説明

ハロゲン化銀写真ガラス乾板包装体用外箱

【課題】輸送用のパレットに積載する包装体の数を増やすことが出来、海外への輸出の如く長距離の輸送に対する強度を有し、包装体の取り出しが容易で、且つ包装体の収納が容易なガラス乾板包装体用外箱の提供。
【解決手段】少なくとも一枚のハロゲン化銀写真ガラス乾板を収納容器1dに納めたハロゲン化銀写真ガラス乾板包装体を、立てた状態で収納及び取り出しを行う矩形筒状の胴体1aを有するハロゲン化銀写真ガラス乾板包装体用外箱1において、ハロゲン化銀写真ガラス乾板包装体の収納及び取り出しを、胴体1aの側面から行うことが可能であるハロゲン化銀写真ガラス乾板包装体用外箱1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフォトマスク用のハロゲン化銀写真ガラス乾板を収納容器に納めたハロゲン化銀写真ガラス乾板包装体(以下、単に包装体とも言う)を収納するハロゲン化銀写真ガラス乾板包装体用外箱(以下、単に外箱とも言う)に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトマスク用のハロゲン化銀写真ガラス乾板(以下、単にガラス乾板とも言う)とは、テレビのブラウン管に使用されるシャドウマスク、IC回路を組み込んだパッケイジのリードフレーム用マスク、液晶パネルに用いられている電極を書き込んだマスク及びワーキングマスクの作製に用いる感光材料である。
【0003】
これらガラス乾板は支持体として、寸法変動や膨張率が小さく、透過率が高いガラスが使用され、支持体の上に画像を形成する感光層が塗設され、ガラス支持体の裏面は撮影時のハレーションを防止するためのバッキング層が塗設されている。感光層を形成する材料としては、写真感光材料に使用されている高解像力のハロゲン化銀乳剤を塗設したものが知られている。
【0004】
ガラス乾板は微細なキズ、異物の付着を嫌うため、クリーン度がクラス100以下のクリーンルームで、収納容器としては、例えば特開平7−104432号に記載されている如き低発塵性の紙製の収納容器を用い、更にガラス乾板の感光層に直接に物が接することを防止するためスペーサを介して収納され、且つ収納容器の底部とガラス乾板のバッキング層側に外部からの衝撃に対してガラス乾板を保護するクッション材が配置された包装体が知られている。
【0005】
収納容器に納められているガラス乾板の枚数は、大きさにより様々であるが、例えばリードフレーム用マスクに使用するガラス乾板の場合は2枚が一般的となっている。しかしながらこの場合、ガラス乾板の大きさは、例えば厚さ(5mm)×縦(813mm)×幅(1092mm)であるため包装体の重さは約60kgにもなっている。又、この包装体を収納する包装体用外箱は、例えば厚さ(260mm)×縦(940mm)×幅(1210mm)と大きく、一人で運ぶのは困難な状態となっている。
【0006】
これらの包装体を輸送するに際しては、包装体毎に包装体用外箱に入れて、ガラス乾板への衝撃を少なくするためパレットに縦型に積載して輸送し、各ユーザーに納入している。各ユーザーは納入された包装体が収納された包装体用外箱を撮影ルーム内へ落下、転倒をしないように充分に注意し、包装体用外箱の底面を床面に接触した状態で引きずりながら移動し手作業で搬入している。しかしながら、ガラス乾板が大きい場合は質量があるため時には転倒、落下の事故が発生することがあった。
【0007】
この様な質量のある包装体の輸送時の取り扱いを安全に且つ容易にする対策が取られてきた。例えば、運搬を容易にするため、複数の包装体を収納する外箱の各長辺を含んで対向する両側面の少なくとも1箇所に、把持する方向から見て10°〜60°の傾斜の長孔の把持手段の孔を設けたガラス乾板包装体用外箱が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載されている外箱に付き図7で説明する。
【0008】
図7は従来の包装体を収納した外箱の概略図である。図7(a)は従来の包装体を収納した外箱の概略斜視図である。図7(b)は図7(a)のB−B′に沿った拡大概略断面図である。
【0009】
図中、3は包装体2を収納した外箱を示す。外箱3は、長方形の天面306と、長方形の底面305と、天面306と底面305との短辺を含んで対向する両側面301、302と、天面306と底面305との長辺を含んで対向する両側面303、304とを有する直方体の形状となっている。307a、307dは側面303に設けられた把持手段の孔を示し、307b、307cは側面304に設けられた把持手段の孔を示す。天面306と底面305とは各側面に配設されたフラップで3重となっている。308aと308bとはクッション材を示す。包装体2は上方をクッション材308aで、下方をクッション材308bで挟まれた状態で外箱3の中に収納されている。201はガラス乾板202を収納する内箱を示す。ガラス乾板202は上方をクッション材203aで、下方をクッション材203bで挟まれた状態で内箱201の中に収納されている。本図は2枚のガラス乾板202を収納した場合を示している。包装体の収納及び取り出しは、箱の構造から天面306を開けて行う上からのみ行う様になっている。尚、本図で示される形状はJIS Z1507に規定される0202形である。
【0010】
特許文献1に記載のガラス乾板包装体用外箱(図7を参照)によれば、確かに運搬の際に把持手段の孔が損傷することがなくなり、安全性の向上は認められるが、次の欠点を有している。
1)外箱の構造から包装体の収納及び取り出しが天面側となるため作業性が悪く、特にガラス乾板が大きい場合は、質量が大きくなり且つ安全性の面から一人での作業が困難となる。
2)包装体の上下をクッション部材に嵌め込み外箱に収納するため、煩雑な作業が必要となっている。
3)外箱に収納される包装体の数が2〜3体であるため、大量輸送の際には、外箱を集合梱包しパレットに積載して輸送しなければならないため、手間、費用が掛かる。
4)1パレットに積載する包装体の数が少ないため、輸送費が掛かる。
5)海外への輸出の如く長距離の輸送に対する強度が不足している。
【0011】
これらの状況から、包装体の収納及び取り出しが容易で、1パレットに積載する包装体の数を増やすことが出来、海外への輸出の如く長距離の輸送に対する強度を有する外箱の開発が望まれている。
【特許文献1】特開2004−276946号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、係る状況に鑑みなされたものであり、その目的は包装体の収納及び取り出しが容易で、1パレットに積載する包装体の数を増やすことが出来、長距離の輸送に耐える強度を有するガラス乾板包装体用外箱を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成された。
【0014】
1.少なくとも一枚のハロゲン化銀写真ガラス乾板を収納容器に納めたハロゲン化銀写真ガラス乾板包装体を、立てた状態で収納及び取り出しを行う矩形筒状の胴体を有するハロゲン化銀写真ガラス乾板包装体用外箱において、前記ハロゲン化銀写真ガラス乾板包装体の収納及び取り出しを、前記胴体の側面とすることを特徴とするハロゲン化銀写真ガラス乾板包装体用外箱。
【0015】
2.前記胴体は断面形状がコの字状の第1部材と第2部材とのそれぞれの背面を対向し、それぞれの側面を重ね合わせ形成されていることを特徴とする前記1に記載のハロゲン化銀写真ガラス乾板包装体用外箱。
【0016】
3.前記収納は第2部材の側面を第1部材の側面と重ね合わせる前に行い、取り出しは、該第2部材を取り外した後に行うことを特徴とする前記1又は2に記載のハロゲン化銀写真ガラス乾板包装体用外箱。
【0017】
4.前記ハロゲン化銀写真ガラス乾板包装体用外箱は、胴体と、該胴体の一方の開口部を覆い天面を形成する第1蓋体と、該胴体の他方の開口部を覆い、底面を形成する第2蓋体と、ハロゲン化銀写真ガラス乾板包装体を収納する複数の収納部を有する収納体とを有することを特徴とする前記1〜3の何れか1項に記載のハロゲン化銀写真ガラス乾板包装体用外箱。
【0018】
5.前記第1部材と、第2部材と、第1蓋体と、第2蓋体と、収納体とが同じ材料を使用しており、これらが分離可能に固定部材により組み立てられていることを特徴とする前記1〜4の何れか1項に記載のハロゲン化銀写真ガラス乾板包装体用外箱。
【0019】
6.前記第1蓋体は、長辺と短辺に一体となつた4枚のフラップを有し、該第1蓋体は、該フラップを固定部材により分離可能に胴体の一方の開口部の周面に固定することで固定されていることを特徴とする前記4又は5に記載のハロゲン化銀写真ガラス乾板包装体用外箱。
【0020】
7.前記第2蓋体は、長辺と短辺に一体となつた4枚のフラップ有し、該第2蓋体は、該フラップを固定部材により分離可能に胴体の他の一方の開口部の周面に固定することで固定されていることを特徴とする前記4〜6の何れか1項に記載のハロゲン化銀写真ガラス乾板包装体用外箱。
【0021】
8.前記第1部材の側面と第2部材の側面は固定部材により分離可能に固定されていることを特徴とする前記1〜7の何れか1項に記載のハロゲン化銀写真ガラス乾板包装体用外箱。
【0022】
9.前記収納体は、第1取り付け部材と、第2取り付け部材と、複数の仕切部材とを有し、該第1取り付け部材と該第2取り付け部材との対向する面に設けられた複数の溝に取り付けられ形成されており、且つ該第1取り付け部材と該第2取り付け部材とがクッション部材として機能し、該収納体は該第2取り付け部材を第2蓋体の内面の上に置き、該第1取り付け部材の上面と第1蓋体の内面とが当接する状態で胴部に収納されていることを特徴とする前記1〜8の何れか1項に記載のハロゲン化銀写真ガラス乾板包装体用外箱。
【発明の効果】
【0023】
包装体の収納及び取り出しが容易で、1パレットに積載する包装体の数を増やすことが出来、長距離の輸送に耐える強度を有するガラス乾板包装体用外箱を提供することが出来、作業性の向上、取り扱いの安全性が高められ、且つ輸送コストの低減が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の実施の形態を図1〜図6を参照して説明するが本発明はこれに限定されるものではない。
【0025】
図1は包装体を、立てた状態で収納する直方体の外箱の概略分解図である。
【0026】
図中、1は外箱を示す。外箱1は、断面形状がコの字状の第1部材1a1と第2部材1a2とで形成され上下に開口部を有する矩形筒状の胴体1aと、胴体1aの上部の開口部を覆い天面を形成する第1蓋体1bと、胴体1aの下部の開口部を覆い底面を形成する第2蓋体1cと、胴体1aの中に収容し、包装体を収納する収納体1dとを有している。
【0027】
第1部材1a1は一枚の部材を折り曲げることで形成され、背面1a11と側面1a12と側面1a13とを有している。第2部材1a2は一枚の部材を折り曲げることで形成され、背面1a21と側面1a22と側面1a23とを有している。胴体1aは第1部材1a1の背面1a11と第2部材1a2の背面1a21とを対向する形で、第1部材1a1の側面1a12と側面1a13とを第2部材1a2の側面1a22と側面1a23とに重ね合わせる様にして形成されている。第1部材1a1の側面1a12と側面1a13と、第2部材1a2の側面1a22と側面1a23との重ね合わせとしては、第1部材1a1の側面1a12と側面1a13の内側に第2部材1a2の側面1a22と側面1a23とが入る形式、第1部材1a1の側面1a12の外側と第2部材1a2の側面1a22の内側とを重ね合わせ、第1部材1a1の側面1a13の内側と第2部材1a2の側面1a23の外側とを重ね合わせる形式(この逆も可能)が挙げられる。これらの形式の中で、組み立て性を考慮し、第1部材1a1の側面1a12と側面1a13の内側に第2部材1a2の側面1a22と側面1a23とが入る形式が好ましい。本図は、この形式の場合を示している。
【0028】
第1部材1a1と第2部材1a2との固定は、第1部材1a1の側面1a12と、側面1a13とに複数個設けられている孔1eと、第2部材1a2の側面1a22と、側面1a23に複数個設けられている孔1fとにそれぞれ固定部材を通し固定する様になっている。1a24は第2部材1a2の背面1a21に配設された把持用の孔を示す。把持用の孔1a24は第1部材1a1の背面1a11に配設しても構わない。
【0029】
第1蓋体1bは矩形筒状の胴体1aの開口部の面積に合わせ、一枚の部材の4辺を折り曲げることで形成されている。1b1は長辺側に設けられたフラップを示し、1b2は他の長辺側に設けられたフラップを示す。1b3は短長辺側に設けられたフラップを示し、1b4は他の長辺側に設けられたフラップを示す。
【0030】
第1蓋体1bの胴体1aへの固定は、胴体1aの上側の開口部に覆う様に被せ、フラップ1b1〜1b4に設けられた孔1hと、第1部材1a1の側面1a12と、側面1a13と、背面1a11の上部に設けられた孔1gと、第2部材1a2の背面1a21の上部に設けられた孔1iとにそれぞれ固定部材を通し固定する様になっている。
【0031】
第2蓋体1cは矩形筒状の胴体1aの開口部の面積に合わせ、一枚の部材の4辺を折り曲げることで形成されている。1c1は長辺側に設けられたフラップを示し、1c2は他の長辺側に設けられたフラップを示す。1c3は短長辺側に設けられたフラップを示し、1c4は他の長辺側に設けられたフラップを示す。
【0032】
第2蓋体1cの胴体1aへの固定は、胴体1aの下側の開口部に覆う様に被せ、フラップ1c1〜1c4に設けられた孔1jと、第1部材1a1の側面1a12と、側面1a13と、背面1a11の下部に設けられたと孔1k、第2部材1a2の背面1a21の下部に設けられた孔1lとにそれぞれ固定部材を通し固定する様になっている。
【0033】
収納体1dは第1取り付け部材1d1と、第2取り付け部材1d2と、第1取り付け部材1d1と、第2取り付け部材1d2とに挟持された複数の仕切部材1d3とを有している。
【0034】
1mは外箱1を直置きを避けるために底面(第2蓋体1cの裏面)の外側に配設された脚部を示す。脚部1mは収納される包装体と直交する様に底面の外側に配設されている。
【0035】
本図に示す外箱1は、外箱1を構成している胴体1aと、第1蓋体1bと、第2蓋体1cと、1dとを固定部材を取り外すことで全て分離することが可能となっており、使用後の外箱の処理が容易となっている。
【0036】
図2は収納体1dの概略分解図である。
【0037】
図中、1d11は第1取り付け部材1d1に設けられた溝を示す。溝1d11は収納する包装体の数に対応し、変更することが可能となっている。1d21は第2取り付け部材1d2に設けられた溝を示し、第1取り付け部材1d1に設けられた溝1d11と対向する位置に設けられている。仕切部材1d3は溝の数に応じて用意され、それぞれの溝1d11と溝1d21とに嵌入することで第1取り付け部材1d1と第2取り付け部材1d2とに挟持された状態となり、収納体1dが形成される。1d12は第1取り付け部材1d1の外面を示し、1d22は第2取り付け部材1d2の外面を示す。各仕切部材1d3により仕切られた間が包装体の収納部となる。収納体1dは、胴体1aの中に収容し、外箱1を形成した時第1取り付け部材1d1と第2取り付け部材1d2とはクッション部材として機能を有しており、上下からの外圧に対して耐性を高める要因となっている。
【0038】
尚、仕切部材1d3を溝に嵌入する際、接着剤を併用しても構わない。本図に示す収納体1dは、12枚の仕切部材1d3により仕切られた11の収納部を有しており、収納部に収納する包装体の数は、両側から4つの収納部に、各2体ずつを収納し、中央の3つの収納部に各3体を収納する場合を示している。収納部の数は必要に応じて適宜変更することは可能である。
【0039】
図1、図2に示される外箱を構成している各部材の材料に付き説明する。胴体1aを構成している第1部材1a1と、第2部材1a2、第1蓋体1bと、第2蓋体1cと、収納体1dと、脚部1mとに使用される材料は全て同じ材料であることが好ましい。使用する材料としては必要とする強度が得られれば特に限定はなく、例えばプラスチックダンボール、紙ダンボール等が挙げられる。これらの内、最も好ましい材料としては紙ダンボール(以下、段ボールと言う)が挙げられる。第1部材1a1と、第2部材1a2、第1蓋体1bと、第2蓋体1cと、仕切部材1d3に使用する好ましい段ボールとしては、段の種類として、Aフルート、Bフルート、Cフルート、Eフルートの内から、収納する包装体の質量に併せて適宜組み合わせて作製した複両面段ボール、複々両面段ボール等が挙げられる。
【0040】
収納体1dの第1取り付け部材1d1と第2取り付け部材1d2も複両面段ボールを必要に応じて重ね合わせ接着剤で固定して形成することが好ましい。複両面段ボールを重ね合わせる時、フルートの方向は特に限定はなく、例えば交互になるようにしても良いし、平行になるようにしても良い。
【0041】
脚部1mも複両面段ボールを必要に応じて重ね合わせ接着剤で固定して形成することが好ましい。複両面段ボールを重ね合わせる時、使用時にフルートの方向が鉛直方向になるように向くようにフルートの方向を併せて重ね合わせることが好ましい。尚、脚部1mは外箱を濡れた面(例えば、雪の日の配送時の雪面、雨の日の配送時の雨に濡れた面等)に置くことも考慮し、樹脂を含浸することが好ましい。使用する樹脂としては、例えばポリアミド・エピクロロヒドリン樹脂が挙げられる。
【0042】
図3は図1に示す外箱及び構成部材に複両面段ボールを使用した時のフルートの方向を示す概略図である。
【0043】
図中の符号は図1と同義である。点線はフルートの方向を示す。複両面段ボールを使用し、外箱1構成する各部材のフルートの方向を本図に示す様なフルートの方向にし、外箱1を組み立てることで、外箱の強度を高める一因となっている。勿論、必要に応じて複々両面段ボールを使用しても構わない。
【0044】
図4は外箱を組み立て包装体を収納する迄の段階を示す概略フロー図である。
【0045】
S1では、一枚の段ボールを打ち抜き、フラップ1c1〜1c4を形成するスジ押しが付けられ、脚部1mを取り付けた第2蓋体1cの上に、一枚の段ボールを折り曲げコの字状にした第1部材1a1を載置する。この段階では第2蓋体1cの各フラップ1c1〜1c4は開いた状態となっている。脚部1mの取り付け方法は特に限定はなく、例えばステープル、接着剤による方法が挙げられる。
【0046】
S2では、第2蓋体1cの上に載置されたコの字状の第1部材1a1の上に、一枚の段ボールを打ち抜き、フラップ1b1〜1b4を形成するスジ押しが付けられた第1蓋体1bを載置する。この段階では第1蓋体1bの各フラップ1b1〜1b4は開いた状態となっている。この段階で、第1部材1a1と、第1蓋体1bと、第2蓋体1cとで形成される胴部の空間に、図2に示す様に第1取り付け部材1d1と、第2取り付け部材1d2と、複数の仕切部材1d3とから組み立てられた収納体1dを収納する。収納された収納体1dは、第1取り付け部材1d1の外面1d12が第1蓋体1bの内面に当接し、第2取り付け部材1d2の外面1d21が第2蓋体1cの内面に当接した状態となっている。収納体1dが収納された後、第2蓋体1cのフラップ1c1、1c2、1c4を立ち上げ(図中の矢印方向)、各フラップ1c1、1c2、1c4に配設された孔1jと、第1部材1a1の孔1kとにそれぞれ固定部材を通し固定する。又、同様にして第1蓋体1bのフラップ1b1、1b2、1b4を折り曲げ(図中の矢印方向)、各フラップ1b1、1b2、1b4に配設された孔1jと、第1部材1a1の孔1gとにそれぞれ固定部材を通し固定する。
【0047】
S3では、収納体1dの複数の仕切部材1d3によれ仕切られた収納部に、包装体2を立てた状態で収納する。この様な状態で包装体2を収納することを胴体の側面から収納すると言う。この様に側面から収納することで、ガラス乾板のサイズが大きくなり、質量が大きくなっても図7に示す従来の外箱の様に上に一旦持ち上げる必要がないため、取り扱いが容易になり、且つ安全に一人で収納を行うことが可能となった。全ての収納体1dの収納部に包装体2が収納された後、第2部材1a2の背面1a21と第1部材1a1の背面1a11とを対向し、第1部材1a1の側面の内側に第2部材1a2の側面の外側を重ね合わせる状態で取り付ける。
【0048】
S4では、第2部材1a2が取り付けられた後、胴部を形成する第1部材1a1と第2部材1a2とをそれぞれに設けられている孔(1e、1f)の各々に固定部材を通し、第1部材1a1と第2部材1a2とを固定する。この後、第1蓋体1bのフラップ1b3及び第2蓋体1cのフラップ1c3を胴部の方向(図中の矢印の方向)に折り曲げる。
【0049】
S5では、第1蓋体1bのフラップ1b3に付けられた孔1hと第2部材1a2の背面1a21に配設されている孔1iとに固定部材を通し第1蓋体1bを胴体に固定する。又、同じ様にして第2蓋体1cのフラップ1c3に付けられた孔1jと第2部材1a2と第2部材1a2の背面1a21に設けられている孔1lとに固定部材を通し第2蓋体1cを胴体に固定する。S1〜S5の段階を経て包装体2を収納した外箱1が出来上がる。
3aは第1蓋体1bを胴体1aに固定する固定部材を示す。3bは第2蓋体1cを胴体1aに固定する固定部材を示す。3cは胴体1aを構成している第1部材1a1と第2部材1a2とを固定する固定部材を示す。固定部材としては特に限定はないが、例えばP−ジョイント(幸立化成工業株式会社)製、メタルファスナー(王子インターパック株式会社)製等が挙げられる。固定部材の使用方法は特に制限はないが、外箱1に収納した包装体2を取り出す時、第2部材1a2を取り外す作業を容易にするため、第1蓋体1bのフラップ1b3に付けられた孔1hと第2部材1a2の背面1a21に配設されている孔1i及び第2蓋体1cのフラップ1c3に付けられた孔1jと第2部材1a2の背面1a21に配設されている孔1lに使用する固定部材をメタルファスナーとし、他は、P−ジョイントを使用することが好ましい。
【0050】
図5は図4のS5に示す外箱1のA−A′に沿った拡大概略断面図である。
【0051】
包装体が収納されている収納体の各収納部の空隙率は、輸送時の移動に伴うハロゲン化銀写真ガラス乾板の損傷、包装体の収納性、包装体の取り出し性等を考慮し、76〜93%であることが好ましい。空隙率とは各収納部の容積に対する包装体の占める割合を示す。その他の符号は図1と同義である。
【0052】
図6は図4のS1〜S5の段階で作製された包装体が収納されている外箱から、包装体を取り出す迄を示す概略フロー図である。
【0053】
S′1では、包装体が収納されている状態の外箱1が取り出し場所に用意される。
【0054】
S′2では、把持用の孔1a24が配設されている側の第1蓋体1bの固定部材3aが外され、フラップ1b3が上げられる(図中の矢印方向)。又、同様に第2蓋体1cの固定部材3bとが外され、フラップ1c3が下げられる(図中の矢印方向)る。第1部材1a1と第2部材1a2の全ての固定部材3cも外される。
【0055】
S′3では、把持用の孔1a24をもって第2部材1a2を引き出す(図中の矢印方向)
S′4では、第2部材1a2が取り外され、収納されている収納体2が取り出せる状態となる。
【0056】
S′5では、収納されている収納体2が必要に応じて収納体から取り出される。この様な状態で包装体2を取り出すことを胴体の側面から取り出すと言う。この様に側面から取り出すことで、ガラス乾板のサイズが大きくなり、質量が大きくなっても図7に示す従来の外箱の様に上に一旦持ち上げる必要がないため、取り扱いが容易になり、且つ安全に一人で取り出すことが可能となった。
【0057】
図1〜図6に示される外箱は、包装体の収納及び取り出しを側面とした構造であり、且つ収納する包装体の総質量が200kg〜800kgの状態で、JIS Z0232−1994に準じた振動試験で−0.75G〜+0.75Gの加速度に耐える強度を有している。本発明の外箱の強度は外箱を構成している胴体、第1蓋体、第2蓋体、収納体、使用する段ボールの総合的な結果として得られていると考えられ、各構成及び段ボールの強度に対する寄与は次の様に推定している。1)外箱を構成している、胴体、第1蓋体、第2蓋体、収納体の段ボールのフルートの方向を縦方向としたで縦方向の外圧に対する耐性が高くなる。2)第1部材と第2部材とで構成され、固定部材で一体となった二重の側壁を有する矩形筒状の胴体、及び収納された収納体により、側面からの圧力に対する耐性が高められた。3)胴体に第1蓋体と第2蓋体とを固定部材で取り付けることで横方向からの圧力よる胴体の変形を少なくすることが可能となった。4)収納体を胴体に収納したことで、上下方向からの圧力が収納体で緩和されると共に、段ボールのフルートの方向を縦方向としたことで縦方向の外圧に対する耐性が更に高くなる。5)収納体に包装体を収納することで、振動等による包装体の移動が規制され、部分的に圧力が掛からなくなることで外圧に対する耐性が更に高くなる。
【0058】
図1〜図6に示される本発明の外箱により次の効果が挙げられる。
1)収納が側面であるため質量の大きな包装体の収納が容易で、且つ作業員が一人でも短時間で安全に行うことが可能となった。
2)取り出しが側面であるため質量の大きな包装体の取り出しが容易で、且つ作業員が一人でも短時間で安全に行うことが可能となった。
3)海外への輸出の如く長距離の輸送に対する強度が保持され、且つ外箱に収納する包装体の数を増加することが可能となったので、安心して大量輸送を行うことが可能となった。
4)1パレットに積載する包装体の数が多くなるため、輸送費を抑えることが可能となった。
5)外箱が同一材料で構成されており、且つ、外箱を構成している各部材への分離が容易であるため使用後の外箱の処理(容積の減少に伴う運搬の容易性、リサイクル適正等)適正が向上した。
【実施例】
【0059】
以下に、本発明の効果を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0060】
実施例1
(外箱の準備)
図1に示される外箱(第1蓋体、第2蓋体、第1部材、第2部材、収納体)を段の種類がABフルートの複両面段ボールを使用して作製し試料No.101とした。尚、ライナーには坪量220g/m2のクラフトライナーを使用し、坪量120g/m2のセミケミカルパルプ100%の中芯(段)を使用した。フルートの方向は図3に示す方向とした。脚部は同じ段ボールを8枚重ね併せ、マルカボンドEZ220(中部サイデン株式会社製)接着剤で接着した後、ポリアミド・エピクロロヒドリン樹脂で固め、フルートの方向は図3に示す方向とした。尚、比較として同じライナーと同じ中芯(段)を使用し、段の種類としてABフルート、段ボールの種類として複両面段ボールを使用して図7に示すJIS Z1507に規定される0202形の外箱を作製し比較試料No.102とした。
【0061】
尚、出来上がった外箱No.101はガラス乾板を2枚収納した包装体が25体収納出来、寸法は高さ(1320mm)×幅(1070mm)×厚さ(1000mm)であった。又、比較の外箱No.102はガラス乾板を2枚収納した包装体が2体収納出来、寸法は高さ(940mm)×幅(1210mm)×厚さ(260mm)であった。
【0062】
評価
作製した外箱No.101、102に対して、包装体の収納性、取り出し性に付き次の方法で評価した結果を表1に示す。
【0063】
包装体の収納性
内箱に厚さ5mm、縦813mm、幅1092mmの大きさのKONICA PHOTO PLATEを2枚納めた一体の質量が27kgの包装体を準備した。この包装体、50体を準備した外箱に収納するのに要した時間を測定し収納性とした。尚、本発明の外箱No.101は2箱、比較の外箱No.102は13箱用意した。
【0064】
包装体の取り出し性
包装体を収納した外箱から包装体の1体を取り出すのに要した時間を測定し取り出し性とした。
【0065】
【表1】

【0066】
尚、本発明の外箱である試料No.101は包装体の収納、取り出しは一人で行い、比較の外箱である試料No.102は包装体の収納、取り出しは、包装体の質量、安全性から二人で行なわなければならなかった。本発明の有効性が確認された。
【0067】
実施例2
(外箱の準備)
図1に示される外箱(第1蓋体、第2蓋体、第1部材、第2部材、収納体)を表2に示す材料を使用して作製しNo.2−1〜2−3とした。尚、ライナーには坪量220g/m2のクラフトライナーを使用し、坪量120g/m2のセミケミカルパルプ100%の中芯(段)を使用した。フルートの方向は図3に示す方向とした。脚部は同じ段ボールを8枚重ね併せ、マルカボンドEZ220(中部サイデン株式会社製)接着剤で接着した後、ポリアミド・エピクロロヒドリン樹脂で固め、フルートの方向は図3に示す方向とした。尚、比較として同じライナーと同じ中芯(段)を使用し、段の種類としてBフルート、段ボールの種類として複両面段ボールを使用して図7に示すJIS Z1507に規定される0202形の外箱を作製しNo.2−4、2−5とした。
【0068】
【表2】

【0069】
出来上がった外箱No.2−1〜2−3はガラス乾板を2枚収納した包装体が25体収納出来、寸法は高さ(1320mm)×幅(1070mm)×厚さ(1000mm)であった。又、比較の外箱No.2−4、2−5はガラス乾板を2枚収納した包装体が2体収納出来、寸法は高さ(940mm)×幅(1210mm)×厚さ(260mm)であった。
【0070】
〈包装体の準備〉
内箱に厚さ5mm、縦813mm、幅1092mmの大きさのKONICA PHOTO PLATEを2枚納めた包装体を準備した。
【0071】
〈試料の作製〉
準備した外箱No.2−1〜2−3に準備した包装体を図4に示すフロー図に従って収納し試料201〜203とした。又、比較として作製した外箱No.2−4、2−5には2体の準備した包装体を収納し比較試料No.204、205とした。作製した各試料No.201〜203の質量は約700kgであった。比較試料No.204、205の質量は約60kgであった。
【0072】
〈評価〉
作製した各試料No.201〜205に付き以下に示す方法で強度性を以下に示す方法で試験し、以下に示す評価ランクに従って評価した結果を表3に示す。
【0073】
強度の評価
強度としてJIS Z0232−1994に準じた振動試験で、振動数を5〜100Hzと変化させ、各振動数で加速度を−0.75〜+0.75Gと変え、加速度に耐える強度を保持しているかを目視で確認し強度の評価とした。
【0074】
強度の評価ランク
◎:ガラス乾板、包装体、クッション材、外箱に損傷無し。
【0075】
○:ガラス乾板、包装体、クッション材に損傷無し。外箱に損傷あり。
【0076】
△:ガラス乾板、包装体に損傷無し。クッション材、外箱に損傷あり。
【0077】
×:ガラス乾板に損傷無し。包装体、クッション材、外箱に損傷あり。
【0078】
【表3】

【0079】
1パレット(110cm×110cm)に積載出来る包装体の数は試料No.201〜203は各25体に対して比較試料No.204、205は6体であった。本発明の有効性が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】包装体を、立てた状態で収納する直方体の外箱の概略分解図である。
【図2】収納体1dの概略分解図である。
【図3】図1に示す外箱及び構成部材に複両面段ボールを使用した時のフルートの方向を示す概略図である。
【図4】外箱を組み立て包装体を収納する迄の段階を示す概略フロー図である。
【図5】図4のS5に示す外箱1のA−A′に沿った拡大概略断面図である。
【図6】図4のS1〜S5の段階で作製された包装体が収納されている外箱から、包装体を取り出す迄を示す概略フロー図である。
【図7】従来の包装体を収納した外箱の概略図である。
【符号の説明】
【0081】
1、3 外箱
1a 胴体
1a1 第1部材
1a11、1a21 背面
1a12、1a13、1a22、1a23 側面
1a2 第2部材
1b 第1蓋体
1b1〜1b4、1c1〜1c4 フラップ
1c 第2蓋体
1d 収納体
1d1 第1取り付け部材
1d11、1d21 溝
1d2 第2取り付け部材
1d3 仕切部材
1e〜1l 孔
1m 脚部
2 包装体
201 内箱
202 ガラス乾板
203a、203b、308a、308b クッション材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一枚のハロゲン化銀写真ガラス乾板を収納容器に納めたハロゲン化銀写真ガラス乾板包装体を、立てた状態で収納及び取り出しを行う矩形筒状の胴体を有するハロゲン化銀写真ガラス乾板包装体用外箱において、前記ハロゲン化銀写真ガラス乾板包装体の収納及び取り出しを、前記胴体の側面とすることを特徴とするハロゲン化銀写真ガラス乾板包装体用外箱。
【請求項2】
前記胴体は断面形状がコの字状の第1部材と第2部材とのそれぞれの背面を対向し、それぞれの側面を重ね合わせ形成されていることを特徴とする請求項1に記載のハロゲン化銀写真ガラス乾板包装体用外箱。
【請求項3】
前記収納は第2部材の側面を第1部材の側面と重ね合わせる前に行い、取り出しは、該第2部材を取り外した後に行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のハロゲン化銀写真ガラス乾板包装体用外箱。
【請求項4】
前記ハロゲン化銀写真ガラス乾板包装体用外箱は、胴体と、該胴体の一方の開口部を覆い天面を形成する第1蓋体と、該胴体の他方の開口部を覆い、底面を形成する第2蓋体と、ハロゲン化銀写真ガラス乾板包装体を収納する複数の収納部を有する収納体とを有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のハロゲン化銀写真ガラス乾板包装体用外箱。
【請求項5】
前記第1部材と、第2部材と、第1蓋体と、第2蓋体と、収納体とが同じ材料を使用しており、これらが分離可能に固定部材により組み立てられていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のハロゲン化銀写真ガラス乾板包装体用外箱。
【請求項6】
前記第1蓋体は、長辺と短辺に一体となつた4枚のフラップを有し、該第1蓋体は、該フラップを固定部材により分離可能に胴体の一方の開口部の周面に固定することで固定されていることを特徴とする請求項4又は5に記載のハロゲン化銀写真ガラス乾板包装体用外箱。
【請求項7】
前記第2蓋体は、長辺と短辺に一体となつた4枚のフラップ有し、該第2蓋体は、該フラップを固定部材により分離可能に胴体の他の一方の開口部の周面に固定することで固定されていることを特徴とする請求項4〜6の何れか1項に記載のハロゲン化銀写真ガラス乾板包装体用外箱。
【請求項8】
前記第1部材の側面と第2部材の側面は固定部材により分離可能に固定されていることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載のハロゲン化銀写真ガラス乾板包装体用外箱。
【請求項9】
前記収納体は、第1取り付け部材と、第2取り付け部材と、複数の仕切部材とを有し、該第1取り付け部材と該第2取り付け部材との対向する面に設けられた複数の溝に取り付けられ形成されており、且つ該第1取り付け部材と該第2取り付け部材とがクッション部材として機能し、該収納体は該第2取り付け部材を第2蓋体の内面の上に置き、該第1取り付け部材の上面と第1蓋体の内面とが当接する状態で胴部に収納されていることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載のハロゲン化銀写真ガラス乾板包装体用外箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−290742(P2007−290742A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−120358(P2006−120358)
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】