説明

バイオポリマー炭化物とカーボンナノチューブとを含む複合材料

カーボンナノチューブと炭質材料とを含む電気化学キャパシタ用の電荷蓄積材料として適する複合材料において、炭質材料が、ヘテロ原子を多く含むバイオポリマーまたは海藻の炭化残滓であり、該バイオポリマーまたは海藻の炭化残滓が導電性であり、且つXPSで検出される少なくとも6%のヘテロ原子含有率を有することを特徴とする複合材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学キャパシタ用電極材料として使用されるバイオポリマー炭化物または海藻炭化物とカーボンナノチューブとを含む複合材料に関する。
【0002】
電気化学キャパシタは、電極/電解質界面での電気二重層内における荷電化学種の分離によって電気的エネルギーを蓄積する素子である。かかるキャパシタの電極は、広い電圧範囲にわたって導電性であり且つ電気化学的に不活性でなければならない。さらには、多数回の充電/放電サイクルにわたってもキャパシタ挙動が著しく低下してはならない。活性炭は、それらの高い表面積および高い電子伝導性のために、最も広く使用されている電気化学キャパシタ用電極材料である。
【0003】
米国特許7061749号は、電極が活性炭およびシングルウォールのカーボンナノチューブで製造された複合材料を含む電気化学キャパシタを開示している。該複合材料は、(i)シングルウォールのカーボンナノチューブとポリマーとを含む懸濁液から前駆体複合材料を形成する工程、(ii)非酸化雰囲気中で該前駆体複合材料を熱処理して炭質ポリマーとカーボンナノチューブとを含む複合材料を形成する工程、および(iii)炭質ポリマーとカーボンナノチューブとの複合材料を活性化する工程を含む方法によって製造される。随意に、炭化に先立って、該前駆体複合材料を酸化雰囲気中で典型的には約200〜300℃の範囲の温度に加熱してポリマーを安定化する。
【0004】
前駆体複合材料のポリマー成分は、得られる材料が本質的に高い表面積を有するカーボンであるように炭化され且つ活性化され得るポリマー、コポリマーまたはそれらの混合物である。なかでも、ポリアクリロニトリルおよびそのコポリマーおよびフェノール樹脂が適したポリマーである。
【0005】
複合材料の他の成分はシングルウォールのカーボンナノチューブから構成されている。シングルウォールとマルチウォールのものとの2つの種類のカーボンナノチューブが公知である。しかしながら、米国7061749号は単にシングルウォールのカーボンナノチューブだけを使用することを教示している。なぜなら、それらは一般にマルチウォールのカーボンナノチューブよりも強く且つより伝導性であり、且つカーボン1gあたり利用可能な表面積が著しく高いと考えられているからである。シングルウォールのカーボンナノチューブは合成後または精製後に使用される。シングルウォールのカーボンナノチューブの合成および精製は当該技術分野で公知である。
【0006】
ポリマー中に分散されたカーボンナノチューブの濃度は、エンドユーズ用途のために望ましい特性に基づいて選択される。一般に、カーボンナノチューブ対ポリマーの質量比は約1:99〜約99:1の範囲であり得る。好ましくは、カーボンナノチューブ対ポリマーの質量比は約20:80〜約80:20の範囲である。上述の方法の活性化工程は、炭化または熱分解された材料の開孔率および表面積を増加させるための処理である。活性化は表面のモフォロジーおよび官能性にも影響し得る。典型的には、活性化を高温で酸化雰囲気、例えば二酸化炭素または蒸気の存在中で、あるいは化学活性剤、例えばカリウム水酸化物、亜鉛塩化物、ナトリウム炭化物またはリン酸の作用によって実施する。炭化後に活性化をしない電極としての複合材料の使用は一般に除外されていないにもかかわらず、ポリマー炭化物−ナノチューブ複合材料を活性化処理に供した場合に、より高い性能が達成されることが強調されている。活性化をしないで、ポリマー炭化物とシングルウォールのカーボンナノチューブとの複合材を含む電極の比容量は、0.4Vの電圧でアルカリ電解質(6mol/l KOH)中で、放電電流0.001Aで34F/g、0.005Aで30F/g、および0.01Aで28F/gである。容量の電流に対する強い依存性は、高電流では、電気二重層の形成にすぐに使用できない小さいサイズの孔が表れるという仮説によって説明されている。従って、高い充電−放電速度では、電気二重層の効果的に利用可能な全面積は、より低い充電−放電速度よりも小さい。
【0007】
活性化処理を用いて、0.4Vの電圧で6mol/l KOH中で、放電電流0.001Aで90〜167F/g、0.005Aで67〜117F/g、および0.01Aで60〜107F/gの範囲の容量が得られた。明らかに、活性化処理は容量の著しい増加をもたらし、それは開孔率の増加による電極表面積の増加に帰因し得る。しかしながら、電流に対する依存はより顕著ですらある。
【0008】
ポリアクリロニトリル炭化物とマルチウォールのカーボンナノチューブとの複合材料を含有する電極はF.Beguinらによって研究された(Advanced Materials 2005、17、2380−2384)。該複合材料の製造においては、炭化前のポリアクリロニトリルの熱安定化およびその次の活性化が省略された。700℃での炭化の後ですら、著しい量の窒素が複合材料中に存在していることが判明した。炭化状態において、30%のマルチウォールのカーボンナノチューブおよび70%のポリアクリロニトリルの質量分率を含む初期成分を有する複合材料のためには、窒素の質量分率は7〜9%であった。
【0009】
容量は、複合材料の組成(PANとカーボンナノチューブとの間の質量比)および熱分解条件(温度および持続時間)によって著しく影響された。最高の電極容量(100F/g)が、700℃で180分間炭化された、30%のマルチウォールのカーボンナノチューブおよび70%のポリアクリロニトリルの質量分率を含む初期組成を有する複合材料で得られた。熱分解温度を上昇させるか、あるいは組成を修正するか(カーボンナノチューブの分率の減少または増加のいずれか)、あるいは熱分解時間を変更(長く、あるいは短くのいずれか)した場合、容量が減少した。容量に対するこの影響は、複合材料のナノ組織上のマルチウォールのカーボンナノチューブのテンプレート効果と、ポリアクリロニトリル炭化物における窒素官能基の疑似ファラデー性の寄与との間の相乗効果によって説明された。好ましい組織の複合材料は、容量を著しく損失させずに速い充電/放電を可能にする。
【0010】
しかしながら、電極容量のさらなる増加が、電気化学キャパシタの実際の用途に対して望ましい。
【0011】
本発明は、炭質材料とカーボンナノチューブとを含む複合材料において、電気化学キャパシタ用電極材料として使用された場合に、増加した重量比容量および体積比容量を提供できる複合材料を提供する。該複合材料における炭質材料は、ヘテロ原子を多く含むバイオポリマーの炭化残滓であり、該バイオポリマーの炭化残滓は導電性であり、且つ少なくとも6%のヘテロ原子含有率を有している。
【0012】
より特定には、本発明による複合材料を含有する電極の重量比容量(1つの電極内の電荷蓄積材料単位質量あたりの容量)は少なくとも200F/gであり、且つ体積比容量(重量比容量に電荷蓄積材料の密度をかけたもの)は少なくとも200F/cm3である。好ましくは、重量比容量は少なくとも230F/g、およびより好ましくは少なくとも250F/gであり、且つ体積比容量(重量比容量に電極材料の密度をかけたもの)は少なくとも220F/cm3である。
【0013】
さらには、かかる複合材料を得るための方法を提供する。
【0014】
本発明の複合材料は、カーボンナノチューブを前駆体バイオポリマーまたは海藻内で分散させて、カーボンナノチューブとバイオポリマーまたは海藻とを含む前駆体複合材料を形成する工程、および該前駆体複合材料を不活性雰囲気下、550〜1000℃、好ましくは600〜900℃の範囲の温度で、その後、いかなる活性化処理もせずに炭化する工程を含む方法によって得られる。
【0015】
本発明のさらなる特徴、詳細、利点および変形物を、以下の好ましい実施態様の記載において、図を参照して説明する:
図1は、本発明の複合材料を含有する電極のサイクリックボルタモグラムを示し(三電極法で記録)、
図2aおよびbは、本発明の複合材料を含有する電極を装備したキャパシタの、電流密度の関数としての重量比容量を示し、
図3aおよびbは、本発明の複合材料を含有する電極を装備したキャパシタのラゴンプロットを示し、
図4は、多数回の充電/放電サイクルの間の容量の変化を示し、
図5aおよびbは、本発明の複合材料のTEM図を示す。
【0016】
欧州特許出願06002103.7号に開示されているバイオポリマーおよび海藻が、本発明の複合材料の製造に適している。それは該バイオポリマーまたは海藻(両方とも通常は前駆体として示される)が高い含有率のヘテロ原子を有していることが前提条件である。ヘテロ原子は炭素および水素とは異なる原子として理解されるべきである。好ましい種類のヘテロ原子は酸素および窒素である。なぜなら、窒素または酸素を含有する表面の官能基は可逆性の電気化学的酸化還元反応を経ることができるからである。
【0017】
さらに、該前駆体を、前記の炭質材料中に残留している著しい含有率のヘテロ原子を有する導電性の炭質材料に転換し得ることが必要である。欧州特許出願06002103.7号内に開示されているバイオポリマーまたは海藻では、通常、炭化は質量損失に関連する種々の温度レベルでのいくつかの分解段階を有する広い温度範囲におよぶ。最も低い温度レベルでは、熱誘発性の分離工程、例えば脱水、および脱炭酸が引き起こされる一方、より高い温度レベルでは、ポリマーのさらなる熱分解が起きる。所望の含有率のヘテロ原子を有する炭質材料を得るために、バイオポリマーの質量損失が熱誘発される最高の温度レベルより低い温度で前駆体の炭化を実施することが重要である。適した温度範囲は熱重量分析によって見積もられる。
【0018】
上述のバイオポリマーまたは海藻の炭化挙動とは対照的に、狭い温度範囲で分解するせいで炭化で高酸素(即ち高ヘテロアトム)の炭質材料を形成しないセルロースなどの他の高酸素バイオポリマーがある。例えば、セルロースは300℃〜350℃の狭い温度範囲内で分解し、前駆体のセルロースが40〜50原子%の酸素含有率を有しているにもかかわらず、低い酸素含有率(5原子%未満)を有するチャーを生ずる。それらのバイオポリマーは本発明に適した前駆体ではない。
【0019】
本発明に適したバイオポリマーおよび海藻の炭化残滓のヘテロ原子含有率は、少なくとも6原子%である(XPS法で検出される)。いくつかの好ましい前駆体は、少なくとも6原子%の酸素含有率か、あるいは少なくとも8原子%の窒素と酸素との合計の含有率を有する炭質材料を形成する。この量のヘテロ原子が、著しい疑似容量の寄与をもたらすことが判明した。他方、電子伝導性に悪影響するほどヘテロ原子含有率が高くてはいけないことを強調すべきである。実際に、炭質材料の電子伝導性は少なくとも0.2S/cmである。それに対して、従来の部分的に炭化された材料、例えばセルロースの制御された部分的な炭化物から得られるものは、非常に乏しい電子伝導性(75〜80質量%の炭素含有率で約10-8S/cm、GB1118626号を参照)を有することが公知である。
【0020】
海藻、特に紅藻または褐海藻または寒天植物中に含有されるいくつかのバイオポリマーが非常に適した前駆体であることが判明した。かかるバイオポリマーの例は、アルギン酸、アルギン酸塩、寒天およびカラギーナン(イオータおよびカッパ)である。該ポリマーを海藻から炭化前に抽出してよい。選択的に、かかるポリマーを含有している生の海藻を、前もってバイオポリマーの抽出をせずに、直接的に前駆体として使用できる。従って、カラギーナンを多く含む紅藻、例えばハイプネア マスシフォーム(Hypnea Musciforme)の炭化、またはアルギン酸塩を多く含む褐海藻、例えばレッソニア ニグレッセンス(Lessonia Nigrescens)の炭化、または寒天を多く含む海藻の炭化によって、電気化学キャパシタ用電極材料として適した炭質材料を製造できる。この方法は、経済的な理由から非常に好ましい。なぜなら、抽出工程が省略できるからである。他の適した前駆体バイオポリマーはキチンである。
【0021】
当該技術分野で公知の任意の方法によって得られたカーボンナノチューブを使用できる。用語カーボンナノチューブは、シングルウォールのカーボンナノチューブ、マルチウォールのカーボンナノチューブ、およびカーボンナノファイバー、およびそれらの混合物を含むと理解される。
【0022】
カーボンナノファイバーは時としてマルチウォールのカーボンナノチューブと混同される。用語カーボンナノファイバーは、長さが数ミクロンで且つ直径が数十から数百ナノメートルにわたる中空または中実のカーボン繊維に対して使用される。しかしながら、カーボンナノファイバーは、チューブの壁が繊維の長軸方向に平行な、マルチウォールのカーボンナノチューブの典型的な組織を有していない。カーボンナノファイバーは通常、いくつかの形態のカーボン:円柱状の層、グラファイトが様々な角度で積層した層、アモルファスカーボンの層の混合物からなる。それらは、触媒粒子、例えば鉄、および炭素含有ガス、例えばエチレンを使用した触媒性化学気相成長(CVD)によって産業規模で製造される。カーボンナノチューブ用のCVD製造法との違いは、基板の不在、より低い製造温度およびより高い製造収率である。
【0023】
最も好ましくは、マルチウォールのカーボンナノチューブを使用する。例えば、マルチウォールのカーボンナノチューブは、担持されるコバルト粒子上でのアセチレンの触媒性堆積によって得られる。この方法のさらなる詳細は、J.Nanosci、Nanotech、2002、vol.2、p.481、およびマルチウォールのカーボンナノチューブの量産方法を開示している米国特許7094385号内に見出される。触媒法によって得られたマルチウォールのカーボンナノチューブを好ましくは精製して、全ての残留触媒を除去する。適した精製方法は当該技術分野で公知である。
【0024】
前駆体複合材料を得るために、カーボンナノチューブを均質に前駆体中で分散させる。生の海藻を前駆体として使用する場合、カーボンナノチューブの分散前に該海藻を粉砕する。
【0025】
好ましくは、カーボンナノチューブを、前駆体の炭化後に複合材料中のカーボンナノチューブの質量分率が少なくとも5%、好ましくは5〜10%になる量で前駆体に添加する。カーボンナノチューブの質量分率を所望の範囲に調節するために、炭化における質量損失を考慮しなければならない。バイオポリマーまたは海藻の質量損失を、カーボンナノチューブの添加をしない前駆体の炭化挙動の熱重量分析から測定できる。純粋なバイオポリマーと精製されたカーボンナノチューブとを含む複合材料を炭化する場合、炭化工程の間にカーボンナノチューブの消費が生じないことが合理的にみなされる。他方、複合材料が生の海藻を含有する場合、海藻が炭素の酸化を触媒する物質、例えば金属カチオン、例えばCa2+、Na+および/またはK+を含有し、従ってカーボンナノチューブの部分的な消費がもたらされることが避けられない。この場合、海藻の炭化質量損失およびそこに分散しているカーボンナノチューブの質量に基づいて、カーボンナノチューブの公称の質量分率のみを引用する。しかしながら、海藻ベースの複合材料の炭化におけるカーボンナノチューブの消費は、決して完全ではない。なぜなら、容量に著しい効果があるからである。
【0026】
炭質材料中に特定の量のヘテロ原子を保持するために、前駆体と、そこに分散されたカーボンナノチューブとを含む複合材料の炭化を、欧州特許出願06002103.7号内に記載されているものと実質的に同一の条件で実施する。
【0027】
従って、炭化を好ましくは前駆体の質量損失が熱誘発される最高の温度レベルより低い温度で実施する。適した温度範囲は熱重量分析によって見積もられる。通常、前駆体複合材料を、550℃〜1000℃の温度、不活性雰囲気下で数時間、多くは3時間程度の間、炭化する。好ましいのは、600〜900℃の範囲の温度での炭化である。
【0028】
炭化を、予め熱安定化をしないで、次の活性化をしないで、且ついかなる活性剤の添加もしないで、一段の工程で実施する。
【0029】
ナノチューブ存在中での前駆体の炭化後、炭質材料をカーボンナノチューブの表面上に広げて、そしてそれらを覆う。従って、該複合材料はカーボンナノチューブの組織によって決定される組織を有している。
【0030】
マルチウォールのカーボンナノチューブの場合、マルチウォールのカーボンナノチューブのメソ孔組織もまた、複合材料中に存在する。ナノチューブを有さない同一の炭質材料と比較して、マルチウォールのカーボンナノチューブの存在は、メソ孔範囲(孔径2〜50nm)に帰因する孔の体積の増加をみちびく。それに対して、微細孔(孔径0.7〜2nm)および超微細孔(孔径0.7nm未満)の範囲の孔の体積は、わずかにしか変化しないか、あるいは減少さえする。メソ孔の分率の増加は、電気化学キャパシタにおける用途に有益である。なぜなら、メソ孔は電解質がアクセスし易く、従ってメソ孔の電極/電解質界面へのアクセスが改善される。
【0031】
マルチウォールのカーボンナノチューブによってもたらされるメソ開孔率の著しい寄与によって、流体の移送が容易になる。これは電気化学キャパシタと並ぶ多くのさらなる応用分野、例えばガス吸着およびガス貯蔵、ガス(例えば空気)の分離または浄化、および水の浄化等の分野に関するものを可能にする。カーボンナノファイバーの場合、それらはより大きい直径を有し、且つマルチウォールのカーボンナノチューブのように絡み合っておらず、該複合材料は前記の顕著なメソ開孔率を有していない。しかしながら、驚くべきことに、炭質材料がカーボンナノファイバー上に広げられた、かかる複合材料の組織もまた、イオンの拡散および容量性の充電/放電を非常に容易にすることが判明した。
【0032】
複合材料を、該複合材料と適した結合剤との混合物を集電装置上でキャスティングすることによって、あるいは該複合材料と適した結合剤との混合物を所望の形状にプレスし、そして集電装置と組み合わせることによって、電極に成形できる。追加的な浸出剤、例えばカーボンブラックは必要ではない。活性炭からの電極製造、およびかかる電極を含有する電気化学キャパシタの組み立ては当該技術分野で公知であり、且つ、同一の技術を本発明の複合材料に使用できる。従って、電極の生産に関するさらなる詳細を示す必要はない。
【0033】
電気化学キャパシタは適した電解質を有する2つの電極を組み合わせることによって得られる。1つの実施態様において、キャパシタは対称型のキャパシタである。これは両方の電極が同一の組成を有していることを意味する。選択的に、異なる組成を有する2つの電極を電解質と組み合わせて非対称のキャパシタを形成してもよい。
【0034】
カーボンナノチューブを用いないで同一の前駆体から製造された電極と比較して、カーボンナノチューブ、特にマルチウォールのカーボンナノチューブおよびカーボンナノファイバーの存在は、いくつかの電気化学パラメータに対する有益な効果を有することが示される。
【0035】
インピーダンススペクトルの高周波極限から測定される等価直列抵抗は、カーボンナノチューブの存在ゆえに減少する。該直列抵抗は、電気化学系、即ち電極材料それ自身、電解質および全ての電子的コンタクトにおける全てのオーミック抵抗の寄与分を含有する。該直列抵抗の減少は、複合材料内に保持されているカーボンナノチューブの高い電子伝導性に関連し得る。
【0036】
興味深いことに、インピーダンス分光はマルチウォールのカーボンナノチューブまたはカーボンナノファイバーのいずれかの存在が、インピーダンススペクトルの低周波領域を支配している等価分布抵抗の減少も誘発することを明らかにした。このパラメータは、電極材料内外へのイオンの拡散によって測定される。等価分布抵抗の減少は、マルチウォールのカーボンナノチューブとカーボンナノファイバーとの両方が複合材料中でのイオン拡散に好ましい条件を作ることができることを示す。より特定には、マルチウォールのカーボンナノチューブを含有する複合材料に関して、拡散を容易にしているのは増加したメソ孔の分率であるとみなされる。
【0037】
酸性の水性電解質、例えば硫酸を用いて、本発明の複合材料を含有する電極の重量比容量は、電圧1.2V、且つ電流密度1まで、あるいは10A/g(0.008Aの電流と等しい)でさえも、200F/gより大きい。これは、米国7061749号に報告されているシングルウォールのカーボンナノチューブと合成ポリマー炭化物、例えばポリアクリロニトリル(上記を参照)とを含む複合材料を含有する電極に関する容量のデータより著しく高い。
【0038】
部分的に、この増加は、本発明の複合材料の成分を形成する炭質材料中のヘテロ原子に由来する大きな疑似容量性の寄与に帰因し得る。それらのバイオポリマーの炭化物および海藻炭化物の疑似容量性挙動は、欧州特許出願06002103.7号内に開示された。実際に、カーボンナノチューブの存在がなくても、炭質材料の重量比容量は米国7061749号内に報告された値より高いか、あるいは少なくとも同等である。該疑似容量性挙動は、サイクリックボルタモグラム(図1)の隆起からわかるように、本発明の複合材料において保持されている。純粋に静電気的な挙動の場合、サイクリックボルタモグラムはほとんど長方形の形状を示すであろう。
【0039】
しかしながら、カーボンナノチューブの存在は容量のさらなる増加、および容量の電流密度依存性の顕著な減少をもたらす。それに対して、等量の技術水準の浸出添加剤、例えばカーボンブラックの存在は、容量に対する著しい効果はない。マルチウォールのカーボンナノチューブまたはカーボンナノファイバーに影響された増加は、速い充電/放電を可能にする該複合材料内外でのイオン拡散の促進に帰因する。従って、高い電流密度での電極/電解質界面の使用が増加され、且つ容量の電流密度依存性が減少する(図2aおよびb)。これはまた、高出力密度で利用可能なエネルギー密度の増加をもたらす(図3aおよびb)。PAN炭化物とマルチウォールのカーボンナノチューブとを含む先行技術の複合材料(F.Beguin et al.、Advanced Materials 2005、17、2380−2384)に対して、著しく低い質量分率のカーボンナノチューブ(30%の代わりに約10%)が、著しく高い容量を得るのに充分である。
【0040】
0.8〜1g/cm3の範囲の複合材料の高い密度のおかげで、200F/cm3より高い体積比電極容量が達成される。
【0041】
繰り返される充電/放電サイクルにおいて、容量はわずかだけ低下した(10000〜20000サイクル後に最大16%)。カーボンナノチューブの存在が充電/放電サイクルの間の電極材料の回復を改善し、従って電極のサイクル寿命を強化するとみなされる。
【0042】
本発明の複合材料は、水性電解質並びに有機電解質を有する電気化学キャパシタ用電極材料として適している。水性電解質において、最大セル電圧は約1.0〜1.4Vである。
【0043】
マルチウォールのカーボンナノチューブの存在の有益な効果が、両方の種類の前駆体、純粋なバイオポリマーおよび生の海藻を用いて観察された。しかしながら、前駆体として生の海藻を用いた場合、著しい効果をもたらすためには、幾分高い公称質量分率のカーボンナノチューブが必要であった。これは、生の海藻中に存在する金属カチオンを含有する触媒活性成分の存在下での炭化における、カーボンナノチューブの部分的な消費に帰因し得る。
【0044】
マルチウォールのカーボンナノチューブの代わりにカーボンナノファイバーでは、同等の容量の増加が観察された一方、開孔率に対する著しい効果はなかった。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の複合材料を含有する電極のサイクリックボルタモグラムを示す図である。
【図2】本発明の複合材料を含有する電極を装備したキャパシタの、電流密度の関数としての重量比容量を示す図である。
【図3】本発明の複合材料を含有する電極を装備したキャパシタのラゴンプロットを示す図である。
【図4】多数回の充電/放電サイクルの間の容量の変化を示す図である。
【図5a】本発明の複合材料のTEM図を示す図である
【図5b】本発明の複合材料のTEM図を示す図である。
【0046】
実施例
複合材料の製造
前駆体の影響を評価するために、純粋なバイオポリマー(市販のアルギン酸ナトリウム)を含有する前駆体複合材料、および生の海藻(レッソニア ニグレッセンス)を含有する他の前駆体複合材料を以下のように製造した。J.Nanosci、Nanotech、2002、vol.2、p.481および米国特許7094385号内に記載された方法によって得られたマルチウォールのカーボンナノチューブ(MWNT)を、アルギン酸ナトリウム(Aldrich)または粉砕されたレッソニア ニグレッセンス内に分散させた。それぞれの前駆体において、マルチウォールのカーボンナノチューブの質量%を、前駆体の炭化収率を考慮して、最終的な複合材料中で5%または10%のいずれかになるように固定した。
【0047】
同様に、前駆体複合材料を、10質量%のカーボンナノファイバー(CNF)を有するレッソニア ニグレッセンスから製造した。
【0048】
炭化のために、該複合材料を、昇温速度10K/分で600℃の温度に達するまで加熱した。温度を、窒素ガスフロー中で3時間、この温度で保持した。
【0049】
比較のために、前駆体のサンプルを同一の条件下で、カーボンナノチューブを添加しないで炭化した。
【0050】
組織、比表面積および開孔率
多孔質組織は77Kでの窒素吸着および273Kでの二酸化炭素吸着によって特徴付けられる(AUTOSORB、Quantachrome)。窒素吸着データを使用してBET比表面積SBETを計算した。DFT(differential functional theory)法を窒素吸着の等温線に適用して、微細孔およびメソ孔領域の孔径分布を測定した。273K、および低い相対圧力P/P0<0.1での二酸化炭素吸着の等温線は、0.4〜0.7nmの範囲の狭い微細孔(超微細孔)における吸着に帰因する。それらを、Dubinin−Radushkevich方程式に従って超微細孔の体積および超微細孔表面の計算に使用した。
【0051】
比較のために、純粋なマルチウォールのカーボンナノチューブおよび純粋なカーボンナノファイバーも調査した。得られたデータを表1にまとめる。
【0052】
表1:複合材料の多孔質組織のパラメータ
【表1】

【0053】
a:Dubinin−Radushkevich方程式をCO2吸着データに適用した後に得られた。
【0054】
b:DFT法をN2吸着データに適用した後に得られた。
【0055】
表1のデータは、多量のメソ孔によって特徴付けられるマルチウォールのカーボンナノチューブの存在が、カーボンナノチューブを添加しない前駆体炭化物と比べて、複合材料中でメソ多孔性の増加をもたらすことを示す。この効果は、両方の種類の前駆体で検出されるが、しかしながら前駆体として生の海藻を用いた場合と比較して、前駆体として純粋なバイオポリマーを用いた場合により顕著である。この違いは、海藻中に含有される触媒活性物質の存在下での炭化の間の、マルチウォールのカーボンナノチューブの部分的な消費によって説明される。
【0056】
それに対して、それら自身が低い開孔率を有するカーボンナノファイバーは、複合材料の開孔率に著しい効果を有さない。マルチウォールのカーボンナノチューブの場合のTEM像(図5a)は、海藻炭化物がナノチューブを被覆し、従って、該複合材料がマルチウォールのカーボンナノチューブのメソ孔組織を有することを示す。
【0057】
カーボンナノファイバー(図5b)の場合、海藻炭化物がナノファイバーを被覆している。しかしながら、該ナノファイバーはより大きい直径を有しており、且つマルチウォールのカーボンナノチューブの絡み合いを有しておらず、該複合材料はマルチウォールのカーボンナノチューブを用いた場合のようなメソ孔組織を有していない。
【0058】
複合材料のヘテロ原子含有率
アルギン酸炭化物の酸素含有率および前駆体としてのアルギン酸塩を用いて製造された複合材料の酸素含有率をXPSによって分析した。結果を以下の表2に示す。
【0059】
表2:アルギン酸炭化物の酸素含有率
【表2】

【0060】
複合材料中の酸素含有率の減少は、マルチウォールのカーボンナノチューブの分率の増加を反映している。それにもかかわらず、全体の容量への著しい疑似容量の寄与を生成するのにまだ充分であると予想される。
【0061】
サイクリックボルタモグラムにおいて、疑似容量の寄与は隆起またはピークの形成をもたらす。図1は、アルギン酸ナトリウム炭化物と10%の質量分率のマルチウォールのカーボンナノチューブとの複合材料を含有する電極のサイクリックボルタモグラムを示す。比較のために、カーボンナノチューブを添加していないアルギン酸炭化物を含有する電極のサイクリックボルタモグラムも示す。両方のサイクリックボルタモグラムを、三電極法を使用して走査速度2mV/秒で電解質として1mol/lのH2SO4を用いて記録した。両方のサイクリックボルタモメトリの掃引線は、順方向および逆方向で顕著な隆起を示し、従ってバイオポリマー炭化物に対して公知の疑似容量性挙動が本複合材料においても存在することが実証される。
【0062】
電極およびキャパシタの製造
1cm2の面積を有する電極ペレットを、該複合材料(90質量%)と結合剤(PVDF、10質量%)との混合物をプレスすることによって得た。比較の目的で、電極をアルギン酸炭化物またはレッソニア ニグレッセンス炭化物(85質量%)を、5質量%のカーボンブラックおよび10質量%の結合剤と共にプレスすることによって、あるいはアルギン酸炭化物またはレッソニア ニグレッセンス炭化物(90質量%)を10質量%の結合剤と共にプレスすることによって製造した。
【0063】
2つの電極のサンドイッチ型のセルを、Swagelok(登録商標)部品を使用して、2つのペレットの間にガラス繊維のセパレータを用いて組み立てた。使用された電解質は1MのH2SO4であった。
【0064】
導電性
2つの複合材料のために、複合材料それ自身の電子伝導性を2つの集電装置の間でプレスして高周波(100kHz)での抵抗を測定することによって定量した。
【0065】
質量分率10%のマルチウォールのカーボンナノチューブを用いたレッソニア ニグレッセンスでは0.9S/cmの値が得られ、且つ、質量分率10%のカーボンナノファイバーを用いたレッソニア ニグレッセンスでは1.2S/cmの値が得られた。
【0066】
前駆体としての純粋なバイオポリマーから製造された複合材料は、該前駆体がより高い純度であるので、より伝導性であることが合理的にみなされる。
【0067】
電気化学インピーダンス分光法
インピーダンス分光測定を、該キャパシタにおいて、それらの静止電圧で実施した。交流電圧20mVを適用した。周波数範囲は10000Hz〜0.001Hzであった。得られたデータは電極材料、コンタクト、および電解質のオーミック抵抗に関する等価直列抵抗(ESR)、および電荷蓄積材料内へのイオンの拡散に関する等価分布抵抗(EDR)である。該ESRはインピーダンスの高周波極限(10kHz)に相当する。該EDRは、ナイキストプロットのほぼ線形の低周波領域を実数軸に対して下方に外挿し、そしてESRを差し引くことによって得られる。
【0068】
表3からわかるように、両方のパラメータ、電気直列抵抗および電気拡散抵抗が、マルチウォールのカーボンナノチューブまたはカーボンナノファイバーの存在下で減少する。前駆体としてアルギン酸ナトリウムを用いた場合、5質量%の分率のカーボンナノチューブは既に著しい効果を有した一方、カーボンナノチューブ分率を10質量%まで増加しても、さらなる減少は控えめにしかもたらされない。それに対して、前駆体として生の海藻を用いた場合、電気直列抵抗の著しい減少が10質量%の分率のカーボンナノチューブのみで実現する。これは恐らく、海藻の炭化の間のカーボンナノチューブの部分的な消費によって引き起こされている。
【0069】
電気直列抵抗の減少がマルチウォールのカーボンナノチューブの電子導電性に帰因する一方、電気拡散抵抗の減少は、電極材料内外へのイオンの拡散を容易にする複合材料の組織に帰因する。特に、マルチウォールのカーボンナノチューブを含有する複合材料では、メソ孔の分率の増加がイオンの拡散を容易にしているとみなされる。
【0070】
5質量%の分率のカーボンラックの存在は、同一の質量分率のマルチウォールのカーボンナノチューブとほぼ同等、あるいはそれより低い電気直列抵抗の減少をもたらす。しかしながら、カーボンブラックの添加によって達成される電気拡散抵抗の減少は、同量のマルチウォールのカーボンナノチューブまたはカーボンナノファイバーを用いた場合より著しく低い。
【0071】
表3:インピーダンス分光法から得られた電気直列抵抗(ESR)および電気拡散抵抗(EDR)
【表3】

【0072】
容量挙動
容量Cを定電流の充電/放電サイクルの実験から、式
【数1】

[式中、iは電極(電極材料1gあたり)を充電する電流密度、dEは充電の間の電圧変動、およびdtは充電の継続時間である]
によって計算した。定電流サイクル実験において200mA/gの電流密度iを適用し、且つ電圧Eを0Vと表4に示す可逆性の最大充電/放電電圧との間で繰り返した。体積比容量は重量比容量に電極密度をかけることによって得られた。該密度は、電極の質量および電極の幾何寸法によって定義された体積から計算された。
【0073】
重量エネルギー密度(電極材料単位質量あたりのキャパシタ内に蓄積された電気エネルギーEの量)を式:
【数2】

によって計算した。
【0074】
重量比容量および体積比容量、重量エネルギー密度および最大繰り返し電圧を表4に示す。
【0075】
表4:電気化学的特性の結果
【表4】

【0076】
表4のデータは、カーボンナノチューブの添加がない炭質材料中でもすでに非常に高い容量が、カーボンナノチューブの存在によってさらに増加されることを示す。それに対して、カーボンブラックの添加は容量の著しい増加をもたらさない。比較のために、技術水準の活性炭(マックスソーブ)を含有する電極を用いたキャパシタの容量のデータを示す。その容量は該複合材料の容量より著しく低い。
【0077】
キャパシタの可逆性の充電/放電サイクルが可能な最大電圧は、カーボンブラックまたはマルチウォールのカーボンナノチューブのいずれかの存在によって影響されない。しかしながら、カーボンナノチューブを添加しない炭質材料と本複合材料との両方の最大繰り返し電圧は、技術水準の活性炭、例えばマックスソーブの最大繰り返し電圧よりも非常に高い。
【0078】
エネルギー密度は容量および最大電圧に依存する。しかしながら、電圧の2乗に比例するので、電圧依存が支配的である。最大電圧はカーボンナノチューブの存在下で変化しなかったので、エネルギー密度はカーボンナノチューブの存在下で増加した容量によってわずかしか増加しない。
【0079】
キャパシタが最大電圧に充電される/最大電圧から放電されるところでの容量の電流密度依存を図2aおよびbに示す。マルチウォールのカーボンナノチューブの存在は、電流の増加に伴う容量の低下を著しく減少させる。前駆体として純粋なバイオポリマー、例えばアルギン酸塩を用いた場合、質量分率5%のマルチウォールのカーボンナノチューブが、高電流密度での容量の著しい増加を達成するのに充分である一方、マルチウォールのカーボンナノチューブの質量分率を10%へ増加しても、さらなる改善はわずかにしかもたらされない。それに対して、前駆体として生の海藻を用いた場合、改善は5%よりも10質量%のマルチウォールのカーボンナノチューブの存在下で非常に顕著である。ここでもまた、この違いは生の海藻の炭化の間のカーボンナノチューブの部分的な消費に帰因する。
【0080】
この改善はさらに、電極材料の単位質量あたり利用可能なエネルギーを重量出力密度の関数として示しているラゴンプロットにおいて反映される。かかるプロットを図3aおよびbに示す。高出力密度でキャパシタから引き出し可能なエネルギーは、本複合材料を含有する電極を用いた場合のほうが、カーボンナノチューブを用いない前駆体炭化物のみを含有する電極よりも高い。
【0081】
電気化学キャパシタの出力Pは、式
【数3】

[式中、Rsは内部抵抗であり、通常、インピーダンススペクトルから測定される等価直列抵抗(ESR)に相当する]
によって与えられる。この式よれば、電極の導電性が増加すれば出力が増加する。
【0082】
ここでもまた、前駆体として純粋なバイオポリマー、例えばアルギン酸塩を用いた場合、質量分率5%のマルチウォールのカーボンナノチューブが、著しい改善を得るのに充分である一方、マルチウォールのカーボンナノチューブの質量分率を10%へさらに増加しても、さらなる改善はわずかしかもたらされない。それに対して、前駆体として生の海藻を用いた場合、改善は5%よりも10質量%のマルチウォールのカーボンナノチューブの存在下で非常に顕著である。マルチウォールのカーボンナノチューブの代わりにカーボンブラックを用いると、改善は得られなかった。
【0083】
繰り返しサイクルの間、本複合材料の容量の減少は、カーボンナノチューブを有さない炭質材料よりも小さい。例えば(図4)、公称質量分率10%のマルチウォールのカーボンナノチューブを用い、レッソニア ニグレッセンス炭化物を含む複合材料から製造された電極は、20000サイクル後に初期容量の約20%のみを損失したのに対して、カーボンナノチューブを添加しない同様の炭質材料に関しては30%近くの損失があった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブと炭質材料とを含む複合材料において、炭質材料が、ヘテロ原子を多く含むバイオポリマーまたは海藻の炭化残滓であり、該バイオポリマーまたは海藻の炭化残滓が導電性であり、且つXPSによって検出される少なくとも6%のヘテロ原子含有率を有することを特徴とする複合材料。
【請求項2】
カーボンナノチューブが、マルチウォールのカーボンナノチューブ、シングルウォールのカーボンナノチューブおよびカーボンナノファイバーまたはそれらの混合物を含む群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
複合材料中のカーボンナノチューブの質量分率が、少なくとも5%であることを特徴とする、請求項1に記載の複合材料。
【請求項4】
炭化残滓の導電性が、少なくとも0.2S/cmであることを特徴とする、請求項1に記載の複合材料。
【請求項5】
XPS法によって検出される炭化残滓の酸素含有率が、少なくとも6原子%であることを特徴とする、請求項1に記載の複合材料。
【請求項6】
XPS法によって検出される炭化残滓における窒素と酸素との含有率の合計が、少なくとも8原子%であることを特徴とする、請求項1に記載の複合材料。
【請求項7】
バイオポリマーが、海藻中に含有されるバイオポリマーであることを特徴とする、請求項1に記載の複合材料。
【請求項8】
バイオポリマーが、アルギン酸、アルギン酸塩、寒天、イオータカラギーナン、カッパカラギーナンおよびキチンを含む群の1つであることを特徴とする、請求項7に記載の複合材料。
【請求項9】
海藻が、紅藻、褐海藻または寒天を多く含む海藻(寒天植物)であることを特徴とする、請求項1あるいは7に記載の複合材料。
【請求項10】
海藻が、レッソニア ニグレッセンス(Lessonia Nigrescens)、メリストテカ セネガレンシス(Meristotheca Senegalensis)、およびハイプネア マスシフォーム(Hypnea Musciforme)を含む群の1つであることを特徴とする、請求項1あるいは7に記載の複合材料。
【請求項11】
炭質材料が、カーボンナノチューブの表面上にひろがっていることを特徴とする、請求項1に記載の複合材料。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか一項に記載の複合材料を得るための方法において、カーボンナノチューブを前駆体のバイオポリマーまたは海藻内で均質に分散させて、カーボンナノチューブとバイオポリマーまたは海藻とを含む前駆体複合材料を形成する工程、および該前駆体複合材料を不活性雰囲気下、550〜1000℃、好ましくは600〜900℃の範囲の温度で、いかなる活性化処理もせずに炭化する工程を含む方法。
【請求項13】
カーボンナノチューブが、マルチウォールのカーボンナノチューブ、シングルウォールのカーボンナノチューブおよびカーボンナノファイバーまたはそれらの混合物を含む群から選択されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
バイオポリマーが、海藻中に含有されるバイオポリマーであることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
バイオポリマーが、アルギン酸、アルギン酸塩、寒天、イオータカラギーナン、カッパカラギーナンおよびキチンを含む群の1つであることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
海藻が、紅藻、褐海藻または寒天を多く含む海藻(寒天植物)であることを特徴とする、請求項12あるいは14に記載の方法。
【請求項17】
海藻が、レッソニア ニグレッセンス、メリストテカ セネガレンシス、およびハイプネア マスシフォームを含む群の1つであることを特徴とする、請求項12あるいは14に記載の方法。
【請求項18】
炭化を、バイオポリマーまたは海藻の熱重量分析によって検出される質量損失が熱誘発される最高の温度レベルより低い温度で実施することを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
電気化学キャパシタ用電極において、電極が電荷蓄積材料、結合剤および随意に伝導性の助剤を含み、該電荷蓄積材料が請求項1から11までのいずれか一項に記載の複合材料であることを特徴とする電極。
【請求項20】
水性電解質を用いて、少なくとも230F/gの重量比容量が、0.2A/gの定電流で0Vから可逆性の充電/放電電圧の最大値の電圧範囲において得られることを特徴とする、請求項19に記載の電極。
【請求項21】
水性電解質を用いて、少なくとも220F/cm3の体積比容量が、0.2A/gの定電流で0Vから可逆性の充電/放電電圧の最大値の電圧範囲において得られることを特徴とする、請求項19に記載の電極。
【請求項22】
2つの電極および電解質を含み、
該電解質が水性電解質または有機電解質であり、
それぞれの電極が電荷蓄積材料、結合剤、および随意に伝導性助剤を含む電気化学キャパシタにおいて、
少なくとも1つの電極の電荷蓄積材料が請求項1から11までのいずれか一項に記載の複合材料であることを特徴とする電気化学キャパシタ。
【請求項23】
両方の電極の電荷蓄積材料が請求項1から11までのいずれか一項に記載の複合材料であることを特徴とする、請求項22に記載の電気化学キャパシタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【公表番号】特表2010−517918(P2010−517918A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549390(P2009−549390)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際出願番号】PCT/EP2008/051169
【国際公開番号】WO2008/098841
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(501090803)エスゲーエル カーボン ソシエタス ヨーロピア (47)
【氏名又は名称原語表記】SGL CARBON SE
【住所又は居所原語表記】Rheingaustrasse 182, D−65203 Wiesbaden, Germany
【出願人】(500379381)サントル ナショナル ドゥ ラ ルシャルシュ シアンティフィク (17)
【氏名又は名称原語表記】Centre National de la Recherche Scientifique
【住所又は居所原語表記】3 rue Michel Ange, FR−75016 Paris, France
【出願人】(508234383)
【氏名又は名称原語表記】L’UNIVERSITE D’ORLEANS
【住所又は居所原語表記】Chateau de la Source−BP6749−, FR−45067 Paris Cedex 2, France
【Fターム(参考)】