説明

ハードコート剤およびハードコートフィルム

【課題】 摩擦抵抗力が下がることで保護フィルムを用いることなく巻き取りが可能なハードコートフィルムを得る。
【解決手段】 多官能重合性モノマー100重量部に対して、平均一次粒子径が80〜500nmである有機微粒子を0.5〜50重量部配合する。該有機微粒子がニ官能以上の(メタ)アクリレートを用いて乳化重合法により合成されたものを用いる。このハードコート剤を透明プラスチックフィルムに塗布した場合、ドライ状態での膜厚が10μm以下であり、JIS K 7361−1に基づいて測定した全光線透過率が90%以上、JIS K 7136に基づいて測定したヘイズ値が1.5%以下であるハードコートフィルムとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハードコート剤およびハードコートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルムはその加工性、透明性等に加えて、軽量、安価といったことから、ガラスに変わり自動車業界、家電業界を始めとして種々の産業で使用されており、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイなどのフラットパネルディスプレイやタッチパネル、パーソナルコンピュータなどのディスプレイ用としても広く用いられている。しかし、ガラスと比較して柔らかく、表面に傷が付き易い等の欠点を有している。
【0003】
この欠点を改良するために、シリコーン系、またはアクリル系の樹脂バインダー中に、アルミナ、シリカ、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、シリカなどの金属酸化物微粒子を配合したハードコート剤が用いられている。このハードコート剤はフィルムの表面に塗工して乾燥させた後に加熱、または紫外線にて硬化することにより、表面に傷が付きにくいハードコートフィルムを作製できる。
【特許文献1】特開2002−220487
【特許文献2】特開2005−194363
【特許文献3】特開2001−13303
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、両面にハードコート層を設けたハードコートフィルムは塗工面が平滑になってしまうため、Roll to Rollの生産ではそのままでは巻取りができず、片面に保護フィルムを張り合わせる方法が取られていた。また、タッチパネル用途に用いる場合は、保護フィルムを貼り合せたことで耐熱性の問題や製造ラインの変更が必要になる場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記の課題を解決するために検討されたものであり、多官能重合性モノマー100重量部に対して、平均一次粒子径が80〜500nmの有機微粒子が0.5〜50重量部配合されてなるハードコート剤である。
【発明の効果】
【0006】
多官能重合性モノマー100重量部に対して、平均一次粒子径が80〜500nmの有機微粒子を用いることにより塗工面に微細な凹凸が形成され、塗工両面を貼り合わせする際に塗膜接触面積が減少し摩擦力が低下、その結果滑り性が向上することで、保護フィルムを用いることなくRoll to Rollの生産が可能となり、経済的にも安価となる。更に本発明のハードコート剤はインサート成型用フィルムの樹脂としても利用することができる。以下、本発明について詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明ではバインダー成分として、多官能重合性モノマーが用いられる。該多官能重合性モノマーは、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基を分子中に少なくとも2個以上有するものである。中でも(メタ)アクリロイル基を有するものはラジカル反応性が非常に高く、速硬性と高硬度の点から優位性がある。具体的には、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは、単独、または混合して使用しても良い。
【0008】
前記の多官能(メタ)アクリレートの中でも、とりわけジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが、ハードコート層の耐擦傷性、透明性に優れることから好ましい。
【0009】
本発明に係る有機微粒子としては、乳化重合法により合成されたスチレン系樹脂、スチレン−アクリル系共重合樹脂、アクリル系樹脂などの有機微粒子が挙げられる。乳化重合法以外の懸濁重合法では平均一次粒子径が80〜500nmの有機微粒子を合成することが難しく、また分散重合法では架橋剤の添加量を増やすことができないために多官能重合性モノマー内に溶解してしまい、プラスチックフィルム上に硬化した場合に表面に凹凸を形成することができないため、架橋剤を容易に添加することができる乳化重合法が好ましい。
【0010】
有機微粒子の平均一次粒子径は80〜500nmのものが好適である。乳化重合法では平均一次粒子径が80nm未満および500nmを越えると有機微粒子を合成することは難しい。また、80nm未満では表面に凹凸を形成するのに必要な添加量が多くなるためにハードコート性能が得られないのに対し、500nmを越えるとヘイズが上昇し、視認性が低下する問題が発生する。有機微粒子の形状は、球状、数珠状が好ましく用いられるが、特にこれらに限定されない。尚、平均一次粒子径とは凝集を起こしていない単一の粒子の径であり、球状のものについてはその直径を、球状以外のものについては長軸径、短軸径の算術平均値を示し、電子顕微鏡により測定される値である。
【0011】
有機微粒子の添加量は、多官能重合性モノマーの樹脂固形分100重量部に対し、0.5〜50重量部が好適であり、0.5重量部未満では表面の凹凸を形成することができず、また50重量部を越えると十分なハードコート性能を発揮することができない。ハードコートフィルム用に用いる場合は0.5〜50重量部が好ましい。さらに好ましくは1〜20重量部である。
【0012】
本発明では、前記の有機微粒子の凝集を防ぎ、優れた分散性及び分散安定性を確保するため分散剤を微粒子100重量部に対して、0.1〜5重量部が配合されてもよい。分散剤としては種々の界面活性剤が挙げられる。例えば、硫酸エステル系、カルボン酸系、ポリカルボン酸系等のアニオン型界面活性剤、高級脂肪族アミンの4級塩等のカチオン型界面活性剤、高級脂肪酸ポリエチレングリコールエステル系等のノニオン型界面活性剤、シリコン系界面活性剤、フッソ系界面活性剤、アマイドエステル結合を有する高分子活性剤等が挙げられる。
【0013】
本発明のハ−ドコ−ト剤にはラジカル型重合開始剤を添加するが、ラジカル型重合開始剤としては特に制限はなく各種公知のものを使用することができる。ラジカル型重合開始剤としては、ベンゾフェノン及び他のアセトフェノン、ベンジル、ベンズアルデヒド及びo−クロロベンズアルデヒド、キサントン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、9,10−フェナントレンキノン、9,10−アントラキノン、メチルベンゾインエーテル、エチルベンゾインエーテル、イソプロピルベンゾインエーテル、α,α−ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジメトキシアセトフェノン、1−フェニル−1,2−プロパンジオール−2−o−ベンゾイルオキシム及びα,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン等が挙げられる。市販品としては、イルガキュア−184、イルガキュア−651(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)、ダロキュア−1173(メルク社製)などの光開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチル−パーオキシベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリル、ジアセチルパーオキサイド、ジプロピルパーオキサイド、ジブチルパーオキサイド、ジカプリルパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、p,p’−ジクロルベンゾイルパーオキサイド、p,p’−ジメトキシベンゾイルパーオキサイド、p,p’−ジメチルベンゾイルパーオキサイドなどの熱開始剤が挙げられる。添加量は重合性多官能モノマーの樹脂固形分100重量部に対して1〜10重量部である。
【0014】
この他に有機溶剤を添加することもできる。有機溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素系、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系、塩化メチレン、塩化エチレンなどのハロゲン化炭化水素系、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ペンタノン、イソホロンなどのケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系、エチルセロソルブなどのセロソルブ系溶剤などが挙げられる。
【0015】
その他、各種添加剤、例えば、帯電防止剤、屈折率調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、光増感剤、レベリング剤、消泡剤、無機充填剤、カップリング剤、防腐剤、可塑剤、流動調整剤、増粘剤、pH調整剤等などを配合材料としてもよい。
【0016】
本発明のハードコート剤が塗布される基材としてのプラスチックフィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッソ樹脂フィルム、ナイロンフィルム、アクリル樹脂フィルム等、いずれも公知のものを用いることができる。
【0017】
また、本発明のハードコート剤との密着性を向上させる目的で、サンドブラスト法や溶剤処理法などによる表面の凹凸化処理、あるいはコロナ放電処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理、電子線照射処理などの表面の酸化処理などの表面処理を施してもよい。
【0018】
本発明のハードコート剤のフィルムへの塗布方法、塗布厚については特に制限はなく、公知の方法、例えばグラビアコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法などを用いることができ乾燥後塗膜の厚みを10μm以下となるように塗布する。10μmを越えると作製したフィルムが反るなど取扱上の問題がある。より好ましくは、2〜5μmである。
【0019】
電子線を照射する場合は、走査型あるいはカーテン型の電子線加速器を用い、加速電圧1000keV以下、好ましくは100〜300keVのエネルギーを有し、紫外線を照射する場合は、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプ等を用い、100〜400nm、好ましくは200〜400nmの波長領域で、100〜800mJ/cmのエネルギーを有する紫外線を照射する。また、必要に応じて窒素雰囲気下にて硬化してもよい。
【0020】
以下、本発明について実施例、比較例を挙げてより詳細に説明するが、具体例を示すものであって特にこれらに限定するものではない。
【実施例1】
【0021】
(1)溶剤分散型アクリル樹脂の製造
(a)溶剤分散型スラリーA
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入口を備えた重合容器に、脱イオン水120重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム0.8重量部およびpH緩衝剤として重炭酸ナトリウム0.4重量部を仕込み攪拌しながら60℃に加熱した後、窒素置換した。この中にメチルメタクリレート2重量部を添加し、10分後に0.98重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し種重合を行った。発熱開始から60分後、4.9重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し、さらに10分後、t−ブチルアクリレート78.4重量部、エチレングリコールジメタクリレート19.6重量部、脱イオン水60重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム1.2重量部、重炭酸ナトリウム0.5重量部からなる乳化モノマー液を攪拌下、温度を80℃に保ちながら3時間かけて滴下し、滴下終了後2時間85℃を維持し重合を終了させ水系ラテックス(A−1)を得た。生成物(A−1)は固形分34.1%、平均一次粒子径115nmであった。
【0022】
上記で合成された水系ラッテクス(A−1)を塩析により有機微粒子凝集体を取り出した。
【0023】
イソプロピルアルコール570部に上記の有機微粒子凝集体100重量部を攪拌下で分散状態を確認しながら少量ずつ添加していき、非水系微粒子分散体(A−2)を得た。生成物(A−2)は固形分15.0%であった。
【0024】
(b)溶剤分散型スラリーB
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入口を備えた重合容器に、脱イオン水120重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム0.8重量部およびPH緩衝剤として重炭酸ナトリウム0.4重量部を仕込み攪拌しながら60℃に加熱した後、窒素置換した。この中にメチルメタクリレート2重量部を添加し、10分後に0.98重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1部を添加し種重合を行った。発熱開始から60分後、4.9重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し、さらに10分後、t−ブチルアクリレート65.7重量部、エチレングリコールジメタクリレート29.4重量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート2.9重量部、脱イオン水60重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム1.2重量部、重炭酸ナトリウム0.5重量部からなる乳化モノマー液を攪拌下、温度を80℃に保ちながら3時間かけて滴下し、滴下終了後2時間85℃を維持し重合を終了させ水系ラテックス(B−1)を得た。生成物(B−1)は固形分34.3%、平均一次粒子径117nmであった。
【0025】
上記で合成された水系ラテックス(B−1)に、有機溶剤への転相の妨げとなるイオン性不純物の除去を目的に、イオン交換樹脂(アンバーライトMB−2,Rohm and Haas社製)25重量部を添加し攪拌した。24時間攪拌した後、濾過によりイオン交換樹脂を除去し、イオン性不純物の限りなく少ない水系ラテックス(B−2)を得た。
【0026】
この精製された水系ラテックス(B−2)に、酢酸エチル570重量部を加え攪拌、水系ラテックス中に存在する有機微粒子の有機層への転相を行った。その後静置し、透明な水相と白濁した有機相とを分離し、非水系微粒子分散体(B−3)を得た。生成物(B−3)は固形分14.9%であった。
【0027】
(C)溶剤分散型スラリーC
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入口を備えた重合容器に、脱イオン水120重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム0.8重量部およびpH緩衝剤として重炭酸ナトリウム0.4重量部を仕込み攪拌しながら60℃に加熱した後、窒素置換した。この中にメチルメタクリレート2重量部を添加し、10分後に0.98重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し種重合を行った。発熱開始から60分後、4.9重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し、さらに10分後、メチルメタクリレート43.7重量部、スチレン29.1重量部、エチレングリコールジメタクリレート24.2重量部、脱イオン水60重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム1.2重量部、重炭酸ナトリウム0.5重量部からなる乳化モノマー液を攪拌下、温度を80℃に保ちながら3時間かけて滴下し、滴下終了後2時間85℃を維持し重合を終了させ水系ラテックス(C−1)を得た。生成物(C−1)は固形分34.1%、平均一次粒子径109nmであった。
【0028】
上記で合成された水系ラテックス(C−1)に、有機溶剤への転相の妨げとなるイオン性不純物の除去を目的に、イオン交換樹脂25重量部を添加し攪拌した。24時間攪拌した後、濾過によりイオン交換樹脂を除去し、イオン性不純物の限りなく少ない水系ラテックス(C−2)を得た。
【0029】
この精製された水系ラテックス(C−2)に、酢酸エチル570重量部を加え攪拌、水系ラテックス中に存在する有機微粒子の有機層への転相を行った。その後静置し、透明な水相と白濁した有機相とを分離し、非水系微粒子分散体(C−3)を得た。生成物(C−3)は固形分15.1%であった。
(D)溶剤分散型スラリーD
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入口を備えた重合容器に、脱イオン水120重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム0.3重量部およびpH緩衝剤として重炭酸ナトリウム0.1重量部を仕込み攪拌しながら60℃に加熱した後、窒素置換した。この中にメチルメタクリレート2重量部を添加し、10分後に0.98重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し種重合を行った。発熱開始から60分後、4.9部重量の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し、さらに10分後、メチルメタクリレート43.7重量部、スチレン29.1重量部、エチレングリコールジメタクリレート24.2重量部、脱イオン水60重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム0.8重量部、重炭酸ナトリウム0.3重量部からなる乳化モノマー液を攪拌下、温度を80℃に保ちながら3時間かけて滴下し、滴下終了後2時間85℃を維持し重合を終了させ水系ラテックス(D−1)を得た。生成物(D−1)は固形分33.9%、平均粒子径489nmであった。
【0030】
上記で合成された水系ラテックス(D−1)に、有機溶剤への転相の妨げとなるイオン性不純物の除去を目的に、イオン交換樹脂15重量部を添加し攪拌した。24時間攪拌した後、濾過によりイオン交換樹脂を除去し、イオン性不純物の限りなく少ない水系ラテックス(D−2)を得た。
【0031】
この精製された水系ラテックス(D−2)に、酢酸エチル570重量部を加え攪拌、水系ラテックス中に存在する有機微粒子の有機層への転相を行った。その後静置し、透明な水相と白濁した有機相とを分離し、非水系微粒子分散体(D−3)を得た。生成物(D−3)は固形分15.0%であった。
(1)アクリル樹脂の合成
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業株式会社製 商品名A−DPA 固形分100%)100重量部に対し、溶剤分散型スラリーA(生成物A−3)を20部、希釈溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)を113重量部を混合し攪拌した。レベリング剤としてByketol−OK(ビックケミー・ジャパン株式会社製)を0.3重量部、開始剤としてイルガキュアー184(チバスペシャリティーケミカル株式会社製)を3重量部加え、ハードコート剤を得た。
(2)ハードコートフィルムの製造
次いで、厚み100μmのPETフィルム(ポリエチレンテレフタレート:東レ株式会社製 商品名ルミラーU34)に、硬化後の膜厚が3μmとなるように塗工・乾燥し、ハードコート剤を塗布し、紫外線照射機を用いて1500mW/cmの照射強度で、仕事量が300mJ/cmの紫外線処理を行い、ハードコートフィルムを得た。
【実施例2】
【0032】
前記実施例1において、溶剤分散型スラリーAの代わりに溶剤分散型スラリーB(生成物B−3)に変更した以外は同様に実施して、ハードコートフィルムを得た。
【実施例3】
【0033】
前記実施例2において、ドライ膜厚を7μmに変更した以外は同様に実施して、ハードコートフィルムを得た。
【実施例4】
【0034】
前記実施例1において、溶剤分散型スラリーAの代わりに溶剤分散型スラリーC(生成物C−3)を133重量部、MEKを17重量部に変更した以外は同様に実施して、ハードコートフィルムを得た。
【実施例5】
【0035】
前記実施例1において、A−DPAの代わりにトリメチロールプロパントリアクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名ライトアクリレートTMP−A)を用い、TMP−A100重量部に対して溶剤分散型スラリーA(生成物A−3)を20部、MEKを113部に変更した以外は同様に実施して、ハードコートフィルムを得た。
【実施例6】
【0036】
前記実施例6において、溶剤分散型スラリーDの代わりに溶剤分散型スラリーC(生成物C−3)を67重量部、MEKを73重量部に変更し、ドライ膜厚を2μm、窒素雰囲気下にて硬化した以外は同様に実施して、ハードコートフィルムを得た。
【実施例7】
【0037】
(インサート成型用フィルム)
前記実施例6において、溶剤分散型スラリーDをの代わりに溶剤分散型スラリーC(生成物C−3)を67重量部、MEKを73重量部に変更し、ドライ膜厚を2μm、窒素雰囲気下にて硬化した以外は同様に実施して、インサート成型用ハードコートフィルムを得た。
【実施例8】
【0038】
(インサート成型用フィルム)
前記実施例7において、溶剤分散型スラリーC(生成物C−3)を335.6重量部、MEKを添加せずにドライ膜厚7μm、大気中にて硬化した以外は同様に実施して、インサート成型用ハードコートフィルムを得た。
【0039】
比較例1
前記実施例2において、溶剤分散型スラリーBの添加量を2重量部、MEKの添加量を148重量部に変更した以外は同様に実施して、コーティングフィルムを得た。
【0040】
比較例2
前記実施例2において、溶剤分散型スラリーBの添加量を400重量部、MEKを添加せずに配合した以外は同様に実施して、コーティングフィルムを得た。
【0041】
比較例3
前記実施例1において、ドライ膜厚を11μmに変更した以外は同様に実施して、コーティングフィルムを得た。
【0042】
比較例4
前記実施例4において、ドライ膜厚を11μmに変更した以外は同様に実施して、コーティングフィルムを得た。
【0043】
比較例5
溶剤分散型スラリーAを厚み100μmのPETフィルムに、硬化後のドライ膜厚が3μmになるように塗工・乾燥し、コーティングフィルムを得た。
評価結果を表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
試験・評価方法
(1)全光線透過率(Tt)の測定
JIS K 7361−1(2000年版)3.2の規定に基づいて行った。測定装置としては、株式会社東洋精機製作所製のヘイズガードIIを用いた。
(2)ヘイズ値(Hz)の測定
JIS K 7136(2000年版)の規定に基づきヘイズメータ(スガ試験機製)により測定した。測定装置としては、株式会社東洋精機製作所製のヘイズガードIIを用いた。
(3)鉛筆硬度の測定
JIS K 5600−5−4(1999年版)の規定に基づいて行った。測定装置としては、株式会社東洋精機製作所製の鉛筆引掻塗膜硬さ試験機(形式P)を用いた。
(4)耐擦傷性の測定
ハードコートフィルムの表面を、2kgの荷重をかけた日本スチールウール株式会社製のスチールウール#0000にて摩擦して傷の度合いを目視により評価した。傷が入らないものを◎、本数が3本以下のものを○、それ以上のものを×とした。
(5)すべり性の測定
作製したハードコートフィルムの表面に市販されているハードコートフィルム(HC−2300、アイカ工業株式会社製)を滑らせ、滑るものを○、滑らないものを×、非常に良く滑るものを◎とした。
(6)反りの評価方法
15cm角のサンプルを作成し、四隅の反りを測定し、その平均値が5cm未満のものを○、5cm以上のものを×とした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多官能重合性モノマー100重量部に対して、平均一次粒子径が80〜500nmである有機微粒子が0.5〜50重量部配合されてなることを特徴とするハードコート剤。
【請求項2】
該有機微粒子がニ官能以上の(メタ)アクリレートを用いて乳化重合法により合成されたことを特徴とするハードコート剤。
【請求項3】
該ハードコート剤を透明プラスチックフィルムに塗布した場合、ドライ状態での膜厚が10μm以下であり、JIS K 7361−1に基づいて測定した全光線透過率が90%以上、JIS K 7136に基づいて測定したヘイズ値が1.5%以下であることを特徴とするハードコートフィルム。

【公開番号】特開2007−238732(P2007−238732A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−61972(P2006−61972)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【出願人】(592230542)ガンツ化成株式会社 (38)
【Fターム(参考)】