説明

バキュームポンプ制御装置

【課題】バキュームポンプの作動頻度を低下させかつブレーキブースタによる倍力機能を確保したバキュームポンプ制御装置を提供する。
【解決手段】負圧式ブレーキブースタ4で用いられる負圧を生成するバキュームポンプ7を制御するバキュームポンプ制御装置10を、ドライバによる減速操作を検出する減速操作検出手段3を備え、減速操作制御手段によって検出された減速操作の開始と終了との少なくとも一方に応じて、バキュームポンプを所定期間にわたって作動させその後停止させる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両のブレーキブースタで用いる負圧を生成するバキュームポンプの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用のブレーキ装置は、エンジンの吸気管負圧を利用して制動力を増幅するブレーキブースタを備えている。また、エンジンの吸気管負圧を得られない場合があるエンジン−電気ハイブリッド車両や、エンジンを搭載しない電気自動車の場合には、電動のバキュームポンプを用いて負圧を生成することが知られている。
【0003】
上述したようなバキュームポンプは、通常ブレーキブースタの負圧チャンバの内圧に応じて作動及び停止が行われ、車両の走行中に間歇的に作動するようになっているが、何らかの原因により仮に連続運転が行われるとその寿命が著しく短くなる。
これに対し、例えば特許文献1には、負荷不使用時におけるバキュームポンプモータの駆動回数等が予め定められた設定値以上である場合には負圧のリークが生じていると判定してその旨を表示し、ユーザにバキュームポンプ及びそのモータの保護を促すバキュームポンプ制御装置が記載されている。
また、特許文献2には、負圧のリーク及び負圧センサの固着を判定するとともに、異常が生じた場合には電動負圧ポンプを不作動としてモータ等を保護する車両の負圧システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−178070号公報
【特許文献2】特開2008−68747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載されたように負圧センサに不具合が生じた際に、バキュームポンプを不作動とした場合、ブレーキブースタで用いる負圧が生成されなくなって倍力機能が損なわれ、ブレーキの効きが低下してしまう。
これに対し、例えば負圧センサの故障時にバキュームポンプを連続的に作動させたり、一定の周期でオンオフを断続的に繰り返すことが考えられるが、この場合にはドライバによるブレーキング操作がなく負圧が利用されないときでもバキュームポンプが作動するので、バキュームポンプの作動頻度が増大して寿命が短くなり、最悪の場合バキュームポンプの故障によってブレーキブースタの倍力機能が損なわれてしまう。また、バキュームポンプの作動頻度が増大することによって、消費電力も多くなってしまう。
本発明の課題は、バキュームポンプの作動頻度を低下させかつブレーキブースタによる倍力機能を確保したバキュームポンプ制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により、上述した課題を解決する。
請求項1の発明は、負圧式ブレーキブースタで用いられる負圧を生成するバキュームポンプを制御するバキュームポンプ制御装置であって、ドライバによる減速操作を検出する減速操作検出手段を備え、前記減速操作制御手段によって検出された前記減速操作の開始と終了との少なくとも一方に応じて、前記バキュームポンプを所定期間にわたって作動させその後停止させることを特徴とするバキュームポンプ制御装置である。
【0007】
請求項2の発明は、負圧式ブレーキブースタで用いられる負圧を生成するバキュームポンプを制御するバキュームポンプ制御装置であって、前記ブレーキブースタの負圧室内の負圧を検出する負圧センサと、前記負圧センサの異常を検出する異常検出手段と、ドライバによる減速操作を検出する減速操作検出手段とを備え、前記異常検出手段が前記負圧センサの異常を検出しない場合には前記負圧センサの出力に応じて前記バキュームポンプの作動及び停止を行う第1の制御を行い、前記異常検出手段が前記負圧センサの異常を検出した場合には前記減速操作制御手段によって検出された前記減速操作の開始と終了との少なくとも一方に応じて、前記バキュームポンプを所定期間にわたって作動させその後停止させる第2の制御を行うことを特徴とするバキュームポンプ制御装置である。
【0008】
請求項3の発明は、前記減速操作検出手段は、前記ドライバによるブレーキ装置の操作を検出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のバキュームポンプ制御装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ドライバによる減速操作の開始と終了との少なくとも一方に応じて、バキュームポンプを所定期間にわたって作動させその後停止させることによって、負圧が消費されるブレーキングの開始時や終了時に負圧を生成し、負圧式ブレーキブースタによる倍力機能を確保できる。また、負圧が消費されない一定速走行時等にはバキュームポンプが作動しないので、モータの焼損等を防止してバキュームポンプの寿命を長くすることができる。また、バキュームポンプの作動頻度が低減されて消費電力が低減されることによって、電動車両等の場合には走行用の電力を温存して航続距離を伸ばすことができ、エンジン付き車両の場合には発電負荷を軽減させて燃料消費率を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明を適用したバキュームポンプ制御装置の実施例を有するブレーキ装置の構成を示す図である。
【図2】図1のバキュームポンプ制御装置におけるバキュームポンプのフェイルセーフ制御を示すフローチャートである。
【図3】図2のフェイルセーフ制御を実行する際のバキュームポンプ作動を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、バキュームポンプの作動頻度を低下させかつブレーキブースタによる倍力機能を確保したバキュームポンプ制御装置を提供する課題を、ブレーキランプスイッチの状態がオンとオフとの間で遷移した後、所定時間にわたってバキュームポンプを作動させ、その後停止することによって解決した。
【実施例】
【0012】
以下、本発明を適用したバキュームポンプ制御装置の実施例について説明する。
図1は、実施例のバキュームポンプ制御装置を有する自動車用のブレーキ装置の構成を示す図である。なお、図1において、機械的な力の流れを実線矢印で示し、バキュームポンプ駆動用電力の流れを点線矢印で示し、各種信号の流れを一点鎖線矢印で示している。
ブレーキ装置1は、例えば、負圧発生源としてのエンジンを持たない電気自動車や、エンジンを停止した状態で走行する電気自動車走行モードを有するエンジン−電気ハイブリッド自動車等の乗用車に設けられる。
【0013】
ブレーキ装置1は、ブレーキペダル2、ブレーキランプスイッチ(BLS)3、ブレーキブースタ4、負圧センサ5、マスタシリンダ6、バキュームポンプ7、バッテリ8、リレー9、コントローラ10等を備えて構成されている。
【0014】
ブレーキペダル2は、ドライバが足で踏み込むことによってブレーキング操作を行う操作入力部である。
BLS3は、ブレーキペダル2に組み込まれ、ドライバがブレーキペダル2を踏み込んだときにオンになり、ドライバがブレーキペダル2を放した場合にはオフとなるスイッチである。BLS3の出力は、図示しないブレーキランプリレー、及び、コントローラ10に入力される。BLS3は、ドライバによるブレーキング操作を検出する本発明にいう減速操作検出手段として機能する。
【0015】
ブレーキブースタ4は、バキュームポンプ7が生成する負圧を利用してブレーキペダル2からの入力にアシスト力を付加し、その合力をマスタシリンダ6に伝達する真空倍力装置である。
負圧センサ5は、ブレーキブースタ4の負圧チャンバ内の圧力に応じた出力信号をコントローラ10に伝達する。
マスタシリンダ6は、ブレーキブースタ4からの入力に応じて、液圧式サービスブレーキのブレーキフルードを加圧し、各車輪のブレーキキャリパに設けられたホイールシリンダにブレーキパッド等の摩擦材の押圧を行わせて制動力を発生させる。
【0016】
バキュームポンプ7は、ブレーキブースタ4で用いられる負圧を生成する電動のポンプである。
バッテリ8は、例えばリチウムイオン電池、ニッケル水素電池等の2次電池であって、車両外に設けられる充電用施設や、車両に搭載されたジェネレータによって充電されるとともに、車両の走行用電力及びバキュームポンプ7の駆動用電力等を供給するものである。
リレー9は、バッテリ8からバキュームポンプ7へ電力を供給する配線に設けられ、コントローラ10からの制御電流に応じて通電又は遮断を切り換えるものである。
【0017】
コントローラ10は、BLS3及び負圧センサ5等からの入力に基づいて、リレー9を介してバキュームポンプ7の作動、停止を制御するものである。コントローラ10は、例えば、RAM、ROM等の記憶手段、CPU等の情報処理手段、及び、入出力インターフェイス等を備えて構成されている。
また、コントローラ10は、負圧センサ5の故障、断線等の異常を検出する異常検出手段としても機能する。負圧センサ5の異常は、その出力値の異常に基づいて診断され、例えば、出力電圧値が一定の電圧値に固着していた場合等に異常であると判定する。
【0018】
コントローラ10は、負圧センサ5の異常が検出されない場合には、負圧センサ5が検出する負圧に基づいたバキュームポンプ7の通常制御(第1の制御)を行う。具体的には、負圧センサ5の検出値が所定のバキュームポンプ作動閾値よりも高圧となった(大気圧に近づいた)場合にバキュームポンプ7を作動させ、その後負圧センサ5の検出値が所定のバキュームポンプ停止閾値よりも低圧となった場合にバキュームポンプ7を停止する。
【0019】
また、コントローラ10は、負圧センサ5の異常が検出された場合には、以下説明するフェイルセーフ制御(第2の制御)を行う。
図2は、フェイルセーフ制御を示すフローチャートである。
以下、ステップ毎に順を追って説明する。
【0020】
<ステップS01:BLS判断>
コントローラ10は、BLS3がオンであるか否かを判断し、オンである場合はステップS02に進み、BLS3がオフである場合はステップS07に進む。
【0021】
<ステップS02:カウンタ2=8sec>
コントローラ10は、BLS3がオンからオフに遷移した後のバキュームポンプ7の作動時間を管理するタイマであるカウンタ2のカウンタ値を8secにセットする。
その後、ステップS03に進む。
【0022】
<ステップS03:カウンタ1判断>
コントローラ10は、BLS3がオフからオンに遷移した後のバキュームポンプ7の作動時間を管理するタイマであるカウンタ1のカウンタ値がゼロを超えているか否かを判断する。そして、カウンタ1のカウンタ値がゼロ超である場合はステップS04に進み、ゼロである場合はステップS06に進む。
【0023】
<ステップS04:カウンタ1ディクリメント>
コントローラ10は、カウンタ1のカウンタ値を所定の値だけ減少させる。
その後、ステップS05に進む。
【0024】
<ステップS05:バキュームポンプオン>
コントローラ10は、リレー9を制御してバキュームポンプ7への通電を行わせ、バキュームポンプ7を作動させる。
その後、リターンし、ステップS01に戻ってそれ以降の処理を繰り返す。
【0025】
<ステップS06:バキュームポンプオフ>
コントローラ10は、リレー9を制御してバキュームポンプ7への通電を遮断し、バキュームポンプ7を停止させる。
その後、リターンし、ステップS01に戻ってそれ以降の処理を繰り返す。
【0026】
<ステップS07:カウンタ1=8sec>
コントローラ10は、上述したカウンタ1のカウンタ値を8secにセットする。
その後、ステップS08に進む。
【0027】
<ステップS08:カウンタ2判断>
コントローラ10は、上述したカウンタ2のカウンタ値がゼロを超えているか否かを判断する。そして、カウンタ2のカウンタ値がゼロ超である場合はステップS09に進み、ゼロである場合はステップS11に進む。
【0028】
<ステップS09:カウンタ2ディクリメント>
コントローラ10は、カウンタ2のカウンタ値を所定の値だけ減少させる。
その後、ステップS10に進む。
【0029】
<ステップS10:バキュームポンプオン>
コントローラ10は、リレー9を制御してバキュームポンプ7への通電を行わせ、バキュームポンプ7を作動させる。
その後、リターンし、ステップS01に戻ってそれ以降の処理を繰り返す。
【0030】
<ステップS11:バキュームポンプオフ>
コントローラ10は、リレー9を制御してバキュームポンプ7への通電を遮断し、バキュームポンプ7を停止させる。
その後、リターンし、ステップS01に戻ってそれ以降の処理を繰り返す。
【0031】
図3は、上述したフェイルセーフ制御を行う場合におけるバキュームポンプの作動を示すタイミングチャートである。
図3に示すように、バキュームポンプ7は、BLS3がオンからオフに遷移した直後から8秒間作動して停止し、また、BLS3がオフからオンに遷移した直後から8秒間作動して停止する。
なお、バキュームポンプ7の作動時間(実施例では8秒間)は、例えば、ブレーキブースタ4の負圧室がほぼ大気圧の状態から、必要な制動アシスト力が得られる圧力(負圧)までバキュームポンプ7が真空吸引をするのに必要な時間を考慮して設定される。
【0032】
以上説明した実施例によれば、ブレーキペダル2が操作され、BLS3の状態がオンとオフとの間で遷移した後、例えば8秒間にわたってバキュームポンプ7を作動させその後停止することによって、負圧が消費されるブレーキングの開始時や終了時に負圧を生成し、ブレーキブースタ4による倍力機能を確保できる。また、負圧が消費されない一定速走行時等にはバキュームポンプ7が駆動されないので、バキュームポンプ7の寿命を長くすることができる。
また、バキュームポンプ7の作動頻度を低減することによって、消費電力を低減して車両の航続距離を伸ばすことができる。
【0033】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)実施例では、ドライバによる制動操作の開始時及び終了時の両方でバキュームポンプを作動させているが、本発明はこれに限らず、制動操作の開始時又は終了時のいずれか一方でのみバキュームポンプを作動させてもよい。また、バキュームポンプを作動させる時間も特に限定されない。
(2)実施例では、ドライバの制動操作をブレーキランプスイッチのオンオフに基づいて検出しているが、制動操作を検出する方法はこれに限定されない。例えば、ブレーキフルードの圧力やブレーキペダルのストロークに基づいてブレーキ操作を検出してもよい。また、アクセルペダルの全閉操作や、車速センサによって検出される車速の変化、車体に作用する前後加速度等に基づいてドライバの減速操作を検出してもよい。
(3)実施例では、負圧センサの異常を出力値の固着に基づいて検出しているが、負圧センサの異常を検出する手法は特に限定されない。例えば、複数の負圧センサを設けて、その出力値の差に基づいて異常を検出してもよい。
(4)実施例では車両は例えば電気自動車やエンジン−電気ハイブリッド車両であったが、搭載対象となる車両はこれに限らず、例えばスロットルバルブではなく吸気バルブで出力調整を行うガソリンエンジンや、燃料噴射量で出力調整を行うディーゼルエンジンのように吸気管負圧を得にくいエンジンを搭載した車両であってもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 ブレーキ装置 2 ブレーキペダル
3 ブレーキランプスイッチ 4 ブレーキブースタ
5 負圧センサ 6 マスタシリンダ
7 バキュームポンプ 8 バッテリ
9 リレー 10 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負圧式ブレーキブースタで用いられる負圧を生成するバキュームポンプを制御するバキュームポンプ制御装置であって、
ドライバによる減速操作を検出する減速操作検出手段を備え、
前記減速操作制御手段によって検出された前記減速操作の開始と終了との少なくとも一方に応じて、前記バキュームポンプを所定期間にわたって作動させその後停止させること
を特徴とするバキュームポンプ制御装置。
【請求項2】
負圧式ブレーキブースタで用いられる負圧を生成するバキュームポンプを制御するバキュームポンプ制御装置であって、
前記ブレーキブースタの負圧室内の負圧を検出する負圧センサと、
前記負圧センサの異常を検出する異常検出手段と、
ドライバによる減速操作を検出する減速操作検出手段とを備え、
前記異常検出手段が前記負圧センサの異常を検出しない場合には前記負圧センサの出力に応じて前記バキュームポンプの作動及び停止を行う第1の制御を行い、前記異常検出手段が前記負圧センサの異常を検出した場合には前記減速操作制御手段によって検出された前記減速操作の開始と終了との少なくとも一方に応じて、前記バキュームポンプを所定期間にわたって作動させその後停止させる第2の制御を行うこと
を特徴とするバキュームポンプ制御装置。
【請求項3】
前記減速操作検出手段は、前記ドライバによるブレーキ装置の操作を検出すること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のバキュームポンプ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−162914(P2010−162914A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4234(P2009−4234)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】