説明

バイオチップに付着させた生体分子標的の定量測定方法、及びそれを実施するための装置

本発明は特に、生体分子標的がハイブリダイズするプローブのマトリクスであって、複数のプローブをそれぞれ含む多数の測定点2を含む、マトリクスを備えるタイプのバイオチップ1に付着させた生体分子標的の定量測定方法であって、a)少なくとも1つのレーザー光線18を各測定点に集束照射して、そこから標的及び必要に応じてプローブにも存在する定量対象の化学元素を含む閉じ込められたホットプラズマを抽出する、集束照射する工程と、b)プラズマからの輝線を、これらの線の各強度を測定することによって、各測定点に関して検出及び分析する工程と、その後のc)定量対象の元素に特異的な線の強度とこの元素の所定の濃度との相関を実証するこれらの線の事前の較正を通じて、標的中の元素又はそれを含む基の各測定点における濃度を求める工程とを含む、方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオチップに付着させた生体分子標的の定量測定方法、及びこの方法を実施するための装置に関する。本発明は特に、このバイオチップのプローブ上にハイブリダイズした非標識核酸の定量測定に適用する。
【背景技術】
【0002】
バイオチップはここ10年間の分子生物学技法における大革命である。バイオチップにより、数百又は数千もの遺伝子の発現レベルの同時研究が可能になるため、疾患又はストレス(例えば、放射線、汚染又は薬物摂取により生じる)の影響を個体の完全なゲノムのレベルで理解することができる。このため、近代生物学において、これらの技法がますます使用されるようになっている。
【0003】
バイオチップは、2つの大きな群(マイクロ流体チップ及びプローブマトリクスチップを含む)に分けることができる。プローブマトリクスチップは、「スポット」又は測定点がマトリクス組織となっており、通常、受け手の(passive)支持体上の正確な座標に、生体高分子(例えば、DNA、タンパク質又は抗体)から構築された分子プローブを付着させるか又は合成することによって得られる。これらの標的が、プローブの各「スポット」で特異的にハイブリダイズする場合、これらのプローブマトリクスバイオチップにより、生体サンプル中に存在する標的を同定することが可能となる。
【0004】
一方では、高複雑性バイオチップ(5000スポット超)が、全ゲノム(pan-genomic)研究用に存在し、他方では、所定のテーマ(例えば、治療試験、生物学的検出器)専用の低複雑性バイオチップ及び中複雑性バイオチップが存在する。
【0005】
現行のプローブマトリクスバイオチップ技術には、特に、
蛍光標識の立体障害が大きいため、プローブと標的との間の認識の調節が散発的になる結果、多くの不自然な測定結果(measurement artifacts)がもたらされ、実験再現性が低下する、
定量測定でないため、2つの異なる標的間の発現のレベルを比較することができない、並びに
この現行の技術のコストが製造及び実施の両面で高い
といった或る特定数の大きな制限がある。
【0006】
このことが、特に、
マイクロ流体カードにおける「RT PCR」技術(「逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応」、すなわち、相補的DNAへのリボ核酸の逆転写後のポリメラーゼ連鎖増幅)(最大で386個の異なる標的を並行して増幅することが可能であると共に、実施が簡単で且つ検出が改善されるが、標的間で真に比較するための定量測定ができない、分析対象の標的の数が制限される(低複雑性バイオチップをはるかに下回る)、及び実施コストが高いという欠点がある)、
大量の標的のハイブリダイゼーション及び化学発光による標識に基づく、「ナイロン」フィルム上のバイオチップ(これも実施が簡単で、検出が改善されるが、それにもかかわらず、定量測定ができない、大きな反応容量を必要とする(低濃度のサンプルの分析を制限する)及び製造コスト及び実施コストが非常に高いという欠点がある)並びに
標識をしないバイオチップという新たなコンセプト(インピーダンスの測定又は表面プラズモン共鳴(SPR)による標的の検出に基づき、特に非特許文献1、非特許文献2又は非特許文献3に記載されているが、標的の数を定量することができないため、高密度チップの製造には問題があると共に、インピーダンス測定技法及びSPR技法のどちらについても、標的の大きさ及び立体配座が多様であるために、不自然な測定結果を伴う)
といったこの技術に対する幾つかの代替案が近年開発されている理由である。
【0007】
ICP(誘導結合プラズマ)分光法も開発されており(非特許文献4又は非特許文献5参照)、これらの方法により、核酸中に含有されるリンを定量的に測定して、例えば、「PNA」(ペプチド核酸)バイオチップ上での当該核酸のハイブリダイゼーションの程度を推定することができる。
【0008】
しかしながら、バイオチップの表面で生成するプラズマを使用してリンを定量的に測定するために質量分析を使用することは、緩徐な方法であり(典型的には、バイオチップ1cm当たり数時間かかる)、またそれらの実施に必要な機器が高価であると考えられる。さらに、この「ICP」分光技法は、ハイブリダイズするヌクレオチドのおおよその量を示すのみで、生体分子の大きさ及び数を区別することができないため、定量的ではないことに留意されたい。
【0009】
特許文献1は、標識核酸から形成され、且つプローブマトリクスタイプのバイオチップの表面と結合する多数の標的のリアルタイム定量方法であって、特に、マトリクスの表面での励起用レーザー光線の放出及びこの励起光線に応答したハイブリダイズした標的からの光放出の測定を含む、リアルタイム定量方法を提供する。
【0010】
この方法の大きな欠点は、それがまた、上記意味において定量的ではないこと、またさらに、標的分子と結合した標識分子の存在が必要となることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0105354号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】David F. et al., Bioscience Bioelectron. 2005
【非特許文献2】Li C.M. et al., Front Biosci. 2005
【非特許文献3】Macanovic A. et al., Nucleic Acid Research 2004
【非特許文献4】Inchul Yang et al., Analytical Biochemistry (2004), vol. 335, 150-161
【非特許文献5】Heinrich F., Arlinghaus et al., Analytical Chemistry (1997), vol. 69, No.18, 3747-3753
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、生体分子標的がハイブリダイズするプローブのマトリクスであって、複数の当該プローブをそれぞれ含む多数の測定点又は「スポット」を含む、マトリクスを備えるタイプのバイオチップに付着させた生体分子標的の定量測定方法であって、上記欠点の全てが改善される、定量測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この効果のために、本発明による測定方法は、
a)少なくとも1つのレーザー光線を各測定点に集束照射して(focused)、そこから上記標的及び必要に応じて上記プローブにも存在する定量対象の化学元素を含む閉じ込められたホットプラズマを抽出する工程と、
b)上記プラズマからの輝線(light emission lines)を、これらの線の各強度を測定することによって、各測定点に関して検出及び分析する工程と、その後の
c)定量対象の上記元素に特異的な線の強度とこの元素の所定の濃度との相関を実証するこれらの線の事前の較正を通じて、上記標的中の上記元素又はそれを含む基の各測定点における濃度を求める工程と、
を含む。
【0015】
なお、線強度yと濃度xとの間のこの相関は、有利に線形(すなわち、親和定数内で、等式y=ax+bに従う比例関係)である。
【0016】
なお、本発明によるこの方法により、バイオチップの全ての測定点を迅速且つ効率的に「スキャン」(すなわち、1回のスキャンで分析)し、且つ上述の工程c)から、各測定点における上記元素の原子の数を演繹して、そこから、ほんの数分だけで上記標的がハイブリダイズしたプローブの数を演繹することもできる。
【0017】
なお、バイオチップ上にハイブリダイズした標的を定量するためには、これらの標的の大きさが既知であるか又は較正される必要がある。
【0018】
本発明の別の特徴によれば、工程a)の前に、各標的は、有利には、その大きさを各プローブの大きさと実質的に等しくする較正工程(当業者により標準化とも称される)で処理されて、標的のハイブリダイズしていない部分が除去される。この較正工程は、好ましくは、バイオチップを、各測定点に存在する全ての一本鎖核酸を分解して、プローブ/標的二本鎖のみを保存することが可能なエキソヌクレアーゼ等のヌクレアーゼタイプの酵素で処理することによって実行される。
【0019】
好ましくは、工程a)で使用する上記レーザー光線又は各レーザー光線は、周波数10Hz〜100kHz、エネルギー1mW〜1kWの1fs〜100nsのパルスにより、赤外−可視−紫外域で放出される。
【0020】
さらにより好ましくは、上記レーザー光線又は各レーザー光線は、10nsと実質的に等しい持続時間のパルスにより、例えば、Nd:YAGレーザー(ネオジム添加イットリウムアルミニウムガーネットレーザー)高調波を使用して、波長266nm又は193nmの紫外域で放出される。
【0021】
また好ましくは、小型レーザー及び集束レンズを使用して、上記レーザー光線又は各レーザー光線の各測定点の表面での出力密度を1GW/cmよりも大きくすることで、気化により、寿命が約2μsのホットプラズマが得られる。
【0022】
なお、このようにエネルギーの密度が非常に高いと、各測定点の物質の一部が、気化現象によってバイオチップから排出され、この非常に明るいホットプラズマ(寿命は非常に短い)が生成する。プラズマの形態でアブレートされたこの物質は、各種原子成分及びイオン成分へと解離し、各レーザーパルスの最後で、このプラズマは急冷する。この際、励起された原子及びイオンが、より低いエネルギー準位に戻ることにより、それらに特徴的な光線を放出する。
【0023】
本発明の別の特徴によれば、上記光線又は各光線によって生成するプラズマは、このプラズマが分析対象の他の測定点に干渉しないように閉じ込められ、上記光線又は各光線に対応するプラズマからの輝線が同時に検出される。
【0024】
有利には、少なくとも1つのプラズマ活性化剤、例えば、アルゴン、ヘリウム、窒素又はこれらの各種ガスの混合物を、上記閉じ込められたプラズマ又は各閉じ込められたプラズマに添加することができる。
【0025】
また有利には、1μm厚(sided)〜50μm厚の表面で各測定点をアブレートする単一のレーザー光線を使用することができ、次いでバイオチップを、1μm〜100μmのステップでの平面的なわずかな動きにより光線に対して相対的に移動させて、全ての上記測定点をスキャンする。
【0026】
変形としては、幾つかのレーザー光線を、バイオチップに対して相対的に同時に移動させて、これらの光線により全ての測定点をアブレートすることができる。
【0027】
本発明の別の特徴によれば、レーザー誘起ブレークダウン分光(LIBS)技法は、有利には、工程a)〜工程c)の実施に使用され、レーザー誘起蛍光(LIF)技法は、好ましくは、並行してこれらの同一の工程に使用される。
【0028】
有利には、非標識核酸を含む標的、並びに核酸、ペプチド核酸(PNA、特徴的なモチーフの化学式については添付の図4参照)、ロックド核酸(LNA)及びリボ核酸エーテル(ribonucleic ethers)(ERN、特徴的なモチーフの化学式については添付の図5参照)(LIBS技法では、これらは254nm又は194nmの波長を通す)から成る群から選ばれるプローブが使用される。
【0029】
なお、エキソヌクレアーゼによる酵素消化に対して耐性であるこれらの分子により、消化中に、プローブとハイブリダイズする核酸標的の一部を保護することができる。したがって、消化後、ハイブリダイズされる核酸標的は全て操作者にとって既知であり、プローブのものと等価である。
【0030】
なお、本発明による定量測定方法はまた、核酸(抗体認識用のアンカー及びビーコンとして機能する核酸配列)とカップリングした抗体を使用するタンパク質の研究に適用してもよい。
【0031】
有利には、これらの核酸標的中に専ら存在するリンは、工程b)において、リンからの原子輝線及びイオン輝線をプラズマ中で検出するために定量する元素として使用する。変形としては、標的とプローブとを区別する事前の工程の後、この検出のために、核酸標的とプローブの両方に存在するリン(この場合、核酸(したがってリン酸)も含む)を使用することができる。
【0032】
また有利には、工程b)において、リンからの輝線は、138nm±3nm、148nm±3nm、154nm±3nm、167nm±3nm、177nm±3nm、190nm±3nm、193nm±3nm、203nm±3nm、213nm±3nm及び253nm±3nmから成る群から選ばれる値の波長で検出される。
【0033】
さらにより有利には、工程b)において、リンからの輝線は、203nm±3nmの波長で検出される。
【0034】
なお、プローブ及び標的(共に核酸から形成される)の使用により、測定されるリンの量が増加することで、検出の感度を増加させることができる。しかしながら、或る特定の構成において、特に標的の濃度が非常に低い場合には、PNAプローブを使用することが有利であり得る。これは、PNAの核酸に対する親和性が非常に高いために、分析する媒体中に存在する全てのオリゴヌクレオチド標的をトラップすることができるためである。
【0035】
さらに、PNAは、そのCOOH末端又はNH末端を介して自発的に金の表面と結合することが可能であるため、これらのPNA分子は、数ミクロン厚の金の層でコーティングを施したプラスチックのバイオチップ支持体(例えば、「カプトン」ポリイミド製)上でのプローブの付着に特に有利である。
【0036】
PNAがリンを含有しない、より包括的には253nm、194nm又は203nmに独特な輝線を有する原子を有しないという事実から、不可欠な場合、一本鎖を分解するための上述の較正工程を用いずに、ハイブリダイゼーション後そのままオリゴヌクレオチド標的の定量を実行することが可能となる。しかしながら、本発明による測定が絶対的に定量的であるためには、この標的の較正を実行する必要がある。
【0037】
しかしながら、本発明による方法は、リン以外のプラズマ中に検出される化学元素、例えばヨウ素に適用することができることに留意されたい(この例は限定を意味するものではない)。
【0038】
検出限界を改善するために、有利には:
(i)ダブルパルスLIBSタイプのダブルレーザーパルスを行うことによって、LIBS技法を実施すること、及び/又は
(ii)このLIBS技法をLIF技法と併用すること(すなわち、LIBSとLIFとの組合せ)
が可能である。
【0039】
これら2つの好ましい方法(i)及び(ii)の一方及び/又は他方により、特に、リンからの輝線をより長く維持し、増幅することが可能となり、より良好なSN比を得ることを通じて、リン、したがってそれが由来する核酸の検出閾値を少なくとも10分の1に低減させることが結果的に可能となる。
【0040】
具体的にこのダブルレーザーパルス法(i)に関しては、第2のパルス用の別の角度及び別の光線(出力、周波数、波長)を用いて実行することができるが、第1のパルスと同一の角度及び/又は同一の性質のレーザー光線を用いて実行することもできる。実際、プラズマの寿命が約2μsであれば、プラズマは、その形成後(黒体放射の終了並びに原子線及びイオン線の発生が考えられる)約100nsから光学的に分析可能である。
【0041】
この第2のレーザーパルスは、その消滅直前に、プラズマの寿命を引き伸ばし、放出された放出を増幅することができる。標的原子(複数可)が強い吸収又は放出を有する波長、すなわち、その原子に特徴的な波長が有利には選択される。
【0042】
例えば、本発明の方法で定量する化学元素がリンの場合、第2の励起は、254nm、193nm、153nm又は203nmで実行することができ、検出は、これら同一の波長で観察して実行することができる(193nmの放射及び153nmの放射の空気による相当量の吸収は、これらの波長でのプラズマの蛍光を大幅に低減させる可能性がある)。
【0043】
したがって、標的とするイオン及び/又は原子(適例はリン)からの光の放射を、それらの特異的な蛍光をこの第2のレーザーパルスで励起させることによって、増加させることが可能である。
【0044】
本発明による方法の別の特徴によれば、バイオチップの物質のアブレーション及びプラズマの形成は脱共役することができる。この場合、第1のレーザーパルスは、バイオチップの表面の一部をアブレートし、それをバイオチップの上方に排出した後、第2のパルスが有利には、周波数100Hz〜100kHzのフェムト秒タイプのレーザーを使用して、プラズマを形成し、その構成成分の特徴的な放出をもたらす。必要に応じて、第3のパルスを引き続いて使用して、標的とする化合物の蛍光を励起してもよい。
【0045】
したがって、本発明による方法によって、特に、プラズマを放出した後の核酸分子を構成するリン原子の蛍光に基づいて、核酸を標識することなく、効率的且つ迅速に核酸を検出することが可能となる。これらの核酸分子を真に定量的に測定するためには、それぞれの大きさを標準化して、上述した標的の較正を必ず実行する。
【0046】
上記で規定した定量測定方法を実施するための本発明による装置は、
生体分子標的がハイブリダイズするプローブのマトリクスであって、複数の当該プローブをそれぞれ含む多数の測定点又は「スポット」を含む、マトリクスを備えるタイプのバイオチップと、
測定点に少なくとも1つのレーザー光線を集束照射して、そこから上記標的及び必要に応じて上記プローブにも存在するリン等の定量対象の化学元素を含有するホットプラズマを抽出するための手段、並びにこうして抽出された上記プラズマ又は各プラズマを閉じ込める手段を含む、プラズマ生成及び閉じ込めユニットと、
上記プラズマ生成ユニットと接続し、且つ、上記元素の各測定点における濃度を、定量対象の上記元素に特異的な線の強度とこの元素の所定の濃度との間の相関に基づいて求めるように、各測定点のプラズマからの輝線を検出及び分析するのに好適な分光写真ユニットと、
を含む。
【0047】
有利には、これらのプローブとハイブリダイズする標的は、非標識核酸を含み、上記プローブは、核酸、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA)及びリボ核酸エーテル(ERN)から成る群から選ばれる。
【0048】
本発明の別の特徴によれば、各標的の大きさは、有利には上述の較正工程後の各プローブの大きさと実質的に等しく、この場合、各測定点の全ての標的がハイブリダイズされる。
【0049】
上記のように、バイオチップの表面で逐次生成するプラズマの光学分析により、リン原子の量、したがってハイブリダイズした標的を形成する核酸内のヌクレオチドの量の各測定点での画像を再構成することができる。したがって、そこからバイオチップの各点又は「スポット」のハイブリダイゼーションの程度を演繹することが可能である。
【0050】
なお、各「スポット」上にハイブリダイズされるオリゴヌクレオチドの数の絶対的な定量を実行するためには、バイオチップを構成する物質がリンを含有しないことが不可欠である。本出願人は、ポリイミド(例えば、「カプトン」)又は金の層でコーティングを施したこのポリイミドから構成されるバイオチップ支持体が中性で、135nm〜266nmの放出波長でのLIBS技法による測定の実行に特に好適であることを実証した。より包括的には、リンを含有せず(例えば、プラスチック、ガラス、シリカ等)且つ生体物質と親和性のある全てのタイプの物質が本発明によるバイオチップの製造に好適であり得る。
【0051】
各測定点で生成するプラズマからの輝線は、例えば、1つ又は複数の光捕捉ファイバー(その自由端は、プラズマから0.5mm〜10mmの距離にある)によって捕獲され得る。その開口数の大きさから、上記捕捉ファイバー又は各捕捉ファイバーは、プラズマにより放出される放射線を正確に入射する(injecting)ための適切なレンズ(ファイバーコリメータ)の組でキャップされる。
【0052】
したがって、本発明によるこの装置により、有利には、微小移動テーブル(2つの直交方向X及びYに沿っての微小移動)上に位置したバイオチップの表面を分析することができる。テーブルを移動させると、例えば、レーザーの各パルスでアブレートしたエリアに対応する10μmのステップで、上記レーザー光線又は各レーザー光線によって分析対象の表面全体をスキャンすることができる。
【0053】
バイオチップの表面で逐次生成するプラズマの光学分析により、ヌクレオチドの量に比例する各測定点でのリン原子の量の画像を再構成することができる。したがって、そこからバイオチップ上の各測定点(「スポット」)でのハイブリダイゼーションの程度を演繹することができる。
【0054】
なお、各スポット上にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドの数の絶対的な定量を実行するためには、バイオチップを構成する物質が全くリンを含有しないことが不可欠である。
【0055】
本発明の別の特徴によれば、抽出された上記プラズマ又は各プラズマを閉じ込めるための上記手段は、バイオチップに対して開いた状態でバイオチップ上に載る筺体によって区切られたn(n≧1)個のプラズマチャンバの少なくとも1つの配列(arrangement)を含み、上記筺体には、それぞれ上記プラズマを形成することが可能な励起レーザー光線を受光することを目的とした励起口が設けられ、且つこれらのプラズマからの各輝線を捕捉して分光写真ユニットに伝達するための光ファイバーが延在しており、プラズマチャンバ(複数可)の上記配列又は各配列がバイオチップに対して相対的に移動する。
【0056】
このチャンバ又はこれらのチャンバにより、生成するプラズマを閉じ込めることができ、幾つかのチャンバがある場合、これらの各種プラズマによって放出される光の間の干渉がない。上記筺体に関しては、例えば、実質的に平行六面体(parallelepipedal)形状である可能性があり、これは、プラズマチャンバ又は幾つかのプラズマチャンバの少なくとも1つの系統を包囲するのに好適であると共に、粉末又は液体ポリマーを使用する機械的構造化技法又はレーザー構造化技法、例えば、光造形、積層、焼結若しくはフォトリソグラフィ、又は他では成型によって形成される。
【0057】
変形としては、プラズマチャンバ(複数可)を、少なくとも上面が石英製又は励起波長及び捕捉波長を通す任意の他の物質製の、バイオチップを含有する単一の閉鎖チャンバ(この閉鎖チャンバは、アルゴン/窒素等のプラズマ形成性(plasmagenic)ガスを充填するためのバルブ及び空気を排除するためのバルブを備える)で置き換えてもよい。
【0058】
本発明の第1の実施の形態によれば、上記プラズマ生成ユニットは、複数の励起レーザー光線を放出し、且つそれぞれ及び同時に、上記励起口を介してプラズマチャンバの内部にそれらを伝播するための手段を含む。
【0059】
この第1の実施の形態に関する第1の例によれば、これらの励起レーザー光線はそれぞれ、各種レーザー源に由来し得る。この場合、本発明による各プラズマチャンバの上記励起口は、所定の波長に対応するレーザー光線を導くことを目的とし、且つその自由端に、この光線をバイオチップへ集束させるのに好適な第1の光学レンズが設けられる、励起光ファイバーを収容する。
【0060】
この第1の実施の形態に関する第2の例によれば、これらの励起レーザー光線は、
重なり合い、且つ互いに好ましくは0.4nm〜1nm離れる幾つかの波長で上流光線を放出する単一のレーザー源と、
上流光線を、それぞれ、励起レーザー光線の伝搬を目的とした励起光ファイバーと同数の波長を有する下流光線に分離するための波長分波器と、
に由来し得る。
【0061】
本発明の第2の実施の形態によれば、上記プラズマ生成ユニットは、単一の励起レーザー光線を放出し、且つそれをガルバノメータヘッドによって1つの励起口から別の励起口へ移動させることによって、続けて上記プラズマチャンバの内部へ伝播するための手段を含む。
【0062】
本発明の上記第1の実施の形態及び第2の実施の形態によれば、各プラズマチャンバは、回転外側面によって区切られ、その上部には上記励起口の1つが設けられ、この外側面に上記捕捉ファイバーを収容する捕捉口を有し、且つ当該チャンバの下開口部を介してバイオチップのすぐ上方で開いており、前記対応するレーザー光線によってそこから抽出されたプラズマを閉じ込める。
【0063】
好ましくは、各プラズマチャンバの上記外側面が、バイオチップに向かって徐々に広がり、高さが2mm〜10mmであり、且つ上記バイオチップから5μm〜200μmの距離が開いている円柱又は円錐であり、上記下開口部の直径が1mm〜5mmである。
【0064】
本発明の別の有利な特徴によれば、プラズマチャンバの上記配列及び上記バイオチップをそれぞれ、2つの直交軸X及びYに沿って移動可能に載置することができ、Y軸に沿ってバイオチップがそれぞれ移動すると、上記配列がX軸に沿ってKだけ移動するようにし、ここで、
Kは、2つの隣接するチャンバの各励起ファイバー間の距離Pと、各レーザーパルスでアブレートされた表面のX軸に沿った幅lとの比P/lによって規定され、この比は、気化後のアブレーションの形状因子によって調節され、且つ
これら2つの励起ファイバー間の距離Pは、等式P=L/(N−1)(但し、N>1、Lは、バイオチップの幅であり、且つNは、上記配列中の励起ファイバーの数である)によって規定される。
【0065】
同じく有利には、2つの隣接する励起ファイバー間の距離Pは、バイオチップ上の2つの測定点間の複数のステップである。
【0066】
本発明の別の特徴によれば、上記筺体に、その中での磁場の生成に好適な少なくとも1つのソレノイドを設けて、上記プラズマ又は各プラズマの寿命を増加させ、且つ/又はそれらの形状、及び種々の荷電粒子の選択も制御することができる。
【0067】
この磁場の他、例えば、バイオチップの支持体として、導電性物質又は他では電極(上記筺体が担持する別の電極と関連し、電位差を生成する)を担持する支持体を使用することができる手段によって電場を生成することも可能である。
【0068】
好ましくは、各プラズマチャンバの捕捉光ファイバーには、チャンバ内に現れるその自由端に第2の光学レンズが設けられ、上記外側面の内面は、上記捕捉ファイバーの方向にプラズマが放出する光線の反射を最適化することが可能な凹面鏡を部分的に形成するように設計される。
【0069】
本発明の別の優先的な特徴によれば、上記分光写真ユニットは、光電子増倍管タイプの少なくとも1つの分光写真器を含む。しかしながら、分光光度計、CCD(電荷結合素子)若しくはインテンシファイドCCDタイプのカメラ又は他ではマイクロチャネルの「ウエハ」もプラズマからの輝線の検出に使用することができることに留意されたい。
【0070】
また優先的に、所望の波長のみを通す光学フィルタを、各捕捉光ファイバーと分光写真器との間に配置することができる。
【0071】
また有利には、上記プラズマ生成ユニットはまた、第2の励起レーザー光線を放出し、且つ各チャンバの外側面の下部の、プラズマが膨張する高さ又はバイオチップから抽出された物質を排斥する高さに作製された少なくとも1つの第2の励起口を介して、1つのチャンバから別のチャンバへこの光線を導入するための補助手段も含んでもよく、各第2の励起口は、捕捉ファイバー又は上記凹面鏡による影響を受けないように計画した位置に作製される。
【0072】
本発明の上記第1の実施の形態に関連して、上記補助放出手段は、有利には、上記第2の励起光線を1つの第2の励起口から別の第2の励起口へ移動させることが可能なガルバノメータヘッドを含むことができ、この場合、各第2の励起口には、対応する第2の励起レーザー光線を上記膨張する高さ又は排斥する高さに集束させることが可能な第3の光学レンズを設けてもよい。
【0073】
変形として、また本発明の上記第2の実施の形態に関連して、各プラズマチャンバは、有利には互いに向かい合う第2の励起口の対を有することができ、これらの励起口の対は、チャンバの上記配列内で位置合わせされ、この位置合わせを通じて、上記補助放出手段によって放出される第2の励起レーザー光線を集束照射する。
【0074】
本発明の上述した上記第1の実施の形態及び第2の実施の形態に共通する本発明の別の特徴によれば、各プラズマチャンバには、上記励起口のすぐ近傍の上記外側面上に作製され、且つ上記チャンバから酸素を除くと共に、プラズマをその形成時に活性化することが可能なアルゴン又はヘリウム等の不活性ガスの導入を目的とした管を収容する、ガス注入口も設けられ得る。この手順は、例えば、減圧下で実行することができる。
【0075】
本発明の好ましい例示的な実施の形態によれば、各測定点は、例えば、コバルト、ニッケル又はそれらの酸化物の粒子を含有するポリスチレン製の磁性ビーズ又は常磁性ビーズを含んでもよく、各ビーズは、これらのビーズが上記分光写真ユニットを備える撮像システムによって明瞭に同定することが可能な光学検査対象を形成するように、バイオチップの残部及び他の測定点とは色が異なる。
【0076】
本発明によるこの優先的な例の別の特徴によれば、バイオチップは、ビーズと同数の穴が作製され、且つこれらの穴において、強度0.5T〜5Tの磁場を生成することが可能な磁気ストリップの上に載る、例えば、ポリイミド(例えば、「カプトン」)製の遮磁壁を形成するプラスチックシートを含んでもよい。
【0077】
本発明の例示的な一実施の形態によれば、各ビーズは、2つの半球から構成され、当該2つの半球は、上記穴の1つで互いに結合し、且つ上記磁気ストリップ側を向いた下半球のみが常磁性であり、上記プローブは、着色された上半球の凸面にグラフトされて、上述の光学検査対象のうちの1つを形成する。
【0078】
変形としては、各ビーズは、上記光学検査対象の形成を目的とし、且つその凸面上に、上記プローブがグラフトされる着色された上半球、並びに底面を介してこの半球の縁の下で結合し、上記穴の内部の上記磁気ストリップ側にある常磁性の円錐体から構成してもよい。
【0079】
なお、(バイオチップの表面と平行な)ビーズの中央水平面に対して非対称な上記(the latter)ビーズの形状により、有利には本発明による方法の収率を向上させることができる。
【0080】
上述した本発明の特徴その他も、非限定的な例示を用いた本発明の幾つかの例示的な実施の形態に関する下記の記述を読むことでより理解されよう。当該記述は、添付の図面に関連して示される。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】様々なオリゴヌクレオチド濃度を特徴とする標的サンプル(「OLIGOsサンプル」と略称する)に関する、本発明の方法によって得られたプラズマ中のリン由来の輝線を示す画像である。
【図2】これらの輝線の強度と試験した濃度又は希釈率との間で測定した比例関係(定数内)を示すグラフである。
【図3】これらの輝線の強度と試験した濃度又は希釈率との間で測定した比例関係(定数内)を示すグラフである。
【図4】本発明によるプローブマトリクスバイオチップ上のプローブとして使用することができるPNAの化学式の特徴的な配列を示す図である。
【図5】本発明によるプローブマトリクスバイオチップ上のプローブとして使用することができるERNの化学式の特徴的な配列を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施形態による定量測定装置の部分概略斜視図である。
【図7】図6の装置に含まれるプラズマチャンバの配列とバイオチップとの間隔を示す概略側面図である。
【図8】図6の装置の配列に含まれるプラズマチャンバの概略斜視図である。
【図9】図8のプラズマチャンバの上部からの図である。
【図10】図8のチャンバにおける時刻tでのプラズマの形成を示す概略斜視図である。
【図11】図8のチャンバを使用する時刻t+△tでのその輝線の捕捉を示す概略斜視図である。
【図12】バイオチップの励起光ファイバー内に導くために入射レーザー光線を複数の出射レーザー光線へ分解するための、本発明により使用することができるカスケードフィルタリング分波器の原理のスキームである。
【図13】図12に示す分波器の構成要素を示す円形図(medallion)である。
【図14】図12及び図13の装置の本発明による変形として使用することもできる、回折格子合波器−分波器の原理の他の模式図である。
【図15】図12及び図13の装置の本発明による変形として使用することもできる、回折格子合波器−分波器の原理の他の模式図である。
【図16】図6の変形に対応する本発明の第2の実施形態による定量測定装置の部分概略斜視図である。
【図17】図16の装置に含まれるバイオチップのプラズマチャンバの配列間の間隔を示す概略側面図である。
【図18】図16の装置の配列に含まれるプラズマチャンバの概略斜視図である。
【図19】図18のプラズマチャンバの上部からの図である。
【図20】図18のチャンバにおける時刻tでのプラズマの形成を示す概略斜視図である。
【図21】図18のチャンバを使用する時刻t+△tでのその輝線の捕捉を示す概略斜視図である。
【図22】本発明の第1の例による、本発明によるプローブマトリクスバイオチップの各測定点を形成するビーズの概略経線図(meridian section view)である。
【図23】本発明の第2の例による、本発明によるプローブマトリクスバイオチップの各測定点を形成するビーズの概略経線図である。
【図24】本発明の第3の例による、本発明によるプローブマトリクスバイオチップの各測定点を形成するビーズの概略経線図である。
【図25】図22のビーズを包含する本発明によるバイオチップの部分的な概略斜視図及び部分断面図である。
【図26】図24のビーズを包含する本発明によるバイオチップの部分的な概略斜視図及び部分断面図である。
【図27】図25に記載のバイオチップのビーズを製造する主な工程を示す方法概略図である。
【図28】波長に応じて、リンが放出する原子線の、その最も強い線に対する位置及び相対強度を示すグラフである。
【図29】スペクトル域160nm〜260nmにおける元素P、Fe、Fe、Si及びC由来の輝線の位置及び強度を比較して示すグラフである。
【図30】リン由来の輝線の波長に選択された試験帯域(study zone)の場所(localization)及び環境を、元素Fe及びSiと比較してより正確に示すグラフである。
【図31】特に、集束系及びプラズマ形成性ガスをこのチャンバ内に供給するための管の配列の組立体を示す、本発明による定量測定装置(例えば、図6の定量測定装置)に含まれるプラズマチャンバの部分概略縦断面図である。
【図32】さらに、各プラズマチャンバに対する、光ファイバーの配列を示す、図31の変形である。
【図33】バイオチップを含有する気密セルから構成され、且つプラズマ形成性ガスを充填するためのバルブ及び空気を排除するためのバルブを備えるプラズマチャンバを示す、図32の変形である。
【図34】図33に記載のバイオチップを含有する気密セルの配列の部分斜視図である。
【図35】集束系の対物レンズと線の放出部位であるバイオチップの分析点との間に、本発明による装置の各チャンバ内でプラズマが放出される様子を、立体角の観点で示す図である。
【図36】本発明により使用することができる光捕捉システムの例(光ファイバー−干渉フィルタ/光電子増倍管「CPM」タイプ)の特徴を示す図である。
【図37】本発明により使用することができる光捕捉システムの例(光ファイバー−干渉フィルタ/光電子増倍管「CPM」タイプ)の特徴を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0082】
本発明の方法を用いて、プローブマトリクスバイオチップのプローブ上にハイブリダイズした標的核酸を定量するためには、これらの標的の大きさが既知であるか又は較正される必要があることが想起される。
【0083】
この較正を達成するために、ハイブリダイゼーション後、バイオチップを、バイオチップ上に存在する全ての一本鎖核酸を分解することが可能なエキソヌクレアーゼタイプの酵素(例えば、毒(venom)ホスホジエステラーゼ1、エキソヌクレアーゼI)等で処理する。このエキソヌクレアーゼ処理及び洗浄後、プローブ/標的二本鎖のみがバイオチップ上に存在し、標的は正確にプローブの大きさである(エキソヌクレアーゼの立体障害の範囲内)。
【0084】
測定されるリンの濃度は、プローブの大きさ及び密度が完全に較正される限り、ハイブリダイゼーションの程度に比例する。実際、図2及び図3のグラフに示すように、測定される放出シグナルの強度は、バイオチップの支持体を形成する「カプトン」として知られるポリイミドのシート上に存在するオリゴヌクレオチド(19塩基長で試験される)の濃度と線形の相関がある(図1参照)。
【0085】
図6〜図11に示す、本発明の第1の実施形態による測定装置は、LIBS技法及びLIF技法を併用し、本質的に、
標的がハイブリダイズするプローブのマトリクスを備えるタイプであり、多数のプローブスポット2を含むバイオチップ1と、
バイオチップ1の様々な点に幾つかのレーザー光線を同時に集束照射して、そのそれぞれから、これらの標的にのみ存在するリン等の定量対象の化学元素を含有するホットプラズマを抽出する、集束照射するための手段3及び4、並びにこうして抽出された上記プラズマ又は各プラズマを閉じ込めるための手段を含む、プラズマ生成及び閉じ込めユニットと、
プラズマ生成及び閉じ込めユニットと接続し、且つ、上記元素の各スポット2における濃度を、上記元素に特異的な線の強度とこの元素の所定の濃度との間の相関に基づいて求めるように、各スポット2のプラズマからの輝線を検出及び分析するのに好適な分光写真ユニット5と、
を含む。
【0086】
図6に示すように、閉じ込め手段は、n個のプラズマチャンバ7(n≧1)の配列6から形成され、その壁は、例えば、バイオチップ1に向かって徐々に広くなる直立円錐体の形状(円柱状も想定され得る)である。この配列6は、例えば、平行六面体形状の筺体8によって区切られ、これは、バイオチップ上に開いた状態でバイオチップ1上に載り、このバイオチップ1に対して相対的に移動する。
【0087】
筺体8には、それぞれチャンバ7の上部に作製され、且つN個の第1の励起レーザー光線10’(図10参照)を伝搬するN個の第1の励起光ファイバー10を収容することを目的とし、使用する波長に好適なN個の第1の励起口9が設けられる。光学レンズ、例えば、液体レンズ(図示せず)を、各ファイバー10の自由端に接合して、対応する光線10’をバイオチップ1の表面に集束させる。
【0088】
したがって、作業時、LIBS技法によって分析される上述のプラズマを形成する目的で、又は他では第1の工程のみでバイオチップ1の物質をアブレートする目的で、これらの光線10’は、上記集束照射手段3によって、各スポット上に集束照射される。
【0089】
図7に示すように、筺体8の下縁8aは、好ましくは距離d(5μm〜200μm)だけバイオチップ1と離される。プラズマチャンバ7に関しては、それぞれ、例えば、2mm〜10mmの範囲の高さ(Z軸に沿う)及び1mm〜5mmの範囲であり得る直径の下開口部(円錐体の底面又は円柱の端部)を有する。
【0090】
また、各プラズマチャンバ7には、その円錐状の側壁上に(図8参照)、好ましくは対応する第1の励起口9に隣接し、且つ管12(例えば、チューブ又はホース)を収容するガス注入口又は孔11が設けられ、ガス注入口又は孔11はその軸が、チャンバ7によって形成される円錐体の母線と実質的に直交しており、中性ガス(例えば、アルゴン)の注入を可能にする。実際、核酸から形成された標的の場合、プラズマにより放出される紫外光の吸収を制限するために、各プラズマチャンバ7に存在する空気中の酸素が結果的に排除される。
【0091】
さらに、これらのプラズマからの輝線を捕捉するためのN個の光ファイバー13は、各チャンバ7に特異的な線スペクトルの分光写真ユニット5への伝達のために、筺体8を貫通し、それぞれチャンバ7の内部と連通する(図8、図9及び図11の矢印A参照)。捕捉ファイバー13はそれぞれ、チャンバ7の側壁に作製された捕捉口14内に収容され、各ファイバー13の自由端は、プラズマによって放出される光をこのファイバー13に入射するのに好適な光学レンズ13aでキャップされる。
【0092】
さらに、捕捉口14の反対に位置する各チャンバ7の壁の円錐状(又は円柱状)の内面は、捕捉ファイバー13に対して最大量の光を反射することが可能な凹面鏡15(積分球と同様、図9参照)が形成されるように、研磨及び金属化される。
【0093】
プラズマ生成及び閉じ込めユニットに含まれる他の集束照射手段4は、例えば、LIBS技法と並行して上述のLIF技法を実施することを目的とする。補助的な第2の励起手段を構成するこれらの手段4は、集束照射手段3によって実行されるアブレーションの後、各チャンバ7でプラズマを生成するように機能することもできる。
【0094】
この目的のために、これらの集束照射手段4は、筺体8内及び各チャンバ7の側壁内の両方に作製された第2の励起穴又はスリット19を通る単一の第2の励起レーザー光線18を様々な角度で集束照射するための、下流にガルバノメータヘッド17を伴うレーザーヘッド16を含む(図8及び図9参照)。各穴又はスリット19は、プラズマが膨張する予測上の高さ又は他ではバイオチップ1のアブレートした物質を排斥する高さ、及び対応する捕捉ファイバー13又は鏡15に対しての「死(blind)」角に作製される。
【0095】
各穴又はスリット19の反対側に、レーザー光線18をプラズマ又は排出物質の形成レベルに集束させる光学レンズ(図示せず)を配置することができる(図10中、このプラズマは参照符号Pで表す)。このレンズは必要に応じて、レンズの焦点を合わせることができる電磁石から構成される小型の磁性ジャック上に置いてもよい。
【0096】
レーザー光線18は、上述のガルバノメータヘッド17を形成するガルバノメータモータ上に載置された一組の鏡により、1つの第2の励起穴又はスリット19から他の第2の励起穴又はスリット19へ移動する。この組立体により、所望量の時間、各光ファイバー10が伝搬する第1の励起光線10’のパルスに対する第2の励起パルス18を進行させるか又は遅延させることができる。
【0097】
分光写真ユニット5に関しては、好ましくは、例えば、光電子増倍管(PMと略記する)、分光光度計、CCDカメラ若しくはインテンシファイドCCDカメラ又はマイクロチャネルの「ウエハ」である検出器を含む。検出器に光を入射するために、所望の波長のみを選択する光学フィルタを、各捕捉光ファイバー13と検出器との間に挿入することができる。さらに、好適なレンズを、各光ファイバー13の出口に取り付けてもよい。
【0098】
図6〜図11に記載のこの装置により、従来技術の装置よりも迅速にバイオチップ1の表面全体をスキャンすることができる。このスキャン中の分析時間は、使用する励起光線10’の数に反比例する。
【0099】
N個のファイバー10が伝搬する各種第1の励起光線10’は、各種レーザー源から得ることができる。しかしながら、代替的には、互いに近接した(典型的には互いに0.4nm〜1nm離れた)幾つかの波長の重ね合わせから構成される光線を生成する単一の光源を使用した後、各波長を単一のファイバー10に入射するために、波長分波器(波長分割多重システム又はWDMと略記する)を使用して、この光線を分解する。図12〜図15は、上述したN個の第1の励起光線を得るための、本発明によるこの変形を示す。
【0100】
より具体的には、この効果のために、N=6の下流光線21(上流光線22から得られる各波長λ〜λを有する)を示す、図12に概略的に示すような、カスケードフィルタリング分波器20を使用することができる。これらの下流光線21はそれぞれ、例えば、屈折率分布型レンズから構成されるコリメータ23に由来する。図13の円形図に示すように、分波器20を構成する6個の空洞24はそれぞれ、側面を多層誘電体反射器25に包囲される。
【0101】
なお、この上流光線22は、使用する全ての波長が、バイオチップ1の表面の部分的な気化及びプラズマの形成をもたらすのに十分なエネルギーを有する光線を生成するように、十分なエネルギーを有する必要がある(組立体に随伴する損失の見込みを考慮するため)。適切な場合、プラズマは、排出原子、より詳細には、先に説明したようにリンの原子からの放出の誘導に好適な波長を有する別の光線を用い、排出物質において、第2のレーザーパルスによって生成する。
【0102】
変形としては、図14及び図15に示すような、回折格子合波器−分波器を使用することができる。
【0103】
図14の合波器−分波器30は、回折格子31を含み、反対側のその端部に、入力光ファイバー32及び出力光ファイバー33が設けられ、また、入射する光線を反射することが可能な球形鏡34を含み、出力ファイバー33によってそれぞれ伝搬される光線を生成する。図15は、その部分に関して、この回折格子31を組み込む光学系の上流に設けられた合波器(multiplex)35を示す。
【0104】
プラズマチャンバ7の配列6とバイオチップ1との間で実行される相対移動に関して、この配列6は、例えば、X軸に沿って移動する構造体上に配置することができる(図6参照)。このX軸に沿っての移動は、ステッピングモータ、磁石又は電磁石のシステム、ガルバノメータシステム又はX軸に沿った正確な移動を提供するための任意の他のシステムによって行われる(或る特定の状況において、X軸は、一定の半径を有する円であってもよい)。
【0105】
分析対象のバイオチップ1は、その部分に関して、X軸方向と直交したY軸に沿って移動し、このY軸上での移動は、上記X軸に関して上述したものと等価なシステムによって行われる。X及びYに沿った移動は、各レーザーパルスで精査した表面のYに沿った高さZ及びXに沿った幅Iによって規定される。各パルスで精査したこの表面の断面が長方形でない場合、X及びYに沿った移動は、動いたエリアの表面全体のアブレートを可能にするために、Z/2及びI/2に低減する必要がある。
【0106】
Y軸に沿ってバイオチップ1が移動するとそれぞれ、プラズマチャンバ7の配列6が、X軸に沿ってKだけ移動する(Kという数は、2つの連続するプラズマチャンバ7の励起ファイバー10間の距離P及び各レーザーパルスでアブレートした表面のXに沿った幅Iによって規定され、K=P/Iとなる(気化後、アブレーションの形状因子よって調節される)。
【0107】
上述した2つの連続する励起ファイバー10間の距離Pは、分析対象のバイオチップ1の幅L及び配列6の励起ファイバー10の数Nによって規定され、P=L/(N−1)(但し、N>1)となる。
【0108】
配列6が、共働するプラズマチャンバ7の幾つかの系統から構成される場合、Y軸に沿った移動にも、同一の推論を働かせることができる。X方向及びY方向の全ての移動は、電動式のプラットフォームで行うことができる。
【0109】
アブレートする表面を減少させて、バイオチップ1の分析を実行するためには、2つの連続する励起ファイバー10間で選ばれるギャップが、バイオチップ1上のプローブスポット2の多数のステップであることが有利である。実際、本発明によるバイオチップ1を形成するプローブスポット2のマトリクスは、これらのマトリクスがバイオチップ1の大きな領域(典型的には数cm)にわたって或る一定のステップの間隔を有するようなものである。このステップを考慮してプラズマチャンバ7の配列6を生成することによって、プローブがグラフトした領域のみをアブレートすることが可能になる。
【0110】
同様に、アブレーションの設定能(resolution)及び2つのアブレーション間のX及びYに沿った移動の値は、試験されるバイオチップ1の領域に好適であることが有利である。X軸及びY軸に沿った移動は全て、例えば、バイオチップ1が配置された単一の微小移動プラットフォームによって行うことができる(プラズマチャンバ7はそのまま固定される)。
【0111】
図16〜図21に示す、本発明の第2の実施形態による測定装置も、LIBS技法及びLIF技法を併用するが、図6〜図11を参照して先程説明した本発明の第1の実施形態による装置とは以下の点で本質的に異なる。
【0112】
第1に、第2の実施形態によるプラズマチャンバ107の配列106は、それが、集束照射手段103により送達される単一の励起レーザー光線110の入力点として機能する各プラズマチャンバ107上部の第1の励起口109であることから、励起ファイバーを設けない。レーザー光線110を分析対象のバイオチップ1の表面に集束させる光学レンズ(図示せず)が、有利には各励起口109に配置され、このレンズは、必要に応じてレンズの焦点を合わせることができる電磁石から構成される小型の磁性ジャック上に置くことが可能である。
【0113】
図17に示すように、筺体108は、好ましくは、50μm〜100μmの距離だけバイオチップ1と離される。
【0114】
レーザー光線110の、チャンバ107の配列106に沿った、1つの励起口109から他の励起口への移動は、ガルバノメータモータ(したがって、レーザーヘッド112の下流に設けられるガルバノメータヘッド111を形成する)上に載置された一組の鏡によって行われる。このガルバノメータ鏡のシステムは、レーザー光線110が分析対象エリアで常にバイオチップ1の表面と直交するように規定される。これは、長さが、配列106の移動長及び移動幅の合計の領域内である鏡、並びに大きさが小さめの2つの他の鏡の使用を伴う。
【0115】
このガルバノメータヘッド111の別の実施形態では、図16に示すように、回転移動するのみの2つの鏡の他に、回転移動するだけでなく並進移動もする鏡を使用し得る。励起光線110が分析対象の表面と直交したままの作動領域(working field)を提供するテレセントリック系対物レンズを備えるガルバノメータヘッド111を使用することが好ましい。
【0116】
なお、バイオチップ1に対する励起光線110の直角度を保証するための多くの可能性が存在し、この制約(constraint)により、画像を再構成するために、チャンバ107の配列106の移動と光線110の移動とが正確に同期することが可能となる。
【0117】
第2に、補助的な第2の励起手段104は、LIF技法による単一の集束照射レーザー光線118の第2の放出用に、集束レンズ117付のレーザーヘッド116を含む。この効果のために、2つの第2の励起穴又はスリット119が、プラズマが膨張する予測上の高さ又はアブレートした物質を排斥する高さ、及び常にN個の捕捉ファイバー113(それぞれ、チャンバ107の対応する捕捉口114に近傍のレンズ13aに類似のレンズ113aが設けられる)又は上記凹面鏡(図18、図20及び図21参照)それぞれに対する「死」角で互いに向かい合う各プラズマチャンバ107の側壁(円錐状又は円柱状)上に互いに対向して設けられる。
【0118】
図16に示すように、配列106のチャンバは全て、n個のチャンバ107のN対の第2の励起穴又はスリット119を通過する想像上の直線で接続される。
【0119】
したがって、これらの補助的な第2の励起手段104によって、単一のレーザー光線110によって生成する全てのプラズマを励起することができる。
本発明による方法の実施及びこの方法で使用するバイオチップの加工の例
なお、事前に、本発明の第1の実施形態による装置の各プラズマチャンバ7の上部に設けられた励起ファイバー10を、1つ又は2つのさらなるファイバーを用いて2倍又は3倍にして、一方では、ビデオカメラ又はデジタル撮影装置により、バイオチップ1の表面を撮像することができ(「RGB」モード、すなわち、赤緑青で)、他方では、白色光でこの表面を照らすことができる。したがって、本発明によるこの装置により、バイオチップ1の表面のカラー画像又は白黒画像を生成することができる。
【0120】
結果として、プローブの位置を正確に特定することが可能となる(但し、バイオチップ1の背景と異なる色の光学検査対象にプローブをグラフトした場合)。プラズマチャンバ7、107が、これらの光学検査対象のうち1つの上に載っている場合にのみ、アブレーションが引き起こされる。この構成において、色コードは、3×256個の可能なレベル(ビデオカメラ又はデジタル撮影装置により通常処理されるレベル)でRGBコードの3つの基本色を混合することによって確立することができる。したがって、これにより、これらの光学検査対象に対し可能な16777216色が提供され、各標的スポット2に対して異なる色の光学検査対象を割り当てることが可能となる。
【0121】
異なる色のこれらの光学検査対象を製造するために、リンを含有しないカラープリンタ色素(すなわち、シアン、マゼンタ、黄、CMYと略記する)を使用することができる。同様に、バイオチップ1上の異なる色の光学検査対象のアレイを印刷するために1600万色を有するプリンターを使用することができる(このプリンターは、RGBを色素の混合物に変換する)。
【0122】
次いで、各標的スポット2は、単一色の光学検査対象上にグラフトされ、バイオチップ1の読み取り時に、その明確な同定が可能となる。光学検査対象のこの方法を用いることによって、上記バイオチップを形成するマトリクス中のプローブスポット分布がランダムであるバイオチップ1の分析が可能となる。
【0123】
これを行うためには、本発明によれば、以下のことを組み合わせて実施することが有利である:
本出願人による、2006年2月24日に出願された国際特許出願第PCT/FR2006/00428号に記載の、核酸懸濁液の分析方法、及び
本出願人名義の国際特許出願公開第WO−A−02/43855号に記載の、固定化ベクターを用いた磁性カップリングにより支持体と結合したプローブのアレイ組織の加工方法。
【0124】
より具体的には、各生体分子プローブの多数のコピーは、所定色且つ単一色の磁性ビーズ又は常磁性ビーズ上にグラフトされる。例えば、コバルト、ニッケル又はそれらの酸化物の粒子を含有する、較正したポリスチレンビーズであってもよい。
【0125】
粒子は、光学検査対象に関して記載したように、例えば、色素の混合物で全体的に塗装又は染色される。次いで、異なるプローブの化学量論混合物(それぞれが分析対象の標的の混合物中に存在する核酸配列とハイブリダイズすることが可能である)が得られるように、これらの粒子を化学量論的に混合する。
【0126】
プローブ及び標的は混合され、各タイプのプローブは、相補的な標的とハイブリダイズし、それらを飽和する。粒子及びプローブ/標的複合体は単離、洗浄後、再溶解する。
【0127】
図22〜図26を参照して、シート40(例えば、カプトン等のポリイミド系、1μm〜10μm厚(好ましくは各ビーズ41a、41b又は41cの直径に等しい))に、直径がビーズ41a、41b、41cに等しい多数の穴42を開けて、穴42のマトリクスを形成する(理想的には、ビーズ41a、41b、41cと同数の穴42が存在する)。この「カプトン」シート40は、磁気ストリップ43上に配置されるか又は代替的にはこれと結合し、その大きさは、数センチメートル(理想的には、2.5cm×7.6cm)である。ストリップ43は、磁化粒子を含有するポリマー又は樹脂から構成されることが有利であり、ストリップ43により発生する磁場は、ほぼ0.5T〜5Tである。シート40は、そのストリップ43をカバーするエリア全体にわたって遮磁壁を形成する一方、穴42では磁場が自由なままである。
【0128】
図25に関する図22の例示的な実施形態によれば、各ビーズ41aは、それらの各縁T(すなわち、平面)を介して互いに結合する2つの同一の半球S1及びS2から構成される。これらの穴42の1つにおいて、磁化ストリップ43側を向いた下半球S2のみが、例えば、常磁性粒子を含有するポリマー又は樹脂製であるため、常磁性である。
【0129】
図22〜図26からも分かるように、生物学的プローブ44は、上記光学検査対象を形成するために着色された上半球S1の凸面にグラフトされる。
【0130】
図23の変形において、下半球S2’は、プローブ44がグラフトされる着色された上半球S1’よりも小さい直径を有し、また、半球S1’及びS2’の各縁Tを介して中心を合わせて上記上半球と結合することによって組み合わせられ、こうして各ビーズ41bを形成する。
【0131】
図24及び図26に示す他の変形において、各ビーズ41cは、その凸面上にプローブ44がグラフトされる着色された上半球S1’’、並びに底面を介してこの半球S1’’の縁Tの下で結合し、穴42の内部の磁気ストリップ43に面する常磁性の円錐体S2’’から構成される。
【0132】
なお、ビーズ41cのこの非対称形状により、方法の収率を改善することができ、さらに、かかるビーズ41cを、より容易にシート40の穴42(これも円錐状に設けられる)に挿入することができる。
【0133】
上記のように、これらのビーズ41a、41b、41cの上半球S1、S1’、S1’’はそれぞれ有利には、塗装されるか又は着色されたプラスチック、例えば、ポリスチレン(又はリンを含有しない任意の他の生体適合性物質)から構成される。
【0134】
磁気ストリップ43上に「カプトン」シート40を組み合わせた後、ビーズ/プローブ/標的複合体を、このストリップ43をカバーするこのシート40の表面に付着させる。次に、針、すなわち、ストリップ43の磁場よりも小さい磁場(典型的には、静磁石(static magnet)又は電磁石を介して0.5T〜1.5T)を供給する尖先端を、ビーズ41a、41b、41cの平均直径の実質的に4分の3の距離を置いて、シート40全体を移動させる。ビーズは、この針によって引き付けられ、シート40を通る磁場が針の磁場よりも弱いことから、シート40の表面で移動する。しかしながら、針がシート40の穴42の近傍を通過するや否や、磁場がこの穴42の中ではより強いために、ビーズ41a、41b、41cが磁場によって捕獲される。穴42の大きさ及び磁場間での競合のために、穴42に対して単一のビーズ41a、41b、41cが捕獲される。一旦全てのビーズ41a、41b、41cが捕獲されると、ストリップ43を除去することができ、ビーズ41a、41b、41cがシート40上に残る。
【0135】
磁気ストリップ43及び/又は「カプトン」シート40は、引き続いて上記本発明による測定装置で分析される。各ビーズ41a、41b、41cの色は、撮像システムにより求められ、それによりプローブ44の性質を求めることが可能となる。各ビーズ41a、41b、41cに結合したプローブ44の量は、物質のアブレーション及びこのアブレーションによって生成したホットプラズマからの輝線の分析の後、リンを定量することによって求める。
【0136】
図27に示すように、磁気極性ビーズ41aの加工は、それぞれポリスチレン及び常磁性樹脂から構成され、且つ接着層53を介して相互に結合する、異なる物質製の2つのシート又はフィルム51及び52から構成されるプレート50のレーザー加工によって実行することができる(矢印B及び矢印Cを参照)。例えば、「Vacrel」として知られるポリマー系の2つのシート51及び52(下シート52のみがニッケル又はコバルトのナノ粒子を含有する)の使用が可能となる。
【0137】
したがって、第1の工程(i)において、相互に結合した半球S1及び半球S2の対は、このレーザー加工を通じて得られ、これらの対は、接着層53を介して互いに接続する。
【0138】
第2の工程(ii)において、上半球S1は、それらを形成する物質がまだ着色されていない場合、着色される。
【0139】
第3の工程(iii)において、半球S1及びS2のこれらの対は、対応するビーズ41aを他と区別し、プローブ44をグラフトするために、さらなるレーザー加工(矢印D)を用いて分離される。
【0140】
したがって、ビーズ41aは、レーザー光線の集束照射によってフィルム51及び52の大部分で重合する。ビーズ41aの最終構造体は、フィルム51及び52の表面に配置されたマスク又はグリッドを用いて得ることができ、相互に結合した半球S1及びS2の各対を得ることができる。これらのビーズ41aは、水酸化ナトリウムでフィルムの重合していない部分を消化することによって放出される。
【0141】
これらの磁気極性ビーズを製造する別の代替案は、立体写真術を実施するために、2つの異なる感光性樹脂及び1つ又は2つのレーザー光線を使用してそれらを製造することである。第1の磁気的に中性の樹脂は、ビーズ41aの第1の部分(例えば、半球S1)の合成に使用され、常磁性コバルト又はニッケル粒子を含有する第2の樹脂は、第2の部分(例えば、半球S2)の合成に使用される。
【0142】
リンの原子線に関する図28を参照すると、この元素の発光スペクトルは、紫外域及び極紫外域に強い線を示現する。13000Kの温度で、最も強いリン線は167.96nmにある。相対強度の順番で分類して(I/I167.96)、24個の最も強いリン線を、下記第1表及び対応する図28に列記する。
【0143】
【表1】

【0144】
なお、線の強度の算出は、以下の等式に基づく:
【0145】
【数1】

【0146】
h プランク定数、
c 光の速度
λij 考察中のより高い状態iからより低い状態jへの遷移の波長
輝線の初期エネルギー準位iの統計的重み
ij 考察中の線の遷移確率
Z(Texc) 分配関数
遷移が起こる励起した準位のエネルギー
exc プラズマの温度
図29及び図30は、LIBS技法によるバイオチップの分析中の特有な(parasitic)元素の存在を示す(これらのバイオチップは特に、ケイ素系(ガラス基板を備えるバイオチップの最も広く知られた例)である)。
【0147】
ガラス基板の各種組成:Al、C、Na、O、Ca、B、Ge、As、Fe、Ti、Ni、Zn及び/又は
核酸の骨格:C、N、O及び/又は
プローブを結合するための分子自己集合体:Au、S、O、C、N、Br
中に存在し得る他の特有な元素を一覧にすると、3つの元素Si、Fe(Fe)及びCのみが、160nm〜260nmのスペクトル域で、リンの線と比較して多少強い線を有することが分かる(図29参照)。
【0148】
図29及び図30のグラフは、このスペクトル域及び13000Kの温度で、これらの各種元素の最も強い線を(リンの最も強い線も)全て記録している。そこから分かるのは、優先的に200nmを上回る波長を示すものを選択することによって、203nm±3nmに位置するリン線の組が、
特有な線に対するこの線の組の相対「距離」(198.89nmの弱めのケイ素線及び212.41nmの別の強めのケイ素線の存在)(203nmを中心とし、スペクトルバンド幅が3nm〜6nmの干渉フィルタを使用することがこの場合には非常に好適であることが特定される)と、
単一の線ではなく、「累積」強度が253.56nmのリン線よりも(4倍〜5倍)大きい、一組の線を取り扱う可能性と、
の間で達成される折衷に基づいて、特に有利だと考えられることである。
【0149】
変形としては、明らかに253.56nmよりも4倍強いが、上述した212.41nmのケイ素線からはほんの12Åである、213.61nmのリン線の本発明による使用を挙げることができる。
【0150】
図30のグラフは、特に、203nmのいずれかの側でリンからの輝線に対して優先的に選択される試験帯域Zを示す。
【0151】
図31及び図32は、チャンバの雰囲気を制御するための手段及び対応する集束系と接続した、本発明による定量測定のための装置で使用することができるプラズマチャンバ7の例を示す。
【0152】
LIBS技法に関して、最適組成のプラズマを得る(すなわち、詳細なスペクトル分析を可能にする)には、上述のように、ガス(例えば、アルゴン、ネオン又は窒素)から構成される制御された雰囲気の使用が必要となる。図31〜図33に示すように、例えば、アルミニウム(容易に加工可能で且つ高価でない物質)で加工することができる各プラズマ閉じ込めチャンバ7を、これらの例では、顕微鏡対物レンズOに固定することによって、集束系(レンズL、L’を含む)とバイオチップ1との間に位置付ける。こうして各チャンバ7を集束系のバレルに固定する。チューブ12と接続する各チャンバ7の側方の開口部により、このチャンバ7を通じてプラズマ形成性ガス(上記でコメントした図8参照)を入れることが可能である。
【0153】
この対物レンズOの直径が25mmに等しく、また作動距離Dが10mmの場合、各チャンバ7の幾可学的形状は、結果的に、例えば、体積50mm未満の雰囲気を閉じ込めることができる。チャンバ7とバイオチップ1の分析表面との間に残る間隔d(好ましくは、d<1mm)により、ガスの排出が可能となる。以下で説明するように、想定される捕捉光学系は、各チャンバ7の構造に一体化することができる。
【0154】
図32の本発明によるチャンバ7には、プラズマ形成性ガスを供給するチューブ12の他に、チャンバを横方向に通過する光ファイバー12’が設けられる。
【0155】
図33及び図34の本発明による実施形態において、閉じ込めチャンバ7は、例えば、平行六面体状の、閉鎖セル又はチャンバ7’で置き換えられており、少なくとも上面7a’は、石英製又は励起波長及び捕捉波長を通す任意の他の物質製である。チャンバ7’の下面には、それぞれプラズマ形成性ガス、例えば、アルゴン/窒素の充填及び空気の排除用に、2つのバルブV1及びV2が備えられる。したがって、チャンバ7’に含有される空気がフラッシュバルブV2により引き抜かれた後、このチャンバ7’には、フィリングバルブV1によりプラズマ形成性ガスが充填される。これらの図33及び図34からも分かるように、電動式プラットフォームの底面S上には、図6のX方向及びY方向に移動することができるようにバイオチップ1が載置されている。このセルの上面7a’により、レーザーパルスが通過して、バイオチップ1の表面でプラズマを生成し、この表面の近傍に配置された光ファイバー12’により、プラズマから輝線を捕捉することができる。なお、セル7’の側面はまた、必要に応じて石英製であってもよく、こうして側方に配置された別のレーザー光線を用いてプラズマを励起することができる。
【0156】
図35は、10mm未満になるように選ばれた、顕微鏡の対物レンズOとバイオチップ1の分析表面との間の作動距離Dで、放射線が放出される中心点から始まる立体角2πステラジアンでのプラズマPの均一な放出を示す。
【0157】
なお、上記光ファイバー又は各光ファイバーの最小長は、検出器を適切な位置に配置することができるように、少なくとも対物レンズOの直径の半分と等しくする必要がある。その一方で、光ファイバー長は10cmよりも長くする必要はない。捕捉光ファイバー13’の出力には、LIBSマイクロプローブの場合、多少強く真空引きされている分光計の代わりに、有利には、200nmに近い波長λに特に好適な、干渉フィルタ及び「CPM」(チャネル型光電子増倍管)を有するタイプの別の捕捉システムを使用することができる。
【0158】
図36及び図37は、光ファイバー13’及び干渉フィルタ(図の参照符号60)/CPM(図の参照符号70)を備えるタイプのこの捕捉ユニット5’の主な光学特性を示す。光ファイバー13’は、例えば、NA(開口数)0.22、すなわち、24.8°の「Ocean Optics」のファイバーモデルであってもよく、干渉フィルタとジョイントしたCPM70は、例えば、Perkin Elmerのモデルであってもよい。
【0159】
リンの特徴的な波長の1つに関して、干渉フィルタ60(屈折率n1、厚さe1)は、有利には、プラズマPに含有されるリンの分析用の波長に関する。
【0160】
CPM70は、石英窓71(屈折率n2及び厚さe2)及びマルチアルカリ光電面(厚さe3)を特徴とする。変形としては、このCPMの代わりに、「PM」タイプの光電子増倍管、マイクロチャネルウエハ又は任意の他の光子検出器も使用することができる。
【0161】
図37では、干渉フィルタ60及びCPM70の他、この捕捉ユニット5’用に選ばれた捕捉波長を透過するように設計した、空気、水又は光学オイルの層80(空気が優先的に使用される)も確認することができる。
【0162】
なお、別の実施形態では、光ファイバー13’とCPM70との間に、このCPM70上のファイバー出力を画像化するため、集束レンズを導入することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体分子標的がハイブリダイズするプローブ(44)のマトリクスであって、複数の該プローブをそれぞれ含む多数の測定点(2)を含む、マトリクスを備えるタイプのバイオチップ(1)に付着させた生体分子標的の定量測定方法であって、
a)少なくとも1つのレーザー光線(10’、110、18、118)を各測定点に集束照射して、そこから前記標的及び必要に応じて前記プローブにも存在する定量対象の化学元素を含む閉じ込められたホットプラズマ(P)を抽出する工程と、
b)前記プラズマからの輝線を、これらの線の各強度を測定することによって、各測定点に関して検出及び分析する工程と、その後の
c)定量対象の前記元素に特異的な線の強度とこの元素の所定の濃度との相関を実証するこれらの線の事前の較正を通じて、前記標的中の前記元素又はそれを含む基の各測定点における濃度を求める工程と、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
工程c)から各測定点(2)における前記元素の原子の数を演繹して、そこから前記標的がハイブリダイズしたプローブ(44)の数を演繹することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記レーザー誘起ブレークダウン分光(LIBS)技法を、工程a)〜工程c)の実施に使用することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
レーザー誘起蛍光(LIF)技法を、工程a)〜工程c)の実施に併用することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
非標識核酸を含む標的を使用することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
核酸、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA)及びリボ核酸エーテル(ERN)から成る群から選ばれるプローブを使用することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記核酸標的中に存在するリンのみを、工程b)において、リンからの原子輝線及びイオン輝線を前記プラズマ(P)中で検出するために定量する元素として使用することを特徴とする、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記核酸標的及び核酸も含む前記プローブの両方に存在するリンを、標的とプローブとを区別する事前の工程の後、工程b)において、リンからの原子輝線及びイオン輝線を前記プラズマ(P)中で検出するために定量する元素として使用することを特徴とする、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項9】
工程b)において、リンからの前記輝線を、138nm±3nm、148nm±3nm、154nm±3nm、167nm±3nm、177nm±3nm、190nm±3nm、193nm±3nm、203nm±3nm、213nm±3nm及び253nm±3nmから成る群から選ばれる値の波長で検出することを特徴とする、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
工程b)において、リンからの前記輝線を、203nm±3nmの波長で検出することを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程a)の前に、各標的を、その大きさを各プローブ(44)の大きさと実質的に等しくする較正工程で処理して、前記標的のハイブリダイズしていない部分を除去することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記較正工程を、前記バイオチップ(1)を、各測定点(2)上に存在する全ての一本鎖核酸を分解して、プローブ/標的二本鎖のみを保存することが可能なエキソヌクレアーゼ等のヌクレアーゼタイプの酵素で処理することによって実施することを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
工程a)で使用する前記レーザー光線又は各レーザー光線(10’、110、18、118)を、周波数10Hz〜100kHz、エネルギー1mW〜1kWの1fs〜100nsのパルスにより、赤外−可視−紫外域で放出することを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記レーザー光線又は各レーザー光線(10’、110、18、118)の各測定点(2)の表面での出力密度を1GW/cmよりも大きくすることで、気化により、寿命が約2μsの前記ホットプラズマ(P)を得ることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
1μm幅〜50μm幅の表面で各測定点(2)をアブレートする単一のレーザー光線(110)を使用し、且つ前記バイオチップ(1)を、1μm〜100μmのステップでの平面的なわずかな動きにより前記光線に対して相対的に移動させて、全ての前記測定点をスキャンすることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
幾つかのレーザー光線(10’)を、前記バイオチップ(1)に対して相対的に同時に移動させて、これらの光線により全ての前記測定点(2)をアブレートすることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記光線又は各光線(10’、110、18、118)によって生成する前記プラズマ(P)を、このプラズマが分析対象の他の測定点(2)に干渉しないように閉じ込め、且つ前記光線又は各光線に対応する前記プラズマからの前記輝線を同時に検出することを特徴とする、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つの活性化剤、例えば、アルゴン、ヘリウム、窒素又はこれらのガスの混合物を、前記閉じ込めたプラズマ又は各閉じ込めたプラズマ(P)に添加することを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか一項に記載の定量測定方法を実施するための装置であって、
生体分子標的がハイブリダイズするプローブ(44)のマトリクスであって、複数の該プローブをそれぞれ含む多数の測定点(2)を含む、マトリクスを備えるタイプのバイオチップ(1)と、
前記測定点に少なくとも1つのレーザー光線(10’、110、18、118)を集束照射して、そこから前記標的及び必要に応じて前記プローブにも存在するリンのような定量対象の化学元素を含有するホットプラズマ(P)を抽出するための手段(3及び4)並びにこうして抽出された前記プラズマ又は各プラズマを閉じ込めるための手段を含む、プラズマ生成及び閉じ込めユニットと、
前記プラズマ生成及び閉じ込めユニットと接続し、且つ、前記元素の各測定点における濃度を、定量対象の前記元素に特異的な線の強度とこの元素の所定の濃度との間の相関に基づいて求めるように、各測定点の前記プラズマからの輝線を検出及び分析するのに好適な分光写真ユニット(5)と、
を備えた、装置。
【請求項20】
前記プローブ(44)とハイブリダイズする前記標的が非標識核酸を含み、且つ前記プローブが、核酸、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA)及びリボ核酸エーテル(ERN)から成る群から選ばれることを特徴とする、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
各標的の大きさが、各プローブ(44)の大きさに実質的に等しく、各測定点(2)の全ての標的がハイブリダイズされることを特徴とする、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
抽出された前記プラズマ又は各プラズマ(P)を閉じ込めるための前記手段が、バイオチップに対して開いた状態で該バイオチップ(1)上に載る筺体(8、108)によって区切られたn(n≧1)個のプラズマチャンバ(7、107)の少なくとも1つの配列(6、106)を含み、前記筺体には、それぞれ前記プラズマを形成することが可能な励起レーザー光線(10’、110)を受光することを目的とした励起口(9、109)が設けられ、且つこれらのプラズマからの前記輝線を捕捉して前記分光写真ユニット(5)に伝達するための光ファイバー(113)が延在しており、プラズマチャンバ(複数可)の前記配列又は各配列が前記バイオチップに対して相対的に移動することを特徴とする、請求項19〜21のいずれか一項に記載の装置。
【請求項23】
前記プラズマ生成ユニットが、複数の励起レーザー光線(10’)を放出し、且つそれぞれ及び同時に、前記励起口(9)を介して前記プラズマチャンバ(7)の内部にそれらを伝播するための手段(3)を含むことを特徴とする、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記励起レーザー光線(10’)がそれぞれ、各種レーザー源に由来することを特徴とする、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
各プラズマチャンバ(7)の前記励起口(9)が、所定の波長に対応する前記レーザー光線(10’)を導くことを目的とし、且つその自由端に、この光線を前記バイオチップ(1)へ集束させるのに好適な第1の光学レンズが設けられる、励起光ファイバー(10)を収容する(receive)ことを特徴とする、請求項23又は24に記載の装置。
【請求項26】
前記励起レーザー光線(10’)が、重なり合い且つ互いに0.4nm〜1nm離れる幾つかの波長を含む上流光線(22)を放出する単一のレーザー源、及びこの上流光線を、それぞれ、前記励起レーザー光線の伝搬を目的とした励起光ファイバー(10)と同数の波長を有する下流光線(21)に分離するための波長分波器(20、30)に由来することを特徴とする、請求項23に記載の装置。
【請求項27】
前記プラズマ生成ユニットが、単一の励起レーザー光線(110)を放出し、且つそれをガルバノメータヘッド(111)によって1つの励起口(109)から別の励起口へ移動させることによって、続けて前記プラズマチャンバ(107)の内部へ伝播するための手段(103)を含むことを特徴とする、請求項22に記載の装置。
【請求項28】
各プラズマチャンバ(7、107)が、回転外側面によって区切られ、その上部には前記励起口(9、109)の1つが設けられ、この外側面に前記捕捉ファイバー(13、113)を収容する捕捉口(14、114)を有し、且つ該チャンバの下開口部を介して前記バイオチップ(1)のすぐ上方で開いており、対応する前記レーザー光線(10’、110)によってそこから抽出された前記プラズマ(P)を閉じ込めることを特徴とする、請求項23〜27のいずれか一項に記載の装置。
【請求項29】
各プラズマチャンバ(7、107)の前記捕捉光ファイバー(14、114)には、前記チャンバに現れるその自由端に第2の光学レンズ(13a、113a)が設けられ、且つ前記外側面の内面が、前記捕捉ファイバー(13、113)の方向に前記プラズマ(P)によって放出される前記光線の反射を最適化することが可能な凹面鏡(15)が部分的に形成されるように設計されることを特徴とする、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記プラズマ生成ユニットがまた、第2の励起レーザー光線(18、118)を放出し、且つ各チャンバの外側面の下部の前記プラズマ(P)が膨張する高さ又は前記バイオチップ(1)から抽出された前記物質を排斥する高さに作製された少なくとも1つの第2の励起口(19、119)を介して、1つのチャンバ(7、107)から別のチャンバへこの光線を導入するための補助手段(4、104)を含み、各第2の励起口は、前記捕捉ファイバー(13、113)又は前記凹面鏡(15)による影響を受けないように計画した位置に作製されることを特徴とする、請求項28又は29に記載の装置。
【請求項31】
請求項28が請求項23に記載のものと同様である場合、前記補助放出手段(4)が、前記第2の励起光線(18)を1つの第2の励起口(19)から別の第2の励起口へ移動させることが可能なガルバノメータヘッド(17)を含むことを特徴とする、請求項30に記載の装置。
【請求項32】
各第2の励起口(19)に、前記対応する第2の励起レーザー光線(18)を前記膨張する高さ又は前記排斥する高さに集束させることが可能な第3の光学レンズが設けられることを特徴とする、請求項31に記載の装置。
【請求項33】
請求項28が請求項27に記載のものと同様である場合、各プラズマチャンバ(107)が、互いに向かい合う第2の励起口(119)の対を有し、これらの励起口の対が、チャンバの前記配列(106)内で位置合わせされ、この位置合わせを通じて、前記補助放出手段(104)によって放出される第2の励起レーザー光線(118)を集束照射することを特徴とする、請求項30に記載の装置。
【請求項34】
各測定点(2)が、例えば、コバルト、ニッケル又はそれらの酸化物の粒子を含有するポリスチレン製の磁性ビーズ又は常磁性ビーズ(41a、41b、41c)を含み、各ビーズは、これらのビーズが前記分光写真ユニット(5)を備える撮像システムによって明瞭に同定することが可能な光学検査対象を形成するように、前記バイオチップ(1)の残部及び他の測定点とは色が異なることを特徴とする、請求項19〜33のいずれか一項に記載の装置。
【請求項35】
前記バイオチップ(1)が、ビーズ(41a、41b、41c)と同数の穴(42)が作製され、且つこれらの穴において、強度0.5T〜5Tの磁場を生成することが可能な磁気ストリップ(43)の上に載る、例えば、ポリイミド製の遮磁壁を形成するプラスチックシート(40)を含むことを特徴とする、請求項34に記載の装置。
【請求項36】
各ビーズ(41a、41b)が2つの半球(S1及びS2又はS1’及びS2’)から構成され、該2つの半球は、前記穴(42)の1つで互いに結合し、且つ前記磁気ストリップ(43)側を向いた下半球(S2又はS2’)のみが常磁性であり、前記プローブ(44)が、着色された上半球(S1又はS1’)の凸面にグラフトされて、前記光学検査対象を形成することを特徴とする、請求項35に記載の装置。
【請求項37】
各ビーズ(41c)が、前記光学検査対象の形成を目的とし、且つその凸面上に、前記プローブ(44)がグラフトされる着色された上半球(S1’’)、並びに底面を介してこの半球の縁(T)の下で結合し、前記穴(42)の内部の前記磁気ストリップ(43)側にある常磁性の円錐体(S2’’)から構成されることを特徴とする、請求項35に記載の装置。
【請求項38】
各プラズマチャンバ(7、107)の前記外側面が、前記バイオチップ(1)に向かって徐々に広がり、高さが2mm〜10mmであり、且つ前記バイオチップから5μm〜200μmの距離が開いている円柱又は円錐であり、前記下開口部の直径が1mm〜5mmであることを特徴とする、請求項28〜37のいずれか一項に記載の装置。
【請求項39】
各プラズマチャンバ(7、107)に、前記励起口(9、109)のすぐ近傍の前記外側面上に作製され、且つ前記チャンバから酸素を除くと共に、前記プラズマ(P)をその形成時に活性化することが可能なアルゴン又はヘリウム等の不活性ガスの導入を目的とした管(12)を収容する、ガス注入口(11)がさらに設けられることを特徴とする、請求項28〜38のいずれか一項に記載の装置。
【請求項40】
プラズマチャンバ(7)の前記配列(6)及び前記バイオチップ(1)がそれぞれ、2つの直交軸X及びYに沿って移動することができるように載置され、Y軸に沿って前記バイオチップがそれぞれ移動すると、前記配列がX軸に沿ってKだけ移動するようにし、ここで、
Kは、2つの隣接するチャンバの各励起ファイバー(10)間の距離Pと、各レーザーパルスでアブレートされた表面のX軸に沿った幅lとの比P/lによって規定され、この比は、気化後のアブレーションの形状因子によって調節され、且つ
これら2つの励起ファイバー間の距離Pは、等式P=L/(N−1)(但し、N>1、Lは、前記バイオチップの幅であり、且つNは、前記配列中の励起ファイバーの数である)によって規定されることを特徴とする、請求項22〜39のいずれか一項に記載の装置。
【請求項41】
2つの隣接する励起ファイバー(10)間の前記距離Pが、前記バイオチップ(1)上の2つの測定点(2)間の複数の前記ステップであることを特徴とする、請求項40に記載の装置。
【請求項42】
前記筺体(8、108)に、その中での磁場の生成に好適な少なくとも1つのソレノイドを設けて、特に、前記プラズマ又は各プラズマ(P)の寿命を増加させ、および/または、それらの形状を制御することを特徴とする、請求項22〜41のいずれか一項に記載の装置。
【請求項43】
例えば、前記バイオチップの支持体の導電性物質又は他ではこのバイオチップ支持体が担持する電極から構成される電場を生成するための手段が設けられ、前記電極は前記筺体が担持する別の電極と関連し、電位差を生成することを特徴とする、請求項22〜42のいずれか一項に記載の装置。
【請求項44】
前記筺体(8、108)が、幾つかのプラズマチャンバ(7、107)の少なくとも1系統の包囲に好適であり、且つ光造形、積層、焼結又はフォトリソグラフィ等の、粉末又は液体ポリマーを使用するレーザー構造化技法又は機械的構造化技法によって形成される、実質的に平行六面体形状であることを特徴とする、請求項22〜43のいずれか一項に記載の装置。
【請求項45】
前記分光写真ユニット(5)が、光電子増倍管タイプの少なくとも1つの分光写真器を含み、且つ所望の波長のみを通す光学フィルタが、各捕捉光ファイバー(13、113)と前記分光写真器との間に配置されることを特徴とする、請求項19〜44のいずれか一項に記載の装置。
【請求項46】
前記バイオチップ(1)を含有する閉鎖筺体から構成される単一のプラズマチャンバ(7’)を含み、少なくともその上面(7a’)は、石英製又は励起波長及び捕捉波長を通す任意の他の物質製であり、この閉鎖チャンバが、アルゴン又は窒素等のプラズマ形成性ガスを充填するためのバルブ(V1)及び空気を排除するためのバルブ(V2)を備えることを特徴とする、請求項22に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【公表番号】特表2010−503842(P2010−503842A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527857(P2009−527857)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【国際出願番号】PCT/FR2007/001501
【国際公開番号】WO2008/034968
【国際公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(508358737)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE
【住所又は居所原語表記】25 rue Leblanc, Batiment Le Ponant D, 75015 Paris, France
【Fターム(参考)】