説明

バインダー組成物及び関連方法

硬化して、ホルムアルデヒドフリー、非水溶性の熱硬化性ポリエステル樹脂になることができる、ホルムアルデヒドフリー、熱硬化性、アルカリ性の水性バインダー組成物、並びに不織繊維用及び繊維材料用バインダーとしてのそれらの使用方法が開示された。本発明の水性バインダー組成物は、酸基又はそれらの無水物もしくは塩誘導体を有するポリ酸成分と、ヒドロキシル基を有するポリヒドロキシ成分とを含む。このバインダー組成物のpHは、約7より大きいことが好ましく、約7〜約10の範囲であることがより好ましい。また、本発明の繊維を結合する方法は、繊維を熱硬化性の水性バインダー組成物と接触させる工程と、熱硬化性の水性バインダー組成物を、水性バインダー組成物を硬化させるのに十分な温度で加熱する工程とを含む。この繊維は、不織繊維であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、不織繊維用のバインダー組成物に関する。より詳しくは、本開示は、不織繊維用の熱硬化性ポリエステルバインダーに関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス繊維絶縁製品は、一般に、硬化した熱硬化性高分子レゾール樹脂によって結合した、マット状のガラス繊維を含んでいる。これら製品を製造する間に、溶融したガラスのストリームは、様々な長さの繊維に延伸されて、成型室へと吹き込まれる。ここで、成型室とは、これらの繊維が、小さな構成を有して(あるいは、様々な形態を有して)、移動コンベヤー上にマットとして堆積される場所をいう。そして、この繊維は、成型室を移動している間や、延伸操作によって生じた熱がさめない間に、水性樹脂バインダー溶液でスプレーされる。ガラス繊維の残留熱と成型作業時にマット状の繊維を通過する空気の流れとによって、ほとんどの水が、通常、その樹脂バインダーから蒸発する。そのため、繊維上に残ったバインダー成分は、粘性や半粘性を有する高固体状の液体となり、「湿式ブランケット」を形成する。マットを通過する空気流は高速であるため、被覆繊維マットや湿式ブランケットは、成型室において圧縮状態で成型され、成型室から移動ゾーンに移された後に、ガラス繊維の弾力性により垂直方向に伸張する。この垂直方向の伸張が、商業的に評価を受けたガラス繊維断熱製品や遮音製品の製造工程で重要である。その後、被覆されたマットは、硬化炉へと移される。ここで、硬化炉とは、バインダーを硬化するために熱風を吹き付けて、ガラス繊維と強固に付着させる場所をいう。
【0003】
従来の方法では、フェノールホルムアルデヒド樹脂(PF)、及び尿素を付加して伸長したフェノール−ホルムアルデヒド樹脂(PFU樹脂)を使用していた。ガラス繊維絶縁製品用のバインダーの製造は、過去数年間に渡たり、これらの樹脂に頼ってきた。これらの樹脂は、安価で所望の物理的特性を有する硬化性のガラス繊維絶縁製品を提供する。しかし、これらの樹脂は、多くの場合において、遊離ホルムアルデヒドの濃度が高くなり、特有な臭気や不快な臭気を生じるため、特定の利用分野での使用に制限されている。また、ガラス繊維絶縁材の製造中にも、ホルムアルデヒドが放出して作業者が被爆する可能性がある。そのため、絶縁製品の主なバインダー成分にPF樹脂及びPFU樹脂を使用する製造施設では、ホルムアルデヒドの放出によって作業者が被爆する可能性を極力少なくし、特定の最大達成可能抑制技術(Maximum Achieveable Control Technology,MACT)の要求基準を満たすために、高価な低減設備の導入が必要とされている。ホルムアルデヒドフリーの製品又はその製造方法に対するオプションは、i)バインダーにホルムアルデヒドスカベンジャーを添加して、遊離ホルムアルデヒドを低減するか除去し、その後の放出及び/又は臭気を制限すること、ii)樹脂の反応を長時間行い、樹脂製品中に存在する遊離ホルムアルデヒドを低減すること、又はiii)ホルムアルデヒドフリーの樹脂を利用すること等である。
【0004】
しかし、スカベンジャーを使用すると、スカベンジャー自身及び/又はスカベンジャーと残留ホルムアルデヒド間に生じる不溶性の付加物に起因した沈殿物を生じることがある。従って、追加のろ過工程や高価なろ過工程が必要になることがある。さらに、目標のホルムアルデヒドレベルを達成するのに十分な時間をかけて反応を進めると、樹脂製品の分子量が高くなる。これら高分子量の樹脂は、用途によっては必要な特性が欠如していることがある。これは、多くが粘着性の傾向にあるため、バインダーとバインダーを被覆したガラス繊維製品の、生産設備への付着が生じるためである。また、PF樹脂の分子量が高くなると、「テトラダイマー」の含有量が高くなるという傾向がある。テトラダイマーは高結晶性のPFダイマーで、塩基性触媒条件下で製造されたフェノール樹脂に存在し、容易に沈殿することがある。樹脂中の遊離ホルムアルデヒドがスカベンジャーされると、より沈殿しやすくなる。テトラダイマーが沈殿すると、スプレーノズルがふさがれ、樹脂バインダー貯蔵タンクとその樹脂自身に沈殿物が形成される。そのため、これらを除去する必要性が生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、PF樹脂及びPFU樹脂の代替物として、ホルムアルデヒドフリーの樹脂配合が、ガラス繊維絶縁製品やその他の製品の製造におけるバインダーとしての用途として注目されている。適切なバインダー配合の場合は、例えば、粘性、希釈性及び接着性等の物理的特性と、従来のPF樹脂及びPFU樹脂と同様な特徴とを有利に備えているので、低コストで製造することができる。一方、硬化時間及び硬化温度プロファイルが同様の配合では、物理特性が同等の硬化ガラス繊維絶縁製品が製造されるので、既存の製造施設を使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
水性バインダー組成物を説明する。一つの局面において、本発明の水性バインダー組成物は、ホルムアルデヒドフリーである。別の局面において、本発明の水性バインダー組成物は、熱硬化性である。別の局面において、本発明の水性バインダー組成物のpHは、アルカリ性である。一つの実施形態において、本発明の水性バインダー組成物は、硬化して、ホルムアルデヒドフリーの、非水溶性の、熱硬化性ポリエステル樹脂になる。ガラス繊維及び/又は耐熱繊維等の他の繊維からなる繊維製品等の、不織繊維製品をはじめとする繊維製品の製造に使用する水性バインダー組成物についても説明する。本発明の水性バインダー組成物及びこのバインダー組成物の使用に関連する方法は、本明細書で説明する1つ以上の特徴や、これらの特徴の組み合わせを含んでいてもよい。
【0007】
一つの実施形態において、本発明の水性バインダー組成物は、酸基又はそれらの無水物もしくは塩誘導体を有するポリ酸成分、及びヒドロキシル基を有するポリヒドロキシ成分を含有する。ここで、バインダー組成物のpHは、約7より大きく、具体的には、約7〜約10の範囲である。別の実施形態において、本発明の組成物は、ポリ酸成分及びポリヒドロキシ成分を含有する。ここで、ポリ酸成分に存在する酸基又はそれらの無水物もしくは塩誘導体のモル当量数の、ポリヒドロキシ成分に存在するヒドロキシル基のモル当量数に対する比率は、約0.6:1〜約1.2:1の範囲である。別の実施形態において、本発明の組成物は、ジカルボン酸であるポリ酸成分を含有する。ジカルボン酸としては、例えば、不飽和脂肪族ジカルボン酸類、飽和脂肪族ジカルボン酸類、芳香族ジカルボン酸類、不飽和環状ジカルボン酸類、飽和環状ジカルボン酸類、これらのヒドロキシ置換誘導体等が挙げられるが、これらに限定されない。別の実施形態において、本発明の組成物は、トリカルボン酸であるポリ酸成分を含有する。トリカルボン酸としては、例えば、不飽和脂肪族トリカルボン酸類、飽和脂肪族トリカルボン酸類、芳香族トリカルボン酸類、不飽和環状トリカルボン酸類、飽和環状トリカルボン酸類、これらのヒドロキシ置換誘導体等が挙げられるが、これらに限定されない。別の実施形態において、本発明の組成物は、ポリ酸成分を含有し、これらはテトラカルボン酸、ペンタカルボン酸及び同様なポリカルボン酸、これらの塩及び無水物誘導体、並びにこれらの組み合わせである。これらポリ酸のいずれも、ヒドロキシ、ハロ、アルキル、アルコキシ等で任意に置換してもよい。一つの具体的な局面において、本発明の組成物は、アルカリ性組成物であり、ここで、ポリ酸成分は、塩基が添加された場合に、又はポリ酸成分の特定の塩が使用された場合に中和される。別の実施形態において、本発明の組成物は、塩基の添加によって中和された、又は塩としての、コハク酸、クエン酸、又はフマル酸等のポリ酸成分を含有する。別の実施形態において、このポリ酸成分は、例えばアンモニア水で中和されたマレイン酸である。別の実施形態において、このポリ酸成分は、マレエートのアンモニウム塩である。別の実施形態において、ポリヒドロキシ成分は、例えば、ELVANOL(米国デラウェア州ウィルミントンのDupont Packaging and Industrial Polymersから入手可能)等の部分的に加水分解された酢酸ビニル又はポリビニルアルコールである。別の実施形態において、本発明の組成物は、無機酸及び有機酸、並びにそれらの塩等の酸又は酸/塩等の触媒をさらに含む。具体的な有機酸としては、例えば、パラトルエンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸アンモニウム、ナフタレンジスルホン酸アンモニウム等のスルホン酸類及びそれらの塩類が挙げられる。これらの触媒は、本明細書に記載のバインダー組成物の硬化中に、エステルの形成速度を増加させることができる。別の実施形態において、本発明の組成物は、シリルエーテルやアルキルシリルエーテル等の含シリコン化合物をさらに含有する。一つの局面において、この含シリコン化合物は、ガンマアミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ置換含シリコン化合物であるが、これに限定さない。この含シリコン化合物は、本明細書に記載のバインダー組成物の硬化中に、カップリング剤として使用してもよい。
【0008】
別の実施形態において、不織繊維等の繊維の処理方法を説明する。具体的な局面において、本方法は、繊維を、本明細書に記載のポリ酸成分及びポリヒドロキシ成分を含有する熱硬化性の水性バインダー組成物に接触させる工程と、バインダー組成物を硬化させポリエステルを形成させるのに十分な温度で、熱硬化性の水性バインダー組成物を加熱する工程とを含む。なお、このバインダー組成物のpHは、7より大きく、具体的には、約7〜約10の範囲である。一つの局面において、このポリエステルは、実質的に非水溶性である。別の局面において、このポリエステルは熱硬化性である。
【0009】
別の実施形態において、ガラス繊維製品を説明する。ガラス繊維製品は、不織繊維のマット等の繊維にコートされた、熱硬化性の水性バインダー組成物を加熱することによって得られた組成物を含有する。一つの局面において、このバインダー組成物のpHは、7より大きく、具体的には、約7〜約10の範囲である。一つの実施形態において、このバインダー組成物は、本明細書に記載のポリ酸成分及びポリヒドロキシ成分を含有する。
【0010】
<関連出願の相互参照>
本願は、2004年10月13日に出願した米国特許出願第10/965,359号の米国特許法(35 U.S.C.)第120条に規定の優先権を請求するものである。この米国特許出願第第10/965,359号は、2004年3月11日に出願した米国仮特許出願第60/552,361号の米国特許法(35 U.S.C.)第119条に規定の優先権を請求する。これらの開示をそのまま参照として本明細書に援用する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
一つの実施形態において、ホルムアルデヒドフリー、熱硬化性、アルカリ性の水性バインダー組成物を説明する。本発明のバインダー組成物は、酸基又はそれらの無水物もしくは塩誘導体を有するポリ酸成分、及びヒドロキシル基を有するポリヒドロキシ成分を含有する。ここで、このバインダー組成物のpHは、7より大きく、具体的には、約7〜約10の範囲である。本発明の組成物は、例えば、絶縁製品の製造におけるガラス繊維等の、不織繊維用のバインダーに使用してもよい。一つの実施形態において、本明細書に記載のポリ酸成分及びポリヒドロキシ成分を含有するホルムアルデヒドフリーのアルカリ性の水性バインダー組成物を、室温で数日間放置するか、あるいは、化学反応速度を加速したり、増加したりすることができる触媒の非存在下において短時間加熱すると、非水溶性の熱硬化性ポリエステル樹脂が生成することが分かった。このようにして、アルカリ性の水溶液の条件下では、触媒の非存在下でも、ポリ酸成分がポリヒドロキシ成分と反応して、ポリエステル樹脂を形成することが明らかとなった。
【0012】
一つの実施形態において、ホルムアルデヒドフリー、熱硬化性、アルカリ性の水性バインダー組成物は、例えば、不織繊維のサンプル等の基材にコートされた場合、実質的に反応しない。加熱した際に、このバインダー組成物は、乾燥し熱硬化が完了する。乾燥と熱硬化は、連続して起こってもよいし、同時に起こってもよいし、並行して起こってもよい。本明細書において使用される「熱硬化性」とは、加熱の際に、有効量のバインダーをコートした不織繊維の特性を変更させるのに十分な、水性バインダーの構造的な変化や形態的な変化が起こることをいう。このような変化としては、バインダー成分の共有結合反応、バインダー成分の基材への付着性の改善、及びバインダー成分の水素結合が挙げられるが、これらに限定されない。
【0013】
本明細書において使用される「ホルムアルデヒドフリー」とは、水性バインダー組成物が実質的にホルムアルデヒドを含まず、乾燥及び/又は硬化の結果、実質的にホルムアルデヒドを放出しないことをいう。通常、ホルムアルデヒドフリーの組成物には、この組成物の重量に対し約1ppm未満のホルムアルデヒドが存在する。
【0014】
本明細書において使用される「アルカリ性」とは、溶液のpHが約7より大きく、具体的には、約7〜約10の範囲であることをいう。
【0015】
本明細書において使用される「水性」には、水と、実質的に水と他の水混和性の溶剤からなる混合物とが含まれる。水混和性の溶剤としては、アルコール類、エーテル類、アミン類、極性の非プロトン性溶剤類等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
本明細書において使用される「ガラス繊維」、「不織繊維」及び「ガラス繊維」とは、例えば、鉱物繊維、アラミド繊維、セラミック繊維、金属繊維、炭素繊維、ポリイミド繊維、特定のポリエステル繊維、レーヨン繊維、及びガラス繊維等の高温に耐えられる耐熱性繊維のことをいう。このような繊維は、約120℃を超える温度で曝露されても、実質的に影響を受けない。
【0017】
一つの実施形態において、ホルムアルデヒドフリー、熱硬化性、アルカリ性の水性バインダー組成物は、酸基又はそれらの無水物もしくは塩誘導体を有するポリ酸成分を含有する。一つの局面において、ポリ酸成分は、ポリヒドロキシ成分との反応において持続して利用されるため、不揮発性である。このポリ酸成分は、他の化学的官能基で置換されてもよい。ポリエステル樹脂の作製や形成による障害を極力抑えるために、他の官能基が選択されてもよい。具体的には、このポリ酸成分は、例えば、マレイン酸等のジカルボン酸であってもよい。他の適切なポリ酸成分としては、アコニット酸、アジピン酸、アゼライン酸、ブタンテトラカルボン酸ジヒドリド、ブタントリカルボン酸、クロレンド酸、シトラコン酸、クエン酸、ジシクロペンタジエン−マレイン酸付加物、ジエチレントリアミン五酢酸、ジペンテンとマレイン酸の付加物、エンドメチレンヘキサクロロフタル酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、完全にマレイン化されたロジン、マレイン化トール油脂肪酸、フマル酸、グルタル酸、イソフタル酸、イタコン酸、マレイン化ロジン(過酸化カリウムで不飽和部を酸化し、アルコールを経てカルボン酸にする)、マリック酸、メサコン酸、ビスフェノールA又はKOLBE−Schmidt反応により二酸化炭素と反応させ3〜4のカルボキシル基を導入したビスフェノールF、シュウ酸、フタル酸、ポリ酪酸、セバシン酸、コハク酸、酒石酸、テレフタル酸、テトラブロモフタル酸、テトラクロロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、それらの無水物及び塩、並びにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
一つの実施形態において、ホルムアルデヒドフリー、熱硬化性、アルカリ性の水性バインダー組成物のポリ酸成分の酸基は、ポリヒドロキシ成分のヒドロキシル基と反応してポリエステル樹脂を形成する前に、塩基で中和されることにより酸塩基に転換される。完全な中和(すなわち当量基準で計算して約100%)であれば、ポリエステルの形成の前に滴下する必要はないし、部分的にポリ酸成分の酸基を中和する必要もないが、不完全な中和であってもポリエステルの形成を妨げることはない。本明細書において使用される「塩基」とは、ポリエステルの形成を促進するに十分な条件下において、実質的に揮発性の塩基又は不揮発性の塩基のことをいう。具体的には、この塩基は、例えば、アンモニア水等の揮発性塩基であってもよい。一方、この塩基は、例えば、炭酸ナトリム等の不揮発性塩基であってもよく、他の不揮発性塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。中和は、ポリ酸成分をポリヒドロキシ成分と、混合する前に行なってもよいし、混合した後に行なってもよい。
【0019】
一つの実施形態において、ホルムアルデヒドフリー、熱硬化性、アルカリ性の水性バインダー組成物は、ヒドロキシル基を有するポリヒドロキシ成分も含有する。一つの局面において、このポリヒドロキシ成分は、ポリ酸成分との反応において、持続して利用するため、不揮発性である。このポリヒドロキシ成分は、ポリビニルアルコール、部分的に加水分解された酢酸ビニル、又はそれらの混合物であってもよい。具体的には、部分的に加水分解された酢酸ビニルがポリヒドロキシ成分として働く場合、例えば、Dupont ELVANOL51−05(分子量約22、000〜26、000Da、粘度5.0〜6.0センチポアズ)等の87〜89%加水分解された酢酸ビニルが利用される。有用と考えられる他の部分的に加水分解された酢酸ビニルとしては、例えば、ELVANOL51−05とは分子量と粘度が異なる87〜89%加水分解された酢酸ビニル(例えば、Dupont ELVANOL51−04、ELVANOL51−08、ELVANOL50−14、ELVANOL52−22、ELVANOL50−26、及びELVANOL50−42等)、及びELVANOL51−05とは分子量、粘度及び/又は加水分解度が異なる部分的に加水分解された酢酸ビニル(例えば、Dupont ELVANOL51−03(86〜89%加水分解)、ELVANOL70−14(95.0〜97.0%加水分解)、ELVANOL70−27(95.5〜96.5%加水分解)、ELVANOL60−30(90〜93%加水分解)、ELVANOL70−03(98.0〜98.8%加水分解)、ELVANOL70−04(98.0〜98.8%加水分解)、ELVANOL70−06(98.5〜99.2%加水分解)、ELVANOL90−50(99.0〜99.8%加水分解)、ELVANOL70−20(98.5〜99.2%加水分解)、ELVANOL70−30(98.5〜99.2%加水分解)、ELVANOL71−30(99.0〜99.8%加水分解)、ELVANOL70−62(98.4〜99.8%加水分解)、ELVANOL70−63(98.5〜99.2%加水分解)、及びELVANOL70−75(98.5〜99.2%加水分解)等)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
一つの実施形態において、ホルムアルデヒドフリー、熱硬化性、アルカリ性の水性バインダー組成物は、本明細書に記載のバインダー組成物の硬化中に、ポリエステルの形成速度を増加することができる触媒を含んでいてもよい。具体的には、この触媒は、例えば、パラトルエンスルホン酸アンモニウムや、ナフタレンジスルホン酸アンモニウム等のアンモニウム塩であってもよい。他の適切な触媒としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸、乳酸、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛、有機スズ化合物、チタンエステル、三酸化アンチモン、ゲルマニウム塩、ナトリウム次亜リン酸塩、亜リン酸ナトリウム、メタンスルホン酸、及びパラトルエンスルホン酸、並びにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。追加の触媒も考えられるが、本明細書に記載のバインダー組成物は、触媒の組成やそれらの量について、何らの要求も制限もなく、そのような化合物は、任意に追加することができる。
【0021】
一つの実施形態において、ホルムアルデヒドフリー、熱硬化性、アルカリ性の水性バインダー組成物は、含シリコンカップリング剤(例えば、有機シリコン油)を含んでいてもよい。含シリコンカップリング剤は、Dow−Corning Corporation,Petrarch SystemsとGeneral、Electric Companyによって販売されている。これらの配合及び製造は、詳細な説明を提示してもらう必要がないほどに良く知られている。具体的には、この含シリコンカップリング剤は、例えば、シリルエーテル及びアルキルシリルエーテル等の化合物であってもよい。一つの局面において、この含シリコン化合物は、例えば、ガンマアミノプロピルトリエトキシシラン(Dow SILQUEST A−1101;米国ミシガン州ミッドランドのDow Chemical)等のアミノ置換シランであってもよい。一つの実施形態において使用する場合、含シリコンカップリング剤は、通常、バインダー組成物中に、バインダー固形分に対し約0.1〜約2.0重量%存在する。本明細書に記載のバインダー組成物は、含シリコン化合物の種類やそれらの量について、何らの要求も制限もなく、そのような化合物は、任意に追加することができる。
【0022】
一つの実施形態において、ホルムアルデヒドフリー、熱硬化性、アルカリ性の水性バインダー組成物は、中和済又はポリヒドロキシ成分の存在下で中和される10〜50重量%のポリ酸成分の水溶液と、10〜30重量%のポリヒドロキシ成分の水溶液と、必要に応じて硬化時にポリエステルの形成速度を増加できる触媒の水溶液と、必要に応じて含シリコンカップリング剤と、を混合して作製してもよい。ポリ酸成分、ポリヒドロキシ成分、及び任意に選択した触媒と含シリコンカップリング剤成分、それらの初期濃度、並びに溶液の混合比率を変更することによって、幅広いバインダー溶液組成物を作製することができる。ここで、バインダー組成物のpHは、アルカリ性であり、具体的には、約7〜約10の範囲である。このようにして、製造設備に腐食の問題を生じさせる傾向にある酸性のバインダー組成物を排除する一方で、ホルムアルデヒドフリーのバインダー組成物から提供される健康関連の利益及びコンプライアンス関連の利益が維持される。さらに、本明細書に記載のアルカリ性、ホルムアルデヒドフリーのバインダー組成物は、ガラス繊維製造プラントにおける既存の製造設備を利用でき、これらの設備にステレンス製の設備を後付けする必要性を排除するといった利益を提供する。
以下の実施例により本発明の実施態様をさらに詳細に説明する。これらの実施例は例示のためだけであって、本発明を限定するものではない。例えば、ポリ酸成分中の酸基又はそれらの無水物もしくは塩誘導体のモル当量数の、ポリヒドロキシ成分中のヒドロキシル基のモル当量数に対する比率は、約0.6:1〜約1.2:1の範囲であるが、本明細書に記載の変形形態において、説明した発明の性質に影響することなくこれらの比率を変更してもよい。
【実施例】
【0023】
<実施例1>
ELVANOL51−05の14.5%水溶液(溶液119gに対しELVANOL51−05を17.25g)を調製した。
【0024】
<実施例2>
室温で攪拌中の水205gに、14.5%ELVANOL51−05(17.2g)溶液118.5g及び30%マレイン酸(22.8g)溶液76gを連続的に添加して、約400gの澄んだ透明な溶液を生成した。ELVANOL51−05/マレイン酸溶液50gに、18%炭酸ナトリウム(3.65g)溶液20.3gを添加した。得られた混合物を室温で攪拌し、約70.3gの濁った溶液を生成した。この溶液は、pH8を示し、約24.8%のELVANOL51−05、32.9%のマレイン酸、及び42.2%の炭酸ナトリウム(溶解した固形分の総量に対する相対パーセンテージとして)からなり、約12%の溶解固形分(溶液の総重量に対するパーセンテージとして)を含有していた。
【0025】
<実施例3>
実施例2と同様に調製したELVANOL51−05/マレイン酸溶液50gに、18%炭酸ナトリウム溶液(0.05g)0.3gを添加した。得られた混合物を室温で攪拌し、約50.3gの溶液を生成した。この溶液は、約42.6%のELVANOL51−05、56.4%のマレイン酸、及び1.0%の炭酸ナトリウム(溶解した固形分の総量に対する相対パーセンテージとして)からなり、約10%の溶解固形分(溶液の総重量に対するパーセンテージとして)を含有していた。
【0026】
<実施例4>
実施例2と同様に調製したELVANOL51−05/マレイン酸溶液50gに、19%アンモニア溶液6gを添加した。得られた混合物を室温で攪拌し、約56gの溶液を生成した。この溶液はpH9.5を示し、約43.0%のELVANOL51−05、57.0%のマレイン酸(溶解した固形分の総量に対する相対パーセンテージとして)からなり、約9%の溶解固形分(溶液の総重量に対するパーセンテージとして)を含有していた。
【0027】
<実施例5>
室温で攪拌中の水127gに、14.5%ELVANOL51−05(11.6g)溶液80g及び27%アンモニウムマレエート(マレイン酸固形分15.3gに相当)溶液73gを連続的に添加して、約280gの澄んだ透明な溶液を生成した。この溶液はpH7.94(9日後)を示し、約43%のELVANOL51−05、57%のマレイン酸(溶解固形分総量に対する相対パーセンテージとして)からなり、約10%の溶解固形分(溶液の総重量に対するパーセンテージとして)を含有していた。室温で11日間放置した際、反応フラスコの底に強靭で不溶性のフィルムが観察された。
【0028】
<実施例6>
実施例5と同様に調製したELVANOL51−05/アンモニウムマレエート溶液50gに、15%パラトルエンスルホン酸アンモニウム(3g)溶液20gを添加した。得られた混合物を室温で約5分間攪拌し、約70gの澄んだ透明な溶液を生成した。この溶液はpH8.28を示し、約26.5%のELVANOL51−05、35.0%のマレイン酸、及び38.5%のパラトルエンスルホン酸アンモニウム(溶解した固形分の総量に対する相対パーセンテージとして)からなり、約11%の溶解固形分(溶液の総重量に対するパーセンテージとして)を含有していた。
【0029】
<実施例7>
実施例5と同様に調製したELVANOL51−05/アンモニウムマレエート溶液50gに、15%パラトルエンスルホン酸アンモニウム(0.5g)溶液3.3gを添加した。得られた混合物を室温で約9分間攪拌し、約53.3gの澄んだ透明な溶液を生成した。この溶液はpH8.17を示し、約39.1%のELVANOL51−05、51.5%のマレイン酸 、及び9.4%のパラトルエンスルホン酸アンモニウム(溶解した固形分の総量に対する相対パーセンテージとして)からなり、約10%の溶解固形分(溶液の総重量に対するパーセンテージとして)を含有していた。
【0030】
<実施例8>
室温で攪拌中の水148gに、14.5%ELVANOL51−05(43.9g)溶液303g、27%アンモニウムマレエート(マレイン酸固形分30.9gに相当)溶液147g、15%パラトルエンスルホン酸アンモニウム(10.0g)溶液67g、及びSILQUEST A−1101シラン2.0gを連続的に添加して、約667gの溶液を生成した。この溶液はpH8.61を示し、約50.6%のELVANOL51−05、35.6%のマレイン酸 、11.5%のパラトルエンスルホン酸アンモニウム、及び2.3%のSILQUEST A−1101シラン(溶解した固形分の総量に対する相対パーセンテージとして)からなり、約13%の溶解固形分(溶液の総重量に対するパーセンテージとして)を含有していた。
【0031】
<実施例9>
室温で攪拌中の水162gに、14.5%ELVANOL51−05(40.0g)溶液276g、27%アンモニウムマレエート(マレイン酸固形分33.6gに相当)溶液160g、15%パラトルエンスルホン酸アンモニウム(10.0g)溶液67g、及びSILQUEST A−1101シラン2.0gを連続的に添加して、約667gの溶液を生成した。この溶液はpH8.60を示し、約46.7%のELVANOL51−05、39.3%のマレイン酸、11.7%のパラトルエンスルホン酸アンモニウム、及び2.3%のSILQUEST A−1101シラン(溶解した固形分の総量に対する相対パーセンテージとして)からなり、約13%の溶解固形分(溶液の総重量に対するパーセンテージとして)を含有していた。
【0032】
<実施例10>
室温で攪拌中の水54gに、14.5%ELVANOL51−05(10.4g)溶液72g、27%アンモニウムマレエート(マレイン酸固形分11.1gに相当)溶液53g、15%パラトルエンスルホン酸アンモニウム(3g)溶液20g、及びSILQUEST A−1101シラン0.6gを連続的に添加して、約200gの溶液を生成した。この溶液はpH8.58を示し、約41.4%のELVANOL51−05、44.2%のマレイン酸 、11.9%のパラトルエンスルホン酸アンモニウム、及び2.4%のSILQUEST A−1101シラン(溶解した固形分の総量に対する相対パーセンテージとして)からなり、約12%の溶解固形分(溶液の総重量に対するパーセンテージとして)を含有していた。
【0033】
<実施例11>
室温で攪拌中の水58gに、14.5%ELVANOL51−05(9.3g)溶液64g、27%アンモニウムマレエート(マレイン酸固形分12.0gに相当)溶液57g、15%パラトルエンスルホン酸アンモニウム(3g)溶液20g、及びSILQUEST A−1101シラン0.6gを連続的に添加して、約200gの溶液を生成した。この溶液はpH8.59を示し、約37.3%のELVANOL51−05、48.2%のマレイン酸 、12.0%のパラトルエンスルホン酸アンモニウム、及び2.4%のSILQUEST A−1101シラン(溶解した固形分の総量に対する相対パーセンテージとして)からなり、約12%の溶解固形分(溶液の総重量に対するパーセンテージとして)を含有していた。
【0034】
<実施例12>
室温で攪拌中の水126gに、14.5%ELVANOL51−05(11.6g)溶液80g、15%パラトルエンスルホン酸アンモニウム(3g)溶液20g、27%アンモニウムマレエート(マレイン酸固形分15.3gに相当)溶液73g、及びSILQUEST A−1101シラン0.65gを連続的に添加して、約300gの澄んだ透明な溶液を生成した。この溶液は17時間後にpH8.15を示し、約38.0%のELVANOL51−05、50.1%のマレイン酸、9.8%のパラトルエンスルホン酸アンモニウム、及び2.1%のSILQUEST A−1101シラン(溶解した固形分の総量に対する相対パーセンテージとして)からなり、約10%の溶解固形分(溶液の総重量に対するパーセンテージとして)を含有していた。
【0035】
<実施例13>
室温で攪拌中の水126gに、14.5%ELVANOL51−05(11.6g)溶液80g、27%アンモニウムマレエート(マレイン酸固形分15.3gに相当)溶液73g、15%パラトルエンスルホン酸アンモニウム(18g)溶液120g、及びSILQUEST A−1101シラン0.63gを連続的に添加して、約400gの澄んだ透明な溶液を生成した。この溶液は17時間後にpH7.91を示し、約25.5%のELVANOL51−05、33.6%のマレイン酸 、39.5%のパラトルエンスルホン酸アンモニウム、及び1.4%のSILQUEST A−1101シラン(溶解した固形分の総量に対する相対パーセンテージとして)からなり、約11%の溶解固形分(溶液の総重量に対するパーセンテージとして)を含有していた。
【0036】
<実施例14>
室温で攪拌中の水126gに、14.5%ELVANOL51−05(11.6g)溶液80g、27%アンモニウムマレエート(マレイン酸固形分15.3gに相当)溶液73g、30%ナフタレンジスルホン酸アンモニウム(3g)溶液10g、及びSILQUEST A−1101シラン0.6gを連続的に添加して、約290gの澄んだ透明な溶液を生成した。この溶液は17時間後にpH7.89を示し、約38.0%のELVANOL51−05、50.2%のマレイン酸 、9.8%のナフタレンジスルホン酸アンモニウム、及び2.0%のSILQUEST A−1101シラン(溶解した固形分の総量に対する相対パーセンテージとして)からなり、約10%の溶解固形分(溶液の総重量に対するパーセンテージとして)を含有していた。
【0037】
<実施例15>
51%T2894フェノールホルムアルデヒド樹脂(41.3g)溶液81gに、40%尿素(14g)溶液35gを添加した。得られた溶液を室温で攪拌後、水251g、19%アンモニア溶液7.9g、15%パラトルエンスルホン酸アンモニウム(3.5g)溶液23.3g、及びSILQUEST A−1101シラン1.05gを連続的に添加して、約400gの澄んだ透明な溶液を生成した。この溶液はpH8.14を示し、約69.0%のT2894フェノールホルムアルデヒド樹脂、23.4%の尿素、5.8%のパラトルエンスルホン酸アンモニウム、及び1.8%のSILQUEST A−1101シラン(溶解した固形分の総量に対する相対パーセンテージとして)からなり、約15%の溶解固形分(溶液の総重量に対するパーセンテージとして)を含有していた。
【0038】
<実施例16>
25.3%Rohm−Haas T SET#1(28.6g)溶液112.98gに、水77.58gを添加して、約190.56gの澄んだ透明な溶液を生成した。100%T SET#1(溶解した固形分の総量に対する相対パーセンテージとして)からなるこの溶液は、pH4.08を示し、約15%の溶解固形分(溶液の総重量に対するパーセンテージとして)を含有していた。
【0039】
<実施例17>
実施例16と同様に調製したRohm−Haas T SET#1溶液99.75gに、SILQUEST A−1101シラン0.23gを添加して、約100gの澄んだ透明な溶液を生成した。この溶液はpH4.06を示し、約98.5%のT SET#1及び1.5%のSILQUEST A−1101シラン(溶解した固形分の総量に対する相対パーセンテージとして)、からなり、約15%の溶解固形分(溶液の総重量に対するパーセンテージとして)を含有していた。
【0040】
<実施例18>
熱硬化状態にある水性バインダー組成物を評価するために、各バインダー組成物のサンプル1gを1つ以上の個々のアルミニウム板に配置した。次に、各バインダー組成物を、予熱炉において、以下のベークアウト/硬化条件の1つ以上にさらし、それぞれ対応する硬化したバインダーサンプルを生成した。ベークアウト/硬化条件:149℃(華氏300度)で0.5時間及び177℃(華氏350度)で0.5時間。
【0041】
<実施例19>
以下の方法を用いて、硬化したバインダーサンプルにおける乾燥柔軟性、乾燥強度及び湿潤強度を、0(劣)〜10(優良)の範囲の等級で表わした。乾燥柔軟性は、一般に、アルミニウム板に付着したフィルムとして存在するバインダーサンプルが、板状の金属を曲げた際の破壊に抵抗した程度として求めた。乾燥強度は、バインダーサンプルが、予熱炉から取り出された後に、損傷を受けずに破壊に抵抗した程度として求めた。湿潤強度は、バインダーサンプルに10mLの水を添加して室温で一夜放置した後に、アルミニウム板の表面に損傷のない固体として付着しているのか、あるいは付着性ではないにしても損傷を受けずに破壊に抵抗しているのかの傾向を指標にして、バインダーサンプルが硬化したと思われる程度として求めた。バインダーサンプルが10mLの水に完全に溶解した場合は、湿潤強度値0に相当する。硬化したバインダーサンプルの外観も判定した。結果を表1に示す。
【0042】
表1 硬化したバインダーサンプルの試験結果

PVA=ELVANOL 51−05(87〜89%加水分解されたポリ酢酸ビニル)
ATS=パラトルエンスルホン酸アンモニウム
SC=炭酸ナトリウム
SILQUEST=ガンマアミノプロピルトリエトキシシラン(A−1101)
AND=ナフタレンジスルホン酸アンモニウム
T−SET#1=Rohm−Haasホルムアルデヒドフリーバインダー
MA=マレイン酸
AS=硫酸アンモニウム
NH=アンモニア水
AM=アンモニウムマリエート
PF=フェノールホルムアルデヒド樹脂
U=尿素
【0043】
本発明の特定の実施形態を上記に記述及び/又は例示したが、それらのかなりの変形形態及び変更形態が実施可能であると考えられる。従って、本発明は、本明細書で記述及び/又は例示した特定の実施形態に限定されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維用の熱硬化性の水性バインダー組成物であって、
(a)酸基又はそれらの無水物もしくは塩誘導体を有するポリ酸成分と、
(b)ヒドロキシル基を有するポリヒドロキシ成分と、
を含み、
前記バインダー組成物のpHが約7より大きいこと、
を特徴とするバインダー組成物。
【請求項2】
前記バインダー組成物のpHが、約7〜約10の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のバインダー組成物。
【請求項3】
前記酸基又はそれらの無水物もしくは塩誘導体のモル当量数の、前記ヒドロキシル基のモル当量数に対する比率が、約0.6:1〜約1.2:1の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のバインダー組成物。
【請求項4】
前記繊維が、ガラス繊維絶縁製品に含まれることを特徴とする請求項1に記載のバインダー組成物。
【請求項5】
前記繊維が、ガラス繊維を含有することを特徴とする請求項1に記載のバインダー組成物。
【請求項6】
前記熱硬化性の水性バインダー組成物が、熱硬化して、実質的に非水溶性の熱硬化性ポリエステル樹脂又はそれらの塩になることができることを特徴とする請求項1に記載のバインダー組成物。
【請求項7】
前記ポリ酸成分が、不飽和脂肪族ポリカルボン酸、飽和脂肪族ポリカルボン酸、芳香族ポリカルボン酸、不飽和環状ポリカルボン酸、飽和環状ポリカルボン酸、それらのヒドロキシ置換誘導体、及びそれらの塩と無水物、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のバインダー組成物。
【請求項8】
前記バインダー組成物が、さらにアンモニア又はそれらの塩を含有することを特徴とする請求項1に記載のバインダー組成物。
【請求項9】
前記ポリ酸成分が、不飽和脂肪族ポリカルボン酸のアンモニウム塩であることを特徴とする請求項1に記載のバインダー組成物。
【請求項10】
前記ポリヒドロキシ成分が、ポリマーポリオールであることを特徴とする請求項1に記載のバインダー組成物。
【請求項11】
前記ポリマーポリオールが、ポリアルキレンポリオール又はポリアルケニレンポリオールであることを特徴とする請求項10に記載のバインダー組成物。
【請求項12】
前記ポリマーポリオールが、部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、及びそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項10に記載のバインダー組成物。
【請求項13】
前記部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニルが、87〜89%加水分解されたポリ酢酸ビニルであることを特徴とする請求項12に記載のバインダー組成物。
【請求項14】
前記酸基又はそれらの無水物もしくは塩誘導体のモル当量数の、前記ヒドロキシル基のモル当量数に対する比率が、約0.6:1〜約1.2:1の範囲であることを特徴とする請求項13に記載のバインダー組成物。
【請求項15】
さらに触媒を含み、
前記触媒が、エステルの形成速度を増大することができること、
を特徴とする請求項1に記載のバインダー組成物。
【請求項16】
前記触媒が、硫酸もしくはスルホン酸、又はそれらの塩もしくは誘導体であることを特徴とする請求項15に記載のバインダー組成物。
【請求項17】
前記触媒が、パラトルエンスルホン酸アンモニウム、ナフタレンジスルホン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛、有機スズ化合物、チタンエステル、三酸化アンチモン、ゲルマニウム塩、ナトリウム次亜リン酸塩、亜リン酸ナトリウム、メタンスルホン酸、及びパラトルエンスルホン酸、並びにそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項15に記載のバインダー組成物。
【請求項18】
さらに含シリコン化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載のバインダー組成物。
【請求項19】
さらにアミノ置換された含シリコン化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載のバインダー組成物。
【請求項20】
前記含シリコン化合物が、シリルエーテルであることを特徴とする請求項18に記載のバインダー組成物。
【請求項21】
前記含シリコン化合物が、ガンマアミノプロピルトリエトキシシラン、ガンマグリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及びそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項18に記載のバインダー組成物。
【請求項22】
さらに含シリコン化合物を含むことを特徴とする請求項15に記載のバインダー組成物。
【請求項23】
繊維用の熱硬化性の水性バインダー組成物であって、
(a)ジカルボン酸のアンモニウム塩と、
(b)ヒドロキシル基を有するポリヒドロキシ成分と、
を含み、
前記繊維は、ガラス繊維を含有すること、
を特徴とするバインダー組成物。
【請求項24】
前記バインダー組成物のpHが、約7〜約10の範囲であることを特徴とする請求項23に記載のバインダー組成物。
【請求項25】
前記ジカルボン酸がマレイン酸であることを特徴とする請求項23に記載のバインダー組成物。
【請求項26】
前記ポリヒドロキシ成分が、部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニルであることを特徴とする請求項23に記載のバインダー組成物。
【請求項27】
部分的に加水分解された前記ポリ酢酸ビニルが、87〜89%加水分解されたポリ酢酸ビニルであることを特徴とする請求項26に記載のバインダー組成物。
【請求項28】
前記ジカルボン酸のカルボン酸塩基のモル当量数の、前記ポリヒドロキシ成分のヒドロキシル基のモル当量数に対する比率が、約0.6:1〜約1.2:1の範囲であることを特徴とする請求項23に記載のバインダー組成物。
【請求項29】
繊維を結合する方法であって、
(a)前記繊維を請求項1に記載の熱硬化性の水性バインダー組成物と接触させる工程と、
(b)熱硬化性の前記水性バインダー組成物を、水性バインダー組成物を硬化させるのに十分な温度で加熱する工程と、
を含むことを特徴とする繊維結合方法。
【請求項30】
前記繊維が不織繊維であることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記熱硬化性の水性バインダー組成物が、熱硬化して、熱硬化性ポリエステル樹脂又はそれらの塩になることができることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項32】
ガラス繊維を含む繊維を加熱することによって作製された組成物を含有するガラス繊維製品であって、
酸基又はそれらの無水物もしくは塩誘導体を有するポリ酸成分と、ヒドロキシル基を有するポリヒドロキシ成分を含有する熱硬化性の水性バインダー組成物でコートされ、
前記バインダー組成物のpHが、約7より大きいこと、
を特徴とするガラス繊維製品。
【請求項33】
前記繊維が不織繊維のマットに含まれ、
前記ガラス繊維製品が、ガラス繊維絶縁製品であることを特徴とする請求項32に記載のガラス繊維製品。
【請求項34】
前記熱硬化性の水性バインダー組成物が、熱硬化して、熱硬化性ポリエステル樹脂又はそれらの塩になることができることを特徴とする請求項32に記載のガラス繊維製品。

【公表番号】特表2007−528438(P2007−528438A)
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503025(P2007−503025)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【国際出願番号】PCT/US2005/008018
【国際公開番号】WO2005/087837
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(506306983)クナーフ インシュレーション ゲーエムベーハー (2)
【Fターム(参考)】