説明

バイオエタノール製造プロセス用誘導加熱装置

【課題】バイオエタノールの製造に際し、エネルギーの利用効率を高くするとともに、原料の無駄使いや周囲の環境の汚染を抑制できるようにすること。
【解決手段】鉄心1と、前記鉄心1に巻回された誘導コイル2と、前記誘導コイル2に巻回され、前記誘導コイルの交流励磁電流より発熱する貫通孔が形成された導電性加熱パイプ3とを有し、前記導電性加熱パイプ3の貫通孔内にバイオエタノールを精製する原料を注入してその原料を導電性加熱パイプ3の発熱により、所定の温度に加熱保温する。これにより、バイオエタノールの製造に際し、バイオエタノール精製する原料の加熱や保温を熱効率がほぼ100%に近い誘導加熱で行うので省エネルギーが図れ、また、熱源は電気であることからクリーンであり、熱交換器やボイラーを使用する場合のような原料の無駄使いや周囲の環境の汚染の発生を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオエタノール製造プロセスに用いる誘導加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、環境問題や原油依存脱却の点から、砂糖キビやトウモロコシ、廃木材などを原料とするバイオエタノールの利用が進められている。図4はこのようなバイオエタノールを製造する一般的な工程を示すもので、砂糖キビ、甜菜、小麦やコーン等の穀物あるいは木の先端部、枝、根っ子や廃木材などの原料を細分し、細分した原料を蒸煮し、それに酵素を加えて所定の温度(約75℃)に加熱して糖化する。
【0003】
その後、所定の温度(約30℃)に冷却し、酵母を加えその温度に保持して発酵させる。発酵後、100℃以上に加熱蒸留してエタノールが作成される。なお、砂糖キビや甜菜を原料とする場合には、その原料を搾って糖蜜を作り、その糖蜜を約30℃に保持して発酵させ、そのあと遠心分離機で酵母を取り出し、その残りを100℃以上に加熱蒸留してエタノールを作成する場合もある。
【0004】
このように、バイオエタノールの製造においては、加熱、冷却、発酵温度保持、加熱が繰り替えされ、これらを実行するために熱交換器やボイラーが用いられている。ボイラーの燃料としては、化石燃料(主に重油)あるいは木屑やバイオエタノール精製工程で出る粕(例えば砂糖キビの搾り粕)が使用されている。
【0005】
しかし、このような熱交換器やボイラーの使用では、熱の損失が多く効率良く熱を利用することが困難であり、また、化石燃料とする場合には周囲の環境を汚染する恐れがあり、木屑やバイオエタノール精製工程で出る粕をボイラーの燃料とする場合にはバイオエタノール精製する原料の無駄使いとなるといった問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、バイオエタノールの製造に際し、エネルギーの利用効率を高くするとともに、原料の無駄使いや周囲の環境の汚染を抑制できるようにし、斯かる問題を解消する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、鉄心と、前記鉄心に巻回された誘導コイルと、前記誘導コイルに巻回され、前記誘導コイルの交流励磁電流より発熱する貫通孔が形成された導電性加熱パイプとを有し、前記導電性加熱パイプの貫通孔内にバイオエタノールを精製する原料を注入して前記原料を所定の温度に加熱保温してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、バイオエタノールの製造に際し、バイオエタノール精製する原料の加熱や保温を熱効率がほぼ100%に近い誘導加熱で行うので省エネルギーを図ることができる。また、熱源は電気であることからクリーンであり、熱交換器やボイラーを使用する場合のような原料の無駄使いや周囲の環境の汚染の発生を抑制することができる。さらに、誘導加熱は温度管理がしやすいため加熱温度の変更や所定の温度を維持することが簡単かつ迅速にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
バイオエタノールの製造に際し、エネルギーの利用効率を高くするとともに、原料の無駄使いや周囲の環境の汚染を抑制できるようにする目的を、誘導加熱されるパイプ内にバイオエタノール精製する原料を注入し、その原料の加熱や保温を行うことにより実現した。
【実施例】
【0010】
以下、本発明に係る実施例について図1を参照して説明する。図1は実施例に係るバイオエタノール製造プロセス用誘導加熱装置の上面図(a)と側面図(b)、図2は誘導加熱部の構成を示す部分断面図、図3は結線図である。図1ないし図3において、1は三脚鉄心、2は三脚の脚鉄心にそれぞれ巻回された誘導コイル、3は各誘導コイルの外周に巻回された導電性加熱パイプである。
【0011】
三脚鉄心1のそれぞれは上部と下部のヨーク鉄心1a、1bに固定金具4により固定されており閉磁路構成とされている。各誘導コイル2の端部は端子台11の端子(UX、VY、WZ)に接続されており、この実施例では各誘導コイル2は三相の交流電流により励磁できるようにされている。各誘導コイル2が交流電流で励磁されると鉄心1に交番磁束が発生し、その磁束により導電性加熱パイプ3に電流が誘起し、その電流で導電性加熱パイプ3はジュール発熱する。導電性加熱パイプ3の温度は各誘導コイル2に印加する交流電圧を制御することにより簡単に調整することができる。
【0012】
誘導コイル2の外周に巻回された各導電性加熱パイプ3の両端にはフランジが形成され、このフランジに連結用のパイプを適宜連結する。図示例では、一端部の誘導コイル2の外周に巻回された導電性加熱パイプ3の一端は、注入パイプ5に連結され、他端は中央部の誘導コイル2の外周に巻回された導電性加熱パイプ3の一端とパイプ6で連結され、中央部の誘導コイル2の外周に巻回された導電性加熱パイプ3の他端は、他端部の誘導コイル2の外周に巻回された導電性加熱パイプ3の一端とパイプ7で連結され、他端部の誘導コイル2の外周に巻回された導電性加熱パイプ3の他端は開口している。導電性加熱パイプ3の適宜位置に、バイオエタノール精製時に発生する粕を取出す弁8が設けられている。
【0013】
図1は、図4に示すバイオエタノール精製する原料を糖化する場合に使用する誘導加熱装置を示している。この場合、注入パイプ5に枝別れした分岐パイプ9が連結され、分岐パイプ9の一方はバイオエタノール精製する原料を、他方は酵素をそれぞれ注入するパイプ10、11に連結されている。
【0014】
このように構成した誘導加熱装置は、バイオエタノール精製する原料と酵素とを注入パイプ5を経て、各導電性加熱パイプ3内に送り込み糖化に必要な温度に加熱保温する。糖化後、弁8を開き残り粕を取出し、糖化された原料を導電性加熱パイプ3の他端の開口から送り出す。送り出された原料は冷却機で所定の温度(発酵に適する温度)に冷却し、発酵工程へ移送し、発酵後温度を上げて蒸留してバイオエタノール抽出する。
【0015】
なお、図1はバイオエタノール精製する原料を糖化する場合に使用する誘導加熱装置を示すものであるが、本例の誘導加熱装置は、発酵、蒸留工程においても使用することができる。また、誘導加熱装置に冷却機能を負荷すれば、一貫してバイオエタノールを精製することができる。
【0016】
以上の実施例では、三脚の脚鉄心のそれぞれに誘導コイルと導電性加熱パイプを巻回して誘導加熱装置を構成しているが、一脚の脚鉄心に誘導コイルと導電性加熱パイプを巻回して誘導加熱装置を構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例に係るバイオエタノール製造プロセス用誘導加熱装置の上面図(a)と側面図(b)である。
【図2】誘導加熱部の構成を示す部分断面図である。
【図3】誘導加熱部の結線図である。
【図4】バイオエタノール製造工程を示す工程図である。
【符号の説明】
【0018】
1 鉄心
2 誘導コイル
3 導電性加熱パイプ
4 固定金具
5,6,7
パイプ
8 排出弁
11 端子台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄心と、前記鉄心に巻回された誘導コイルと、前記誘導コイルに巻回され、前記誘導コイルの交流励磁電流より発熱する貫通孔が形成された導電性加熱パイプとを有し、前記導電性加熱パイプの貫通孔内にバイオエタノールを精製する原料を注入して前記原料を所定の温度に加熱保温してなることを特徴とするバイオエタノール製造プロセス用誘導加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−159913(P2009−159913A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−2271(P2008−2271)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【出願人】(000110158)トクデン株式会社 (91)
【Fターム(参考)】