説明

バッキングプレートの製造方法、バッキングプレート、スパッタカソード、スパッタリング装置、及びバッキングプレートの洗浄方法

【課題】基板上に形成される薄膜の品質及び製造効率の向上を実現するバッキングプレートの製造方法、及びこれらに関する技術を提供すること
【解決手段】バッキングプレート1は、ブラスト材によりブラスト処理され、ブラスト処理部5が形成される。ブラスト処理部5には、付着、固着したブラスト材の他、突き刺さっているブラスト材が存在する。この突き刺さっているブラスト材上に堆積した膜が容易に剥離し、基板上の薄膜に異物として混入してしまう。ブラスト処理部5に突き刺さっているブラスト材は、単純な洗浄方法では除去することができない。そこで、バッキングプレート1は、超音波洗浄→エッチング処理→超音波洗浄の順に洗浄される。この3段階の洗浄により、ブラスト処理部5に突き刺さったブラスト材を除去することができるため、基板上に形成される薄膜の品質及び製造効率の向上を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパッタリングターゲットを保持するバッキングプレートの製造方法、バッキングプレート、このバッキングプレートを含むスパッタカソード、このスパッタカソードを含むスパッタリング装置、及びバッキングプレートの洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基板上に薄膜を形成する成膜技術としてスパッタリング法が用いられている。このスパッタリング法では、真空槽内に導入されたArなどの希ガスがイオン化され、このイオン化されたArがスパッタリングターゲットに衝突することで、ターゲットからスパッタ粒子が叩き出され、基板上に薄膜が形成される。
【0003】
また、スパッタリング法の一種である、磁界を利用したマグネトロンスパッタリング法では、ターゲット表面に印加された磁界により、ターゲット表面から叩き出された二次電子が螺旋運動する。この螺旋運動する二次電子がArと衝突することで、Arのイオン化のための衝突頻度が増大するため、成膜速度が高速化する。
【0004】
このようなスパッタリング法による成膜では、ターゲットから叩き出されたスパッタ粒子により、ターゲットのスパッタ効率が低い部分(非エロージョン領域)、ターゲットを保持するバッキングプレート、あるいは真空槽内の各部に堆積膜が形成され、この堆積膜が基板上の薄膜の成膜に悪影響を及ぼす場合がある。例えば、堆積膜の1部が剥離してパーティクル(不必要な粒子)が真空槽内に発生し、このパーティクルが基板上の薄膜へ異物として混入することにより、薄膜の品質が低下してしまう場合がある。
【0005】
このような問題に関連する技術として、例えば特許文献1には、ターゲットの表面、あるいはバッキングプレートの表面をブラスト処理により粗面化する技術が開示されている。このブラスト処理の施された部分が粗大粒子(スパッタ粒子)をトラップし、粗大粒子を基板上に飛散させることを防止する旨の記載がされている。
【0006】
また、特許文献2には、表面が部分的にブラスト処理されたバッキングプレートが記載されている。このブラスト処理により、バッキングプレートに付着する膜の密着性が向上し、シールド及びターゲットの間にパーティクル(不必要な粒子)が混入することが防止されるため、スパッタの放電状態を安定させる旨の記載がされている。
【特許文献1】特開平4−301074号公報(段落[0009])
【特許文献2】特開平10−30174号公報(段落[0020]、[0023]、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1、あるいは特許文献2に記載の方法により、バッキングプレートの表面がブラスト処理された場合、バッキングプレートから何故か突発的なパーティクルが発生していた。つまり、パーティクルを減少させるためにバッキングプレートにブラスト処理がなされると、逆に、原因不明の多くのパーティクルがバッキングプレート上から発生するという問題が生じていた。
【0008】
このように突発的なパーティクルが生じると、このパーティクルが基板上の薄膜へ異物として混入することにより、歩留まりが著しく低下し、生産に支障がきたされる。特に、基板上の薄膜の配線パターンが微細化されるのに従って、薄膜への少量のパーティクルの混入でも重大な問題となる場合がある。
【0009】
本発明者等は、バッキングプレート上から発生する突発的なパーティクルの原因を究明するため、バッキングプレート表面の凹凸(比表面積)や、表面状態などを観察した。その結果、発明者等は、ブラスト処理されたブラスト処理部に残留した残留ブラスト材は、ブラスト処理部に付着、固着したブラスト材の他、ブラスト処理部に突き刺さっているブラスト材が存在することを発見した。このブラスト処理部に突き刺さったブラスト材は、単純な洗浄ではブラスト処理部から取り除くことができない。ブラスト処理部に突き刺さったブラスト材上に堆積される膜は、容易に剥離してしまい、これが突発的なパーティクルの原因になると考えられる。
【0010】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、パーティクルの発生を低減し、基板上に形成される薄膜の品質及び製造効率の向上を実現するバッキングプレートの製造方法、この製造方法により製造されたバッキングプレート、及びこれらに関する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係るバッキングプレートの製造方法は、スパッタリングターゲットを保持するバッキングプレートの製造方法であって、バッキングプレート本体を準備し、前記バッキングプレート本体の前記スパッタリングターゲットが形成される領域である形成領域以外の少なくとも一部をブラスト処理することでブラスト処理部を形成し、前記ブラスト処理部を超音波洗浄し、前記超音波洗浄された前記ブラスト処理部をエッチングし、または洗浄液でジェット洗浄し、前記ブラスト処理部を再び超音波洗浄する。
【0012】
このように、本発明では、ブラスト処理部が3段階に分けて洗浄されることで、バッキングプレートが製造される。この3段階の洗浄により、ブラスト処理部に突き刺さったブラスト材を適切に除去することができるため、突発的なパーティクルの発生を減少させることができる。これにより、基板上に形成される薄膜の品質及び製造効率の向上を実現することができる。
【0013】
上記バッキングプレートの製造方法において、前記ブラスト処理部を形成する工程は、前記ブラスト処理部を表面粗さ(Ra)1μm以上4μm以下に粗面化してもよい。
【0014】
これにより、ブラスト処理部に堆積する膜の密着性を向上させることができるため、突発的に発生するパーティクルをさらに減少させることができる。
【0015】
上記バッキングプレートの製造方法において、前記超音波洗浄する工程は、18kHz以上19kHz以下の超音波が印加された洗浄液の噴流で前記ブラスト処理部を超音波洗浄してもよい。
【0016】
これにより、ブラスト処理部に突き刺さったブラスト材をさらに適切に除去することができる。
【0017】
上記バッキングプレートの製造方法において、前記噴流の圧力を200kPa以上300kPa以下としてもよい。
【0018】
これにより、ブラスト処理部に突き刺さったブラスト材をさらに適切に除去することができる。
【0019】
本発明に係るバッキングプレートは、スパッタリングターゲットを保持するバッキングプレートであって、バッキングプレート本体と、前記バッキングプレート本体の前記スパッタリングターゲットが形成される領域である形成領域以外の少なくとも一部がブラスト処理されることで形成され、表面粗さ(Ra)が1μm以上4μm以下であり、かつ、円相当直径10μm以上の前記ブラスト材が1cmあたり4個以下であるブラスト処理部とを具備する。
【0020】
本発明に係るバッキングプレートでは、ブラスト処理部の表面粗さが1μm以上4μm以下とされることで、ブラスト処理部に堆積する膜の密着性を向上させることができる。さらに、ブラスト処理部に残留したブラスト材のうち、円相当直径が10μm以上のブラスト材が1cmあたり4個以下とされることで、突発的に発生するパーティクルを減少させることができる。これにより、基板上に形成される薄膜の品質及び製造効率の向上を実現することができる。
【0021】
上記バッキングプレートにおいて、前記バッキングプレート本体は、アルミニウム、銅、チタン、ステンレス鋼、または、これら材料の何れかを主成分とする合金からなるようにしてもよい。
【0022】
本発明に係るスパッタカソードは、スパッタリングターゲットと前記スパッタリングターゲットを保持するバッキングプレート本体と、前記バッキングプレート本体の前記スパッタリングターゲットが形成される領域である形成領域以外の少なくとも一部がブラスト処理されることで形成され、表面粗さ(Ra)が1μm以上4μm以下であり、かつ、円相当直径10μm以上の前記ブラスト材が1cmあたり4個以下であるブラスト処理部とを具備する。
【0023】
本発明に係るスパッタリング装置は、真空槽と、スパッタリングターゲットと、前記スパッタリングターゲットを保持するバッキングプレート本体と、前記バッキングプレート本体の前記スパッタリングターゲットが形成される領域である形成領域以外の少なくとも一部がブラスト処理されることで形成され、表面粗さ(Ra)が1μm以上4μm以下であり、かつ、円相当直径10μm以上の前記ブラスト材が1cmあたり4個以下であるブラスト処理部とを有し、電圧が印加されることで前記真空槽内にスパッタ粒子を飛散させるためのスパッタカソードとを具備する。
【0024】
本明細書中において、「スパッタカソード」には、スパッタリングターゲット及びバッキングプレートが接合されて形成された接合体と、バッキングプレート及びバッキングプレートが一体的に形成された一体形成体とが含まれる。
【0025】
本発明に係るバッキングプレートの洗浄方法は、バッキングプレートがブラスト処理されることで形成されるブラスト処理部を超音波洗浄し、前記超音波洗浄された前記ブラスト処理部をエッチングし、または洗浄液でジェット洗浄し、前記ブラスト処理部を再び超音波洗浄する。
【0026】
上記バッキングプレートの洗浄方法において、前記超音波洗浄する工程は、前記ブラスト処理部を18kHz以上19kHz以下の超音波が印加された洗浄液の噴流で超音波洗浄してもよい。
【0027】
上記バッキングプレートの洗浄方法において、前記噴流の圧力を200kPa以上300kPa以下としてもよい。
【発明の効果】
【0028】
以上のように、本発明によれば、パーティクルの発生を低減し、基板上に形成される薄膜の品質及び製造効率の向上を実現するバッキングプレートの製造方法、この製造方法により製造されたバッキングプレート、及びこれらに関する技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0030】
図1は、本発明の一実施の形態に係るスパッタリング装置を示す模式図である。図2は、このスパッタリング装置が有するスパッタカソード及びシールド近傍の拡大図である。本実施形態では、スパッタリング装置の一例として、マグネトロン方式のスパッタリング装置を挙げて説明する。
【0031】
図1に示すように、スパッタリング装置100は、接地された真空槽20と、この真空槽20内部に配置されるスパッタカソード10と、このスパッタカソード10近傍に磁場分布を形成するための磁場形成部30とを備えている。
【0032】
真空槽20には、真空ポンプ28に連結された真空排気管23と、真空槽20内部に例えばArなどのガスを導入するためのガス導入管24とが連結されている。真空槽20内部には、被処理基板27を支持し、アノードとして機能するステージ22が配置されている。また、真空槽20には、絶縁材25を介して、ステージ22に対向するようにスパッタカソード10が設けられている。
【0033】
スパッタカソード10は、スパッタリングターゲット2(以下、ターゲット)と、このターゲット2を保持するためのバッキングプレート1とで構成される。このバッキングプレート1は、高電圧のマイナスに印加される。スパッタカソード10の周囲には、ターゲット以外の部品がスパッタされるのを防止するためのシールド26が設置されている。このシールド26は、接地されていてもよい。スパッタカソード10は、シールド26との間に僅かな隙間8を有している(図2参照)。
【0034】
バッキングプレート1のターゲット2が設けられる面(表面)の反対方向の面(裏面)方向には、磁場形成部30が配置される。この磁場形成部30は、環状の第1の磁石32aと、この第1の磁石32aの中央に位置し、円柱状の第2の磁石32bと、これらの磁石32a、32bを支持する磁石支持部31とで構成される。第1の磁石32a及び第2の磁石32bは、永久磁石であってもよく、電磁石であってもよい。第1及び第2の磁石32a、32bのバッキングプレート側の磁極は、それぞれ異なるようにされる。これにより、第1の磁石と第2の磁石との間に磁力線が形成され、ターゲット2の表面近傍において図1に示すような磁場分布が形成される。
【0035】
図3は、スパッタカソード10の分解斜視図である。図3に示すように、バッキングプレート1は、円板状であり、ターゲット2が形成される領域である形成領域3を有する表面1aと、側周面1bと、裏面1cとを有する。ターゲット2も同様に円板状であり、例えばArによりスパッタされる表面2aと、側周面2bと、バッキングプレート1に接合される裏面2cとを有している。バッキングプレート1の形成領域3と、ターゲット2の裏面2cとは、例えば適当なロウ材を用いてボンディングされることで接合される。ターゲット2及びバッキングプレート1の形状は、円板状に限られず、表面が矩形の平板形状であってもよく、その他の形状であってもよい。
【0036】
図3では、バッキングプレート1及びターゲット2が接合されてスパッタカソード10が形成されているが、スパッタカソード10は、バッキングプレート1及びターゲット2が同一の材料により一体的に形成されてもよい。この場合にも、バッキングプレート1の表面1aの形成領域3上にターゲット2が形成される。本明細書中では、スパッタカソード10は、バッキングプレート1及びターゲット2が接合されて形成される接合体と、バッキングプレート1及びターゲット2が一体的に形成されてなる一体形成体とを含むとして説明する。
【0037】
バッキングプレート1は、例えばTi,Al,Cu、ステンレス鋼、または、これらの材料の何れかを主成分とする合金により形成される。ターゲット2は、例えばTi,Al,Cu,Ni,Co,Ta,Au,Ag,Cr,Nb,Pt,Mo,Wにより形成される。
【0038】
バッキングプレート(バッキングプレート本体)1の表面1aの形成領域3以外の領域4、及び側周面1bは、ブラスト材によりブラスト処理されており、ブラスト処理部5が形成されている。本実施形態では、上述のように、スパッタカソード10は、シールド26との間に僅かな隙間8を有している(図2参照)。スパッタリング時には、ターゲット2から叩き出されたスパッタ粒子がこの隙間8に侵入し、堆積膜が形成される。したがって、典型的には、バッキングプレート1が隙間8に接する部分である、表面1aの形成領域3以外の領域4、及び側周面1bの全部がブラスト処理部5となる。しかし、例えばバッキングプレート1の裏面1cが隙間8に接する場合など、バッキングプレートの裏面1cに堆積膜が形成される可能性がある場合には、裏面1cがブラスト処理されてもよい。
【0039】
ブラスト処理部5は、バッキングプレートの表面1aの領域4の一部がブラスト処理されることで形成されてもよく、側周面1bの一部がブラスト処理されることで形成されてもよい。あるいは、側周面1bがブラスト処理されず、領域4の全部又は一部がブラスト処理されることで形成されてもよく、領域4がブラスト処理されず、側周面1bの全部又は一部がブラスト処理されることで形成されてもよい。つまり、バッキングプレート1の表面1a、側周面1b、及び裏面1cのうち形成領域3以外の部分であれば、どの部分がブラスト処理されてもよい。ターゲット2の非エロージョン領域も同様にブラスト処理されても、もちろん構わない。
【0040】
このブラスト処理部5は、表面粗さ(Ra)が1μm以上4μm以下とされ、かつ、円相当直径10μm以上のブラスト材が1cmあたり4個以下とされる。この表面粗さの範囲、及び円相当直径10μm以上のブラスト材の個数は、様々な値をとるサンプルが作成され、実際にスパッタリングがされることで導き出された値である(後述の図6参照)。
【0041】
このように、バッキングプレート1のブラスト処理部5の表面粗さが1μm以上4μm以下とされることで、ターゲット2から叩き出されたスパッタ粒子がブラスト処理部5に堆積することで形成される膜の密着性を向上させることができるため、パーティクルの発生を低減することができる。さらに、バッキングプレート1のブラスト処理部5に残留したブラスト材のうち、円相当直径が10μm以上のブラスト材が1cmあたり4個以下とされることで、ブラスト処理部5に突き刺さった残留ブラスト材上に堆積した膜が容易に剥離してしまうことにより発生するパーティクル(突発的なパーティクル)を減少させることができる。これにより、被処理基板27上に形成される薄膜の品質及び製造効率の向上を実現することができる。
【0042】
次に、バッキングプレート1の製造方法の一実施形態について説明する。図4は、本実施形態に係るバッキングプレートの製造方法を示すフローチャートである。
【0043】
まず、円板状のバッキングプレート1(バッキングプレート本体)が準備される(ステップ1)。このバッキングプレート1の形状は、上述のように円板状に限られず、表面1aが矩形の平板形状であってもよく、その他の形状であってもよい。バッキングプレート1は、例えばTi,Al,Cu、ステンレス鋼、または、これらの材料の何れかを主成分とする合金でなる。バッキングプレート1の表面1aのターゲット2が形成(接合)される領域である形成領域3、及び裏面1cが保護領域としてマスキングされる。なお、バッキングプレート1とターゲット2とが一体的に形成されている場合には、バッキングプレート1の裏面1cと、ターゲット2の表面2a及び側周面2bとがマスキングされる。
【0044】
バッキングプレート1は、マスキングがされると、表面1aの領域4及び側周面1bがブラスト処理装置を用いてブラスト処理されることでブラスト処理部5が形成される(ステップ2)。ブラスト処理される領域は、バッキングプレートの各面1a、1b、1cのうち隙間8に接する領域などを考慮して適宜変更可能である(図2参照)。
【0045】
ブラスト材には、バッキングプレート1の材質を考慮してSiCや、Al、ガラスビーズなどが用いられる。このブラスト材の粒径は、円相当直径の平均が100μm〜500μmとされる。ブラスト処理装置のノズルとブラスト処理面5との距離は、例えば150mmとされ、ブラスト処理装置のエアー圧力は、4.0kg/cm〜4.7kg/cmとされる。このように、ブラスト材の粒径、ノズルとの距離、エアー圧力が適切に設定されることで、表面粗さ(Ra)が1μm〜4μmのブラスト処理部5を形成することができる。これにより、スパッタ粒子がブラスト処理部5に堆積することで形成される膜の密着性を向上させることができるため、パーティクルの発生を低減することができる。
【0046】
次に、ブラスト処理部5に残留した残留ブラスト材を除去するため、バッキングプレート1は、超音波が印加された洗浄液の噴流で超音波洗浄される(ステップ3)。
【0047】
図5は、洗浄装置の一例を示す模式図である。洗浄装置50は、洗浄槽52と、洗浄槽52内で洗浄液55の噴流を発生させるためのポンプ53と、洗浄液55の噴流に超音波を印加するための超音波発信機51とを備えている。洗浄槽52及びポンプ53は、配管54により連結されている。洗浄装置50の一例として図5に示すような構成を挙げたが、これに限られず、同様の構成の洗浄装置50を用いてもよい。
【0048】
バッキングプレート1は、洗浄槽52内に保持され、超音波が印加された洗浄液55の噴流により洗浄される。この場合、噴流の圧力は、200kPa以上300kPa以下とされ、超音波の周波数は、18kHz以上19kHz以下とされる。また、洗浄時間は例えば5分間とされる。この洗浄により、ブラスト処理部5に残留した残留ブラスト材のうち、ブラスト処理部5に付着、または固着したブラスト材をブラスト処理部5から除去することができ、ブラスト処理部5に突き刺さったブラスト材に衝撃を与えることができる。
【0049】
次に、バッキングプレート1のブラスト処理部5がエッチング処理される(ステップ4)。この場合、例えば、バッキングプレート1がフッ硝酸に浸漬されることで、ブラスト処理部5がエッチング処理される。エッチング時間は、例えば3分とされる。フッ硝酸の濃度や、エッチング時間は、バッキングプレート及びブラスト材の材質により適宜設定される。このようなエッチング処理により、ブラスト処理部5と、ブラスト処理部5に突き刺さったブラスト材との境界面を極めて少量溶融させることができ、ブラスト材の突き刺さりの度合いを弱めることができる。エッチング後にバッキングプレート1は水洗いされ、フッ硝酸が洗い流される。その後、マスキングが除去される。
【0050】
次に、図5に示す洗浄装置50を用いて再びバッキングプレート1のブラスト処理部5が超音波洗浄される(ステップ5)。この場合も上述のステップ3と同様に、噴流の圧力は、200kPa以上300kPa以下とされ、超音波の周波数は、18kHz以上19kHz以下とされる。また、洗浄時間は例えば5分間とされる。スパッタカソード10がバッキングプレート1及びターゲット2の接合体である場合には、その後バッキングプレート1の形成領域3と、ターゲットの裏面2cとがボンディングされ、スパッタカソード10が製造される。
【0051】
このように、本実施形態では、ブラスト処理部5が3段階に分けて洗浄される(ステップ3〜ステップ5)。この3段階の洗浄により、ブラスト処理部5に突き刺さったブラスト材を適切に除去することができる。これにより、バッキングプレート1から発生する突発的なパーティクルを減少させることができる。したがって、このバッキングプレート1が用いられて被処理基板27上に薄膜が形成される際に、この薄膜の品質及び製造効率の向上を実現することができる。
【0052】
また、ステップ3及びステップ4における超音波洗浄では、超音波の周波数が18kHz以上19kHz以下とされ、噴流の圧力が200kPa以上300kPa以下とされる。つまり、超音波洗浄において一般的に用いられている周波数帯である30kHz〜50kHzではなく、一般的に用いられない低周波数帯である18kHz〜19kHzの超音波と、噴流とによりブラスト処理部5が洗浄される。これにより、ブラスト処理部5に残留した円相当直径10μm以上のブラスト材を1cmあたり4個以下とすることができる。これにより、さらに、バッキングプレート1から発生する突発的なパーティクルを減少させることができる。なお、周波数が30kHz〜50kHzの超音波洗浄では、ブラスト処理部5に残留した円相当直径10μm以上のブラスト材を1cmあたり4個以下とすることが困難である(後述の第6及び第7比較例参照)。
【0053】
ステップ4において、エッチング処理の代わりに、ブラスト処理部5が洗浄液でジェット洗浄(高圧水洗浄)されてもよい。この場合、洗浄液の吐出圧力は、200kgf/cm以上300kgf/cm以下とされ、水量は、20l/min以上30l/min以下とされる。このジェット洗浄によっても、上記エッチング処理と同様に、ブラスト処理部5に突き刺さったブラスト材の突き刺さりの度合いを弱めることができる。
【0054】
(第1実施形態)
次に、バッキングプレート1の製造方法における一実施形態について説明する。以降の
説明では上述の実施形態と同様の構成及び機能を有する部分については、同一符号を付し、説明を省略又は簡略化する。
【0055】
図6は、第1実施形態から第8実施形態まで、及び第1比較例から第7比較例までのバッキングプレートの材質や、表面粗さなどを比較するための図である。
【0056】
本実施形態では、まず、Cuからなるバッキングプレート1(バッキングプレート本体)が準備された(ステップ1)。このバッキングプレート1の表面1aのターゲット2が形成(接合)される領域である形成領域3、及び裏面1cがマスキングされる。
【0057】
次に表面1aの領域4及び側周面1bがブラスト処理装置を用いてブラスト処理されることでブラスト処理部5が形成される(ステップ2)。ブラスト材には、直径100μm〜300μmのSiCが用いられた。ブラスト処理装置のノズルとブラスト処理面5との距離は、150mmとされ、ブラスト処理装置のエアー圧力は、4.3kg/cmとされた。
【0058】
ブラスト処理部5が形成されると、バッキングプレート1は、超音波が印加された洗浄液の噴流で超音波洗浄される(ステップ3)。噴流の圧力は、200kPa以上300kPa以下とされ、超音波の周波数は、19kHzとされた。また、洗浄時間は5分とされた。
【0059】
次に、バッキングプレート1は、フッ硝酸(フッ化水素3%、硝酸10%)に3分間浸漬されることで、ブラスト処理部5がエッチング処理された(ステップ4)。エッチング後にバッキングプレート1は水洗又は湯洗され、その後、マスキングが除去された。
【0060】
バッキングプレート1は、超音波が印加された洗浄液の噴流により、再び超音波洗浄される(ステップ5)。噴流の圧力は、ステップ3と同様に200kPa以上300kPa以下とされ、超音波の周波数は、19kHzとされた。また、洗浄時間は5分間とされた。その後、バッキングプレート1は、乾燥処理された。
【0061】
このようにして製造されたバッキングプレート1のブラスト処理面5の表面粗さ及び残留ブラスト材の個数が評価された。粗さ測定器により表面粗さ(Ra)を測定した結果、表面粗さ(Ra)は、2.2μmであった。また、金属顕微鏡によりブラスト処理部5に残留した円相当直径10μm以上のブラスト材を計測した結果、残留ブラスト材は、1cmあたり平均で2個であった。
【0062】
このバッキングプレート1の形成領域3と、ターゲットの裏面2cとがボンディングされ、スパッタカソード10が製造される。ターゲットには、純度5NのTiでなる、直径250mm厚さ6mmのチタンターゲットが用いられた。このスパッタカソード10がスパッタリング装置100にセッティングされ、パーティクルの発生状況などが観察された。
【0063】
スパッタガスには、Arが用いられ、ガス圧力は0.5Paとされた。また、スパッタ電力は、7kwとされた。被処理基板27として、直径5インチ(125mm)のシリコンウェハ27が用いられ、このシリコンウェハ27上に膜厚50nmの薄膜が形成された。
【0064】
このシリコンウェハ27上の薄膜に混入したパーティクルの数がカウントされ、本実施形態に係るバッキングプレート1の評価がされる。カウントされるパーティクルの直径は、0.2μm以上とされ、パーティクルは、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100バッチでカウントされた。その結果、シリコンウェハ27上の薄膜に混入したパーティクル数の平均は、1個であった。
【0065】
さらに、このパーティクルの平均数(本実施形態の場合1個)の2倍以上のパーティクルが混入したシリコンウェハ27が発見された場合、バッキングプレート1から突発的なパーティクルが発生したと推定して、バッキングプレート1の性能が評価される。本実施形態では、パーティクルの平均数の2倍以上のパーティクルが混入したシリコンウェハ27は発見されず、0個であった。つまり、本実施形態に係るバッキングプレート1を用いた薄膜の成膜では、突発的なパーティクルは、発生しなかった(0回)。
【0066】
(第2実施形態)
次に、バッキングプレート1の製造方法における他の実施形態について説明する。以降の説明では、上述の第1実施形態と異なる点を中心に説明する。なお、後述の第3実施形態〜第7比較例についても同様に、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0067】
本実施形態では、バッキングプレート1の材質がステンレス鋼とされた。また、ブラスト処理のブラスト材の粒径は、円相当直径の平均が200μm〜400μmとされ、ブラスト処理装置のエアー圧力は、4.6kg/cmとされた。
【0068】
このような条件により製造されたバッキングプレート1のブラスト処理部5の表面粗さ(Ra)は、3.2μmであり、ブラスト処理部5に残留した円相当直径10μm以上のブラスト材は、1cmあたり平均で1個であった。
【0069】
このバッキングプレート1を有するスパッタリング装置100により、シリコンウェハ27に薄膜が成膜され、この薄膜に混入したパーティクルが測定された結果、パーティクル数の平均は、3個であった。また、パーティクルの平均数の2倍以上のパーティクルが混入したシリコンウェハ27は発見されず、突発的なパーティクルは、発生しなかった(0回)。
【0070】
(第3実施形態)
次に、バッキングプレート1の製造方法におけるさらに別の実施形態について説明する。
【0071】
本実施形態では、バッキングプレート1の材質がTiとされた。ブラスト処理のブラスト材の粒径は、円相当直径の平均が300μm〜500μmとされ、ブラスト処理装置のエアー圧力は、4.7kg/cmとされた。また、ブラスト処理部5のエッチング処理のエッチング時間が2分とされた。
【0072】
このような条件により製造されたバッキングプレート1のブラスト処理部5の表面粗さ(Ra)は、3.8μmであり、ブラスト処理部5に残留した円相当直径10μm以上のブラスト材は、1cmあたり平均で4個であった。
【0073】
スパッタリング装置100により薄膜が成膜され、薄膜に混入したパーティクルが測定された結果、パーティクル数の平均は、3個であった。また、突発的なパーティクルの発生回数は1回であった。
【0074】
(第4実施形態)
次に、バッキングプレート1の製造方法におけるさらに別の実施形態について説明する。
【0075】
本実施形態では、バッキングプレート1の材質がAlとされ、ブラスト処理装置のエアー圧力は、4.0kg/cmとされた。
【0076】
このような条件により製造されたバッキングプレート1のブラスト処理部5の表面粗さ(Ra)は、1.2μmであり、ブラスト処理部5に残留した円相当直径10μm以上のブラスト材は、1cmあたり平均で2個であった。
【0077】
スパッタリング装置100により薄膜が成膜され、薄膜に混入したパーティクルが測定された結果、パーティクル数の平均は、2個であった。また、突発的なパーティクルの発生回数は0回であった。
【0078】
(第5実施形態)
次に、バッキングプレート1の製造方法におけるさらに別の実施形態について説明する。
【0079】
本実施形態では、ブラスト処理のブラスト材の粒径は、円相当直径の平均が200μm〜400μmとされた。
【0080】
このような条件により製造されたバッキングプレート1のブラスト処理部5の表面粗さ(Ra)は、2.6μmであり、ブラスト処理部5に残留した円相当直径10μm以上のブラスト材は、1cmあたり平均で2個であった。
【0081】
スパッタリング装置100により薄膜が成膜され、薄膜に混入したパーティクルが測定された結果、パーティクル数の平均は、4個であった。また、突発的なパーティクルの発生回数は0回であった。
【0082】
(第6実施形態)
次に、バッキングプレート1の製造方法におけるさらに別の実施形態について説明する。
【0083】
本実施形態では、ブラスト処理のブラスト材の粒径は、円相当直径の平均が200μm〜400μmとされ、ブラスト処理装置のエアー圧力は、4.4kg/cmとされた。
【0084】
さらに、本実施形態では、エッチング処理(ステップ4)の代わりに、ブラスト処理部5が洗浄液でジェット洗浄(高圧水洗浄)された。この場合、洗浄液の吐出圧力は、200kgf/cmとされ、水量は、20l/minとされた。
【0085】
このような条件により製造されたバッキングプレート1のブラスト処理部5の表面粗さ(Ra)は、2.9μmであり、ブラスト処理部5に残留した円相当直径10μm以上のブラスト材は、1cmあたり平均で3個であった。
【0086】
スパッタリング装置100により薄膜が成膜され、薄膜に混入したパーティクルが測定された結果、パーティクル数の平均は、4個であった。また、突発的なパーティクルの発生回数は0回であった。
【0087】
(第7実施形態)
次に、バッキングプレート1の製造方法におけるさらに別の実施形態について説明する。
【0088】
本実施形態では、ブラスト処理のブラスト材の粒径は、円相当直径の平均が300μm〜500μmとされ、ブラスト処理装置のエアー圧力は、4.5kg/cmとされた。
【0089】
本実施形態では、エッチング処理(ステップ4)の代わりに、ジェット洗浄が用いられ、洗浄液の吐出圧力は、250kgf/cmとされ、水量は、20l/minとされた。
【0090】
このような条件により製造されたバッキングプレート1のブラスト処理部5の表面粗さ(Ra)は、3.5μmであり、ブラスト処理部5に残留した円相当直径10μm以上のブラスト材は、1cmあたり平均で2個であった。
【0091】
スパッタリング装置100により薄膜が成膜され、薄膜に混入したパーティクルが測定された結果、パーティクル数の平均は、3個であった。また、突発的なパーティクルの発生回数は0回であった。
【0092】
(第8実施形態)
次に、バッキングプレート1の製造方法におけるさらに別の実施形態について説明する。
【0093】
本実施形態では、バッキングプレート1の材質がアルミ合金とされた。ブラスト処理のブラスト材の粒径は、円相当直径の平均が200μm〜400μmとされ、ブラスト処理装置のエアー圧力は、4.4kg/cmとされた。
【0094】
このような条件により製造されたバッキングプレート1のブラスト処理部5の表面粗さ(Ra)は、3.0μmであり、ブラスト処理部5に残留した円相当直径10μm以上のブラスト材は、1cmあたり平均で2個であった。
【0095】
スパッタリング装置100により薄膜が成膜され、薄膜に混入したパーティクルが測定された結果、パーティクル数の平均は、5個であった。また、突発的なパーティクルの発生回数は0回であった。
【0096】
(第1比較例)
次に、バッキングプレート1の製造方法における第1の比較例について説明する。
【0097】
この第1比較例では、ブラスト処理のブラスト材の粒径は、円相当直径の平均が300μm〜500μmとされ、ブラスト処理装置のエアー圧力は、5.3kg/cmとされた。
【0098】
このような条件により製造されたバッキングプレート1のブラスト処理部5の表面粗さ(Ra)は、4.3μmであり、ブラスト処理部5に残留した円相当直径10μm以上のブラスト材は、1cmあたり平均で3個であった。
【0099】
スパッタリング装置100により薄膜が成膜され、薄膜に混入したパーティクルが測定された結果、パーティクル数の平均は、8個であった。また、突発的なパーティクルの発生回数は3回であった。
【0100】
この第1の比較例により、ブラスト処理部5の表面粗さが4.0を超える場合には、パーティクル及び突発的なパーティクルの発生を低減する効果が低くなることが分かる。このように、表面粗さが4.0より大きくなると、パーティクル低減効果が低くなるのは、表面粗さが大きくなると、ブラスト処理部5の溝が深くなり、このブラスト処理部5に堆積する膜の密着性にバラツキが生じるためであると考えられる。
【0101】
(第2比較例)
次に、バッキングプレート1の製造方法における第2の比較例について説明する。
【0102】
この第2比較例では、ブラスト処理装置のエアー圧力は、4.6kg/cmとされた。また、ブラスト処理部5のエッチング処理のエッチング時間が1分とされた。
【0103】
このような条件により製造されたバッキングプレート1のブラスト処理部5の表面粗さ(Ra)は、2.5μmであり、ブラスト処理部5に残留した円相当直径10μm以上のブラスト材は、1cmあたり平均で9個であった。
【0104】
スパッタリング装置100により薄膜が成膜され、薄膜に混入したパーティクルが測定された結果、パーティクル数の平均は、8個であった。また、突発的なパーティクルの発生回数は3回であった。
【0105】
(第3比較例)
次に、バッキングプレート1の製造方法における第3の比較例について説明する。
【0106】
この第2比較例では、ブラスト処理装置のエアー圧力は、3.8kg/cmとされた。
【0107】
このような条件により製造されたバッキングプレート1のブラスト処理部5の表面粗さ(Ra)は、0.8μmであり、ブラスト処理部5に残留した円相当直径10μm以上のブラスト材は、1cmあたり平均で5個であった。
【0108】
スパッタリング装置100により薄膜が成膜され、薄膜に混入したパーティクルが測定された結果、パーティクル数の平均は、9個であった。また、突発的なパーティクルの発生回数は4回であった。
【0109】
(第4比較例)
次に、バッキングプレート1の製造方法における第4の比較例について説明する。
【0110】
この第4比較例では、ブラスト処理のブラスト材の粒径は、円相当直径の平均が200μm〜400μmとされ、ブラスト処理装置のエアー圧力は、4.5kg/cmとされた。
【0111】
さらに、第4比較例では、超音波洗浄後のエッチング処理(ステップ4)及び、このエッチング処理後の超音波洗浄の処理(ステップ5)が行われない。
【0112】
このような条件により製造されたバッキングプレート1のブラスト処理部5の表面粗さ(Ra)は、2.8μmであり、ブラスト処理部5に残留した円相当直径10μm以上のブラスト材は、1cmあたり平均で15個であった。
【0113】
スパッタリング装置100により薄膜が成膜され、薄膜に混入したパーティクルが測定された結果、パーティクル数の平均は、12個であった。また、突発的なパーティクルの発生回数は4回であった。
【0114】
(第5比較例)
次に、バッキングプレート1の製造方法における第5の比較例について説明する。
【0115】
この第5比較例では、ブラスト処理(ステップ2)、エッチング処理(ステップ4)、エッチング処理後の超音波洗浄(ステップ5)が行われない。つまり、バッキングプレート1は、超音波洗浄(ステップ3)のみが行われる。
【0116】
このような条件により製造されたバッキングプレート1のブラスト処理部5の表面粗さ(Ra)は、0.5μmであり、ブラスト処理部5に残留した円相当直径10μm以上のブラスト材は、1cmあたり平均で0個であった。
【0117】
スパッタリング装置100により薄膜が成膜され、薄膜に混入したパーティクルが測定された結果、パーティクル数の平均は、8個であった。また、突発的なパーティクルの発生回数は3回であった。
【0118】
(第6比較例)
次に、バッキングプレート1の製造方法における第6の比較例について説明する。
【0119】
この第6比較例では、ブラスト処理のブラスト材の粒径は、円相当直径の平均が200μm〜400μmとされ、ブラスト処理装置のエアー圧力は、4.4kg/cmとされた。
【0120】
さらに、第6比較例では、ブラスト処理後の超音波洗浄(ステップ3)及びエッチング処理後の超音波洗浄(ステップ5)において、超音波の周波数が30kHzとされた。
【0121】
このような条件により製造されたバッキングプレート1のブラスト処理部5の表面粗さ(Ra)は、2.8μmであり、ブラスト処理部5に残留した円相当直径10μm以上のブラスト材は、1cmあたり平均で10個であった。
【0122】
スパッタリング装置100により薄膜が成膜され、薄膜に混入したパーティクルが測定された結果、パーティクル数の平均は、7個であった。また、突発的なパーティクルの発生回数は3回であった。
【0123】
(第7比較例)
次に、バッキングプレート1の製造方法における第7の比較例について説明する。
【0124】
この第7比較例では、ブラスト処理のブラスト材の粒径は、円相当直径の平均が200μm〜400μmとされた。
【0125】
ブラスト処理後の超音波洗浄(ステップ3)及びエッチング処理後の超音波洗浄(ステップ5)において、超音波の周波数が30kHzとされた。また、エッチング処理(ステップ4)の代わりに、ブラスト処理部5が洗浄液でジェット洗浄された。この場合、洗浄液の吐出圧力は、250kgf/cmとされ、水量は、20l/minとされた。
【0126】
このような条件により製造されたバッキングプレート1のブラスト処理部5の表面粗さ(Ra)は、2.7μmであり、ブラスト処理部5に残留した円相当直径10μm以上のブラスト材は、1cmあたり平均で12個であった。
【0127】
スパッタリング装置100により薄膜が成膜され、薄膜に混入したパーティクルが測定された結果、パーティクル数の平均は、7個であった。また、突発的なパーティクルの発生回数は3回であった。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】本発明の一実施の形態に係るスパッタリング装置を示す模式図である。
【図2】スパッタリング装置が有するスパッタカソード及びシールド近傍の拡大図である。
【図3】スパッタカソードの分解斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るバッキングプレートの製造方法を示すフローチャートである。
【図5】洗浄装置の一例を示す模式図である。
【図6】第1実施形態から第8実施形態まで、及び第1比較例から第7比較例までのバッキングプレートの材質や、表面粗さなどを比較するための図である。
【符号の説明】
【0129】
1…バッキングプレート
2…スパッタリングターゲット
3…形成領域
5…ブラスト処理部
10…スパッタカソード
20…真空槽
100…スパッタリング装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパッタリングターゲットを保持するバッキングプレートの製造方法であって、
バッキングプレート本体を準備し、
前記バッキングプレート本体の前記スパッタリングターゲットが形成される領域である形成領域以外の少なくとも一部をブラスト処理することでブラスト処理部を形成し、
前記ブラスト処理部を超音波洗浄し、
前記超音波洗浄された前記ブラスト処理部をエッチングし、または洗浄液でジェット洗浄し、
前記ブラスト処理部を再び超音波洗浄する
バッキングプレートの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のバッキングプレートの製造方法であって、
前記ブラスト処理部を形成する工程は、前記ブラスト処理部を表面粗さ(Ra)1μm以上4μm以下に粗面化する
バッキングプレートの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のバッキングプレートの製造方法であって、
前記超音波洗浄する工程は、18kHz以上19kHz以下の超音波が印加された洗浄液の噴流で前記ブラスト処理部を超音波洗浄する
バッキングプレートの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のバッキングプレートの製造方法であって、
前記噴流の圧力を200kPa以上300kPa以下とする
バッキングプレートの製造方法。
【請求項5】
スパッタリングターゲットを保持するバッキングプレートであって、
バッキングプレート本体と、
前記バッキングプレート本体の前記スパッタリングターゲットが形成される領域である形成領域以外の少なくとも一部がブラスト処理されることで形成され、表面粗さ(Ra)が1μm以上4μm以下であり、かつ、円相当直径10μm以上の前記ブラスト材が1cmあたり4個以下であるブラスト処理部と
を具備するバッキングプレート。
【請求項6】
請求項5に記載のバッキングプレートであって、
前記バッキングプレート本体は、アルミニウム、銅、チタン、ステンレス鋼、または、これら材料の何れかを主成分とする合金からなるバッキングプレート。
【請求項7】
スパッタリングターゲットと
前記スパッタリングターゲットを保持するバッキングプレート本体と、
前記バッキングプレート本体の前記スパッタリングターゲットが形成される領域である形成領域以外の少なくとも一部がブラスト処理されることで形成され、表面粗さ(Ra)が1μm以上4μm以下であり、かつ、円相当直径10μm以上の前記ブラスト材が1cmあたり4個以下であるブラスト処理部と
を具備するスパッタカソード。
【請求項8】
真空槽と、
スパッタリングターゲットと、前記スパッタリングターゲットを保持するバッキングプレート本体と、前記バッキングプレート本体の前記スパッタリングターゲットが形成される領域である形成領域以外の少なくとも一部がブラスト処理されることで形成され、表面粗さ(Ra)が1μm以上4μm以下であり、かつ、円相当直径10μm以上の前記ブラスト材が1cmあたり4個以下であるブラスト処理部とを有し、電圧が印加されることで前記真空槽内にスパッタ粒子を飛散させるためのスパッタカソードと
を具備するスパッタリング装置。
【請求項9】
バッキングプレートがブラスト処理されることで形成されるブラスト処理部を超音波洗浄し、
前記超音波洗浄された前記ブラスト処理部をエッチングし、または洗浄液でジェット洗浄し、
前記ブラスト処理部を再び超音波洗浄する
バッキングプレートの洗浄方法。
【請求項10】
請求項9に記載のバッキングプレートの洗浄方法であって、
前記超音波洗浄する工程は、前記ブラスト処理部を18kHz以上19kHz以下の超音波が印加された洗浄液の噴流で超音波洗浄する
バッキングプレートの洗浄方法。
【請求項11】
請求項9に記載のバッキングプレートの洗浄方法であって、
前記噴流の圧力を200kPa以上300kPa以下とする
バッキングプレートの洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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