルカリ金属アミン」は、使用前にその場若しくは他の場(ex situ)のいずれかで、当業者に周知の合成経路に従って調製されるか、又は市販されているかのいずれかである。使用される最も好ましいアルカリ金属はリチウムである。アルカリ金属アミンの例には、ジシクロヘキシルアミン、ジイソプロピルアミン、テトラメチルピペリジン又はヘキサメチルジシラザンのリチウム付加物が含まれる。最も好ましいアルカリ金属リチウムは、リチウムジイソプロピルアミンである。「アルカリ金属」という用語には、リチウム、ナトリウム及びカリウムが含まれる。好ましいアルカリ金属は、リチウム又はナトリウムである。
【0015】
「第二級アミン」は、式(a)
【0016】
【化4】


[式中、R及びRは、同じであるか、又は異なっていてもよく、(C−C)アルキル、(C−C)シクロアルキル若しくは−Si(C−C)アルキルより独立して選択されるか、又はR及びRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、O又はNより選択される追加のヘテロ原子を場合により有する(C−C)ヘテロシクロアルカンを形成する]で示されるアミンを表す。代表的な例には、非限定的に、ピペリジン、4−メチル−ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、モルホリン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジシクロヘキシルアミン、エチルメチルアミン、エチルプロピルアミン、メチルプロピルアミン及びヘキサメチルジシラジドが含まれる。好ましくは、第二級アミンは、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジシクロヘキシルアミン、エチルメチルアミン、エチルプロピルアミン及びメチルプロピルアミンより選ばれる。
【0017】
有機金属塩基は、出発化合物3−クロロ−4−フルオロ−ベンゾトリフルオリドに対して0.9〜2.0当量の量で、好ましくは1.0〜1.5当量、さらにより好ましくは1.0〜1.1当量の量で使用することができる。
【0018】
概して脱プロトン化は、適切な有機溶媒中で、好ましくはテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、メトキシシクロペンタン、ジエチルエーテルt−ブチルメチルエーテル、若しくはジオキサンなどのエーテル中で、又はエーテルと、トルエン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン若しくはメチルシクロヘキサンなどの炭化水素との配合物中で、好ましくはテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン又はテトラヒドロフラン/ヘキサン中で行われる。
【0019】
脱プロトン化のための反応温度は、−100℃〜25℃、好ましくは−78℃〜−50℃、さらにより好ましくは−70℃〜−78℃より選択される。
【0020】
その後のCOとの反応は、COの有機溶媒溶液(概して脱プロトン化反応と同じ溶媒である)に反応混合物をゆっくりと添加することによって起こりうる。反応温度は、脱プロトン化反応のために上記で概略を述べたものと同じ範囲に保たれる。
【0021】
反応が完了すると、プロトン酸及び/又は水の添加により反応混合物を酸性化し、t−ブチルメチルエーテルなどの適切な有機溶媒を用いて水相から抽出した後に、目的生成物を単離することができる。
【0022】
プロトン酸は、少なくとも1個のプロトン(H+)を別の化合物に供与するブレンステッド酸を表す。典型的なプロトン酸には、硝酸、硫酸、リン酸、ハロゲン化水素酸などの水性鉱酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、酢酸、クエン酸などの有機酸、並びにテトラフルオロボロン酸、ヘキサフルオロリン酸、ヘキサフルオロアンチモン酸及びヘキサフルオロヒ酸などの錯酸が含まれる。好ましいプロトン酸は、クエン酸、酢酸及びHClである。
【0023】
工程b
グリニャール化合物の生成は、通常、ハロゲン化アルキルマグネシウム又はハロゲン化アリールマグネシウムを用いて、好ましくはアミン塩基、好ましくは第二級アミンの存在下で、20℃〜100℃、好ましくは20℃〜60℃の反応温度を適用して行われる。
【0024】
適切な第二級アミンは、工程aに挙げられている。好ましい第二級アミンはジイソプロピルアミンである。
【0025】
ハロゲン化アルキルマグネシウム又はハロゲン化アリールマグネシウムの代表的な例には、非限定的に、臭化エチルマグネシウム、臭化メチルマグネシウム、塩化メチルマグネシウム、ヨウ化メチルマグネシウム、塩化プロピルマグネシウム、塩化イソプロピルマグネシウム、塩化sec−ブチルマグネシウム、塩化sec−ブチルマグネシウム、塩化tert−ブチルマグネシウム、塩化アリルマグネシウム、臭化アリルマグネシウム、臭化ビニルマグネシウム、塩化シクロペンチルマグネシウム、塩化ヘキシルマグネシウム、塩化ベンジルマグネシウム、臭化フェニルマグネシウム、塩化フェニルマグネシウム、臭化p−トルイルマグネシウム、臭化メシルマグネシウムが含まれる。好ましいハロゲン化アルキルマグネシウムは、臭化エチルマグネシウムである。
【0026】
脱プロトン化について提案されたものと同じ溶媒をグリニャール化合物の生成のために使用してもよい。好ましい溶媒はテトラヒドロフランである。
【0027】
その後のCOとの反応は、COの有機溶媒溶液(概して脱プロトン化反応と同じ溶媒)に反応混合物をゆっくりと添加することによって起こりうる。
【0028】
反応温度は、−100℃〜25℃、好ましくは−78℃〜−50℃、さらにより好ましくは−70℃〜−78℃から選択される。
【0029】
反応が完了すると、プロトン酸(例えばHCl水溶液)及び/又は水で反応混合物を酸性化し、t−ブチルメチルエーテルなどの適切な有機溶媒を用いて水相から抽出した後に、目的生成物を単離することができる。
【0030】
本発明のさらなる実施態様では、その変換は、
)式IIで示される3−クロロ−4−フルオロ−ベンゾトリフルオリドを式
【0031】
【化5】


で示される3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチルベンズアルデヒドに変換すること
及び
)酸化剤で3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチルベンズアルデヒドを酸化して、式Iで示される3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチル安息香酸又はその塩を生成すること
によって行われる。
【0032】
工程a
式IIIで示される3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチルベンズアルデヒドへの変換は、通常、3−クロロ−4−フルオロ−ベンゾトリフルオリドを有機金属塩基で脱プロトン化することに続いて、有機溶媒中で、反応温度−100℃〜25℃でN,N−ジアルキルホルムアミド、N,N−ジアリールホルムアミド又はN−アルコキシ−N−アルキルホルムアミドより選択される求電子剤を添加することによって行われる。
【0033】
工程aについて上記で概略を述べたように脱プロトン化反応を行うことができる。
【0034】
概して求電子剤の添加は、脱プロトン化反応について記載したものと同じ温度で、そして同じ溶媒中で起こることができる。通常、求電子剤は、出発化合物1.0当量に対して0.9〜5.0当量、好ましくは1.0〜1.5当量、さらにより好ましくは1.0〜1.1当量の量で添加される。
【0035】
N,N−ジアルキルホルムアミド又はN,N−ジアリールホルムアミドの代表的な例には、非限定的に、N,N−ジフェニルホルムアミド、N−メチルホルムアニリド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジブチルホルムアミド、1−ホルミルピペラジン、1,4−ジホルミルピペラジン、N−メチルモルホリン、N−メチル−N−(2−ピリジル)−ホルムアミド、N−メチルピペリジン、N,N−ジイソプロピルホルムアミド、2−メトキシ−1−ホルミル−ピペリジン、N,N−ジアリルホルムアミド、N,N−ジ−n−プロピル−ホルムアミド、N,N−ジベンジルホルムアミド、1−ホルミル−ピロリジンが含まれる。
【0036】
N−アルコキシ−N−アルキルホルムアミドの代表的な例には、非限定的に、N−メトキシ−N−メチルホルムアミド、N−ベンジルオキシ−N−メチルホルムアミド又はN−エトキシ−N−メチルホルムアミドが含まれる。好ましい求電子剤は、N,N−ジメチルホルムアミドである。
【0037】
通常、脱プロトン化後、及び求電子剤の添加後に、クエンチング剤としてプロトン酸を添加する。
【0038】
プロトン酸は、別の化合物に少なくとも1個のプロトン(H+)を供与するブレンステッド酸を表す。典型的なプロトン酸には、硝酸、硫酸、リン酸、ハロゲン化水素酸などの水性鉱酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、酢酸、クエン酸などの有機酸、並びにテトラフルオロボロン酸、ヘキサフルオロリン酸、ヘキサフルオロアンチモン酸及びヘキサフルオロヒ酸などの錯酸が含まれる。好ましいプロトン酸は、クエン酸、酢酸及び硫酸である。
【0039】
概してクエンチングは、−78℃〜25℃の温度で行われる。
【0040】
式IIIで示される3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチルベンズアルデヒドは、当業者に公知の方法を使用して、例えばt−ブチルメチルエーテル、CHCl又はトルエンなどの適切な有機溶媒で水相から抽出し、続いて溶媒を除去することにより、単離することができる。
【0041】
好ましい実施態様では、式IIIで示される3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチルベンズアルデヒドは、トルエンを用いて反応混合物水溶液から抽出される。次に、濃縮されたトルエン相は、アルデヒドを単離せずに、工程bにおいて酸化に使用することができる。
【0042】
工程b
酸化剤は、酸素原子を移動させることのできる、アルカリ又はアルカリ土類の次亜塩素酸塩、次亜臭素酸塩、亜塩素酸塩、塩素酸塩、過硫酸塩又は過マンガン酸塩などの化合物より選択される。一般的には、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、塩素酸ナトリウム、塩素酸カルシウム、ペルオキシ一硫酸カリウム(Oxone(登録商標))又は過マンガン酸カリウムが代表として挙げられる。好ましくは、次亜塩素酸ナトリウム又は次亜臭素酸ナトリウム又は次亜臭素酸カリウムを使用することができ、後者の二つは、水酸化ナトリウム若しくは水酸化カリウム水溶液に臭素を添加すること、又は次亜塩素酸ナトリウムの塩基性水溶液に臭化ナトリウム若しくは臭化カリウムを添加することによって、その場で製造することができる。最も好ましい酸化剤は、次亜塩素酸ナトリウムと臭化カリウムの組み合わせである。
【0043】
さらに好ましい実施態様では、その反応は、水性水酸化アルカリ塩基、好ましくは水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの存在下で、さらにより好ましくは水酸化ナトリウムの存在下で行われる。
【0044】
臭化アルカリ及び/又はTEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシ)より選択される添加物を使用することができ、臭化ナトリウム又は臭化カリウムが好ましく、臭化カリウムが、最も好ましい添加物である。
【0045】
酸化は、水、及び水と適切な有機溶媒との、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、トルエン、CHClとの、又はこれらの有機溶媒の混合物との混合物より選択される水性溶媒中で行うことができる。好ましくは、酸化は、水中で、又は水とトルエンとの混合物中で行われる。
【0046】
クエンチング剤、例えば水性亜硫酸ナトリウムを、酸化反応に続いて添加してもよい。
【0047】
概して反応温度は、10℃〜100℃、好ましくは10℃〜60℃、さらに好ましくは20℃〜50℃より選ばれる。
【0048】
式Iで示される3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチル安息香酸の単離は、好ましくは、トルエンを用いて反応混合物(pH>11に調整)から有機不純物を分離すること、生成物を含有する水相をpH<2に酸性化すること、及びトルエンを用いて水相から生成物を抽出することにより起こりうる。
【0049】
本発明の好ましい実施態様では、単離した生成物は、さらに、シクロヘキサン、ヘプタン、メチルシクロヘキサン又はその混合物で結晶化することにより精製することができる。
【0050】
本発明のさらなる実施態様では、変換は、
)式IIで示される3−クロロ−4−フルオロ−ベンゾトリフルオリドを、式
【0051】
【化6】


[式中、Mはアルカリ金属原子である]
で示されるアルカリ(3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチル−フェニル)−ヒドロキシ−メタンスルホネートに変換すること;
)式IVで示されるアルカリ(3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチル−フェニル)−ヒドロキシ−メタンスルホネートを、式
【0052】
【化7】


で示される3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチルベンズアルデヒドに変換すること、及び
)式IIIで示される3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチルベンズアルデヒドを酸化剤で酸化して、式Iで示される3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチル安息香酸又はその塩を生成すること
によって行うことができる。
【0053】
工程a
工程aは、
)有機金属塩基を用いて3−クロロ−4−フルオロ−ベンゾトリフルオリドを脱プロトン化すること、続いて
)有機溶媒中で、反応温度−100℃〜25℃でN,N−ジアルキルホルムアミド、N,N−ジアリールホルムアミド又はN−アルコキシ−N−アルキルホルムアミドより選択される求電子剤を添加すること、
)クエンチング剤としてプロトン酸を添加すること、及び最終的に
)アルカリピロ亜硫酸塩又はアルカリ亜硫酸水素塩水溶液で、式IVで示されるアルカリ(3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチル−フェニル)−ヒドロキシ−メタンスルホネートを生成すること
による、式IIで示される3−クロロ−4−フルオロ−ベンゾ−トリフルオリドから式IVで示されるアルカリ(3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチル−フェニル)−ヒドロキシ−メタンスルホネートへの変換を含む。
【0054】
脱プロトン化工程、求電子剤の添加及びクエンチング工程は、工程aについて上記に概略を述べたように行うことができる。
【0055】
工程dにおいて式IVで示されるアルカリ(3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチル−フェニル)−ヒドロキシ−メタンスルホネートを生成するために、通常、ピロ亜硫酸ナトリウム水溶液を使用する。概して変換は、トルエンなどの適切な有機溶媒中で、反応温度0℃〜50℃で行われる。
【0056】
反応が完了すると、工程dの生成物は、反応混合物の濾過により単離することができる。
【0057】
工程b
式IVで示されるアルカリ(3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチル−フェニル)−ヒドロキシ−メタンスルホネートから式IIIで示される3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチルベンズアルデヒドへの変換は、水性水酸化アルカリ塩基を用いて、好ましくは水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを用いて、さらにより好ましくは水酸化ナトリウムを用いて行われる。
【0058】
概して変換は、塩化メチレン、トルエン又はTBMEなどの適切な水不混和性の有機溶媒の存在下で、反応温度−20℃〜40℃で行われる。
【0059】
得られた、式IIIで示される3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチルベンズアルデヒドは、溶媒を除去することにより有機相から分離することができる。
【0060】
工程c
式IIIで示される3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチルベンズアルデヒドから式Iで示される3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチル安息香酸又はその塩への酸化は、上記工程bについて概略を述べたように実施することができる。
【0061】
本発明の好ましい実施態様では、単離された生成物は、さらに、シクロヘキサン、ヘプタン、メチルシクロヘキサン又はその混合物で結晶化することにより精製することができる。
【0062】
以下の実施例は、本発明を限定することなく本発明を例示するものである。
【0063】
実施例
実施例1.1:
3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチル−ベンズアルデヒドの合成
【0064】
【化8】

【0065】
THF(400ml)中の3−クロロ−4−フルオロ−ベンゾトリフルオリド(59.9g、301.7mmol)の溶液に、−78℃で、n−BuLi(135.5g、309.7mmol、1.03当量)を、約30分間かけて滴下した。清澄な黄色の溶液を、−78℃で30分間撹拌し、THF(107ml)中のDMF(24.5g、334.5mmol、1.11当量)の溶液を、内部温度が−70℃未満にとどまるように滴下した。明黄色の反応混合物を、−78℃で1時間撹拌し、次に0℃に温めた。この温度で、クエン酸水溶液(600ml、15%)を加えて、反応混合物をクエンチした。この混合物に、トルエン(300ml)を加え;有機相を分離し、水(200ml)で洗浄し、一方、水相をトルエン(300ml)で洗浄した。合わせた有機相を、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で約450mlの体積に濃縮した。この溶液に、水(200ml)中のピロ亜硫酸ナトリウム(66.4g、331.8mmol、1.10当量)の溶液を加えると、白色の沈殿物が生じた。白色の懸濁液を一晩撹拌した;沈殿物を濾別し、トルエン(200ml)で洗浄し、そして減圧下(<50mbar)で3時間乾燥させて、亜硫酸水素塩中間体(110g、収率110%)を得た。得られた中間体をCHCl(350ml)に取り、NaOH(2M)溶液(310ml、620mmol、2.06当量)で処理し、二相混合物を2時間撹拌した。相を分離し、有機相を水(200ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧下で除去して、標記化合物を無色の油状物(52.7g、収率77.1%)として得た。MS(EI):m/z 225 ([M-H]+, 100%). 1H-NMR (CDCl3, 300 MHz): δ 10.38 (s, 1 H), 8.07 (dd, 1H), 7.94 (dd, 1H)
【0066】
実施例1.2:
3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチル−ベンズアルデヒドの合成:蒸留による単離
【0067】
【化9】

【0068】
THF(40ml)中の3−クロロ−4−フルオロ−ベンゾトリフルオリド(5.0g、25.18mmol)の溶液に、−78℃で、n−BuLi(16.5ml、26.44mmol、1.05当量)を、約30分間かけて滴下した。清澄な黄色の溶液を、−78℃で20分間撹拌し、次に、THF(75ml)中のDMF(2.14ml、27.7mmol、1.1当量)の予冷した(−78℃)溶液に、内部温度が−65℃未満にとどまるように、カニューレで滴下して移した。明黄色の反応混合物を、−78℃で1時間撹拌し、次に0℃に温めた。この温度で、水(50ml)中のクエン酸(14.54g、75.55mmol、3当量)の溶液を加えて、反応混合物をクエンチした。有機相を分離し、水(50ml)で洗浄し、一方、水相を、TBME(50ml)で洗浄した。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で除去して、粗標記化合物を黄色の油状物として、白色の沈殿物と共に得た(6.8g、収率119.2%)。粗生成物を蒸留(Kugelrohr、110〜120℃、1mbar)して、標記化合物を無色の油状物(4.52g、収率71.9%)として得た。
【0069】
実施例2.1:
ナトリウム(3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチル−フェニル)−ヒドロキシ−メタンスルホナートの合成:Li塩へのDMFの添加
【0070】
【化10】

【0071】
THF(200ml)中の3−クロロ−4−フルオロ−ベンゾトリフルオリド(20.0g、100.7mmol)の溶液に、−78℃で、n−BuLi(ヘキサン中1.6M、66.1ml、105.7mmol、1.05当量)を、約20分間かけて加えた。清澄な黄色の溶液を、−78℃で30分間撹拌し、THF(100ml)中のDMF(8.54ml、110.8mmol、1.1当量)の溶液を、内部温度が−70℃未満にとどまるように滴下した。明黄色の反応混合物を、−78℃で3時間撹拌し、次に0℃に温めた。この温度で、水(400ml)中のクエン酸(58.13g、302.1mmol、3.0当量)の溶液を加えて、温度を5℃未満に維持しつつ反応混合物をクエンチした。有機相を分離し、水(300ml)で洗浄し、一方、水相を、TBME(300ml)で洗浄した。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧下で除去し、残渣をトルエン(200ml)で処理すると、白色の沈殿物が生じた。懸濁液を15分間撹拌し、沈殿物を濾別し、母液を、水(60ml)中のピロ亜硫酸ナトリウム(21.68g、111.8mmol、1.11当量)の溶液を滴下して処理すると、白色の懸濁液が得られた。懸濁液を一晩(約15時間)撹拌し、沈殿物を濾別し、トルエン(100ml)で洗浄し、減圧下で乾燥させて、標記化合物をオフホワイトの結晶質化合物(32.54g、収率97.7%)として得た。MS(EI): m/z 306.9 ([M-H]-, 100 %). 1H-NMR (DMSO, 300 MHz): δ 8.00-7.85 (m, 2 H), 6.58 (d, 1 H), 5.31 (d, 1H)
【0072】
実施例2.2:
ナトリウム(3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチル−フェニル)−ヒドロキシ−メタンスルホナートの合成:予冷したDMF溶液へのLi塩の添加
【0073】
【化11】

【0074】
THF(40ml)中の3−クロロ−4−フルオロ−ベンゾトリフルオリド(5.0g、25.18mmol)の溶液に、−78℃で、n−BuLi(ヘキサン中1.6M、16.53ml、26.45mmol、1.05当量)を、約20分間かけて加えた。清澄な黄色の溶液を、−78℃で15分間撹拌し、次に、THF(100ml)中のDMF(2.14ml、27.7mmol、1.1当量)の予冷した(−78℃)溶液に、内部温度が−65℃未満にとどまるように、カニューレで滴下して移した。明黄色の反応混合物を、−78℃で2時間撹拌し、次に0℃に温め、酢酸(4.32g、75.54mmol、3.0当量)及び水(50ml)を加えて、温度を5℃未満に維持しつつ、クエンチした。濁った明黄色の懸濁液を2時間撹拌し、フリットディスク付吸引漏斗で沈殿物を濾別し、フィルターケーキをTBME(30ml)で洗浄した。有機相を分離し、水(50ml)で洗浄し、一方、水相をTBME(50ml)で洗浄した。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で除去し、残渣をトルエン(40ml)で処理し、水(12ml)中のピロ亜硫酸ナトリウム(5.42g、27.95mmol、1.11当量)の溶液を加えると、白色の懸濁液が得られた。懸濁液を一晩(約15時間)撹拌し、沈殿物を濾別し、トルエン(20ml)で洗浄し、減圧下で乾燥させて、標記化合物を明黄色の結晶質化合物(7.82g、収率93.9%)として得た。
【0075】
実施例3.1:
3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチル安息香酸の合成:NaOCl、KBrを用いた酸化
【0076】
【化12】

【0077】
水酸化ナトリウム溶液(32%、34.5g、276.0mmol、2.50当量)中の次亜塩素酸ナトリウム(100.3g、134.7mmol、1.22当量)及び臭化カリウム(13.5g、112.3mmol、1.02当量)の水溶液に、50℃で、3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチル−ベンズアルデヒド(25.0g、110.4mmol)を徐々に(35分間の間に)加えた。反応混合物を50℃で60分間撹拌し、周囲温度に冷まし、水(450ml)中の亜硫酸ナトリウム(60.4g、474.5mmol、4.3当量)を加えてクエンチし、清澄な黄色の溶液を得た。溶液を、HCl(25%、100ml、788.7mmol、7.14当量)で処理しpHを<2に調整した。生じた沈殿物をトルエン(300ml)で抽出し、有機相を塩化ナトリウムの溶液(5%、100ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧下で除去し、粗生成物を明黄色の固体として得た。粗生成物を熱いシクロヘキサン(125ml)に溶解し、溶液を周囲温度に冷ますと、白色の結晶が沈殿した。結晶を濾別し、シクロヘキサン(25ml)で洗浄し、減圧下で重量が安定するまで乾燥させて、標記化合物を白色の結晶(23.0g、収率85.8%)として得た。MS(EI): m/z 241.1 ([M-H]-, 100 %). 1H-NMR (DMSO, 400 MHz): δ 14.08 (br s, 1 H), 8.37-8.35 (dd, 1 H), 8.11-8.09 (dd, 1 H)
【0078】
実施例3.2:
3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチル安息香酸の合成:NaOCl、NaBrを用いた酸化
【0079】
【化13】

【0080】
水酸化ナトリウム溶液(47%、4.55ml、53.5mmol、2.50当量)及び水(12.5ml)中の次亜塩素酸ナトリウム(15.3ml、25.7mmol、1.2当量)及び臭化ナトリウム(2.6g、25.7mmol、1.2当量)の水溶液に、50℃で、3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチルベンズアルデヒド(5.0g、21.4mmol)を徐々に(25分間の間に)加えた。反応混合物を、50℃で60分間撹拌し、周囲温度に冷まし、亜硫酸ナトリウム水溶液(20%、16.2ml、25.7mmol、1.2当量)を加えてクエンチし、明濁色の懸濁液を得た。懸濁液を15分間撹拌し、HCl(37%、5.0ml、59.1mmol、2.76当量)で処理しpHを1に調整すると、白色の沈殿物が生じた。この沈殿物をトルエン(30ml)で抽出し、有機相を食塩水(30ml)で洗浄し、一方、水相をTBME(30ml)で洗浄した。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で除去して、粗生成物を明黄色の固体(5.13g、収率98.8%)として得た。粗生成物を熱いシクロヘキサン(25ml)に溶解し、溶液を周囲温度に冷ますと、白色の結晶が沈殿した。結晶を濾別し、シクロヘキサン(5ml)で洗浄し、減圧下で重量が安定するまで乾燥させて、標記化合物を白色の結晶(3.65g、収率69.6%)として得た。
【0081】
実施例3.3:
3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチル安息香酸の合成:NaOCl/NaBr及び1.5当量NaOHを用いた酸化
【0082】
【化14】

【0083】
水酸化ナトリウム溶液(47%、2.73ml、32.12mmol、1.50当量)及び水(12.5ml)中の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(15.3ml、25.7mmol、1.2当量)及び臭化ナトリウム(2.6g、25.7mmol、1.2当量)の水溶液に、50℃で、3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチル−ベンズアルデヒド(5.0g、21.4mmol)に徐々に(25分間の間に)加えた。反応混合物を、50℃で60分間撹拌し、周囲温度に冷まし、亜硫酸ナトリウム水溶液(20%、16.2ml、25.7mmol、1.2当量)を加えてクエンチして、明濁色の懸濁液を得て、1時間撹拌した。懸濁液を15分間撹拌し、HCl(37%、4.0ml、47.3mmol、2.21当量)で処理しpHを1に調整すると、白色の沈殿物が生じた。この沈殿物を、TMBE(30ml)で抽出し、有機相を食塩水(30ml)で洗浄し、一方、水相をTBME(30ml)で洗浄した。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で除去して、粗生成物を明黄色の固体(5.12g、収率98.6%)として得た。粗生成物を熱いメチルシクロヘキサン(25ml)に溶解し、溶液を周囲温度に冷ますと、白色の結晶が沈殿した。結晶をフリットディスク付吸引漏斗で濾別し、メチルシクロヘキサン(5ml)で洗浄し、減圧下で重量が安定するまで乾燥させて、標記化合物を白色の結晶(4.27g、収率81.6%)として得た。
実施例3.4:
3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチル安息香酸の合成:Br/NaOH(JRD)を用いた酸化
【0084】
【化15】

【0085】
A:ヘキサン中のn−BuLiの溶液(1.6M、6.5L、10.24mol、1.024当量)を、窒素下で、THF(10L)中の3−クロロ−4−フルオロ−ベンゾトリフルオリド(1.985kg、10mol)の撹拌した溶液に、温度を−50℃未満に維持しながら加えた。ベンゾトリフルオリドの添加完了後、得られた反応混合物を−55℃で15分間撹拌し、DMFをゆるやかな流れで加えた。添加完了後、反応混合物を15分間撹拌し、硫酸(20%、5L)を加えて加水分解した。有機層を分離し、THF/ヘキサンを減圧下で除去し、残留液体を減圧下で蒸留して、清澄な油状物を得た。この物質を、セクションBに記載するように、収率を測定することなく、安息香酸に通し入れた。
【0086】
B:次亜臭素酸ナトリウム溶液を、水(7.735L)中の水酸化ナトリウム(47%、1.933kg)の徐々に冷却した混合物に臭素(1.15kg、7.18mol)を加えることにより調製した。この溶液に、3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチル−ベンズアルデヒド(1.50kg、6.62mol)を流し加え、反応混合物を約40〜50℃に温めた。添加が完了したら、混合物をさらに15分間撹拌し、次に塩酸(36%)で酸性化すると、生成物が沈殿した。酸を濾過により回収し、フィルタープレスして可能な限り乾燥させ、次に石油エーテルを使用して共沸乾燥させた(80〜100℃)。水を除去した後、残っている石油溶液をデカントし、いくらかの無機残渣を別け、結晶化させた。生成物を濾過し、石油エーテル(40〜60℃)で十分洗浄し、真空オーブン中で乾燥させて、生成物を白色の結晶(1.5kg、3−クロロ−4−フルオロ−ベンゾトリフルオリドに基づき、収率61.8%)として得た。
【0087】
実施例3.5:
3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチル安息香酸の合成:オキソンを用いた酸化
【0088】
【化16】

【0089】
DMF(21ml)及びCHCl(21ml)中の3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチルベンズアルデヒド(4.2g、18.5mmol)の溶液に、ペルオキソ−硫酸カリウム(11.4g、18.5mmol、1.0当量)を加えると、温度が25℃から34℃に上昇した。白色の懸濁液を2時間撹拌し、白色の固体を濾別し、CHCl(25ml)でフィルターケーキを洗浄し、溶媒を減圧下で除去した。得られた残渣をTBME(50ml)に溶解し、NaOH(2M、22.7ml、45.4mmol、2.45当量)を加えてpHを14に調整した。水相を分離し、TBME(25ml)で洗浄し、一方、有機相を水(25ml)で洗浄した。合わせた水相をHCl(37%、8.4ml、5.35当量)を加えて酸性化し、TBME(50ml)で抽出した。有機相を食塩水(75ml)で3回洗浄し、一方、水相をTBME(25ml)で洗浄した。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、これを濾別し、TBME(20ml)で洗浄し、溶媒を減圧下で除去して、3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチル安息香酸を白色の固体(粗生成物4.2g、収率93.4%)として得た。粗生成物を熱いメチルシクロヘキサン(20ml)に溶解し、油浴を取り外し、懸濁液を徐々に周囲温度に冷ますと、白色の結晶が沈殿した。白色の懸濁液を氷浴で2時間撹拌し、結晶を濾別し、メチルシクロヘキサン(5ml)で洗浄し、減圧下で重量が安定するまで乾燥させて、標記化合物を白色の結晶(3.1g、収率68.9%)として得た。
実施例3.6:
3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチル安息香酸の合成:過マンガン酸カリウムを用いた酸化
【0090】
【化17】

【0091】
アセトン(15ml)及び水(3ml)中の3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチル−ベンズアルデヒド(1.0g、4.41mmol)の溶液に、過マンガン酸カリウム(0.837g、5.3mmol、1.2当量)を加え、対応する暗紫色の反応混合物を30分間撹拌し、変換を完了させた。溶媒を減圧下で除去し、暗色の懸濁液を、亜硫酸ナトリウム溶液(飽和、20ml)を加えてクエンチした。暗紫色の固体を濾別し、水(10ml)で洗浄した。濁った明褐色の母液を、HCl(25%、3ml、92.3mmol、20.9当量)で処理し、pHを1に調整しCHCl(50ml)を加えた。相を分離し、有機相を水(20ml)で洗浄し、一方、水相をCHCl(20ml)で洗浄した。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下でメチルシクロヘキサン(35ml)と交換した。濁った懸濁液を減圧下で濃縮し、白色の沈殿物を濾別し、結晶を減圧下で重量が安定するまで乾燥させて、生成物を白色の結晶(1.02g、収率93.8%)として得た。
【0092】
実施例3.7:
3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチル安息香酸の合成:脱プロトン化、求電子試薬としてCO
【0093】
【化18】

【0094】
THF100ml中のジイソプロピルアミン(19.79ml、140mmol、1.4当量)の溶液に、−78℃で、25分以内にn−BuLi(ヘキサン中1.6M、81.25ml、130mmol、1.3当量)を加え、明黄色の溶液を、−78℃で30分間撹拌し、THF100ml中の3−クロロ−4−フルオロベンゾトリフルオリド(19.86g、100mmol、1当量)の溶液を、温度を−73℃〜−76℃に維持しながら、25分以内に滴下した。得られた黄色の溶液を、−78℃で1時間撹拌し、アセトン/ドライアイス混合物で冷却した添加漏斗に移し、温度を−75℃〜−78℃に維持しながら、1時間以内に、THF100ml中のCO(44.0g、1000mmol、10当量)の冷(−78℃)混合物に加えた。その後、反応混合物を添加漏斗に移し、−4℃で15分以内にHCl(水溶液、2M、163ml)の溶液に加え、15分間撹拌し、分液漏斗に移した。相を分離後、水相をTBME(300ml)で抽出し、合わせた有機相を硫酸ナトリウム(370g)で乾燥させ、フリットディスク付吸引漏斗で濾過し、TBME(総量100ml)で洗浄し、TBMEを減圧下で除去して、明黄色の固体(粗生成物23.48g、収率96.8%)を得た。粗生成物をメチルシクロヘキサン(117ml)で処理し、予熱した油浴中で加熱還流した。5分後、褐色の清澄な溶液を得て、油浴を取り外し、反応混合物を周囲温度に冷まし、種晶(2mg)を加え、混合物を一晩周囲温度で撹拌した。17時間後、オフホワイトの懸濁液を、氷浴(0〜5℃)で2時間撹拌し、得られた結晶を濾別し、結晶を冷メチルシクロヘキサン(39ml)で洗浄し、結晶を、重量が安定するまで乾燥させて、生成物を白色の結晶(18.75g、収率77.3%)として得た。
【0095】
実施例3.8:
3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチル安息香酸の合成:グリニャール試薬、求電子試薬としてCO
【0096】
【化19】

【0097】
臭化エチルマグネシウム溶液(6.25ml、6.25mmol、1.25当量、THF中1M)及びジイソプロピルアミン(77.7μl、0.5mmol、0.1当量)の混合物に、3−クロロ−4−フルオロ−ベンゾトリフルオリド(0.99g、THF(2ml)中5mmol)を周囲温度で加え、混合物を油浴中、50℃で13時間加熱した。褐色の清澄な反応混合物を、0〜5℃に冷却し、シリンジに移し、THF(5ml)中のCO(2.2g、50mmol、10当量)の溶液に−70℃で滴下し、15分間撹拌した。褐色の懸濁液に、HCl(1M、14ml)を加え、相を分離した。水相をTBME(10ml)で抽出し、合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、TBMEで洗浄し、溶媒を減圧下で除去し、暗褐色の油状物(粗生成物0.97g)を得た。粗生成物をメチルシクロヘキサン(4.4ml)で処理し、予熱した油浴で加熱還流した。5分後、褐色の清澄な溶液を得て、油浴を取り外し、反応混合物を周囲温度に冷まし、得られた懸濁液を周囲温度で一晩撹拌した。18時間後、褐色の懸濁液を、氷浴(0〜5℃)中で2時間撹拌し、得られた結晶を濾別し、結晶を冷メチルシクロヘキサン(1.6ml)で洗浄し、その結晶を重量が安定するまで乾燥させ、生成物を白色の結晶(0.46g、収率38.2%)として得た。
【0098】
実施例3.9:
3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチル安息香酸ジシクロヘキシル−アンモニウムの合成
【0099】
【化20】

【0100】
DMF(110ml)及びCHCl(110ml)中の3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチルベンズアルデヒド(23.0g、101.5mmol)の溶液に、ペルオキソ−硫酸カリウム(62.4g、101.5mmol、1.0当量)を加えると、温度が、25℃から34℃に上昇した。白色の懸濁液を2.5時間撹拌し、白色の固体を濾別し、フィルターケーキをCHCl(50ml)で洗浄し、溶媒を減圧下で除去した。得られた残渣を、TBME(240ml)中に溶解し、NaOH(2M、101.5ml、203.0mmol、2.0当量)を加えてpHを14に調整した。水相を分離し、TBME(75ml)で洗浄し、一方、有機相を水(75ml)で洗浄した。合わせた水相を、HCl(25%、52.8ml、4.0当量)を加えて酸性化し、TBME(200ml)で抽出した。有機相を食塩水で3回洗浄し、一方、水相をTBME(100ml)で洗浄した。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、これを濾別し、TBME(50ml)で洗浄し、溶媒を減圧下で除去し、3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチル安息香酸を白色の固体(粗生成物21.35g、収率86.7%)として得た。粗生成物を熱いアセトン(200ml)に溶解し、ジシクロヘキシルジアミン(17.5ml、88mmol、1.0当量)を還流温度で加え、混合物を20分間撹拌すると、白色の結晶が沈殿した。油浴を取り外し、懸濁液を徐々に周囲温度に冷まし、結晶を濾別し、アセトン(60ml)で洗浄し、減圧下で重量が安定するまで乾燥させて、標記化合物を白色の結晶(35.8g、収率83.2%)として得た。MS (EI): 酸: m/z 241.0 ([M-H]-, 100%), アミン: m/z 182.0 ([M+H]+, 100%). 1H-NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 9.57 (br s, 2H), 7.96 (dd, 1 H), 7.64 (dd, 1 H), 3.07 (m, 2 H), 2.09 (m, 4 H), 1.81 (m, 4 H), 1.65 (m, 2 H), 1.58-1.40 (m, 4 H), 1.35-1.05 (m, 6 H)
【0101】
実施例3.10:
3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチル安息香酸の調製のためのテレスコープ方法
【0102】
【化21】

【0103】
THF(350ml)中の3−クロロ−4−フルオロ−ベンゾトリフルオリド(59.9g、0.302mol)の溶液に、−73℃〜−80℃で、n−BuLi(ヘキサン中1.6M;200ml、0.32mol、1.06当量)200mlを1時間以内で滴下した。清澄な黄色の溶液を、−75℃で30分間撹拌し、次にTHF(100ml)中のDMF(24.5g、0.335mol、1.11当量)の溶液を−74℃〜−78℃で30分以内で滴下した。僅かに黄色の反応混合物を、−75℃で1時間撹拌し、次に0℃に温め、この温度でクエン酸水溶液(30%、300ml)を滴下してクエンチした。得られた二相混合物を、20〜25℃に温め、層を次に分離させた。下部の水層を除去し、有機層を、トルエン(300ml)で希釈し、次に水(200ml)で洗浄した。有機層を、減圧下及び60℃のジャケット温度で濃縮し、僅かに黄色の油状物85.2gを、アルデヒド含有量〜76%(w/w)(H NMRによる)で得た。この油状物を、次に、水(220ml)中の次亜塩素酸ナトリウム(HO中10%;230g、0.309mol)、臭化カリウム(31.8g、0.266mol)及び水酸化ナトリウム(HO中28%;92g、0.644mol)の撹拌した溶液に、30〜60分間以内に30〜50℃で加えた。得られた混合物を、20〜25℃に冷却し、次に亜硫酸ナトリウム水溶液(水355ml中、NaSO32g)を加えてクエンチした。混合物をトルエン(350ml)で処理し、二相混合物を10分間撹拌した。下部の生成物含有水層を分離し、トルエン(350ml)で洗浄した。水層を硫酸(HO中20%;240g)を用いてpH2まで酸性化し、次にトルエン(450ml)で抽出した。有機層から、減圧下でトルエンを完全に留去した。残渣(59g)を、シクロヘキサン(141ml)及びヘプタン(141ml)の混合物に還流温度で溶解した。清澄な溶液を、次に、6時間以内に、−10℃に冷却すると、結晶が沈殿した。結晶を濾別し、シクロヘキサン/ヘプタン 1:1で洗浄し、50℃及び30mbarsで一晩乾燥させ、標記化合物を、純度100%(HPLC、面積%)の無色の結晶(55.8g、収率76%)として得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化22】


で示される3−クロロ−4−フルオロ−ベンゾトリフルオリドの変換を含む、式
【化23】


で示される3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチル安息香酸又はその塩の製造方法。
【請求項2】
変換が、
)有機金属塩基を用いて3−クロロ−4−フルオロ−ベンゾトリフルオリドを脱プロトン化し、続いて有機溶媒中で、反応温度−100℃〜25℃で求電子剤としてCOを添加すること、又は
)有機溶媒中で、反応温度20℃〜100℃でハロゲン化アルキルマグネシウムを用いて3−クロロ−4−フルオロ−ベンゾトリフルオリドのグリニャール化合物を生成し、続いて有機溶媒中で、反応温度−100℃〜25℃で求電子剤としてCOを添加すること
によって行われる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
有機金属塩基が、n−ブチルリチウム又はリチウムジイソプロピルアミドより選択される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
ハロゲン化アルキルマグネシウム又はハロゲン化アリールマグネシウムが臭化エチルマグネシウムである、請求項2記載の方法。
【請求項5】
変換が、
)式IIで示される3−クロロ−4−フルオロ−ベンゾトリフルオリドを、式
【化24】


で示される3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチルベンズアルデヒドに変換すること、及び
)酸化剤で3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチルベンズアルデヒドを酸化して、式Iで示される3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチル安息香酸又はその塩を生成すること
によって行われる、請求項1記載の方法。
【請求項6】
式IIIで示される3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチルベンズアルデヒドへの変換が、有機金属塩基で3−クロロ−4−フルオロ−ベンゾトリフルオリドを脱プロトン化することに続いて、有機溶媒中で、反応温度−100℃〜25℃で求電子剤を添加することによって行われる、請求項5記載の方法。
【請求項7】
クエンチング剤としてのプロトン酸が、脱プロトン化の後及び求電子剤の添加後に添加される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
有機金属塩基が、n−ブチルリチウム及びリチウムジイソプロピルアミドより選択される、請求項6記載の方法。
【請求項9】
求電子剤が、N,N−ジアルキルホルムアミド、N,N−ジアリールホルムアミド又はN−アルコキシ−N−アルキルホルムアミドより選択される、請求項6記載の方法。
【請求項10】
酸化剤が、アルカリ又はアルカリ土類の次亜塩素酸塩、次亜臭素酸塩、亜塩素酸塩、塩素酸塩、過硫酸塩又は過マンガン酸塩より選択される、請求項5記載の方法。
【請求項11】
反応が、水性溶媒中で、反応温度10℃〜100℃で水酸化アルカリ塩基及び臭化アルカリの存在下で行われる、請求項5及び10記載の方法。
【請求項12】
式IIIで示される3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチルベンズアルデヒドが、工程bにおける酸化の前に単離されない、請求項5記載の方法。
【請求項13】
変換が、
)式IIで示される3−クロロ−4−フルオロ−ベンゾトリフルオリドを、式
【化25】


[式中、Mはアルカリ金属原子である]
で示されるアルカリ(3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチル−フェニル)−ヒドロキシ−メタンスルホネートに変換すること;
)式IVで示されるアルカリ(3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチル−フェニル)−ヒドロキシ−メタンスルホネートを、式
【化26】


で示される3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチルベンズアルデヒドに変換すること、及び
)酸化剤を用いて式IIIで示される3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチルベンズアルデヒドを酸化して、式Iで示される3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチル安息香酸又はその塩を生成すること
によって行われる、請求項1記載の方法。
【請求項14】
工程aにおける式IIで示される3−クロロ−4−フルオロ−ベンゾトリフルオリドから式IVで示されるアルカリ(3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチル−フェニル)−ヒドロキシ−メタンスルホネートへの変換が、
)有機金属塩基を用いて3−クロロ−4−フルオロ−ベンゾトリフルオリドを脱プロトン化すること、続いて
)有機溶媒中で、反応温度−100℃〜25℃で求電子剤を添加すること、
)クエンチング剤としてプロトン酸を添加すること、及び最終的に
)アルカリピロ亜硫酸塩を用いて、式IVで示されるアルカリ(3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチル−フェニル)−ヒドロキシ−メタンスルホネートを生成すること
によって行われる、請求項13記載の方法。
【請求項15】
有機金属塩基が、n−ブチルリチウム及びリチウムジイソプロピルアミドより選択される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
求電子剤が、N,N−ジアルキルホルムアミド、N,N−ジアリールホルムアミド又はN−アルコキシ−N−アルキルホルムアミドより選択される、請求項14又は15記載の方法。
【請求項17】
プロトン酸が、クエン酸又は酢酸及び硫酸より選択される、請求項14〜16記載の方法。
【請求項18】
ピロ亜硫酸ナトリウムが、アルカリピロ亜硫酸塩として使用される、請求項14〜17記載の方法。
【請求項19】
式IVで示される(3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチル−フェニル)−ヒドロキシ−メタンスルホネートから3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチルベンズアルデヒドへの変換が、水性水酸化アルカリ塩基を用いて行われる、請求項13記載の方法。
【請求項20】
酸化剤が、アルカリ又はアルカリ土類の次亜塩素酸塩、次亜臭素酸塩、亜塩素酸塩、塩素酸塩、過硫酸塩又は過マンガン酸塩より選択される、請求項13記載の方法。
【請求項21】
反応が、水性溶媒中で、反応温度10℃〜100℃で、水酸化アルカリ塩基及び臭化アルカリの存在下で行われる、請求項20記載の方法。
【請求項22】
3−クロロ−2−フルオロ−5−トリフルオロメチル安息香酸が、さらに、シクロヘキサン、ヘプタン、メチルシクロヘキサン又はその混合物を用いた結晶化により精製できる、請求項1〜21記載の方法。

【公表番号】特表2011−521994(P2011−521994A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512078(P2011−512078)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際出願番号】PCT/EP2009/056560
【国際公開番号】WO2009/147068
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】