説明

バイオハザードを破壊し、バイオガス産生を増強するための嫌気的消化の使用

本発明は、プリオンを含有する特定危険部位(SRM)、ウイルス病原体、および/または細菌病原体などのバイオハザード物質を破壊するために、嫌気的消化(AD)プロセス、特に、好熱性嫌気的消化(TAD)を使用する系および方法に関する。本発明の追加の利点はまた、改良されたバイオガスの品質および量の形態で、バイオガス産生の増強を達成するためにそのようなバイオハザード物質を含有し得る原料を使用することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオハザードを破壊し、バイオガス産生を増強するための嫌気的消化の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
多くのタンパク質に基づくバイオハザード物質は、世界中で大きな健康問題を引き起こしている。そのような物質の主なカテゴリーの1つとして、ウイルスが挙げられる。
【0003】
例えば、インフルエンザウイルスは、ヒトの気道において広範囲の感染を引き起こすオルトミクソウイルスの一員であるが、既存のワクチンおよび薬剤療法は価値が限られる。通常1年間に、20%のヒト集団がこのウイルスに罹患し、40,000人が死亡する。歴史上最も壊滅的なヒトに対する大災害の1つにおいては、1918年のA型インフルエンザウイルスパンデミックの間に世界中で少なくとも2000万人が死亡した。既存のワクチンまたは療法の価値が限られているため、新しいインフルエンザパンデミックの脅威は続いている。高齢者においては、ワクチン接種の効果は約40%に過ぎない。既存のワクチンは、ウイルス抗原であるヘマグルチニンHAおよびノイラミニダーゼNの遺伝子変異のため、毎年再設計しなければならない。4種の抗ウイルス剤が、インフルエンザの治療および/または予防のために米国で認可されている。しかしながら、それらの使用は重篤な副作用および耐性ウイルスの出現可能性のため限られている。
【0004】
米国では、下痢の主な原因は、ノロウイルス、ロタウイルスおよび他の腸内ウイルスなどのウイルス感染である。
【0005】
HIV(以前はHTLV-IIIおよびリンパ節症関連ウイルスとして知られていた)は、免疫系が機能しなくなり、多くの命を脅かす日和見感染をもたらす症候群であるAIDS(後天性免疫不全症候群)として知られる疾患の原因であるレトロウイルスである。HIVはAIDSの主要な原因として関与し、体液への曝露を介して伝染し得る。経皮的損傷に加えて、粘膜または血液、血液を含有する液体、組織もしくは他の潜在的に感染性の体液を含む無傷でない皮膚との接触が感染の危険をもたらす。
【0006】
これらの感染性ウイルス因子の多くが、特定の生体物質と接触するようになった後、そのような物質はバイオハザードになる。これらのバイオハザード物質の多く(全てではないが)は、適切な廃棄を要する。
【0007】
他のタンパク質に基づくバイオハザード物質としては、いわゆる「特定危険部位(SRM)」に存在し得るプリオンが挙げられる。ウシ由来SRM(潜在的なBSEプリオン源として)などのSRMの管理は依然として地球規模の課題である。プリオンを破壊し、浄化されたSRMを使用するための費用効果的で環境的に責任ある方法が家畜産業にとって非常に望ましい。
【0008】
BSEは、世界の牛肉産業にとって最大の経済的かつ社会的課題の1つであった。カナダだけで、BSEは2003年5月以来60億ドルを超える損失を引き起こした。感染性海綿状脳症(TSE)は、ヒトにおけるクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー症候群(GSS)、および致死性家族性不眠症(FFI);ならびに動物におけるスクレイピー、慢性消耗病(CWD)およびウシ海綿状脳症(BSE)により代表される致死性神経変性障害の一群を形成する(Collinge, 2001)。英国における主なBSE動物間流行病の間に蓄積された証拠(Belayら、2004)により、BSEとCJDの関係が確認された。伝染経路および機構が完全に理解されていないため、ヒトへの感染を予防する際の1つの重要な工程は、食物連鎖および環境から病原体を排除することである。
【0009】
プリオンはTSEを引き起こす病原体であると考えられている。プリオン、PrPscは、細胞性プリオンタンパク質PrPcのプロテイナーゼK耐性の異常に折畳まれたアイソフォームから主に構成される(Prusiner, 1998)。プリオンは多くの微生物に対して通常は有効である不活化方法に対して耐性である(Millsonら、1976; ChatignyおよびPrusiner, 1979;ならびにTaylor 1991, 2000)。いくつかの研究が、化学的消毒(Brownら、1982)、121℃で1時間のオートクレーブ(Brownら、1986, Taylorら、1997)、6M尿素および1M NaOHへの曝露(Brownら、1984, 1986)、1M NaSCN (Prusinerら、1981)および0.5%次亜塩素酸(Brownら、1986)を用いる処理、最大14,000 ppmの次亜塩素酸ナトリウムへの曝露(Taylor, 1993)、プロテイナーゼK(Kociskoら、1994; Caugheyら、1997)および他の新しく同定されたプロテアーゼ(McLeodら、2004; Langeveldら、2003)を用いる消化が、PrPscを完全に破壊することができないと報告している。レンダリングにおけるPrPscの不活化が英国および欧州において評価されている(TaylorおよびWoodgate、2003)。
【0010】
PrPscの酵素的分解もまた、汚染された装備の浄化および再利用を達成するための手段として研究されてきた。例えば、BSEプリオンを表すSup35Nm-His6組換えプリオンタンパク質を用いて、Wangは、代理BSEがスブチリシンおよびケラチナーゼによって選択的に消化されるが、コラゲナーゼおよびエラスターゼによっては消化されないことを示した(Wangら、2005)。190種のプロテアーゼを分泌する単離物に由来する6株の細菌が、PrPscに対する消化活性を示すプロテアーゼを産生すると報告された(Myller-Hellwigら、2006)。その細菌により産生されるいくつかの熱安定性プロテアーゼは、高温かつpH 10でPrPscを分解した(Huiら、2004, McLeodら、2004, Tsiroulnikovら、2004, Yoshiokaら)。
【0011】
しかしながら、今までのところ、プリオンを完全に破壊するためには焼却が唯一の有効な方法である。しかし焼却は、特に、エネルギー消費および温室効果ガス放出の点で、特定の望ましくない経済的不利益を有する。例えば、CFIA(カナダ食品検査庁)はSRMの安全な廃棄のために焼却、アルカリ加水分解法および熱加水分解法のみを認可しているが、焼却は、部分的には産業の能力不足および高い関連費用のため、特に大規模にSRMを取り扱うには非実用的であるようである。SRMを破壊するためのこれらのプロセスを実行する際の費用負担と共に、既存の焼却およびアルカリまたは熱加水分解施設の限られた能力は家畜産業に対して厄介な課題を作り出している。カナダにおいては毎年、50,000〜60,000トンのSRMが産生されると見積もられている(Facklam、2007)。SRMの焼却はエネルギーを消費するだけでなく、大量の温室効果ガスを放出する。さらに、これらの手順に由来する最終産物は、付加価値のある副産物の生産にとって有用ではない。
【発明の概要】
【0012】
本発明の一態様は、担体材料中に存在し得るバイオハザードの力価を低下させる方法であって、該担体材料を嫌気的消化(AD)反応器に供給し、ADプロセスの間においてバイオガス産生速度を実質的に一定に維持することを含む前記方法を提供する。
【0013】
特定の実施形態においては、バイオハザードは、ホルモン、抗体、体液(例えば、血液)、ウイルス病原体、細菌病原体、および/または雑草種子を含む。他の実施形態においては、バイオハザードはプリオンを含む。例えば、プリオンは、スクレイピープリオン、CWDプリオン、またはBSEプリオンであってよい。プリオンはプロテイナーゼK(PK)消化に対して耐性であってよい。
【0014】
特定の実施形態においては、前記担体材料は、タンパク質に富む材料であってよい。例えば、担体材料は、特定危険部位(SRM)であってよい。SRMはCNS組織(例えば、脳、脊髄、またはその画分/ホモジェネート/部分)を含んでもよい。
【0015】
本明細書で用いられる「タンパク質に富む材料」は、Kjeldahl法もしくはその誘導法/改良法、増強Dumas法、UV-可視分光法を用いる方法、ならびにバルク物理特性、放射線の吸着、および/もしくは放射線の散乱などを測定する他の計測技術などの、当業界で公知の様々なタンパク質アッセイまたは窒素含量アッセイにより測定することができる、タンパク質含量が高い(例えば、5〜100%(w/w)、10〜50%、15〜30%、20〜25%のタンパク質)材料を含む。
【0016】
特定の実施形態においては、添加されるタンパク質に富む材料の窒素含量は、約5〜15%、または約10%である。
【0017】
特定の実施形態においては、添加される担体材料(揮発性固体含量として測定される)とタンク中に存在する消化残渣の比率は、1:1(w/w)以下である。揮発性固体含量を、例えば、サンプルを約550℃に加熱し、揮発性物質(損失)部分の重量を決定することにより測定することができる。
【0018】
特定の実施形態においては、AD反応器をバッチ様式で運転することができる。バッチ様式は、約0.5時間、1時間、2時間、5時間、10時間、24時間、2日、3、4、5、6、7、10、20、30、40、50、または60日未満持続してもよい。ウイルスおよび細菌性因子については、バッチ様式は、用いられる温度に応じて、一般的には約2〜3時間から数日間(例えば、1〜7日間)未満持続する。プリオンなどの特に安定な因子については、バッチ様式は、一般的には約30、40、50または60日未満持続する。
【0019】
他の実施形態においては、それを半連続的様式で、または連続的様式で運転することができる。
【0020】
特定の実施形態においては、炭素に富む材料を半連続的にAD反応器に供給して、実質的に一定のバイオガス産生を維持する。炭素に富む材料は、新鮮な植物残渣または他の容易に消化可能なセルロースを含んでもよいが、それ自体は炭素に富むものではない他の材料が存在してもよい。特定の実施形態においては、炭素に富む基質を、AD反応器に定期的に添加する(反応器の約1〜3%(w/v))。
【0021】
特定の実施形態においては、AD反応器は、バッチ様式運転の開始時に微生物の活性な接種材料を含有する。
【0022】
特定の実施形態においては、好冷微生物(例えば、約20℃の最適増殖条件を有するもの)、中温性微生物(例えば、約37℃の最適増殖条件を有するもの)、または好熱性微生物(例えば、55℃、60℃、65℃などの45〜48℃以上の最適増殖条件を有するもの)などの嫌気性微生物の集団により、ADプロセスを実行する。
【0023】
特定の実施形態においては、好熱性微生物を、β-シートが豊富なタンパク質を含有する基質に順応させる。これはバイオハザード物質を除去するのに役立ち得る。
【0024】
特定の実施形態においては、好熱性微生物を、高温かつ極端なアルカリ性のpHでアミロイド物質を含有する基質と共に培養することにより順応させる。この期間は、例えば、3ヶ月間持続してもよい。
【0025】
特定の実施形態においては、前記方法はさらに、Ca、Fe、Ni、またはCoから選択される1種以上の補助栄養素を添加することを含む。
【0026】
特定の実施形態においては、ADを約20℃、25℃、30℃、37℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃以上で実行する。
【0027】
特定の実施形態においては、嫌気的消化の約60日後、30日後、またはさらには18日後に、バイオハザード(例えば、プリオン)の力価の2 log以上の低下を達成する。
【0028】
特定の実施形態においては、嫌気的消化の約20、25、30、35、40、45、50、55、60日以上後に、バイオハザード(例えば、プリオン)の力価の3 log以上の低下を達成する。
【0029】
特定の実施形態においては、嫌気的消化の約30、40、50、60、70、80、90日以上後に、バイオハザード(例えば、プリオン)の力価の4 log以上の低下を達成する。
【0030】
特定の実施形態においては、嫌気的消化の約10、15、20、30、40、50、60、70、80、90日以上後に、バイオハザード(例えば、細菌または他の非プリオン性バイオハザード)の力価の5、6、7、8または9 log以上の低下を達成する。
【0031】
本発明の別の態様は、(大量の)バイオガスを産生するための方法であって、嫌気的消化(AD)反応器に、タンパク質に富む原料を供給することを含み、バイオガス産生の速度をADプロセスの間において実質的に一定に維持する前記方法を提供する。
【0032】
特定の実施形態においては、AD反応器をバッチ様式で運転する。
【0033】
特定の実施形態においては、AD反応器はバッチ様式運転の開始時に微生物の活性な接種材料を含有する。
【0034】
特定の実施形態においては、バッチ様式は、約0.5時間、1時間、2時間、5時間、10時間、24時間、2日、3、4、5、6、7、10、20、30、40、50または60日未満持続する。多くのウイルス因子については、バッチ様式は一般的には、約2〜3時間未満持続する。特定のウイルス因子および多くの細菌因子については、バッチ様式は一般的には、約2〜3時間から数日(例えば、1〜7日)未満持続する。プリオンなどの特に安定な因子については、バッチ様式は一般的には、約30、40、50または60日未満持続する。
【0035】
特定の実施形態においては、破壊しようとする特定の型のタンパク質に基づく病原体に一部応じて、バイオガス産生の速度は、バッチ様式運転の開始後に、多くのウイルス因子については約2〜3時間(例えば、0.5〜5時間)、または細菌因子については2〜3日(例えば、1、2、3、4、5、6もしくは7日)、または多くのプリオンについては5〜10日でピークに達する。
【0036】
特定の実施形態においては、破壊しようとする特定の型のタンパク質に基づく病原体に一部応じて、炭素に富む材料を、AD反応器に半連続的に供給して、実質的に一定のバイオガス産生を維持する。例えば、バイオガス産生がピークに達した後、炭素に富む材料を、多くのウイルス因子については約2〜3時間毎(例えば、0.5〜5時間)、または多くの細菌因子については2〜3日毎(例えば、1、2、3、4、5、6、もしくは7日)、または多くのプリオンについては5〜10日毎に1回供給することができる。
【0037】
特定の実施形態においては、炭素に富む材料は、新鮮な植物残渣、または他の容易に消化可能なセルロースを含む。
【0038】
特定の実施形態においては、タンパク質に富む原料は、ホルモン、抗体(例えば、血液)、体液、ウイルス病原体、または細菌病原体を含む。
【0039】
特定の実施形態においては、タンパク質に富む原料は、特定危険部位(SRM)である。
【0040】
特定の実施形態においては、SRMは1種以上のプリオンまたは病原体を含む。
【0041】
特定の実施形態においては、プリオンは、スクレイピー、CWD、および/またはBSEプリオンを含む。
【0042】
特定の実施形態においては、プリオンはプロテイナーゼK(PK)消化に対して耐性である。
【0043】
特定の実施形態においては、SRMはCNS組織(例えば、脳、脊髄、またはその画分/ホモジェネート/部分)を含む。
【0044】
特定の実施形態においては、嫌気的消化の約60日、30日、またはさらには18日後に、プリオン力価の2 log以上の低下を達成する。他の実施形態においては、嫌気的消化の約20、25、30、35、40、45、50、55、60日以上後に、プリオン力価の3 log以上の低下を達成する。特定の実施形態においては、嫌気的消化の約30、40、50、60、70、80、90日以上後に、バイオハザード力価の4 log以上の低下を達成する。
【0045】
特定の実施形態においては、約20℃、25℃、30℃、37℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃以上でADを実行する。
【0046】
特定の実施形態においては、ADを実行する細菌は、好冷微生物(例えば、約20℃の最適増殖条件を有するもの)、中温性微生物(例えば、約37℃の最適増殖条件を有するもの)、または好熱性微生物(例えば、55℃、60℃、65℃などの45〜48℃以上の最適増殖条件を有するもの)などの嫌気性微生物の集団を含む。
【0047】
特定の実施形態においては、ADを実行する細菌を、β-シートが豊富であるタンパク質を含有する基質に順応させる。
【0048】
特定の実施形態においては、ADを実行する細菌を、高温かつ極端なアルカリ性pHで3ヶ月間、アミロイド物質を含有する基質と共に培養することにより順応させる。
【0049】
特定の実施形態においては、前記方法はさらに、Ca、Fe、NiまたはCoから選択される1種以上の補助栄養素を添加することを含む。
【0050】
本発明の別の態様は、担体材料中に存在し得るウイルスバイオハザードの力価を低下させるための方法であって、該担体材料を、嫌気的消化(AD)消化残渣、好ましくは、好熱性嫌気的消化(TAD)消化残渣の液体部分に接触させることを含む前記方法を提供する。
【0051】
特定の実施形態においては、前記接触工程を、約20℃、25℃、30℃、37℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃で実行する。
【0052】
本発明の様々な態様の下で個別に記載された実施形態を含む、本明細書に記載の全ての実施形態を、適用可能な場合はいつでも、他の実施形態における特徴と組合わせることができると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、スクレイピーを含有するヒツジと正常なヒツジの脳のホモジェネートを、TAD(好熱性嫌気的消化)消化装置中に固定し、設定された期間インキュベートした場合の結果を示す。1〜4番は、消化後の様々なサンプリング時間を示す。様々な時点でのTAD-組織混合物に由来するタンパク質を単離、精製、12.5%SDS-PAGEにより分解し、ECL基質を用いるウェスタンブロッティング検出にかけた。消化(時間0)前に、大量のプリオンタンパク質をTADスラッジから回収した。対照的に、組織を含まないTAD対照中には何も認められなかった。細胞性プリオンはサンプリング時点1(TAD-正常ヒツジ脳混合物)で消失したが、スクレイピーはサンプリング時間2(TAD-スクレイピー混合物)で完全に排除された。27 kDaのタンパク質マーカーは、ヒツジの細胞性プリオンとスクレイピープリオンの移動性を示す。
【図2】図2は、TAD過程の間のスクレイピー不活化のパイロット試験におけるタンパク質量依存的メタン生成を示す。TADを、様々な量のスクレイピー感染ヒツジ脳組織および正常なヒツジ脳組織(それぞれ、低用量および高用量)を含有する同量の消化残渣を用いて設定した。対照としてTADのみを用いた。最も高い容量のメタン産生は、対照群と比較して、高用量タンパク質量群(スクレイピーおよび正常ヒツジ脳)において達成され、次いで、低用量タンパク質量群(スクレイピーおよび正常ヒツジ脳)において達成された。これは、TADにおける所与のレベルのタンパク質量の増加がバイオガス産生およびCH4/CO2比を増強し、かくして、バイオガスの燃焼値を増加させることを明確に示している。
【図3】図3は、嫌気的消化における消化後のスクレイピープリオンサンプルのための評価戦略を示す。
【図4】図4は、培養細胞に対するウイルス感染の評価(細胞変性効果、CPE%)に基づく時間および用量依存的ウイルス不活化の概要である。
【図5】図5は、スクレイピープリオン(S. prion)が、11、18および26日目でのTAD消化処理において追加セルロース基質の存在下/非存在下で様々な程度の低下を示したことを証明する。Alpha Innotech Image分析装置を用いて、画像を定量した。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本発明は、嫌気的消化(AD)系における特定のバイオハザードの破壊のピークがバイオガス産生のピークと一致するという知見に一部基づく。そのようなバイオハザードは担体材料中に存在してもよく、そのようなものとして、雑草種子、特定のタンパク質に富む病原体または望ましくない頑固な材料(例えば、ホルモン、抗体、ウイルス病原体、体液(例えば、血液)、細菌病原体など)、または特定危険部位(SRM)内のプリオンが挙げられる。いかなる特定の理論によっても束縛されることを望むものではないが、高いバイオガス産生速度では、微生物活性が高く、または微生物の増殖速度が高く、かくして、そのようなバイオハザードを破壊する機会および/または速度を増加させると考えられる。
【0055】
本発明はまた、嫌気的消化(AD)系、特に、TAD系内の特定の小分子が、少なくとも特定のウイルス感染因子を不活化させることができるという知見にも一部基づく。かくして、液体嫌気的消化残渣から精製されたか、または未精製のそのような分子を用いて、ウイルス因子を不活化することができる。
【0056】
本発明はさらに、消化装置に定期的に炭水化物に基づく基質(セルロースまたはセルロース型材料など)を添加することにより、病原体力価の低下を加速させるか、または増強することができるという知見に基づく。炭水化物に基づく基質を、約0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、4%、5%、8%、10%、15%(w/v)または2個の参照値のいずれかの間(消化残渣の容量(mL)に対する炭水化物に基づく基質の重量(グラム)により測定)で添加することができる。炭水化物に基づく基質の1回以上の添加を、消化期間の間に行うことができる。炭水化物に基づく基質を添加する間隔は、実質的に同一であるか(例えば、添加の間に約7〜8日)、または異なっていてもよい。添加のタイミングは、バイオガス産生速度と実質的に一致するのが好ましい、例えば、バイオガス産生のピークが下落すると予想される時点の直前またはその周辺であるのが好ましい。
【0057】
従って、一態様において、本発明は、担体材料中に存在し得るバイオハザードの力価、量、または有効濃度を低下させるための方法であって、該担体材料を嫌気的消化(AD)反応器に供給し、バイオガス産生がピーク速度に到達した後、バイオガス産生の速度をADプロセスの間に実質的に一定に維持することを含む前記方法を提供する。AD反応器を、バッチ様式、半連続的様式、または連続的様式で運転することができる。
【0058】
ガス産生速度をモニターするために一貫した方法を用いる限り、ガス産生の速度を工業的な標準的方法のいずれかにおいて測定することができる。好適な方法としては、ガス圧、ガス流速などの測定が挙げられる。メタンと二酸化炭素の比を、この目的のために用いることもできる。
【0059】
細菌病原体(例えば、大腸菌、サルモネラ菌、リステリア菌)、ウイルス病原体(例えば、HIV/AIDS、口蹄疫ウイルス(FMDV)などのピコルナウイルス、ウマ伝染性貧血ウイルス、Blue-Ear Diseaseとしても知られるブタ繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)、ブタ2型サーコウイルス、ウシヘルペスウイルス1、ウシウイルス性下痢(BVD)、ボーダー病ウイルス(ヒツジ)、およびブタコレラウイルス)、寄生病原体、プリオン、望ましくないホルモン、血液ならびに他の体液などのほとんど全てのバイオハザード物質/因子が本発明の方法の標的であってよい。
【0060】
バイオハザードの1つの特定の型であるプリオン(スクレイピープリオン、CWDプリオン、またはBSEプリオンなど)は特に興味深い。そのようなプリオンはプロテイナーゼK(PK)消化に対して耐性であってよく、特定危険部位(SRM)などのタンパク質に富む担体材料中に存在してもよい。
【0061】
本明細書で用いられる「特定危険部位」は、TSEプリオン(BSE、スクレイピー、CWD、CJDなど)を潜在的に担持する、および/または伝染させる任意の年齢の任意の動物を起源とする組織を指す一般的な用語である。これらのものとしては、頭蓋骨、三叉神経節(脳に結合し、頭蓋骨外部に近い神経)、脳、眼、脊髄、CNS組織、遠位回腸(小腸の一部)、後根神経節(脊髄に結合し、脊柱に近い神経)、扁桃腺、腸、脊柱、および他の器官が挙げられる。
【0062】
本明細書で用いられる「バッチ様式」とは、ADプロセスの間に反応器から液体または固体材料が除去されない状況を指す。好ましくは、ADプロセスに必要な原料および他の材料を、バッチ様式運転の開始時に反応器に供給する。しかしながら、特定の実施形態においては、追加の材料を反応器に添加してもよい。
【0063】
対照的に、連続的様式または半連続的様式においては、固体および液体を、AD反応器から連続的または定期的に(それぞれ)除去する。
【0064】
例えば、AD反応器は、例えば、バッチ様式運転の開始時に、微生物の活性な接種材料を含んでもよい。微生物の活性な接種材料を、以前のバッチの運転から取得し、最適に希釈して適切な容量の接種材料および原料をAD反応器中で調整することができる。1つの関連する利点は、接種材料内の微生物が既に運転の開始時に最適な速度でバイオガスを産生する準備ができており、バイオガス産生速度のピークを比較的短期間で、例えば、約5〜10日で達成することができることである。
【0065】
バイオガス産生速度の自然の変動に起因して、「実質的に一定の」は、バイオガス産生速度が、一般的には、平均値から50%未満外れない、好ましくは、40%、30%、20%、10%以下外れないことを意味する。実質的に一定のガス産生速度を、嫌気的消化反応に好適な量の追加の基質、好ましくは、ピークまたは安定状態のガス産生速度が下落しようとする時点あたりで、破壊しようとする有意な量の病原体を含まない(バッチ様式運転中に)ものを定期的に添加することにより維持することができる。
【0066】
特定の実施形態においては、炭素に富む材料を、バイオガス産生のピークに到達した後、約5〜10日毎に1回、AD反応器に半連続的に供給して、実質的に一定のバイオガス産生を維持することもできる。本発明において用いることができる多くの好適な炭素に富む材料がある。特定の実施形態においては、炭素に富む材料は、新鮮な植物残渣または他の容易に消化可能なセルロースを含んでもよい。
【0067】
好ましくは、ADプロセスを、好熱条件下で実行し、そのような好熱性嫌気的消化(または「TAD」)は様々なプリオン種を含有する材料などのSRM(特定危険部位)などの様々なバイオハザード物質を効率的に排除することが示されている。TADは、その熱効果、高いpHを用いる均一系の水圧バッチ、酵素触媒反応の相乗効果、揮発性脂肪酸、および/または嫌気性細菌コロニーの生分解などの、SRM破壊のためのいくつかの利点を提供する。TADプロセスはまた、バイオガスおよび他の副産物の産生のためのバイオマス/原料としてSRMを安全に用いることができるという追加の利点も有する。
【0068】
かくして、特定の実施形態においては、AD反応器の温度を、約20℃、25℃、30℃、37℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃以上で制御して、好熱性嫌気的消化(TAD)プロセスを容易にする。特定の好ましい実施形態においては、ADプロセスを、好熱性細菌または古細菌などの好熱性微生物の集団により実行する。
【0069】
好ましくは、TADプロセスの出発pHは、約8.0または約pH 7.5-8.5である。pH調節剤またはバッファーを、必要に応じて定期的に反応器に添加して、ADプロセスを通じて所望のレベルにpHを制御することができる。
【0070】
特定の状況においては、従来のTADは、おそらく特異的触媒反応にとって必要とされる必須の嫌気性細菌コロニーおよび酵素がないため、プリオンまたは他のバイオハザード/病原体を完全に破壊しても、または破壊しなくてもよい。かくして、特定の状況においては、嫌気性微生物が意図される標的を破壊するようにより適合するように、それらを順応させることができる。例えば、プリオンの場合、順応化を、βシートが豊富なタンパク質を含有する基質を用いて行うことができる。例えば、選択された嫌気的消化残渣を、高温かつ極端なアルカリ性pHで約3ヶ月間、アミロイド物質を含有する特殊な基質と共に培養することができる。そのような順応した微生物を用いる培養を、バイオガス産生プロフィール、組成、および総アンモニア窒素(TAN)をモニターし、調整することによりさらに最適化して、嫌気的消化の阻害が起こらないことを確保することができる。特定の実施形態においては、補助栄養素(Ca、Fe、NiまたはCoなど)を添加して、揮発性脂肪酸(VFA)としてのプロピオン酸の効率的な除去を増加させることができる。
【0071】
必要に応じて、順応化の間の嫌気性微生物コロニーの遺伝的進化を、特別に設計されたプライマーおよびプローブを用いるリアルタイムPCRに基づく遺伝子型決定を用いて分析することができる。さらに、これらの順応した嫌気性微生物バッチの浄化能力を試験し、プリオンの除去速度に関して従来のTADと比較することができる。
【0072】
任意の型のウイルス病原体の破壊を、本発明の方法を用いることにより達成することができる。本発明の方法を用いて破壊することができる例示的な(非限定的な)ウイルス病原体(またはそのようなウイルス病原体を含有するバイオハザード物質)としては、インフルエンザウイルス(オルトミクソウイルス)、コロナウイルス、天然痘ウイルス、牛痘ウイルス、サル痘ウイルス、ウェストナイルウイルス、ワクシニアウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ライノウイルス、アルテリウイルス、フィロウイルス、ピコルナウイルス、レオウイルス、レトロウイルス、パポバウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、ヘッドマンウイルス、アトロシアス(atrocious)、コクサッキーウイルス、パラミクソウイルス科、オルトミクソウイルス科、エコーウイルス、エンテロウイルス、カルジオウイルス、トガウイルス、ラブドウイルス、ブニヤウイルス、アレナウイルス、ボルナウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス、フラビウイルス、ノロウイルス、ロタウイルス、および他の腸内ウイルスが挙げられる。他のウイルス病原体としては、特に、家畜動物の様々なウイルス疾患において認められ、その原因となる、動物の健康にとって有害なものが挙げられる。そのようなウイルスは、家畜動物の疾患組織中に存在し得る。
【0073】
任意の型の細菌病原体の破壊を、本発明の方法を用いることにより達成することができる。本発明の方法を用いて破壊することができる例示的な(非限定的な)細菌病原体(またはそのような細菌病原体を含有する生体有害物質)としては、都市下水処理にとってストレスを引き起こす細菌である大腸菌(特に、腸管毒素原性大腸菌および大腸菌株O157:H7)などの腸感染を引き起こす細菌;Listeria M.などのリステリア症の食品関連突発を引き起こす細菌;カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、サルモネラ(Salmonella)、腸管病原性大腸菌(EPEC)、およびクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)などの細菌性腸炎を引き起こす細菌が挙げられる。
【0074】
任意の型の寄生病原体の破壊を、本発明の方法を用いることにより達成することができる。本発明の方法を用いて破壊することができる例示的な(非限定的な)寄生病原体としては、ジアルジア・ランブリア(Giardia lamblia)およびクリプトスポリジウム(Cryptosporidium)が挙げられる。
【0075】
菌類または酵母病原体も本発明の方法により排除することができる。
【0076】
任意の病原体を含有する材料を本出願の方法において用いることができる。例えば、特定の病院(動物病院を含む)または医療機関においては、患者(ヒトまたは非ヒト動物)の糞便および/または体液(例えば、血液)が、公共用水または廃棄物処理に放出する前に浄化すべきウイルス、細菌、および/または寄生病原体の豊富な供給源であり得る。そのような生物廃棄材料を本発明の方法のための担体材料として用いることができる。
【0077】
多くの型のプリオンの破壊を、本発明の方法を用いることにより達成することができる。本明細書で用いられる「プリオン」は、ヒツジおよびヤギのスクレイピープリオン、オジロジカ、エルクおよびミュールジカの慢性消耗病(CWD)プリオン、ウシのBSEプリオン、ミンクの伝染性ミンク脳症(TME)プリオン、ネコのネコ海綿状脳症(FSE)プリオン、ニアラ、オリックスおよびネジツノカモシカの外来有蹄動物脳症(EUE)プリオン、ダチョウの海綿状脳症プリオン、ヒトのクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)およびその変異体のプリオン(医原性クロイツフェルト・ヤコブ病(iCJD)、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)、家族性クロイツフェルト・ヤコブ病(fCJD)、および散発性クロイツフェルト・ヤコブ病(sCJD)など)、ヒトのゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー症候群(GSS)プリオン、ヒトの致死性家族性不眠症(FFI)プリオン、ならびにヒトのクーループリオンなどの、様々な動物における様々な形態の感染性海綿状脳症(TSE)を引き起こすあらゆる感染性因子を含む。
【0078】
必要に応じて、特定の菌類のプリオン様タンパク質を、本発明の方法を用いて破壊することもできる。これらのものとしては、酵母プリオン(サッカロミセス・セレビジア(Saccharomyces cerevisiae)に認められるもの)およびポドスポラ・アンセリナ(Podospora anserina)プリオンが挙げられる。
【0079】
本発明の方法において用いられるプリオンまたは他のバイオハザード/タンパク質性病原体の量を、調整することもできる。特定の実施形態においては、約1〜10 g、または約2.5〜5 g当量のプリオン含有組織ホモジェネートが、約60〜75 ml毎のTAD-組織混合物中に存在する。上限値に向かうタンパク質量を有するTAD-組織混合物については、約1 gの炭素に富む材料(例えば、セルロース)を、本明細書に記載のスキームに従って、約60〜75 mL毎のTAD-組織混合物に添加することができる。
【0080】
特定の実施形態においては、AD反応器は、少なくとも約5、6、7、8または9%の最終総固体成分を含む。
【0081】
特定の実施形態においては、プリオンはプロテイナーゼK(PK)消化に対して耐性である。
【0082】
特定の実施形態においては、SRMは、脳、脊髄に由来する組織、またはその画分、ホモジェネート、もしくは部分などのCNS組織を含む。
【0083】
特定の実施形態においては、バッチ様式運転は約20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、または120日未満持続する。バッチ様式運転の終わりに、バイオハザード/プリオンの力価は、少なくとも約2、3、または4 log低下する。例えば、特定の実施形態においては、嫌気的消化の約60、30、またはさらには18日後に、バイオハザード/プリオンの力価の2 log以上の低下を達成する。特定の他の実施形態においては、好熱性嫌気的消化の約20、25、30、35、40、45、50、55、60日以上後に、バイオハザード/プリオンの力価の3 log以上の低下を達成する。特定の実施形態においては、好熱性嫌気的消化の約30、40、50、60、70、80、90日以上後に、バイオハザード/プリオンの力価の4 log以上の低下を達成する。
【0084】
本発明はまた、嫌気的消化を介するバイオガス(例えば、メタンまたはCH4)産生の増強を、タンパク質に富む原料を用いることにより達成することができるという知見に一部基づく。さらに、炭素に富む材料を、必要に応じて追加のタンパク質に富む材料と共に、AD反応器に半連続的に供給して、ADプロセスの間にバイオガス産生速度を実質的に一定に、好ましくはまた、高い品質で(すなわち、50、55、60、65、または70%より高いCH4)維持することにより、バイオガス産生をさらに増強することができる。いかなる特定の理論によっても束縛されることを望むものではないが、観察されるバイオガス産生の増強は、ADプロセスにより、AD生物反応器中に存在する様々な微生物がタンパク質に富む原料を破壊して、微生物の増殖のための窒素および/または炭素を供給し、究極的には、メタン産生(すなわち、メタン生成が高度に効率的である)を供給することができることを示唆している。
【0085】
かくして、一態様において、本発明は、好ましくはより高い燃焼値および高品質のバイオガスを産生させるための方法であって、嫌気的消化(AD)反応器に、タンパク質に富む原料を供給することを含み、バイオガス産生速度のピークに到達した後、ADプロセスの間においてバイオガス産生速度を実質的に一定に維持する、前記方法を提供する。
【0086】
特定の実施形態においては、AD反応器をバッチ様式で運転することができる。他の実施形態においては、ADプロセスの間において固体/液体を連続的もしくは定期的に添加し、反応器から固体/液体を除去しながら、AD反応器を連続的または半連続的様式で運転することができる。
【0087】
運転様式に関係なく、炭素に富む材料をADプロセスの間に反応器に供給して、バイオガス産生速度のピークを持続させることができる。例えば、バッチ様式においては、炭素に富む材料を、バイオガス産生速度のピークに到達した後、約5〜10日毎に1回、AD反応器に半連続的または定期的に供給して、実質的に一定のバイオガス産生を維持することができる。そのような炭素に富む材料としては、新鮮な植物残渣、または任意の他の容易に消化可能なセルロースが挙げられる。連続的または半連続的様式の運転においては、炭素に富む材料および必要に応じて、タンパク質に富む原料を一緒に、または連続的/選択的に添加して、一定状態のバイオガス産生を持続させることができる。
【0088】
特定の実施形態においては、バッチ様式運転は、約30、40、50、60、70、80、90、100、110、または120日未満持続することができる。
【0089】
特定の実施形態においては、CO2に対するメタンの比率として定義される、バイオガス燃焼値は、原料中のタンパク質含量に大まかに正比例する(またはさもなければ、正に相関する)。最適条件下では、タンパク質分解がADプロセスの最初の5〜10日の間に迅速に起こる。この期間に、タンパク質分解のピークはバイオガス産生速度のピークと一致する。
【0090】
ほとんど全てのタンパク質に富む原料を本発明に用いることができる。特定の実施形態においては、タンパク質に富む原料は、特定危険部位(SRM)である。例えば、SRMは、1種以上のプリオンまたは病原体を含んでもよい。そのようなSRMは、CNS組織(例えば、脳、脊髄、またはその画分/ホモジェネート/部分)を含んでもよい。プリオンとしては、スクレイピー、CWD、および/またはBSEプリオンなどが挙げられる(上掲)。特定の実施形態においては、プリオンは、プロテイナーゼK(PK)消化に対して耐性である。プリオンを含有するSRMをタンパク質に富む原料として用いる場合、バッチ様式が好ましい。
【0091】
他の実施形態においては、タンパク質に富む原料は、ホルモン、抗体、ウイルス病原体、もしくは細菌病原体、または任意の他のタンパク質性物質を含んでもよい。
【0092】
本発明の別の態様は、嫌気的消化残渣からのプリオンタンパク質の最大の回収を達成するためのタンパク質抽出方法を提供する。この方法を単独で、または伝統的な生化学技術(ウェスタンブロッティング(WB)および任意の市販のBSE-スクレイピー試験キットなど)と共に用いて、TADプロセスの間およびその後のプリオンの排除速度を試験し、文書化することができる。好ましくは、一連の陽性対照をアッセイに含有させてもよい。
【0093】
本発明の別の態様は、消化後サンプル中の残留プリオンの存在および/または相対量を決定するための方法を提供する。この方法は、プリオン検出にとって有用な1種以上の技術、またはその組合せを含んでもよい。好ましい実施形態においては、図3に示されるように、ADプロセスの間に任意の所与の時点で得られた消化後サンプルを、EIA、ウェスタンブロッティング(WB)、iCAMP、およびトランスジェニックマウスを用いるバイオアッセイなどの分析の連続周回にかけ、以前のレベルの(感度は低いが、より安価な/容易な/速い)分析がサンプル中にプリオンが存在しないことを確認できなかった場合にのみ、次のレベルの(感度は高いが、高価な/困難な/より遅い)分析に進めることができる。
【0094】
例えば、EIAがプリオンの存在を検出するのに十分である場合、プリオンの存在を確認するためにより複雑なアッセイを実行する必要はないであろう。EIAがプリオンを検出できない場合のみ、WBが次のレベルの分析にとって必要になるであろう。
【0095】
同様に、特定の実施形態においては、WBが複数の試験後にもプリオンを検出できない場合、異常折畳みタンパク質のin vitroでの反復増幅(iCAMP)と呼ばれる高感度検出方法を用いて、TAD排出物中のプリオンの非存在(かくして、プリオン破壊の完了)を検証することができる。特定の実施形態においては、反復的に陰性のiCAMPサンプルを、例えば、マウスに基づくバイオアッセイを用いて順に試験して、プリオン浄化の生物学的に安全なエンドポイントを決定し、環境中へのプリオンのゼロ排出を確保することができる。
【0096】
これらのプリオン検出方法は、当業界でよく知られている。GroschupおよびBuschmann, Rodent Models for Prion Diseases, Vet. Res. 39: 32, 2008(参照により本明細書に組入れられるものとする)を参照されたい。例えば、AD不活化の前後のプリオン/スクレイピーの感染性および伝染性を検証するのに用いることができるいくつかのトランスジェニックマウスモデル(例えば、Tg 20)が存在する。プリオン研究におけるそのようなトランスジェニックマウスの多くはノックアウトマウスであり、その内因性プリオン遺伝子がノックアウトされている。それらは一般的には、異なる種に由来するプリオン病原体を含むプリオン病原体に対する感受性が増加している。プリオン兆候の症候(罹患した動物の脳組織における病理学的変化)を、プリオン病の診断のための最も確証的なアッセイの1つである免疫組織化学方法を用いて検出するか、または検証することができる。
【0097】
例えば、US 2002-0004937 A1は、動物のプリオン遺伝子(例えば、ヒト、ウシ、ヒツジ、マウス、ラット、ハムスター、ミンク、アンテロープ、チンパンジー、ゴリラ、アカゲザル、マーモセットおよびリスザルなどのもの)をマウスに導入して、プリオン遺伝子が改変されたマウスを作製し、プリオン遺伝子が改変されたマウスが心奇形を示す場合に、そのプリオン遺伝子が異常であると決定することを含む、プリオン検出のためのそのようなトランスジェニックマウスモデルを記載している。このマウスを用いて、例えば、前記トランスジェニックマウスにサンプル(ADの前後の)を接種し、プリオン遺伝子改変マウスにおける心筋疾患の存在を観察することにより、ADの前後でのプリオン力価を測定することができる。同じ型の対照プリオンの既知の力価で固定したサンプルを同じ実験において用いて、本発明のTADプロセスの前後でのプリオン力価を定量的に測定することができる。
【0098】
より具体的には、本発明における使用のために、例えば、30日目以降(ウェスタンブロット、または「WB」によりプリオンタンパク質が検出可能でない)にサンプルを取得し、滅菌のために濾過する。次いで、約50〜80μl(通常は約100μl未満)の滅菌サンプルを、同じ株のマウスにおける対照として未消化のプリオン/スクレイピーと共に、麻酔下で選択されたトランスジェニックマウスの脳に注入する。観察日数は通常、接種後100〜150日である。18、11またはさらには6日目などのより早い時点(WBが検出可能なレベルのプリオン/スクレイピーを示す時)で取得したより初期のサンプルを平行実験において用いて、ADがサンプル中の活性プリオンを実質的に排除した期間を決定することができる。この型のバイオアッセイにより、プリオンタンパク質自体が依然としてWBにより検出可能である場合でも、プリオン/スクレイピーがその感染性を喪失したかどうかを決定することができる。
【0099】
多くの好適なトランスジェニックマウスが、商業的実体(例えば、Jackson Laboratory)から当業界で入手可能である。
【0100】
特定の実施形態においては、プリオン不活化および消化後サンプル中でのそのコンフォメーション変化の機構を、質量分析および他のプロテオミックツールを用いて調査することができる(図3を参照)。この下流の研究は、プリオン構造およびその関連する病原性に関する一般知識をさらに拡張し、基礎研究者がプリオンの基礎知識を探索し、ヒトにおけるプリオン関連疾患(CJDなど)の治療のための薬剤を開発する協調的な機会を提供することができる。
【0101】
本発明によれば、複数の利点を実現することができる。例えば、プリオン(スクレイピーまたはBSEなど)およびその感染性を、30日、60日、または100日以内にTADにより完全に破壊することができる。一方、適切な廃棄のために費用のかかる処理を必要とする廃棄物である代わりに、消毒されたプリオンを含むタンパク質に富むSRMをTADプロセスにより用いて、従来の嫌気的消化と比較してバイオガスの燃焼値を増強することができる。結果として、家畜産業がSRMを費用効果的に処理し、特定の政府命令を満たし、プリオン病原体による汚染可能性から環境を保護し、他の方法により処理されたSRMの廃棄により引き起こされる環境足跡を減少させ、その間に価値あるバイオガスを生成させることができるなど、複数の社会的および経済的利益を同時に達成することができる。かくして、好熱性嫌気的消化プロセスは、系中の嫌気性細菌コロニーによる酵素的触媒反応と生分解の組合せを介して効率的にSRM中のプリオンをよく排除し、タンパク質に富むSRMを生物エネルギーおよび生物肥料に変化させることができる。
【0102】
(実施例)
本発明を一般的に説明してきたが、以下の節は本発明の一般的原理を例示する実験設計例を提供するものである。この実施例は例示目的だけのためのものであり、いかなる点でも限定するためのものではない。
【0103】
さらに、以下のいくつかの実施例はプリオンタンパク質に基づくものであるが、ホルモン、抗体、ウイルス病原体、細菌病原体、および/または雑草種子などの他のあまり安定でないタンパク質に基づくバイオハザード物質も、同様の実験において、同一でないとしても、同様に振舞うと予想される。
【実施例1】
【0104】
好熱性嫌気的消化(TAD)プロセスはスクレイピープリオンを排除し、バイオガス産生を増強する
プロテイナーゼK(PK)消化に対して非常に高い耐性を有するプリオンの1つであるスクレイピープリオンを、この実験におけるモデルとして用いて、プリオン破壊のためのTADプロセスの有効性を証明した。高用量(4 g)および低用量(2 g)のスクレイピー脳ホモジェネート(20%)を実験室規模のTAD消化装置中に固定し、温度を55℃に設定した。消化を、バッチ様式で最大90日間継続させた。スクレイピー分解を評価するために、0、10、30、60および90日目に実験群および対照群から約5 mLの消化残渣を取った。CFIA National Reference Labから取得したスクレイピー(PrPsc)および細胞性プリオン(PrPc)を、0.5%SDSを含有するバッファーを用いて消化残渣から回収した(回収率:約75〜82%)。細胞性プリオンとスクレイピープリオンの両方を12.5%SDS-PAGEゲル中に溶解し、モノクローナル抗体(F89、Sigma)を用いる免疫ブロッティングにより検出した。バイオガス産生を規則的にモニターして、嫌気性細菌の活性を評価し、マイクロガスクロマトグラフィー(GC)を用いてバイオガス産生に対するタンパク質に富む基質の効果を評価した。
【0105】
その結果は、スクレイピーが時間依存的様式で分解されることを示していた。細胞性プリオンは約10日までに消失したが、TAD消化装置中、30日目にはスクレイピーのバンドが観察されなかった。免疫ブロッティング画像のコンピューター援用半定量化に基づいて、30日でスクレイピーの少なくとも約2.0 log以上の低下が達成されると見積もられた。一方、バイオガス産生およびその燃焼値(CO2に対するメタンの比率)は、タンパク質に富むTADにおいて有意に増強された。AD消化の90日の間に、タンパク質を含まないTAD対照(145.93±10.33 NmL)よりも高用量タンパク質(384.42±6.54 NmL)においては約2.6倍以上のメタンが得られ、低用量タンパク質TAD(284.39±2.02 NmL)においては約1.9倍が得られた。
【0106】
このデータは、バイオガスおよび他の付加価値のある副産物を産生させるためにSRM中のプリオンを浄化し、バイオハザードに由来するSRMを安全な原料に転換するための生物学的で環境に優しい方法として、バッチ式TADを有効に用いることができることを示している。このプロセスは、プリオンの環境足跡を減少させるだけでなく、家畜産業および地域社会の両方に対する経済的利益をも生み出す。
【実施例2】
【0107】
最適条件下でのバッチ式TADにおけるBSE排除の効果および動力学
BSEが確認されたウシ脳組織および他の型のSRM組織(脊髄、リンパ節または唾液腺など)を、CFIA National BSE Reference Labから取得し、氷上でリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中でホモジェナイズする。20%の脳ホモジェネートのみ、または他の組織と混合したホモジェネートを、上記の研究結果に基づいて、VegrevilleのIMUS(商標)実演プラントから新鮮に取得した希釈した消化残渣(約7%の最終総固体を含む)中に固定する。全手順を、Biolevel III実験室(例えば、Laboratory Building of Alberta Agriculture and Rural Developmentにある)中のバイオセーフティキャビネット(クラスIIB)において実行する。ホモジェネートの最終含量は、それぞれ、低用量群および高用量群において、TAD-組織混合物中に約2.5および5グラム(新鮮な組織に相当)である。次いで、混合物をスクリューキャップ付安全カバー付ガラスボトルに入れる。嫌気的消化は55℃の温度設定およびpH 8のインキュベーター中、特定の対照と共に始まる(試験設計については表1を参照)。
【表1】

【0108】
生きた細菌の活性を有さないサイレントな消化混合物中にBSE(B)の分解が存在するかどうかを調べるために、不活化された消化残渣対照(IC)を設計する。さらなる対照群(N)は、細胞性プリオンを含有する正常なウシの脳ホモジェネートを含む。これにより、消化プロセスの間の細胞性プリオンの排除速度を調べることができる。細胞性プリオンとBSEプリオンとの相関は、TADプロセスの間のBSEプリオンの相対排除速度を予測する。
【0109】
また、ウシの脳のみと比較して、ウシの脳組織と他の型のSRM組織混合物を含有するTAD消化残渣のために、同様の実験も設計する。
【0110】
変圧器およびガスクロマトグラフィーを用いて、バイオガス産生および組成をモニターする。BSEプリオン浄化の時間経過を、0日目から120日目までの様々な時点で評価する。各時点で、確立された方法を用いてサンプルに由来する総タンパク質を抽出、濃縮および精製し、SDS-PAGE、様々なエピトープを認識する特異的モノクローナル抗プリオン抗体の一団を用いるウェスタンブロッティング(WB、Schallerら、1999、Stack、2004)を用いる分析にかける。消化後サンプル中のBSEプリオンの減少を、BSE脳ホモジェネートおよび時間0で取ったサンプルの同じバッチの連続10倍希釈液と比較する。WB画像を、様々な時点でのBSEプリオンの減少を半定量するための密度測定を用いて、および様々な組織混合物と共に分析する。WBによって検出された全ての陽性サンプルについて、サンプルをプロテイナーゼK消化にかけて、BSEプリオンの耐性がTADプロセスの間に変化したかどうかを試験する。
【0111】
TADにおけるBSE排除の動力学を、対照として細胞性プリオン(PrPc)を含有する等量のウシ脳ホモジェネートを用いて評価する。ウシPrPcおよびBSEプリオンの破壊速度を、消化プロセスの間に様々な時点で比較する。連続的な時点での一連のBSEの排除割合は、プロセスの間のBSE破壊の相対動力学を提供する。
【実施例3】
【0112】
BSEプリオン破壊の完了を評価するための高感度のin vitro反復増幅異常折畳みタンパク質(iCAMP)アッセイ
プリオンタンパク質の異常アイソフォーム(例えば、PrPsc)は、日常的な滅菌プロセスを受けた後でも感染性を保持している。感染性を検出するための高感度方法は、バイオアッセイである。しかしながら、そのようなバイオアッセイの結果は、数百日後に得られるに過ぎない。従って、異常折畳みタンパク質の反復増幅(CAMP)は、プリオン不活化を評価するためにPrPscをin vitroで増幅することができる魅力的な代替方法を提供する。3周回のCAMPには約6日しか要しないため、CAMPは伝統的なバイオアッセイよりも非常に早い。
【0113】
in vitro反復増幅異常折畳みタンパク質(iCAMP)法を、TADにおけるBSEプリオン浄化の完了を評価するためにここで開発する。簡単に述べると、正常なウシの脳とBSEを有するウシの脳の10%(w/v)ホモジェネートを、転換バッファー中で調製する。具体的には、iCAMPを、様々な量のBSEプリオン(0.0001〜1 gの組織当量)および比較可能量の10%(w/v)正常脳ホモジェネート基質を含有する50μL容量に設定する。37℃でマイクロプレートホーンを備えたプログラム可能なソニケーター(例えば、Misonix S-3000モデル)を用いて増幅を行う。以下の条件:サイクル:40〜150;パワーオン:90〜240 W;パルスオン時間:5〜20秒;および間隔:30〜60分を用いて、増幅パラメーターを最適化する。iCAMPの結果をWB(ウェスタンブロット)およびPK消化を用いて確認する。
【0114】
評価戦略においては、WBによってTAD消化後サンプル中でBSEプリオンが検出可能でない場合、サンプルをiCAMPを用いる増幅にかける。精製された消化後サンプルを「シード」として使用し、PrPcを含有する10%(w/v)ウシ脳ホモジェネートをiCAMP増幅のための基質として使用する。BSEを含有する脳ホモジェネートの連続希釈液は、陽性対照として役立つ。異常に折畳まれたBSEプリオンタンパク質の単一モチーフが依然として存在する場合、異常折畳みBSEプリオンの量はiCAMPにより指数的に増加する。iCAMPの感度は、BSEプリオンタンパク質の単一モチーフの検出を可能にする(Mahayanaら、Brioche Biophysics Rees Common 348: 758 -762, 2006を参照)。150サイクル後に残留BSEが検出可能でない場合、それはBSEがTADプロセスによって完全に根絶されたことを示唆する。iCAMPにより、消化後サンプル中のBSEプリオンの潜在的な残留物を迅速かつ効率的にスクリーニングし、かくして、さもなければ動物に基づくバイオアッセイにおいて費やされるであろう時間と金を節約することができる。
【0115】
マウスまたはハムスターへのプリオンの大脳内接種が、PrPscの感染性を評価するための典型的なバイオアッセイである(Scottら、Arch Virol (Suppl) 16: 113-124, 2000)。BSE浄化のバイオアッセイを、トランスジェニックマウスモデルを用いて「検出不可能」としてiCAMPにより検証されたこれらのサンプルに対して行う。BSE感染に対する感受性のため、完全長ウシPrPを過剰発現するトランスジェニック(Tg)マウス(Tg BoPrP)または近交系トランスジェニックマウスをこの目的のために用いる(Scottら、Proc Natl Acad Sci USA 94: 14279-14284, 1997; Scottら、J Virol 79: 5259-5271, 2005)。具体的には、約50μLの濾過滅菌されたiCAMP陰性サンプルを、無菌条件下で頭蓋骨のトレフィンを介してマウスの脳に接種する。観察を250日間または臨床兆候が生じるまで続ける。WBにより検出されたいくつかの低級陽性サンプル、およびWB陰性/iCAMP陽性サンプルもマウスバイオアッセイにかける(図3、評価戦略)。これらのアッセイにより、BSEプリオンの感染性がTADプロセスにおいて消化後に排除されたか、または変化したかどうかを決定することができる。特異的抗体を用いてBSEの消毒を免疫組織化学的に確認するために、脳のサンプルを取得する(Andreoletti, PrPsc immunohistochemistry. In Techniques in Prion Research, Lehmann SおよびGrassi J(編), p 82, Birkhauser Verlag, Basel, Switzerland, 2004)。
【実施例4】
【0116】
TADにおけるBSEプリオン消毒の機構
TADにおけるBSEプリオンの感染性の完全な浄化は、BSEプリオンタンパク質の完全な分解またはその実質的な構造的およびコンフォメーション的変化の結果生じると予想される(Paramithiotisら、2003, Brown, 2003, Alexopoulosら、2007)。これらの変化を、コンフォメーションアッセイおよび最先端の質量分析を用いてさらに調査する(Moronciniら、2006、DomonおよびAebersold, 2006)。
【0117】
質量分析(MS)は、ペプチド共有構造およびその改変を決定することができる。消化後サンプルに由来するタンパク質を単離し、分画し、ペプチドに消化する(Loら、2007, Reizら、2007a)。MS分析においては、ショットガンおよび/または比較パターン分析を用いる。消化されたものと未消化のものなどの任意の2種の比較サンプルのプロテオーム変化の相対的定量を、2種のサンプル中でのペプチドの示差的安定アイソトープ標識を用いて実行した後、液体クロマトグラフィーMS(LC-MS)分析を行う(Jiら、2005a.b.c)。この方法は、2種のサンプル中の量的変化および/または配列変化を有するタンパク質のみを検出、定量するのに選択的である。最近の研究により、異常折畳みプリオン凝集物を含む様々なプリオン構築物をトリプシンを用いるか、または用いずに十分に消化することができ、マイクロ波援用酸加水分解(MAAH)を用いて100%の配列範囲が得られることが示されている(Zhongら、2004および2005; Wangら、2007; Reizら、2007b)。
【0118】
BSEプリオンがTADによって分解されたかどうかを決定するために、MAAH、アイソトープ標識、LC-MSおよび/またはMS/MSを用いることにより、アミノ酸改変に由来する構造的変化および/またはコンフォメーション変化を精査する。BSEプリオンがTADにより分解される場合、得られるペプチドを、特定のアミノ酸部位の切断に関与する潜在的なプロテアーゼを決定するのに有用なLC-MS/MSにより同定することができる。
【0119】
好熱性嫌気性細菌およびそのプロテアーゼは、BSEプリオンの破壊において有意な役割を果たす。BSEプリオンを含有するTAD消化装置中のいくつかの嫌気性細菌種を、16SリボゾームRNA遺伝子のリアルタイムPCRに基づく遺伝子型決定を用いて同定する(Ovreasら、1997)。TAD-BSE混合物および/または細菌単離物の上清内のタンパク質溶解活性の機能的分析を、アゾコールアッセイを用いて実行する(Chavira Jrら、1984, Myller-Hellwigら、2006)。これらの分析は全て、BSEプリオン破壊の機構に関する理解を容易にし、BSE浄化戦略の最適化およびプリオン関連障害のための潜在的な薬剤探索をもたらし得る。
【実施例5】
【0120】
バイオガスの燃焼値を増加させるための原料としてのタンパク質に富む材料および浄化されたBSEプリオン含有材料の使用
予備的結果により、スクレイピー不活化に対するパイロット試験におけるバイオガス産生(CO2 + CH4)のタンパク質量依存的増加が示された(実施例1を参照)。高用量および低用量のスクレイピーを含有するTADおよび対照脳組織におけるメタンの蓄積は、消化過程の間にタンパク質を含まないTAD対照におけるものよりも、それぞれ約2.75倍および1.70倍高かった(図2)。
【0121】
この実験においては、BSE脳のみおよびSRMとして定義される他の型の組織と混合したBSE脳組織を含有するTAD消化装置からのバイオガス産生プロフィールを比較する。バイオガスプロフィールが差異を示さない場合、それは嫌気性微生物が同様の方法で異なる起源の組織由来タンパク質を処理することを示唆している。WBの比較結果は、BSEプリオンの浄化が、TAD消化装置中でBSE脳組織と他の型のSRM組織とを混合することにより損なわれるかどうかのさらなる証拠を提供する。消化残渣中でのタンパク質/アミノ酸富化に起因するアンモニアレベルの上昇がTADを阻害することが示唆された(SungおよびLiu, 2003; Hartmannら、2005)。この作用を軽減するため(あるとすれば)、TAD中の原料としてのタンパク質負荷量を、それぞれ、既存のコンピューター化パイロット計画を用いて、およびバッチ式消化装置中で最適化することができる。
【0122】
前記系をさらに改善するために、バイオガス中のアンモニアを、TADプロセスの間に揮散させることができる。例えば、アンモニア(NH3)を(NH4)2SO4または他の化合物に転換する任意のアンモニア収着材料((NH4)2SO4など)(参照により本明細書に組入れられるものとするUS20080047313A1に記載のものなど)により、アンモニアを捕捉することができる。捕捉されたアンモニア((NH4)2SO4など)を、TAD流出液中に統合した後、さらに処理して生物肥料を製造することができる。この統合技術は、TADプロセスの生産性およびBSEプリオン破壊の高い効率を確保するだけでなく、バイオガス燃焼値および生物肥料としてのTAD流出液の市場価値を増加させるであろう。
【実施例6】
【0123】
好熱性嫌気的消化を用いるウイルスの不活化
本実施例は、好熱性嫌気的消化(TAD)プロセスがモデルウイルスおよびその感染性を不活化することができる証拠を提供する。本実施例はまた、モデルウイルスに対するTADの用量依存的および時間依存的不活化に関するデータも提供する。さらに、本実施例は、ウイルス消毒において役割を果たすTADの特定の要素(例えば、酵素、VFA、温度、pH)を調査するためのプラットフォームを提供する。
【0124】
本試験において用いられるモデルウイルスは、DNAウイルスである鳥ヘルペスウイルス(ATCC株N-71851)である。このウイルスは、感染性ニワトリ喉頭気管炎(ILT)の突発およびニワトリの死を引き起こす。この試験において用いられる感受性細胞系は、肝細胞癌上皮細胞系であるLMH(ATCC CRL-2117)である。鳥ヘルペスウイルスによるin vivoでのLMH細胞培養物の感染は、細胞変性作用(CPE、または細胞死)を誘導する。
【0125】
試験設計に従って、37℃、5%CO2下でILTウイルスに感染したLMH細胞培養物をインキュベートすることにより、濃縮感染性ウイルス保存液を調製した。得られた濃縮感染性ウイルス保存液を、TAD消化残渣(55℃での嫌気的消化)を遠心分離し、それぞれ、0.45μmおよび0.22μmフィルターを通して上清を濾過することにより得られたTAD濾液と混合した。混合物を様々な時間、37℃でインキュベートさせた(以下を参照)。
【0126】
インキュベーション後、固定量の混合物のアリコートを、カバースリップ上で増殖させたLMH細胞の単層に適用した。次いで、細胞を37℃で約24〜72時間インキュベートし、結果を顕微鏡下で試験した。
【0127】
結果は、TAD(好熱性嫌気的消化)スラッジ(約10,000 x gで遠心分離し、pHを中和して、または中和せずに(元のpH約8.0)、0.45および0.22μmフィルターを通して濾過する)と共にILTV保存液をほんの30分間予備インキュベートすることにより、培養LMH細胞中へのCPEの出現が停止することを示していた。この結果は、滴定物が、二重濾過後に生きた細菌またはウイルスを欠いていたため、TADの濾液中のいくつかの分子がILTVを阻害または不活化したことを示している。
【0128】
30分の予備インキュベーション後のTAD濾液による用量依存的ウイルス不活化も測定した。結果は、ILTVに関する組織培養感染用量(TCID50)が保存ウイルスの108希釈液であったことを示している。広範囲のCPEが、1:1の比率のILTV保存液:TAD濾液で2日目に生じた。中程度のCPEが、1:4の比率のILTV保存液:TAD濾液で4日目に生じた。対照的に、1:10、1:20、または1:100の比率のILTV保存液:TAD濾液ではCPEが生じなかった。これらの結果を以下の表にまとめた。
【表2】

【0129】
1:1の比率でのTAD濾液:ILTV保存液による時間依存的ウイルス不活化も調査した。広範囲のCPEが、接種した培養物中、37℃で0、10、30分間、TADFと共にウイルス保存液をインキュベートした後、2日目に生じることがわかった。中程度のCPEは、接種した培養物中、37℃で60分間、TADFと共にウイルス保存液をインキュベートした後、3日目に生じた。最少のCPEは、接種した培養物中、37℃で120分間、TADFと共にウイルス保存液をインキュベートした後、3日目に生じた。これらの結果を、以下の表にまとめた。
【表3】

【0130】
表2および3の結果を、図4にまとめる。
【0131】
本実施例に記載の実験は、感染性ウイルス保存液をTAD濾液と共に予備インキュベートした場合、TAD濾液のみ(嫌気性細菌を含まない)が用量および時間依存的様式でILTウイルスの感染性を排除することができる証拠を提供する。TAD濾液中のプロテアーゼまたは他の生物活性酵素はウイルス不活化の主な属性因子ではないようであるが、所与の濃度(例えば、250 ppm以上)の揮発性脂肪酸(VFA)がウイルス不活化において役割を果たすかもしれない。
【0132】
この実験にはILTウイルスを用いたが、他のウイルス、特に、同じ科の他のDNAウイルス(ヒトウイルスなど)を本明細書に記載のTADプロセスにおいて効率的に破壊することもできる。いかなる特定の理論によっても束縛されることを望むものではないが、ウイルス破壊は、TAD消化系における小さい代謝分子と複合嫌気性細菌コロニーとの相乗効果の結果であり得る。
【0133】
ウイルス消毒にとって重要な小分子の正確な同一性を、GS-MASSまたはHPLC-MASS、および核酸試験などの当業界で認識される任意の方法を用いて決定することができる。
【実施例7】
【0134】
好熱性嫌気的消化(TAD)プロセスを用いる伝染性喉頭気管炎ウイルス(ILTV)の感染性の除去
伝染性咽頭気管炎(ILT)は、ヘルペスウイルスにより引き起こされる家禽の上気道疾患である。それは、カナダのアルバータ州において地方で申告義務のある疾患である。その風土病的性質のため、それは地方の家禽産業にとって経済的に重要である。家禽生産が強い地域において、および疾患突発の間に、前記ウイルスは著しい鳥類の喪失および卵生産の減少を引き起こす。
【0135】
前記ウイルスは、死後最大44時間、鳥の気管組織中で生存することができる。ILTウイルス(ILTV)を有機溶媒および高温(55℃以上)により不活化することができるが、本明細書に記載のTADプロセスは、このウイルスを破壊するためのより費用効果的で環境的に責任を持つ方法を提供する。
【0136】
この実験においては、ILTVを、特定の病原体を含まないニワトリ胚および鳥連続細胞系(ニワトリ肺細胞)中で上手く培養した。この細胞は前記ウイルスに対する感受性が高く、感染後3〜4日で特徴的な細胞変性効果(CPE)を示す。ILTVに感染した細胞を、顕微鏡下で直接、または間接蛍光試験(IFAT)を用いて容易に同定することができる。
【0137】
第1セットの実験においては、等量のILTV(100,000 TCID 50のチャレンジ用量)および活性TAD消化残渣に由来する濾液(TAD-f)(Integrated Manure Utilization System (IMUS(商標)実演プラント、Vegreville)から回収)を混合し、様々な時間(10、30、60および120分)、37℃でインキュベートした後、組織培養細胞中に接種した。第2セットの実験においては、TAD-fを、様々な比率の消化残渣対ウイルス(1:1、25:1、および100:1)で1倍量のウイルス懸濁液と混合し、60分間インキュベートした後、組織培養細胞中に接種した。比較のために用いた対照は、細胞系に接種した同一の感染用量の未処理のウイルス懸濁液であった。細胞培養物のCPEを3〜4日後にスコア化した。用いたTAD-fの様々なインキュベーション時間および濃度をlog 10に変換し、観察されたCPEの%に対してプロットした(データは示さない)。
【0138】
本発明者らは、2時間(120分)のインキュベーション期間の後に、および100倍のTAD-fと1倍量のウイルス懸濁液の比率を同様に用いて、ILTVのCPEが排除されたことを観察したが、これはILTVの感染性が完全に除去されたことを示唆している。ILTVのCPEの割合(%)は、インキュベーション時間と添加したTAD-fの量に反比例した。
【0139】
本発明者らは本明細書で、ILTVの消毒のための単純で、安価で、環境に優しいTAD技術を上手く示した。さらに、好熱性嫌気的消化系は、バイオガスを介して再生可能エネルギーを生成し、温室効果ガス放出および肥育場実務における農業生物廃棄物の足跡を減少させることがわかった。TADによるウイルス除去は、ILTの拡散の制御、および農業生物廃棄物の管理のための別の環境に優しい代替方法を家禽産業に対して提供する。
【実施例8】
【0140】
生物廃棄物および消化残渣中の病原体の評価
嫌気的消化のために用いられる多くの異なる型の廃棄物が存在するが、肥料を含有する生物廃棄物は高密度の大腸菌群を有する(1-6)。大腸菌群は、サルモネラ菌などのヒト疾患と関連する病原体ならびにカンピロバクター菌およびリステリア菌などの他の人畜共通病原体を含んでもよい(7-10)。一般的には、廃棄物中の汚染を表示するのに用いられる方法は、糞便大腸菌群などの指示生物を用いる。水については、この群の生物の検出および計数を用いて、家庭における使用および工業的使用にとっての水の適合性を決定する(11)。米国においては、廃水処理工場に由来するスラッジは、指示因子としての糞便大腸菌または病原体としてのサルモネラ菌について、米国環境保護庁(USEPA)からの密度要件を満たさなければならない(12)。
【0141】
肥料中の病原性微生物に関するPellにより提供された考察(13)においては、過去に、生物廃棄物管理に関する最も環境的な関心は、栄養過負荷、水質または臭気の問題に焦点を当ててきたことに触れている。嫌気的消化に用いられる生物廃棄物中の病原体に関する規則はない。アルバータ州における新興バイオガス産業については、嫌気的消化装置から大量の流出物が産生されるであろう。嫌気的消化装置流出物中に病原体が存在するかどうか、およびもし存在する場合、それらが公共、動物および植物の健康に対して脅威を与えるかどうかに関する情報が欠如している。本発明者らは、アルバータ州について嫌気的消化装置からの流出物を取り扱うための規則に関する情報を見つけていないが、廃水系に関する情報はある(14)。Alberta Agriculture and Rural Developmentの指針は、消化残渣の農地還元(land application)は肥料に適用されるため、それがAgricultural Operations Practices Act and Regulationsの下にあると述べている(15)。Canadian Council for the Ministers of the Environment (CCME)は、庭ゴミのみを含む堆肥中の生物含量に関するその指針において、糞便起源の糞便大腸菌は、乾燥重量に基づいて算出された全固体(TS)1 gあたり1000未満の最確数(MPN)、サルモネラ菌については、<3 MPN/4 g TS(16)であるべきであり、他の原料を含む堆肥は<1000 MPN/g TSの糞便大腸菌または<3 MPN/4 g TSのサルモネラ菌を含むべきである。堆肥の型に応じて、特定の時間、他の原料を含む堆肥を55℃以上に曝露しなければならない。
【0142】
USEPAは、生物固体の使用と廃棄を制御するためにCode of Federal Regulations (CFR)、Part 503のTitle 40の下で規則を課している(17)。生物固体とは、廃水処理プロセスの間に産生される再利用可能な有機固体生成物と定義される。前記規則のPart 503は、公共および環境に対する汚染を防止するための生物固体の使用に関する要件を与えるものである。1つの要件は、病原体または疾患を引き起こす生物の制御および生物固体へのベクター誘引の減少のためのものである。病原体は、細菌、ウイルスおよび寄生虫であってよく、ベクターとしては、げっ歯類、ハエ、蚊ならびに疾患を担持する生物および疾患を伝達する生物が挙げられる。Part 503に記載の規則は、農地還元または表面廃棄しようとする生物固体にとって病原体レベルが安全であることを確保するものである。生物固体クラスAの基準は、他の原料を含む堆肥に関するCCME指針と同じであり、<1000 MPN/g TSの糞便大腸菌または<3 MPN/4 gTSのサルモネラ菌である。病原体が公共および環境に対して危険をもたらさないレベルに低下した場合、生物固体はクラスBと考えられる。地域が安全と考えられるまでクラスBの生物固体が適用された地域に対して作物の収穫、動物の放牧および公共評価を防止する手段を取らなければならない。クラスBの生物固体の要件は、糞便大腸菌が<2 x 106 MPN/g TSでなければならないことである。この生物固体については、糞便大腸菌を、細菌およびウイルス病原体の平均密度の指示因子として用いる。
【0143】
本発明者らは、生物固体のために糞便大腸菌(18)およびサルモネラ菌(19)に関するUSEPA微生物試験を用いて、未消化の生物廃棄物ならびに生物廃棄物の嫌気的消化後の流出物に関する小規模試験を行い、その結果を用いて地域の生物廃棄物サンプルを評価した。実験時の時間的および資金的制約のため、選択した生物廃棄物サンプルに対して選択された分析のみを実施した。
【0144】
目的
・選択された生物廃棄物サンプルについて、汚染指示因子として用いられる糞便大腸菌および病原体指示因子として用いられるサルモネラ菌のレベルを評価すること。
【0145】
・好熱性嫌気的消化プロセスを用いて糞便大腸菌およびサルモネラ菌の減少を評価すること。
【0146】
この試験から得られる結果は、生物廃棄物を取り扱い、利用するための指針の開発のための予備データを提供する。
【0147】
生物廃棄物およびサンプル採取
全てのサンプルを滅菌プラスチックバッグまたはボトル中に採取し、特に指摘しない限り、採取後2〜3時間以内に試験した。全てのサンプルを、ARC, Vegreville, Albertaで採取、保存されたサンプル1.4以外はこの研究のために特異的に採取した。このサンプルを、この研究の時点でARCの完全自動化嫌気的消化系ARC Pilot Plant(以後ARC Pilot Plantと呼ぶ)において用いた。この消化系を55℃で運転した。全ての酪農堆肥サンプルおよびニワトリ肥料サンプルを、冬期に同じ農場から採取した。試験実験室に非常に近いため、この農場を選択し、USEPA微生物試験方法にとって必要な時間枠内で糞便大腸菌およびサルモネラ菌の確かな試験が可能になった。
【0148】
以下のサンプルをこの研究において試験した。
【0149】
・1.1 乳牛から得た酪農堆肥。3種の酪農堆肥サンプルを5頭の乳牛から2つの事例で採取した。サンプル1は牛1および2に由来する肥料混合物であり、サンプル2は牛3および4に由来する混合物であった。サンプル3は牛5に由来するものであった。1つのサンプルはサルモネラ菌のみについて試験した。
【0150】
・1.2 納屋から採取し、サルモネラ菌のみについて試験した1頭の牛から得た酪農堆肥。
【0151】
・1.3 納屋領域全体から採取した酪農堆肥。いくらかの新鮮に採取した肥料を、Edmonton ARC研究室に取った。残りの肥料をVegrevilleに輸送し、ARC Pilot Plant中で消化した。この時点で、消化装置を55℃で運転した。新鮮に採取された酪農堆肥を10日以上消化装置に供給した。肥料の最後の供給は、サンプルを分析のために取得する15時間前であった。
【0152】
・1.4 ARC Pilot PlantでTAD消化のために日常的に用いられた酪農堆肥。酪農堆肥をサンプル1.1〜1.3と同じ農場から採取し、4℃で2ヶ月間保存した。保存したサンプルおよび消化装置ホッパーから得た無作為サンプルを試験した。ホッパーから得た酪農堆肥を実験室で希釈し、22℃で1時間静置した。酪農堆肥に由来する消化後サンプルを採取し、試験した。
【0153】
・1.5 納屋中のニワトリケージから採取したニワトリ肥料。
【0154】
・1.6 納屋領域全体から採取し、ワラ床を含むニワトリ肥料。
【0155】
・1.7 7日以上毎日採取し、試験するまで4〜6℃で保持した、ほとんどは野菜ゴミおよび果物ゴミである家庭の台所ゴミ。
【0156】
・1.8 試験実験室に近いところにある食料品小売り店で採取された、殻を含む壊れた卵。
【0157】
・1.9 樽の中に採取され、試験するまで-20℃でARC Pilot Plantに保存された、エタノール製造工場から得た湿潤蒸留穀物。このサンプルを、ARC Pilot Plant中での使用のために採取し、それが非肥料に基づく生物廃棄物であるため、病原体分析のために選択した。8%TSの希釈サンプルを糞便大腸菌およびサルモネラ菌の試験のために取得した。
【0158】
試験方法
全ての脱水培養培地をNeogen(MI, USA)から購入し、Biolevel II実験室中で試験を実行した。5チューブMPN法をUSEPA法に記載のように用いて、糞便大腸菌およびサルモネラ菌の推定集団数を導出した。
【0159】
生物廃棄物の全固体測定
70℃で48時間、熱風オーブン乾燥法を用いて、生物廃棄物に関する全固体分析を行った。この方法は水のみを除去すると見なす。結果をサンプルの湿重量の%として報告する。
【0160】
糞便大腸菌に関する試験
生物廃棄物および嫌気的消化装置流出物を、USEPA法1680(17)を用いて糞便大腸菌について評価した。簡単に述べると、この方法はMPN手順を用いて、糞便大腸菌群に関する推定集団数、ラウリル-トリプトース培地およびEC培養特異的培地、ならびに高温を導出して、糞便大腸菌生物を単離し、計数する。この試験の基礎は、大腸菌などの糞便大腸菌群がヒトおよび他の温血動物の糞便中に一般的に見られることである。
【0161】
これらの細菌は、他の細菌およびウイルス病原体の存在可能性を示唆する。全固体決定を、生物廃棄物サンプルに対して行い、これを用いて糞便大腸菌をMPN/g乾燥重量として算出、報告した。
【0162】
サルモネラ種に関する試験
生物廃棄物および嫌気的消化装置流出物を、USEPA法1682(18)を用いてサルモネラ菌について評価した。簡単に述べると、この方法は、トリプティックソイブロスを用いる富化および改変半固体Rappaport-Vassiliadis培地を用いる選択によるサルモネラ菌の検出および計数のためのものである。キシロース-リジンデスオキシコール酸寒天を用いて推定同定を行い、リジン-鉄寒天、トリプルシュガー鉄寒天および尿素ブロスを用いて確認を行った。血清試験を行った。全固体をそれぞれの生物廃棄物サンプル上で決定し、これを用いて4 g乾燥重量あたりのMPNとしてサルモネラ菌密度を算出した。
【0163】
品質制御
USEPAにより証明された熱乾燥されたクラスA生物固体であるMilorganite (CAS 8049-99-8, Milwaukee Metropolitan Sewerage District, UNGRO Corp. ON)を使用し、好適な対照細菌と共に固定した。大腸菌(ATCC#25922)を、糞便大腸菌試験のための陽性対照として、サルモネラ菌試験のための陰性対照として用いた。サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)(ATCC#14028)をサルモネラ菌試験のための陽性対照として用いた。
【0164】
エンテロバクター・エロゲネス(Enterobacter aerogenes)(ATCC#13048)およびシュードモナス(ATCC#27853)を、糞便大腸菌試験のための陰性対照として用いた。
【0165】
結果および考察
以下の表は、生物廃棄物サンプルに関する全固体、糞便大腸菌およびサルモネラ菌のMPNを示す。
【0166】

同じ施設から得た酪農堆肥サンプルをこの研究において試験した。このサンプルは、納屋領域全体に由来するものであり、ウシの体内から取得したものであった。試験時に、全サンプル中に見出された糞便大腸菌の密度は、8.8 x 104 MPN/g TS〜1.1 x 107 MPN/g TSの範囲であった。4 x 100 MPN/4 g TSのサルモネラ菌が、納屋領域全体から採取された1つのサンプル中に認められた。4℃で2ヶ月間、酪農堆肥を保存したところ、糞便大腸菌が2-logから3-logに増加した。酪農堆肥を15時間TADにより55℃で消化した場合の両事例において、糞便大腸菌およびサルモネラ菌は検出限界以下に減少した(糞便大腸菌については<0.18 MPN/g TSおよびサルモネラ菌については<0.18 MPN/4 g TS)。
【0167】
ニワトリ肥料、台所ゴミ、卵および湿潤蒸留穀物を消化させなかった。両方のニワトリ肥料サンプルは4.3 x 106および2.1 x 106 MPN/g TSの糞便大腸菌群を有していた。サルモネラ菌は検出されなかった。台所ゴミ、卵および湿潤蒸留穀物中には糞便大腸菌群もサルモネラ菌も存在しなかった。
【0168】
この簡単な研究により、肥料に共通の細菌が酪農およびニワトリ肥料サンプル中で検出された。クラスA生物固体に関するUSEPAの指針によれば、糞便大腸菌密度は全ての肥料サンプル中で許容レベルを超えており、クラスB生物固体については、糞便大腸菌密度は新鮮に採取された肥料サンプル中で許容レベルを超えていた。糞便大腸菌レベルの増加は、病原性細菌がこれらのサンプル中に存在し得ることを示唆している。1つの新鮮な酪農サンプルが4.0 x 100 MPN/4 g TSを含み、ARC Pilot Plantに由来するランダムホッパーサンプルが2.1 x 100 MPN/4 g TSのサルモネラ菌を含むという事実により、これを検証した。このサンプルを、55℃で15時間の嫌気的消化後に検出レベル以下の糞便大腸菌およびサルモネラ菌の両方を含むように試験した。
【0169】
Bendixen(20)は、デンマークのバイオガス工場における動物およびヒト病原体の減少について考察した。病原体の生存は好熱性消化温度(50℃〜55℃)で大きく低下するが、低温および中温(5℃〜45℃)では低下しないと報告されている。バイオガス工場の構築、機能および管理を、病原体の破壊を保証するためにモニターする必要があり、適切な廃棄のために消化された流出物を分類する代わりに政策が必要である。下水スラッジの使用および廃棄に関するUSEPA標準(17)における要件は、下水スラッジを腸ウイルスおよび生きた蠕虫卵について分析するべきであることを示唆している。また、ベクター誘引の低下および揮発性固体の減少について与えられた要件もある。同様に、他の病原体も調査すべきである。例えば、ヒトノロウイルス株は家畜中にも認められ、これは人畜共通性感染の経路を示唆している(21)。同様に、ドイツにおける嫌気的消化施設に関する植物病原体に関する政策も行われている(22)。
【0170】
まとめ
・糞便大腸菌について1000 MPN/g TS未満の堆肥に関するUSEPAクラスA生物固体およびCCME指針を用いた場合、全ての新鮮に採取された肥料(酪農肥料およびニワトリ肥料)は許容レベルを超えていた。
【0171】
・糞便大腸菌について2 x 106 MPN/g TS未満のUSEPAクラスB生物固体指針を用いた場合、全ての新鮮に採取された肥料サンプル(酪農肥料およびニワトリ肥料)は許容レベルを超えていた。
【0172】
・1つの新鮮な酪農堆肥について、サルモネラ菌は3 MPN/4 g TS未満の堆肥についてUSEPAクラスA生物固体およびCCME指針を超えていた。
【0173】
・4℃で2ヶ月間、酪農堆肥を保存したところ、糞便大腸菌濃度が低下した。
【0174】
・55℃で15時間の嫌気的消化により、糞便大腸菌およびサルモネラ菌が検出レベル以下に低下した。連続攪拌タンク反応器系における15時間の消化は低下にとって十分であるようであった。
【0175】
・家庭台所ゴミ、壊れた卵および湿潤蒸留穀物は糞便大腸菌もサルモネラ菌も含有せず、またはMPN法を用いても検出レベル以下であった。
【0176】
実施例8の参考文献



【実施例9】
【0177】
好熱性嫌気的消化(TAD)プロセスを用いるプリオン破壊の増強
本出願人は、本実施例において、炭水化物に基づく基質(非タンパク質基質)を消化装置に添加し、活性状態で嫌気性生物集団を保持することにより、プリオン破壊も増強されることを証明する。
【0178】
本出願人は以前に、バッチ式消化におけるバイオガスプロフィール(CH4およびCO2)が8〜11日目にピークに達した後、消化物中に基質をさらに添加しない場合、基底レベルまで急速に低下することを示した。この結果は、嫌気性生物の多くが、レベル低下が起こった後に休止状態にあったことを示している。
【0179】
本試験においては、セルロース基質を11日目に開始して定期的に(約7日毎)、10 mlの40%スクレイピー脳組織を含むTAD消化の1つの試験群に添加した。対照として、別の試験群を同様に設定したが(10 mlの40%スクレイピー脳組織を含むTAD消化)、以前の試験と同様、追加のセルロース基質を添加しなかった。この試験を90日間行った。サンプリングスケジュールは以下の通りであった:0、6、11、18、26、40、60および90日目。試験の終わりに、スクレイピープリオンを抽出、精製、脱塩し、12%SDS-PAGEおよびウェスタンブロットを用いる分析のために濃縮した。ウェスタンブロットの画像を、Alpha Innotech Image Analyzer (MultiImage II, Alpha Innotech, San Leandro, CA)を用いて半定量した。
【0180】
画像分析から得られる結果は以下のことを示す。
【0181】
1)スクレイピープリオンのみを含む(セルロース基質を添加しない)TADの対照群においては、それぞれ、0日目のTADにおけるスクレイピープリオンの出発量、および26日目にリン酸バッファー(PBS)中に固定されたスクレイピープリオンの量と比較して、26日目にスクレイピープリオンの2.2 logの低下が達成された。この結果は、以前の試験において示されたものと同じであった。
【0182】
2)スクレイピープリオンと追加のセルロース基質を含むTAD群においては、それぞれ、0日目のTADにおけるスクレイピープリオンの出発量、および26日目にPBS中に固定されたスクレイピーの量と比較して、26日目にスクレイピープリオンの3 logを超える低下が達成された。
【0183】
3)11日目〜18日目に、TADのみの場合、0.8 logのスクレイピープリオン(12.18〜11.38 logの総密度および面積(IDA))を排除したが、追加のセルロース基質を含むTAD(60 mlのTAD/スクレイピープリオンミックス中に1グラム)の場合、1.37 logのスクレイピープリオン(12.15〜10.78 logのIDA)を排除した(p<0.001、スチューデントのt検定)。
【0184】
4)TADは、1.05 logのスクレイピープリオン(11.38〜10.34 logのIDA)を排除したが、2周目の追加のセルロース基質を含むTADは18日目〜26日目に現在のウェスタンブロット法において検出不可能なレベルまでスクレイピープリオンを排除した。2回目のセルロース基質の添加後のこの期間に、2 logを超えるさらなる低下を達成することができると予想される(図1、11日目〜26日目のスクレイピープリオンの低下を示すウェスタンブロット画像)。
【0185】
5)コンピューターモデリングを実行して、炭水化物に基づく基質を添加するか、添加しないTADプロセスを用いるスクレイピープリオンの破壊速度を予測する。このモデリングにより、出願人はプリオン病の研究および診断の分野において現在利用可能な方法を用いる検出感度の限界を回避することができる。
【0186】
まとめると、課題のTAD技術は、時間依存的様式でスクレイピープリオンタンパク質を効率的に破壊することができる。炭水化物に基づく基質および非タンパク質含有基質をTADプロセスに定期的に添加することにより、破壊能力が増強された。追加の炭水化物に基づく(非タンパク質含有)基質を含む群において、26日目に3 logを超えるスクレイピープリオン力価の低下が観察されたと見積もられる。実験データに基づけば、コンピューターモデリングを用いて、TADプロセスにおけるプリオン低下の時間経過、およびSRM中のプリオンの実質的に完全な根絶を達成するのにかかる時間を予測することができる。
【0187】
一般的な参考文献:






本明細書に引用される全ての参考文献および刊行物は参照により本明細書に組入れられるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体材料中に存在し得るバイオハザードの力価を低下させる方法であって、担体材料を嫌気的消化(AD)反応器に供給し、ADプロセスの間においてバイオガス産生速度を実質的に一定に維持することを含む、前記方法。
【請求項2】
バイオハザードがホルモン、抗体、体液、ウイルス病原体、細菌病原体、および/または雑草種子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
バイオハザードがプリオンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
プリオンがスクレイピープリオン、CWDプリオン、またはBSEプリオンである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
プリオンがプロテイナーゼK(PK)消化に対して耐性である、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
担体材料がタンパク質に富む材料を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
担体材料が特定危険部位(SRM)を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
SRMがCNS組織(例えば、脳、脊髄、またはその画分/ホモジェネート/部分)を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
AD反応器をバッチ様式、半連続様式、または連続様式で運転する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
バッチ様式を約0.5時間、1時間、2時間、5時間、10時間、24時間、2日、3日、4日、5日、6日、7日、10日、20日、30日、40日、50日、または60日未満持続する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
バイオガス産生速度が、バッチ様式運転の開始後約0.5〜5時間、1〜7日、または5〜10日でピークに達する、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
炭素に富む材料を、バイオガス産生がピークに達した後、約0.5〜5時間、1〜7日、または5〜10日毎に1回、AD反応器に半連続的に供給し、実質的に一定のバイオガス産生を維持する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
炭素に富む材料が新鮮な植物残渣または他の容易に消化可能なセルロースを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
AD反応器がバッチ様式運転の開始時に微生物の活性な接種物を含有する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
ADプロセスを好冷性微生物、中温性微生物、または好熱性微生物などの嫌気性微生物集団により実行する、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
好熱性微生物を、β-シートが豊富なタンパク質を含有する基質に順応させる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
高温かつ極端なアルカリ性pHでアミロイド物質を含有する基質と共に培養することにより、好熱性微生物を順応させる、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
Ca、Fe、NiまたはCoから選択される1種以上の補助栄養素を添加することをさらに含む、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
ADを約20℃、25℃、30℃、37℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃以上で実行する、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
嫌気的消化の約30日後または18日後にバイオハザードの力価の2 log以上の低下を達成する、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
嫌気的消化の約30日後または60日後にバイオハザードの力価の4 log以上の低下を達成する、請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
嫌気的消化(AD)反応器にタンパク質に富む原料を供給することを含み、バイオガス産生速度をADプロセスの間において実質的に一定に維持する、バイオガスを産生させる方法。
【請求項23】
AD反応器をバッチ様式で運転する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
AD反応器がバッチ様式運転の開始時に微生物の活性な接種物を含有する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
バッチ様式を約0.5時間、1時間、2時間、5時間、10時間、24時間、2日、3日、4日、5日、6日、7日、10日、20日、30日、40日、50日または60日未満持続する、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
バイオガス産生速度が、バッチ様式運転の開始後約0.5〜5時間、1〜7日、または5〜10日でピークに達する、請求項22〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
炭素に富む材料を、バイオガス産生がピークに達した後、約0.5〜5時間、1〜7日、または5〜10日毎に1回、AD反応器に半連続的に供給して、実質的に一定のバイオガス産生を維持する、請求項22〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
炭素に富む材料が新鮮な植物残渣、または他の容易に消化可能なセルロースを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
タンパク質に富む原料がホルモン、抗体、ウイルス病原体、または細菌病原体を含む、請求項22〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
タンパク質に富む原料が特定危険部位(SRM)である、請求項22〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
SRMが1個以上のプリオンまたは病原体を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
プリオンがスクレイピー、CWD、および/またはBSEプリオンを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
プリオンがプロテイナーゼK(PK)消化に対して耐性である、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
SRMがCNS組織(例えば、脳、脊髄、またはその画分/ホモジェネート/部分)を含む、請求項30〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
嫌気的消化の約30日または18日後に、プリオン力価の2 log以上の低下を達成する、請求項31〜34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
嫌気的消化の約30日または40日後に、プリオン力価の3 log以上の低下を達成する、請求項31〜35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
嫌気的消化の約30日または60日後に、プリオン力価の4 log以上の低下を達成する、請求項31〜36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
ADを約20℃、25℃、30℃、37℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃以上で実行する、請求項22〜37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
ADを実行する細菌が、好熱性微生物の集団、および/または好冷性微生物、中温性微生物、もしくは好熱性微生物などの嫌気性微生物の集団を含む、請求項22〜38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
ADを実行する細菌をβ-シートが豊富なタンパク質を含有する基質に順応させる、請求項22〜39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
高温かつ極端なアルカリ性のpHでアミロイド物質を含有する基質と共に3ヶ月間培養することにより、ADを実行する細菌を順応させる、請求項22〜40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
Ca、Fe、NiまたはCoから選択される1種以上の補助栄養素を添加することをさらに含む、請求項22〜41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
担体材料中に存在し得るウイルスバイオハザードの力価を低下させる方法であって、担体材料を嫌気的消化(AD)消化残渣、好ましくは、好熱性嫌気的消化(TAD)消化残渣の液体部分に接触させることを含む、前記方法。
【請求項44】
接触工程を37℃または室温(例えば、約20〜25℃)で実行する、請求項43に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−527337(P2012−527337A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511108(P2012−511108)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際出願番号】PCT/CA2010/000752
【国際公開番号】WO2010/132987
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(511279977)ハイマーク リニューアブルズ リサーチ リミテッド パートナーシップ (1)
【Fターム(参考)】