説明

ハードコート剤組成物および成形品

【課題】アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂に、よく密着し、耐磨耗性と高い鉛筆硬度、耐擦傷性、及び屈曲性を有する紫外線硬化タイプのハードコート剤組成物および成形品を提供する。
【解決手段】本発明のハードコート材組成物は、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート(a)、(メタ)アクリル系共重合樹脂(b)、光重合開始剤(c)を必須成分とすることを特徴としている。また、本発明の成形品は本発明のハードコート剤組成物を成形品上に塗布し、次いで活性エネルギー線で硬化させてなる硬化塗膜を有することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐磨耗性、高い鉛筆硬度を有し、(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂への密着性が付与された紫外線硬化型ハードコート剤組成物および更に屈曲性、耐擦傷性を向上させた紫外線硬化型ハードコート剤組成物に関するものである。また、同ハードコート剤組成物からなる硬化塗膜を有する成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂などの熱可塑性樹脂は軽量で耐衝撃性、透明性に優れ成形が容易であるとの観点から広く用いられている。しかし、これら熱可塑性樹脂は外部摩擦などにより容易に傷つき、その透明度が低下する、外観に傷が目立つ等の問題があった。そのため熱可塑性樹脂に対して表面コーティングを施し、その耐磨耗性、耐擦傷性および表面硬度を向上させる試みがなされてきた。
【0003】
また、クリアコート剤の原料樹脂として硬化後に高い表面硬度を示す樹脂が求められているが、硬度の上昇とともに硬化時に収縮が見られるという問題が指摘されている。このため、硬度の高い樹脂には必ず硬化収縮に起因する密着性の低下やクラックの発生等が伴うため、硬度と収縮性のバランスが課題となっている。
【0004】
耐磨耗性の低い基材にハードコート剤をコーティングして基材に耐磨耗性を付与する手段としてSiO2等の無機物を真空蒸着などにより被覆する方法(例えば、特許文献1参照)があるが、SiO2等の無機物は基材として(メタ)アクリル系樹脂を用いた場合、密着性に劣る。さらに、架橋性のアルコキシシラン化合物を主成分とする塗料を用いて加熱硬化させることにより、ポリオルガノシラン系ハードコート膜を耐磨耗性の低い基材上に形成させる方法(例えば、特許文献2、3参照)もあるが、架橋により硬化皮膜を形成させる際に高温で長時間加熱する必要があるため(メタ)アクリル系樹脂のように耐熱性の低い基材には不利となり、作業効率の面からも問題がある。
【0005】
皮膜の硬化時間を短縮させる方法として分子中に複数の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を主成分とする塗料を基材上に被覆した後、皮膜に紫外線等の活性エネルギー線を照射して架橋させ(メタ)アクリル樹脂系のハードコート膜を形成させる方法(例えば、特許文献4〜6参照)がある。この方法は生産性の点で有利ではあるものの、熱硬化された皮膜と比べて耐磨耗性に劣るという問題がある。
【0006】
最近は紫外線硬化型樹脂に対してもSiO2等の無機物やアルコキシシラン化合物を添加した配合例が報告されている(例えば、特許文献7〜14参照)。
ただし、トップコート剤にSiO2等の無機物やアルコキシシラン化合物を配合する場合、基材との密着性を維持するためトップコート膜と基材との間に1層あるいは2層の中間層が必要となり、トップコーティングを施すために作業工程の簡略化が求められている。
【0007】
【特許文献1】特開昭58−20403号公報
【特許文献2】特開昭48−26822号公報
【特許文献3】特開昭59−64671号公報
【特許文献4】特開昭53−102936号公報
【特許文献5】特開昭53−104638号公報
【特許文献6】特開昭54−97633号公報
【特許文献7】特開2004−86196号公報
【特許文献8】特開2003−187497号公報
【特許文献9】特開2003−173575号公報
【特許文献10】特開2002−127286号公報
【特許文献11】特開2003−39607号公報
【特許文献12】特開2000−347001号公報
【特許文献13】特開平11−70606号公報
【特許文献14】特開平11−78515号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は基材である(メタ)アクリル系樹脂、またはポリカーボネート樹脂、ABS樹脂によく密着し耐磨耗性と高い鉛筆硬度を有する皮膜を形成させることのできる、紫外線のような活性エネルギー線硬化タイプのハードコート剤組成物を提供することである。また、更に耐擦傷性、屈曲性を向上させたハードコート剤組成物を提供することである。従来、密着性と耐磨耗性、硬度というそれぞれの性質を同時に達成することは難しいと考えられてきた。これは多官能単量体を主成分とした塗料では紫外線のような活性エネルギー線による硬化時に架橋密度が高くなるため、耐磨耗性は良好となる反面、硬化時の収縮が大きく、残存ひずみや応力が高くなり基材に対する皮膜の密着性が不十分になる場合があるためである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、(メタ)アクリロイル基を側鎖に多数有する(メタ)アクリル系共重合樹脂を多官能ウレタン(メタ)アクリレートに配合させることで基材に対する密着性と耐磨耗性の両方を兼ね備える皮膜を形成させることのできる樹脂が得られることを見出した。また、多官能ウレタンメタアクリレートとして6官能以上のウレタン(メタ)アクリレートを用いることにより、さらに高硬度、耐擦傷性、屈曲性などの特性が向上することを見出した。
すなわち、本発明の第1は、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート(a)(以下、成分(a)という)、(メタ)アクリル系共重合樹脂(b)(以下、成分(b)という)、光重合開始剤(c)(以下、成分(c)という)を必須成分とするハードコート剤組成物を提供する。
本発明の第2は、前記成分(a)が1分子中に6個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレートである上記発明1に記載のハードコート剤組成物を提供する。本発明の第3は、前記成分(a)の重量平均分子量が500〜3000の範囲である上記発明1に記載のハードコート剤組成物を提供する。本発明の第4は、前記成分(b)が側鎖に(メタ)アクリロイル基とカルボキシル基を有する(メタ)アクリル系共重合樹脂である上記発明1に記載のハードコート剤組成物を提供する。本発明の第5は、前記成分(b)の酸価が20〜200(KOHmg/g)、重量平均分子量が5000〜20000、2重結合当量が350〜450である上記発明1に記載のハードコート剤組成物を提供する。本発明の第6は、前記成分(a)が6官能脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートである上記発明1に記載のハードコート剤組成物を提供する。本発明の第7は、上記発明1〜6のいずれかに記載のハードコート剤組成物を成形品上に塗布し、次いで活性エネルギー線で硬化させてなる硬化塗膜を有する成形品を提供する。本発明の第8は、成形品が(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂から選ばれた少なくとも1つからなるものである上記発明7に記載の成形品を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のハードコート剤組成物は1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート、側鎖に(メタ)アクリロイル基とカルボキシル基を有する(メタ)アクリル系共重合樹脂および光重合開始剤からなり、該ハードコート剤組成物を(メタ)アクリル系樹脂成形品またはポリカーボネート樹脂成形品に塗布し活性エネルギー線を照射することにより密着性、耐磨耗性が良好な皮膜となる。また、多官能ウレタン(メタ)アクリレートが1分子中に6個以上の(メタ)アクリロイル基を有する場合には、被膜の硬度、耐擦傷性、屈曲性がより一層向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明のハードコート剤組成物中の成分(a)である1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレートは、ポリイソシアネート化合物と活性水素を有する(メタ)アクリル系モノマーとの反応により得られる。なお、本発明で用いられる多官能ウレタン(メタ)アクリレートは、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートであってもよいし、芳香族ウレタン(メタ)アクリレートであってもよい。
【0012】
使用されるポリイソシアネート化合物としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートあるいはこれらジイソシアネート化合物のうち芳香族のイソシアネート類を水添して得られるジイソシアネート化合物(例えば水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物)、トリフェニルメタントリイソシアネート、ジメチレントリフェニルトリイソシアネートなどのような2価あるいは3価のジイソシアネート化合物あるいはポリイソシアネート化合物や、これらを多量化させて得られる多量化ポリイソシアネート化合物等のイソシアネート基含有化合物が挙げられる。
【0013】
さらに、成分(a)である多官能ウレタン(メタ)アクリレートの分子量、分子の柔軟性を調整する目的でポリイソシアネートと活性水素を有する(メタ)アクリル系モノマーを反応させる前に、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ビスフェニールAのエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加物、ポリエステルポリオール及びオキシエチレン/オキシプロピレンの共重合体等の公知汎用のポリオールとポリイソシアネートとを反応させて末端イソシアネート基を有する鎖延長されたウレタンプレポリマーを製造し、この鎖延長されたウレタンプレポリマーに活性水素を有する(メタ)アクリル系モノマーを反応させて得られた生成物を成分(a)として利用することもできる。また、3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートを製造するにはトリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等3官能以上のポリオールが使用される。
【0014】
特に、9官能または15官能のウレタン(メタ)アクリレートを合成するには3官能のポリイソシアネート化合物が好ましく用いられる。具体的には2,6−ヘキサメチレンジイソシアネート由来のヌレート化合物、イソホロンジイソシアネート由来のヌレート化合物を用いることが出来る。
【0015】
ヌレート以外のポリイソシアネート化合物を用いる場合には、1分子中に3個以上の水酸基を有するポリエステルポリオールと2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'−ジベンジルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとの反応により得られるポリイソシアネート化合物等を用いることが可能である。
【0016】
1分子中に2以上の水酸基を有するポリエステルポリオールは多価カルボン酸と多価アルコールのエステル化反応により得られる。上記多価カルボン酸としては、特に限定されないが、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられる。また、多価アルコールとしては、特に限定されないが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル1,5−ペンタンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイド付加物、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等が挙げられる。
【0017】
上記ポリイソシアネート化合物は1種類のみを用いても良いし2種類以上のポリイソシアネート化合物を併用しても良い。
【0018】
活性水素を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレートもしくはメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートもしくはメタクリレート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピルアクリレートもしくはメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートもしくはメタクリレート、N−メチロールアクリルアミドもしくはメタクリルアミド、N−ヒドロキシアクリルアミドもしくはメタクリルアミド等が挙げられる。これらのラクトン付加物[例えば、ダイセル化学工業(株)製のPCL−FAまたはPCL−FMシリーズ等]も使用することができる。また、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート[例えば、CYTEC製「DPHA」等]も使用可能である。
【0019】
本発明における成分(a)である2個以上、例えば、3個または6個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレートを製造するには、先ず、1モルのポリ(ジ)イソシアネート化合物と活性水素を有する(メタ)アクリル系モノマー約1モルを反応させることにより一方の末端にイソシアネート基を、もう一方の末端に(メタ)アクリロイル基を有するモノイソシアネート化合物を合成し、次いでトリメチロールプロパンのような3個の水酸基を有するポリオールまたはジペンタエリスリトールのような6個の水酸基を有するポリオールのそれぞれ1モルに3モルまたは6モルの同モノイソシアネート化合物を反応させる。
【0020】
または、トリメチロールプロパンのような3個の水酸基を有するポリオールまたはジペンタエリスリトールのような6個の水酸基を有するポリオールの1モルに3モルまたは6モルのポリ(ジ)イソシアネート化合物を反応させることによりイソシアネート基を3個または6個有するウレタンプレポリマーを合成し、次いで、同ウレタンプレポリマー1モルに3モルまたは6モルの活性水素を有する(メタ)アクリル系モノマーを反応させる。なお、イソシアネート基を3個有するポリイソシアネート化合物を使用する場合は、各反応における各成分のモル比を適宜変更して行う。
【0021】
前者の反応順序の方が、副生物をあまり生じさせることなく目的の成分(a)である1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレートを製造することができるので好ましい。
【0022】
9個や15個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能ウレタンアクリレートも上記と同様にして製造することが可能である。例えば、9個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能ウレタンアクリレートを製造する場合、イソシアネート基を3個有するポリイソシアネート化合物やヌレート化合物(ウレタンプレポリマーを含む)と、ペンタエリスリトールトリアクリレート等の3個のアクリロイル基を有する活性水素を有する(メタ)アクリル系モノマーを反応させる。
【0023】
上記ウレタンプレポリマーの合成時、反応途中の急激な粘度増加を抑える目的で過剰のポリ(ジ)イソシアネート化合物を必要とする。このため生成したウレタンプレポリマーは未反応のポリ(ジ)イソシアネート化合物を含有することになる。純度の高いウレタンプレポリマーが要求される場合には全体の反応時間が長くなるものの、先に(メタ)アクリル系モノマーとイソホロンジイソシアネートのような一方のイソシアネート基が反応すると他方のイソシアネート基の反応性が極端に低下するポリ(ジ)イソシアネート化合物を反応させる方法もある。
【0024】
本発明における成分(a)として、多官能ウレタン(メタ)アクリレートを製造するには活性水素を有する(メタ)アクリル系モノマーに対してポリ(ジ)あるいは(トリ)イソシアネート化合物をNCO濃度がOH濃度に対して当量以下となる様に反応させる必要がある。ポリイソシアネート化合物のNCO濃度がOH濃度と等量となる場合にはゲル化が起こり、またNCO濃度がOH濃度よりも過剰になると未反応のNCO基が残存し硬化不良、ゲル化の原因となる。このためNCO濃度をOH濃度よりも小さくする必要がある。
【0025】
上記反応は、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジンなどの重合禁止剤存在下で行うことが好ましい。これらの重合禁止剤の量は、生成する成分(a)である多官能ウレタン(メタ)アクリレートに対して、1〜10000ppm(重量基準)が好ましく、より好ましくは100〜1000ppm、さらに好ましくは400〜500ppmである。重合禁止剤の量が多官能ウレタン(メタ)アクリレートに対して1ppm未満であると十分な重合禁止効果が得られないことがあり、10000ppmを超えると生成物の諸物性に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0026】
同様の理由から、本反応は分子状酸素含有ガス雰囲気下で行うことが好ましい。酸素濃度は安全面を考慮して適宜選択される。
【0027】
本反応は、十分な反応速度を得るために、触媒を用いて行なってもよい。触媒としては、ジブチルスズジラウレート、オクチル酸スズ、塩化スズなどを用いることができるが、反応速度面からジブチルスズジラウレートが好ましい。これらの触媒の量は成分(a)である多官能ウレタン(メタ)アクリレートに対して、通常、1〜3000ppm(重量基準)、好ましくは50〜1000ppmである。触媒量が1ppmより少ない場合には十分な反応速度が得られないことがあり、3000ppmより多く加えると耐光性の低下など生成物の諸物性に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0028】
反応は温度130℃以下で行うことが好ましく、特に50℃〜130℃であることがより好ましい。50℃より低いと実用上十分な反応速度が得られないことがあり、130℃より高いと熱によるラジカル重合によって二重結合部が架橋し、ゲル化物が生じることがある。反応は、通常、残存イソシアネート基が0.1%以下になるまでガスクロマトグラフィー、滴定法等で分析しながら行なう。
【0029】
上記の反応は有機溶媒中で行ってもよい。使用できる有機溶媒としては、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、酢酸n−ブチル、メチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル溶媒等があり、PRTR[Pollutant Release and Transfer Register、化学物質排出移動量届出制度]法や毒性の観点から、好ましくは、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルである。溶媒を含んだままハードコート剤組成物中の成分(a)として用いてもよい。必要に応じて、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、イソプロパノールなどの有機溶剤を用いることもできる。樹脂の粘度を下げる目的などで、有機溶媒を使用する場合、その使用量は成分(a)の100重量部に対して1〜50重量部、好ましくは、10〜20重量部である。有機溶剤の使用量が1重量部未満では使用する意味がなく、50重量部を超えて使用すると、硬化後の塗膜にタック性が残ることがあるので、いずれも好ましくない。
【0030】
成分(a)の重量平均分子量は、500〜10000が好ましく、より好ましくは500〜5000、さらに好ましくは500〜3000、最も好ましくは1000〜2000である。分子量が500未満では、光照射後の硬化フィルムに要求される耐磨耗性、低収縮性を損なうことになり、逆に分子量が10000を超えると硬化不良を起こしタックの出現や耐溶剤性の低下をともなう。更に硬度が低くなるため、フィルムがトップコート、特にハードコートとしての役割を果たせなくなる。
【0031】
本発明のハードコート剤組成物中の成分(a)である1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレートの市販品として、具体的な製品名を挙げると2官能ウレタン(メタ)アクリレート(日本化薬社製の「UX−2201」あるいは「UX−8101」、共栄社化学社製の「UF−8001」、「UF−8003」、「UX−6101」、「UX−8101」、ダイセル・サイテック株式会社製の「Ebecryl 244」、「Ebecryl 284」、「Ebecryl 2002」、「Ebecryl 4835」、「Ebecryl 4883」、「Ebecryl 8807」、「Ebecryl 6700」)、3官能ウレタン(メタ)アクリレート(ダイセル・サイテック株式会社製の「Ebecryl 254」、「Ebecryl 264」、「Ebecryl 265」)、4官能ウレタン(メタ)アクリレート(ダイセル・サイテック株式会社製の「Ebecryl 8210」)、6官能ウレタン(メタ)アクリレート(ダイセル・サイテック株式会社製の「Ebecryl 1290k」、「Ebecryl 5129」、「Ebecryl 220」)を用いることができる。
【0032】
本発明のハードコート剤組成物は、成分(a)と共に、他の架橋性モノマーまたはオリゴマーを含んでいてもよい。
【0033】
架橋性モノマーまたはオリゴマーとしては、特に限定されず、公知の(メタ)アクリロイル基を含有するモノマーまたはオリゴマーが使用できる。(メタ)アクリロイル基を含有するモノマーとしては、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、アクリロイルモルフォリン、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンの3モルプロピレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンの6モルプロピレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのカプロラクトン変性物のヘキサ(メタ)アクリレートなどの多官能モノマーが挙げられる。さらに、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシドキシブチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートのようなエポキシ基を有する(メタ)アクリレートなどの一官能ないし多官能モノマーが挙げられ、これらの二種以上の混合物でもよい。
【0034】
また、代表的な(メタ)アクリロイル基を含有するオリゴマーとしては、本発明における成分(a)以外のウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらの2種以上の混合物でもよい。なお、エポキシ基を有する(メタ)アクリレートなどを配合して硬化させる場合、カチオン開始剤を併用することが好ましい。
【0035】
必要に応じて配合される各種の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーまたはオリゴマーの配合量は、本発明における成分(a)の主成分樹脂100重量部に対して、1〜2000重量部、好ましくは1〜700重量部、さらに好ましくは1〜600重量部である。1重量部より少ないと添加する意味がなく、2000重量部より多くなると多官能ウレタン(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル系共重合樹脂との組み合わせによる特徴が出なくなる。
【0036】
このような成分(a)である多官能ウレタン(メタ)アクリレートの製法は、例えば、特開平7−157531号公報、特開2000−95837号公報、特開2002−145936号等に記載されている。
【0037】
次に、本発明のハードコート剤組成物中の成分(b)について述べる。成分(b)である(メタ)アクリル系共重合樹脂は、アクリル酸やメタクリル酸のようなカルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを必須成分として用い、他のラジカル重合性モノマーを共重合成分として用いてラジカル共重合して得られる、側鎖にカルボキシル基を有する(メタ)アクリル系共重合体のカルボキシル基の一部または全部に3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートのようなエポキシ(メタ)アクリレートを反応させて側鎖に(メタ)アクリロイル基を形成させることにより得られる。
【0038】
また、粘度調整用の希釈用モノマーとしてアクリロイルモルフォリン、β−カルボキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、オクチル/デシルアクリレート、エトキシ化フェニルアクリレート等の単官能アクリレートモノマーを用いることができる。
【0039】
ラジカル共重合は通常の条件、例えば、温度60〜120℃、好ましくは70〜100℃で、好ましくは不活性ガス雰囲気下で行われる。
【0040】
カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、アクリル酸やメタクリル酸の他に不飽和基とカルボン酸の間に鎖延長された変性不飽和モノカルボン酸、例えばβ−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ラクトン変性等エステル結合を有する不飽和モノカルボン酸、エーテル結合を有する変性不飽和モノカルボン酸のような化合物が挙げられる。
【0041】
他のラジカル重合性モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロカクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル類、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソオクチルオキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
【0042】
カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマーと他のラジカル重合性モノマーの共重合比率は、任意に変えることができるが、前者/後者(モル比)=5/95〜99/1が好ましい。さらに好ましくは、5/95〜50/50の範囲である。
【0043】
このようにして製造された側鎖にカルボキシル基を有する(メタ)アクリル系共重合体のカルボキシル基の一部または全部に3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートのような脂環式エポキシ(メタ)アクリレートやグリシジル(メタ)アクリレートのようなエポキシ(メタ)アクリレートを反応させて側鎖に(メタ)アクリロイル基を形成させることにより、成分(b)が得られる。
【0044】
エポキシ(メタ)アクリレートはカルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマーと他のラジカル重合性モノマーの共重合比を考慮して、かつ、成分(b)である(メタ)アクリル系共重合樹脂の酸価が20〜200(KOHmg/g)、2重結合当量が350〜450になるように適宜調整される。
【0045】
成分(b)である(メタ)アクリル系共重合樹脂の酸価は、20〜200(KOHmg/g)が好ましく、より好ましくは20〜80(KOHmg/g)である。酸価が20(KOHmg/g)未満では、硬化フィルムの(メタ)アクリル系共重合樹脂への密着性が低下することなり、逆に酸価が200(KOHmg/g)を超えると成分(a)との相溶性が低下し配合物の調製が困難となるので好ましくない。(メタ)アクリル系共重合樹脂の2重結合当量は、350〜450が好ましく、より好ましくは380〜450である。2重結合当量が350未満では、硬化不良の原因となり、逆に2重結合当量が450を超えると硬化が過剰に進行しフィルムの硬化収縮を引き起こし、フィルムに脆さを与えてしまうので好ましくない。
【0046】
ラジカル共重合を安定な条件で行うため有機溶媒中で行ってもよい。使用できる有機溶媒としては、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、酢酸n−ブチル、メチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル溶媒等があり、PRTR法や毒性の観点から、好ましくは、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルである。中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルや同アセテートのような高沸点溶媒を用いることが好ましく、溶媒を含んだままエポキシ(メタ)アクリレートを反応させることもできるし、ハードコート剤組成物中に溶媒がそのまま残されていてもよい。必要に応じてメチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコールなどの有機溶剤を用いることもできる。
【0047】
有機溶媒の使用量は、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマーと他のラジカル重合性モノマーの合計量100重量部に対して40〜900重量部、好ましくは100〜300重量部である。有機溶剤の使用量が40重量部未満では使用する意味がなく、900重量部を超えて使用すると、成分(b)であるアクリル系共重合樹脂の分子量が増大せずモノマーの残存量も増大するので、いずれも好ましくない。
【0048】
成分(b)である(メタ)アクリル系共重合樹脂の重量平均分子量は5000〜20000、好ましくは7000〜20000である。アクリル系共重合樹脂の重量平均分子量が5000未満では、耐熱性、塗膜強度の低下を招くこととなり、逆に分子量が20000を超えると溶媒等への溶解性が低下し作業性が低下する。
【0049】
このような成分(b)である(メタ)アクリル系共重合樹脂の製法は、例えば、特開平1−289820号公報、特開平8−211607号公報、特開平8−262221号公報等に記載されている。
【0050】
(メタ)アクリル系共重合樹脂の市販品としては、基本骨格がアクリル共重合体から構成されているダイセル化学工業株式会社製のサイクロマーP(ACA200)[重量平均分子量15000〜18000、酸価105〜125mgKOH/g]、サイクロマーP(ACA230AA)[重量平均分子量10000〜16000、酸価33〜47mgKOH/g]、サイクロマーP(ACA200M)[重量平均分子量10000〜13000、酸価105〜125mgKOH/g]、サイクロマーP(ACAZ250)[重量平均分子量9000〜12000、酸価70〜80mgKOH/g]、サイクロマーP(ACA320)[重量平均分子量20000〜27000、酸価120〜140mgKOH/g]を用いることができる。
【0051】
成分(c)である光重合開始剤としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、チオキサンソン、2−クロルチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジクロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフインオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、カンファーキノンなどが挙げられる。
【0052】
本発明のハードコート剤組成物において、それぞれの成分の配合比は、成分(a)が5
〜97重量%、好ましくは70〜95重量%、より好ましくは70〜90重量%、成分(b)が3〜50重量%、好ましくは5〜30重量%、より好ましくは10〜30重量%[成分(a)と成分(b)の合計は100重量%]、成分(c)は成分(a)と成分(b)の合計量100重量部に対して1〜5重量部、好ましくは、2〜5重量部である[配合比は溶剤や希釈用モノマー等、成分(a)および成分(b)以外のものを除いたものの比率]。配合物の中で成分(a)が50重量%を下回る場合には、硬化物被膜において必要な硬度と耐磨耗性、耐擦傷性が得られない。また97重量%を超えると、(メタ)アクリル系樹脂やポリカーボネート樹脂、ABS樹脂への密着性が低下するとともに耐磨耗性も低下する。成分(c)の配合量が1重量部未満では硬化が不十分になる場合があり、5重量部を超えると硬化物の物性に悪影響が出ることがあるので、好ましくない。
【0053】
本発明のハードコート剤組成物には、必要に応じて種々の添加剤を配合することができる。このような添加剤としては、例えば、フィラー、染顔料、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、分散剤、チクソトロピー性付与剤などが挙げられる。これらの添加物の添加量は、ハードコート剤組成物100重量部に対して、0〜10重量部、好ましくは0.05〜5重量部である。
【0054】
本発明のハードコート剤組成物は、これを対象物である(メタ)アクリル系樹脂やポリカーボネート樹脂、ABS樹脂成形品に塗布した後、紫外線または電子線等の活性エネルギー線を照射することにより極めて短時間で硬化させることができる。塗膜の厚さは通常、10〜50μm程度である。紫外線照射を行う時の光源としては、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯などが用いられる。照射時間は、光源の種類、光源と塗布面との距離、その他の条件により異なるが、長くとも数十秒であり、通常は数秒である。通常、ランプ出力80〜300W/cm程度の照射源が用いられる。電子線照射の場合は、50〜1000KeVの範囲のエネルギーを持つ電子線を用い、2〜5Mradの照射量とすることが好ましい。活性エネルギー線照射後は、必要に応じて加熱を行って硬化の促進を図ってもよい。
【0055】
本発明のハードコート剤組成物を成型品(例えば、プラスチックフィルムなど)に塗布する場合、塗布方法としては、特に限定されず、吹き付け法、エアレススプレー法、エアスプレー法、ロールコート法、バーコート法、グラビア法などを用いることが可能である。中でも、美観性、コスト、作業性などの観点から最も好ましく用いられる。なお、塗布は、プラスチックフィルムなどの製造工程中で行う、いわゆるインラインコート法でもよいし、既に製造された成型品に別工程で塗布を行う、いわゆるオフラインコート法でもよいが、生産効率の観点から、オフラインコートが好ましい。
【実施例】
【0056】
本発明について、以下の実施例および比較例で具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0057】
(実施例1)
成分(b)である(メタ)アクリル系共重合樹脂として、高沸点溶媒含有率45重量%のアクリル共重合樹脂[商品名:サイクロマーP(ACA230AA)、重量平均分子量14000、酸価40mgKOH/g、ダイセル化学工業株式会社製]10重量部と成分(a)である多官能ウレタン(メタ)アクリレートとして、Ebecryl 254[商品名、ダイセル・サイテック株式会社製の3官能脂肪族ウレタンアクリレート]90重量部、さらに光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:DAROCUR 1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)5重量部とを混合して均一なハードコート剤組成物を調製した。
【0058】
(実施例2)
成分(b)である(メタ)アクリル系共重合樹脂として、高沸点溶媒含有率45重量%のアクリル共重合樹脂[商品名:サイクロマーP(ACA230AA)、ダイセル化学工業株式会社製]30重量部と成分(a)である多官能ウレタン(メタ)アクリレートとして、Ebecryl 2002[商品名、ダイセル・サイテック株式会社製の2官能脂肪族ウレタンアクリレート]70重量部、さらに光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:DAROCUR 1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)5重量部とを混合して均一なハードコート剤組成物を調製した。
【0059】
(実施例3)
成分(b)である(メタ)アクリル系共重合樹脂として、高沸点溶媒含有率45重量%のアクリル共重合樹脂[商品名:サイクロマーP(ACA230AA)、ダイセル化学工業株式会社製]20重量部と成分(a)である多官能ウレタン(メタ)アクリレートとして、Ebecryl 4835[商品名、ダイセル・サイテック株式会社製の2官能脂肪族ウレタンアクリレート]80重量部、さらに光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:DAROCUR 1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)5重量部とを混合して均一なハードコート剤組成物を調製した。
【0060】
(実施例4)
成分(b)である(メタ)アクリル系共重合樹脂として、高沸点溶媒含有率45重量%のアクリル共重合樹脂[商品名:サイクロマーP(ACA230AA)、ダイセル化学工業株式会社製]20重量部と成分(a)である多官能ウレタン(メタ)アクリレートとして、Ebecryl 4883[商品名、ダイセル・サイテック株式会社製の2官能脂肪族ウレタンアクリレート]80重量部、さらに光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:DAROCUR 1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)5重量部とを混合して均一なハードコート剤組成物を調製した。
【0061】
(実施例5)
成分(b)である(メタ)アクリル系共重合樹脂として、高沸点溶媒含有率45重量%のアクリル共重合樹脂[商品名:サイクロマーP(ACA230AA)、ダイセル化学工業株式会社製]20重量部と成分(a)である多官能ウレタン(メタ)アクリレートとして、Ebecryl 8807[商品名、ダイセル・サイテック株式会社製の2官能脂肪族ウレタンアクリレート]80重量部、さらに光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:DAROCUR 1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)5重量部とを混合して均一なハードコート剤組成物を調製した。
【0062】
(実施例6)
成分(b)である(メタ)アクリル系共重合樹脂として、高沸点溶媒含有率45重量%のアクリル共重合樹脂[商品名:サイクロマーP(ACA230AA)、ダイセル化学工業株式会社製]20重量部と成分(a)である多官能ウレタン(メタ)アクリレートとして、Ebecryl 6700[商品名、ダイセル・サイテック株式会社製の2官能脂肪族ウレタンアクリレート]80重量部、さらに光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:DAROCUR 1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)5重量部とを混合して均一なハードコート剤組成物を調製した。
【0063】
(実施例7)
成分(b)である(メタ)アクリル系共重合樹脂として、高沸点溶媒含有率45重量%のアクリル共重合樹脂[商品名:サイクロマーP(ACA230AA)、ダイセル化学工業株式会社製]10重量部と成分(a)である多官能ウレタン(メタ)アクリレートとして、Ebecryl 5129[商品名、ダイセル・サイテック株式会社製の6官能脂肪族ウレタンアクリレート]90重量部、さらに光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:DAROCUR 1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)5重量部とを混合して均一なハードコート剤組成物を調製した。
【0064】
(実施例8)
成分(b)である(メタ)アクリル系共重合樹脂として、高沸点溶媒含有率45重量%のアクリル共重合樹脂[商品名:サイクロマーP(ACA230AA)、ダイセル化学工業株式会社製]30重量部と成分(a)である多官能ウレタン(メタ)アクリレートとして、Ebecryl 220[商品名、ダイセル・サイテック株式会社製の6官能芳香族ウレタンアクリレート]70重量部、さらに、光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:DAROCUR 1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)5重量部とを混合して均一なハードコート剤組成物を調製した。
【0065】
(実施例9)
成分(b)である(メタ)アクリル系共重合樹脂として、高沸点溶媒含有率45重量%のアクリル共重合樹脂[商品名:サイクロマーP(ACA230AA)、ダイセル化学工業株式会社製]10重量部と成分(a)である多官能ウレタン(メタ)アクリレートとして、Ebecryl 1290K[商品名、ダイセル・サイテック株式会社製の6官能脂肪族ウレタンアクリレート]90重量部、さらに、光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:DAROCUR 1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)5重量部とを混合して均一なハードコート剤組成物を調製した。
【0066】
(実施例10)
成分(b)である(メタ)アクリル系共重合樹脂として、高沸点溶媒含有率45重量%のアクリル共重合樹脂[商品名:サイクロマーP(ACA230AA)、ダイセル化学工業株式会社製]30重量部と成分(a)である多官能ウレタン(メタ)アクリレートとして、Ebecryl 1290K[商品名、ダイセル・サイテック株式会社製の6官能脂肪族ウレタンアクリレート]70重量部、さらに、光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:DAROCUR 1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)5重量部とを混合して均一なハードコート剤組成物を調製した。
【0067】
(実施例11)
成分(b)である(メタ)アクリル系共重合樹脂として、高沸点溶媒含有率45重量%のアクリル共重合樹脂[商品名:サイクロマーP(ACA200M)、重量平均分子量12000、酸価110mgKOH/g、ダイセル化学工業株式会社製]20重量部と成分(a)である多官能ウレタン(メタ)アクリレートとして、Ebecryl 264[商品名、ダイセル・サイテック株式会社製の3官能脂肪族ウレタンアクリレート]80重量部、さらに光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:DAROCUR 1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)5重量部とを混合して均一なハードコート剤組成物を調製した。
【0068】
(実施例12)
成分(b)である(メタ)アクリル系共重合樹脂として、高沸点溶媒含有率45重量%のアクリル共重合樹脂[商品名:サイクロマーP(ACA200M)、ダイセル化学工業株式会社製]10重量部と成分(a)である多官能ウレタン(メタ)アクリレートとして、Ebecryl 8210[商品名、ダイセル・サイテック株式会社製の4官能脂肪族ウレタンアクリレート]90重量部、さらに、光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:DAROCUR 1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)5重量部とを混合して均一なハードコート剤組成物を調製した。
【0069】
(実施例13)
成分(b)である(メタ)アクリル系共重合樹脂として、高沸点溶媒含有率45重量%のアクリル共重合樹脂[商品名:サイクロマーP(ACA200M)、ダイセル化学工業株式会社製]10重量部と成分(a)である多官能ウレタン(メタ)アクリレートとして、Ebecryl 220[商品名、ダイセル・サイテック株式会社製の6官能芳香族ウレタンアクリレート]90重量部、さらに、光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:DAROCUR 1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)5重量部とを混合して均一なハードコート剤組成物を調製した。
【0070】
(実施例14)
成分(b)である(メタ)アクリル系共重合樹脂として、高沸点溶媒含有率45重量%のアクリル共重合樹脂[商品名:サイクロマーP(ACA200M)、ダイセル化学工業株式会社製]10重量部と成分(a)である多官能ウレタン(メタ)アクリレートとして、Ebecryl 5129[商品名、ダイセル・サイテック株式会社製の6官能脂肪族ウレタンアクリレート]90重量部、さらに、光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:DAROCUR 1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)5重量部とを混合して均一なハードコート剤組成物を調製した。
【0071】
(実施例15)
成分(b)である(メタ)アクリル系共重合樹脂として、高沸点溶媒含有率45重量%のアクリル共重合樹脂[商品名:サイクロマーP(ACA200M)、ダイセル化学工業株式会社製]10重量部と成分(a)である多官能ウレタン(メタ)アクリレートとして、Ebecryl 1290K[商品名、ダイセル・サイテック株式会社製の6官能脂肪族ウレタンアクリレート]90重量部、さらに光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:DAROCUR 1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)5重量部とを混合して均一なハードコート剤組成物を調製した。
【0072】
(実施例16)
成分(b)である(メタ)アクリル系共重合樹脂として、高沸点溶媒含有率45重量%のアクリル共重合樹脂[商品名:サイクロマーP(ACAZ250)、重量平均分子量10000、酸価77mgKOH/g、ダイセル化学工業株式会社製]10重量部と成分(a)である多官能ウレタン(メタ)アクリレートとして、Ebecryl 8210[商品名、ダイセル・サイテック株式会社製の4官能脂肪族ウレタンアクリレート]90重量部、さらに、光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:DAROCUR 1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)5重量部とを混合して均一なハードコート剤組成物を調製した。
【0073】
(実施例17)
成分(b)である(メタ)アクリル系共重合樹脂として、高沸点溶媒含有率45重量%のアクリル共重合樹脂[商品名:サイクロマーP(ACAZ250)、ダイセル化学工業株式会社製]10重量部と成分(a)である多官能ウレタン(メタ)アクリレートとして、Ebecryl 220[商品名、ダイセル・サイテック株式会社製の6官能芳香族ウレタンアクリレート]90重量部、さらに、光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:DAROCUR 1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)5重量部とを混合して均一なハードコート剤組成物を調製した。
【0074】
(実施例18)
成分(b)である(メタ)アクリル系共重合樹脂として、高沸点溶媒含有率45重量%のアクリル共重合樹脂[商品名:サイクロマーP(ACAZ250)、ダイセル化学工業株式会社製]10重量部と成分(a)である多官能ウレタン(メタ)アクリレートとして、Ebecryl 1290K[商品名、ダイセル・サイテック株式会社製の6官能脂肪族ウレタンアクリレート]90重量部、さらに、光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:DAROCUR 1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)5重量部とを混合して均一なハードコート剤組成物を調製した。
【0075】
(実施例19)
成分(b)である(メタ)アクリル系共重合樹脂として、高沸点溶媒含有率45重量%のアクリル共重合樹脂[商品名:サイクロマーP(ACAZ250)、ダイセル化学工業株式会社製]30重量部と成分(a)である多官能ウレタン(メタ)アクリレートとして、Ebecryl 1290K[商品名、ダイセル・サイテック株式会社製の6官能脂肪族ウレタンアクリレート]70重量部、さらに、光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:DAROCUR 1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)5重量部とを混合して均一なハードコート剤組成物を調製した。
【0076】
(実施例20)
成分(b)である(メタ)アクリル系共重合樹脂として、高沸点溶媒含有率45重量%のアクリル共重合樹脂[商品名:サイクロマーP(ACAZ250)、ダイセル化学工業株式会社製]10重量部と成分(a)である多官能ウレタン(メタ)アクリレートとして、Ebecryl 5129[商品名、ダイセル・サイテック株式会社製の6官能脂肪族ウレタンアクリレート]90重量部、さらに光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:DAROCUR 1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)5重量部とを混合して均一なハードコート剤組成物を調製した。
【0077】
(実施例21)
成分(b)である(メタ)アクリル系共重合樹脂として、高沸点溶媒含有率45重量%のアクリル共重合樹脂[商品名:サイクロマーP(ACAZ250)、ダイセル化学工業株式会社製]30重量部と成分(a)である多官能ウレタン(メタ)アクリレートとして、Ebecryl 5129[商品名、ダイセル・サイテック株式会社製の6官能脂肪族ウレタンアクリレート]70重量部、さらに光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:DAROCUR 1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)5重量部とを混合して均一なハードコート剤組成物を調製した。
【0078】
(比較例1)
多官能ウレタン(メタ)アクリレートとして、Ebecryl 1290K[商品名、ダイセル・サイテック株式会社製の6官能脂肪族ウレタンアクリレート]100重量部、さらに、光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:DAROCUR 1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)5重量部とを混合し比較用の均一な組成物を調製した。
【0079】
実施例1〜21で得られたハードコート剤組成物及び比較例1で得られた組成物については、下記(1)〜(3)で示した測定方法に基づいて、耐磨耗性、密着性、鉛筆硬度の評価を行った。これらの評価結果を表1〜3に示す。
【0080】
(1)耐磨耗性試験
上記各実施例で得られたハードコート剤組成物および比較例で得られた組成物を硬化後の塗膜の厚さが10ミクロンになるように表面がコロナ放電処理されたポリカーボネート板(日本テストパネル製、板の厚み2mm)にバーコーターを用いて塗布し、80℃で10分間乾燥させた後、高圧水銀灯を用いて紫外線照射(高圧水銀灯、照射強度:120W/cm、照射距離:10cm、コンベア速度:5m/min、照射回数:2回)を行ない、硬化塗膜を作製した。硬化塗膜をテーバー磨耗試験機[安田精機製作所(株)社製のテーバー磨耗試験機、磨耗輪CS10F、荷重1kg]にセットして100回(回転数)磨耗後、300回磨耗後におけるグロス(60°)値を測定し、0回におけるグロス値との比率を計算して耐磨耗性の指標とした。なお、光沢度(グロス)の測定は、JIS Z 8741に準じて、日本電色工業株式会社製「SZ−Σ90」を用いて、測定角度60°で行った。
耐磨耗性(100回)=(100回磨耗後のグロス値)/(磨耗0回におけるグロス値)×100。
耐磨耗性(300回)=(300回磨耗後のグロス値)/(磨耗0回におけるグロス値)×100。
【0081】
(2)密着性試験
上記各実施例で得られたハードコート剤組成物および比較例1で得られた組成物をバーコーターを用いて硬化後の塗膜の厚さが15ミクロンになるようにアクリル板及びポリカーボネート板に塗布し、80℃で10分間乾燥させた後、高圧水銀灯を用いて紫外線照射(高圧水銀灯:120W/cm、照射距離:10cm、コンベア速度:5m/min、照射回数:2回)を行い、硬化塗膜を作製した。硬化塗膜の表面に1mm間隔で切れ込みをいれ、1mm2の碁盤目を100個作り、その上にセロテープ(登録商標)を貼り付け一気に引き剥がし、剥離した碁盤目を数えた。評価基準は以下の通りである。○:剥離なし、△:剥離数1−50個、×:完全剥離。なお、上記評価で○以外(△及び×)は不合格である。
【0082】
(3)鉛筆硬度測定試験
フィルムの作製は、ガラス板に硬化後の膜厚15ミクロンのフィルムが得られるように各実施例で得られたハードコート剤組成物および比較例1で得られた組成物を塗布し、80℃で10分間乾燥させた後、高圧水銀灯を用いて紫外線照射(高圧水銀灯:120W/cm、照射距離:10cm、コンベア速度:5m/min、照射回数:2回)することにより行った。鉛筆硬度測定には鉛筆硬度計[東洋精機製作所(株)社製の鉛筆硬度試験器]および三菱鉛筆(株)製の硬度測定用鉛筆を用いた。
【0083】
【表1】

【0084】
【表2】

【0085】
【表3】

【0086】
表1〜3より、成分(b)である(メタ)アクリル系共重合樹脂を使用していない比較例の組成物から形成された硬化塗膜または硬化フィルムは耐摩耗性(300回)、鉛筆硬度、並びに(メタ)アクリル系樹脂への密着性において劣っていることが明らかである。
【0087】
続いて、1分子中に6個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート(a)を合成し、これを用いてハードコート剤組成物を作製した実施例を示す。なお、各成分の添加量として「部」とあるのは、「重量部」を意味する。
【0088】
以下に、多官能ウレタン(メタ)アクリレートの合成例を示す。
(合成例1)
温度計、攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに、ペンタエリスリトールトリアクリレート(東亜合成製;アロニックスM305)を260部充填し、内温を70℃にした後、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート由来のヌレート化合物(三井武田ケミカル製;D170N)を70部、ジブチル錫ジラウート100ppm(得られるウレタンアクリレートに対する添加量)、ハイドロキノンモノメチルエーテル800ppm(得られるウレタンアクリレートに対する添加量)を加えた。3時間反応させ、残存イソシアネート基が0.1%以下になったことを確認して反応を終了させ、活性エネルギー線硬化性多官能ウレタンアクリレート(a−1)を得た。本ウレタンアクリレートの理論最大官能基数は9官能である。
【0089】
なお、NCO濃度は以下の方法で測定した。
(ブランク値の測定)フェノールフタレイン(メタノール希釈液)を加えて青色に着色させたジブチルアミンのTHF溶液(0.1N)、15mlに規定度が0.1NであるHCl水溶液を変色がみられるまで滴下し、このHCl水溶液の滴定量をブランク値とした。
(実測NCO濃度の測定)計量された反応溶液(サンプル量(g))を15mlのTHFに溶解させ、ジブチルアミンのTHF溶液(0.1N)を15ml加えた。溶液化したことを確認した後、フェノールフタレイン(メタノール希釈液)を加えて青色に着色させ、規定度が0.1NであるHCl水溶液を変色がみられるまで滴下し、滴下量をA値(ml)とした。
上記で得られた値を下記の式に当てはめNCO濃度を算出した。
NCO濃度=(ブランク値−A値)×1.005×0.42÷サンプル量(g)
【0090】
(合成例2)
温度計、攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに、ペンタエリスリトールトリアクリレート(東亜合成製;アロニックスM305)を190部充填し、内温を70℃にした後、イソホロンジイソシアネート由来のヌレート化合物(デグサジャパン製;IPDI−T1890T、30重量%酢酸ブチル希釈品)を150部、ジブチル錫ジラウート100ppm(得られるウレタンアクリレートに対する添加量)、ハイドロキノンモノメチルエーテル400ppm(得られるウレタンアクリレートに対する添加量)を加えた。3時間反応させ、残存イソシアネート基が0.1%以下になったことを確認して反応を終了させ、活性エネルギー線硬化性多官能ウレタンアクリレート(a−2)を得た。本ウレタンアクリレートの理論最大官能基数は9官能である。
【0091】
(合成例3)
温度計、攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに、ペンタエリスリトールトリアクリレート(東亜合成製;アロニックスM305)を200部充填し、内温を70℃にした後、ポリカプロラクトン変性ポリオールと1,6−ヘキサメチレンジイソシアナートの反応から得られたポリイソシアネート化合物(旭化成ケミカルズ製;デュラネート E402−100)を130部、ジブチル錫ジラウート100ppm(得られるウレタンアクリレートに対する添加量)、ハイドロキノンモノメチルエーテル800ppm(得られるウレタンアクリレートに対する添加量)を加えた。3時間反応させ、残存イソシアネート基が0.1%以下になったことを確認して反応を終了させ、活性エネルギー線硬化性多官能ウレタンアクリレート(a−3)を得た。本ウレタンアクリレートの理論最大官能基数は9官能である。
【0092】
(合成例4)
温度計、攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを主成分とするジペンタエリスリトールポリアクリレートの混合物(CYTEC製;DPHA、OH価;56.3KOHmg/g)を250部充填し、内温を70℃にした後、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート由来のヌレート化合物(三井武田ケミカル製;D170N)を46部、ジブチル錫ジラウート100ppm(得られるウレタンアクリレートに対する添加量)、ハイドロキノンモノメチルエーテル800ppm(得られるウレタンアクリレートに対する添加量)を加えた。3時間反応させ、残存イソシアネート基が0.1%以下になったことを確認して反応を終了させ、活性エネルギー線硬化性多官能ウレタンアクリレート(a−4)を得た。本ウレタンアクリレートの理論最大官能基数は15官能である。
【0093】
(合成例5)
温度計、攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを主成分とするジペンタエリスリトールポリアクリレートの混合物(CYTEC製;DPHA、OH価;56.3KOHmg/g)を250部充填し、内温を70℃にした後、イソホロンジイソシアネート由来のヌレート化合物(デグサジャパン製;IPDI−T1890T、30重量%酢酸ブチル希釈品)を80部、ジブチル錫ジラウート100ppm(得られるウレタンアクリレートに対する添加量)、ハイドロキノンモノメチルエーテル800ppm(得られるウレタンアクリレートに対する添加量)を加えた。3時間反応させ、残存イソシアネート基が0.1%以下になったことを確認して反応を終了させ、活性エネルギー線硬化性多官能ウレタンアクリレート(a−5)を得た。本ウレタンアクリレートの理論最大官能基数は15官能である。
【0094】
(合成例6)
温度計、攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを主成分とするジペンタエリスリトールポリアクリレートの混合物(CYTEC製;DPHA、OH価;56.3KOHmg/g)を250部充填し、内温を70℃にした後、ポリカプロラクトン変性ポリオールと1,6−ヘキサメチレンジイソシアナートの反応から得られたポリイソシアネート化合物(旭化成ケミカルズ製;デュラネート E402−100)を110部、ジブチル錫ジラウート100ppm(得られるウレタンアクリレートに対する添加量)、ハイドロキノンモノメチルエーテル800ppm(得られるウレタンアクリレートに対する添加量)を加えた。3時間反応させ、残存イソシアネート基が0.1%以下になったことを確認して反応を終了させ、活性エネルギー線硬化性多官能ウレタンアクリレート(a−6)を得た。本ウレタンアクリレートの理論最大官能基数は15官能である。
【0095】
以下に、成分(b)の合成例を示す。
(合成例7)
温度計、攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに、サイクロマーP(ACA230AA)とアクリロイルモルフォリンをそれぞれ50部ずつ充填、室温で1時間攪拌し、系内が均一になったことを確認し成分(b−1)とした。
【0096】
(合成例8)
温度計、攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに、サイクロマーP(ACAZ250)とアクリロイルモルフォリンをそれぞれ50部ずつ充填、室温で1時間攪拌し、系内が均一になったことを確認し成分(b−2)とした。
【0097】
(合成例9)
温度計、攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに、サイクロマーP(ACA200M)とアクリロイルモルフォリンをそれぞれ50部ずつ充填、室温で1時間攪拌し、系内が均一になったことを確認し成分(b−3)とした。
【0098】
以下に、上記合成例で作製した成分(a)、成分(b)を用いたハードコート剤組成物の実施例を示す。
(実施例22)
成分(a)である多官能ウレタン(メタ)アクリレートとして合成例1で得られた(a−1)を90部、成分(b)として合成例7で得られた(b−1)を10部、さらに光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:DAROCUR 1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)5重量部とを混合して、均一なハードコート剤組成物を調製した。
【0099】
(実施例23)
成分(a)である多官能ウレタン(メタ)アクリレートとして合成例2で得られた(a−2)を90部、成分(b)として合成例7で得られた(b−1)を10部、さらに光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:DAROCUR 1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)5重量部とを混合して、均一なハードコート剤組成物を調製した。
【0100】
(実施例24)
成分(a)である多官能ウレタン(メタ)アクリレートとして合成例3で得られた(a−3)を90部、成分(b)として合成例7で得られた(b−1)を10部、さらに光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:DAROCUR 1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)5重量部とを混合して、均一なハードコート剤組成物を調製した。
【0101】
(実施例25)
成分(a)である多官能ウレタン(メタ)アクリレートとして合成例1で得られた(a−1)を90部、成分(b)として合成例8で得られた(b−2)を10部、さらに光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:DAROCUR 1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)5重量部とを混合して、均一なハードコート剤組成物を調製した。
【0102】
(実施例26)
成分(a)である多官能ウレタン(メタ)アクリレートとして合成例2で得られた(a−2)を90部、成分(b)として合成例8で得られた(b−2)を10部、さらに光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:DAROCUR 1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)5重量部とを混合して、均一なハードコート剤組成物を調製した。
【0103】
(実施例27)
成分(a)である多官能ウレタン(メタ)アクリレートとして合成例3で得られた(a−3)を90部、成分(b)として合成例8で得られた(b−2)を10部、さらに光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:DAROCUR 1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)5重量部とを混合して、均一なハードコート剤組成物を調製した。
【0104】
(実施例28)
成分(a)である多官能ウレタン(メタ)アクリレートとして合成例1で得られた(a−1)を90部、成分(b)として合成例9で得られた(b−3)を10部、さらに光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:DAROCUR 1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)5重量部とを混合して、均一なハードコート剤組成物を調製した。
【0105】
(実施例29)
成分(a)である多官能ウレタン(メタ)アクリレートとして合成例2で得られた(a−2)を90部、成分(b)として合成例9で得られた(b−3)を10部、さらに光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:DAROCUR 1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)5重量部とを混合して、均一なハードコート剤組成物を調製した。
【0106】
(実施例30)
成分(a)である多官能ウレタン(メタ)アクリレートとして合成例3で得られた(a−3)を90部、成分(b)として合成例9で得られた(b−3)を10部、さらに光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:DAROCUR 1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)5重量部とを混合して、均一なハードコート剤組成物を調製した。
【0107】
(実施例31)
成分(a)である多官能ウレタン(メタ)アクリレートとして合成例4で得られた(a−4)を90部、成分(b)として合成例7で得られた(b−1)を10部、さらに光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:DAROCUR 1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)5重量部とを混合して、均一なハードコート剤組成物を調製した。
【0108】
(実施例32)
成分(a)である多官能ウレタン(メタ)アクリレートとして合成例5で得られた(a−5)を90部、成分(b)として合成例7で得られた(b−1)を10部、さらに光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:DAROCUR 1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)5重量部とを混合して、均一なハードコート剤組成物を調製した。
【0109】
(実施例33)
成分(a)である多官能ウレタン(メタ)アクリレートとして合成例6で得られた(a−6)を90部、成分(b)として合成例7で得られた(b−1)を10部、さらに光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:DAROCUR 1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)5重量部とを混合して、均一なハードコート剤組成物を調製した。
【0110】
(実施例34)
成分(a)である多官能ウレタン(メタ)アクリレートとして合成例4で得られた(a−4)を90部、成分(b)として合成例8で得られた(b−2)を10部、さらに光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:DAROCUR 1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)5重量部とを混合して、均一なハードコート剤組成物を調製した。
【0111】
(実施例35)
成分(a)である多官能ウレタン(メタ)アクリレートとして合成例5で得られた(a−5)を90部、成分(b)として合成例8で得られた(b−2)を10部、さらに光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:DAROCUR 1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)5重量部とを混合して、均一なハードコート剤組成物を調製した。
【0112】
(実施例36)
成分(a)である多官能ウレタン(メタ)アクリレートとして合成例6で得られた(a−6)を90部、成分(b)として合成例8で得られた(b−2)を10部、さらに光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:DAROCUR 1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)5重量部とを混合して、均一なハードコート剤組成物を調製した。
【0113】
(実施例37)
成分(a)である多官能ウレタン(メタ)アクリレートとして合成例4で得られた(a−4)を90部、成分(b)として合成例9で得られた(b−3)を10部、さらに光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:DAROCUR 1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)5重量部とを混合して、均一なハードコート剤組成物を調製した。
【0114】
(実施例38)
成分(a)である多官能ウレタン(メタ)アクリレートとして合成例5で得られた(a−5)を90部、成分(b)として合成例9で得られた(b−3)を10部、さらに光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:DAROCUR 1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)5重量部とを混合して、均一なハードコート剤組成物を調製した。
【0115】
(実施例39)
成分(a)である多官能ウレタン(メタ)アクリレートとして合成例6で得られた(a−6)を90部、成分(b)として合成例9で得られた(b−3)を10部、さらに光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:DAROCUR 1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)5重量部とを混合して、均一なハードコート剤組成物を調製した。
【0116】
(実施例40)
成分(a)である多官能ウレタン(メタ)アクリレートとして合成例4で得られた(a−4)を80部、合成例5で得られた(a−5)を10部、成分(b)として合成例7で得られた(b−1)を10部、さらに光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:DAROCUR 1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)5重量部とを混合して、均一なハードコート剤組成物を調製した。
【0117】
(実施例41)
成分(a)である多官能ウレタン(メタ)アクリレートとして合成例4で得られた(a−4)を60部、合成例5で得られた(a−5)を30部、成分(b)として合成例7で得られた(b−1)を10部、さらに光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:DAROCUR 1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)5重量部とを混合して、均一なハードコート剤組成物を調製した。
【0118】
(実施例42)
成分(a)である多官能ウレタン(メタ)アクリレートとして合成例5で得られた(a−5)を80部、合成例6で得られた(a−6)を10部、成分(b)として合成例7で得られた(b−1)を10部、さらに光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:DAROCUR 1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)5重量部とを混合して、均一なハードコート剤組成物を調製した。
【0119】
(実施例43)
成分(a)である多官能ウレタン(メタ)アクリレートとして合成例5で得られた(a−5)を60部、合成例6で得られた(a−6)を30部、成分(b)として合成例7で得られた(b−1)を10部、さらに光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:DAROCUR 1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)5重量部とを混合して、均一なハードコート剤組成物を調製した。
【0120】
(比較例2)
合成例1で得られた多官能ウレタン(メタ)アクリレートを100部、光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:DAROCUR 1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)5重量部とを混合して、均一なハードコート剤組成物を調製した。
【0121】
(比較例3)
合成例2で得られた多官能ウレタン(メタ)アクリレートを100部、光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:DAROCUR 1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)5重量部とを混合して、均一なハードコート剤組成物を調製した。
【0122】
(比較例4)
合成例3で得られた多官能ウレタン(メタ)アクリレートを100部、光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:DAROCUR 1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)5重量部とを混合して、均一なハードコート剤組成物を調製した。
【0123】
実施例22〜43及び比較例2〜4で得られたハードコート剤組成物については、下記(4)〜(8)で示した測定方法に基づいて、耐磨耗性、密着性、鉛筆硬度、耐擦傷性、屈曲性の評価を行った。これらの評価結果を表4、表5に示す。
【0124】
(4)耐摩耗性試験
上記各実施例、比較例で得られたハードコート剤組成物を硬化後の塗膜の厚さが10ミクロンになるように表面がコロナ放電処理されたポリカーボネート板(日本テストパネル製、板の厚み2mm)にバーコーターを用いて塗布し、80℃で10分間乾燥させた後、高圧水銀灯を用いて紫外線照射(高圧水銀灯:120W/cm、照射距離:10cm、コンベア速度:5m/min、照射回数:2回)を行ない、硬化塗膜を作製した。硬化塗膜をテーバー磨耗試験機[安田精機製作所(株)社製のテーバー磨耗試験機、磨耗輪CS10F、荷重1kg]にセットして100回(回転数)磨耗後、300回磨耗後におけるグロス(60°)値を測定し、0回におけるグロス値との比率を計算して耐磨耗性の指標とした。なお、光沢度(グロス)の測定は、JIS Z 8741に準じて、日本電色工業株式会社製「SZ−Σ90」を用いて、測定角度60°で行った。
耐磨耗性(100回)=(300回磨耗後のグロス値)/(磨耗0回におけるグロス値)×100。
耐磨耗性(300回)=(300回磨耗後のグロス値)/(磨耗0回におけるグロス値)×100。
上記の耐摩耗性の値から、100回磨耗時の耐摩耗性が60%以上かつ300回磨耗時の耐摩耗性が40%以上のものを耐摩耗性良好(○)、100回磨耗時の耐摩耗性が60%以上かつ300回磨耗時の耐摩耗性が15%以上40%未満のものを使用可能なレベルの耐摩耗性(△)、100回磨耗時の耐摩耗性が60%未満または300回磨耗時の耐摩耗性が15%未満のものを耐摩耗性不良(×)と判断した。
【0125】
(5)密着性試験
各実施例、比較例で得られたハードコート剤組成物組成物を、バーコーターを用いて硬化後の塗膜の厚さが15ミクロンになるように、アクリル板、ポリカーボネート板、ABS板に塗布し、80℃で10分間乾燥させた。上記(4)と同様の条件で紫外線照射を行い、硬化塗膜を作製した。硬化塗膜の表面に1mm間隔で切れ込みを入れ、1mm2の碁盤目を100個作り、その上にセロテープ(登録商標)を貼り付け一気に引き剥がし、剥離した碁盤目を数えた。評価基準は以下の通りである。○(密着性良好):剥離なし、×(密着性不良):剥離数1〜100個。
【0126】
(6)鉛筆硬度
ガラス板に硬化後の膜厚15ミクロンのフィルムが得られるように、各実施例、比較例で得られたハードコート剤組成物を塗布し、80℃で10分間乾燥させた。上記(4)と同様の条件で紫外線照射を行い、硬化塗膜を作製した。続いて、該硬化塗膜の鉛筆硬度測定を行った。鉛筆硬度測定には鉛筆硬度計[東洋精機製作所(株)社製の鉛筆硬度試験器]および三菱鉛筆(株)製の硬度測定用鉛筆を用いた。
【0127】
(7)耐擦傷性
上記(6)と全く同様にして、硬化塗膜を作製し、耐擦傷性の評価を行った。擦傷性の評価にはクロスカッター[東洋精機製作所(株)社製]およびスチールウール(#0000)を用いた。200g重の荷重をかけてスチールウールでフィルム表面を20往復させた。目視にて傷の有無を判定する。傷が全く確認できない場合を「○:耐擦傷性良好」とし、わずかに見られる場合を「△:使用可能レベルの耐擦傷性」、多数見られる場合を「×:耐擦傷性不良」として表記する。
【0128】
(8)屈曲性
各実施例、比較例で得られたハードコート剤組成物を、硬化後の塗膜厚さが20ミクロンになるように、表面がコロナ放電処理されたプラスチックフィルム(未処理ベースフィルム:東レ(株)製ポリエチレンテレフタレートフィルム「ルミラー」、厚み125μm)にバーコーターを用いて塗布した。続いて、上記(4)と同様の条件で、紫外線照射を行い、フィルム上に硬化塗膜層を形成し、ハードコートフィルムを作製した。該ハードコートフィルムから、長手方向に50mm、幅方向に50mmの正方形のフィルム片を切り出し、サンプルとした。
サンプルの長手方向の両端を持ち、180°屈曲するように1回屈曲させた後、サンプル表面を目視にて観察し、表面にひび割れが見られなかったものは屈曲性良好(○)とし、表面にひび割れが見られたものは屈曲性不良(×)と判断した。
【0129】
【表4】

【0130】
【表5】

【0131】
表4、表5の耐磨耗性評価結果より、本発明の成分(a)、(b)、(c)を配合させた実施例の硬化塗膜は、成分(b)を配合させない比較例対比、耐磨耗性が向上していることがわかる。また、密着性の評価結果より、成分(b)である(メタ)アクリル系共重合樹脂を使用していない比較例の組成物から形成された硬化塗膜は(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂への密着性が低い事が明らかである。塗膜に脆さが見られるので硬化収縮が主な原因であると考えられる。さらに、本発明の成分(a)、(b)、(c)を配合させた実施例の硬化塗膜は、成分(b)を配合させない対応する比較例よりもフィルムの硬度が上がることがわかる。
加えて、本発明の成分(a)、(b)、(c)有する実施例の硬化塗膜は、良好な耐擦傷性、屈曲性を有することがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート(a)、(メタ)アクリル系共重合樹脂(b)、光重合開始剤(c)を必須成分とするハードコート剤組成物。
【請求項2】
1分子中に6個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート(a)、(メタ)アクリル系共重合樹脂(b)、光重合開始剤(c)を必須成分とする請求項1記載のハードコート剤組成物。
【請求項3】
前記成分(a)の重量平均分子量が500〜3000の範囲である請求項1記載のハードコート剤組成物。
【請求項4】
前記成分(b)が側鎖に(メタ)アクリロイル基とカルボキシル基を有する(メタ)アクリル系共重合樹脂である請求項1記載のハードコート剤組成物。
【請求項5】
前記成分(b)の酸価が20〜200(KOHmg/g)、重量平均分子量が5000〜20000、2重結合当量が350〜450である請求項1記載のハードコート剤組成物。
【請求項6】
前記成分(a)が6官能脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートである請求項1記載のハードコート剤組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のハードコート剤組成物を成形品上に塗布し、次いで活性エネルギー線で硬化させてなる硬化塗膜を有する成形品。
【請求項8】
成形品が(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂から選ばれた少なくとも1つからなるものである請求項7記載の成形品。

【公開番号】特開2006−316249(P2006−316249A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−41619(P2006−41619)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【出願人】(592019589)ダイセル・サイテック株式会社 (16)
【Fターム(参考)】