説明

バイオマス処理方法

バイオマスおよび希釈水性アンモニア混合物をコンパクションを伴わずに反応チャンバを介して移動させる装置を使用するバイオマスを処理するための方法が開発された。装置は、非圧縮性のピストンを使用してバイオマスを移動させる。得られる処理バイオマスは糖化され、発酵性糖が生産される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の権利に関する声明
本発明は、エネルギー省によって授与された契約番号04−03−CA−70224およびDE−FC36−03GO13146の下で、米国政府後援でなされたものであった。政府は本発明における特定の権利を有する。
【0002】
特定の装置を含む、バイオマスを処理するための方法が提供される。本装置を用いる方法は、バイオマスを非コンパクト化状態で反応器内へまた反応器を通して移動させ、ここでは、中程度の温度および圧力で、バイオマスを希釈水性アンモニアで含浸し、かつそれと反応させる処理方法が実施される。
【背景技術】
【0003】
農業残渣、木材廃棄物、林業廃棄物、製紙汚泥、および都市および産業固体廃棄物などのセルロース系およびリグノセルロース系の供給原料および廃棄物は、燃料および他の化学物質などの価値のある製品の生産を目的とした潜在的に大きい再生可能供給原料を提供する。セルロース、ヘミセルロース、グルカンおよびリグニンを含んでなる炭水化物ポリマーよりなる、セルロース系およびリグノセルロース系の供給原料および廃棄物は、一般に種々の化学的、機械的および酵素的手段によって処理されることで主にヘキソースおよびペントース糖が放出され、次いで有用な生産物に発酵されうる。
【0004】
最初にバイオマス供給原料が処理され、糖化酵素に対するセルロース系およびリグノセルロース系材料の炭水化物ポリマーの使用がより容易になり得、それは前処理と称されることが多い。次いで、前処理バイオマスは糖化酵素の存在下でさらに加水分解され、加水分解物においてオリゴ糖および/または単糖が放出される。発酵性糖を前処理バイオマスから生産するのに使用される糖化酵素は、典型的には1つもしくはそれ以上のグリコシダーゼ、例えばセルロースを加水分解するグリコシダーゼ、ヘミセルロースを加水分解するグリコシダーゼ、および澱粉を加水分解するグリコシダーゼ、ならびにペプチダーゼ、リパーゼ、リグニナーゼおよび/またはフェルロイルエステラーゼを含む。バイオマス処理のための糖化酵素および方法については、非特許文献1にレビューされている。
【0005】
大規模な使用にとって有効かつ経済的であるバイオマスを処理するためのシステムおよび/または方法を有することは望ましい。製品への発酵にとって必要とされる高濃度の発酵性糖を経済的に生産するため、濃縮された高乾燥重量材料としてのバイオマスの処理が必要とされる。したがって、バイオマスの高乾燥重量画分を含む材料が反応器を通って移動する一方、最小の化学物質およびエネルギー入力の使用に加え、糖化のためにバイオマスを浸透させかつ最適に調製する処理化学物質の能力を維持することは、バイオマス処理工程における課題である。また、資本コストが低い装置を含む方法が所望される。攪拌または反応器の回転に対する要件を伴わない反応器を含む方法は、装置におけるより低い資本コストおよびより低いエネルギー入力を提供しうる。
【0006】
攪拌または反応器の回転を必要とせず、かつ反応器を通ってバイオマスを移動させるための手段を規定するシステムについては記載がなされている。特許文献1は、微粒子材料、例えば木片、わら、バガスおよび他の繊維性材料を運搬するための装置について開示しており、それは材料を固体の「プラグ(plug)」状態にコンパクト化する。スクリューコンベヤは材料を事前にコンパクト化すると共に、往復ピストンによりさらなるコンパクションがなされる。コンパクトプラグは非常に高密度であることから、システム内での吹返しを有効に阻止することが可能である。次いで、プラグは材料を処理するための手段に供給されうる。バイオマス材料の高密度プラグであれば、前処理反応物質により最適に接近可能とはならない。
【0007】
同様に、特許文献2は、材料を機械的にコンパクト化し始める、反芻動物によって可消化性が高められたセルロース系材料を調製するための工程を開示している。次いで、それは化学試薬の不在下で高い蒸気圧を受け、さらにコンパクト化され、バイオマスの固形プラグが形成され、それは入口を通る蒸気の散逸を防ぐ。次いで、材料のごく一部が排出され、それは急速な圧力低下を受ける。バイオマスをプラグにコンパクト化することで、前処理で使用される化学試薬による最適な接近性が許容されないことになる。
【0008】
特許文献3では、押出機のバレル内に装着された回転可能なスクリューを使用した、セルロース系材料を処理するための装置が開示される。加圧下での液体アンモニアがバレルに供給され、バレル内のリグノセルロース系材料と混合され、次いでアンモニアを含有するリグノセルロース系材料は、バレルから加熱されたダイを通って排出する際、液体アンモニアの気体への変化によって爆発的に拡大される。大規模な商業用工程内で押出機を使用すれば、非常にコスト高となり、それ故に経済的な工程が提供されることはない。
【0009】
低強度の水性アンモニアを使用して高濃度バイオマスを前処理する、バイオマスを処理し、発酵性糖を生産するための方法が、共同所有される同時係属中の米国特許出願第11/402757号明細書に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4186658号明細書
【特許文献2】米国特許第4136207号明細書
【特許文献3】米国特許第6176176号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Lynd L.R.ら、Microbiol.Mol.Biol.Rev.(2002年)66:506−577頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
糖化のためにバイオマスを調製するための、低コストの反応器を通って高乾燥重量のバイオマスを移動させる一方、化学反応物質による最大の接近性を可能にする、バイオマスを処理するためのシステムおよび/または方法に対する需要が依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、糖化前にバイオマスを処理するための方法、本方法によって生産される前処理バイオマス、ならびに前処理バイオマスのその後の糖化によって生産される発酵性糖を含有する加水分解物を提供する。一態様では、バイオマスを処理するための方法は、
a)バイオマスを提供するステップと、
b)(a)のバイオマスを、非コンパクト化フィーダーを使用して、
i)ピストンを装備した第1の端部および排出弁を装備した第2の端部を有する円筒状バレル、
ii)場合により、1つのオフセット端部で円筒状バレルの第1の端部近傍において円筒状バレルに装着され、かつ未装着のオフセット端部で密封可能な弁を有するオフセット、
iii)円筒状バレル内またはオフセット内の少なくとも2つの密封可能なポート、
iv)場合により、バレルを別々の第1および第2のチャンバに分離する円筒状バレル内の弁であって、ここで前記第1のチャンバは前記ピストンを装備したバレルの第1の端部を有し、かつ前記第2のチャンバは排出弁を伴うバレルの第2の端部を有する、弁、ならびに
v)バレルの第2の端部で排出弁に装着されたフラッシュタンク
を含む装置に装入するステップであって、ここで前記バイオマスは円筒状バレルまたは場合により前記円筒状バレルに装着された前記オフセットに装入されるステップと、
c)前記円筒状バレルおよびオフセット(存在する場合)を閉鎖するステップと、
d)場合により、真空を円筒状バレル内の少なくとも1つのポートを介して適用するステップと、
e)円筒状バレルまたはオフセット内の前記少なくとも1つのポートを介し、アンモニアを含有する水溶液を、バレル内のバイオマスの乾燥重量に対して約12重量パーセント未満の量で添加し、バイオマスおよび水性アンモニア混合物を作製し、またさらにここでバイオマスの乾燥重量はバイオマスおよび水性アンモニア混合物の重量に対して少なくとも約15重量パーセントの高固形物濃度であり、かつ円筒状バレルまたはオフセット(存在する場合)内の前記第2のポートを介して蒸気を添加し、バレル内部の温度を約85℃〜約180℃の間にするステップと、
f)円筒状バレルおよびオフセット(存在する場合)内のポートを閉鎖し、不透過性チャンバを提供するステップと、
g)不透過性チャンバ内のバイオマスおよび水性アンモニア混合物を、適温で約30秒間〜約4時間保持するステップと、
h)場合により、バイオマスおよび水性アンモニア混合物を、前記ピストンによる変位により、円筒状バレル内の第2のチャンバ(存在する場合)に移動させ、約2分間〜4時間保持するステップであって、移動の際バイオマスはコンパクト化されないステップと、
i)バイオマスおよび水性アンモニア混合物を、(g)または(h)の不透過性円筒状バレルを介して前記ピストンを用いて移動させ、排出弁を介してフラッシュタンクに入れるステップと、
を含み、処理バイオマスが生産される。
【0014】
別の態様では、バイオマスを処理するための方法は、
a)バイオマスおよびアンモニアを含有する水溶液の混合物を提供するステップであって、ここでバイオマスの乾燥重量はバイオマスおよび水性アンモニア混合物の全重量に対して少なくとも約15重量パーセントであり、かつ水性アンモニアはバイオマスの乾燥重量に対して約12重量パーセント未満の量であるステップと、
b)(a)のバイオマスおよび水性アンモニア混合物を、非コンパクト化フィーダーを使用して、
i)ピストンを装備した第1の端部および排出弁を装備した第2の端部を有する円筒状バレル、
ii)場合により、1つのオフセット端部で円筒状バレルの第1の端部近傍において円筒状バレルに装着され、かつ未装着のオフセット端部で密封可能な弁を有するオフセット、
iii)円筒状バレル内またはオフセット内の少なくとも2つの密封可能なポート、
iv)バレルを別々の第1および第2のチャンバに分離する円筒状バレル内の弁であって、ここで前記第1のチャンバは前記ピストンを装備したバレルの第1の端部を有し、かつ前記第2のチャンバは排出弁を伴うバレルの第2の端部を有する、弁、ならびに
v)バレルの第2の端部で排出弁に装着されたフラッシュタンク
を含む装置に装入するステップであって、ここで前記バイオマスは円筒状バレルの第1のチャンバまたは場合により前記円筒状バレルに装着された前記オフセットに装入されるステップと、
c)バレル内の前記第1のチャンバおよびオフセット(存在する場合)を閉鎖するステップと、
d)場合により、前記少なくとも1つのポートを介して真空を適用するステップと、
e)第1のチャンバまたはオフセット(存在する場合)内の少なくとも1つの第1のポートを介して蒸気を添加し、チャンバ内部の温度を約85℃〜約180℃の間にするステップと、
f)第1のチャンバおよびオフセット(存在する場合)内のポートを閉鎖し、不透過性の第1のチャンバを提供するステップと、
g)不透過性の第1のチャンバ内のバイオマスおよび水性アンモニア混合物を適温で約30秒間〜約4時間保持するステップと、
h)場合により、バイオマスおよび水性アンモニア混合物を、開かれた弁を介し、不透過性の第1のチャンバを通るピストンによる変位によって円筒状バレル内の第2のチャンバに移動させるステップであって、移動の際バイオマスはコンパクト化されないステップと、
i)場合により、開かれた弁を閉鎖し、第2の不透過性チャンバを形成し、かつバイオマスおよび水性アンモニア混合物を約2分間〜約4時間保持するステップと、
j)ステップ(g)またはステップ(i)の後、バイオマスおよび水性アンモニア混合物を、ピストンによる変位により、排出弁を介してフラッシュタンクに移動させるステップと、
を含み、ここではバイオマスはコンパクト化されず、それによって処理バイオマスが生産される。
【0015】
さらに、本発明のさらなる態様は、本方法に従って調製されている処理バイオマス、および本方法によって処理されているバイオマスの糖化によって生産される発酵性糖を含有する加水分解物を対象とする。
【0016】
バイオマスは、任意のセルロース系またはリグノセルロース系材料を示し、これらは、バイオエネルギー作物、農業残渣、都市固体廃棄物、産業固体廃棄物、工場廃棄物、木材廃棄物、林業廃棄物またはこれらの組み合わせを含み得る。エネルギーは、サイズを低減し、暴露表面積を大きくし、および/またはバイオマス中に存在するセルロース、ヘミセルロースおよび/またはオリゴ糖の接近性を高めるため、(a)の前にバイオマスに加えられうる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明で使用される装置の第1の実施形態の概略図である。
【図2】本発明で使用される装置の第2の実施形態の概略図である。
【図3】排出弁として使用される漸増(gradual expansion)ベンチュリの、弁が閉じた状態での第1の実施形態の概略図である。
【図4】図3の漸増ベンチュリの実施形態の、弁が開いた状態での概略図である。
【図5】Vポートバルブの漸増ベンチュリの実施形態の概略図である。
【図6A】スイングチェックバルブの漸増ベンチュリの実施形態の、弁が閉じた状態での概略図である。
【図6B】スイングチェックバルブの漸増ベンチュリの実施形態の、弁が開いた状態での概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
出願人らは、本開示中にすべての引用文献の内容全体を具体的に援用する。さらに、量、濃度、または他の値もしくはパラメーターが、ある範囲、好ましい範囲、またはより高い好ましい値とより低い好ましい値のリストとして与えられる場合、これは、任意のより高い範囲限界または好ましい値と任意のより低い範囲限界または好ましい値との任意のペアから形成されるあらゆる範囲を、範囲が別々に開示されるか否かにかかわりなく具体的に開示するものとして理解されるべきである。本明細書中で数値の範囲が挙げられる場合、特に指定のない限り、同範囲は、その端点、ならびに範囲内のすべての整数および分数を含むように意図されている。本発明の範囲が範囲を規定する場合に挙げられる特定の値に限定されるようには意図されていない。
【0019】
本発明は、バイオマスを糖化を受けるために調製し、発酵性糖を生産することを目的とした、バイオマスを処理するための方法を提供する。糖類は発酵され、燃料および他の化学物質などの貴重な製品の生産が可能である。前処理、糖化および発酵ステップを介し、廃棄物バイオマスを含む再生可能なバイオマスを使用し、貴重な化学物質が生産可能であり、それによりオイルに対する需要が低下されうる。
【0020】
定義
本開示では多数の用語が用いられる。以下の定義が提供される。
「バイオマス」は、任意のセルロース系またはリグノセルロース系材料を示し、セルロースを含んでなる、かつ場合によりヘミセルロース、リグニン、澱粉、オリゴ糖および/または単糖をさらに含んでなる材料を含む。バイオマスは、タンパク質および/または脂質などの追加成分を含んでなる場合もある。本発明によると、バイオマスは単一のソースから誘導されうるか、またはバイオマスは2つ以上のソースから誘導される混合物を含んでなる可能性がある。すなわち、例えばバイオマスであれば、トウモロコシ穂軸とコーンストーバーまたは繊維の混合物、または草と葉の混合物を含んでなる可能性がある。バイオマスは、バイオエネルギー作物、農業残渣、都市固体廃棄物、産業固体廃棄物、製紙汚泥、工場廃棄物、木材および林業廃棄物を含むがこれらに限定されない。バイオマスの例として、トウモロコシ粒、トウモロコシ穂軸、トウモロコシの皮などの作物残渣、コーンストーバー、トウモロコシ繊維、草、小麦、小麦のわら、大麦、大麦のわら、まぐさ、稲わら、スイッチグラス、紙くず、サトウキビバガス、モロコシ茎、大豆外皮または茎、穀物のミリングから得られる成分、木、枝、根、葉、ウッドチップ、おがくず、低木およびブッシュ、野菜、果物、花ならびに反すう動物糞尿が挙げられるがこれらに限定されない。一実施形態では、本発明にとって有用なバイオマスは、比較的高い炭水化物値を有し、比較的密度が高く、かつ/または回収、運搬、保存および/または処理を行うのが比較的容易であるバイオマスを含む。本発明の一実施形態では、有用なバイオマスは、トウモロコシ穂軸、コーンストーバー、トウモロコシ繊維およびサトウキビバガスを含む。
【0021】
用語「発酵性糖」または「糖類」は、標的化学物質まで容易に発酵可能なオリゴ糖および単糖を示す。
【0022】
用語「リグノセルロース系」は、リグニンおよびセルロースの双方を含有する材料を示す。リグノセルロース系材料はまた、ヘミセルロースを含有しうる。
【0023】
用語「セルロース系」は、セルロースを含有する材料を示す。
【0024】
用語「糖化」は、多糖類からの発酵性糖の生産を示す
【0025】
バイオマスの「乾燥重量」は、すべてまたは実質的にすべての水が除去されたバイオマスの重量を意味する。乾燥重量は、典型的には、American Society for Testing and Materials(ASTM)のStandard E1756−01(Standard Test Method for Determination of Total Solids in Biomass)またはTechnical Association of the Pulp and Paper Industry,Inc.(TAPPI)のStandard T−412 om−02(Moisture in Pulp,Paper and Paperboard)に従って測定される。
【0026】
「アンモニアを含んでなる水溶液」は、水性培地内でのアンモニアガス(NH)、水酸化アンモニウムまたはアンモニウムサルフェートなどのアンモニウムイオン(NH)を含んでなる化合物、尿素など、分解時にアンモニアを放出する化合物、およびこれらの組み合わせの使用を示す。
【0027】
用語「処理」は、反応物質が材料に対して作用する工程を示し、ここで材料の物理および/または化学特性は改変される。
【0028】
用語「反応物質」は、処理工程で使用される条件下で、標的材料の物理および/または化学特性を改変可能な組成物を示す。
【0029】
糖化のための「酵素共同体」は、バイオマス混合物に作用し、発酵性糖を生産することが可能な酵素の組み合わせである。典型的には、糖化酵素共同体は1つもしくはそれ以上のグリコシダーゼを含有する場合があり、グリコシダーゼは、セルロースを加水分解するグリコシダーゼ、ヘミセルロースを加水分解するグリコシダーゼおよび澱粉を加水分解するグリコシダーゼからなる群から選択されうる。糖化酵素共同体における他の酵素は、ペプチダーゼ、リパーゼ、リグニナーゼおよびフェルロイルエステラーゼを含みうる。
【0030】
バイオマスに関連する用語「処理する」および「前処理する」は、以下のように関連している。バイオマスが反応物質で処理され、処理バイオマス生産物が形成され、それはまた、前処理バイオマスを形成するために処理するか、または前処理バイオマスを形成するために前処理すると称されうる。「前」の使用は、バイオマスを処理することがバイオマスの糖化前であることを区別する。
【0031】
バイオマス処理方法
高濃度バイオマスを前処理するための低強度の水性アンモニアの使用を含む、バイオマスを処理し、発酵性糖を生産するための方法が、共同所有される同時係属中の米国特許出願第11/402757号明細書に開示されている。出願人は、バイオマスを低強度の水性アンモニアおよび高いバイオマス濃度条件を使用して効率的に処理するための新しい方法を開発している。出願人は、本方法が、驚くべきことに、任意の段階でバイオマスのコンパクト化を回避し、それにより処理反応物質のバイオマスへの接近がバイオマスのコンパクションを含むシステム内で生じる場合全般で改善できるという態様から奏功することを見出した。バイオマスがコンパクト化されるシステムにおいては、バイオマスは処理反応物質との反応を改善するために脱コンパクト化されうるが,これには高エネルギー入力が必要であり、それによりシステムのコストが上昇する。本発明の方法においては、脱コンパクションステップまたは工程は全く必要とされない。
【0032】
大型バイオマス処理におけるコストを低減するため、バイオマスがコンパクト化を伴わない定位置装置に添加され、コンパクト化を伴わない装置を介して移動されるという本方法が開発されている。バイオマスを非コンパクト化状態で維持することにより、バイオマス材料の天然の孔およびチャンネルが圧壊されない。本方法で使用される処理反応物質は、水性アンモニアおよび蒸気を含む。これらの反応物質は、非コンパクト化天然バイオマスの孔およびチャンネルを貫通することができ、バイオマスのセルロース系またはリグノセルロース系材料に対して迅速かつ徹底的な効果をもたらす。この処理方法は、有効な糖化を受けて発酵性糖を生産する処理バイオマスの生産において、バイオマス炭水化物から解重合された糖類への酵素用量および反応時間あたりで高効率の変換をもたらす点で極めて有効である。
【0033】
本バイオマス処理方法は、ピストン/バレル型装置の2つの実施形態を示す図1および2における概略図、ならびに本処理方法における装置の使用に関する以下の説明を参照することによって最もよく理解されうる。これらの図面は例示を明確にするために簡略化され、ここでは図3および4に示されるフランジなど、一部の要素が省略されている。図1における装置は試験規模の反応器である。それは、バイオマスを添加するための開いた第1の端部(11)(次いで、バイオマスの装入後にピストンの1つのタイプとして使用される可動プラグ(12)の挿入によって密封される)を有する水平円筒状バレルチャンバ(10)を含む。円筒状チャンバは、円筒状チャンバ内でバイオマスに、アンモニアを含有する水溶液を添加するための第1の密封可能なポート(13)、蒸気を添加するための第2の密封可能なポート(14)、および真空を適用するための第3のポート(15)を有する。蒸気が注入され、処理反応におけるバイオマスおよび水性アンモニア混合物の温度が上昇する。絶縁ジャケット(16)は円筒状チャンバを覆う。
【0034】
バイオマスの装入、真空の適用、およびアンモニアを含有する水溶液および蒸気の添加の後、ポート(13、14、および15)は密封され、所望温度が維持される。ある期間後、過去に閉じられた排出弁(17)が、シリンダの第2の端部(18)において弁シャフト(19)を移動させることによって開かれる。弁シャフトは、隣接したフラッシュタンク(21)内で下方に向けられた内部を分離するエルボー(20)内の孔およびアクチュエータ(23)に対峙するフラッシュタンクの反対側のパッキン押さえ(22)を貫通して延在する。バイオマスおよび水性アンモニア混合物は、円筒状バレルの第1の端部におけるプラグを第2の端部方向に移動させることによって排出弁(17)を通って押し出される。バイオマスは排出弁を通過し、エルボー(20)を介してフラッシュタンク(21)に注入される。フラッシュタンクの底部における開口部を覆うカバー(24)は前処理バイオマスに接近可能である。フラッシュタンクの頂部におけるポート(25)は蒸気の排出を可能にし、管(26)を介してコンデンサ(27)に接続される。
【0035】
図1の装置の実施形態のさらなる説明および本明細書中の実施例における本処理方法でのその使用は以下の通りである。バレルピストン反応器は、ピストンを装備した5.1cm×68.6cmのステンレス鋼バレルで水平方向に構成された。ピストンは、4つのOリングでバレルに密封され、吐出行程中、ピストンの裏面が窒素で加圧された(最大約5600kPa)。68.6cmのバレルに8つの複数の使用ポート(頂部および底部表面沿いに4つずつ)が装備され、真空の適用、水性アンモニアの注入、蒸気の注入、およびバレル内部の温度を測定するための熱電対の挿入を可能にした。反応器バレルに、バレルのさらなる加熱に対して蒸気ジャケットが装備された。反応器バレルは、15.2cm×61cmのステンレス鋼フラッシュタンクに垂直方向に直接装着された。バレルは、円錐状ノズルおよびシート端部剪断弁装置により、フラッシュタンクから隔てられた。端部の弁を剪断するダイの直径は3.5cmであった。円錐状ノズルおよびシートに対する背圧は調整可能であり、大部分の試験が、端部剪断弁のコーン部に接続された10.2cm直径のエアシリンダへの約138kPa(ゲージ圧)の背圧を用いて実施された。端部剪断弁のコーン部は最大で1.6cm戻ることができ、粒子のフラッシュタンクへの排出が可能であった。固形物がタンクの底部におけるドーム状端部フランジのボルトを緩めることによって容易に除去される場合、端部剪断弁の出口にあるエルボーが処理固形物をフラッシュタンクの底部へと下方誘導した。フラッシュタンクに対して上部にあるドーム状フランジはフラッシュタンクの軸に対して直角に機械加工されたスロットに適合する特別な出口を組み込んだことで、放出された蒸気のコーナ軌跡周辺から出口フィッチングへの移動が引き起こされ、それは同伴されるバイオマス粒子および水滴のベントコンデンサへのキャリーオーバーの防止に役立った。3つの電気バンドヒーター(60℃に設定)および絶縁部をフラッシュタンクに沿って追加し、熱処理された固形物の加熱容器へのフラッシュを可能にし、商業用工程のシミュレーションが改善された。
【0036】
別の実施形態では、小型バレルピストン反応器が、45.7cmのバレル、蒸気ジャケットなし、3つの電気バンドヒーター、絶縁としてシリコーンが添着されたファイバーグラスジャケットで覆われた2.5cm厚のファイバーグラスマット、および3つの複数の使用ポートを有することを除いて上記のように構成された。フラッシュタンク、剪断弁、およびエルボーを含む他の特徴は、大型バレルピストン反応器についての記載の通りであった。
【0037】
図2における装置は、商業用反応器として設計されたものである。それは、第1の端部(33)にピストン(34)および第2の端部(41)に排出弁(40)を装備した水平円筒状バレルを含む。バレルは絶縁され、不透過性壁を有する。オフセット(31)が第1の端部近傍に装着され、送入弁である弁(35)がオフセットの未装着の端部に位置する。ホッパー(30)がオフセットの弁端部に装着される。バイオマスはホッパーを通して添加される。ホッパー(30)からオフセット(31)へのバイオマスの添加を制御するための非コンパクト化流れ(non−compacting flow)を誘導する手段がありうる。オフセットは、バイオマスが円筒状バレル内に移動する際、オフセットにおいて水性アンモニアおよび蒸気をバイオマスに添加するための第1の密封可能なポート(36)および第2の密封可能なポート(37)を有する。第2の弁(38)は、バレルを第1の円筒状チャンバ(32)および第2の円筒状チャンバ(39)に分離する。バイオマスおよび水性アンモニア混合物は、オフセットを通過し、蒸気の添加によって所望される温度および圧力に達している第1のチャンバに入る。不透過性バレルを通るピストンの運動は、バイオマスおよび水性アンモニア混合物を開かれた第2の弁(38)を介して第1のチャンバから第2のチャンバに押し出し、かつ第2のチャンバ(39)内の内容物を開かれた排出弁(40)を介してフラッシュタンク(42)に移動させる。第2のチャンバの内容物は、このチャンバ内に過去に移動されかつ使用条件下で処理反応にとって必要とされるだけの期間保持されたバイオマスおよび水性アンモニア混合物である。次いで、第1の円筒状チャンバ(32)の再装入および工程サイクルの反復に備え、第2の弁(38)は閉じられ、ピストン(34)は引っ込む。フラッシュタンク(42)においては、バイオマスは下方に導かれたエルボー(43)を介して移動する。フラッシュタンクの底部における開口部を覆うカバー(44)は、前処理バイオマスへの接近を可能にする。フラッシュタンクの頂部におけるポート(45)はアンモニア蒸気の排出を可能にし、管(46)を介してコンデンサ(47)に接続される。
【0038】
装置は、炭素鋼またはステンレス鋼を使用して構成されうる。円筒状バレルは図1および2に示されるように水平でありうるか、またはそれは垂直でありうる。直立型バレルの場合、図2に示されるオフセットおよびホッパーであれば、例えば90度未満の角度など、バイオマスのバレルチャンバへの装入を可能にするように再構成されることになる。当業者であれば、直立型バレルを有する装置を容易に構成できるであろう。例えば、直立型バレルはフラッシュタンク上部に位置づけられ、排出弁を通る流れであれば既に下方誘導されることから、流れを下方誘導するエルボーなしに接続されうる。フラッシュタンクを垂直または水平に方向づけることもまた当業者の能力の範囲内である。垂直タンクは、フラッシュタンク内に放出されるアンモニアガスの除去および捕捉を促進するためのアンモニア処理を伴う本方法においてより適切である。
【0039】
図1および2の2つの実施形態は、バイオマスが反応器に添加され、コンパクションなく反応器を通って移動される点では同様に機能する。1つのチャンバを有する図1の実施形態は、バイオマスの1つの試料をある時点で処理するためのバッチシステムである。弁によって分離された2つのチャンバを有する図2の実施形態は、半連続またはバイオマスの複数の装入が同時に処理されるフェドバッチ操作を可能にする。この第2の実施形態では、バイオマスの各連続的装入が第2のチャンバに進入する場合の各ピストン変位サイクルは、一旦第2のチャンバが十分に装入されると、排出オリフィスを介した対応する容積の排出を伴う。ある時点での第2のチャンバにおけるピストン変位サイクルの数、およびそれによる第2のチャンバのサイズは、各バイオマス試料に必要とされる滞留時間に関連する。滞留時間については、本方法における処理のための温度および時間に関連して以下にさらに考察される。
【0040】
本方法は、処理反応のバイオマス、水性アンモニア、および蒸気混合物の重量に対して高乾燥重量のバイオマスでのバイオマスの処理に特に適合する。バイオマスを高乾燥重量濃度で処理し、糖化後に高糖濃度の加水分解物を生産することになるバイオマスを提供することが望ましい。バイオマスがコンパクト化されないようにする本装置の特徴は、高乾燥重量濃度のバイオマスの効果的処理を可能にする。本方法で使用されるバイオマスの初期乾燥重量は、バイオマスおよび水性アンモニア混合物の全重量の少なくとも約15%である。より典型的には、バイオマスの乾燥重量は、少なくとも約20%であり、かつ少なくとも約30%、45%、50%、もしくはそれ以上でありうる。バイオマスの乾燥重量パーセントは変動する可能性があり、最適なパーセントは異なるタイプのバイオマスに対して異なりうる。例えば、少なくとも約24%のバイオマスはトウモロコシ穂軸を使用する場合に望ましく、糖化され、エタノールへの費用効果的な発酵のために十分に濃縮された発酵性糖を生産する前処理バイオマスが提供される。より適切なものが、少なくとも約30%のトウモロコシ穂軸バイオマスである。高糖類加水分解物を生産するための、本方法で使用される特定のタイプのバイオマスの好ましい乾燥重量パーセントは、当業者によって容易に測定される。
【0041】
バイオマスは、ソースから得られるものとして直接的に使用されうるか、あるいはエネルギーのバイオマスへの適用により、サイズが低減され、暴露表面積が増加し、かつ/または、バイオマス中に存在するセルロース、ヘミセルロース、および/またはオリゴ糖の可用性が高まる可能性がある。この目的にとって有用なエネルギー手段は、バイオマスの超微細構造が破壊されないように、バイオマスを圧壊またはコンパクト化しないものを含む。例えば、バイオマスは、破砕、チョッピング、または断片化(chipping)されうる。ジョークラッシャーもまた、超微細構造を圧壊することなくバイオマスを剪断する方法で使用される場合、使用されうる。トゥースディスクリファイナー(tooth disk refiner)もまた、本方法における前処理前にバイオマスサイズを低減するのに有用である。
【0042】
本処理方法では、バイオマスが、非コンパクト化フィーダーを使用して円筒状バレルに移動される。最も簡単な場合、非コンパクト化フィーダーは手動でのバイオマスの円筒状バレルの開かれた第1の端部への装入を示す。バレル内に2つのチャンバがある場合、装入は第1のチャンバに施される。この方法は、図1に示される反応器を使用し、本明細書中の実施例において説明される。図2の反応器に例示される非コンパクト化フィーダーはホッパーである。ホッパーは、自己ダンピング(self−dumping)でありえ、かつ/またはコンパクト化力をもたらさない流れ誘導デバイス(flow−inducing device)が装備されうる。例えば、様々なタイプの底部攪拌式容器(live−bottom bin)の流れ誘導装置(flow inducer)と、その後に、流れ計測用コンベヤ(flow metering conveyor)、例えば様々なタイプのドラッグチェーン、バケットエレベータ、または回転ヘリックス(Acrison(登録商標)デバイスなど)が使用されうる。第1の円筒状チャンバ内に装入されるバイオマスの量は、水性アンモニアおよび蒸気の添加時に生じうるバイオマスの拡大に対して空間的に許容される程度に制限される。
【0043】
真空は、バイオマスを有する円筒状バレルに適用されうる。バレル内に2つのチャンバがある場合、真空はバイオマスを有する第1のチャンバに適用される。典型的には、真空が適用される場合、圧力が約20kPa未満に低減される。アンモニアを含有する水溶液は、円筒状バレルまたはそのオフセットにおける1つもしくはそれ以上のポートを介し、アンモニアがチャンバ内のバイオマスの乾燥重量に対して約12重量パーセント未満であるような量で添加される。アンモニア溶液接触部がバイオマスに対して実質的に均一に分布されるように分布されている2つ以上のポートを使用することはより適切である。バレル内に2つのチャンバがある場合、アンモニア溶液はバイオマスを有する第1のチャンバに添加される。また、アンモニアがチャンバ内のバイオマス乾燥重量に対して約4%〜約6%の間の量であることがより適切である。アンモニア溶液は予熱される場合があり、それはバイオマスの温度上昇に寄与することになる。他の実施形態では、水性アンモニア溶液は、第1の円筒状チャンバへの装入前にバイオマスと混合される。バイオマスと水性アンモニアは、第1の円筒状チャンバに供給する容器内で混合されうる。例えば、水性アンモニアはインラインヒーターを介してポンピングされ、バイオマスを有するパドルミキサーに注入されうる。次いで、バイオマスおよび水性アンモニア混合物は第1の円筒状チャンバに供給され、そこではチャンバ閉鎖後に蒸気が注入される。あるいは、バイオマス、アンモニア、および蒸気は予備混合され、第1の円筒状チャンバに添加されうる。下記の温度および圧力では、水性アンモニアの多くが蒸気に蒸発することになり、前処理されているバイオマスが浸透する。さらに、フラッシュタンクから回収される湿った再生アンモニア蒸気が注入され、添加アンモニア全体の一部が形成されうる。
【0044】
本方法では、アンモニアを含有する水溶液は、場合により、少なくとも1つの追加的塩基、例えば水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、および炭酸カリウムを含みうる。少なくとも1つの追加的塩基は、バイオマスの乾燥重量に対して最大で10重量パーセントで添加されうる。追加塩基が用いられることで、例えば、バイオマス中の酸が中和され、糖化酵素における金属イオン、または発酵用成長培地における金属イオンがもたらされうる。
【0045】
バイオマスは本方法においてコンパクト化されないことから、蒸気の通過を、コンパクト化されたバイオマスを伴うシステム内で生じる際、阻止できない。したがって、蒸気が添加されるチャンバは蒸気注入前に閉鎖される。蒸気が添加されている1つもしくはそれ以上のポート以外のポートが密封される。バレルの第1の端部のピストンまたはピストンとしての機能を果たすプラグが導入され、弁は閉じられる。使用される弁は、任意の開放型および閉鎖型の弁、例えばポペット弁または回転するナイフゲート弁でありうる。
【0046】
蒸気は、バイオマスおよび反応混合物の温度を所望されるポイントまで上昇させるのに必要な量で、円筒状バレルまたはオフセットにおける1つもしくはそれ以上のポートを介して添加される。バレル内に2つのチャンバがある場合、蒸気はバイオマスを有する第1のチャンバに添加される。2つ以上のポートを使用し、蒸気接触部がバイオマス全体に分布されるようにポート同士の間隔を置くことがより適切である。蒸気は、バイオマスおよび水性アンモニア混合物の温度を約85℃〜約180℃の間に上昇させるように添加される。所望温度を維持することが必要とされる場合、さらなる蒸気が第2の円筒状チャンバ内のポート(存在する場合)を介して添加されうる。本装置は、温度の上昇および/または維持に寄与する、加熱ジャケット、蒸気ジャケット、バンドヒーター、または絶縁ジャケットを含みうる。加熱または蒸気ジャケットは特に小型反応器に適合する一方、絶縁ジャケットは大型反応器に適合する。加熱は、処理または前処理に先立つバレルの予熱を含む異なる段階で行われうる。
【0047】
低強度の水性アンモニアでの処理に必要とされる時間は、85℃未満の温度であれば極めて長いことになる。処理に必要とされる時間は、温度が上昇するにつれて減少する。例えば、85℃での処理は約2〜約4時間でありうる一方、180℃での処理はほんの数分でありうる。図2の反応器において使用されるバッチ供給サイクルの機能は、複数の装入に対して十分な時間を必要とする。したがって、使用される反応器の実施形態の機能にとって十分に長い、限られた時間であるが、経済的な工程を提供するための中程度の温度を有する時間および温度の組み合わせを選択することは望ましい。中程度の温度の場合、より低いコストを有するより低圧の蒸気が使用されうる。より適切な条件は、約60分間〜約5分間における約120℃〜約160℃の間での処理であり、ここで時間は温度が上昇するにつれて減少する。特に適切な条件は、約30分間〜約10分間における約140℃〜約150℃の間での処理であり、ここで時間は温度が上昇するにつれて減少する。前処理されているバイオマスのタイプはまた、当業者によって容易に評価されうるように、本方法における処理にとって最適な時間および温度に影響を与えうる。
【0048】
バイオマスが反応器チャンバ内部で所望温度で保持される時間は滞留時間である。第1のチャンバのみを有する反応器を使用する場合、滞留時間は第1のチャンバにおいて生じる。第1のチャンバおよび第2のチャンバを有する反応器を使用する場合、第1のチャンバにおける時間は単に混合物の第2のチャンバへの移動前にバイオマスと反応物質を結合させるのに十分に長い程度でありうると共に、滞留時間は第2のチャンバにおいて生じる。この場合、第1のチャンバにおける時間は約30秒程度に過ぎず、第2のチャンバにおける時間は約2分間〜4時間でありうる。
【0049】
本方法において蒸気を使用してバイオマスを上記の温度にする結果、反応器チャンバ内部で約60kPA〜約750kPaの間の圧力がもたらされる。より典型的には、圧力は約300kPA〜600kPAの間である。これらは、米国特許第5037663号明細書に記載のAFEX方法(この場合、1150kPa〜4250kPaの圧力が用いられる)または米国特許第4461648号明細書に記載のスチームガンを用いる方法(この場合、約1800kPa〜約5600kPaの圧力が本明細書中の図1に示される)などの他の既知の前処理方法に対して相対的に低い圧力である。より中程度の圧力での本方法の操作がコストのより低いシステムをもたらすことから、より低圧の蒸気が用いられうる。
【0050】
本方法では、バイオマスは、コンパクションを伴わず、第1のチャンバおよび第2のチャンバ(存在する場合)を通って移動される。これは、ピストンおよび不透過性シリンダチャンバを使用して行われうる。本開示を目的として、ピストンは、チャンバに押し込まれるプラグなど、ピストンとして使用可能な任意の部品、ならびに標準ピストンの任意のタイプを含みうる。図1に例示される反応器のタイプのプラグは、バイオマスを移動させるのに十分な圧力を加える任意の方法を用い、チャンバに押し込まれうる。特に適切な方法は、プラグの挿入後にチャンバの端部に静的クロージャ(closure)、例えばボルト締めシリンダヘッドを提供し、次いでクロージャとプラグの間に窒素を導入し、圧力を高め、プラグを移動させることである。プラグは、他の手段により、例えば油圧、空気圧、または電気式アクチュエータに接続された押し棒を使用して移動されうる。
【0051】
装置のバレルは、密封されていない壁の透過物がない点で(すべてのポートおよび弁が閉鎖された状態で)不透過性であることから、液体がバレルから排出されることがない。液体の保持により、ピストンはバイオマスをコンパクト化することなく移動可能である。本処理方法における液体は制限されており、チャンバ壁の潤滑に役立ち、ピストン圧力に応答した非コンパクト化流れを可能にしうるものである。実際、ピストン圧力は一時的にバイオマスをスポンジのようにやや圧搾しうるが、ここではバイオマスの孔およびチャンネルが破壊されるほど十分に圧搾されていない。ピストン圧力の除去時、バイオマスは圧壊されていない孔およびチャンネルに液体を再吸収させうる。バイオマス流れを補助するため、植物油石鹸などの潤滑液体がチャンバに導入されうる。流れは内部チャンバ壁のライフリングにより促進可能であり、ここでは傾斜溝などの切れ目を付けることで摩擦が低減され、それにより降伏応力が低減されかつバイオマス流れが改善されうる。コンパクションを伴わないバイオマスの移動は、処理によって生産される膨張した液体充填孔を維持し、その後の糖化が促進される。
【0052】
本方法では、バイオマスおよび水性アンモニア混合物は、所望温度で所望時間かけて処理された後、円筒状バレルの端部で排出弁を介してフラッシュタンクに移動される。排出弁は、所望温度でのバイオマスと水性アンモニアとの反応中に閉じられ、次いでバイオマスの通過に対して開かれる。図2に例示される2チャンバ型反応器では、第1のチャンバの内容物の容量によって第2のチャンバの全内容物を移動させるため、ピストンが第1のチャンバ内の圧力を高めた後、排出弁は第1および第2のチャンバの間の弁の開放と同時に開く。
【0053】
使用可能な排出弁は、回転式Vポートバルブ、スイングチェックバルブ、およびポペット排出弁によって例示される。図1に例示されるようなより小型の反応器内では、ピストン作動式ポペット型排出弁が特に有用であり、この場合、バルブシートの表面硬化された(hardfaced)上流側は排出オリフィスであり、かつバルブシートのより軟化した下流側は表面硬化された弁プランジャに対して密封し、弁プランジャが後退され開く際、流れ領域はバルブシートを超えて連続的に増大する。
【0054】
ポペット型排出弁は、最も適切であれば、漸増ベンチュリを組み込むことになる。漸増ベンチュリのポペット弁の一実施形態は、図1に例示される小型反応器にとって適切であり、図3に図示される。この弁は、円錐状ノズルおよびシート端部を剪断する弁装置を組み込む。プラギングを回避するため、図3(閉鎖位置)および図4(開放位置)に例示される漸増ベンチュリが、ベンチュリの不動外部コーン(50)と弁シャフト(52)の端部に装着されたベンチュリの可動内部コーン(51)の間での徐々に拡大するギャップを介して固形物を加速するように設計された。ベンチュリの外部コーンは、反応器チャンバ(54;図1中の10に相当)出口のフランジ(53)とフラッシュタンク入口フランジ(55)の間に固定された一般に環状のベンチュリ形状である。ベンチュリの内部コーン(51)は、反応器出口弁シャフト(52)の末端側の突出部である。ベンチュリの内部コーンおよび弁シャフトは、フラッシュタンク(57;図1中の21に相当)内部の排気エルボー(56;図1中の20に相当)内部にある。弁シャフトは、運動の制御用のアクチュエータ(58)に装着されている。アクチュエータは、弁シャフトを水平運動において前後に移動させることが可能な任意のデバイス、例えば、電気式、空気圧もしくは油圧モーター、空気圧弁アクチュエータ、または油圧ピストンでありうる。弁シャフトがその左端位置にある場合、内部コーンの外縁を外部コーンの内縁に対向的に位置づけ、処理中に反応器の排出端部が密封される。反応器からの排出時点では、弁シャフトは右側に移動され、フラッシュベンチュリにとって所望される開口部のサイズがもたらされる。
【0055】
この設計は、流れの方向にスムーズに拡大する大規模なフラッシュ領域を提供する。この設計では、バイオマス固形物が徐々に開放する環状コーンの軸へ加速降下され、そこでは半径の急速な拡大によるプラギングの余地が回避される。
【0056】
特に図2に例示されるより大型の反応器における排出弁として適切な漸増ベンチュリの別の実施形態が図5に図示される。これは、フラッシュベンチュリの拡大が弁体内に加工される場合のVポートプラグコックの実施形態である。フラッシュベンチュリの静止体(70)内部には、反応チャンバ(72)の出口端部からの狭窄部(71)およびフラッシュタンクへの入口(74)に向かう拡大部(73)がある。プラグコックの回転コア(75)には、開放位置にある場合、反応器チャンバの狭窄部(71)およびフラッシュタンクに向かう拡大部(73)と一致する傾斜開口部(76)がある。回転コア(75)は全周回転の半分回転することで、弁を閉じるプラグコックの一致を妨げる。
【0057】
特に図2に例示されるより大型の反応器における排出弁として適切な漸増ベンチュリのさらなる実施形態が図6に図示される。これは、反応器チャンバ(72)とフラッシュタンクへの入口(74)の間の狭窄接合部(81)に適合するコーン(80)を有するスイングチェックバルブの実施形態である(図6A)。コーンは、パッキン押さえを通って回転弁アクチュエータまで延在するシャフト(83)に装着されたアーム(82)上にある。シャフトは点線の方向に回転され、逆時計回りにアームが移動し、接合部が開放され、漸増ベンチュリが形成される(図6B)。漸増ベンチュリ用に使用されるスイングチェックバルブの別の実施形態では、コーンは数フィートの直径であると共に、弁を開くための逆時計回りに移動される距離はわずか数インチ、つまり8cm未満でありうる。
【0058】
排出弁を通って移動するバイオマスおよびアンモニア混合物がフラッシュタンクに入ると、真空を保持することができる。フラッシュタンク内では、糖化に備え、アンモニアは処理バイオマスから放出され、バイオマスは冷却される。任意の典型的なフラッシュタンクは、最適な分離エルボーの機能を提供するタンジェンシャルまたはボリュート入口を有するものの場合に使用されうる。異なる圧力で次々と数回のフラッシングを施し、アンモニアを前処理バイオマスから放出することは特に適切である。例えば、大気圧近くの圧力への1回目のフラッシュは、典型的には遊離アンモニアの大部分を除去し、材料を約100℃に冷却する。約20kPa未満の圧力への2回目のフラッシュは、残存する遊離アンモニアを除去し、材料を約50℃の温度に冷却し、それは糖化にとって望ましい。
【0059】
排出弁を通過したバイオマスおよびアンモニア混合物からフラッシュタンク内に放出されるアンモニア蒸気は、フラッシュタンクから回収され、再生されうる。より低圧のフラッシュからの蒸気は、中間冷却を伴わない標準の蒸気再圧縮装置(タービンまたは蒸気ジェットポンプなど)を使用して再生されうる。したがって、アンモニア蒸気は直接再生され、凝縮なしに処理されうるか、または再使用前に凝縮されうる。後者の場合、回収された蒸気は図1などのようにコンデンサに供給される。
【0060】
処理バイオマス中のアンモニアを低減することで、pHが低下し、糖化酵素の活性にとって満足できるpHにするのに必要とされる酸の量が減少することになる。これは、酸のさらなる添加の結果、糖化酵素または微生物成長に対して阻害性がある濃度で塩の形成が生じうることから望ましい。他方、バイオマス中に残存するアンモニアは、発酵の間での微生物の成長を補助するための窒素源として役立ちうる。したがって、残存するアンモニアにより、発酵の間に使用される成長培地に窒素源を補給する必要性が低下するかまたはなくなる可能性がある。典型的には、アンモニアの少なくとも一部が除去され、これによりpHが低下するが、それに続く発酵における使用においてこの栄養をもたらすいくらかの窒素が残存する。
【0061】
前処理バイオマスがフラッシュタンクの底部で蓄積する際、それはフラッシュタンクの底部に装着されうるパドルミキサーによって撹拌されうる。前処理バイオマスは、フラッシュタンクの底部から、典型的にはタンクの底部におけるカバーを開くことによって除去される。前処理バイオマスを連続的に抽出するための底部攪拌式機械的手段が特に適切である。本装置内でのバイオマスの複数のバッチの加工においては、バイオマスおよびアンモニアの1つのバッチがバレルチャンバ内に存在しうる一方、別のバッチがフラッシュタンク内に存在する。2チャンバ型装置においては、両方のチャンバ内およびフラッシュタンク内にバッチが同時に存在しうる。さらに、前処理バイオマスの複数のバッチが、除去前にフラッシュタンク内で回収されうる。
【0062】
処理後、生産物は、典型的には、アンモニア、部分分解されたバイオマスおよび一部の発酵性糖の混合物を含む。可溶性および不可溶性画分の双方を含む前処理バイオマス全体は、フラッシュタンクから除去され、糖化反応において利用されうる。あるいは、バイオマスの乾燥重量が糖化反応において高く保持されるように、一部の液体が糖化前に前処理バイオマス混合物から排出されうる。過剰な液体が、処理後、特に大量の蒸気が処理におけるバイオマスの温度の上昇および維持に必要とされる場合に存在しうる。
【0063】
別の代替案では、バイオマス固形物は本方法での処理を介して再生されうる。
【0064】
糖化
本方法において処理されるバイオマスは糖化酵素(糖化酵素共同体と称されうる)の存在下でさらに加水分解され、加水分解物においてオリゴ糖および/または単糖が放出される。糖化酵素およびバイオマス処理のための方法については、Lynd,L.R.ら(Microbiol.Mol.Biol.Rev.(2002年)66:506−577頁)中でレビューされている。
【0065】
糖化に先立ち、前処理バイオマスを処理し、糖化酵素共同体の酵素が活性を示すようにpH、組成または温度を変更しうる。pHは、固体または液体形態での酸の添加を通じて変更されうる。あるいは、二酸化炭素(CO)は、発酵から回収されうるものであり、使用によりpHが低下しうる。例えば、COは、発酵槽から回収され、フラッシュタンク内のヘッドスペースの前処理生産物に供給されるか、または、十分な液体が存在する場合、所望されるpHが得られるまでpHを監視しながら、前処理バイオマスを介して泡立たせられる場合がある。下記のとおり、温度は糖化酵素の活性に適合する温度に誘導されうる。糖化にて用いられる酵素の活性にとって必要な任意の共同因子が追加されうる。
【0066】
糖化酵素共同体は、主に、二糖、オリゴ糖、および多糖のエーテル結合を加水分解する群「グリコシダーゼ」より選択される(がこれらに限定されない)1つもしくはそれ以上の酵素を含んでなり、酵素分類として、一般群「加水分解酵素」(EC3.)のEC3.2.1.x(Enzyme Nomenclature 1992年、Academic Press(San Diego、CA)に加え、Supplement 1(1993年)、Supplement 2(1994年)、Supplement 3(1995)、Supplement 4(1997年)およびSupplement 5[各々、Eur.J.Biochem.(1994年)223:1−5頁、Eur.J.Biochem.(1995年)232:1−6頁、Eur.J.Biochem.(1996年)237:1−5頁、Eur.J.Biochem.(1997年)250:1−6頁、およびEur.J.Biochem.(1999年)264:610−650頁])において見出される。本方法において有用なグリコシダーゼを、それらが加水分解するバイオマス成分によって分類してもよい。本方法において有用なグリコシダーゼは、セルロースを加水分解するグリコシダーゼ(例えば、セルラーゼ、エンドグルカナーゼ、エキソグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、β−グルコシダーゼ)、ヘミセルロースを加水分解するグリコシダーゼ(例えば、キシラナーゼ、エンドキシラナーゼ、エキソキシラナーゼ、β−キシロシダーゼ、アラビノキシラナーゼ、マンナーゼ、ガラクターゼ、ペクチナーゼ、グルクロニダーゼ)、および澱粉を加水分解するグリコシダーゼ(例えば、アミラーゼ、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、α−グルコシダーゼ、イソアミラーゼ)を含む。さらに、ペプチダーゼ(EC3.4.x.y)、リパーゼ(EC3.1.1.xおよび3.1.4.x)、リグニナーゼ(EC1.11.1.x)、ならびにフェルロイルエステラーゼ(EC3.1.1.73)などの糖化酵素共同体に他の活性を付加することで多糖のバイオマスの他の成分からの放出を促進することは有用でありうる。多糖を加水分解する酵素を生産する微生物が、異なる基質特異性を有する数種の酵素または酵素群によって触媒される、セルロース分解などの活性を示すことが多いことは当該技術分野で周知である。したがって、微生物由来の「セルラーゼ」は、酵素群を含んでなる場合があり、それらのすべてはセルロース分解活性に寄与しうる。セルラーゼなどの商用または非商用の酵素製剤は、酵素を得るのに用いられる精製スキームに依存し、極めて多数の酵素を含んでなる場合がある。したがって、本方法の糖化酵素共同体は「セルラーゼ」などの酵素活性を含んでなる場合があるが、この活性は2種以上の酵素によって触媒
されうると理解されている。
【0067】
糖化酵素は、Spezyme(登録商標)CPセルラーゼ(Genencor International(Rochester、NY))およびMultifect(登録商標)キシラナーゼ(Genencor)など、商用的に入手可能である。さらに、糖化酵素は、組換え微生物の使用を含む生物学的に生産されうる。
【0068】
当業者であれば、共同体中で使用するための酵素の有効量を決定しかつ最適な酵素活性のための条件を調節する方法を知るであろう。当業者であれば、共同体中で必要とされる酵素活性のクラスを最適化しかつ選択された条件下での所定の前処理生産物の最適な糖化を得る方法も知るであろう。
【0069】
好ましくは、糖化反応は、糖化酵素における最適な温度およびpHでまたはそれらの近傍で行われる。本方法における糖化酵素共同体の場合に用いられる最適な温度は約15℃〜約100℃の範囲である。別の実施形態では、最適な温度は約20℃〜約80℃の範囲である。pH最適値は約2〜約11の範囲でありうる。別の実施形態では、本方法において糖化酵素共同体の場合に用いられるpH最適値は約4〜約10の範囲である。
【0070】
約数分〜約120時間、および好ましくは約数分〜約48時間で糖化を行ってもよい。反応における時間は、酵素濃度および比活性、ならびに用いられる基質および温度およびpHなどの環境条件に依存することになる。当業者であれば、特定の基質および糖化酵素共同体の場合に用いられるべき温度、pHおよび時間の最適な条件を容易に決定できる。
【0071】
糖化をバッチ式または連続方法で行ってもよい。さらに、糖化を1工程または多数の工程で行ってもよい。例えば、糖化に必要な異なる酵素は異なる最適なpHまたは温度を示しうる。ある温度およびpHで酵素を用いて一次処理を行った後、異なる温度および/またはpHで異なる酵素を用いて二次または三次(またはさらなる)処理を行ってもよい。さらに、順次工程で異なる酵素を用いた処理は、同じpHおよび/または温度で、あるいは、より高いpHおよび温度で安定でかつより活性のあるヘミセルラーゼ、次いでより低いpHおよび温度で活性のあるセルラーゼの使用など、異なるpHおよび温度で行われうる。
【0072】
糖化後のバイオマスからの糖類の可溶化の度合いを、単糖およびオリゴ糖の放出の測定により監視してもよい。単糖およびオリゴ糖を測定するための方法は、当該技術分野で周知である。例えば、1,3−ジニトロサリチル(DNS)酸アッセイ(Miller,G.L.、Anal.Chem.(1959年)31:426−428頁)を用いて還元糖の濃度を測定してもよい。あるいは、本明細書中の「一般的方法」の項に記載のように、適切なカラムを使用し、HPLCにより糖類を測定してもよい。
【0073】
発酵
バイオマスから放出された発酵性糖の適切な微生物による使用により、標的化学物質を生産してもよい。糖化後であるが発酵に先立ち、糖化混合物を例えば蒸発により濃縮することで、発酵性糖の濃度が増加しうる。場合により、糖化生産物中の液体は、バッチ式または連続的な方法で固体から分離されうる。場合により、液体または糖化生産物全体は、発酵に先立ち殺菌されうる。pHについては、発酵の間に用いられる微生物および糖化の間に用いられるpHに依存し、発酵に適するpHに調節されうる。さらに、糖化混合物に微生物の成長にとって必要な追加の栄養を補充することが可能である。補充物は、例えば、酵母抽出物、特定のアミノ酸、リン酸塩、窒素源、塩、および微量元素を含みうる。抗生物質など、特定の生体触媒によって作製される特定の生産物の生産にとって必要な成分もまた含まれることで、酵素触媒反応において必要とされるプラスミドまたは共同因子の維持が可能である。さらに追加の糖類が含まれることで、全糖濃度が増加しうる。糖化混合物は発酵培養液の成分として用いられ、例えば最終培地の約100%〜約10%を構成しうる。
【0074】
温度および/またはヘッドスペースガスもまた、発酵微生物にとって有用な条件に応じて調節されうる。発酵は好気性または嫌気性でありうる。発酵は、糖化に続いて行われうるか、または同時糖化および発酵(SSF)により、糖化と同時に行われうる。SSFにより、糖化によってもたらされる糖レベルが低く保持され、それにより、起こり得る糖化酵素の生産物の阻害が低下し、汚染微生物における糖の使用可能性が低下し、かつ前処理されたバイオマスの単糖および/またはオリゴ糖への変換が改善される可能性がある。
【0075】
発酵によって生産されうる標的化学物質は、例えば、酸、アルコール、アルカン、アルケン、芳香族化合物、アルデヒド、ケトン、生体高分子、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、ビタミン、抗生物質、および医薬品を含む。アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、グリセロール、エリスリトール、キシリトール、およびソルビトールを含むがこれらに限定されない。酸は、酢酸、乳酸、プロピオン酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、酪酸、グルコン酸、イタコン酸、クエン酸、コハク酸およびレブリン酸を含む。アミノ酸は、グルタミン酸、アスパラギン酸、メチオニン、リジン、グリシン、アルギニン、トレオニン、フェニルアラニンおよびチロシンを含む。追加の標的化学物質は、メタン、エチレン、アセトンおよび工業用酵素を含む。
【0076】
標的化学物質への糖類の発酵が、単一または多段階の発酵において、1つもしくはそれ以上の適切な生体触媒により行われうる。生体触媒は、細菌、糸状真菌および酵母より選択される微生物でありうる。生体触媒は、野生型微生物または組換え微生物である場合があり、エスケリキア(Escherichia)、ジモモナス(Zymomonas)、サッカロミセス(Saccharomyces)、カンジダ(Candida)、ピキア(Pichia)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、バチルス(Bacillus)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、およびクロストリジウム(Clostridium)を含む。別の実施形態では、生体触媒は、組換え大腸菌(Escherichia coli)、ジモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)、サッカロミセス・セレビシェ(Saccharomyces cerevisiae)、クロストリジア・サーモセルム(Clostridia thermocellum)、サーモアナエロバクテリウム・サッカロリチクム(Thermoanaerobacterium saccharolyticum)、およびピキア・スチピチス(Pichia stipitis)よりなる群から選択されうる。
【0077】
標的化学物質を生産するための発酵にて用いられる多数の生体触媒については記載がなされており、他のものは発見されるか、突然変異によって生産されるか、または組換え手段によって設計されうる。本方法を使用した、処理バイオマスの糖化から生産される発酵性糖を用いる任意の生体触媒を使用し、発酵による生産が知られている標的化学物質が作製されうる。
【0078】
特に、エタノールおよびブタノールを含む生物燃料を生産する生体触媒が重要である。たとえば発溶媒性(solventogenic)クロストリジア(Clostridia)によるアセトン、ブタノールおよびエタノール(ABE発酵)への炭水化物の発酵については周知である(JonesおよびWoods(1986年)Microbiol.Rev.50:484−524頁)。クロストリジウム・アセトブチリクム(Clostridium acetobutylicum)の変異株を用いる、高レベルのブタノールを生産し、さらにアセトンおよびエタノールを生産するための発酵方法が、米国特許第5,192,673号明細書に記載されている。高レベルのブタノールを生産し、さらにアセトンおよびエタノールを生産するためのクロストリジウム・バイジェリンキー(Clostridium beijerinckii)の変異株の使用については、米国特許第6,358,717号明細書に記載されている。共同所有される同時係属中の特許出願、国際公開第2007/041269号パンフレットおよび国際公開第2007/050671号パンフレットは、遺伝子操作された微生物宿主内での1−ブタノールおよびイソブタノールのそれぞれの生産について開示している。共同所有される同時係属中の米国特許出願第11/741892号明細書および米国特許出願第11/741916号明細書は、遺伝子操作された微生物宿主内での2−ブタノールの生産について開示している。イソブタノール、1−ブタノールまたは2−ブタノールは、開示される方法に従う、微生物宿主による、本方法を用いて生産される加水分解物の発酵から生産されうる。
【0079】
大腸菌(E.coli)の遺伝子組換え株は、エタノール生産用の生体触媒としても用いられている(Underwoodら、(2002年)Appl.Environ.Microbiol.68:6263−6272頁)。エタノールの生産を改善しているジモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)の遺伝子組換え株については、米国特許出願公開第2003/0162271A1号明細書に記載されている。アルコール発酵菌(Zymomonas mobilis)のさらに改変されたエタノール生産株およびエタノール生産のためのその使用については、共同所有される同時係属中の米国特許出願第60/847813号明細書および米国特許出願第60/847856号明細書においてそれぞれ記載されている。エタノールは、開示される方法に従う、アルコール発酵菌(Zymomonas mobilis)による、本工程を用いて生産される加水分解物の発酵から生産されうる。
【0080】
乳酸は、大腸菌(E.coli)の組換え株(Zhouら、(2003年)Appl.Environ.Microbiol.69:399−407頁)、バチルス(Bacillus)の天然株(米国特許出願公開第2005/0250192号明細書)、および糸状菌(Rhizopus oryzae)(TayおよびYang(2002年)Biotechnol.Bioeng.80:1−12頁)による発酵において生産されている。大腸菌(E.coli)の組換え株は、1,3プロパンジオール(米国特許第6,013,494号明細書、米国特許第6,514,733号明細書)およびアジピン酸(Niuら、(2002年)Biotechnol.Prog.18:201−211頁)を生産するための発酵における生体触媒として用いられている。酢酸は、組換えクロストリジア(Clostridia)(Cheryanら、(1997年)Adv.Appl.Microbiol.43:1−33頁)および新規に同定された酵母株(Freer、(2002年)World J.Microbiol.Biotechnol.18:271−275頁)を用いた発酵により作られている。組換え大腸菌(E.coli)および他の細菌によるコハク酸の生産については、米国特許第6,159,738号明細書中で、および変異組換え大腸菌(E.coli)によるものについてはLinら、(2005年)Metab.Eng.7:116−127頁中で記載されている。ピルビン酸は、トルロプシス・グラブラータ(Torulopsis glabrata)変異酵母(Liら、(2001年)Appl.Microbiol.Technol.55:680−685頁)および変異大腸菌(E.coli)(Yokotaら、(1994年)Biosci.Biotech.Biochem.58:2164−2167頁)により生産されている。大腸菌(E.coli)の組換え株は、パラ−ヒドロキシケイ皮酸(米国特許出願公開第2003/0170834号明細書)およびキナ酸(米国特許出願公開第2006/0003429号明細書)を生産するための生体触媒として用いられている。
【0081】
プロピオン酸を生産するための発酵においては、プロピオニバクテリウム・アシジプロピオニシ(Propionibacterium acidipropionici)の変異体が用いられており(SuwannakhamおよびYang(2005年)Biotechnol.Bioeng.91:325−337頁)、酪酸についてはクロストリジウム・チロブチリカム(Clostridium tyrobutyricum)により作られている(WuおよびYang(2003年)Biotechnol.Bioeng.82:93−102頁)。プロピオン酸塩およびプロパノールについては、クロストリジウム属(Clostridium sp.)株17cr1(Janssen、(2004年)Arch.Microbiol.182:482−486頁)によるトレオニンからの発酵により作られている。酵母様の黒酵母(Aureobasidium pullulans)を用い、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)の変異体(Singhら、(2001年)Indian J.Exp.Biol.39:1136−43頁)によりグルコン酸が作られている(アナンタシアジス(Anantassiadis)ら、(2005年)Biotechnol.Bioeng.91:494−501頁)。5−ケト−D−グルコン酸がグルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)の変異体により作られ(Elfariら、(2005年)Appl Microbiol.Biotech.66:668−674頁)、イタコン酸がアスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)の変異体により生産され(ReddyおよびSingh(2002年)Bioresour.Technol.85:69−71頁)、クエン酸がアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)変異株により生産され(Ikram−Ul−Haqら、(2005年)Bioresour.Technol.96:645−648頁)、かつキシリトールがカンジダ・ギリエルモンディ(Candida guilliermondii)FTI 20037により生産された(MussattoおよびRoberto(2003年)J.Appl.Microbiol.95:331−337頁)。4−ヒドロキシバレレートを含有するバイオポリエステルは、大量の3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸も含有するものであり、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)およびラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)の組換え体により生産された(Gorenfloら、(2001年)Biomacromolecules 2:45−57頁)。L−2,3−ブタンジオールが組換え大腸菌(E.coli)により作られた(Uiら、(2004年) Lett.Appl.Microbiol.39:533−537頁)。
【0082】
発酵によるアミノ酸の生産は、栄養要求株およびコリネバクテリウム(Corynebacterium)、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)およびセラティア(Serratia)のアミノ酸類似体−耐性菌を用いて行われている。例えば、ヒスチジン類似体に耐性を示す株を用いたヒスチジンの生産が日本特許出願公開第56008596号公報に、組換え株を用いた同生産が欧州特許第136359号明細書に記載されている。トリプトファン類似体に耐性がある株を使用するトリプトファンの生産については、日本特許第47004505号公報および日本特許第51019037号公報に記載されている。イソロイシン類似体に耐性がある株を使用するイソロイシンの生産については、日本特許第47038995号公報、日本特許第51006237号公報、日本特許第54032070号公報に記載されている。フェニルアラニン類似体に耐性がある株を使用するフェニルアラニンの生産については、日本特許第56010035号公報に記載されている。成長にフェニルアラニンを必要とし、チロシンに耐性を示す株(Agr.Chem.Soc.Japan 50(1)R79−R87(1976年))または組換え株(欧州特許第263515号明細書、欧州特許第332234号明細書)を用いたチロシンの生産、およびL−アルギニン類似体に耐性を示す株を用いたアルギニンの生産(Agr.Biol.Chem.(1972年)36:1675−1684頁、日本特許出願公開第54037235号公報および日本特許出願公開第5715038号公報)が記載されている。フェニルアラニンは、大腸菌(Eschericia coli)株ATCC31882、31883、および31884内での発酵によっても生産された。組換えコリネフォルム細菌におけるグルタミン酸の生産が、米国特許第6,962,805号明細書に記載されている。大腸菌(E.coli)の変異株によるトレオニンの生産が、OkamotoおよびIkeda(2000年)J.Biosci Bioeng.89:87−79頁に記載されている。メチオニンが、コリネバクテリウム・リリウム(Corynebacterium lilium)の変異株によって生産された(Kumarら、(2005年)Bioresour.Technol.96:287−294頁)。
【0083】
有用なペプチド、酵素、および他のタンパク質もまた、生体触媒(例えば、米国特許第6,861,237号明細書、米国特許第6,777,207号明細書、米国特許第6,228,630号明細書)によって作られている。
【0084】
バイオマスの発酵性糖への前処理および糖化と、その後の糖類の標的化学物質への発酵は、糖類のエタノールへの発酵における生体触媒としてジモモナス・モビリス(Z.mobilis)を用いた、前処理されたトウモロコシ穂軸からのエタノールの生産についての本明細書中の実施例5にて例示される。本発明の方法は、バイオマスからの1,3−プロパンジオールの生産においても利用されてもよい。共同所有される同時係属中の米国特許出願第11/403087号明細書の実施例10に記載のように、本方法を用いて処理されるバイオマスは糖化可能であり、糖化後、大腸菌(E.coli)の使用によって1,3−プロパンジオールが生産される。
【0085】
生体触媒による発酵にて生産される標的化学物質は、当該技術分野で既知の様々な方法を用いて回収されうる。生産物は、遠心分離、濾過、精密濾過、およびナノ濾過により、他の発酵成分から分離されうる。生産物は、イオン交換、溶媒抽出、または電気透析により抽出されうる。凝集剤を使用することで、生産物の分離が促進される。具体例として、バイオ生産された1−ブタノールは、ABE発酵についての当該技術分野で既知の方法を用いて発酵培地から単離されうる(例えば、Durre、Appl.Microbiol.Biotechnol.49:639−648頁(1998年)、Grootら、Process.Biochem.27:61−75頁(1992年)、およびそれらの中の参考文献を参照)。例えば、遠心分離、濾過、デカンテーションまたは同類のものにより、固体が発酵培地から除去されうる。次いで、1−ブタノールは、蒸留、共沸蒸留、液体−液体抽出、吸着、ガスストリッピング、膜蒸発、または透析蒸発などの方法を用いて発酵培地から単離されうる。発酵媒体からの1,3プロパンジオールの精製が、例えば、反応混合物に有機溶媒、蒸留、およびカラムクロマトグラフィーによる抽出を施すことにより実施されうる(米国特許第5,356,812号明細書)。この方法にとって特に良好な有機溶媒はシクロヘキサンである(米国特許第5,008,473号明細書)。アミノ酸は、イオン交換樹脂吸着および/または結晶化などの方法により発酵培地から回収されうる。
【実施例】
【0086】
一般的方法および材料
以下の略語が使用される。すなわち、「HPLC」は高性能液体クロマトグラフィー、「C」は摂氏、「kPa」はキロパスカル、「m」はメートル、「mm」はミリメートル、「kW」はキロワット、「μm」はマイクロメートル、「μL」はマイクロリットル、「mL」はミリリットル、「L」はリットル、「min」は分、「mM」はミリモル、「cm」はセンチメートル、「g」はグラム、「kg」はキログラム、「wt」は重量、「hr」は時間、「temp」もしくは「T」は温度、「theoret」は理論、「pretreat」は前処理、「DWB」はバイオマス乾燥重量、「ASME」はAmerican Society of Mechanical Engineers(米国機械学会)、「s.s.」はステンレス鋼、または「in」はインチである。
【0087】
硫酸、水酸化アンモニウム、酢酸、アセトアミド、酵母抽出物、グルコース、キシロース、ソルビトール、MgSO・7HO、リン酸およびクエン酸を、Sigma−Aldrich(St.Louis,MO)から入手した。
【0088】
処理は、実施例においては前処理と称する。
【0089】
小型バレルピストン反応器
ピストンを装備した5.1cm×45.7cmのステンレス鋼バレルで水平方向に構成される小型バレルピストン反応器(ピストン/バレル反応器)を組み立てた。ピストンを4つのOリングでバレルで密封し、吐出行程中、ピストンの裏側を窒素で加圧した。45.7cmのバレルに3つの複数の使用ポートを装備し、真空の適用、水性アンモニアの注入、蒸気の注入、およびバレル内部での温度測定用の熱電対の挿入を可能にした。蒸気注入時の過剰な蒸気凝縮を回避するため、バレルの外側を3つのバンドヒーターで加熱し、シリコーンが添着されたファイバーグラスジャケットで覆われた2.5cm厚のファイバーグラスマットで絶縁した。
【0090】
反応器バレルを、15.2cm×61cmのステンレス鋼フラッシュタンクに垂直方向に直接装着した。バレルを、円錐状ノズルおよびシート端部剪断弁装置によってフラッシュタンクから隔てた。端部剪断弁のダイの直径は3.5cmであった。円錐状ノズルおよびシートに対する背圧を、端部剪断弁のコーン部に接続された10.2cm直径のエアシリンダへの約138kPa(ゲージ圧)の背圧に調整した。端部剪断弁のコーン部は最大で1.6cm後方移動でき、フラッシュタンク内の粒子の排出を可能にした。端部剪断弁の出口のエルボーは前処理固形物をフラッシュタンクの底部に下方誘導し、そこでは固形物はタンクの底部におけるドーム状端部フランジのボルトを緩めることによって容易に除去された。フラッシュタンクに対して上部のドーム状フランジに、フラッシュタンクの軸に対して直角に加工されたスロットに適合する特定の出口を組み込むことで、放出された蒸気のコーナ軌跡周辺から出口フィッチングへの移動が引き起こされ、それは同伴されるバイオマス粒子および水滴のベントコンデンサへのキャリーオーバーの防止に役立った。
【0091】
大型バレルピストン反応器
(ASMEコードがスタンプされた)ピストン反応器における第2のバレルを、同じ5.1cmの直径であるが長さがより長い68.6cmで組み立て、追加的なバイオマスの容量を保持した。ピストンを4つのOリングでバレルに密封し、吐出行程中、ピストンの裏側を窒素で加圧した。68.6cmのバレルに8つの複数の使用ポート(4つはそれぞれ頂部および底部表面沿い)を装備し、真空の適用、水性アンモニアの注入、蒸気の注入およびバレル内部の温度を測定するための熱電対の挿入を可能にした。反応器バレルに、バレルのさらなる加熱のための蒸気ジャケットを装備した。反応器バレルを、15.2cm×61cmのステンレス鋼フラッシュタンクに垂直方向に直接装着した。バレルを、円錐状ノズルおよびシート端部剪断弁装置により、フラッシュタンクから隔てた。端部の弁を剪断するダイの直径は3.5cmであった。円錐状ノズルおよびシートに対する背圧は調整可能であり、大部分の試験を、端部剪断弁のコーン部に接続された10.2cm直径のエアシリンダへの約138kPa(ゲージ圧)の背圧を用いて実施した。端部剪断弁のコーン部は最大で1.6cm後方移動でき、粒子のフラッシュタンクへの排出を可能にした。固形物がタンクの底部におけるドーム状端部フランジのボルトを緩めることによって容易に除去される場合、端部剪断弁の出口にあるエルボーが前処理固形物をフラッシュタンクの底部へと下方誘導した。フラッシュタンクに対して上部にあるドーム状フランジにフラッシュタンクの軸に対して直角に機械加工されたスロットに適合する特別な出口を組み込んだことで、放出された蒸気のコーナ軌跡周辺から出口フィッチングへの移動が引き起こされ、それは同伴されるバイオマス粒子および水滴のベントコンデンサへのキャリーオーバーの防止に役立った。3つの電気バンドヒーター(60℃に設定)および絶縁部をフラッシュタンクに沿って追加し、熱で前処理された固形物の加熱容器へのフラッシュを可能にし、商業用工程のシミュレーションが改善された。
【0092】
スチームガン反応器のバッチ式消化システム
4リットルのスチームガン反応器(Autoclave Engineers(Erie、PA))は、2つのボール弁によって閉鎖される長さ102mmで計画された80ハステロイ(Hastelloy)(登録商標)パイプより構成される蒸気ジャケット付き反応器であった。追加の電気ヒーターを、反応器のジャケットが付いていない露出された全表面上に設け、かつ前処理の定値温度に制御する。バイオマスを最高の前処理温度まで速やかに誘導するため、直接蒸気注入も用いられた。蒸気圧を調節および制御し、所望の前処理温度を維持した。反応器の底部を51mmにネックダウンした。すべての前処理した材料を、反応器の底部で交換可能なダイを通して排出させ、厚肉のジャケット付き冷却フラッシュタンク内部で支持された0.21mのナイロン(Hotfill(登録商標))製バッグ内に回収した。
【0093】
前処理および酵素加水分解反応器(PEHReactor)
9LのPEHReactor(NREL,Golden,COで構成;同時係属中の米国特許出願第11/402464号明細書を参照)は、約15cm×51cmのステンレス鋼反応容器を有し、3.2LのPEHReactorは15cm×18cmのステンレス鋼反応容器を有する。各容器は、処理反応物質を導入するための反応容器の縦中心を通って延在する注入ランスを有する。注入ランスは、容器の一端部上のカバー内のポートに回転ジョイントを用いて接続され、それは容器への接近手段として追加ポートを有する。4つのバッフルが容器壁の全長にわたり、壁に垂直に取り付けられる。容器内で浮遊状態にあるバッフルおよび3.2cm×3.2cmの22個のセラミック製摩擦媒体シリンダー(E.R.Advanced Ceramics(East Palestine、OH))は、容器の回転時にバイオマスと反応物との機械的混合を適用し、それにより反応物のバイオマスへの吸収が促進される。7つのシリンダを小型反応器内で使用し、22を大型反応器内で使用する。PEHReactorを、回転のための機構を提供するBellco Cell−Production Roller Apparatus(Bellco Technology(Vineland、NJ))上に設置し、ローラー装置を具備する反応器を、熱を供給する温度制御チャンバー内に収容する。外部ソースをカバー内のランスに接続されたポートに取り付けることにより、反応容器に真空および圧力を印加できる。
【0094】
フェドバッチ糖化反応器
フェドバッチ糖化反応器は、循環ポンプ、酸および塩基用ポンプ、ソレノイド弁、温度制御用熱交換器、蒸気供給、プロセス水、空気供給制御弁および濾過、背圧制御弁、ならびに排気フィルタを有する、BioStat EDデータ制御ユニットおよびそれに関連する制御モジュールによって制御される15Lの発酵糖(B.Braun Biotech International(Allentown,PA))である。発酵糖に2つの11.4cm直径の3枚羽根高効率Ligntnin A−310インペラーを装備した。底部インペラーを反応器底部から7.6cmの所に位置づけ(底部を貫通する駆動シャフトにおけるシャフトの底部近傍に大型シール装置が存在することから、それをより近い任意の場所に位置させることができなかった)、上部インペラーを反応器底部から22.9cmの所に位置づけた。発酵糖容器は、19.0cmの直径および55.9cmの最大高さを有する。4つの取り外し可能なバッフルを設置し、その各々は1.6cmの幅および48.3cmの長さを有し、容器底部から頂部の約7.6cm以内に延在した。APVローブポンプ(モデルM1/028/06)、1〜1/2−in(3.81cm)のフレキシブルホースおよびTeflonサイトフローインジケータ(sight flow indicator)で構成されるポンプアラウンドループ(pump around loop)を、発酵槽システム上の頂部および底部ポートに垂直に配置した(plumbed)。ポンプアラウンドループを、CF8Mボディ、316s.s.ボール、およびPTFEシートと共に、1〜1/2−in(3.81cm)のValmicroおよびSVFフルポートボールバルブを有する発酵容器から隔てた。さらに、Vポート剪断弁(Triac Controls)を、ボールバルブに先行し、ローブポンプの下流に位置づけることで、発酵糖の頂部ポートからポンプを隔てた。再循環サイクル中、この弁を最大60°まで徐々に閉じることで、再循環する前処理固形物のさらなる剪断をもたらした。
【0095】
分析法
セルロースの定量
各バイオマス出発試料中のセルロースの量を、ASTM E1758−01「HPLCにより炭水化物を測定するための標準的方法(Standard method for the determination of carbohydrates by HPLC)」などの当該技術分野で周知の方法を用いて測定した。
【0096】
糖、アセトアミド、乳酸および酢酸含有量の測定
糖化液中または発酵培養液中の可溶性糖(グルコース、セロビオース、キシロース、ガラクトース、アラビノースおよびマンノース)、酢酸およびエタノールを、適切な保護カラムを有するBio−Rad HPX−87PおよびBio−Rad HPX−87Hカラム(Bio−Rad Laboratories(Hercules,CA))を使用し、HPLC(Agilent Model 1100、Agilent Technologies(Palo Alto,CA))によって測定した。試料のpHを測定し、必要に応じ硫酸を用いて5〜6に調節した。次いで、試料を直接に0.2μmのシリンジフィルターを通してHPLCバイアルに通過させた。HPLCの稼動条件は以下の通りであった。
HPX−87P(炭水化物用):
注入容量:10〜50μL、濃度および検出器の限界に依存
移動相:HPLCグレードの水、0.2μmに濾過および脱気
流速:0.6mL/分
カラム温度:80〜85℃、ガードカラム温度<60℃
検出器温度:可能な限り主カラム温度に近い
検出器:屈折率
実行時間:35分間のデータ収集に加え、実行後の15分間(後の溶出化合物のために可能な調節を行う)
Biorad Aminex HPX−87H(炭水化物、酢酸およびエタノール用)
注入容量:濃度および検出器限界に依存して5〜10μL
移動相:0.2μmで濾過され、脱気された0.01N硫酸
流速:0.6mL/分
カラム温度:55℃
検出器温度:可能な限りカラム温度に近づける
検出器:屈折率
実行時間:25〜75分間のデータ収集
実行後、試料中の濃度を各化合物における標準曲線から判定した。
【0097】
実施例1
小型バレルピストン反応器内での穂軸の前処理
全粒トウモロコシ穂軸を、約0.95cmのジョー間隔を有するジョークラッシャー(2.2kWモーター)、その後にデランパー(delumper)(1.5kWモーター、Franklin Miller Inc.(Livingston,NJ))で加工した後、1.9cmの米国標準スクリーンを装備したSweco製スクリーンでスクリーニングし、全粒穂軸をより小さい断片に粉砕した。小型バレルピストン反応器(一般的方法に記載)に、115g(乾燥重量基準)の粉砕穂軸を、穂軸をピストンが除かれた反応器の端部に手作業で入れることによって装入した。ピストンを元に戻し、端部に差し込んだ。真空を反応容器に適用し、反応器圧力を10kPa(0.1バール)未満にし、希釈水酸化アンモニウム溶液を注入し、(表1に示されるように)100gのバイオマス乾燥重量あたり4gまたは6gのいずれかのアンモニア濃度および100g全バイオマス−水性アンモニア混合物あたり50gのバイオマス乾燥重量濃度を得た。アンモニア溶液を装入後、蒸気を注入し、反応器内部の温度を145℃にした。バイオマスを20分間温度保持し、次いでピストンを駆動することによってフラッシュタンクに排出した。20分間の前処理中、温度を監視し、蒸気を必要に応じて添加し、温度を維持した。前処理穂軸を、フラッシュタンクの底部から採取した。過剰な遊離液体を除去し、残存する固形物を糖化において使用した。
【0098】
糖化においては、約470gの前処理バイオマスを、一般的方法に記載の3.2LのPEHR反応器に添加した。内容物のpHを、pH4.8の1Mクエン酸緩衝液の注入に加えてクエン酸一水和物の添加によって約5.5に調整した。一旦、所望されるpHに達すると、β−グルコシダーゼ、キシラナーゼ、β−キシロシダーゼおよびアラビノフラノシダーゼからなる、Spezyme(登録商標)CPセルラーゼ(Genencor International(Rochester,NY))の12.9mg/gセルロースまたは25.8mg/gセルロース、およびヘミセルラーゼ酵素共同体(Diversa(San Diego,CA))の4.2mg活性タンパク質/gセルロースまたは8.4mg活性タンパク質/gセルロースを反応器に装入した。緩衝液、酵素および水を、反応器内の最終混合物が23gの乾燥バイオマス/100gの前処理バイオマス−糖化酵素共同体混合物からなるように添加した。反応器を、インキュベーター内で、19rpm、50℃でのローリングで72時間保持した。下の表1に示される収率は、理論収率のパーセントとしての放出である。
【0099】
【表1】

【0100】
実施例2
異なる時点での大型バレルピストン反応器内での前処理
蒸気をバレルのジャケットに添加し、(一般的方法に記載の)大型バレルピストン反応器のバレルを約130℃に予熱した。フラッシュレシーバーをバンドヒーターで約60℃に予熱した。粉砕穂軸を実施例1に記載のように調製した。これらの穂軸(175g、乾燥重量基準)を、穂軸をピストンを取り出した反応器の端部に手作業で入れることにより、大型バレル反応器に装入した。ピストンを元に戻し、端部に差し込んだ。真空を反応容器およびフラッシュレシーバーに適用し、10kPa未満に降圧し、希釈水酸化アンモニウム溶液を反応器に注入し、6g/100gバイオマス乾燥重量のアンモニア濃度および45g/100g全バイオマス−水性アンモニア混合物のバイオマス乾燥重量濃度を得た。一旦、アンモニアを装入すると、蒸気を反応器に注入し、温度を145℃にした。混合物を、温度を監視し、必要に応じて蒸気を添加することにより、この温度で10もしくは20分間保持し、次いでピストンを駆動することによって予熱したフラッシュタンクに排出した。フラッシュレシーバーが約59℃に達するまでフラッシュタンクに対して真空を引いた。3回の10分間の前処理および6回の20分間の前処理の実施に伴い、同じ期間前処理されたすべての材料を端部でプールした。遊離液体を、フラッシュレシーバーからの回収時、前処理固形物から分離し、糖化のために再び添加しなかった。その後、前処理穂軸の試料を、小型PEHReactor内で実施例1に記載のように糖化した。すべての糖化を、キシラナーゼ、β−キシロシダーゼ、アラビノフラノシダーゼおよびβ−グルコシダーゼを含む、Spezyme(登録商標)CPセルラーゼの12.9mg/gセルロースおよびヘミセルラーゼ酵素共同体(Diversa)の4.2mg活性タンパク質/gセルロースを使用し、50℃およびpH5.5で72時間行った。下の表2で示される収率は、理論収率のパーセントとしての放出である。
【0101】
【表2】

【0102】
実施例3
スチームガンに対する大型バレルピストン反応器内での前処理
サイズが低減された穂軸を実施例1に記載のように調製した。大型バレルピストン反応器内での前処理を実施例2に記載のように実施した。スチームガンにおける前処理においては、穂軸をまず9LのPEHReactorに装入した。反応器を、外部表面上で氷と接触させて回転することによって4℃に冷却した。真空を容器に適用し、4℃の冷室内で予冷され、氷槽内に漬けられた管を通過された希釈水酸化アンモニウム溶液を注入し、6g/100gバイオマス乾燥重量のアンモニア濃度および45g/100g全バイオマス−水性アンモニア混合物のバイオマス乾燥重量濃度を得た。アンモニアおよび穂軸を装入したPEHReactorを、氷を回転反応容器の表面に適用することによって4℃に冷却し、4℃で30分間回転した。この時点で、内容物を一般的方法に記載のスチームガン反応器に移した。一旦、スチームガン反応器にアンモニア−穂軸混合物を装入すると、温度を蒸気の直接注入によって145℃に上昇させた。穂軸−アンモニア混合物をこの温度で20分間保持し、次いで混合物をフラッシュタンクに排出した。
【0103】
前処理穂軸の試料を大型バレルピストン反応器およびスチームガン反応器の双方から採取し、実施例1に記載のように糖化した。糖化を、β−グルコシダーゼ、キシラナーゼ、β−キシロシダーゼおよびアラビノフラノシダーゼからなる、12.9mg/gセルロースのSpezyme(登録商標)CPセルラーゼ(Genencor)およびヘミセルラーゼ酵素共同体(Diversa)の4.2mg活性タンパク質/gセルロースを使用して実施した。反応器を、インキュベーター内、50℃および19rpmで72時間保持した。各反応器内で前処理において得られるグルコース収率を下の表3に示す。
【0104】
【表3】

【0105】
実施例4
大型バレルピストン反応器内でのトウモロコシ穂軸および繊維混和物の前処理
粉砕トウモロコシ穂軸を実施例1に記載のように調製した。粉砕穂軸単独およびCargill Bran 80(Cargill(Minnetonka,MN))と混和した粉砕穂軸を大型バレルピストン反応器内で前処理した。粉砕穂軸およびCargill Bran 80トウモロコシ繊維を、繊維が混合試料の全乾燥バイオマスの約33%であるように結合させた。それぞれの場合、175g(乾燥重量基準)の供給原料を反応器に添加した。前処理を実質的に実施例2に記載のように実施した。しかし、これらの実験では、アンモニア溶液の添加後、反応器内容物を蒸気注入前の10分間保持し、温度を145℃にした。蒸気注入後、温度を蒸気の添加によって145℃で10分間保持した(必要な場合)。前処理後、試料を、ピストンの駆動と共にフラッシュタンクに排出した。
【0106】
前処理穂軸および穂軸−繊維混和物の試料を大型バレルピストン反応器のフラッシュタンクから採取し、実施例1に記載のように小型PEHReactor内で糖化した。バイオマスを、反応器容量の20%が満たされる程度に添加した。糖化を、Spezyme(登録商標)CPセルラーゼ(Genencor)の12.9mg/gセルロースおよびMultifect Xylanase(Genencor)の15mg/gセルロースを使用して実施した。PEHReactorを、インキュベーター内、50℃および19rpmで72時間保持した。前処理における得られたグルコースおよびキシロース収率を下の表4に示す。
【0107】
【表4】

【0108】
実施例5
大型バレルピストン反応器内で前処理されたトウモロコシ穂軸からのエタノールの生産
トウモロコシ穂軸の前処理を、実施例2に記載のように10分間実施した。合計17のかかる前処理を実施した。4つの前処理から得られる前処理穂軸を糖化のためにプールし、フェドバッチ糖化のための初期加水分解物を提供した。残りの13のランから得られる前処理穂軸をフェドバッチ糖化での使用のためにプールした。
【0109】
フェドバッチ糖化を開始するため、一般的方法に記載のフェドバッチ糖化反応器にまず加水分解物を装入し、反応器容積を第1のインペラーの底部に至るまで満たした。この加水分解物を、前処理穂軸を2.8Lの振とうフラスコ内で糖化することによって調製した。これらの振とうフラスコに、465gの前処理固形物、DI水1000ml、ならびに、β−グルコシダーゼ、キシラナーゼ、β−キシロシダーゼおよびアラビノフラノシダーゼを含む、28.4mgのSpezyme(登録商標)CP/gセルロースおよび4.2mg活性タンパク質/gセルロースのヘミセルラーゼ酵素共同体(Diversa)での酵素を装入した。酵素添加前、pHを8.5%HPOで5に調整した。振とうフラスコを回転振とう器内、50℃および150rpmで48時間維持し、その時点で加水分解物をフェドバッチ反応器に装入した。
【0110】
一旦、初期加水分解物を装入すると、前処理バイオマス−アンモニア混合物の第1の一定分量(約700g)を反応器に添加した。pHを8.5%HPOの添加によって設定値5.5で維持した。一旦、pHを設定値に再調整してから、β−グルコシダーゼ、キシラナーゼ、β−キシロシダーゼおよびアラビノフラノシダーゼを含む、28.4mgのSpezyme(登録商標)CP/gセルロースおよびヘミセルラーゼ酵素共同体(Diversa)の4.2mg活性タンパク質/gセルロースを添加した。前処理バイオマス−アンモニア混合物、Spezyme(登録商標)CPセルラーゼおよびヘミセルラーゼ酵素共同体のさらなる一定分量を、t=4、8、12、22、26、30および34時間に添加した。ポンプアラウンドループを概して酵素添加の約1時間後に開始し、約1時間から最大で22時間の固形物添加の間、実行した。26時間および30時間の添加後、ポンプを酵素添加の約50分後開始し、30分間実行した。34時間の添加後、ポンプを酵素添加の約3時間後に開始し、30分間実行した。また、ポンプをt=29、33、47および49時間に30分間実行した。全糖化時間は120時間であった。この時点で、加水分解物は、約60g/Lの単量体グルコース、25g/Lの単量体キシロースおよび10g/Lの酢酸を含有した。
【0111】
この加水分解物を、アルコール発酵菌(Zymomonas mobilis)株ZW800またはZW658(ATCC#PTA−7858)の発酵に使用した。ZW658は、エタノールへのキシロース発酵のために改変されているアルコール発酵菌(Zymomonas mobilis)の株であり、共同所有される同時係属中の米国特許出願第60/847813号明細書に記載されている。ZW658は、キシロースイソメラーゼ、キシルロキナーゼ、トランスアルドラーゼおよびトランスケトラーゼをコードする4つのキシロース利用遺伝子を有する2つのオペロン、PgapxylABおよびPgaptaltktを連続転位事象を介してZW1(ATCC#31821)のゲノムに統合し、その後にキシロースを含有する選択培地に適応させることによって作成した。ZW800は、グルコース−フルクトースオキシドレダクターゼをコードする遺伝子が不活性化されたZW658株であり、また共同所有される同時係属中の米国特許出願第60/847813号明細書に記載されている。
【0112】
発酵を、500mlの初期作動容積(working volume)を有する1リットルの滅菌発酵槽(BIOSTAT(登録商標) B−DCUシステム、Sartorius BBI System Inc.(Bethlehem,Pennsylvania,USA))内で実施した。接種材料を、添加後の培養液中でOD600が約1であるように、10%(v/v)のレベルで発酵糖に添加した。加水分解物は、水との均衡状態で、80%または40%(v/v)で存在した。さらなるグルコースおよびキシロースを添加し、培養液中の最終濃度をそれぞれ92g/Lおよび82g/Lにした。また、培養液に10mMソルビトールおよび1g/LのMgSO・7HOを補充した。発酵を、
150rpmで撹拌しながら、33℃、pH5.8で72時間実施した。ZW800株における最終のエタノール滴定濃度は、40%加水分解物中で8g/L、80%加水分解物中で7g/Lであった。ZW658においては、最終エタノール滴定濃度は、40%加水分解物中で8g/L、80%加水分解物中で6.5g/Lであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスを処理するための方法であって、
a)バイオマスを備えるステップと、
b)(a)のバイオマスを、非コンパクト化フィーダーを使用して、
i)ピストンを装備した第1の端部および排出弁を装備した第2の端部を有する円筒状バレル、
ii)場合により、1つのオフセット端部で円筒状バレルの第1の端部近傍において円筒状バレルに装着され、かつ未装着のオフセット端部で密封可能な弁を有するオフセット、
iii)円筒状バレル内またはオフセット内の少なくとも2つの密封可能なポート、
iv)場合により、円筒状バレルを別々の第1および第2のチャンバに分割するバレル内の弁であって、該第1のチャンバは上記ピストンを装備したバレルの第1の端部を有し、かつ上記第2のチャンバは排出弁を備えたバレルの第2の端部を有する、弁、ならびに
v)バレルの第2の端部で排出弁に装着されたフラッシュタンク
を含む装置に装填するステップであって、ここで上記バイオマスを円筒状バレルまたは場合により該円筒状バレルに装着された上記オフセットに装填するステップと、
c)上記円筒状バレルおよびオフセット(存在する場合)を閉鎖するステップと、
d)場合により、真空を円筒状バレル内の少なくとも1つのポートを介して適用するステップと、
e)円筒状バレルまたはオフセット内の上記少なくとも1つのポートを介し、アンモニアを含む水溶液を、バレル内のバイオマスの乾燥質量に対して約12質量パーセント未満の量で添加し、バイオマスおよび水性アンモニア混合物を作出し、またさらにここでバイオマスの乾燥質量はバイオマスおよび水性アンモニア混合物の質量に対して少なくとも約15質量パーセントの高固体濃度であり、かつ円筒状バレルまたはオフセット(存在する場合)内の上記第2のポートを介して蒸気を添加し、バレル内部の温度を約85℃〜約180℃の間に到達させるステップと、
f)円筒状バレルおよびオフセット(存在する場合)内のポートを閉鎖し、不透過性チャンバを備えるステップと、
g)不透過性チャンバ内のバイオマスおよび水性アンモニア混合物を、適温で約30秒間〜約4時間保持するステップと、
h)場合により、バイオマスおよび水性アンモニア混合物を、上記ピストンによる変位により、円筒状バレル内の第2のチャンバ(存在する場合)に移動させ(ここでバイオマスはコンパクト化されない)、かつそれを約2分間〜4時間保持するステップと、
i)バイオマスおよび水性アンモニア混合物を、(g)または(h)の不透過性円筒状バレルを通して上記ピストンを用いて移動させ、排出弁を介してフラッシュタンクに入れるステップと、
を含み、ここで処理バイオマスを生産する、方法。
【請求項2】
バイオマスを処理するための方法であって、
a)バイオマスとアンモニアを含む水溶液との混合物を備えるステップであって、ここでバイオマスの乾燥質量はバイオマスおよび水性アンモニア混合物の全質量に対して少なくとも約15質量パーセントであり、かつ水性アンモニアはバイオマスの乾燥質量に対して約12質量パーセント未満の量であるステップと、
b)(a)のバイオマスおよび水性アンモニア混合物を、非コンパクト化フィーダーを使用して、
i)ピストンを装備した第1の端部および排出弁を装備した第2の端部を有する円筒状バレル、
ii)場合により、1つのオフセット端部で円筒状バレルの第1の端部近傍において円筒状バレルに装着され、かつ未装着のオフセット端部で密封可能な弁を有するオフセット、
iii)円筒状バレル内またはオフセット内の少なくとも2つの密封可能なポート;
iv)バレルを別々の第1および第2のチャンバに分割する円筒状バレル内の弁であって、該第1のチャンバは上記ピストンを装備したバレルの第1の端部を有し、かつ上記第2のチャンバは排出弁を備えたバレルの第2の端部を有する、弁、および
v)バレルの第2の端部で排出弁に装着されたフラッシュタンク
を含む装置に装填するステップであって、ここで上記バイオマスを円筒状バレルの第1のチャンバまたは場合により該円筒状バレルに装着された上記オフセットに装填するステップと、
c)バレル内の上記第1のチャンバおよびオフセット(存在する場合)を閉鎖するステップと、
d)場合により、上記少なくとも1つのポートを介して真空を適用するステップと、
e)第1のチャンバまたはオフセット(存在する場合)内の少なくとも1つの第1のポートを通して蒸気を添加し、チャンバ内部を約85℃〜約180℃の間にある温度に到達させるステップと、
f)第1のチャンバおよびオフセット(存在する場合)内のポートを閉鎖し、不透過性の第1のチャンバを備えるステップと、
g)不透過性の第1のチャンバ内のバイオマスおよび水性アンモニア混合物を適温で約30秒間〜約4時間保持するステップと、
h)場合により、バイオマスおよび水性アンモニア混合物を、開口した弁を通し、不透過性の第1のチャンバを通るピストンによる変位によって円筒状バレル内の第2のチャンバに移動させるステップであって、ここでバイオマスはコンパクト化されないステップと、
i)場合により、開口した弁を閉鎖し、第2の不透過性チャンバを形成し、かつバイオマスおよび水性アンモニア混合物を約2分間〜約4時間保持するステップと、
j)ステップ(g)またはステップ(i)の後、バイオマスおよび水性アンモニア混合物を、ピストンによる変位により、排出弁を通してフラッシュタンク内に移動させるステップと、
を含み、ここでバイオマスはコンパクト化されず、それによって処理バイオマスを生産する、方法。
【請求項3】
ステップ(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、および(h)の中の1つもしくはそれ以上が(i)の前に少なくとも1回繰り返される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)および(i)の中の1つもしくはそれ以上が(j)の前に少なくとも1回繰り返される請求項2に記載の方法。
【請求項5】
脱圧縮ステップが全く含まれない請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
水性アンモニアがバイオマスの乾燥質量に対して約4%〜約6%の間で存在する請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
バイオマスの乾燥質量が、バイオマスおよび水性アンモニア混合物の作出の質量に対して少なくとも約20%である請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
バイオマスの乾燥質量が、バイオマスおよび水性アンモニア混合物の作出の質量に対して少なくとも約30%である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
バイオマスの乾燥質量が、バイオマスおよび水性アンモニア混合物の作出の質量に対して少なくとも約50%である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
適温が約120℃〜約160℃の間である請求項1または2に記載の方法。
【請求項11】
適温が約140℃〜約150℃の間である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
(b)の非コンパクト化フィーダーが非コンパクト化流れ誘導装置を装備するホッパーである請求項1または2に記載の方法。
【請求項13】
第1の円筒状チャンバが少なくとも1つの弁で閉じられる請求項1または2に記載の方法。
【請求項14】
第1のチャンバが、非コンパクト化フィーダーを閉鎖するために第1の弁で閉じられ、(h)の第2のチャンバを閉鎖するために第2の弁で閉じられる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
排出弁が漸増ベンチュリである請求項1または2に記載の方法。
【請求項16】
バイオマスが、スイッチグラス、紙くず、製紙汚泥、トウモロコシ粒、トウモロコシ穂軸、トウモロコシの皮、トウモロコシ繊維、コーンストーバー、草、小麦、麦かん、乾草、大麦、大麦わら、稲わら、サトウキビバガス、モロコシ、大豆、穀物の加工から得られる成分、木、枝、根、葉、ウッドチップ、おがくず、低木およびブッシュ、野菜、果物、花、ならびに動物糞尿からなる群から選択される請求項1または2に記載の方法。
【請求項17】
バイオマスが、トウモロコシ穂軸、コーンストーバー、トウモロコシ繊維、トウモロコシの皮、サトウキビバガス、おがくず、スイッチグラス、麦かん、乾草、稲わら、および草からなる群から選択される請求項16に記載の方法。
【請求項18】
バイオマスが、トウモロコシ穂軸、コーンストーバー、トウモロコシ繊維、おがくず、およびサトウキビバガスからなる群から選択される請求項17に記載の方法。
【請求項19】
バイオマスが複数の供給原料から由来する請求項1または2に記載の方法。
【請求項20】
請求項1または2に記載の方法によって生産される処理バイオマス。
【請求項21】
請求項1または2に記載の方法によって生産される処理バイオマスの糖化によって生産される加水分解物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【公表番号】特表2010−536558(P2010−536558A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521953(P2010−521953)
【出願日】平成20年8月18日(2008.8.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/073418
【国際公開番号】WO2009/045653
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【出願人】(510046505)アライアンス・フォア・サステインナブル・エナジー・エルエルシー (5)
【Fターム(参考)】