説明

バイオマスから生成した可燃性ガスを利用したアスファルトプラント

【課題】 バイオマスから生成した可燃性ガスをドライヤのバーナの燃料として利用し、CO2の削減を図るようにしたアスファルトプラントを提供する。
【解決手段】 アスファルトプラントの近傍にバイオマスを熱分解してガス化処理することで可燃性ガスを生成するガス化炉24を併設し、その下流に可燃性ガス中のダストを除塵処理する集塵機33を配設すると共に、その下流には可燃性ガスを一時的に貯蔵するガス貯蔵タンク40を配設する。そして、例えば木質系のバイオマスを前記ガス化炉24に投入し、順次ガス化処理して可燃性ガスを生成し、その可燃性ガスを集塵機33にて除塵処理した後、ガス貯蔵タンク40へ一時的に貯蔵する一方、この貯蔵した可燃性ガスをドライヤ1のバーナ5へ燃料として供給し、化石燃料と共に混焼させて利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路舗装材であるアスファルト混合物を製造するアスファルトプラントに関し、特に廃木材や間伐材などの木質系のバイオマスを熱分解してガス化処理することで得られる可燃性ガスをドライヤのバーナの燃料として利用するようにしたアスファルトプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
アスファルトプラント工場では、道路舗装材を製造する各種設備が設置されており、使用されるエネルギーは主として骨材加熱に使用されるA重油または都市ガスなどの化石燃料と、プラント稼働に使用される電力である。このアスファルトプラント工場においても地球温暖化防止のためのCO2(二酸化炭素)の排出量抑制が命題となっており、CO2排出量を削減する義務がある。アスファルトプラントのCO2排出量はアスファルト混合物生産量の原単位から概算すると、燃料で約25kg−CO2/トン、電力で約5kg−CO2/トンであり、燃料によるCO2排出量が大部分を占めている。
【0003】
現在、アスファルトプラントに使用されている燃料の発熱量から見た有効熱の効率は80%程度であり、ドライヤの排ガス温度が100〜120℃となっていてこれ以上に排ガス温度を下げることは結露の問題があり、加熱効率を高めることが限界に達していて抜本的なCO2削減の方法は極めて困難な状況にある。
【0004】
そのような状況にあって、本出願人は、アスファルトプラントのCO2削減のために、CO2循環物質(CO2排出にカウントされない)である廃木材や間伐材などの木質系のバイオマスを微粉化した木質系燃料をドライヤのバーナの燃焼域に吹き込んで燃焼させることにより、化石燃料の使用量を減らしてCO2の削減を図るようにした発明を出願済みである。
【特許文献1】特開2005−16200号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、最近、木質系のバイオマスをガス化炉にて熱分解してガス化処理することにより水素やメタンなどを含んだ可燃性ガスを生成し、この可燃性ガスをガスタービンやガスエンジンなどに供給して発電を行うようにしたシステムが実用化されつつある。そして、本出願人は前記システムに着目し、木質系のバイオマスをガス化炉にて熱分解してガス化処理することにより得られる可燃性ガスを、アスファルトプラントに備えられるドライヤのバーナの燃料として利用するようにすれば、上記発明とはまた別の形で化石燃料の使用量を減らせてCO2の削減を図れるのではないかと考えた。
【0006】
本発明は上記の点に鑑み、バイオマスから生成した可燃性ガスをドライヤのバーナの燃料として利用し、CO2の削減を図るようにしたアスファルトプラントを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1記載のバイオマスから生成した可燃性ガスを利用したアスファルトプラントは、アスファルト混合物を製造するアスファルトプラントの近傍にバイオマスを熱分解してガス化処理することで可燃性ガスを生成するガス化炉を併設し、該ガス化炉の下流側にはガス化炉で生成した可燃性ガス中のダストを除塵処理する集塵機を配設すると共に、該集塵機にて除塵処理した可燃性ガスを前記アスファルトプラントに設置されるドライヤのバーナの燃料として供給するようにしたことを特徴としている。
【0008】
また、請求項2記載のバイオマスから生成した可燃性ガスを利用したアスファルトプラントは、前記集塵機の下流側に、プラント停止中にガス化炉にて生成した可燃性ガスを一時的に貯蔵するガス貯蔵タンクを配設したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
以上のように本発明に係る請求項1記載のバイオマスから生成した可燃性ガスを利用したアスファルトプラントによれば、アスファルト混合物を製造するアスファルトプラントの近傍にバイオマスを熱分解してガス化処理することで可燃性ガスを生成するガス化炉を併設し、該ガス化炉の下流側にはガス化炉で生成した可燃性ガス中のダストを除塵処理する集塵機を配設すると共に、該集塵機にて除塵処理した可燃性ガスを前記アスファルトプラントに設置されるドライヤのバーナの燃料として供給するようにしたので、バイオマスから生成される可燃性ガスをドライヤのバーナの燃料として利用して化石燃料の使用量を減少させることができ、CO2の削減を図ることができる。
【0010】
また、請求項2記載のバイオマスから生成した可燃性ガスを利用したアスファルトプラントによれば、前記集塵機の下流側に、プラント停止中にガス化炉にて生成した可燃性ガスを一時的に貯蔵するガス貯蔵タンクを配設したので、プラント停止中に貯蔵した可燃性ガスをプラントの運転に応じて適宜量ずつ供給することにより、ドライヤのバーナの燃料として安定供給することが可能となり、化石燃料の使用量を確実に抑えてCO2の削減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の請求項1記載のバイオマスから生成した可燃性ガスを利用したアスファルトプラントにあっては、アスファルトプラントの近傍に、例えば廃木材や間伐材などの木質系のバイオマスを熱分解してガス化処理することで可燃性ガスを生成するガス化炉を併設すると共に、該ガス化炉の下流側に可燃性ガス中のダストを除塵処理する集塵機を配設する。そして、前記木質系のバイオマスをガス化炉にてガス化処理して水素やメタンなどを豊富に含む自燃可能な程度の可燃性ガスを生成し、この可燃性ガスを下流の集塵機へと送って可燃性ガスに対して散水を行ってガス中に含まれる灰分などのダストを除塵処理した後、この清浄化された可燃性ガスをアスファルトプラントのドライヤのバーナへ燃料として供給する。そして、バーナにおいては、メインの燃料であるA重油や都市ガスなどの化石燃料と共に前記可燃性ガスを混焼させるようにして利用する。
【0012】
このように、バイオマスをガス化炉にてガス化処理することによって生成する可燃性ガスを、アスファルト混合物を製造する際の骨材加熱用バーナの燃料の一部として補助的に利用することにより、その発熱量分に相当する化石燃料の使用量を抑えることができ、アスファルトプラント工場におけるCO2の削減を図ることができる。
【0013】
また、請求項2記載のバイオマスから生成した可燃性ガスを利用したアスファルトプラントにあっては、集塵機の下流側に、プラント停止中にガス化炉にて生成した可燃性ガスを一時的に貯蔵しておくためのガス貯蔵タンクを配設する。そして、プラント運転時には、ガス化炉にて生成した可燃性ガスはそのままドライヤのバーナへ燃料として供給していく。一方、プラント停止時には、ガス化炉にて生成した可燃性ガスは貯蔵タンクへ送って貯蔵していき、この貯蔵した可燃性ガスは次回プラント運転時に適宜量ずつバーナへ供給して利用する。
【0014】
このように、プラントの停止中にバイオマスからガス化炉にて生成した可燃性ガスをガス貯蔵タンクに一時的に貯蔵し、この貯蔵した可燃性ガスをプラント運転時に適宜量ずつ供給するようにしたことにより、ドライヤのバーナの燃料として安定して供給することが可能となり、化石燃料の使用量を確実に抑えてCO2の削減を図ることができる。また、効率面から連続運転が求められるガス化炉にて連続的に生成される可燃性ガスを、間欠運転を余儀なくされるアスファルトプラントのドライヤのバーナの燃料として好適に利用することが可能となる。
【実施例】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0016】
図中の1は公知のアスファルトプラントの骨材を加熱するドライヤであって、内周部に多数の掻き上げ羽根(図示せず)を周設した円筒状のドラム2を機台3上に回転自在に傾斜支持し、駆動装置(図示せず)により所定の速度で回転させるようにしており、ドラム2の一端部のホットホッパ4に配設したバーナ5よりドラム2内に熱風を送り込む一方、他端部のコールドホッパ6に連結した排気煙道7の末端に配設した排風機8にて排ガスを吸引してドラム2内を通過する高温ガス流を維持すると共に、集塵機9を経由させて排ガスを煙突10より放出している。
【0017】
そして、粒度別に骨材を貯蔵している骨材ホッパ群(図示せず)から骨材を所定量ずつ払い出し、払い出した骨材をベルトコンベヤ11を介してドラム2内に送り込み、掻き上げ羽根で掻き上げながらドラム2内を転動流下させる間に高温ガス流と接触させ、所望温度まで昇温させてホットホッパ4に配設した排出部12から排出している。
【0018】
ドラム2より排出された骨材は垂直搬送装置であるバケットエレベータ13によってプラント本体14上部まで持ち上げられ、バケットエレベータ13の排出シュート15を滑り落ちてプラント本体14最上部の振動篩16に流れ込み、ここで粒度別に篩い分けられて骨材貯蔵ビン17の各区画室に貯蔵される。
【0019】
骨材貯蔵ビン17の各区画室の下端にはそれぞれ骨材排出用の排出ゲート(図示せず)を備えており、その下位には重量検出器にて支持する骨材計量槽18を配設すると共に、石粉貯蔵ビン19のスクリューフィーダ20にて供給される石粉を計量する石粉計量槽21、アスファルトを計量するアスファルト計量槽22を配設し、更にその下位にはミキサ23を配設しており、所定量の各材料を上記各計量槽にて計量し、ミキサ23にて混合調整して所望のアスファルト混合物を生産している。
【0020】
24は各種バイオマスの内、特に廃木材や間伐材などの木質系のバイオマスを加熱分解してガス化処理することにより可燃性ガスを生成する、間接加熱式のキルン状のガス化炉であって、外筒25と、該外筒25内に貫通させた円筒状の内筒26、及び熱風供給用の熱風炉27とから主体を構成している。前記外筒25は基台28に固定している一方、内筒26は基台28上に回転自在に傾斜支持し、駆動装置(図示せず)により所定の速度で回転させるようにしていると共に、前記熱風炉27に備えたバーナ29から供給される500〜1000℃程度の熱風を外筒25内に送り込むようにしており、これによってベルトコンベヤ30を介して内筒26内に投入される、例えば廃木材や間伐材などを細かく粉砕してなる木質系のバイオマスを間接的に加熱し、熱分解させてガス化処理することで水素やメタンなどを豊富に含む自燃可能な程度の可燃性ガスを生成できるようにしている。また、内筒26の終端部には内筒26内で生成された可燃性ガスを導出するガス導出管31を配設している一方、その下部には木質系のバイオマスを熱分解することによって生じるチャーや灰分などの残渣を排出する排出ホッパ32を備えている。
【0021】
なお、本実施例においては、ガス化炉として間接加熱式のものを採用しているが、特にこれに限定するものではなく、例えば直接加熱式である固定床式や流動床式のものなども有効に採用することができる。また、本実施例では、熱風炉27からの熱風をガス化炉24の外筒25内に導入してバイオマスを加熱するようにしているが、ドライヤ1の排気煙道7の熱風を利用してこれを導入させるようにすることもできる。
【0022】
33は前記ガス導出管31を介して送られてくる可燃性ガスに対して散水を行って可燃性ガス中の灰分やタール分などのダストを除塵処理する集塵機であって、中空状の集塵機本体34の上部には可燃性ガスに向けてシャワー状に散水する噴射ノズル35を備えていると共に、該噴射ノズル35は集塵機本体34下部の貯水槽36と給水管37にて連結しており、ポンプ38にて汲み上げて循環使用するようにしている。また、集塵機本体33の上端部にはダストが除去されて清浄化された可燃性ガスを導出するガス導出管39を配設している。なお、集塵機33は、図示例では湿式のスクラバーを採用したが、耐熱性のセラミックフィルターを使用した乾式の集塵機を採用しても良い。
【0023】
40は前記ガス導出管39を介して送られてくる浄化済みの可燃性ガスを一時的に貯蔵するガス貯蔵タンクであって、適当な圧力をかけて高圧の気体状態、或いは液化させた状態にて貯蔵可能としている。41はこの貯蔵した可燃性ガスをドライヤ1のバーナ5に燃料として供給するガス供給管であり、プラントの運転時に適宜量ずつ供給を行うようにしている。なお、前記ガス供給管41を途中で分岐させて、この分岐管42より貯蔵した可燃性ガスの一部を熱風炉27のバーナ29にも燃料として供給するようにしてもよい。
【0024】
したがって、前記ドライヤ1のバーナ5は、必要であれば熱風炉27のバーナ29も、従来から使用されているA重油や都市ガスなどの化石燃料と共に、木質系のバイオマスから生成した可燃性ガスを混焼可能としたものを採用している。このとき、化石燃料と可燃性ガスの混合割合は適宜決定すればよいが、例えば1:1程度に設定すればバーナ5の燃焼状態を安定に保ちながらも、効果的に化石燃料の使用量を減らせてCO2の削減を図ることができる。
【0025】
なお、本実施例においては、ガス化炉24にて生成された可燃性ガスは全てガス貯蔵タンク40に一旦貯蔵し、プラントが運転中であればすぐさま貯蔵した可燃性ガスを送り出すようにしているが、必ずしもこのようにする必要はなく、例えば集塵機33と、ガス貯蔵タンク40及びドライヤ1のバーナ5とをそれぞれ別々のガス供給管にて連結し、プラント運転時には可燃性ガスをガス貯蔵タンク40へは送り出さずにそのままバーナ5へ供給する一方、プラント停止時には可燃性ガスをガス貯蔵タンク40側へ送り出して一時的に貯蔵しておき、次回のプラント運転時にこの貯蔵した可燃性ガスを適宜量ずつバーナ5へ供給するようにしてもよい。
【0026】
また、このようなガス貯蔵タンクを備えることによって、効率面から連続運転が求められるガス化炉にて連続的に生成される可燃性ガスを、間欠運転を余儀なくされるアスファルトプラントのドライヤのバーナの燃料として好適に利用することが可能となるが、特に必要がないようであればガス貯蔵タンクを省略することもできる。
【0027】
しかして、バイオマスをガス化して生成される可燃性ガスをアスファルトプラントに設置されるドライヤ1のバーナ5の燃料として利用するときには、先ず、熱風炉27のバーナ29を燃焼させて熱風をガス化炉24の外筒25内へ送り込む一方、内筒26内に例えば廃木材や間伐材などをチップ状にした木質系のバイオマスを投入していき、順次間接加熱による熱分解をさせてガス化処理を行い、水素やメタンなどを豊富に含んだ自燃可能な程度の可燃性ガスを生成していくと共に、この可燃性ガスは集塵機33にて除塵処理した後、一時的にガス貯蔵タンク40に貯蔵していく。
【0028】
そして、アスファルトプラントの運転時には、前記ガス貯蔵タンク40に貯蔵しておいた可燃性ガスをドライヤ1のバーナ5へ燃料として適宜量ずつ供給していく。バーナ5では、メインの燃料としているA重油や都市ガスなどの化石燃料と共に、ガス貯蔵タンク40より供給されてくる可燃性ガスを混焼させるようにして燃焼させ、ドラム2内の骨材の加熱乾燥を行う。
【0029】
このように、バイオマスをガス化炉にてガス化処理することによって生成する可燃性ガスを、アスファルトプラントに設置されるドライヤのバーナに使用するA重油や都市ガスなどの化石燃料の一部と代えて利用するようにしたので、その分の化石燃料の使用量を減らせ、結果としてアスファルトプラント工場におけるCO2の排出量の削減を図ることができる。また、ガス化炉にて生成する可燃性ガスをガス貯蔵タンクへ一時的に貯蔵するようにしたので、間欠運転の多いアスファルトプラントにおいても好適に可燃性ガスを利用することができると共に、バーナの燃料として安定供給することが可能となって、化石燃料の使用量を確実に抑えてCO2の削減を図ることができる。
【0030】
なお、ガス化炉24にて木質系のバイオマスを熱分解した際に生じるチャーは燃焼処理することにより高温の熱量を発生するものであるため、例えばこのチャーを熱風炉27に送って燃焼処理させるようにすれば、バーナ29の燃費を抑える効果が期待できる。
【0031】
なお、本実施例においては、ドライヤ1として新規骨材を加熱するドライヤを採用しているが、アスファルト舗装廃材を加熱する廃材再生用ドライヤであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る、バイオマスから生成した可燃性ガスを利用したアスファルトプラントの一実施例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0033】
1…ドライヤ 5、29…バーナ
14…プラント本体 24…ガス化炉
25…外筒 26…内筒
27…熱風炉 33…集塵機
40…ガス貯蔵タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルト混合物を製造するアスファルトプラントの近傍にバイオマスを熱分解してガス化処理することで可燃性ガスを生成するガス化炉を併設し、該ガス化炉の下流側にはガス化炉で生成した可燃性ガス中のダストを除塵処理する集塵機を配設すると共に、該集塵機にて除塵処理した可燃性ガスを前記アスファルトプラントに設置されるドライヤのバーナの燃料として供給するようにしたことを特徴とするバイオマスから生成した可燃性ガスを利用したアスファルトプラント。
【請求項2】
前記集塵機の下流側に、プラント停止中にガス化炉にて生成した可燃性ガスを一時的に貯蔵するガス貯蔵タンクを配設したことを特徴とする請求項1記載のバイオマスから生成した可燃性ガスを利用したアスファルトプラント。

【図1】
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【公開番号】特開2006−299675(P2006−299675A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−124030(P2005−124030)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(000226482)日工株式会社 (177)
【Fターム(参考)】