説明

ハードコートフィルムの製造方法、光学フィルム及び反射防止フィルム

【課題】支持体上に活性エネルギー線硬化樹脂と溶媒を含む塗布液を塗布し、乾燥後に活性エネルギー線を照射して得られる塗布層のハードコートフィルムの製造方法において、密着不良やピンホール状の未塗布箇所の発生などがない、高品質な塗布膜を得ることのできるハードコートフィルムの製造方法及び該ハードコートフィルムの製造方法による光学フィル、反射防止フィルムを提供すること。
【解決手段】支持体上に活性エネルギー線硬化樹脂と溶媒を含む塗布液を塗布し、乾燥後に活性エネルギー線を照射して得られる塗布層のハードコートフィルムの製造方法において、支持体の上に、塗布ヘッドを用いて塗布液を塗布し、乾燥して得られる塗布層のハードコートフィルムの製造方法において、活性エネルギー線照射工程前の塗布膜の残留溶媒の含有率が3〜15質量%であること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体の上に、活性エネルギー線硬化樹脂と溶媒を含む塗布液を塗布乾燥し、活性エネルギー線硬化して得られる光学フィルム、反射防止フィルム及びハードコートフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ用偏光板保護フィルム、有機ELディスプレイ等に用いられる円偏光板の保護フィルムなどの光学用途に使用される透明樹脂フィルムでは、様々な機能を持たせるために幾つかの機能性薄膜が塗設されている。機能性薄膜としては、例えば、帯電防止機能を持たせるための帯電防止層、表面硬度を向上させるためのハードコート層、膜付き性を向上させるための下引き層、カールを防止するためのアンチカール層、或いは防眩層、反射防止層などである。この中で特にハードコート層と反射防止層は重要である。
【0003】
上記透明樹脂フィルムにハードコート層を形成する際、通常活性エネルギー線等の活性エネルギー線により硬化する硬化物層を塗工し、活性エネルギー線を照射し硬化させる。この時、ハードコート層の硬度が十分に得られないという問題があり、この改善が求められていた。更に、ハードコート層を形成したハードコートフィルム上に多層の反射防止層を設ける場合、各反射防止層の膜厚の精度や、ハードコート層や各反射防止層間との密着性の改善、各層の強度が要求されいる。
【0004】
活性エネルギー線硬化型の樹脂を用いたハードコートフィルムの製造方法としては、樹脂フィルム基材上に硬化型塗料を塗布した後、加熱ロールに巻き付けて裏面から加温しつつ活性エネルギー線を照射することにより硬化させて塗布膜を形成する方法(例えば、特許文献1参照。)が記載されている。
【特許文献1】特開平3−4969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術で、プラスチックフィルム上にハードコート層や多層の反射防止膜を形成した反射防止フィルムを作製すると、各層の密着性が悪く、密着不良による色むらの発生や、ピンホール状の未塗布箇所の発生という問題が生じた。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は活性エネルギー線硬化樹脂を用いたハードコートフィルムの製造方法において、密着不良やピンホール状の未塗布箇所の発生などがない、高品質な塗布膜を得ることのできるハードコートフィルムの製造方法及び該ハードコートフィルムの製造方法による光学フィルム、反射防止フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
【0008】
1.
支持体上に、活性エネルギー線硬化樹脂と溶媒を含む塗布液を塗布し、塗布膜を形成する塗布工程と、
前記塗布工程の後に前記支持体上の塗布膜を乾燥する乾燥工程と、
前記乾燥工程の後に前記支持体上の塗布膜に活性エネルギー線を照射する活性エネルギー線照射工程とを有するハードコートフィルムの製造方法において、
前記乾燥工程の後であって、前記活性エネルギー線照射工程の前の前記塗布膜の残留溶媒の含有率が3〜15質量%であることを特徴とするハードコートフィルムの製造方法。
【0009】
2.
前記乾燥工程の後であって、前記活性エネルギー線照射工程の前の塗布膜の温度が15〜80℃であることを特徴とする1に記載のハードコートフィルムの製造方法。
【0010】
3.
前記活性エネルギー線照射工程における活性エネルギー線照射強度が積算光量(波長300〜390nm領域の紫外線積算エネルギー量)で50〜350mJ/cm2であることを特徴とする1又は2に記載のハードコートフィルムの製造方法。
【0011】
4.
前記活性エネルギー線照射工程において、活性エネルギー線の照度が200〜600mW/cm2であることを特徴とする1〜3の何れか1項に記載のハードコートフィルムの製造方法。
【0012】
5.
1〜4の何れか1項に記載のハードコートフィルムの製造方法により得られる塗布膜を少なくとも1層有することを特徴とする光学フィルム。
【0013】
6.
1〜4の何れか1項に記載のハードコートフィルムの製造方法により得られる塗布膜を少なくとも1層有することを特徴とする反射防止フィルム。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、支持体の上に、活性エネルギー線硬化樹脂と溶媒を含む塗布液を塗布し、塗布膜を形成するハードコートフィルムの製造方法において、乾燥工程の後であって、活性エネルギー線照射工程の前の塗布膜の残留溶媒の含有率が3〜15質量%であることにより、密着不良やピンホール状の未塗布箇所の発生などがない、高品質な塗布膜を得ることが出来、高品質な光学フィルム及び反射防止フィルムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施の形態を図1を参照しながら説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0016】
図1は支持体上に塗布膜を形成するハードコートフィルムの製造方法を説明するための生産装置の模式図である。
【0017】
図中、1は生産装置を示す。生産装置1を用いたハードコートフィルムの製造方法は、被塗布物の供給工程2と、塗布工程3と、乾燥工程4と、冷却工程5と、活性エネルギー線照射工程7と、回収工程6とを有している。供給工程2は、帯状の支持体である被塗布物201が巻き芯に巻かれたロール状被塗布物202を繰り出す繰り出し装置(不図示)を有している。
【0018】
塗布工程3は、供給工程2から連続搬送されてくる被塗布物201を保持するバックアップロール301と、バックアップロール301で保持された連続搬送されてくる被塗布物201に塗布液を塗布する塗布ヘッド302と、塗布時に塗布ヘッド302からの塗布液と被塗布物201との間に形成されるビード(塗布液の溜まり)を安定化するために塗布ヘッド302の上流側に設けられた減圧室303とを有する塗布装置304を有している。
【0019】
塗布ヘッド302から吐出する塗布液は、活性エネルギー線硬化型樹脂と溶媒を含み、その流量は、不図示のポンプにより調整可能となっている。塗布ヘッド302から吐出する塗布液の流量は、予め調整した塗布ヘッド302の条件で連続塗布したときに、安定して所定の膜厚の塗布層を形成できる量に決めている。
【0020】
また、減圧室303は減圧度を調整することが可能となっている。減圧室303は減圧ブロワ(不図示)に接続されており内部が減圧状態になる。減圧室303は空気漏れがない状態になっており、かつ、バックアップロールとの間隙も狭く調整され、安定した塗布液のビードを形成するようにしている。
【0021】
乾燥工程4は、塗布工程3で被塗布物201の上に塗布された湿潤塗布膜を乾燥する乾燥装置401を有している。402は乾燥用気体の導入口を示し、403は排出口を示す。乾燥風の温度及び風量は塗布膜の種類及び被塗布物201の種類により適宜決めることが可能となっている。この乾燥工程4で乾燥風の温度及び風量、乾燥時間などの条件を設定することにより乾燥後の塗布膜の残留溶媒含有量を調整することができる。乾燥後の塗布膜の残留溶媒の含有量は、乾燥後の塗布膜の単位質量と、該塗布膜を十分に乾燥した後の質量を比較することにより測定することができる。
【0022】
冷却工程5は、乾燥工程4で乾燥された塗布膜を有する被塗布物201の温度を冷却し、適切な温度に調整することができる。温度を下げる冷却装置501を有し、502は冷却風の入り口を示し、503は冷却風の出口を示す。冷却風の温度及び風量は塗布膜の種類及び被塗布物201の種類により適宜決めることが可能となっている。また、特に冷却工程5を設けずとも適正な冷却温度になる場合は、冷却装置は設置しなくても良い。
【0023】
被塗布物201上に一定の膜厚に塗布された塗布膜は、乾燥工程4を経て、残留溶媒の含有量が3〜15質量%になるように調整される。
【0024】
このように調整した後に塗布膜に活性エネルギー線照射工程7で活性エネルギー線照射装置701を用いて活性エネルギー線を照射し、塗布膜を硬化する。活性エネルギー線照射工程7前の残留溶媒の含有量が3質量%未満であると、重合開始剤のラジカルが発生しても反応進行速度が遅く、十分な硬度の膜が得られず、表面に傷が発生しやすくなる。この結果、塗布膜自身の発塵により、その上に積層させる際にピンホール状の未塗布箇所の故障が発生する。また、後工程の回収工程6で、フィルム同士の融着が発生し、製品の歩留まりが悪くなる。
【0025】
また、活性エネルギー線照射工程7前の残留溶媒の含有量が15質量%を越えると、基材が変形し、例えばわずかな突起やへこみにより、その上に積層させる際に色ムラ、横段等の故障が発生してしまう。
【0026】
また、活性エネルギー線照射工程7の直前の塗布膜の温度は、15〜80℃が好ましく、より好ましくは20〜35℃である。15℃未満であると塗布膜の温度が低く、活性エネルギー線硬化が十分に行われず、硬度不足になる場合がある。80℃を越えると塗布膜の流動性が高くなり過ぎ、活性エネルギー線硬化時の部分的な硬化ムラの発生が起こり、膜厚ムラが生じやすくなる場合がある。塗膜の温度は、レーザー方式・赤外線方式などの一般に公知な非接触温度計により測定でき、幅方向に5箇所を測定した平均値を示す。
【0027】
また、活性エネルギー線照射工程7における活性エネルギー線照射強度が積算光量(波長300〜390nm領域の紫外線積算エネルギー量)は、50〜350mJ/cm2が好ましい。積算光量が50mJ/cm2未満になると光量不足で十分な硬度が得にくくなる場合がある。また、350mJ/cm2を越えると、塗布膜が薄く変色する場合がある。
【0028】
また、照射時の照度は、200〜600mW/cm2が好ましい。照度をこの範囲にすることで、生産性がよく、膜の硬化速度も適切な速度で硬化し、良質な硬化膜が得られる。
【0029】
この様な範囲に照度及び傾きを調整する方法としては、後述する活性エネルギー線照射ランプの種類、反射板の種類/構造(集光型乃至は拡散型)、拡散板の設置、透明樹脂フィルムの搬送速度、ランプ〜透明樹脂フィルム間の距離等を適宜変化させることによって調整することが出来る。
【0030】
上記照度測定は、活性エネルギー線が紫外線の場合は、アイグラフィックス(株)UV METER UVPF−36、家田貿易(株)紫外線強度計 RMX−3W、VLX−3W等により行うことが出来る。
【0031】
活性エネルギー線が紫外線の場合は、紫外線を発生する光源であればいずれでも使用出来、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等の市販のランプを用いることが出来る。
【0032】
回収工程6は、塗布膜が形成された被塗布物201(塗布物)を巻き取る巻き取り装置(不図示)を有している。601は巻き芯に巻き取られ回収されたロール状の塗布物を示す。a〜dは塗布膜を有する被塗布物201を搬送する搬送ロールを示す。
【0033】
以下、本発明に用いられる材料について詳細に説明する。
【0034】
本発明で用いられる樹脂フィルムには特に限定はなく、例えば、透明樹脂フィルムとしてポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルローストリアセテート或いはセルロース誘導体からなるフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ポリカーボネートフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ノルボルネン樹脂系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリスルホン系フィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、アクリルフィルム或いはポリアリレート系フィルム等を挙げることが出来る。
【0035】
本発明では特に幅広の樹脂フィルムに対して優れた硬化を有し、特に幅1.4〜4mの樹脂フィルムに対して好ましく適用される。また、特に樹脂フィルムがセルロースエステルを含有するフィルムに対して優れた効果が期待出来る。これはセルロースエステルフィルムは可塑剤等の添加物を有しており、塗布溶媒による溶解や膨潤を受けやすい性質がある。セルロースエステルフィルムとしては、セルロースアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルローストリアセテートフィルム(TAC)などが挙げられる。特に膜厚が10〜60μmである薄膜フィルムではその影響が顕著であり、高度な平面性が要求される光学フィルムの製造方法として、本発明の方法は優れた効果を発揮することが出来る。
【0036】
本発明で使用するフィルムは、溶融流延製膜で製造されたフィルムであっても、溶液流延製膜で製造されたフィルムであってもよい。
【0037】
以下、セルロースエステルフィルムの製膜法について述べる。セルロースエステルフィルムは一般的に、セルロースエステルフレーク原料及び可塑剤をメチレンクロライドに溶解して粘稠液とし、これに可塑剤を溶解してドープとなし、エクストルーダーダイスから、エンドレスに回転するステンレス等の金属ベルト(バンドともいう)上に流延して、乾燥させ、生乾きの状態でベルトから剥離し、ロール等の搬送装置により、両面から乾燥させて巻き取り、作られる。本発明の光学フィルムの製造に用いられるセルロースエステルフィルムは、乾燥過程でテンター等の装置によってフィルムの端部を把持され、幅方向に張力を付与して幅保持若しくは延伸されたものであることがより高い平面性が得られるために好ましい。
【0038】
本発明の光学フィルムの製造に用いられるセルロースエステルフィルムのセルロースエステル樹脂としては、セルロースの低級脂肪酸エステル樹脂であることが好ましい。セルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは炭素原子数が6以下の脂肪酸が好ましく、例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等がセルロースの低級脂肪酸エステルの特に好ましい例として挙げられる。
【0039】
また、上記以外にも、特開平10−45804号、同8−231761号、米国特許第2,319,052号等に記載のセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートブチレート等の混合脂肪酸エステルを用いることが出来る。上記記載の中でも、最も好ましく用いられるセルロースの低級脂肪酸エステルとしてはセルローストリアセテート(以下、TACという)、セルロースアセテートプロピオネートである。
【0040】
本発明に係るセルロースエステルの数平均分子量は、70,000〜250,000が、成型した場合の機械的強度が強く、適度なドープ粘度となり好ましく、更に好ましくは、80,000〜150,000である。
【0041】
セルロースエステルの平均分子量及び分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて公知の方法で測定することが出来る。これを用いて数平均分子量、重量平均分子量を測定する。
【0042】
測定条件は以下の通りである。
【0043】
〈ゲルパーミエーションクロマトグラフィー:GPCによる分子量測定〉
GPCによる数平均分子量の測定方法は、試料固形分濃度が0.1%となるようにテトラヒドロフランを用いて希釈した。粒子を含むためフィルターを用いて粒子を除去し、カラム温度25℃で、以下の条件により測定を行った。
【0044】
カラム;東ソー社TSKgelG5000HXL−TSKgelG2000H XL
溶離液;THF(テトラヒドロフラン)
ポンプ;L6000(日立製作所(株)製)
流量 :1.0ml/min
検出 ;RI Model 504(GLサイエンス社製)
試料濃度;0.8%
標準試料・校正曲線;標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用する。13サンプルは、ほぼ等間隔にすることが好ましい。
【0045】
本発明で用いられるセルロースエステルとしては、アセチル基及び/またはプロピオニル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をX、またプロピオニル基の置換度をYとした時、下記式(I)及び(II)を同時に満たすセルロースエステルが特に好ましい。
【0046】
(I)2.5≦X+Y≦3.0
(II)0≦Y≦1.2
アシル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96の規定に準じて測定することが出来る。
【0047】
セルロースエステルは綿花リンターから合成されたセルロースエステルと木材パルプから合成されたセルロースエステルのどちらかを単独或いは任意の比率で混合して用いることが出来る。ベルトやドラムからの剥離性が若しくは問題になれば、ベルトやドラムからの剥離性が良い綿花リンターから合成されたセルロースエステルを多く使用すれば生産性が高く好ましい。木材パルプから合成されたセルロースエステルを混合して用いた場合、綿花リンターから合成されたセルロースエステルの比率が40質量%以上で、剥離性の効果が顕著になるため好ましく、60質量%以上が更に好ましく、単独で使用することが最も好ましい。
【0048】
ドープを作製する際に使用される溶媒としては、セルロースエステルを溶解出来る溶媒であれば何でも良く、また単独で溶解出来ない溶媒であっても他の溶媒と混合することにより、溶解出来るものであれば使用することが出来る。一般的には良溶媒であるメチレンクロライドとセルロースエステルの貧溶媒からなる混合溶媒を用い、かつ混合溶媒中には貧溶媒を4〜30質量%含有するものが好ましく用いられる。
【0049】
このほか使用出来る良溶媒としては、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることが出来るが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物、ジオキソラン誘導体、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン等が好ましい有機溶媒(即ち、良溶媒)として挙げられる。
【0050】
セルロースエステルの貧溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等の炭素原子数1〜8のアルコール等を挙げることが出来、これらの貧溶媒は単独若しくは2種以上を適宜組み合わせて用いることが出来る。
【0051】
本発明に用いることのできる可塑剤としては、例えば、リン酸エステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤等を好ましく用いることができる。
【0052】
中でも、多価アルコールエステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤等が好ましい。特に多価アルコールエステル系可塑剤を用いることが好ましい。
【0053】
多価アルコールエステル系可塑剤は2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなる可塑剤であり、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有することが好ましい。好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。
【0054】
本発明に好ましく用いられる多価アルコールは次の一般式(a)で表される。
【0055】
一般式(a) R1−(OH)n
但し、R1はn価の有機基、nは2以上の正の整数、OH基はアルコール性、及び/またはフェノール性水酸基を表す。
【0056】
好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることが出来るが、本発明はこれらに限定されるものではない。アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることが出来る。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
【0057】
多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることが出来る。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
【0058】
好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることが出来るが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0059】
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることが出来る。炭素数は1〜20であることが更に好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
【0060】
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることが出来る。
【0061】
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることが出来る。
【0062】
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基、メトキシ基あるいはエトキシ基などのアルコキシ基を1〜3個を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタレンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることが出来る。特に安息香酸が好ましい。
【0063】
多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることが更に好ましい。分子量が大きい方が揮発し難くなるため好ましく、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
【0064】
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は、全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
【0065】
以下に、多価アルコールエステルの具体的化合物を例示する。
【0066】
【化1】

【0067】
【化2】

【0068】
【化3】

【0069】
【化4】

【0070】
グリコレート系可塑剤は特に限定されないが、アルキルフタリルアルキルグリコレート類が好ましく用いることが出来る。アルキルフタリルアルキルグリコレート類としては、例えばメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が挙げられる。
【0071】
フタル酸エステル系可塑剤としては、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルテレフタレート等が挙げられる。
【0072】
クエン酸エステル系可塑剤としては、クエン酸アセチルトリメチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等が挙げられる。
【0073】
脂肪酸エステル系可塑剤として、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。
【0074】
多価カルボン酸エステル系可塑剤も好ましく用いることができる。具体的には特開2002−265639号公報の段落番号[0015]〜[0020]記載の多価カルボン酸エステルを可塑剤の一つとして添加することが好ましい。
【0075】
また、他の可塑剤としてリン酸エステル系可塑剤を用いることも出来、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が挙げられる。
【0076】
このほか、特開2003−12859号記載のアクリルポリマーなどを含有させることも好ましい。
【0077】
これらの可塑剤は単独或いは2種以上併用して用いることが出来る。
【0078】
可塑剤の使用量は寸法安定性、加工性の点を考慮すると、セルロースエステルに対して、1〜40質量%添加させることが出来、3〜20質量%の範囲で添加することが好ましく、更に好ましくは4〜15質量%である。3質量%未満の場合は、スリット加工や打ち抜き加工した際、滑らかな切断面を得ることが出来ず、切り屑の発生が多くなる。
【0079】
本発明のセルロースエステルフィルムには酸化防止剤や紫外線吸収剤などを添加することが好ましい。
【0080】
上記酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレイト等が挙げられる。特に2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。これらの化合物の添加量は、セルロースエステルに対して質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。
【0081】
また、この他、カオリン、タルク、ケイソウ土、石英、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、アルミナ等の無機微粒子、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属の塩などの熱安定剤を加えてもよい。
【0082】
本発明のセルロースエステルフィルムは、その高い寸法安定性から、偏光板または液晶表示用部材等に使用されるが、偏光板または液晶等の劣化防止の観点から、紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
【0083】
紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。具体的には380nmの透過率が10%未満であることが好ましく、特に5%未満であることがより好ましい。
【0084】
本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。また、特開平6−148430号、特開2002−47357号記載の高分子紫外線吸収剤も好ましく用いられる。或いは特開平10−152568号に記載されている紫外線吸収剤を用いることも出来る。
【0085】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては下記一般式〔1〕で示される化合物が好ましく用いられる。
【0086】
【化5】

【0087】
式中、R1、R2、R3、R4及びR5は同一でも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシル基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシル基、アシルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、モノ若しくはジアルキルアミノ基、アシルアミノ基または5〜6員の複素環基を表し、R4とR5は閉環して5〜6員の炭素環を形成してもよい。
【0088】
また、上記記載のこれらの基は、任意の置換基を有していて良い。
【0089】
以下に本発明に係る紫外線吸収剤の具体例を挙げるが、これらに限定されない。
【0090】
UV−1:2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−2:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−3:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−4:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−5:2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−6:2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)
UV−7:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−8:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール(TINUVIN171、チバスペシャルティケミカルズ(株)製)
UV−9:オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物(TINUVIN109、チバスペシャルティケミカルズ(株)製)
以下にベンゾフェノン系紫外線吸収剤の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0091】
UV−10:2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン
UV−11:2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
UV−12:2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン
UV−13:ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムでは、フィルムに滑り性を付与し、ロール状フィルムのブロッキングを防止するために微粒子を添加することが好ましい。
【0092】
本発明に係る微粒子としては、無機化合物の微粒子または有機化合物の微粒子が挙げられる。
【0093】
無機化合物としては、珪素を含む化合物、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくは、ケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムであるが、セルロースエステル積層フィルムの濁度を低減出来るので、二酸化珪素が特に好ましく用いられる。
【0094】
二酸化珪素の微粒子としては、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)等の市販品が使用出来る。
【0095】
酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)等の市販品が使用出来る。
【0096】
有機化合物としては、例えば、シリコーン樹脂、弗素樹脂及びアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、中でも、シリコーン樹脂が好ましく用いられる。
【0097】
上記記載のシリコーン樹脂の中でも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)等の商品名を有する市販品が使用出来る。
【0098】
微粒子の1次平均粒子径としては、ヘイズを低く抑えるという観点から、20nm以下が好ましく、更に好ましくは、5〜16nmであり、特に好ましくは、5〜12nmである。例えばアエロジル200V、アエロジルR972V(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、それらを好ましく使用することが出来る。
【0099】
《調製方法A》
溶媒と微粒子を撹拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。微粒子分散液をドープ液に加えて撹拌する。
【0100】
《調製方法B》
溶媒と微粒子を撹拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。別に溶媒に少量のセルロースエステルを加え、撹拌溶解する。ここで添加するセルロースエステルとして、本発明の固形物を添加することが特に好ましい。
【0101】
これに前記微粒子分散液を加えて撹拌する。これを微粒子添加液とする。微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する。
【0102】
《調製方法C》
溶媒に少量のセルロースエステルを加え、撹拌溶解する。これに微粒子を加えて分散機で分散を行う。これを微粒子添加液とする。微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する。
【0103】
調製方法Aは二酸化珪素微粒子の分散性に優れ、調製方法Cは二酸化珪素微粒子が再凝集しにくい点で優れている。中でも、上記記載の調製方法Bは二酸化珪素微粒子の分散性と、二酸化珪素微粒子が更に再凝集しにくい等、両方に優れている好ましい調製方法である。
【0104】
《分散方法》
二酸化珪素微粒子を溶媒などと混合して分散する時の二酸化珪素の濃度は5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%が更に好ましく、15〜20質量%が最も好ましい。分散濃度は高い方が、添加量に対する液濁度は低くなる傾向があり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
【0105】
使用される溶媒は低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては特に限定されないが、セルロースエステルの製膜時に用いられる溶媒を用いることが好ましい。
【0106】
セルロースエステルに対する二酸化珪素微粒子の添加量はセルロースエステル100質量部に対して、二酸化珪素微粒子は0.01〜0.3質量部が好ましく、0.05〜0.2質量部が更に好ましく、0.08〜0.12質量部が最も好ましい。添加量は多い方が、動摩擦係数に優れ、添加量が少ない方がヘイズが低く、凝集物も少ない点が優れている。
【0107】
分散機は通常の分散機が使用出来る。分散機は大きく分けてメディア分散機とメディアレス分散機に分けられる。二酸化珪素微粒子の分散にはメディアレス分散機がヘイズが低く好ましい。
【0108】
メディア分散機としてはボールミル、サンドミル、ダイノミルなどが挙げられる。
【0109】
メディアレス分散機としては超音波型、遠心型、高圧型などがあるが、本発明においては高圧分散装置が好ましい。高圧分散装置は、微粒子と溶媒を混合した組成物を、細管中に高速通過させることで、高剪断や高圧状態など特殊な条件を作りだす装置である。高圧分散装置で処理する場合、例えば、管径1〜2000μmの細管中で装置内部の最大圧力条件が9.807MPa以上であることが好ましい。更に好ましくは19.613MPa以上である。またその際、最高到達速度が100m/秒以上に達するもの、伝熱速度が420kJ/時間以上に達するものが好ましい。
【0110】
上記のような高圧分散装置にはMicrofluidics Corporation社製超高圧ホモジナイザ(商品名マイクロフルイダイザ)或いはナノマイザ社製ナノマイザがあり、他にもマントンゴーリン型高圧分散装置、例えばイズミフードマシナリ製ホモジナイザ、三和機械(株)社製UHN−01等が挙げられる。
【0111】
また、これらの微粒子はフィルムの厚味方向で均一に分布していてもよいが、より好ましくは主に表面近傍に存在するように分布していることが好ましく、例えば、共流延法により、2種以上のドープを用いて、微粒子を主に表層側に配置されたドープに添加することが、滑り性が高く、ヘイズが低いフィルムが得られるので好ましい。好ましくは3種のドープを使用して表層側の少なくとも1つのドープ若しくは表層側の2つのドープに主に微粒子を添加することが望ましく、中心層を形成するドープには微粒子がほとんど含まれないか、まったく含まれないことが好ましい。可塑剤或いは紫外線吸収剤などでブリードアウトの恐れがある添加剤は主に中心層を形成するドープに添加し、表層側の2つのドープには中心層を形成するドープへの添加量に対して80質量%未満の添加量とすることが好ましく、より好ましくは50質量%未満とすることであり、ほとんど添加しないかまったく添加しないことが、工程汚染を防止する点でより好ましい。
【0112】
この様な製膜工程で得られたセルロースエステルフィルムを一度巻き取った後、或いは巻き取ることなく連続的に、本発明のハードコートフィルムの製造方法によって、塗布層を設けることが出来る。
【0113】
本発明に係る活性エネルギー線線硬化樹脂層について説明する。活性エネルギー線線硬化樹脂層とは紫外線や電子線のような活性エネルギー線照射により架橋反応などを経て硬化する樹脂を主たる成分とする層をいう。活性エネルギー線線硬化樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂などが代表的なものとして挙げられるが、紫外線や電子線以外の活性エネルギー線照射によって硬化する樹脂でもよい。紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、または紫外線硬化型エポキシ樹脂等を挙げることが出来る。
【0114】
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、若しくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることが出来る(例えば特開昭59−151110号)。
【0115】
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂は、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることが出来る(例えば、特開昭59−151112号)。
【0116】
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光反応開始剤を添加し、反応させたものを挙げることが出来る(例えば、特開平1−105738号)。この光反応開始剤としては、ベンゾイン誘導体、オキシムケトン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体等のうちから、1種若しくは2種以上を選択して使用することが出来る。
【0117】
また、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることが出来る。これらの樹脂は通常公知の光増感剤と共に使用される。また上記光反応開始剤も光増感剤としても使用出来る。具体的には、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、α−アミロキシムエステル、テトラメチルウラムモノサルファイド、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることが出来る。また、エポキシアクリレート系の光反応剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることが出来る。紫外線硬化性樹脂組成物に用いられる光反応開始剤また光増感剤は該組成物100質量部に対して0.1〜15質量部であり、好ましくは1〜10質量部である。
【0118】
活性エネルギー線としては、電子線、X線、放射線、可視光線、紫外線等が挙げられるが、特に紫外線が好ましく用いられ、その場合、紫外線を発生する光源であればいずれでも使用出来る。例えば、前記した低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることが出来る。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、好ましくは、前述のように積算光量(波長300〜390nm領域の紫外線積算エネルギー量)で50〜350mJ/cm2である。
【0119】
また、活性線を照射する際には、フィルムの搬送方向に張力を付与しながら行うことが好ましく、更に好ましくは幅方向にも張力を付与しながら行うことである。付与する張力は30〜300N/mが好ましい。張力を付与する方法は特に限定されず、バックロール上で搬送方向に張力を付与してもよく、テンターにて幅方向、若しくは2軸方向に張力を付与してもよい。これによって更に平面性が優れたフィルムを得ることが出来る。
【0120】
この活性エネルギー線線硬化樹脂層に、表示装置パネルの表面に防眩性を与えるために、また他の物質との密着性を防ぐために、或いは耐擦り傷性付与のために、無機或いは有機の微粒子を加えることも出来る。例えば、無機粒子としては酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化錫、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、硫酸カルシウム等を挙げることが出来、また有機粒子としては、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、アクリルスチレン系樹脂粉末、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末、シリコン系樹脂粉末、ポリスチレン系樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、ベンゾグアナミン系樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、或いはポリ弗化エチレン系樹脂粉末等紫外線硬化性樹脂組成物に加えることが出来る。これらの粒子粉末の平均粒径としては、0.01μm〜10μmであり、紫外線硬化樹脂組成物と微粒子粉末との割合は、樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜20質量部となるように配合することが望ましい。防眩効果を付与するには、平均粒径0.1〜3μm、樹脂組成物100質量部に対して1〜15質量部が好適である。
【0121】
また更に、ブロッキング防止機能を果たすものとして、或いは微細な凹凸を形成するため上述したものと同じ成分で、体積平均粒径0.005〜0.1μmの粒子を樹脂組成物100質量部に対して0.1〜5質量部、併せて用いることも出来る。
【0122】
塗布液に含まれる有機溶媒は紫外線照射前に蒸発させ、残留溶媒の含有率が3〜15質量%となるように、乾燥工程で乾燥する。
【0123】
塗布液として使用出来る有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、シクロヘキサノールなどのアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸メチル、乳酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、酪酸エチルなどのエステル類、グリコールエーテル類(プロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテル(具体的にはプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等)、プロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテルエステル(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート))、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の炭化水素類その他の溶媒などが挙げられる。特にこれらに限定されるものではないが、これらを適宜混合した溶媒が好ましく用いられる。
【0124】
活性エネルギー線線硬化樹脂を含有する塗布液のハードコートフィルムの製造方法としては、グラビアコーター、スピナーコーター、ワイヤーバーコーター、ロールコーター、リバースコーター、押出コーター、エアードクターコーター等公知の方法を用いることが出来る。塗布量はウェット膜厚で0.1〜30μmが適当で、好ましくは、0.5〜15μmである。
【0125】
活性エネルギー線線硬化樹脂を含有する塗布液は塗布乾燥された後、紫外線等の活性線を照射するが、照射の条件は前述した通りである。照射時間に特に制限はないが、0.1秒〜5分が好ましく、硬化性樹脂の硬化効率、作業効率等から0.1秒〜1分がより好ましい。
【0126】
硬化時の酸素阻害を防ぎ、表面硬度を確保するため、N2等の不活性ガスを満たし、酸素濃度を5%以下で硬化させる方法が用いられる。好ましくは酸素濃度3%以下がよい。
【0127】
本発明の活性エネルギー線線硬化樹脂を含有する塗布液には好ましくは有機溶媒が用いられる。このとき、樹脂フィルムを溶解若しくは膨潤させる性質を有する溶媒を用いることが塗設された層と樹脂フィルムとの密着性に優れるため好ましく用いられる。溶媒としては前述の溶媒が用いられる。
【0128】
本発明のハードコートフィルムの製造方法により製造されたハードコート層上に高屈折率層或いは低屈折率層などの反射防止層を塗設し光学フィルムを形成することが出来、反射光の色ムラが著しく改善された光学フィルムが得られる。
【0129】
本発明の製造方法により得られる光学フィルムの層構成としては、下記の例が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。このうち、クリアハードコート層、防眩性ハードコート層、中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層のうち少なくとも1層は塗布乾燥の後、活性線照射し硬化する層とすることが出来る。反射防止層はTiやSiのどの金属アルコキシドを用いたゾルゲル法で形成してもよく、Zr、Zn、Ti、Si、Sn、In等の金属酸化物微粒子とバインダーを含む組成物を塗設してもよい。
バックコート層/樹脂フィルム/クリアハードコート層/高屈折率層/低屈折率層
バックコート層/樹脂フィルム/クリアハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
帯電防止層/樹脂フィルム/クリアハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
バックコート層/樹脂フィルム/防眩性ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層
バックコート層/樹脂フィルム/防眩性ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
帯電防止層/樹脂フィルム/防眩性ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
本発明によって得られた光学フィルムは平面性に優れるため、特に液晶表示装置、或いは有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイの前面に用いられる反射防止フィルム或いは防眩フィルム、クリアハードコートフィルムとして有用であり、優れた視認性を提供することが出来、これらを偏光板保護フィルムとして用いた偏光板或いは表示装置を提供することが出来る。
【実施例】
【0130】
以下、本発明を実施例にて具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0131】
《透明樹脂フィルムの作製》
(ドープ組成物)
セルローストリアセテート(アセチル置換度2.88) 100質量部
エチルフタリルエチルグリコレート 5質量部
チヌビン109(チバスペシャルティケミカルズ(株)製) 1質量部
チヌビン171(チバスペシャルティケミカルズ(株)製) 1質量部
酸化珪素微粒子(アエロジル200V) 0.1質量部
メチレンクロライド 430質量部
メタノール 90質量部
上記組成物を密閉容器に投入し、加圧下で80℃に保温し撹伴しながら完全に溶解した。
【0132】
次に、このドープ組成物を濾過、冷却して33℃に保ちステンレスバンド上に均一に流延し、剥離が可能になるまで溶媒を蒸発させたところで、ステンレスバンド上から剥離後、テンターによって幅把持しながら乾燥させ、幅手方向で1.1倍となるように延伸し、更に多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させ膜厚40μm、幅1.5m、長さ2000mの透明樹脂フィルムを得た。
【0133】
この時、ステンレスバンドに接している面をb面とし、もう一方の面をa面とする。
【0134】
《バックコート層(BC層)の形成》
(バックコート層(BC層)塗布組成物)
アセトン 72質量部
メタノール 18質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 10質量部
ジアセチルセルロース 0.5質量部
2%アセトン分散超微粒子シリカ(日本アエロジル(株)製アエロジル200V)
0.1質量部
上記透明樹脂フィルム裏面に、上記バックコート層塗布組成物(粘度:2.0mPa・s)をウェット膜厚13μmとなるようにダイを用いて塗布し、80℃に設定された乾燥部で乾燥して、BC層(乾燥膜厚:0.5μm)を設けた。(粘度は東機産業(株)E型粘度計で測定した値を示す。)
《クリアハードコート層(CHC層)の形成》
(クリアハードコート層(CHC層)塗布組成物)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート単量体 60質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート2量体 20質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート3量体以上の成分 20質量部
イルガキュア184(チバスペシャルティケミカルズ(株)製) 2質量部
イソプロピルアルコール 50質量部
酢酸エチル 50質量部
メチルエチルケトン 50質量部
上記作製した透明樹脂フィルムの表面に、上記クリアハードコート層塗布組成物(粘度5.9mPa・s)を押し出しコート(コータの種類:ダイ、減圧度:−1000Pa、塗布液吐出量:21g/m2、塗布速度:50m/min)、次いで乾燥工程で表1に示す乾燥後の残留溶媒含有量になるように熱風温度及び風量を調整し乾燥した。
【0135】
乾燥工程4では乾燥終了までは炉内温度70℃、境膜伝熱数h20W/m2℃、乾燥後は炉内温度50℃、境膜伝熱数h30W/m2℃、ロールサポート方式の2プロセスを設定し、連続乾燥した。冷却工程5は温度30℃、境膜伝熱数h30W/m2℃で塗布膜の温度を調整し、必要以上に乾燥しないように残留溶剤量を固定化するゾーンである。
【0136】
残留溶媒含有量は、乾燥後の塗布膜をコートしたフィルムを真空乾燥機にて、120℃2時間の真空乾燥を行う前後の質量比から計算した。(セントラル科学貿易(株)製FD−3−85MP型真空乾燥機を使用、減圧度:0.5TorrPa、試料の大きさ:100mm×100mm)
残留溶媒量%=(乾燥後の試料の質量/乾燥前の試料の質量)×100
乾燥後の試料の質量及び乾燥前の試料の質量は、大西計器(株)製電子天秤GF−300で測定した。
【0137】
乾燥部で乾燥した後、冷却装置で冷却し、塗布膜の温度が表1に示す温度になるように調整した。その後、紫外線照射設備を使用して紫外線を照射した。照度及び積算光量は表1に記載のようにし、調整はランプ電力、ランプ及び拡散板の形状または透明樹脂フィルムの搬送速度を変化させて行い、膜厚7μmのクリアハードコート層(CHC層)を有するハードコートフィルムNo.1〜26を得た。酸素濃度は3%で硬化させた。
【0138】
活性線光源には紫外線ランプ(アイグラフィック(株)社製高圧水銀タイプ)を用いた。
評価
作製したハードコートフィルムNo.1〜26を用いて下記の評価を行い、結果を下記表1に記載した。
【0139】
《クリアハードコート層の評価》
(平面性)
各フィルムの塗布開始から10mの中央部で、幅90cm、長さ100cmの大きさに各試料を切り出し、50W蛍光灯を5本並べて試料台に45°の角度から照らせるように高さ1.5mの高さに固定し、試料台の上に各フィルム試料を置き、フィルム表面に反射して見える凹凸を目で見て、次のように判定した。この方法によって「つれ」及び「しわ」の判定が出来る。
【0140】
◎:蛍光灯が5本とも真っすぐに見えた
○:蛍光灯が少し曲がって見えるところがある
△:蛍光灯が全体的に少し曲がって見える
×:蛍光灯が大きくうねって見える
以上により得られた結果を、表1に示す。
【0141】
【表1】

【0142】
更に作製したハードコートフィルムNo.3を用いて下記の反射防止層を形成し、反射防止フィルムを作製した。
【0143】
《多層反射防止層の形成》
(中屈折率層塗布組成物)
テトラ(n)ブトキシチタン 250質量部
末端反応性ジメチルシリコーンオイル(日本ユニカー社製L−9000)
0.48質量部
アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製KBE903)
22質量部
UV硬化性エポキシ樹脂(旭電化社製KR500) 21質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 4900質量部
イソプロピルアルコール 4840質量部
(高屈折率層塗布組成物)
テトラ(n)ブトキシチタン 310質量部
末端反応性ジメチルシリコーンオイル(日本ユニカー社製L−9000)
0.4質量部
アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製KBE903)
4.8質量部
UV硬化性エポキシ樹脂(旭電化社製KR500) 4.6質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 4900質量部
イソプロピルアルコール 4800質量部
(テトラエトキシシラン加水分解物Aの調製)
テトラエトキシシラン580gとエタノール1144gを混合し、これにクエン酸水溶液(クエン酸1水和物5.4gを水272gに溶解したもの)を添加した後に、25℃にて1時間攪拌することでテトラエトキシシラン加水分解物Aを調製した。
【0144】
(低屈折率層塗布組成物)
テトラエトキシシラン加水分解物A 1020質量部
末端反応性ジメチルシリコーンオイル(日本ユニカー社製L−9000)
0.42質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 2700質量部
イソプロピルアルコール 6300質量部
上記CHC層を有するハードコートフィルム3のCHC層の上に、中屈折率層をダイを用いて塗布し、乾燥後表2に示す残留溶媒含有量となるように乾燥し、乾燥部で乾燥した後、冷却装置で冷却し、塗布膜の温度が表2に示す温度になるように調整した。その後、紫外線照射設備を使用して紫外線を照射した。照度及び積算光量は表2に記載のようにし、調整はランプ電力、ランプ及び拡散板の形状または透明樹脂フィルムの搬送速度を変化させて行った。このように作製した中屈折率層の上に高項屈折率層、低屈折率層の順番でダイを用いて塗布し、乾燥後の残留溶媒含有量は5%となるように乾燥し、乾燥部で乾燥した後、冷却装置で冷却し、塗布膜の温度が30℃になるように調整した。その後、紫外線照射設備を使用して紫外線を照射した。この時の照度を300mW/cm2、積算光量を100mJ/cm2とした。このように各反射防止層を硬化させ、多層反射防止層を形成した。酸素濃度は3%で硬化させた。
【0145】
この時の各層の膜厚を、中屈折層が0.075μm、高屈折層が0.070μm、低屈折率層が0.093μmとなるように塗布ヘッドからの塗布物の流量を調整し、多層反射防止層を有する反射防止フィルムNo.27〜42を作製した。
【0146】
各層の屈折率と膜厚は、各層を単独で塗工したサンプルについて、分光光度計の分光反射率の測定結果から求める。分光光度計はU−4000型(日立製作所製)を用いて、サンプルの裏面を粗面化した後、黒色のスプレーで光吸収処理を行い、裏面の光の反射を防止して、5度正反射の条件にて可視光領域(400〜700nm)の反射率測定を行う。出来上がった各層単独の屈折率は中屈折率層1.65、高屈折率層1.90、低屈折率層1.45であった。
【0147】
評価
作製した反射防止フィルムNo.27〜42を用いて下記の評価を行い、結果を下記表2に記載した。
【0148】
《反射防止フィルムの評価》
(色ムラの評価)
上記作製した各反射防止フィルムの反射防止層を塗設したのとは反対側の面に黒いアクリル板を貼り付け、反射防止層塗設面側表面を強い白色光源で照射し、目視による色ムラ発生の有無を確認し、更に、アクリル板を外し、透過光による色ムラ発生の有無を確認し、下記の基準に則り色ムラの評価を行った。
【0149】
◎:黒アクリル板貼付品でも、色ムラの発生は認められない
○:黒アクリル板貼付品で極弱い色ムラが認められるが、透過光による観察では色ムラが認められない
△:黒アクリル板貼付品の一部で色ムラが認められるが、実用上許容の範囲にある
×:黒アクリル板貼付品及び透過光による観察で色ムラがはっきりと認められ、実用上問題がある
以上により得られた結果を、表2に示す。
【0150】
【表2】

【0151】
表1及び表2より明らかなように、本発明を用いて作製した光学フィルムは、比較例に対し、クリアハードコート層を塗設した状態において平面性が良好であり、更にその上に反射防止層を塗設した状態でも、色ムラの発生がなく、塗膜の均一性に優れていることが分かる。更に、光学薄膜を形成する際に破断しにくい光学フィルムであった。
【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1】塗布物を生産する生産装置の模式図である。
【符号の説明】
【0153】
1 生産装置
2 供給工程
201 被塗布物
202 ロール状被塗布物
3 塗布工程
301 バックアップロール
302 塗布ヘッド
303 減圧室
304 塗布装置
4 乾燥工程
401 乾燥装置
402 導入口
403 排出口
5 冷却工程
501冷却装置
502 入り口
503 出口
6 回収工程
601 ロール状塗布物
7 活性エネルギー線照射工程
701 活性エネルギー線照射装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、活性エネルギー線硬化樹脂と溶媒を含む塗布液を塗布し、塗布膜を形成する塗布工程と、
前記塗布工程の後に前記支持体上の塗布膜を乾燥する乾燥工程と、
前記乾燥工程の後に前記支持体上の塗布膜に活性エネルギー線を照射する活性エネルギー線照射工程とを有するハードコートフィルムの製造方法において、
前記乾燥工程の後であって、前記活性エネルギー線照射工程の前の前記塗布膜の残留溶媒の含有率が3〜15質量%であることを特徴とするハードコートフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記乾燥工程の後であって、前記活性エネルギー線照射工程の前の塗布膜の温度が15〜80℃であることを特徴とする請求項1に記載のハードコートフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記活性エネルギー線照射工程における活性エネルギー線照射強度が積算光量(波長300〜390nm領域の紫外線積算エネルギー量)で50〜350mJ/cm2であることを特徴とする請求項1又は2に記載のハードコートフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記活性エネルギー線照射工程において、活性エネルギー線の照度が200〜600mW/cm2であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のハードコートフィルムの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載のハードコートフィルムの製造方法により得られる塗布膜を少なくとも1層有することを特徴とする光学フィルム。
【請求項6】
請求項1〜4の何れか1項に記載のハードコートフィルムの製造方法により得られる塗布膜を少なくとも1層有することを特徴とする反射防止フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2008−242003(P2008−242003A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−81264(P2007−81264)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】