説明

ハンドガイドローラの後進停止装置

【課題】後進停止ロッドの操作力を低下させることが可能となり、操作性が向上したハンドガイドローラの後進停止装置を提供する。
【解決手段】ハンドガイドローラの後部にハンドル10を取付け、ハンドル10の先端に設けたレバー取付け枠12に走行レバー14を前後方向に傾動可能に取付ける。後進時に走行レバー14を前方に押して緊急停止させる後進停止ロッド15を、レバー取付け枠12に後方に突出して前後動可能に取付ける。レバー取付け枠12に、後進停止ロッド15の前方への押圧力を、後傾姿勢にある走行レバー14の起立方向の回動力に変換する押圧力方向転換部材45を回動可能に取付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の前後に取付けた転圧ローラにより舗装面の転圧や路面の締め固め等を行なうハンドガイドローラにおいて、後進時にオペレータがハンドガイドローラと障害物との間に挟まれることを防止する後進停止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハンドガイドローラは、機体の前後に小形の転圧ローラを備え、アスファルト舗装の初期転圧や比較的狭い路面や敷地等の締め固めを行なう場合に使用される。従来のハンドガイドローラにおいては、一般に、機体に搭載したエンジンにより油圧ポンプを駆動し、油圧ポンプから吐出する作動油により転圧ローラ用油圧モータを前進、後進方向に駆動してハンドガイドローラを前進、後進させる。
【0003】
油圧ポンプは、傾転角制御により、作動油の吐出方向を正逆に切換えるかあるいは吐出しない作動状態とし、もって油圧モータの回転方向を正逆に切換えあるいは停止してハンドガイドローラの前進、後進、停止を行なう。このハンドガイドローラは、特許文献1に記載のように、車体から後方に斜めに延出させたハンドルを有し、ハンドルの先端に前後進、停止の制御を行なう走行用操作レバー(以下走行レバーと称す。)や、エンジンの起動、停止の制御を行なう操作レバー(以下アクセルレバーと称す。)を備えている。
【0004】
このようなハンドガイドローラには一般に図10に示すような走行等のための操作装置が用いられている。図10において、62はハンドガイドローラの機体(図示せず)の後部に斜めに取付けられた角筒状のハンドルである。63はこのハンドル62の先端に溶接されたレバー取付け枠であり、このレバー取付け枠63はレバー取付け用の縦板部64を有する。65は走行レバーであり、この走行レバー65はその基枠部65aが縦板部64に軸66を中心として前後方向に回動可能に取付けられる。67は油圧ポンプの傾転角制御用のワイヤであり、このワイヤ67は後端を走行レバー65の基枠部65aの下端部に接続具68により連結し、前端を、転圧ローラ駆動用の油圧ポンプに備えた傾転角制御レバー(いずれも図示せず)に接続する。
【0005】
図10において、a,b,cはそれぞれ走行レバー65の中立、前進、後進の操作位置にある状態を示す。中立位置aでは油圧ポンプの傾転角制御レバーは中間位置にあり、油圧ポンプからの作動油の吐出は無い。走行レバー65が前進位置bに操作された際にはワイヤ67に張力が加わり、傾転角制御レバーが引っ張られて油圧ポンプから転圧ローラ用油圧モータを正転(前進)方向に作動させる方向に作動油が吐出される。走行レバー65が後進位置cに操作された際にはワイヤ67に押圧力が加わり、傾転角制御レバーが押圧されて油圧ポンプから転圧ローラ用油圧モータを逆転(後進)方向に作動させる方向に作動油が吐出される。
【0006】
この走行操作装置には、後進時の安全装置として後進停止ロッド70を備える。この後進停止ロッド70は、筒状の保持部材71に前後動可能に挿着され、走行レバー65を後進位置cから中立位置aに戻してハンドガイドローラを緊急停止させるものである。保持部材71は、レバー取付け枠63とこのレバー取付け枠63に取付けた把手72に固定した筒体からなる。後進停止ロッド70の後端部にはノブ70aが取付けられ、このノブ70aと保持部材71との間にはガタつき防止用の圧縮ばね73が介装されている。
【0007】
この走行操作装置において、走行レバー65を後進位置cに操作してハンドガイドローラを後進させているとき、何らかの障害物がオペレータの背面にあり、ノブ70aと障害物との間にオペレータが挟まるかあるいはオペレータがノブ70aを前方に押すと、後進停止ロッド70により走行レバー65の基枠部65aが押されて走行レバー65が前方に回動し、ハンドガイドローラが停止し、事故の発生が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−27115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の操作装置においては、オペレータが走行レバー65から手を離し、把手72を握った状態でも運転が可能となるように、走行レバー65は軸66に対して適当な回動抵抗を持って取付けられる。この回動抵抗を付与するため、例えば軸66に取付けたワッシャ(図示せず)と基枠部65aとの間に皿バネ(図示せず)を介在させ、ねじにより皿バネを基枠部65aの側面に押し付ける等の構造が採用される。このような回動抵抗の付加は、起振装置により転圧ローラを振動させてその振動がハンドル62に加わっても走行レバー65が元の中立位置に戻らない程度に設定され、約2〜3kg程度の重さになるように調整されている。
【0010】
この操作装置において、後進時に緊急停止させる必要が生じた場合、ノブ70aを押し、これにより走行レバー65を中立位置に戻す必要がある。ここで、後進時には走行レバー65は後方に斜めに倒した姿勢となる一方、後進停止ロッド70は水平に取付けられ、水平に押す構造であるため、後進停止ロッド70により走行レバー65を押す際には、走行レバー65の基枠部65aを斜めに押すことになる。このため、走行レバー65を回動させるに必要な力Fxよりもかなり大きな力Fで後進停止ロッド70を押す必要があり、具体的には例えばF/Fx≒1.4程度となる。また、操作に必要な力を具体的な数値で説明すると、レバー比(走行レバー65の長さと、軸66の軸心から後進停止ロッド70と基枠部65aとの当接部Pまでの距離との比)を約5とし、走行レバー65の操作に要する力を3kgである場合、Fxは15kg、Fは21kgともなり、従来構成による場合、後進停止ロッド70の操作力が重くなり、操作性が悪いという問題点があった。
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑み、後進停止ロッドの操作力を低下させることが可能となり、操作性が向上したハンドガイドローラの後進停止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1のハンドガイドローラの後進停止装置は、ハンドガイドローラの後部にハンドルを取付け、前記ハンドルの先端に設けたレバー取付け枠に走行レバーを前後方向に傾動可能に取付け、走行レバーが後傾姿勢となる後進時に前記走行レバーを前方に押して緊急停止させる後進停止ロッドを、前記レバー取付け枠に後方に突出して前後動可能に取付けたハンドガイドローラの後進停止装置において、
後進緊急停止時における前記後進停止ロッドの前方への押圧力を、後傾姿勢にある前記走行レバーの起立方向への回動力に変換する押圧力方向転換部材を、前記レバー取付け枠に回動可能に取付けると共に前記後進停止ロッドに接続したことを特徴とする。
【0013】
請求項2のハンドガイドローラの後進停止装置は、請求項1に記載のハンドガイドローラの後進停止装置において、
前記レバー取付け枠に縦板部を設けると共に、前記縦板部に設けた枢着軸に走行レバーの基枠部を枢着し、
前記基枠部に、少なくとも前記押圧力方向転換部材を当接させる部分の断面形状が弧状をなす受部材を設け、
前記押圧力方向転換部材は下部になるほど前後幅が拡大された板材からなり、前記押圧力方向転換部材の上部を、前記縦板部の前記枢着軸の取付け位置より後方でかつ上方に設けた取付け軸に枢着し、
前記押圧力方向転換部材の下部でかつ後部に、前記後進停止ロッドの前部を接続し、
前記押圧力方向転換部材の傾斜した前辺を、前記受部材に対する当接辺としたことを特徴とする。
【0014】
請求項3のハンドガイドローラの後進停止装置は、請求項2に記載のハンドガイドローラの後進停止装置において、
前記押圧力方向転換部材の取付け軸の軸心から前記受部材と前記押圧力方向転換部材との当接部までの距離を、前記押圧力方向転換部材の取付け軸の軸心から前記後進停止ロッドと前記押圧力方向転換部材との接続部までの距離より短くしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、前記レバー取付け枠に、前記後進停止ロッドの前方への押圧力を、走行レバーの起立方向への回動力に変換する押圧力方向転換部材を設けたので、押圧力方向転換部材に作用する後進停止ロッドの前方への押圧力を後傾姿勢にある走行レバーの回動力として有効に伝達させることができる。このため、後進を緊急停止させる際に後進停止ロッドを前方に押圧するために必要な操作力が従来より小さくてすみ、操作性が向上する。
【0016】
請求項2の発明によれば、走行レバーの基枠部に設けた受部材を、ピン等からなる断面形状が弧状のものとしたので、緊急停止時の押圧力方向転換部材と受部材との摺動抵抗が減少し、後進停止ロッドを押圧する操作力がより小さくてすみ、操作性がより向上する。
【0017】
請求項3の発明によれば、押圧力方向転換部材の取付け軸から受部材との当接部(作用点)までの距離を、押圧力方向転換部材の取付け軸から後進停止ロッドとの接続部(力点)までの距離より短くしたので、後進停止ロッドを押圧する操作力がさらに小さくてすみ、操作性がより向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の後進停止装置を適用したハンドガイドローラの一例を示す側面図である。
【図2】(A)本発明の後進停止装置の走行レバーと油圧ポンプの傾転角制御レバーとの関連を説明する構成図、(B)は油圧ポンプの傾転角制御レバーを示す平面図である。
【図3】図1の要部拡大側面図である。
【図4】図3の平面図である。
【図5】図3のA−A断面図である
【図6】図5のB−B断面図であり、後進停止ロッドにより走行レバーを中立位置に戻した状態を示す。
【図7】本実施の形態における走行レバーの後進側への操作状態を示す図6相当図である。
【図8】図7の部分拡大図である。
【図9】図7のC−C断面図である。
【図10】従来の走行レバーの構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は本発明の後進停止装置を適用したハンドガイドローラの一例を示す側面図である。図1において、1はメインフレームであり、このメインフレーム1は、左右の側板部1a間を連結枠(図示せず)により連結した構成を有する。このメインフレーム1の左右の側板部1a間の前後に、転圧ローラ2が、その軸を左右の軸受部3により支持して取付けられる。そして片側の軸受部3には転圧ローラ2を回動させるための油圧モータ(図示せず)が取付けられる。また、メインフレーム1には偏心錘を回転可能に取付けた起振装置4が取付けてある。
【0020】
5はメインフレーム1上に防振ゴムやばね等の防振材(図示せず)を介して設置したベースフレームである。メインフレーム1とこのベースフレーム5とにより機体を構成する。ベースフレーム5上の前後方向における中央部にはエンジン6やこのエンジン6により駆動される油圧ポンプ19(図2参照)が搭載される。また、起振装置4の軸にエンジン6の回転力を伝達して転圧ローラ2を振動させるための電磁クラッチ(図示せず)が設置される。また、ベースフレーム5上の後部には散水用の水タンク7が搭載され、前部にはベースプレート5上の油圧ポンプと転圧ローラ2に備えた油圧モータとの間で使用する作動油を溜めておく作動油タンク8が搭載される。
【0021】
10は作業員がハンドガイドローラを操作するためのハンドルである。このハンドル10は、ベースフレーム5の後端部に設けたブラケット11に、図示のような作業時の傾斜姿勢と運搬時の垂直姿勢との間で姿勢変更可能に取付けられる。このハンドル10の先端には、レバー取付け枠12が取付けられ、このレバー取付け枠12には、エンジン6を起動、停止させるためのアクセルレバー13と、ハンドガイドローラを前進、停止、後進させるための走行レバー14と、後進時に緊急停止させる際に操作する後進停止ロッド15とが取付けられる。15aはこの後進停止ロッド15の後端に取付けたノブである。この後進停止ロッド15は、レバー取付け枠12に取付けた筒状保持部材16に摺動可能に収容される。17はこの保持部材16とレバー取付け枠12に溶接した把手であり、オペレータが把持するものである。レバー取付け枠12にはその他に警報音を発するための押しボタンや起振装置を作動させる電磁クラッチを操作するためのスイッチ(いずれも図示せず)が取付けてある。
【0022】
図2(A)は走行レバー14による転圧ローラ駆動用の油圧ポンプ19の制御機構を概略説明する側面図、図2(B)は平面図である。油圧ポンプ19はベースフレーム5上に搭載され、エンジン6により駆動されるものであり、この油圧ポンプ19は傾転角制御レバー20を有する。図2(A)に示すように、この傾転角制御レバー20はパイプ状のハンドル10中に収容しガイドされるワイヤ等の伝達部材21により走行レバー14と接続される。そして走行レバー14が中立位置(起立姿勢)aにあるときは傾転角制御レバー20も図2(B)に示す中間位置dにあり、油圧ポンプ19から作動油は吐出されない。
【0023】
図2(A)のbに示すように走行レバー14が前方に倒された位置(前傾姿勢)に操作されると、伝達部材21により傾転角制御レバー20が引っ張られて図2(B)に示す前進位置eに回動し、油圧ポンプ19は転圧ローラ2駆動の油圧モータに対し、ハンドガイドローラを前進させる方向に作動油を吐出する。
【0024】
図2(A)のcに示すように走行レバー14が後方に倒された位置(後傾姿勢)に操作されると、伝達部材21が押し出されて傾転角制御レバー20を後進位置fに回動させ、油圧ポンプ19は転圧ローラ2駆動の油圧モータに対し、ハンドガイドローラを後進させる方向に作動油を吐出する。
【0025】
なお、走行レバー14の起立姿勢をハンドガイドローラの停止位置とし、前傾姿勢を前進位置とし、後傾姿勢を後進位置とする理由は、このような姿勢とすることがオペレータの操作感覚によりよく適合し、操作し易いからである。
【0026】
次に走行レバー14や後進停止ロッド15等の取付け構造の詳細を図3ないし図9により説明する。図3は図1の要部拡大図であり、図4はその平面図である。また、図5は図3のA−A断面図、図6は図5のB−B断面図、図7は走行レバー14の後進側への操作状態を示す図6相当図、図8は図7の部分拡大図、図9は図7のC−C断面図である。
【0027】
図3、図5に示すように、レバー取付け枠12は、下枠23と上枠24とからなる。図6に示すように、下枠23はその前端部をハンドル10の端部に溶接した曲成板10aに溶接して取付ける。図5、図6に示すように、上枠24は、天板部24aと、この天板部24aの下面に溶接したレバー取付け用の縦板部24bと、縦板部24bの下端に溶接した横板からなる取付け部24cと、天板部24aの両側に形成した側板部24dと、天板部24aの前後にそれぞれ形成した前板部24eと、後板部24fとを有する。この上枠24は、側板部24dを下枠23の側板部23aに合わせてボルト26(図3、図9参照)により結合すると共に、縦板部24bの取付け部24cを下枠23にボルト27(図5参照)により固定して取付けられる。
【0028】
図5、図6〜図9に示すように、走行レバー14は板状の基枠部14aを有する。この基枠部14aは上部の前後幅が拡大した形状を有し、その拡大部分の上部に、走行レバー本体部14bを溶接した突出部14cを有する。また、基枠部14aのほぼ中央部にはボス29を有する。一方、上枠24の縦板部24bの片面に、この面に垂直に、走行レバー14を枢着する枢着軸30を溶接する。そして基枠部14aに設けたボス29を枢着軸30に回動可能に嵌合する。31は基枠部14aのボス29と縦板部24bとの間に間隔を形成するために、枢着軸30の中間部に形成した大径部である。32は枢着軸30と同心に枢着軸30から突出して一体に設けたねじ部である。33は走行レバー14の回動抵抗を付与するためにねじ部32にワッシャ34,34と共に嵌合した皿バネ、35はこの皿バネ33の弾性力による摩擦力を基枠部14aに付与し調整するためのダブルナットである。
【0029】
図6〜図8に示すように、基枠部14aの下部には下方から上向きに切り込み状のワイヤ接続部14dを設ける。そしてワイヤ等の伝達部材21の端部に設けた接続環21aとワイヤ接続部14dにボルト36を挿着し、このボルト36にナット37を螺合して締め付けることにより、伝達部材21の端部を基枠部14aの下部に接続する。なお、図6において、40は伝達部材21を摺動可能に挿着したガイド筒であり、このガイド筒40は、縦板部24bに溶接したブラケット41にボルト42によって取付けられている。
【0030】
図4に示すように、上枠24の天板部24aには前後に長い開口部39,39Aが設けられ、走行レバー14およびアクセルレバー13はこれらの開口部39,39Aに前後動可能に貫挿されている。
【0031】
図5に示すように、アクセルレバー13も走行レバー14と同様の取付け機構により、その基枠部13aが、上枠24の縦板部24bの走行レバー14の取付け面の反対側に取付けられる。アクセルレバー13を取付けるための部材30A,31A,32A,33A,34A,35Aは、それぞれ走行レバー14を取付けるための各部材30,31,32,33,34,35に対応し、同様の機能を有する部材である。43はアクセルレバー13の基枠部13aの下部に接続されたワイヤ等の伝達部材であり、この伝達部材43はハンドル10の内部を通し、前端部をエンジンの起動、停止を行なう制御部(図示せず)に接続するものである。
【0032】
次に後進停止ロッド15による緊急停止機構について説明する。図7、図8はハンドガイドローラを後進させる際に、走行レバー14を後傾姿勢にした状態を示している。図5〜図9において、45は後進停止ロッド15による押圧力を、走行レバー14の後傾姿勢から起立方向の回動力に変換する押圧力方向転換部材である。46はこの押圧力方向転換部材45を前後方向に回動可能に取付ける取付け軸である。この取付け軸46は、縦板部24bにおける走行レバー14の枢着軸30より後方でかつ上方となる位置に設ける。この押圧力方向転換部材45は、下部になるほど前後幅が拡大された板材からなり、その下部でかつ後部に後進停止ロッド15に接続するための切り込み45aを設ける。
【0033】
後進停止ロッド15の保持部材16は、その前端部を上枠24の後板部24fに溶接し、後端を、把手17の一端に溶接して取付ける。把手17の他端は上枠24の天板部24aに溶接する。後進停止ロッド15の前端には接続具47を取付け、図8、図9に示すように、接続具の先端の円環部47aと、押圧力方向転換部材45に設けた切り込み45aにボルト48を通し、このボルト48にナット49を螺合して後進停止ロッド15を押圧力方向転換部材46に接続する。
【0034】
一方、走行レバー14の基枠部14aには、走行レバー14の枢着軸30と平行に、押圧力方向転換部材45の前辺45bに当接させる受部材50を、基枠部14aから縦板部24b側に突出させて設ける。この受部材50は少なくとも押圧力方向転換部材45との当接面を断面形状が弧状をなすように形成したものとすることが好ましい。この実施の形態においては、この受部材50としての断面形状が円形をなす丸棒状のロッドを用いた例を示す。52は押圧力方向転換部材45や後進停止ロッド15のガタつき防止のため、取付け軸46に巻装して取付けたねじりバネである。このねじりバネ52は、一端を縦板部24bに固定し、他端を押圧力方向転換部材45に固定して、押圧力方向転換部材45に前方に回動させる矢印R1で示す力(図8参照)を付与し、後進停止ロッド15を常に後退位置に固定しておくものである。
【0035】
図8に示すように、走行レバー14が後傾姿勢にあり、ハンドガイドローラが後進している際に、オペレータの背後に障害物があり、後進停止ロッド15のノブ15aをオペレータが押すかあるいは障害物とノブ15aとの間にオペレータの体が挟持され、後進停止ロッド15が矢印Faの方向すなわち前方に押されると、押圧力方向転換部材45が取付け軸46を中心に矢印R2で示すように回動する。ここで、押圧力方向転換部材45の前辺45bは下方が前になるように傾斜しているので、前辺45bの受部材50との当接部Pにおいて、前辺45bは、矢印Fbで示すように、受部材50を斜め上方に押し上げる。すなわち前辺45bは、走行レバー14を、その受部材50との当接により、走行レバー14を後傾姿勢から起立させる矢印Fcに示す回動方向に近い方向に受部材50を押し上げる。
【0036】
このように、この実施の形態においては、後進停止ロッド15の前方への操作力を、走行レバー14を起立させる方向に近い方向の回動力に変換する押圧力方向転換部材45を設けたので、力のロスが少なく、後進停止ロッド15の操作に要する力を小さくすることができ、操作性を向上させることができる。
【0037】
また、この実施の形態においては、受部材50の断面形状を弧状としたので、図10に示した従来装置のように、後進停止ロッド15を基枠部65aの後辺に直接当接させる場合に比較し、後進停止ロッド15による押圧時の当接部Pにおける摺動抵抗が小さくすることができ、後進停止ロッド15の操作に要する力をさらに小さくすることができ、操作性をさらに向上させることができる。
【0038】
また、この実施の形態においては、図8に示すように、取付け軸46の軸心から受部材50との当接部(作用点)Pまでの距離L1を、押圧力方向転換部材45の取付け軸46の軸心から後進停止ロッド15の接続具(力点)47までの距離L2より短く(L1<L2)したので、走行レバー45を回動させるために必要な力Fbに相当する後進停止ロッド15を押圧するために必要な力Faを、Fa=Fb×(L1/L2)と小さくすることができ、さらに操作性が向上する。
【0039】
本発明を実施する場合、上記の実施の形態以外に種々に変更した形態で実施することができる。例えば受部材50として、軸にローラを外嵌したものを用いれば、押圧力方向転換部材と受部材との摺動抵抗は小さくなり、後進停止ロッド15を操作するために要する力がさらに小さくなり、さらに操作性が向上する。
【符号の説明】
【0040】
1:メインフレーム、1a:側板部、2:転圧ローラ、3:軸受部、4:起振装置、5:ベースプレート、6:エンジン、7:水タンク、8:作動油タンク、10:ハンドル、11:ブラケット、12:レバー取付け枠、13:アクセルレバー、14:走行レバー、15:後進停止ロッド、16:保持部材、17:把手、19:油圧ポンプ、20:傾転角制御レバー、23:下枠、24:上枠、24b:縦板部、30:枢着軸、31:大径部、32:ねじ部、33:皿バネ、34:ワッシャ、35:ダブルナット、36:ボルト、37:ナット、39,39A:開口部、45:押圧力方向転換部材、46:取付け軸、47:接続具、48:ボルト、49:ナット、50:受部材、52:ねじりバネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドガイドローラの後部にハンドルを取付け、前記ハンドルの先端に設けたレバー取付け枠に走行レバーを前後方向に傾動可能に取付け、走行レバーが後傾姿勢となる後進時に前記走行レバーを前方に押して緊急停止させる後進停止ロッドを、前記レバー取付け枠に後方に突出して前後動可能に取付けたハンドガイドローラの後進停止装置において、
後進緊急停止時における前記後進停止ロッドの前方への押圧力を、後傾姿勢にある前記走行レバーの起立方向への回動力に変換する押圧力方向転換部材を、前記レバー取付け枠に回動可能に取付けると共に前記後進停止ロッドに接続したことを特徴とするハンドガイドローラの後進停止装置。
【請求項2】
請求項1に記載のハンドガイドローラの後進停止装置において、
前記レバー取付け枠に縦板部を設けると共に、前記縦板部に設けた枢着軸に走行レバーの基枠部を枢着し、
前記基枠部に、少なくとも前記押圧力方向転換部材を当接させる部分の断面形状が弧状をなす受部材を設け、
前記押圧力方向転換部材は下部になるほど前後幅が拡大された板材からなり、前記押圧力方向転換部材の上部を、前記縦板部の前記枢着軸の取付け位置より後方でかつ上方に設けた取付け軸に枢着し、
前記押圧力方向転換部材の下部でかつ後部に、前記後進停止ロッドの前部を接続し、
前記押圧力方向転換部材の傾斜した前辺を、前記受部材に対する当接辺としたことを特徴とするハンドガイドローラの後進停止装置。
【請求項3】
請求項2に記載のハンドガイドローラの後進停止装置において、
前記押圧力方向転換部材の取付け軸の軸心から前記受部材と前記押圧力方向転換部材との当接部までの距離を、前記押圧力方向転換部材の取付け軸の軸心から前記後進停止ロッドと前記押圧力方向転換部材との接続部までの距離より短くしたことを特徴とするハンドガイドローラの後進停止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−84879(P2011−84879A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−236715(P2009−236715)
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【出願人】(594201397)株式会社日立建機カミーノ (18)
【Fターム(参考)】