説明

バイオマスの処理方法及び処理装置

【課題】下水汚泥脱水ケーキなどのバイオマスから資源として有効利用できる乾燥バイオマス及び発酵酸含有水を得ることができて、バイオマスの資源化を効率的に行うことができるバイオマスの処理方法及び処理装置を提供すること。
【解決手段】バイオマスを発酵させることにより発酵由来の酸が生成された発酵バイオマスを得る発酵工程と、前記発酵工程より得られた前記発酵バイオマスを前記発酵由来の酸の蒸発が生じる温度・圧力条件で熱媒体である油中にて脱水することにより、油・乾燥バイオマス混合物と前記発酵由来の酸を含有する発酵酸含有蒸気とを得る乾燥工程と、前記乾燥工程より得られた前記油・乾燥バイオマス混合物を脱油して乾燥バイオマスを得る脱油工程と、前記乾燥工程より得られた前記発酵酸含有蒸気を凝縮させることにより前記発酵由来の酸を含有する発酵酸含有水を得る発酵酸回収工程とを備えるバイオマスの処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性汚泥などのバイオマスから資源として有効利用できる乾燥バイオマス及び発酵酸含有水とを得ることができて、バイオマスの資源化を効率的に行うことができるようにした、バイオマスの処理方法及び処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、バイオマスは、原料、燃料として利用できる生物起源の有機物であって、木材、乾燥草木、農産廃棄物、畜産廃棄物、食品・飲料廃棄物、生物学的廃水処理設備や下水処理場における初沈汚泥、余剰汚泥などの有機性汚泥やその脱水汚泥などがこれに該当する。このようなバイオマスを資源として有効利用するための技術として、バイオマスを熱媒体である油中にて脱水するという油中乾燥を行って、燃料として利用可能な高カロリーの乾燥バイオマスを得ることが知られている。
【0003】
例えば、特開2004−209462号公報(特許文献1)には、ヤシガラ、チップダストなどの植物由来バイオマスを粉砕し、該バイオマス粉砕物について油中乾燥を行って乾燥バイオマスを得るようにした方法が示されている。また、特開平7−278581号公報(特許文献2)には、有機質汚泥、余剰汚泥などを原料として、これらの原料をクッカー内の油中に浸漬して油中乾燥を行って、乾燥バイオマスである燃料品を得るようにした方法が示されている。
【0004】
しかしながら、これら特許文献1、2の前述した方法では、バイオマスを油中にて脱水することに伴ってバイオマス中の水分が蒸発し、この蒸気が冷却されて凝縮した加熱脱水分離液が生成するので、この加熱脱水分離液を排水するために浄化処理することが必要となる。
【0005】
また、バイオマスを資源として有効利用するための技術として、酸発酵を用いることにより、下水処理場内での生物的窒素除去における脱窒菌の栄養源として有効利用できる有機酸含有水を得ることが知られている。
【0006】
例えば、特開2002−301498号公報(特許文献3)には、下水処理に際し、凝集剤を添加する最初沈殿池で沈んだ汚泥(沈降SS)を酸発酵槽にて酸発酵させ、酸発酵により有機酸が生成した発酵汚泥を脱水機で脱水し、発酵由来の有機酸を高濃度に含む脱水ろ液を生物処理槽へ有機炭素源もしくは水素付与体として供給するようにした方法が示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献3の前述した方法では、酸発酵した発酵汚泥は、脱水機では脱水し難いため、脱水のための凝集剤の添加量が多くなり、コストが嵩むとともに、下水汚泥脱水ケーキをそのままでは燃料として用いることができないため、埋め立て処分せずに資源として燃料化するためには、乾燥あるいは炭化などの処理が必要となる。また、得られる脱水ろ液には、脱水機の機能的な限界から未回収の固形物、無機物が多量に含まれるので、利用用途が前述した生物的窒素除去処理などに限定されてしまい、他の用途に利用するためには、脱水ろ液からさらに固形物や無機物を分離することが必要となり、コストが嵩むことになる。
【特許文献1】特開2004−209462号公報(第4−9頁、図1)
【特許文献2】特開平7−278581号公報(第2−3頁)
【特許文献3】特開2002−301498号公報(第2−3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明の課題は、有機性汚泥などのバイオマスから資源として有効利用できる乾燥バイオマス及び発酵酸含有水とを得ることができて、バイオマスの資源化を効率的に行うことができるようにした、バイオマスの処理方法及び処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を講じている。
【0010】
請求項1の発明は、バイオマスを発酵させることにより発酵由来の酸が生成された発酵バイオマスを得る発酵工程と、前記発酵工程より得られた前記発酵バイオマスを前記発酵由来の酸の蒸発が生じる温度・圧力条件で脱水することにより、乾燥バイオマスと前記発酵由来の酸を含有する発酵酸含有蒸気とを得る乾燥工程と、前記乾燥工程より得られた前記発酵酸含有蒸気を凝縮させることにより前記発酵由来の酸を含有する発酵酸含有水を得る発酵酸回収工程とを含むことを特徴とするバイオマスの処理方法である。
【0011】
請求項2の発明は、バイオマスを発酵させることにより発酵由来の酸が生成された発酵バイオマスを得る発酵工程と、前記発酵工程より得られた前記発酵バイオマスを前記発酵由来の酸の蒸発が生じる温度・圧力条件で熱媒体である油中にて脱水することにより、油・乾燥バイオマス混合物と前記発酵由来の酸を含有する発酵酸含有蒸気とを得る乾燥工程と、前記乾燥工程より得られた前記油・乾燥バイオマス混合物を脱油して乾燥バイオマスを得る脱油工程と、前記乾燥工程より得られた前記発酵酸含有蒸気を凝縮させることにより前記発酵由来の酸を含有する発酵酸含有水を得る発酵酸回収工程とを含むことを特徴とするバイオマスの処理方法である。
【0012】
請求項3の発明は、請求項2記載のバイオマスの処理方法において、前記発酵工程において有機性汚泥を酸発酵させることにより有機酸が生成した発酵汚泥を得ること、前記乾燥工程において前記発酵汚泥を前記有機酸の蒸発が生じる温度・圧力条件で熱媒体である油中にて脱水することにより、油・乾燥汚泥混合物と有機酸含有蒸気とを得ること、前記脱油工程において前記油・乾燥汚泥混合物を脱油して乾燥汚泥を得ること、前記発酵酸回収工程において前記有機酸含有蒸気を凝縮させることにより有機酸含有水を得ることを特徴とするものである。
【0013】
請求項4の発明は、バイオマスを発酵させることにより発酵由来の酸が生成された発酵バイオマスを得る発酵装置と、前記発酵装置より得られた前記発酵バイオマスを前記発酵由来の酸の蒸発が生じる温度・圧力条件で脱水することにより、乾燥バイオマスと前記発酵由来の酸を含有する発酵酸含有蒸気とを得る乾燥装置と、前記乾燥工程より得られた前記発酵酸含有蒸気を凝縮させることにより前記発酵由来の酸を含有する発酵酸含有水を得る発酵酸回収装置とを含むことを特徴とするバイオマスの処理装置である。
【0014】
請求項5の発明は、バイオマスを発酵させることにより発酵由来の酸が生成された発酵バイオマスを得る発酵装置と、前記発酵装置より得られた前記発酵バイオマスを前記発酵由来の酸の蒸発が生じる温度・圧力条件で熱媒体である油中にて脱水することにより、油・乾燥バイオマス混合物と前記発酵由来の酸を含有する発酵酸含有蒸気とを得る油中乾燥装置と、前記油中乾燥装置より得られた前記油・乾燥バイオマス混合物を脱油して乾燥バイオマスを得る油分離装置と、前記油中乾燥装置より得られた前記発酵酸含有蒸気を凝縮させることにより前記発酵由来の酸を含有する発酵酸含有水を得る発酵酸回収装置とを含むことを特徴とするバイオマスの処理装置である。
【0015】
請求項6の発明は、請求項5記載のバイオマスの処理装置において、前記発酵装置において有機性汚泥を酸発酵させることにより有機酸が生成した発酵汚泥を得ること、前記油中乾燥装置において前記発酵汚泥を前記有機酸の蒸発が生じる温度・圧力条件で熱媒体である油中にて脱水することにより、油・乾燥汚泥混合物と有機酸含有蒸気とを得ること、前記油分離装置において前記油・乾燥汚泥混合物を脱油して乾燥汚泥を得ること、前記発酵酸回収装置において前記有機酸含有蒸気を凝縮させることにより有機酸含有水を得ることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1のバイオマスの処理方法又は請求項4のバイオマスの処理装置は、有機性汚泥などのバイオマスを発酵させることにより発酵由来の酸が生成された発酵バイオマスを得、次いでこの発酵バイオマスを前記発酵由来の酸の蒸発が生じる温度・圧力条件で脱水することにより、乾燥バイオマスと前記発酵由来の酸を含有する発酵酸含有蒸気とを得るようにしている。そして、前記得られた乾燥バイオマスとともに、前記発酵酸含有蒸気を凝縮させることにより前記発酵由来の酸を含有する発酵酸含有水を得るようにしている。したがって、バイオマスから資源として有効利用できる乾燥バイオマス及び発酵酸含有水とを得ることができ、しかも、これらの資源化に際し、従来行われていたところの、乾燥に伴う加熱脱水分離液の排水のための浄化処理が不要で、また、発酵酸含有蒸気の凝縮による前記発酵酸含有水には固形物や無機物がほとんど含まれないのでこれらを分離する前記発酵由来の酸の精製処理をしなくてすみ、バイオマスの資源化を効率的に行うことができる。
【0017】
請求項2,3のバイオマスの処理方法又は請求項5,6のバイオマスの処理装置は、有機性汚泥などのバイオマスを発酵させることにより発酵由来の酸が生成された発酵バイオマスを得、次いでこの発酵バイオマスを前記発酵由来の酸の蒸発が生じる温度・圧力条件で熱媒体である油中にて脱水することにより、油・乾燥バイオマス混合物と前記発酵由来の酸を含有する発酵酸含有蒸気とを得るようにしている。そして、前記油・乾燥バイオマス混合物を脱油して乾燥バイオマスを得る一方、前記発酵酸含有蒸気を凝縮させることにより前記発酵由来の酸を含有する発酵酸含有水を得るようにしている。したがって、バイオマスから資源として有効利用できる乾燥バイオマス及び発酵酸含有水とを得ることができ、しかも、これらの資源化に際し、従来行われていたところの、油中乾燥に伴う加熱脱水分離液の排水のための浄化処理が不要で、また、油中乾燥による前記発酵酸含有水には固形物や無機物がほとんど含まれないのでこれらを分離する前記発酵由来の酸の精製処理をしなくてすみ、バイオマスの資源化を効率的に行うことができる。さらに、油中乾燥により得られた前記乾燥バイオマスには、油分が10〜30%程度含まれているため、高カロリーな乾燥バイオマスとなり、燃料としての適用範囲を広げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。図1は本発明の一実施形態によるバイオマスの処理方法を実施する処理装置の構成を示すブロック図である。
【0019】
図1において、1は発酵装置、2は油中乾燥装置、3は油分離装置、4は発酵酸回収装置である。
【0020】
本発明の処理方法は、まず、発酵装置(発酵槽)1において、バイオマスを発酵させることにより発酵由来の酸が生成された発酵バイオマスを得る。処理対象物が代表的なバイオマスである下水汚泥脱水ケーキの場合、下水汚泥脱水ケーキ(含水率80%程度)を酸発酵させることにより、酢酸を主体とする有機酸が生成された発酵汚泥を得る。酸発酵の好ましい条件は、温度:15〜55℃,より好ましくは30〜50℃、滞留時間:6時間〜5日間,より好ましくは1日間〜2日間、pH:中性〜酸性(発酵の進行に伴って自然に推移し、メタン発酵に進まないようにpH6.0以下に制御する)である。
【0021】
次に、油中乾燥装置2において、発酵装置1による発酵工程より得られた発酵バイオマスを前記発酵由来の酸の蒸発が生じる温度・圧力条件で熱媒体である油中にて脱水し、発酵バイオマスを油中乾燥することにより、油・乾燥バイオマス混合物と前記発酵由来の酸を含有する発酵酸含有蒸気とを得る。媒体油としては廃食用油、灯油を挙げることができる。処理対象物が下水汚泥脱水ケーキの場合、前記発酵汚泥を0.3MPa程度の加圧下にて前記酢酸の沸点以上の温度である150℃程度の温度で油中にて加熱脱水することにより、油・発酵汚泥混合物と有機酸含有蒸気とを得る。なお、前記媒体油として廃食用油を用いると、廃食用油の再利用(処理)も同時にできるので好ましい。
【0022】
次いで、油分離装置3において、油中乾燥装置2による乾燥工程より得られた油・乾燥バイオマス混合物を脱油して乾燥バイオマスを得る。油分離装置3としては遠心式の油分離機が使用できる。処理対象物が下水汚泥脱水ケーキの場合、前記油・乾燥汚泥混合物を脱油して乾燥汚泥(例えば、含水率10%程度、含油率10〜30%程度)を得る。この得られた乾燥汚泥は、燃料製品として使用することができる。なお、脱油により油・乾燥汚泥混合物から分離された油は、熱媒体として再利用することができる。
【0023】
また、発酵酸回収装置(凝縮器)4において、油中乾燥装置2による乾燥工程より得られた発酵酸含有蒸気を冷却によって凝縮することにより、発酵由来の酸を高濃度に含む発酵酸含有水(発酵酸含有凝縮水)を得る。処理対象物が下水汚泥脱水ケーキの場合、前記有機酸含有蒸気を冷却によって凝縮することにより、発酵による酢酸を主体とする有機酸を高濃度に含む有機酸含有水(有機酸含有凝縮水)を得る。この得られた有機酸含有水は、このままで、下水処理場内での生物的窒素除去における脱窒プロセスの水素供与体及び有機炭素源として利用することができる。なお、前記油中乾燥装置2において減圧により発酵酸含有蒸気を得る場合は、発酵酸回収装置(凝縮器)4において圧力を常圧に戻すことによって発酵酸含有蒸気を凝縮させて発酵酸含有水を得るようにすればよい。
【0024】
なお、本発明では、加水分解によってグルコース(乳酸菌の最も利用しやすい糖)に変換可能な多糖類を含むバイオマス(例えば、焼酎蒸留粕など)を処理対象物とし、発酵工程において前記バイオマスを乳酸発酵させることにより乳酸(L−乳酸)が生成された発酵バイオマスを得ることも可能である。この乳酸発酵と次いで油中乾燥とを行うことにより、前記バイオマスから生分解性プラスチックの原料として使用できる乳酸と、燃料として使用できる乾燥汚泥とを得ることができる。
【0025】
また、前記の実施形態では、発酵バイオマスを発酵由来の酸の蒸発が生じる温度・圧力条件で脱水する発酵バイオマスの脱水を、乾燥装置として油中にて脱水する油中乾燥装置2を用いて行うようにしている。これに限らず、本発明では、減圧装置(例えば、真空ポンプ等)を備えた減圧式乾燥装置、あるいは、処理対象物を収納する容器の外周に加熱手段(例えば、電気ヒーター、熱媒体を流通させるジャケット等)を設けた間接加熱式乾燥装置、あるいは、処理対象物を収納する容器の内部に直接熱を与える加熱手段(例えば、熱風を直接容器内に供給する熱風供給装置、電気ヒーター等)を設けた直接加熱式乾燥装置などにより、発酵バイオマスの脱水を行って乾燥バイオマスと発酵由来の酸を含有する発酵酸含有蒸気とを得るようにすることもでき、この場合には油分離装置3は不要となる。
【0026】
なお、本発明の処理対象とするバイオマスの種類については、特に制限されないが、例えば、下水処理場で生じる混合汚泥(初沈汚泥と余剰汚泥との混合汚泥)、食品加工工場で生じる排水処理汚泥、飲料製造工場で生じるビール酵母滓や焼酎滓、などの微生物由来のバイオマス及びその事前処理物などを挙げることができる。
【実施例】
【0027】
前記図1に示した構成を模擬した実験装置により、本発明の処理方法を確かめるための実験を行った。処理対象物には、バイオマスの代表例であるところの下水汚泥脱水ケーキ(含水率80%、下水処理における初沈汚泥(生汚泥)と余剰汚泥とを2:1の割合で混合し、それを脱水したもの)を用いた。
【0028】
実験は、実施例として、酸生成槽にて前記下水汚泥脱水ケーキを50℃の状態で1日間、通気を施さずに放置することで酸発酵させ、この酢酸を主体とする有機酸が生成された発酵汚泥の油中乾燥処理を行った。また、比較例として、前記下水汚泥脱水ケーキを酸発酵させず、この無発酵の下水汚泥脱水ケーキの油中乾燥処理を行った。
【0029】
図2は本発明に係る実験装置(オートクレーブ)の概略構成を示す構成説明図である。容量15リットルのオートクレーブ11内に3kgの前記発酵汚泥と6kgのサラダ油(熱媒体)とを投入し、これらを電磁誘導攪拌機12で攪拌しながら、外側の電気炉13によって加熱した。オートクレーブ11内の乾燥条件は、保圧弁14を調整することによる圧力で制御し、乾燥圧力:0.3MPa(設定値)、乾燥温度:147℃(実測値)とし、また、乾燥時間は120分とした。このような乾燥条件にて前記発酵汚泥の油中乾燥処理を行った。同様に、比較例として、前記無発酵の下水汚泥脱水ケーキの油中乾燥処理を行った。
【0030】
そして、前記発酵汚泥の油中乾燥処理を行うことで得られた油・発酵汚泥混合物をオートクレーブ11内から取り出し、遠心式油分離機によって脱油して乾燥汚泥(含水率9%、含油率30%)を得た。この乾燥汚泥は、5400kcal/kgの熱量を有しており、石炭との混焼燃料として十分利用できることが確認できた。
【0031】
また、発酵汚泥の油中乾燥処理を行うことでオートクレーブ11内で生成する有機酸含有蒸気を外部の凝縮器15に導き、凝縮器15にて冷却によって凝縮させることにより有機酸含有水(有機酸含有凝縮水)を得た。この得られた有機酸含有水の性状を表1に示す(表1では「凝縮水」と記載してある)。同様に、比較例の下水汚泥脱水ケーキの油中乾燥処理を行うことで得られた凝縮水の性状を表1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
表1から分かるように、実施例では、比較例に比べて有機酸濃度が約17倍高く、酢酸を主体とし生分解性の高い有機酸を高濃度に含む有機酸含有水(有機酸含有凝縮水)が得られた。この得られた有機酸含有水は、その性状から、このままで、下水処理場内での生物的窒素除去における脱窒プロセスの水素供与体及び有機炭素源として使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態によるバイオマスの処理方法を実施する処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る実験装置の概略構成を示す構成説明図である。
【符号の説明】
【0035】
1…発酵装置
2…油中乾燥装置
3…油分離装置
4…発酵酸回収装置
11…オートクレーブ
12…電磁誘導攪拌機
13…電気炉
14…保圧弁
15…凝縮器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスを発酵させることにより発酵由来の酸が生成された発酵バイオマスを得る発酵工程と、前記発酵工程より得られた前記発酵バイオマスを前記発酵由来の酸の蒸発が生じる温度・圧力条件で脱水することにより、乾燥バイオマスと前記発酵由来の酸を含有する発酵酸含有蒸気とを得る乾燥工程と、前記乾燥工程より得られた前記発酵酸含有蒸気を凝縮させることにより前記発酵由来の酸を含有する発酵酸含有水を得る発酵酸回収工程とを含むことを特徴とするバイオマスの処理方法。
【請求項2】
バイオマスを発酵させることにより発酵由来の酸が生成された発酵バイオマスを得る発酵工程と、前記発酵工程より得られた前記発酵バイオマスを前記発酵由来の酸の蒸発が生じる温度・圧力条件で熱媒体である油中にて脱水することにより、油・乾燥バイオマス混合物と前記発酵由来の酸を含有する発酵酸含有蒸気とを得る乾燥工程と、前記乾燥工程より得られた前記油・乾燥バイオマス混合物を脱油して乾燥バイオマスを得る脱油工程と、前記乾燥工程より得られた前記発酵酸含有蒸気を凝縮させることにより前記発酵由来の酸を含有する発酵酸含有水を得る発酵酸回収工程とを含むことを特徴とするバイオマスの処理方法。
【請求項3】
前記発酵工程において有機性汚泥を酸発酵させることにより有機酸が生成した発酵汚泥を得ること、前記乾燥工程において前記発酵汚泥を前記有機酸の蒸発が生じる温度・圧力条件で熱媒体である油中にて脱水することにより、油・乾燥汚泥混合物と有機酸含有蒸気とを得ること、前記脱油工程において前記油・乾燥汚泥混合物を脱油して乾燥汚泥を得ること、前記発酵酸回収工程において前記有機酸含有蒸気を凝縮させることにより有機酸含有水を得ることを特徴とする請求項2記載のバイオマスの処理方法。
【請求項4】
バイオマスを発酵させることにより発酵由来の酸が生成された発酵バイオマスを得る発酵装置と、前記発酵装置より得られた前記発酵バイオマスを前記発酵由来の酸の蒸発が生じる温度・圧力条件で脱水することにより、乾燥バイオマスと前記発酵由来の酸を含有する発酵酸含有蒸気とを得る乾燥装置と、前記乾燥工程より得られた前記発酵酸含有蒸気を凝縮させることにより前記発酵由来の酸を含有する発酵酸含有水を得る発酵酸回収装置とを含むことを特徴とするバイオマスの処理装置。
【請求項5】
バイオマスを発酵させることにより発酵由来の酸が生成された発酵バイオマスを得る発酵装置と、前記発酵装置より得られた前記発酵バイオマスを前記発酵由来の酸の蒸発が生じる温度・圧力条件で熱媒体である油中にて脱水することにより、油・乾燥バイオマス混合物と前記発酵由来の酸を含有する発酵酸含有蒸気とを得る油中乾燥装置と、前記油中乾燥装置より得られた前記油・乾燥バイオマス混合物を脱油して乾燥バイオマスを得る油分離装置と、前記油中乾燥装置より得られた前記発酵酸含有蒸気を凝縮させることにより前記発酵由来の酸を含有する発酵酸含有水を得る発酵酸回収装置とを含むことを特徴とするバイオマスの処理装置。
【請求項6】
前記発酵装置において有機性汚泥を酸発酵させることにより有機酸が生成した発酵汚泥を得ること、前記油中乾燥装置において前記発酵汚泥を前記有機酸の蒸発が生じる温度・圧力条件で熱媒体である油中にて脱水することにより、油・乾燥汚泥混合物と有機酸含有蒸気とを得ること、前記油分離装置において前記油・乾燥汚泥混合物を脱油して乾燥汚泥を得ること、前記発酵酸回収装置において前記有機酸含有蒸気を凝縮させることにより有機酸含有水を得ることを特徴とする請求項5記載のバイオマスの処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−181774(P2007−181774A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−1528(P2006−1528)
【出願日】平成18年1月6日(2006.1.6)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】