説明

ハーフミラー固定装置

【課題】 光ピックアップ装置に組み込まれるハーフミラーを正確に固定することが出来るハーフミラー固定装置を提供する。
【解決手段】 レーザー光が透過するとともに互いに平行な第1透過面11A及び第2透過面11Bを含む6面より成るハーフミラー11の固定装置であり、前記第1透過面11Aが当接する傾斜固定面12Aが形成されているハーフミラー固定台12にハーフミラー11の第2透過面11Bと底面との間にあるコーナーC1に当接しハーフミラー11を傾斜固定面12A方向へ押圧する下端規制部12B、12Cと第2透過面11Bと側面との間にあるコーナーC2に当接しハーフミラー11を傾斜固定面12A方向へ押圧する側面規制部12Dを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクに記録されている信号の読み出し動作や光ディスクに信号の記録動作を行う光ピックアップ装置に組み込まれるハーフミラーの固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ピックアップ装置から照射されるレーザー光を光ディスクの信号記録層に照射することによって信号の読み出し動作や信号の記録動作を行うことが出来る光ディスク装置が普及している。
【0003】
図6は例えばDVD規格の光ディスクDに設けられている信号記録層Lに記録されている信号の読み出し動作を行う光ピックアップ装置を構成する光学系を示す概略図であり、同図を利用して光ピックアップ装置の構成について説明する。
【0004】
図6において、1は波長が650nmの赤色光であるレーザー光を放射するレーザーダイオード、2は前記レーザーダイオード1から放射されたレーザー光が入射される位置に設けられている回折格子であり、0次回折光であるメインビームと±1次回折光であるサブビームとを分離生成する作用を成すものである。3は前記回折格子2を透過したレーザー光が入射される1/2波長板であり、前記レーザーダイオード1から放射されるレーザー光の偏光方向をS方向又はP方向の直線偏光光に調整する作用を成すものである。
【0005】
4は前記回折格子2及び1/2波長板3を透過したレーザー光が入射される位置に設けられているハーフミラーであり、光ディスクD方向へレーザー光を反射させるとともに該光ディスクDの信号記録層Lから反射された戻り光を透過させる制御膜が形成されている。5は前記ハーフミラー4にて反射されたレーザー光が入射される位置に設けられているコリメートレンズであり、入射されるレーザー光を平行光に変換する作用を成すものである。
【0006】
6は前記コリメートレンズ5にて平行光に変換されたレーザー光が入射されるとともに該レーザー光を反射させる立ち上げミラーであり、光軸の方向を図示したように90度変更するようにされている。7は前記立ち上げミラー6によって反射されたレーザー光が入射される位置に設けられている1/4波長板であり、前記立ち上げミラー6側から入射されるレーザー光を直線偏光光から円偏光光へ、また反対側から入射されるレーザー光である戻り光を円偏光光から直線偏光光に偏光する作用を成すものである。
【0007】
8は前記1/4波長板7を透過したレーザー光が照射される位置に設けられている対物レンズであり、光ディスクDに設けられている信号記録層Lにレーザー光を集光させて読み出し動作や記録動作を行うために適した形状のスポットを生成させる作用を成すものである。前記対物レンズ8によって光ディスクDに設けられている信号記録層Lに集光されたレーザー光は、該信号記録層Lにて反射されて戻り光として該対物レンズ8に光ディスクD側から入射される。
【0008】
前記対物レンズ8に入射された戻り光は、該対物レンズ8を透過した後1/4波長板7に入射され、該1/4波長板7によって円偏光光から直線偏光光に変換される。このようにして偏光された戻り光は、立ち上げミラー6にて反射された後コリメートレンズ5に入射される。
【0009】
前記コリメートレンズ5に入射された戻り光は、該コリメートレンズ5を透過してハーフミラー4に入射されるが、このようにしてハーフミラー4に入射される戻り光は、前記1/4波長板7に対する往復透過動作によって直線偏光光の偏光方向が反転されているので、該ハーフミラー4に設けられている制御膜にて反射されることはなく、該制御膜を透過することになる。
【0010】
前記ハーフミラー4は、透過する戻り光に対してフォーカス制御動作を行うためのフォーカスエラー信号を生成するために非点収差を付加する作用を有するものであるが、その特性からAS収差やコマ収差と呼ばれる収差が発生するという問題がある。9は前記ハーフミラー4を透過した戻り光が入射される位置に設けられているアナモフィックレンズであり、該ハーフミラー4にて生成される非点収差をフォーカスエラー信号の生成動作を行うために適した大きさになるように拡大する作用を成すとともにハーフミラー4にて発生するAS収差やコマ収差を補正する作用を成すように構成されている。
【0011】
10は前記アナモフィックレンズ9を透過した戻り光が照射される位置に設けられている光検出器であり、照射されて生成されるスポット形状の変化やスポット位置の変位を利用することによってフォーカスエラー信号やトラッキングエラー信号を生成するように構成されている。
【0012】
以上に説明したように光ディスクDに記録されている信号の読み出し動作を行う光ピックアップ装置の光学系は構成されているが、レーザーダイオード1から放射されたレーザー光を対物レンズ8方向へ反射させるとともに光ディスクDから反射される戻り光を光検出器10の方向へ透過させる作用を成すハーフミラー4が光学特性に大きな影響を与えることになる。従って、斯かる光ピックアップ装置では、前記ハーフミラー4の固定動作を精度良く行うことが要求されている。
【0013】
光ピックアップ装置の特性の良否を大きく左右するハーフミラー4は光ピックアップ装置を構成する基台となるハウジングに設けられている固定部に接着剤によって固定されるが、斯かるハーフミラーの固定に関する技術が特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2002−157777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
前記ハーフミラー4は特許文献1に記載されているように6面を備えた直方体形状の光学部品であり、図6に示したようにレーザー光が透過する平行な2つの透過面が設けられている。
【0016】
従来一般に行われているハーフミラーの固定装置について、図4に示した斜視図及び図5に示した側面図を参照にして説明する。
【0017】
図4及び図5において、11は直方体形状のハーフミラーであり、レーザー光が透過するとともに互いに平行な第1透過面11A及び第2透過面11Bを備えている。12は前記ハーフミラー11が固定されるハーフミラー固定台であり、前記ハーフミラー11の第1透過面11Aが当接する傾斜固定面12Aが設けられている。
【0018】
12B及び12Cは、前記ハーフミラー固定台12に形成されている第1下端規制部及び第2下端規制部であり、図5に示すようにハーフミラー11を構成する第2透過面11Bと底面11Cとの間にあるコーナーCが平面状の当接面12BC及び12CCに当接するように構成されている。また、12Dは、前記ハーフミラー固定台12に形成されている側面規制部であり、ハーフミラー11の側面11Dが当接するように構成されている。
【0019】
そして、前記ハーフミラー固定台12には、前記ハーフミラー11の第1透過面11A及び第2透過面11Bを透過するレーザー光が通る透孔12Hが形成されている。
【0020】
斯かる構成において、前記ハーフミラー11は矢印A方向、即ち第1下端規制部12B及び第2下端規制部12C方向及び矢印B方向、即ち側面規制部12D方向へ寄せる作業を行うとともにハーフミラー11をハーフミラー固定台12の傾斜固定面12Aに対して垂直になる方向(図5の矢印C方向)に押圧した状態のままで該傾斜固定面12Aに紫外線硬化型接着剤により接着固定することによってハーフミラー固定台12に対して固定するようにされている。
【0021】
前記ハーフミラー11のハーフミラー固定台12に対する接着固定動作は、前述したように行われるが、ハーフミラー11の位置を正確にするために接着固定箇所は一般に3箇所にて行われる。斯かる接着固定作業は、治具にてハーフミラー11を矢印A方向、B方向及びC方向に押圧しながら行われるが、接着剤の塗布箇所が多いので接着バランスのバラツキや治具の取り扱いの具合等の相違によってハーフミラーの固定精度が悪化するという問題がある。
【0022】
本発明は、前述した問題を解決することが出来るハーフミラーの固定装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、レーザー光が透過するとともに互いに平行な第1透過面及び第2透過面を含む6面より成るハーフミラーの固定装置であり、前記第1透過面が当接する傾斜固定面が形成されているハーフミラー固定台にハーフミラーの第2透過面と底面との間にあるコーナーに当接しハーフミラーを傾斜固定面方向へ押圧する下端規制部と第2透過面と側面との間にあるコーナーに当接しハーフミラーを傾斜固定面方向へ押圧する側面規制部を設けたことを特徴とするものである。
【0024】
また、本発明は、前記下端規制部のハーフミラーのコーナーに当接する位置に傾斜面を設けたことを特徴とするものである。
【0025】
そして、本発明は、前記下端規制部を一対設けたことを特徴とするものである。
【0026】
また、本発明は、前記側面規制部のコーナーに当接する位置に傾斜面を設けたことを特徴とするものである。
【0027】
そして、本発明は、接着剤にてハーフミラーを傾斜固定面に接着するようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、ハーフミラーの第1透過面が当接される傾斜固定面が形成されているハーフミラー固定台にハーフミラーの第2透過面と底面との間にあるコーナーに当接しハーフミラーを傾斜固定面方向へ押圧する下端規制部と第2透過面と側面との間にあるコーナーに当接しハーフミラーを傾斜固定面方向へ押圧する側面規制部を設けたので、即ち前記下端規制部と側面規制部によってハーフミラーをハーフミラー傾斜固定面方向へ押圧するようにしたので、従来の固定装置のようにハーフミラーを固定面方向へ押圧する治具が不要になる。
【0029】
従って、本発明の固定装置によれば固定作業が簡単になるだけでなく、ハーフミラーのハーフミラー固定台に対する位置を精度良く保持しながら接着作業を行うことが出来るので、熟練度が低い作業者でもハーフミラーの固定作業を正確に行うことが出来るという利点を有している。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のハーフミラー固定装置を示す斜視図である。
【図2】本発明のハーフミラー固定装置を示す側面図である。
【図3】本発明のハーフミラー固定装置を示す背面図である。
【図4】従来のハーフミラー固定装置を示す斜視図である。
【図5】従来のハーフミラー固定装置を示す側面図である。
【図6】本発明に係る光ピックアップ装置の光学系を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
光ピックアップ装置を構成する基台となるハウジングに設けられるハーフミラー固定台に対してハーフミラーを簡単に精度良く固定することが出来る装置を提供する。
【実施例1】
【0032】
図1に示す斜視図、図2に示す側面図及び図3に示す背面図を使用して本発明に係るハーフミラーの固定装置について説明する。尚、図4及び図5に示す従来例と同一の部材には同一の符号を付している。
【0033】
本発明のハーフミラー固定装置は、ハーフミラー固定台12に形成されている第1下端規制部12B及び第2下端規制部12Cのハーフミラー11の第2透過面11Bと底面11Cとの間にあるコーナーC1と当接する部分に傾斜面12BD及び12CDを形成するとともに側面規制部12Dのハーフミラー11の第2透過面11Bと側面11Bとの間にあるコーナーC2と当接する部分に傾斜面12DDを形成したことを特徴とするものである。
【0034】
斯かる構成のハーフミラー固定装置におけるハーフミラー11のハーフミラー固定台12への固定作業は、ハーフミラー11を該ハーフミラー固定台12に形成されている傾斜固定面12Aに載置させた後、該ハーフミラー11を矢印A方向及び矢印B方向へ押圧した状態のままで紫外線硬化型接着剤にてハーフミラー11を傾斜固定面12Aに接着固定することによって行われる。
【0035】
即ち、ハーフミラー11を矢印A方向へ押圧するとハーフミラー固定台12に形成されている第1下端規制部12B及び第2下端規制部12Cに各々設けられている傾斜面12BD及び12CDにハーフミラー11のコーナーC1が押圧当接された状態になる。図2は斯かる状態を示すものであり、斯かる図面より明らかなようにハーフミラー11は、前記傾斜面12BD及び12CDによって矢印C方向への変位力を受けることになる。斯かる変位力は、ハーフミラー11に対してハーフミラー固定台12の傾斜固定面12A方向へ押圧する力として作用することになる。
【0036】
また、ハーフミラー11を矢印B方向へ押圧するとハーフミラー固定台12に形成されている側面規制部12Dに設けられている傾斜面12DDにハーフミラー11のコーナーC2が押圧当接された状態になる。図3は斯かる状態を示すものであり、斯かる図面より明らかなようにハーフミラー11は、前記傾斜面12DDによって矢印C方向への変位力を受けることになる。斯かる変位力は、ハーフミラー11に対してハーフミラー固定台12の傾斜固定面12A方向へ押圧する力として作用することになる。
【0037】
前述したようにハーフミラー11をハーフミラー固定台12に形成されている傾斜固定面12Aに載置させた後、該ハーフミラー11を矢印A方向及び矢印B方向へ押圧すると該ハーフミラー11が第1下端規制部12B、第2下端規制部12C及び側面規制部12Dによって矢印C方向、即ち傾斜固定面12A方向に押圧された状態になるので、該ハーフミラー11を矢印C方向へ押圧するための治具を必要とせず、ハーフミラー11のハーフミラー固定台12への接着固定作業を容易に行うことが出来る。
【0038】
また、前記ハーフミラー11は前記第1下端規制部12B、第2下端規制部12C及び側面規制部12によって傾斜固定面12A上の位置が規制されるだけでなく、該第1下端規制部12B、第2下端規制部12C及び側面規制部12による押圧力が作用するので、接着箇所が一箇所で済むという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、DVD規格の光ディスクDに記録されている信号の読み出し動作等を行う光ピックアップ装置に組み込まれているハーフミラーに対して実施することが出来るだけでなく、CD規格等の他の規格の光ディスクに使用される光ピックアップ装置に実施することも出来る。
【0040】
また、本発明は、ハーフミラーの固定装置として説明したが、レーザー光を反射させる反射ミラーの固定装置としても使用することが出来る。
【符号の説明】
【0041】
11 ハーフミラー
11A 第1透過面
11B 第2透過面
12 ハーフミラー固定台
12A 傾斜固定面
12B 第1下端規制部
12C 第2下端規制部
12D 側面規制部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光が透過するとともに互いに平行な第1透過面及び第2透過面を含む6面より成るハーフミラーの固定装置であり、前記第1透過面が当接する傾斜固定面が形成されているハーフミラー固定台にハーフミラーの第2透過面と底面との間にあるコーナーに当接しハーフミラーを傾斜固定面方向へ押圧する下端規制部と第2透過面と側面との間にあるコーナーに当接しハーフミラーを傾斜固定面方向へ押圧する側面規制部を設けたことを特徴とするハーフミラー固定装置。
【請求項2】
下端規制部のハーフミラーのコーナーに当接する位置に傾斜面を設けたことを特徴とする請求項1に記載のハーフミラー固定装置。
【請求項3】
下端規制部を一対設けたことを特徴とする請求項2に記載のハーフミラー固定装置。
【請求項4】
側面規制部のコーナーに当接する位置に傾斜面を設けたことを特徴とする請求項1から請求項3に記載のハーフミラー固定装置。
【請求項5】
接着剤にてハーフミラーを傾斜固定面に接着するようにしたことを特徴とする請求項1から請求項4に記載のハーフミラー固定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−155775(P2012−155775A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11487(P2011−11487)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(504464070)三洋オプテックデザイン株式会社 (315)
【Fターム(参考)】