説明

バッテリモジュール状態検出装置、バッテリモジュール状態制御装置、バッテリシステム、電動車両、移動体、電力貯蔵装置および電源装置

【課題】充電および放電を行いつつ複数のバッテリセルの残存容量の差を簡単な構成および低コストで検出するバッテリモジュール状態検出装置、バッテリモジュール状態制御装置、バッテリシステム、電動車両、移動体、電力貯蔵装置および電源装置を提供する。
【解決手段】バッテリモジュール10を構成するバッテリセル10a〜10cは、直列に接続される。バッテリモジュール状態検出装置200において、電流測定部210により電源線501を流れる電流が測定される。電流値に基づいて電流積算部273により電流積算値が算出される。電圧比較ユニット290によりバッテリセル10a〜10cと中間電圧Vth_Mとが比較される。各バッテリセル10a〜10cの電圧と中間電圧Vth_Mとが等しくなった時点で電流積算値が求められ、それぞれ求められた電流積算値の差がバッテリモジュール状態として算出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のバッテリセルを含むバッテリモジュールの状態を検出するバッテリモジュール状態検出装置、バッテリモジュール状態制御装置、バッテリシステム、電動車両、移動体、電力貯蔵装置および電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動自動車等の移動体の駆動源または蓄電装置として、充放電が可能なバッテリモジュールが用いられる。このようなバッテリモジュールは、例えば複数のバッテリセル(単電池)が直列に接続された構成を有する。
【0003】
バッテリモジュールを備えるバッテリシステムにおいては、複数のバッテリセルの容量にばらつきが生じることがある。このようなばらつきを防止するために、各バッテリセルの充放電により複数のバッテリセルの容量を個別に制御することが望ましい。
【0004】
そこで、複数のバッテリセルの開放電圧値を取得し、取得された開放電圧値に基づいて各バッテリセルの容量を調整する方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1の電池モジュールにおいて、直列接続された複数のバッテリセル(単電池)を均等化する場合には、まず、電圧測定回路により複数のバッテリセルの開放電圧値が取得される。次に、全てのバッテリセルの開放電圧値のうちの最大値および最小値が取得され、取得された最大値および最小値の平均値が目標電圧値として算出される。算出された目標電圧値と複数のバッテリセルの開放電圧値との差が偏差として算出される。
【0006】
その後、複数のバッテリセルの容量をほぼ均一にするために、複数のバッテリセルに関して、算出された偏差に基づいて容量を調整する必要があるか否かが判定される。容量を調整する必要があると判断されたバッテリセルについて、容量の調整量が算出される。この調整量に基づいてそのバッテリセルが放電され、複数のバッテリセルの容量が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−284253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
複数のバッテリセルの容量をより均一に調整するために、各バッテリセルの容量の調整量は正確に算出されることが好ましい。しかしながら、特許文献1の電池モジュールにおいては、容量の調整量を算出するためにバッテリセルの開放電圧値が取得され、取得された開放電圧値に基づいて容量の調整量が算出される。上記の電圧測定回路は、複数のバッテリセルの開放電圧値を測定するための複雑な回路構成を有し、高価である。
【0009】
また、特許文献1の電池モジュールにおいては、バッテリセルの開放電圧値が取得されるので、バッテリセルの充電時および放電時に各バッテリセルの容量の調整量を算出することはできない。
【0010】
本発明の目的は、充電および放電を行いつつ複数のバッテリセルの残存容量の差を簡単な構成および低コストで検出するバッテリモジュール状態検出装置、バッテリモジュール状態制御装置、バッテリシステム、電動車両、移動体、電力貯蔵装置および電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るバッテリモジュール状態検出装置は、直列接続された複数のバッテリセルを含むバッテリモジュールの状態を検出するバッテリモジュール状態検出装置であって、複数のバッテリセルに流れる電流値を測定する電流測定部と、電流測定部により測定された電流値に基づいて電流積算値を算出する電流積算部と、各バッテリセルの電圧と予め定められた電圧しきい値とを比較する比較部と、比較部の比較結果および電流積算部により算出される電流積算値に基づいて、各バッテリセルの電圧が電圧しきい値と実質的に等しくなった時点での電流積算値を求め、複数のバッテリセルについてそれぞれ求められた電流積算値の差をバッテリモジュール状態として算出する算出部とを備えるものである。
【0012】
そのバッテリモジュール状態検出装置においては、電流測定部により複数のバッテリセルに流れる電流値が測定され、測定された電流値に基づいて電流積算部により電流積算値が算出される。また、比較部により各バッテリセルの電圧と予め定められた電圧しきい値とが比較される。さらに、その比較結果および算出される電流積算値に基づいて、算出部により各バッテリセルの電圧が電圧しきい値と実質的に等しくなった時点での電流積算値が求められ、複数のバッテリセルについてそれぞれ求められた電流積算値の差がバッテリモジュール状態として算出される。
【0013】
この場合、各バッテリセルの電圧が電圧しきい値と実質的に等しくなった時点での電流積算値は、複数のバッテリセルの充電または放電を同時に開始した後、各バッテリセルの電圧が電圧しきい値になるまでに充電または放電により移動した電荷の総量に相当する。そのため、複数のバッテリセルについての電流積算値の差は、複数のバッテリセルの残存容量の差に相当する。したがって、各バッテリセルの電圧値を測定することなく、複数のバッテリセルに流れる電流値を測定することにより、充電および放電を行いつつ複数のバッテリセルの残存容量の差を簡単な構成および低コストで検出することができる。
【0014】
算出部は、各バッテリセルの電圧が電圧しきい値と実質的に等しくなった時点で電流測定部により測定される電流値を取得し、各バッテリセルの電圧が電圧しきい値と実質的に等しくなった時点での電流積算値のうち、取得された電流値の絶対値が予め定められた第1の電流しきい値以下となる場合における電流積算値を選択し、複数のバッテリセルについてそれぞれ選択された電流積算値の差をバッテリモジュール状態として算出してもよい。
【0015】
各バッテリセルの端子電圧は、バッテリセルの内部抵抗に起因する電圧降下により変化する。内部抵抗に起因する電圧降下は、バッテリセルに流れる電流が少ないほど小さくなる。そこで、各バッテリセルの電圧が電圧しきい値と実質的に等しくなった時点での電流積算値のうち、取得された電流値の絶対値が予め定められた第1の電流しきい値以下となる場合における電流積算値が選択され、複数のバッテリセルについてそれぞれ選択された電流積算値の差がバッテリモジュール状態として算出される。それにより、各バッテリセルの電圧が電圧しきい値と実質的に等しくなる時点をより正確に判定することができる。その結果、複数のバッテリセルの残存容量の差をより正確に検出することができる。
【0016】
算出部は、各バッテリセルの電圧が電圧しきい値と実質的に等しくなった時点で電流測定部により測定される電流値を取得し、各バッテリセルの電圧が電圧しきい値と実質的に等しくなった時点での電流積算値から複数のバッテリセルについての電流積算値の組み合わせを求め、取得された最大および最小の電流値の差の絶対値が予め定められた第2の電流しきい値以下である組み合わせを選択し、選択された組み合わせにおける電流積算値の差をバッテリモジュール状態として算出してもよい。
【0017】
各バッテリセルの端子電圧は、バッテリセルの内部抵抗に起因する電圧降下により変化する。内部抵抗に起因する電圧降下は、バッテリセルに流れる電流により異なる。そこで、各バッテリセルの電圧が電圧しきい値と実質的に等しくなった時点での電流積算値から複数のバッテリセルについての電流積算値の組み合わせが求められ、取得された最大および最小の電流値の差の絶対値が予め定められた第2の電流しきい値以下である組み合わせが選択される。さらに、選択された組み合わせにおける電流積算値の差がバッテリモジュール状態として算出される。それにより、各バッテリセルの電圧が一定の電圧になる時点をより正確に判定することができる。その結果、複数のバッテリセルの残存容量の差をより正確に検出することができる。
【0018】
バッテリモジュール状態検出装置は、複数のバッテリモジュールの温度を測定する温度測定部をさらに備え、算出部は、各バッテリセルの電圧がしきい値と実質的に等しくなった時点で温度測定部により測定される温度を取得し、各バッテリセルの電圧が電圧しきい値と実質的に等しくなった時点での電流積算値のうち、取得された温度が予め定められた温度以上である場合における電流積算値を選択し、複数のバッテリセルについてそれぞれ選択された電流積算値の差をバッテリモジュール状態として算出してもよい。
【0019】
バッテリセルの内部抵抗は、温度が低くなると増加しやすい傾向がある。そのため、各バッテリセルの端子電圧は、温度が低くなると、複数のバッテリセルに流れる電流値の変化に伴ってより大きく変化する。そこで、各バッテリセルの電圧がしきい値と実質的に等しくなった時点で温度測定部により測定される温度が取得され、各バッテリセルの電圧がしきい値と実質的に等しくなった時点での電流積算値のうち、取得された温度が予め定められた温度以上である場合における電流積算値が選択される。さらに、複数のバッテリセルについてそれぞれ選択された電流積算値の差がバッテリモジュール状態として算出される。それにより、各バッテリセルの電圧が電圧しきい値と実質的に等しくなる時点をより正確に判定することができる。その結果、複数のバッテリセルの残存容量の差をより正確に検出することができる。
【0020】
電圧しきい値は、3.6V以上3.8V以下または3.9V以上4.1V以下に設定されてもよい。
【0021】
満充電容量に対する残存容量の比率(以下、SOCと呼ぶ)が100%である場合のバッテリセルの開放電圧が約4.2Vであるバッテリセルにおいては、SOCが50%である場合のバッテリセルの開放電圧が約3.7Vであり、SOCが90%である場合のバッテリセルの開放電圧が約4.0Vである。
【0022】
この場合、バッテリセルをSOCが50%を基準として変動するように用いる場合、バッテリセルの開放電圧が約3.7Vを中心として変動する。これにより、各バッテリセルの電圧が約3.7Vに等しくなる時点を多くすることができるので、電圧しきい値を3.6V以上3.8V以下に設定することにより、バッテリモジュール状態を算出するための電流積算値を容易に取得することができる。
【0023】
また、バッテリセルを満充電状態となるように繰り返し充電して用いる場合、SOCが90%を超えるまたは90%以下になる頻度が多くなる。これにより、各バッテリセルの電圧が約4.0Vに等しくなる時点を多くすることができるので、電圧しきい値を3.9V以上4.1V以下に設定することにより、バッテリモジュール状態を算出するための電流積算値を容易に取得することができる。
【0024】
本発明に係るバッテリモジュール状態制御装置は、上記の発明に係るバッテリモジュール状態検出装置と、バッテリモジュール状態検出装置により検出される複数のバッテリセルの積算電流値の差に基づいて複数のバッテリセルの充電状態を均一に調整する充電状態調整装置とを備えるものである。
【0025】
このバッテリモジュール状態制御装置においては、複数のバッテリセルの積算電流値の差が上記の発明に係るバッテリモジュール状態検出装置によりバッテリモジュール状態として検出される。検出されたバッテリモジュール状態に基づいて複数のバッテリセルの充電状態が充電状態調整装置により調整される。
【0026】
これにより、各バッテリセルの電圧値を測定することなく、複数のバッテリセルに流れる電流値を測定することにより、充電および放電を行いつつ複数のバッテリセルの残存容量の差を簡単な構成および低コストで検出し、複数のバッテリセルの充電状態を調整することができる。また、バッテリモジュール状態制御装置の構成の単純化および低コスト化が実現される。
【0027】
本発明に係るバッテリシステムは、直列接続された複数のバッテリセルを含むバッテリモジュールと、バッテリモジュールの状態を検出し、検出されたバッテリモジュール状態に基づいて複数のバッテリセルの充電状態を均一に調整する上記の発明に係るバッテリモジュール状態制御装置とを備えるものである。
【0028】
このバッテリシステムにおいては、複数のバッテリセルの積算電流値の差が上記の発明に係るバッテリモジュール状態検出装置によりバッテリモジュール状態として検出される。検出されたバッテリモジュール状態に基づいて複数のバッテリセルの充電状態が充電状態調整装置により調整される。
【0029】
これにより、各バッテリセルの電圧値を測定することなく、複数のバッテリセルに流れる電流値を測定することにより、充電および放電を行いつつ複数のバッテリセルの残存容量の差を簡単な構成および低コストで検出し、複数のバッテリセルの充電状態を調整することができる。
【0030】
本発明に係るバッテリシステムは、直列接続された複数のバッテリセルを含むバッテリモジュールと、バッテリモジュールの状態を検出する上記の発明に係るバッテリモジュール状態検出装置とを備えるものである。
【0031】
このバッテリシステムにおいては、複数のバッテリセルの積算電流値の差が上記の発明に係るバッテリモジュール状態検出装置によりバッテリモジュール状態として検出される。これにより、バッテリシステムの構成の単純化および低コスト化を実現するとともに、充電および放電を行いつつ複数のバッテリセルの残存容量の差を検出することができる。
【0032】
本発明に係る電動車両は、バッテリモジュールの状態を検出し、検出されたバッテリモジュール状態に基づいて複数のバッテリセルの充電状態を均一に調整する上記の発明に係るバッテリシステムと、バッテリモジュールの電力により駆動されるモータと、モータの回転力により回転する駆動輪とを備えるものである。
【0033】
この電動車両においては、バッテリモジュールからの電力によりモータが駆動される。そのモータの回転力によって駆動輪が回転することにより、電動車両が移動する。
【0034】
また、この電動車両においては、複数のバッテリセルの積算電流値の差が上記の発明に係るバッテリモジュール状態検出装置によりバッテリモジュール状態として検出される。これにより、電動車両の構成の単純化および低コスト化を実現するとともに、充電および放電を行いつつ複数のバッテリセルの残存容量の差を検出することができる。
【0035】
本発明に係る移動体は、バッテリモジュールの状態を検出し、検出されたバッテリモジュール状態に基づいて複数のバッテリセルの充電状態を均一に調整する上記の発明に係るバッテリシステムと、移動本体部と、複数のバッテリセルからの電力を移動本体部を移動させるための動力に変換する動力源と、動力源により変換された動力により移動本体部を移動させる駆動部とを備えるものである。
【0036】
この移動体においては、上記のバッテリシステムからの電力が動力源により動力に変換され、その動力により移動本体部が移動する。この移動体には、上記のバッテリシステムが用いられる。したがって、複数のバッテリセルの積算電流値の差が、上記の発明に係るバッテリモジュール状態検出装置によりバッテリモジュール状態として検出される。これにより、移動体の構成の単純化および低コスト化を実現するとともに、充電および放電を行いつつ複数のバッテリセルの残存容量の差を検出することができる。
【0037】
本発明に係る電力貯蔵装置は、直列接続された複数のバッテリセルと、複数のバッテリセルに流れる電流値を測定する電流測定部と、複数のバッテリセルの充電または放電に関する制御を行う充放電制御部と、各バッテリセルの電圧と予め定められた電圧しきい値とを比較する比較部と、比較部の比較結果を充放電制御部に出力する通信部とを備え、充放電制御部は、電流測定部により測定された電流値に基づいて電流積算値を算出し、通信部から入力される比較部の比較結果および算出された電流積算値に基づいて、各バッテリセルの電圧が電圧しきい値と実質的に等しくなった時点での電流積算値を求め、複数のバッテリセルについてそれぞれ求められた電流積算値の差を算出するものである。
【0038】
その電力貯蔵装置においては、電流測定部により複数のバッテリセルに流れる電流値が測定され、測定された電流値に基づいて充放電制御部により電流積算値が算出される。また、比較部により各バッテリセルの電圧と予め定められた電圧しきい値とが比較される。さらに、充放電制御部により、その比較結果および算出される電流積算値に基づいて、各バッテリセルの電圧が電圧しきい値と実質的に等しくなった時点での電流積算値が求められ、複数のバッテリセルについてそれぞれ求められた電流積算値の差が算出される。
【0039】
この場合、各バッテリセルの電圧が電圧しきい値と実質的に等しくなった時点での電流積算値は、複数のバッテリセルの充電または放電を同時に開始した後、各バッテリセルの電圧が電圧しきい値になるまでに充電または放電により移動した電荷の総量に相当する。そのため、複数のバッテリセルについての電流積算値の差は、複数のバッテリセルの残存容量の差に相当する。したがって、各バッテリセルの電圧値を測定することなく、複数のバッテリセルに流れる電流値を測定することにより、充電および放電を行いつつ複数のバッテリセルの残存容量の差を簡単な構成および低コストで検出することができる。
【0040】
また、その電力貯蔵装置においては、充放電制御部により、複数のバッテリセルの充電または放電に関する制御が行われる。それにより、複数のバッテリセルの劣化、過放電および過充電を防止することができる。
【0041】
充放電制御部は、複数のバッテリセルの充電時に、外部から複数のバッテリセルに流れる電流値が予め定められた第3の電流しきい値以下となるように複数のバッテリセルの充電に関する制御を行ってもよい。
【0042】
各バッテリセルの端子電圧は、バッテリセルの内部抵抗に起因する電圧降下により変化する。内部抵抗に起因する電圧降下は、バッテリセルに流れる電流が少ないほど小さくなる。
【0043】
この電力貯蔵装置においては、複数のバッテリセルの充電時に、外部から複数のバッテリセルに流れる電流値が予め定められた第3の電流しきい値以下となるように制御される。
【0044】
それにより、複数のバッテリセルの充電時には、各バッテリセルの電圧が電圧しきい値と実質的に等しくなる時点を正確に判定することができる。その結果、複数のバッテリセルの残存容量の差を正確に検出することができる。
【0045】
充放電制御部は、複数のバッテリセルの充電時に、外部から複数のバッテリセルに流れる電流値が予め定められた範囲を超えて変動しないように複数のバッテリセルの充電に関する制御を行ってもよい。
【0046】
各バッテリセルの端子電圧は、バッテリセルの内部抵抗に起因する電圧降下により変化する。内部抵抗に起因する電圧降下は、バッテリセルに流れる電流の大きさに応じて変化する。そのため、バッテリセルに流れる電流値が大きく変動すると、内部抵抗に起因する電圧降下も大きく変動する。
【0047】
この電力貯蔵装置においては、複数のバッテリセルの充電時に、外部から複数のバッテリセルに流れる電流値が予め定められた範囲を超えて変動しないように制御される。
【0048】
それにより、各バッテリセルの電圧が電圧しきい値と実質的に等しくなる時点を正確に判定することができる。その結果、複数のバッテリセルの残存容量の差を正確に検出することができる。
【0049】
本発明に係る電源装置は、外部に接続可能な電源装置であって、上記の発明に係る電力貯蔵装置と、電力貯蔵装置の充放電制御部により制御され、電力貯蔵装置の複数のバッテリセルと外部との間で電力変換を行う電力変換装置とを備えるものである。
【0050】
その電源装置においては、複数のバッテリセルと外部との間で電力変換装置により電力変換が行われる。電力変換装置が上記の電力貯蔵装置の充放電制御部により制御されることにより、複数のバッテリセルの充電または放電に関する制御が行われる。それにより、複数のバッテリセルの劣化、過放電および過充電を防止することができる。
【0051】
また、上記の電力貯蔵装置が用いられることにより、各バッテリセルの電圧値を測定することなく、複数のバッテリセルに流れる電流値を測定することにより、充電および放電を行いつつ複数のバッテリセルの残存容量の差を簡単な構成および低コストで検出することができる。
【0052】
本発明に係るバッテリモジュール状態検出プログラムは、直列接続された複数のバッテリセルを含むバッテリモジュールの状態を検出するバッテリモジュール状態検出装置が備えるコンピュータにより実行可能なバッテリモジュール状態検出プログラムであって、複数のバッテリセルに流れる電流値を取得する処理と、取得された電流値に基づいて電流積算値を算出する処理と、各バッテリセルの電圧と予め定められた電圧しきい値との比較結果を取得する処理と、比較結果および算出される電流積算値に基づいて、各バッテリセルの電圧が電圧しきい値と実質的に等しくなった時点での電流積算値を求め、複数のバッテリセルについてそれぞれ求められた電流積算値の差をバッテリモジュール状態として算出する処理とを、コンピュータに実行させるものである。
【0053】
このバッテリモジュール状態検出プログラムにおいては、複数のバッテリセルに流れる電流値が取得され、取得された電流値に基づいて電流積算値が算出される。また、各バッテリセルの電圧と予め定められた電圧しきい値とが比較される。さらに、その比較結果および算出される電流積算値に基づいて、各バッテリセルの電圧が電圧しきい値と実質的に等しくなった時点での電流積算値が求められ、複数のバッテリセルについてそれぞれ求められた電流積算値の差がバッテリモジュール状態として算出される。
【0054】
この場合、複数のバッテリセルについての電流積算値の差は、複数のバッテリセルの残存容量の差に相当する。したがって、各バッテリセルの電圧値を測定することなく、複数のバッテリセルに流れる電流値を測定することにより、充電および放電を行いつつ複数のバッテリセルの残存容量の差を簡単な構成および低コストで検出することができる。
【0055】
本発明に係るバッテリモジュール状態検出方法は、直列接続された複数のバッテリセルを含むバッテリモジュールの状態を検出するバッテリモジュール状態検出方法であって、複数のバッテリセルに流れる電流値を取得するステップと、取得された電流値に基づいて電流積算値を算出するステップと、各バッテリセルの電圧と予め定められた電圧しきい値との比較結果を取得するステップと、比較結果および算出される電流積算値に基づいて、各バッテリセルの電圧が電圧しきい値と実質的に等しくなった時点での電流積算値を求め、複数のバッテリセルについてそれぞれ求められた電流積算値の差をバッテリモジュール状態として算出するステップとを備えるものである。
【0056】
このバッテリモジュール状態検出方法においては、複数のバッテリセルに流れる電流値が取得され、取得された電流値に基づいて電流積算値が算出される。また、各バッテリセルの電圧と予め定められた電圧しきい値とが比較される。さらに、その比較結果および算出される電流積算値に基づいて、各バッテリセルの電圧が電圧しきい値と実質的に等しくなった時点での電流積算値が求められ、複数のバッテリセルについてそれぞれ求められた電流積算値の差がバッテリモジュール状態として算出される。
【0057】
この場合、複数のバッテリセルについての電流積算値の差は、複数のバッテリセルの残存容量の差に相当する。したがって、各バッテリセルの電圧値を測定することなく、複数のバッテリセルに流れる電流値を測定することにより、充電および放電を行いつつ複数のバッテリセルの残存容量の差を簡単な構成および低コストで検出することができる。
【発明の効果】
【0058】
本発明によれば、充電および放電を行いつつ複数のバッテリセルの残存容量の差を簡単な構成および低コストで検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】第1の実施の形態に係るバッテリシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】バッテリシステムの動作を説明するためのタイムチャートである。
【図3】バッテリシステムの動作を説明するためのタイムチャートである。
【図4】図2および図3で示されるバッテリシステムの動作時に図1の記憶部により記憶されるセル状態情報の一例を示す図である。
【図5】第1の実施の形態に係るバッテリシステムにおけるバッテリモジュール状態検出処理を示すフローチャートである。
【図6】セル状態情報記憶処理を示すフローチャートである。
【図7】セル状態情報抽出処理を示すフローチャートである。
【図8】充電状態調整処理を示すフローチャートである。
【図9】第2の実施の形態に係るバッテリモジュール状態制御装置に用いられる調整ユニットの一構成例を示す図である。
【図10】第3の実施の形態に係るバッテリモジュール状態制御装置に用いられる調整ユニットの一構成例を示す図である。
【図11】第3の実施の形態における充電状態調整処理を示すフローチャートである。
【図12】第4の実施の形態に係る電動自動車の構成を示すブロック図である。
【図13】第5の実施の形態に係るモジュール装置の構成を示すブロック図である。
【図14】第5の実施の形態に係る電源装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
[1]第1の実施の形態
以下、第1の実施の形態に係るバッテリモジュール状態検出装置、バッテリモジュール状態制御装置およびバッテリシステムについて図面を参照しながら説明する。
【0061】
バッテリモジュール状態検出装置は、バッテリモジュール状態制御装置の構成要素の一部として用いられる。バッテリモジュール状態制御装置は、電力を駆動源とする電動車両に搭載されるバッテリシステムの構成要素の一部として用いられる。
【0062】
電動車両には、ハイブリッド電動車両、バッテリ電動車両およびプラグインハイブリッド電動車両等が含まれる。本実施の形態においては、電動車両はハイブリッド電動車両である。
【0063】
以下の説明では、満充電状態でのバッテリセルに蓄積される電荷量を満充電容量と呼ぶ。また、任意の状態でバッテリセルに蓄積されている電荷量を残存容量と呼ぶ。また、バッテリモジュールに含まれる複数のバッテリセルの残存容量の差をバッテリモジュール状態と呼ぶ。さらに、バッテリセルの満充電容量に対する残存容量の比率をSOC(充電率)と呼ぶ。本実施の形態においては、バッテリセルの充電状態の一例としてバッテリセルの残存容量を用いる。
【0064】
(1)バッテリシステムの構成
図1は、第1の実施の形態に係るバッテリシステムの構成を示すブロック図である。本実施の形態において、バッテリシステム500は、バッテリモジュール10およびバッテリモジュール状態制御装置300を含む。バッテリモジュール10は、複数(図1の例では3個)のバッテリセル10a,10b,10cからなる。バッテリセル10a〜10cは、電源線501を介して直列に接続されるとともに、電動車両の負荷510に接続されている。負荷510は例えばモータ等の動力発生装置である。バッテリセル10a〜10cは二次電池である。本例では、二次電池として所定の定格容量(例えば、5Ah)を有するリチウムイオン電池が用いられる。電源線501には、メインスイッチ502が設けられる。
【0065】
メインスイッチ502がオン状態(閉状態)である場合に、複数のバッテリセル10a〜10cと負荷510とが電気的に接続され、バッテリセル10a〜10cから負荷510に電力が供給される。一方、メインスイッチ502がオフ状態(開状態)である場合に、複数のバッテリセル10a〜10cと負荷510との電気的な接続が遮断され、バッテリセル10a〜10cから負荷510に電力が供給されない。メインスイッチ502のオン状態およびオフ状態の切り替えは、バッテリ電子制御ユニット(以下、バッテリECUと呼ぶ。)270により制御される。バッテリECU270の詳細は後述する。
【0066】
バッテリモジュール状態制御装置300は、複数のバッテリセル10a〜10cにそれぞれ対応する複数(図1の例では3個)の調整ユニット310、および複数のバッテリセル10a〜10cに共通のバッテリモジュール状態検出装置200を含む。
【0067】
複数の調整ユニット310の各々は、放電部DSおよびスイッチング素子SWを含む直列回路により構成され、対応するバッテリセル10a〜10cに並列に接続される。
【0068】
調整ユニット310の放電部DSは、定電流ダイオードである。スイッチング素子SWのオンおよびオフは、後述するバッテリECU270により制御される。
【0069】
バッテリモジュール状態検出装置200は、電流測定部210、バッテリECU270、および電圧比較ユニット290を含む。
【0070】
電流測定部210は、バッテリECU270に接続される。電流測定部210においては、電源線501の一部がシャント抵抗211として用いられる。メインスイッチ502がオン状態である場合に電源線501に電流が流れる。このとき、電流測定部210においては、シャント抵抗211による電圧降下量が差動増幅器212により増幅される。増幅された電圧降下量がバッテリECU270に与えられる。
【0071】
バッテリECU270においては、与えられた電圧降下量およびシャント抵抗211の抵抗値に基づいて電源線501に流れる電流が算出される。
【0072】
複数のバッテリセル10a〜10cにそれぞれ近接して複数(図1の例では3個)のサーミスタ12が設けられる。複数のサーミスタ12はバッテリECU270に接続されている。複数のサーミスタ12は、それぞれ複数のバッテリセル10a〜10cの温度を検出するとともに、その検出結果をバッテリECU270に与える。
【0073】
電圧比較ユニット290は、第1のマルチプレクサMP1、第2のマルチプレクサMP2、第3のマルチプレクサMP3、コンパレータ230、基準電圧出力ユニット240、判定回路250、および比較結果保持回路260を含む。基準電圧出力ユニット240は、複数(図1の例では3個)の電圧出力部241,242,243を含む。電圧出力部241,242,243は、それぞれグランド端子および電源端子を有し、それぞれ上限電圧Vth_O、中間電圧Vth_Mおよび下限電圧Vth_Uを電源端子に出力する。電圧出力部241,242,243のグランド端子は、共通のノードNに接続される。
【0074】
第1〜第3のマルチプレクサMP1〜MP3の各々は、複数の端子CP0,CP1,CP2,CP3を有する。
【0075】
第1のマルチプレクサMP1においては、端子CP0がコンパレータ230の一方の入力端子に接続され、端子CP1がバッテリセル10aの正極端子に接続され、端子CP2がバッテリセル10bの正極端子に接続され、端子CP3がバッテリセル10cの正極端子に接続される。第1のマルチプレクサMP1は、一定周期で端子CP0が順次複数の端子CP1〜CP3に接続されるように切り替わる。これにより、コンパレータ230の一方の入力端子は、バッテリセル10a,10b,10cの正極端子に順次接続される。
【0076】
第2のマルチプレクサMP2においては、端子CP0がノードNに接続され、端子CP1がバッテリセル10aの負極端子に接続され、端子CP2がバッテリセル10bの負極端子に接続され、端子CP3がバッテリセル10cの負極端子に接続される。第2のマルチプレクサMP2は、一定周期で端子CP0が順次複数の端子CP1〜CP3に接続されるように切り替わる。これにより、ノードNは、バッテリセル10a,10b,10cの負極端子に順次接続される。
【0077】
第3のマルチプレクサMP3においては、端子CP0がコンパレータ230の他方の入力端子に接続され、端子CP1,CP2,CP3がそれぞれ基準電圧出力ユニット240の電圧出力部241,242,243の電源端子に接続される。
【0078】
電圧出力部241により上限電圧Vth_Oが第3のマルチプレクサMP3の端子CP1に与えられる。電圧出力部242により中間電圧Vth_Mが第3のマルチプレクサMP3の端子CP2に与えられる。電圧出力部243により下限電圧Vth_Uが第3のマルチプレクサMP3の端子CP3に与えられる。
【0079】
第3のマルチプレクサMP3は、一定周期で端子CP0が複数の端子CP1〜CP3に順次接続されるように切り替わる。これにより、コンパレータ230の他方の入力端子には、上限電圧Vth_O、中間電圧Vth_Mおよび下限電圧Vth_Uが順次与えられる。第3のマルチプレクサMP3の切り替わりの周期は、第1のおよび第2のマルチプレクサMP1,MP2の3倍である。
【0080】
本実施の形態においては、各バッテリセル10a〜10cの安全性を確保するために、各バッテリセル10a〜10cの端子電圧の上限値および下限値が定められている。上限電圧Vth_Oおよび下限電圧Vth_Uは、それぞれ各バッテリセル10a〜10cの端子電圧の上限値および下限値に基づいて定められる。
【0081】
バッテリセルのSOCとバッテリセルの開放電圧との間には一定の関係がある。SOC100%に対応する開放電圧が約4.2Vであるバッテリセルにおいては、例えば上限電圧Vth_Oが約4.2V(4.19V以上4.21V以下)に設定され、下限電圧Vth_Uが約2.0V(1.99V以上2.01V以下)に設定される。
【0082】
この場合、中間電圧Vth_Mは、SOC50%に対応する開放電圧として約3.7V(3.6V以上3.8V以下)に設定され、またはSOC90%に対応する開放電圧として約4.0V(3.9V以上4.1V以下)に設定される。
【0083】
第1のマルチプレクサMP1および第2のマルチプレクサMP2の切り替え動作は互いに同期している。したがって、コンパレータ230の一方の入力端子に、バッテリセル10a,10b,10cの端子電圧が順に与えられる。一方、第3のマルチプレクサMP3の切り替わりにより、コンパレータ230の他方の入力端子に、上限電圧Vth_O、中間電圧Vth_Mおよび下限電圧Vth_Uが順に与えられる。
【0084】
この場合、第3のマルチプレクサMP3の切り替わりの周期は、第1のマルチプレクサMP1および第2のマルチプレクサMP2の切り替わりの周期の3倍に設定されている。したがって、コンパレータ230は、バッテリセル10aの端子電圧を上限電圧Vth_O、中間電圧Vth_Mおよび下限電圧Vth_Uと順に比較し、バッテリセル10bの端子電圧を上限電圧Vth_O、中間電圧Vth_Mおよび下限電圧Vth_Uと順に比較し、バッテリセル10cの端子電圧を上限電圧Vth_O、中間電圧Vth_Mおよび下限電圧Vth_Uと順に比較する。
【0085】
判定回路250は、コンパレータ230の出力信号に基づいて、複数のバッテリセル10a〜10cのうちの少なくとも1つの端子電圧が上限電圧Vth_Oを超えたか否かを判定するとともに、複数のバッテリセル10a〜10cのうちの少なくとも1つの端子電圧が下限電圧Vth_U以下になったか否かを判定する。
【0086】
複数のバッテリセル10a〜10cのうちの少なくとも1つの端子電圧が上限電圧Vth_Oを超えたかまたは下限電圧Vth_U以下になった場合に、判定回路250は、メインスイッチ502をオフする。それにより、各バッテリセル10a〜10cの端子電圧が予め定められた上限値を超えることおよび下限値以下になることが防止される。その結果、バッテリセル10a〜10cの安全性が確保される。
【0087】
比較結果保持回路260は、コンパレータ230の出力信号に基づいて各バッテリセル10a〜10cの端子電圧が中間電圧Vth_Mを超えたか否かを示す比較結果を保持するとともに、その比較結果をバッテリECU270に与える。
【0088】
バッテリECU270は、CPU(中央演算処理装置)、タイマおよびメモリ等のハードウェア、およびコンピュータプログラム等のソフトウェアにより構成される。本実施の形態においては、CPUがメモリに記憶されたコンピュータプログラムを実行することにより、制御部271、記憶部272および電流積算部273の機能が実現される。この場合、制御部271、記憶部272および電流積算部273は、コンピュータプログラムのモジュールに相当する。なお、制御部271、記憶部272および電流積算部273の一部または全てがハードウェアにより実現されてもよい。
【0089】
バッテリECU270においては、制御部271がバッテリモジュール状態検出プログラムを実行する。これにより、制御部271は、比較結果保持回路260から与えられる比較結果に基づいて後述するバッテリモジュール状態検出処理を行う。
【0090】
バッテリECU270は、電動車両の主制御部400およびメインスイッチ502に接続されている。主制御部400は、例えば中央演算処理装置(CPU)およびメモリ、またはマイクロコンピュータからなり、バッテリシステム500および電動車両が備える種々の構成要素を制御する。
【0091】
主制御部400には図示しない始動停止指示部が接続されている。始動停止指示部は電動車両の始動および停止を指示するスタートキーを含む。運転者によりスタートキーがオンされると、主制御部400は、メインスイッチ502をオンすべき指令信号をバッテリECU270の制御部271に与える。
【0092】
バッテリECU270の制御部271は、メインスイッチ502をオンすべき指令信号に応答してメインスイッチ502をオンする。これにより、バッテリモジュール10の電力を負荷510に供給することが可能となり、電動車両の走行が可能となる。
【0093】
一方、運転者によりスタートキーがオフされると、主制御部400は、メインスイッチ502をオフすべき指令信号をバッテリECU270の制御部271に与える。
【0094】
バッテリECU270の制御部271は、メインスイッチ502をオフすべき指令信号に応答してメインスイッチ502をオフする。これにより、バッテリモジュール10から負荷510への電力の供給が停止される。
【0095】
メインスイッチ502がオン状態である場合に、電流積算部273は、電源線501に流れる電流の値に基づいて電流積算値を算出する。
【0096】
制御部271は、比較結果保持回路260から与えられる比較結果、電流積算部273により算出される電流積算値、およびバッテリセル10a〜10cの温度に基づいて、後述するセル状態情報を生成する。記憶部272は、制御部271により作成されたセル状態情報をメモリに記憶する。
【0097】
制御部271は、メモリに記憶された複数のセル状態情報に基づいてバッテリモジュール10のバッテリモジュール状態を検出する。
【0098】
本実施の形態では、バッテリモジュール状態は、各バッテリセル10a〜10cが上述の中間電圧Vth_Mに等しくなった時点で、電流積算部273により算出される電流積算値の差で表される。
【0099】
各バッテリセル10a〜10cの電圧が中間電圧Vth_Mと等しくなった時点での電流積算値は、複数のバッテリセル10a〜10cの充電または放電を同時に開始した後、各バッテリセル10a〜10cの電圧が中間電圧Vth_Mになるまでに充電または放電により移動した電荷の総量に相当する。そのため、複数のバッテリセル10a〜10cについての電流積算値の差は、複数のバッテリセル10a〜10cの残存容量の差に相当する。
【0100】
バッテリモジュール状態が検出された後、メインスイッチ502がオン状態からオフ状態に切り替わることにより、制御部271は、検出されたバッテリモジュール状態に基づいて複数の調整ユニット310を制御し、複数のバッテリセル10a〜10cの充電状態の調整を行う。
【0101】
(2)バッテリシステムの動作
バッテリシステム500の一連の動作について具体例を説明する。図2および図3は、バッテリシステム500の動作を説明するためのタイムチャートである。図2においては、上段に図1の電源線501に流れる電流の時間的変化が示され、下段に電流積算値の時間的変化が示されている。複数のバッテリセル10a〜10cが充電される場合に電源線501を流れる電流の値を正の値で表し、複数のバッテリセル10a〜10cが放電される場合に電源線501を流れる電流の値を負の値で表す。
【0102】
以下の説明では、初期状態でメインスイッチ502がオフ状態(開状態)であり、初期状態で複数のバッテリセル10a〜10cの端子電圧は互いに異なるものとする。また、メインスイッチ502がオン状態である間、複数のバッテリセル10a〜10cの端子電圧が上限電圧Vth_Oを超えることおよび下限電圧Vth_U以下になることはないとする。したがって、メインスイッチ502が判定回路250によりオフされることはない。
【0103】
ここで、バッテリセル10a〜10cの端子電圧が中間電圧Vth_Mを超えたか否かを示す比較結果をそれぞれ第1〜第3の比較結果と呼ぶ。第1〜第3の比較結果は、バッテリセル10a〜10cの端子電圧が中間電圧Vth_Mを超える場合にハイレベルで表され、中間電圧Vth_M以下である場合にローレベルで表される。
【0104】
図3においては、1段目(最上段)にバッテリセル10a,10b,10cの端子電圧の時間的変化がそれぞれ曲線CL1,CL2,CL3で表され、2段目に第1の比較結果が示され、3段目に第2の比較結果が示され、4段目(最下段)に第3の比較結果が示されている。
【0105】
図4は、図2および図3で示されるバッテリシステム500の動作時に図1の記憶部272により記憶されるセル状態情報の一例を示す図である。図4においては、図1の記憶部272により記憶されるセル状態情報が1段目から5段目にかけて経時的に示されている。
【0106】
図4のセル状態情報は、レコード番号、セル識別情報、電流積算値および電流値からなる。本例では、各セル状態情報は、第1〜第3の比較結果が切り替わるごとに追加される。
【0107】
レコード番号は、当該セル状態情報を識別するための番号である。セル識別情報は、バッテリセル10a〜10cを識別するための情報である。バッテリセル10a,10b,10cには、それぞれセル識別情報CELL1,CELL2,CELL3が予め割り当てられる。
【0108】
電流積算値は、比較結果の切り替わり時点で図1の電流積算部273により算出される電流積算値である。図4の例では、後述する時点t0〜t10における電流積算値をそれぞれIC(t0)〜IC(t10)で表す。電流値は、第1〜第3の比較結果の切り替わり時点で図1の電流測定部210の出力(電圧降下量)により算出される電流の値である。
【0109】
時点t0において、図1のメインスイッチ502がオフ状態からオン状態に切り替えられる。図2に示すように、時点t0から時点t2にかけて、電源線501に7Aの電流が流れ、バッテリセル10a〜10cが充電される。この場合、電流積算値が時点t0から時点t2にかけて上昇し、バッテリセル10a〜10cの端子電圧が上昇する(図3参照)。
【0110】
上述のように、初期状態でバッテリセル10a〜10cの端子電圧は互いに異なるが、バッテリセル10a〜10cには等しい電流が流れる。そのため、メインスイッチ502がオン状態の間、バッテリセル10a〜10c間の端子電圧の差(ばらつき)は維持される。
【0111】
図3に示すように、時点t0から時点t1にかけて、バッテリセル10a〜10cの端子電圧は中間電圧Vth_M以下である。これにより、第1〜第3の比較結果は、時点t0から時点t1にかけてローレベルで維持される。
【0112】
時点t1において、バッテリセル10aの端子電圧が中間電圧Vth_Mに達する。これにより、第1の比較結果がローレベルからハイレベルに切り替わる(図3参照)。
【0113】
この場合、制御部271は、図4に示すように、時点t1で、レコード番号「1」、セル識別情報「CELL1」、電流積算値「IC(t1)As」および電流値「7A」からなるセル状態情報を作成し、記憶部272は作成されたセル状態情報をメモリに記憶する。
【0114】
図3に示すように、時点t1から時点t2にかけて、バッテリセル10aの端子電圧は中間電圧Vth_Mよりも高く、バッテリセル10a,10bの端子電圧は中間電圧Vth_M以下である。このとき、第1〜第3の比較結果は変化しない。したがって、時点t1から時点t2の間では、セル状態情報は記憶されない。
【0115】
続いて、図2に示すように、時点t2から時点t3にかけて、電源線501に−3Aの電流が流れ、バッテリセル10a〜10cが放電される。この場合、電流積算値が時点t2から時点t3にかけて低下し、バッテリセル10a〜10cの端子電圧が低下する(図3参照)。このとき、第1〜第3の比較結果は変化しない(図3参照)。したがって、時点t2から時点t3の間でも、セル状態情報は記憶されない。
【0116】
次に、図2に示すように、時点t3から時点t5にかけて、電源線501に5Aの電流が流れ、バッテリセル10a〜10cが充電される。この場合、電流積算値が時点t3から時点t5にかけて上昇し、バッテリセル10a〜10cの端子電圧が上昇する(図3参照)。
【0117】
時点t4でバッテリセル10bの端子電圧が中間電圧Vth_Mに達する。これにより、第2の比較結果がローレベルからハイレベルに切り替わる(図3参照)。
【0118】
この場合、制御部271は、図4に示すように、時点t4で、レコード番号「2」、セル識別情報「CELL2」、電流積算値「IC(t4)As」、電流値「5A」からなる新たなセル状態情報を作成し、記憶部272は作成されたセル状態情報をメモリに記憶する。それにより、時点t4では、記憶部272により2つのセル状態情報がメモリに記憶される。
【0119】
続いて、図2に示すように、時点t5から時点t7にかけて、電源線501に11Aの電流が流れ、バッテリセル10a〜10cが充電される。この場合、電流積算値が時点t5から時点t7にかけて上昇し、第1〜第3のバッテリセル10a〜10cの端子電圧が上昇する(図3参照)。
【0120】
時点t6で第3のバッテリセル10cの端子電圧が中間電圧Vth_Mに達する。これにより、第3の比較結果がローレベルからハイレベルに切り替わる(図3参照)。
【0121】
この場合、制御部271は、図4に示すように、時点t6で、レコード番号「3」、セル識別情報「CELL3」、電流積算値「IC(t6)As」および電流値「11A」からなる新たなセル状態情報を作成し、記憶部272は作成されたセル状態情報をメモリに記憶する。それにより、時点t6では、記憶部272により3つのセル状態情報がメモリに記憶される。
【0122】
このとき、記憶部272により記憶された複数のセル状態情報に全てのバッテリセル10a,10b,10cのセル識別情報CELL1,CELL2,CELL3が含まれる。
【0123】
この場合、制御部271は、バッテリモジュール10のバッテリモジュール状態を検出することが可能であるか否かを判定するために、以下の動作を行う。
【0124】
まず、制御部271は、互いに異なるセル識別情報CELL1,CELL2,CELL3を含む3つのセル状態情報から最小電流値および最大電流値を抽出する。本例では、3つのセル状態情報に含まれる電流値は、「7A」、「5A」および「11A」である。したがって、制御部271は、最小電流値として「5A」を抽出し、最大電流値として「11A」を抽出する。
【0125】
次に、制御部271は、抽出した最大電流値「11A」から最小電流値「5A」を減算する。この場合、減算値は「6A」である。
【0126】
さらに、制御部271は、算出された減算値が予め定められた電流しきい値以下であるか否かを判定する。電流しきい値としては、例えば定格電流が用いられる。定格電流は、定格容量が1時間で完全に放電されるときの電流値であり、1Cで表記される。
【0127】
例えば、5Ahの定格容量を有するバッテリセルが用いられる場合、電流しきい値として定格電流5A(1C)が用いられる。20Ahの定格容量を有するバッテリセルが用いられる場合、電流しきい値として定格電流20A(1C)が用いられる。
【0128】
本例では、バッテリセル10a〜10cの定格容量は5Ahであり、定格電流は5Aである。算出された減算値「6A」は電流しきい値「5A」よりも大きい。このように、制御部271は、算出された減算値が電流しきい値よりも大きい場合にバッテリモジュール10のバッテリモジュール状態を検出することが不可能であると判定し、バッテリモジュール10のバッテリモジュール状態を検出するための動作を行わない。
【0129】
一方、制御部271は、算出された減算値が電流しきい値以下である場合に、バッテリモジュール10のバッテリモジュール状態を検出することが可能であると判定し、バッテリモジュール10のバッテリモジュール状態を検出するための動作を行う。この例については後述する。
【0130】
セル状態情報は、バッテリセルの端子電圧と中間電圧Vth_Mとの比較結果に基づいて作成される。バッテリセルの端子電圧は、その内部抵抗に起因する電圧降下により変化する。内部抵抗に起因する電圧降下は、バッテリセルに流れる電流が少ないほど小さくなる。
【0131】
そこで、上記のように、算出された減算値が電流しきい値以下である場合に、バッテリモジュール10のバッテリモジュール状態を検出するための動作を行う。これにより、バッテリモジュール10のバッテリモジュール状態をより正確に検出することが可能となる。
【0132】
続いて、図2に示すように、時点t7から時点t9にかけて、電源線501に−4Aの電流が流れ、バッテリセル10a〜10cが放電される。この場合、電流積算値が時点t7から時点t9にかけて低下し、バッテリセル10a〜10cの端子電圧が低下する(図3参照)。
【0133】
時点t8でバッテリセル10cの端子電圧が中間電圧Vth_Mに達する。これにより、第3の比較結果がハイレベルからローレベルに切り替わる(図3参照)。
【0134】
この場合、制御部271は、図4に示すように、時点t8で、レコード番号「4」、セル識別情報「CELL3」、電流積算値「IC(t8)As」および電流値「−4A」からなる新たなセル状態情報を作成し、記憶部272は作成されたセル状態情報をメモリに記憶する。それにより、時点t8では、記憶部272により4つのセル状態情報が記憶される。
【0135】
このとき、記憶部272により記憶された複数のセル状態情報に全てのバッテリセル10a,10b,10cのセル識別情報CELL1,CELL2,CELL3が含まれる。
【0136】
時点t8ではセル識別情報「CELL3」を含む複数(本例では2つ)のセル状態情報が存在する。この場合、制御部271は、4つのセル状態情報の中から、互いに異なるセル識別情報CELL1,CELL2,CELL3を含む3つのセル状態情報を選択する。
【0137】
具体的には、制御部271は、互いに異なるセル識別情報CELL1,CELL2,CELL3を含む3つのセル状態情報の電流値の組み合わせのうち、最大電流値と最小電流値との差が最も小さくなる組み合わせ(ばらつきが最も小さい組み合わせ)を判定し、その組み合わせに基づいて3つのセル状態情報を選択する。
【0138】
本例では、セル識別情報「CELL3」を含む2つのセル状態情報(レコード番号「3」および「4」のセル状態情報)に、それぞれ電流値「11A」および「−4A」が含まれる。したがって、セル識別情報CELL1,CELL2,CELL3を含む3つのセル状態情報の電流値の組み合わせは、「7A,5A,11A」および「7A,5A,−4A」となる。これらの組み合わせのうち最大電流値と最小電流値との差が最も小さくなる組み合わせは、「7A,5A,11A」である。
【0139】
したがって、制御部271は、この組み合わせ「7A,5A,11A」に基づいて3つのセル状態情報(レコード番号「1」,「2」および「3」のセル状態情報)を選択する。
【0140】
次に、制御部271は、3つのセル状態情報から最小電流値「5A」および最大電流値「11A」を取得し、最大電流値「11A」から最小電流値「5A」を減算する。この場合、時点t6の場合と同様に減算値は「6A」となる。そのため、時点t8においても、減算値「6A」は電流しきい値「5A」よりも大きい。したがって、制御部271は、バッテリモジュール10のバッテリモジュール状態を検出するための動作を行わない。
【0141】
続いて、図2に示すように、時点t9から時点t11にかけて、電源線501に3Aの電流が流れ、バッテリセル10a〜10cが充電される。この場合、電流積算値が時点t9から時点t11にかけて上昇し、バッテリセル10a〜10cの端子電圧が上昇する(図3参照)。
【0142】
時点t10でバッテリセル10bの端子電圧が中間電圧Vth_Mに達する。これにより、第3の比較結果がローレベルからハイレベルに切り替わる(図3参照)。
【0143】
この場合、制御部271は、図4に示すように、時点t10で、レコード番号「5」、セル識別情報「CELL3」、電流積算値「IC(t10)As」および電流値「3A」からなる新たなセル状態情報を作成し、記憶部272は作成されたセル状態情報をメモリに記憶する。それにより、時点t8では、記憶部272により5つのセル状態情報が記憶される。
【0144】
このとき、記憶部272により記憶された複数のセル状態情報に全てのバッテリセル10a,10b,10cのセル識別情報CELL1,CELL2,CELL3が含まれる。
【0145】
時点t10ではセル識別情報「CELL3」を含む複数(本例では3つ)のセル状態情報が存在する。この場合、制御部271は、上記と同様に、5つのセル状態情報の中から、互いに異なるセル識別情報CELL1,CELL2,CELL3を含む3つのセル状態情報を選択する。
【0146】
具体的には、制御部271は、互いに異なるセル識別情報CELL1,CELL2,CELL3を含む3つのセル状態情報の電流値の組み合わせのうち、最大電流値と最小電流値との差が最も小さくなる組み合わせ(ばらつきが最も小さい組み合わせ)を判定し、その組み合わせに基づいて3つのセル状態情報を選択する。
【0147】
本例では、セル識別情報「CELL3」を含む3つのセル状態情報(レコード番号「3」、「4」および「5」のセル状態情報)に、それぞれ電流値「11A」、「−4A」および「3A」が含まれる。したがって、セル識別情報CELL1,CELL2,CELL3を含む3つのセル状態情報の電流値の組み合わせは、「7A,5A,11A」、「7A,5A,−4A」および「7A,5A,3A」となる。これらの組み合わせのうち最大電流値と最小電流値との差が最も小さくなる組み合わせは、「7A,5A,3A」である。
【0148】
したがって、制御部271は、この組み合わせ「7A,5A,3A」に基づいて3つのセル状態情報(レコード番号「1」,「2」および「5」のセル状態情報)を選択する(図4の星印参照)。
【0149】
次に、制御部271は、3つのセル状態情報から最小電流値「3A」および最大電流値「7A」を取得し、最大電流値「7A」から最小電流値「3A」を減算する。この場合、減算値は「4A」となる。減算値「4A」は電流しきい値「5A」以下である。これにより、制御部271は、バッテリモジュール10のバッテリモジュール状態を検出することが可能であると判定し、バッテリモジュール10のバッテリモジュール状態を検出するために以下の動作を行う。
【0150】
まず、制御部271は、選択された3つのセル状態情報のうちレコード番号が最小のセル状態情報の電流積算値を基準積算値として取得する。
【0151】
本例では、選択された3つのセル状態情報のレコード番号は、「1」、「2」および「5」である。したがって、制御部271は、最小のレコード番号「1」のセル状態情報の電流積算値「IC(t1)As」を基準積算値として取得する。
【0152】
次に、制御部271は、レコード番号が最小でない2つのセル状態情報(抽出されなかった2つのセル状態情報)からそれぞれ電流積算値を取得し、取得した2つの電流積算値からそれぞれ基準積算値を減算する。算出された2つの減算値は、各バッテリセルの端子電圧が中間電圧Vth_Mである場合において、レコード番号が最小のセル状態情報のバッテリセルと、他の2つのセル状態情報のバッテリセルとの間の残存容量の差に相当する。
【0153】
本例では、レコード番号が最小でない2つのセル状態情報は、レコード番号「2」および「5」のセル状態情報である。したがって、制御部271は、レコード番号「2」のセル状態情報から電流積算値「IC(t4)As」を取得し、取得した電流積算値「IC(t4)As」から基準積算値「IC(t1)As」を減算する。この減算値「IC(t4)As−IC(t1)As」がバッテリセル10aとバッテリセル10bとの間の残存容量の差に相当する。
【0154】
また、制御部271は、レコード番号「5」のセル状態情報から電流積算値「IC(t10)As」を取得し、取得した電流積算値「IC(t10)」から基準積算値「IC(t1)As」を減算する。この減算値「IC(t10)As−IC(t1)As」が、バッテリセル10aとバッテリセル10cとの間の残存容量の差に相当する。
【0155】
本実施の形態では、上記のように、各バッテリセル10a〜10cの端子電圧が中間電圧Vth_Mに達した時点の電流積算値の差が、複数のバッテリセル10a〜10c間の残存容量の差に相当する。
【0156】
上記の検出結果によれば、バッテリセル10bの残存容量は、バッテリセル10aの残存容量に対して減算値「IC(t4)As−IC(t1)As」分小さい。また、バッテリセル10cの残存容量は、バッテリセル10aの残存容量に対して減算値「IC(t10)As−IC(t1)As」分小さい。
【0157】
図3の例では、電流積算値IC(t4)Asが電流積算値IC(t1)Asよりも大きく、電流積算値IC(t10)Asが電流積算値IC(t4)Asよりも大きい。この場合、バッテリセル10aの残存容量はバッテリセル10b,10cの残存容量よりも大きく、バッテリセル10bの残存容量はバッテリセル10cの残存容量よりも大きい。したがって、残存容量が最も小さいバッテリセルは、バッテリセル10cである。
【0158】
上記のようにして、制御部271は、バッテリモジュール10のバッテリモジュール状態を検出する。その後、図1のメインスイッチ502がオン状態からオフ状態に切り替えられることにより、制御部271は、バッテリセル10a〜10cの残存容量を調整するために以下の動作を行う。
【0159】
まず、制御部271は、バッテリモジュール10のバッテリモジュール状態の検出結果から、バッテリセル10aの残存容量をバッテリセル10cの残存容量(最も小さい残存容量)に等しくするための放電量(以下、第1の必要放電量と呼ぶ。)を算出する。
【0160】
上記のように、バッテリセル10cの残存容量は、バッテリセル10aの残存容量に対して減算値「IC(t10)As−IC(t1)As」分小さい。したがって、第1の必要放電量は、減算値「IC(t10)As−IC(t1)As」となる。
【0161】
また、制御部271は、バッテリモジュール10のバッテリモジュール状態の検出結果から、バッテリセル10bの残存容量をバッテリセル10cの残存容量(最も小さい残存容量)に等しくするための放電量(以下、第2の必要放電量と呼ぶ。)を算出する。
【0162】
上記のように、バッテリセル10cの残存容量は、バッテリセル10aの残存容量に対して減算値「IC(t10)As−IC(t1)As」分小さく、バッテリセル10bの残存容量は、バッテリセル10aの残存容量に対して減算値「IC(t4)As−IC(t1)As」分小さい。この場合、第2の必要放電量は、減算値「IC(t10)As−IC(t4)As」となる。
【0163】
続いて、制御部271は、バッテリセル10a,10cの残存容量をバッテリセル10cの残存容量に等しくするために、調整ユニット310(図1)のスイッチング素子SWをオン状態に維持すべき時間(放電時間)を算出する。
【0164】
上述のように、調整ユニット310の放電部DSは、定電流ダイオードである。本例では、この定電流ダイオードが、接続されたバッテリセルの充電容量を50mA/sの速度(1秒間当り50mAの速度)で減少させることができる。
【0165】
この場合、制御部271は、第1の必要放電量「IC(t10)As−IC(t1)As」を0.05A/sで除算することにより、バッテリセル10aの放電時間(s)を算出する。
【0166】
また、制御部271は、第2の必要放電量「IC(t10)As−IC(t4)As」を0.05A/sで除算することにより、バッテリセル10bの放電時間(s)を算出する。
【0167】
最後に、制御部271は、算出された放電時間に基づいて図1の複数の調整ユニット310のスイッチング素子SWをオンする。これにより、複数のバッテリセル10a〜10cの残存容量が調整される。
【0168】
上記の一連の動作時において、制御部271は、バッテリセルの温度に基づいて、そのバッテリセルに関するセル状態情報を記憶するか否かを判定することが好ましい。
【0169】
例えば、制御部271は、第1〜第3の比較結果の切り替わりに応答して、比較結果が切り替わったバッテリセルの温度が所定温度以上であるか否かを判定する。
【0170】
記憶部272は、バッテリセルの温度が所定温度以上である場合にセル状態情報をメモリに記憶する。一方、記憶部272は、第1のバッテリセル10aの温度が所定温度よりも低い場合にセル状態情報をメモリに記憶しない。所定温度は例えば常温である。常温としては、例えば25℃を用いる。
【0171】
バッテリセルの内部抵抗は温度依存性を有し、温度が低くなると増加しやすい傾向がある。例えばリチウムイオン電池の温度が常温以上である場合、そのリチウムイオン電池の内部抵抗はほぼ一定でかつ低い。一方、リチウムイオン電池の温度が0℃以下である場合、リチウムイオン電池の内部抵抗は、そのリチウムイオン電池が常温以上であるときの内部抵抗の値に比べて高くなる。
【0172】
そこで、記憶部272は、バッテリセルの温度が所定温度以上である場合にセル状態情報をメモリに記憶する。これにより、内部抵抗の影響を抑制しつつ複数のバッテリセル10a〜10cの残存容量の差をより正確に検出することが可能となる。
【0173】
(3)バッテリモジュール状態検出処理
(3−1)バッテリモジュール状態検出処理の全体
上述のように、本実施の形態に係るバッテリシステム500においては、バッテリECU270のCPUがメモリに記憶されたバッテリモジュール状態検出プログラムを実行することによりバッテリモジュール状態検出処理が行われる。
【0174】
図5は、第1の実施の形態に係るバッテリシステム500におけるバッテリモジュール状態検出処理を示すフローチャートである。初期状態では、バッテリシステム500の電源がオンされている(バッテリシステム500の起動)。
【0175】
図5に示すように、制御部271は、図1の主制御部400からメインスイッチ502をオンすべき指令信号を受けたか否かを判定する(ステップS1)。
【0176】
メインスイッチ502をオンすべき指令信号を受けた場合、制御部271はメインスイッチ502をオンし、電流積算部273は電流積算値を0にリセットする(ステップS2)。
【0177】
続いて、制御部271は、図1のサーミスタ12から与えられる複数のバッテリセル10a〜10cの温度を取得するとともに、図1の電流測定部210からの出力に基づいて電源線501を流れる電流値を取得する(ステップS3)。電流積算部273は、制御部271により、取得された電流値に基づいて電流積算値を算出する(ステップS4)。ステップS3,S4の処理は、メインスイッチ502がオン状態の間、一定周期(例えば、10ms)で繰り返して行われる。
【0178】
次に、制御部271は、バッテリモジュール状態が既に検出されているか否かを判別する(ステップS5)。
【0179】
バッテリモジュール状態が既に検出されている場合、制御部271は、後述するステップS8の処理に進む。一方、バッテリモジュール状態が検出されていない場合、制御部271は、後述するセル状態情報記憶処理を実行した後(ステップS6)、後述するセル状態情報抽出処理を実行する(ステップS7)。
【0180】
その後、制御部271は、図1の主制御部400からメインスイッチ502をオフすべき指令信号を受けたか否かを判定する(ステップS8)。メインスイッチ502をオフすべき指令信号を受けていない場合、制御部271は、上記のステップS3の処理に戻る。一方、メインスイッチ502をオフすべき指令信号を受けた場合、制御部271は、メインスイッチ502をオフし、後述する充電状態調整処理に進む(ステップS9)。充電状態調整処理後、バッテリシステム500の処理が終了する。
【0181】
(3−2)セル状態情報記憶処理
図5のステップS6のセル状態情報記憶処理について説明する。図6は、セル状態情報記憶処理を示すフローチャートである。
【0182】
以下の説明において、変数iは自然数であり、バッテリシステム500を構成する複数のバッテリセル10a,10b,10cの番号を表す。定数nはバッテリシステム500を構成する複数のバッテリセル10a,10b,10cの最大個数(本例では3)を表す。
【0183】
まず、制御部271は、図1の比較結果保持回路260から全てのバッテリセル10a〜10cの端子電圧が中間電圧Vth_Mを超えたか否かを示す比較結果COMP[1],[2],[3]をそれぞれ取得し(ステップS21)、変数iの値を1に設定する(ステップS22)。
【0184】
次に、制御部271は、i番目のバッテリセルについての今回の比較結果COMP[i]と予めメモリに記憶されているi番目のバッテリセルについての前回比較結果COMP_PREV[i]とが等しいか否かを判定する(ステップS23)。初期状態では、今回の比較結果COMP[i]が前回比較結果COMP_PREV[i]となる。
【0185】
前回比較結果COMP_PREV[i]は、セル状態情報記憶処理が複数回繰り返して行われる場合に、直前のセル状態情報記憶処理時に記憶部272によりメモリに記憶される(後述のステップS26参照)。
【0186】
i番目のバッテリセルの端子電圧が中間電圧Vth_Mに達することにより、比較結果がハイレベルとローレベルとの間で切り替わった場合に、比較結果COMP[i]と前回比較結果COMP_PREV[i]とが異なる。
【0187】
比較結果COMP[i]と前回比較結果COMP_PREV[i]とが等しい場合、制御部271は、後述するステップS26の処理に進む。一方、比較結果COMP[i]と前回比較結果COMP_PREV[i]とが異なる場合、制御部271は、i番目のバッテリセルの温度が25℃以上であるか否かを判定する(ステップS24)。
【0188】
i番目のバッテリセルの温度が25℃よりも低い場合、制御部271は、後述するステップS26の処理に進む。一方、i番目のバッテリセルの温度が25℃以上である場合、制御部271は、レコード番号、セル識別情報、電流積算値および電流値からなるセル状態情報を作成する。記憶部272は、制御部271により作成されたセル状態情報をメモリに記憶する(ステップS25)。
【0189】
次に、記憶部272は、i番目のバッテリセルについてステップS21で取得された比較結果COMP[i]を前回比較結果COMP_PREV[i]としてメモリに記憶する(ステップS26)。
【0190】
続いて、制御部271は、変数iに1を加算する(ステップS27)。その後、制御部271は、変数iが定数nよりも大きいか否かを判定する(ステップS28)。変数iが定数n以下である場合、制御部271は、ステップS23の処理に戻る。一方、変数iが定数nよりも大きい場合、すなわち変数iが定数Nを超えた場合、制御部271は、セル状態情報記憶処理を終了する。
【0191】
(3−3)セル状態情報抽出処理
図5のステップS7のセル状態情報抽出処理について説明する。図7は、セル状態情報抽出処理を示すフローチャートである。
【0192】
制御部271は、メモリに全てのバッテリセル10a,10b,10cのセル状態情報が記憶されているか否かを判定する(ステップS31)。
【0193】
メモリに全てのバッテリセル10a,10b,10cのセル状態情報が記憶されていない場合、制御部271は、セル状態情報抽出処理を終了する。
【0194】
一方、メモリに全てのバッテリセル10a,10b,10cのセル状態情報が記憶されている場合、制御部271は、互いに異なるバッテリセルのセル状態情報の組み合わせのうち電流値の条件を満たす組み合わせを抽出する(ステップS32)。
【0195】
ここで、電流値の条件とは、異なるバッテリセルのセル状態情報の組み合わせのうち最大電流値と最小電流値との差の絶対値が上述の電流しきい値以下となること、または異なるバッテリセルのセル状態情報の組み合わせのうちすべての電流値の絶対値が上述の電流しきい値以下となることである。
【0196】
電流しきい値は予め2つ定められてもよい。この場合、例えば電流値の条件とは、異なるバッテリセルのセル状態情報の組み合わせのうち最大電流値と最小電流値との差の絶対値が一方の電流しきい値以下となり、かつ異なるバッテリセルのセル状態情報の組み合わせのうちすべての電流値の絶対値が他方の電流しきい値以下となることであってもよい。
【0197】
続いて、制御部271は、ステップS32の処理により複数のバッテリセルのセル状態情報の組み合わせが抽出できたか否かを判定する(ステップS33)。ステップS32の処理により組み合わせが抽出できなかった場合、制御部271は、セル状態情報抽出処理を終了する。
【0198】
一方、ステップS32の処理により組み合わせが抽出できた場合、制御部271は、抽出された電流値の組み合わせに基づいて複数のセル状態情報を選択し(ステップS34)、選択したセル状態情報に含まれる複数の電流積算値の差をバッテリモジュール状態として算出する(ステップS35)。検出結果はメモリに記憶される。これにより、セル状態情報抽出処理が終了する。
【0199】
(3−4)充電状態調整処理
充電状態調整処理について説明する。図8は、充電状態調整処理を示すフローチャートである。
【0200】
制御部271は、セル状態情報抽出処理によりバッテリモジュール状態が検出されたか否かを判定する(ステップS41)。バッテリモジュール状態が検出されていない場合、制御部271は、複数のバッテリセル10a,10b,10cの充電状態(本例では残存容量)の調整を行うことなく充電状態調整処理を終了する。
【0201】
一方、バッテリモジュール状態が検出されている場合、制御部271は、バッテリセルごとに放電時間を算出する(ステップS42)。
【0202】
例えば、制御部271は、例えばバッテリモジュール状態に基づいて残存容量が最も小さいバッテリセルを選択し、他のバッテリセルの残存容量を選択したバッテリセルの充電状態と等しくするために必要な放電時間を算出する。
【0203】
次に、制御部271は、タイマをセットする(ステップS43)。それにより、タイマにより経過時間の計測が開始される。タイマのセットにより計測値が0となる。
【0204】
続いて、制御部271は、放電時間が算出されたバッテリセルの放電を開始する(ステップS44)。具体的には、制御部271は、放電時間が算出されたバッテリセルに対応する調整ユニット310のスイッチング素子SWをオンする。
【0205】
続いて、制御部271は、放電時間が経過したか否かを判別する(ステップS45)。
【0206】
これにより、制御部271は、放電時間が経過することにより経過した放電時間に対応するバッテリセルの放電を停止する(ステップS46)。具体的には、制御部271は、放電時間が経過したバッテリセルに対応する調整ユニット310のスイッチング素子SWをオフする。
【0207】
その後、制御部271は、全てのバッテリセル10a〜10cが放電していないか否かを判別する(ステップS47)。具体的には、制御部271は、全ての調整ユニット310のスイッチング素子SWがオフしているか否かを判定する。
【0208】
全てのバッテリセル10a,10b,10cのうち少なくとも1つのバッテリセルが放電している場合、制御部271は、ステップS45の処理に戻る。
【0209】
一方、全てのバッテリセル10a,10b,10cが放電していない場合、すなわち全ての調整ユニット310のスイッチング素子SWがオフしている場合、制御部271は、充電状態調整処理を終了する。
【0210】
(4)効果
(4−1)このバッテリモジュール状態検出装置200においては、電源線501を流れる電流により電流積算値が算出され、電圧比較ユニット290における各バッテリセルの端子電圧と中間電圧Vth_Mとの比較結果に基づいて複数のバッテリセルについての電流積算値の差がバッテリモジュール状態として算出される。この場合、電流積算値の差は複数のバッテリセルの残存容量の差に相当する。したがって、各バッテリセルの電圧値を測定することなく、複数のバッテリセルに流れる電流値を測定することにより、充電および放電を行いつつ複数のバッテリセルの残存容量の差を簡単な構成および低コストで検出することができる。
【0211】
(4−2)電圧比較ユニット290の一連の動作は、メインスイッチ502がオフ状態からオン状態となることにより開始され、メインスイッチ502がオフ状態となるまで所定の周期で繰り返されるように予め設定されている。このように、電圧比較ユニット290の一連の動作は、バッテリECU270の動作とは独立して行われる。
【0212】
そのため、例えばバッテリECU270および主制御部400が正常に機能しない場合でも、判定回路250の動作により複数のバッテリセル10a〜10cの端子電圧が確実に上限電圧Vth_Oを超えない。また、複数のバッテリセル10a〜10cの端子電圧が確実に下限電圧Vth_Uを超える。これにより、複数のバッテリセル10a〜10cの安全性が確保される。
【0213】
(4−3)複数のバッテリセル10a〜10cの端子電圧が下限電圧Vth_Uよりも大きく上限電圧Vth_O以下であるか否かを判定するための構成が既存である場合、例えば中間電圧Vth_Mを出力する電圧出力部242および比較結果保持回路260を除いて上記の電圧比較ユニット290と同様の構成を有する電圧比較ユニットが存在する場合を想定する。
【0214】
この場合、その既存の電圧比較ユニットに電圧出力部242および比較結果保持回路260を設けることにより簡単に電圧比較ユニット290を作製することができる。これにより、既存の機器を有効に利用しつつ、簡単に電圧比較ユニット290を作製することができる。その結果、バッテリシステム500の低コスト化が実現される。
【0215】
(4−4)満充電容量に対する残存容量の比率(以下、SOCと呼ぶ)が100%である場合のバッテリセルの開放電圧が約4.2Vであるバッテリセルにおいては、SOCが50%である場合のバッテリセルの開放電圧が約3.7Vである。バッテリセルをSOCが50%を基準として変動するように用いる場合、バッテリセルの開放電圧が約3.7Vを中心として変動する。
【0216】
この場合、中間電圧Vth_Mは、SOC50%に対応する開放電圧として約3.7V(3.6V以上3.8V以下)に設定されることが好ましい。これにより、各バッテリセル10a,10b,10cの端子電圧が約3.7Vに等しくなる時点を多くすることができるので、バッテリモジュール状態を算出するための電流積算値を容易に取得することができる。
【0217】
また、満充電容量に対する残存容量の比率(以下、SOCと呼ぶ)が100%である場合のバッテリセルの開放電圧が約4.2Vであるバッテリセルにおいては、SOCが90%である場合のバッテリセルの開放電圧が約4.0Vである。バッテリセルを満充電状態となるように繰り返し充電して用いる場合、SOCが90%を超えるまたは90%以下になる頻度が多くなる。
【0218】
この場合、中間電圧Vth_Mは、SOC90%に対応する開放電圧として約4.0V(3.9V以上4.1V以下)に設定されることが好ましい。これにより、各バッテリセルの電圧が約4.0Vに等しくなる時点を多くすることができるので、バッテリモジュール状態を算出するための電流積算値を容易に取得することができる。
【0219】
[2]第2の実施の形態
(1)調整ユニットの構成および動作
第2の実施の形態に係るバッテリモジュール状態制御装置について説明する。第2の実施の形態に係るバッテリモジュール状態制御装置について第1の実施の形態に係るバッテリモジュール状態制御装置と異なる点を説明する。以下に説明する以外の本実施の形態に係る構成および動作は、第1の実施の形態の構成および動作と同じである。
【0220】
図9は、第2の実施の形態に係るバッテリモジュール状態制御装置に用いられる調整ユニットの一構成例を示す図である。図9に示すように、第2の実施の形態に係るバッテリモジュール状態制御装置においては、調整ユニット310に第1の実施の形態で設けられる放電部DSに代えて抵抗Rが設けられる。
【0221】
充電状態調整処理時には、制御部271によりスイッチング素子SWがオンされることにより抵抗Rとバッテリセルとが接続される。これにより、バッテリセルが抵抗Rにより放電する。
【0222】
上述のように、充電状態調整処理時には放電時間が算出される。抵抗Rによる単位時間当たりの放電量は、バッテリセルの端子電圧が高いほど大きくなり、バッテリセルの端子電圧が低いほど小さくなる。
【0223】
そこで、本実施の形態では、下限電圧Vth_Uを抵抗Rの抵抗値で除算することにより抵抗Rの単位時間当たりの放電量、すなわち放電速度を算出する。
【0224】
この場合、放電時間が、バッテリセルの端子電圧が下限値(下限電圧Vth_U)であるときの放電速度により算出される。したがって、充電状態調整処理時に過剰な放電が行われることが確実に防止される。
【0225】
(2)効果
上記のように、本実施の形態では、バッテリセル10a,10b,10cの放電を行うための構成として、調整ユニット310に抵抗Rが設けられる。抵抗Rは定電流ダイオードに比べて安価である。したがって、調整ユニット310を含むバッテリモジュール状態制御装置およびバッテリシステムの低コスト化が実現される。
【0226】
[3]第3の実施の形態
(1)調整ユニットの構成および動作
第3の実施の形態に係るバッテリモジュール状態制御装置について説明する。第3の実施の形態に係るバッテリモジュール状態制御装置について第1の実施の形態に係るバッテリモジュール状態制御装置と異なる点を説明する。本実施の形態の他の構成および動作は、第1の実施の形態の構成および動作と同じである。
【0227】
図10は、第3の実施の形態に係るバッテリモジュール状態制御装置に用いられる調整ユニットの一構成例を示す図である。図10に示すように、第3の実施の形態に係るバッテリモジュール状態制御装置においては、調整ユニット310の構成が第1の実施の形態で設けられる図1の調整ユニット310の構成と異なる。
【0228】
この調整ユニット310は、2つのスイッチング素子SW1,SW2および充電器311を備える。2つのスイッチング素子SW1,SW2の各々は、複数の端子CP0,CP1,CP2,CP3を有する。充電器311は、出力端子および入力端子を有する。
【0229】
一方のスイッチング素子SW1においては、端子CP0が充電器311の出力端子に接続され、端子CP1がバッテリセル10aの正極端子に接続され、端子CP2がバッテリセル10bの正極端子に接続され、端子CP3がバッテリセル10cの正極端子に接続される。
【0230】
他方のスイッチング素子SW2においては、端子CP0が充電器311の入力端子に接続され、端子CP1がバッテリセル10aの負極端子に接続され、端子CP2がバッテリセル10bの負極端子に接続され、端子CP3がバッテリセル10cの負極端子に接続される。
【0231】
2つのスイッチング素子SW1,SW2の各々は、図1のバッテリECU270の制御部271により制御され、端子CP0が複数の端子CP1〜CP3のいずれかに選択的に接続される。これにより、バッテリセル10a,10b,10cの各々の正極端子および負極端子と充電器311とが選択的に接続される。充電器311は、接続されたバッテリセルに一定の電流(例えば、50mA/s)を流すことによりそのバッテリセルを充電する。
【0232】
図10の構成を有する調整ユニット310を用いた場合の充電状態調整処理について説明する。図11は、第3の実施の形態における充電状態調整処理を示すフローチャートである。
【0233】
図11に示すように、制御部271は、セル状態情報抽出処理によりバッテリモジュール状態が検出されたか否かを判定する(ステップS51)。バッテリモジュール状態が検出されていない場合、制御部271は、複数のバッテリセル10a,10b,10cの充電状態(本例では残存容量)の調整を行うことなく充電状態調整処理を終了する。
【0234】
一方、バッテリモジュール状態が検出されている場合、制御部271は、バッテリセルごとに充電時間を算出する(ステップS52)。
【0235】
例えば、制御部271は、例えば充電状態が最も大きいバッテリセルを選択し、他のバッテリセルの充電状態を選択したバッテリセルの充電状態と等しくするために必要な充電時間を算出する。
【0236】
次に、制御部271は、タイマをセットする(ステップS53)。それにより、タイマにより経過時間の計測が開始される。タイマのセットにより計測値が0となる。
【0237】
続いて、制御部271は、充電時間が算出されかつ充電されていないバッテリセルの充電を開始する(ステップS54)。具体的には、制御部271は、充電時間が算出されたバッテリセルのうち、充電が行われていないバッテリセルが充電器311に接続されるように、スイッチング素子SW1,SW2を制御する。
【0238】
続いて、制御部271は、充電時間が経過したか否かを判別する(ステップS55)。これにより、制御部271は、充電時間が経過することにより経過した充電時間に対応するバッテリセルの充電を停止する(ステップS56)。
【0239】
具体的には、制御部271は、充電時間が経過したバッテリセルと充電器311との接続が遮断されるように、スイッチング素子SW1,SW2を制御する。
【0240】
その後、制御部271は、充電時間が算出された全てのバッテリセルの充電が完了しているか否かを判定する(ステップS57)。
【0241】
充電時間が算出された全てのバッテリセルの充電が完了していない場合、制御部271は、ステップS53の処理に戻る。一方、充電時間が算出された全てのバッテリセルの充電が完了している場合、制御部271は、充電状態調整処理を終了する。
【0242】
(2)効果
上記のように、本実施の形態では、充電器311を用いて複数のバッテリセル10a,10b,10cの充電状態調整処理が行われる。充電器311によれば、放電を行うことなく複数のバッテリセル10a,10b,10cの充電状態調整処理を行うことができる。すなわち、エネルギーを消費することなく各バッテリセル10a,10b,10cの充電状態を調整することができる。したがって、各バッテリセル10a,10b,10cに蓄積されたエネルギーを有効に活用することができる。
【0243】
[4]第4の実施の形態
以下、第4の実施の形態に係る電動車両について説明する。本実施の形態に係る電動車両は、第1〜第3のいずれかの実施の形態に係るバッテリシステム500を備える。なお、以下では、電動車両の一例として電動自動車を説明する。
【0244】
(1)構成および動作
図12は、第4の実施の形態に係る電動自動車の構成を示すブロック図である。図12に示すように、本実施の形態に係る電動自動車600は、車体610を備える。車体610に、図1の主制御部400、始動停止指示部401、図1のバッテリシステム500、電力変換部601、モータ602、駆動輪603、アクセル装置604、ブレーキ装置605、ならびに回転速度センサ606が設けられる。モータ602が交流(AC)モータである場合には、電力変換部601はインバータ回路を含む。バッテリシステム500にはバッテリモジュール状態制御装置300が設けられ、バッテリモジュール状態制御装置300にはバッテリモジュール状態検出装置200が設けられている。
【0245】
バッテリシステム500は、電力変換部601を介してモータ602に接続されるとともに、主制御部400に接続される。
【0246】
主制御部400には、バッテリシステム500を構成するバッテリECU270(図1)からバッテリモジュール状態(バッテリモジュール10に含まれる複数のバッテリセル10a〜10c間の残存容量の差)が与えられる。また、主制御部400には、バッテリECU270(図1)からバッテリモジュール10に流れる電流値が与えられる。さらに、主制御部400には、アクセル装置604、ブレーキ装置605および回転速度センサ606が接続される。主制御部400は、例えばCPUおよびメモリ、またはマイクロコンピュータからなる。さらに、主制御部400には始動停止指示部401が接続されている。
【0247】
アクセル装置604は、電動自動車600が備えるアクセルペダル604aと、アクセルペダル604aの操作量(踏み込み量)を検出するアクセル検出部604bとを含む。
【0248】
始動指示部401のスタートキーがオンの状態で、運転者によりアクセルペダル604aが操作されると、アクセル検出部604bは、運転者により操作されていない状態を基準としてアクセルペダル604aの操作量を検出する。検出されたアクセルペダル604aの操作量が主制御部400に与えられる。
【0249】
ブレーキ装置605は、電動自動車600が備えるブレーキペダル605aと、運転者によるブレーキペダル605aの操作量(踏み込み量)を検出するブレーキ検出部605bとを含む。スタートキーがオンの状態で、運転者によりブレーキペダル605aが操作されると、ブレーキ検出部605bによりその操作量が検出される。検出されたブレーキペダル605aの操作量が主制御部400に与えられる。回転速度センサ606は、モータ602の回転速度を検出する。検出された回転速度は、主制御部400に与えられる。
【0250】
上記のように、主制御部400には、バッテリモジュール状態、始動指示部401のスタートキーの状態(オン状態またはオフ状態)を示す情報、バッテリモジュール10を流れる電流値、アクセルペダル604aの操作量、ブレーキペダル605aの操作量、およびモータ602の回転速度が与えられる。主制御部400は、これらの情報に基づいてバッテリモジュール10の充放電制御および電力変換部601の電力変換制御を行う。例えば、アクセル操作に基づく電動自動車600の発進時および加速時には、バッテリシステム500から電力変換部601にバッテリモジュール10の電力が供給される。
【0251】
さらに、スタートキーがオンの状態で、主制御部400は、与えられたアクセルペダル604aの操作量に基づいて、駆動輪603に伝達すべき回転力(指令トルク)を算出し、その指令トルクに基づく制御信号を電力変換部601に与える。
【0252】
上記の制御信号を受けた電力変換部601は、バッテリシステム500から供給された電力を、駆動輪603を駆動するために必要な電力(駆動電力)に変換する。これにより、電力変換部601により変換された駆動電力がモータ602に供給され、その駆動電力に基づくモータ602の回転力が駆動輪603に伝達される。
【0253】
一方、ブレーキ操作に基づく電動自動車600の減速時には、モータ602は発電装置として機能する。この場合、電力変換部601は、モータ602により発生された回生電力をバッテリモジュール10の充電に適した電力に変換し、バッテリモジュール10に与える。それにより、バッテリモジュール10を構成するバッテリセル10a〜10cが充電される。
【0254】
(2)効果
上記のように、本実施の形態に係る電動自動車600には、第1〜第3のいずれかのバッテリシステム500が設けられる。このバッテリシステム500には、第1〜第3の実施の形態に係るバッテリモジュール状態検出装置200が設けられる。これにより、バッテリシステム500の構成の単純化および小型化が可能となる。その結果、電動自動車600の構成の単純化、小型化および低コスト化が実現される。
【0255】
(3)他の移動体
上記では、図1のバッテリシステム500が電動車両に搭載される例について説明したが、バッテリシステム500が船、航空機、エレベータまたは歩行ロボット等の他の移動体に搭載されてもよい。
【0256】
バッテリシステム500が搭載された船は、例えば、図12の車体610の代わりに船体を備え、駆動輪603の代わりにスクリューを備え、アクセル装置604の代わりに加速入力部を備え、ブレーキ装置605の代わりに減速入力部を備える。運転者は、船体を加速させる際にアクセル装置604の代わりに加速入力部を操作し、船体を減速させる際にブレーキ装置605の代わりに減速入力部を操作する。この場合、船体が移動本体部に相当し、モータ602が動力源に相当し、スクリューが駆動部に相当する。このような構成において、モータ602がバッテリシステム500からの電力を受けてその電力を動力に変換し、その動力によってスクリューが回転されることにより船体が移動する。
【0257】
同様に、バッテリシステム500が搭載された航空機は、例えば、図12の車体610の代わりに機体を備え、駆動輪603の代わりにプロペラを備え、アクセル装置604の代わりに加速入力部を備え、ブレーキ装置605の代わりに減速入力部を備える。この場合、機体が移動本体部に相当し、モータが動力源に相当し、プロペラが駆動部に相当する。このような構成において、モータがバッテリシステム500からの電力を受けてその電力を動力に変換し、その動力によってプロペラが回転されることにより機体が移動する。
【0258】
バッテリシステム500が搭載されたエレベータは、例えば、図12の車体610の代わりに籠を備え、駆動輪603の代わりに籠に取り付けられる昇降用ロープを備え、アクセル装置604の代わりに加速入力部を備え、ブレーキ装置605の代わりに減速入力部を備える。この場合、籠が移動本体部に相当し、モータ602が動力源に相当し、昇降用ロープが駆動部に相当する。このような構成において、モータ602がバッテリシステム500からの電力を受けてその電力を動力に変換し、その動力によって昇降用ロープが巻き上げられることにより籠が昇降する。
【0259】
バッテリシステム500が搭載された歩行ロボットは、例えば、図12の車体610の代わりに胴体を備え、駆動輪603の代わりに足を備え、アクセル装置604の代わりに加速入力部を備え、ブレーキ装置605の代わりに減速入力部を備える。この場合、胴体が移動本体部に相当し、モータ602が動力源に相当し、足が駆動部に相当する。このような構成において、モータ602がバッテリシステム500からの電力を受けてその電力を動力に変換し、その動力によって足が駆動されることにより胴体が移動する。
【0260】
このように、バッテリシステム500が搭載された移動体においては、動力源がバッテリシステム500からの電力を受けてその電力を動力に変換し、駆動部が動力源により変換された動力により移動本体部を移動させる。
【0261】
[5]第5の実施の形態
以下、第5の実施の形態に係る電源装置について説明する。本実施の形態に係る電源装置は、複数のモジュール装置を含む。まず、モジュール装置の構成について説明する。
【0262】
図13は、第5の実施の形態に係るモジュール装置の構成を示すブロック図である。図13に示すように、このモジュール装置590は、図1の電流測定部210が設けられない点、および図1のバッテリECU270に代えて通信部200xが設けられる点を除いて、図1のバッテリシステム500と同じ構成を有する。
【0263】
図13の例では、モジュール装置590の通信部200xは、複数のサーミスタ12、複数の調整ユニット310、電圧比較ユニット290およびコントローラ712に接続されている。
【0264】
コントローラ712は、モジュール装置590の外部に設けられ、例えばCPUおよびメモリ、またはマイクロコンピュータからなる。コントローラ712は、図1のバッテリECU270の制御部271、記憶部272および電流積算部273を含む。
【0265】
モジュール装置590のバッテリモジュール10は、例えば後述する電力変換装置720(図14)に電源線501を介して接続される。
【0266】
通信部200xには、複数のサーミスタ12から複数のバッテリセル10a〜10cの温度の検出結果が与えられる。図13の通信部200xは、与えられた検出結果をコントローラ712に与える。
【0267】
通信部200xには、電圧比較ユニット290の比較結果保持回路260から各バッテリセル10a〜10cの端子電圧が中間電圧Vth_Mを超えたか否かを示す比較結果が与えられる。通信部200xは、与えられた比較結果をコントローラ712に与える。
【0268】
次に、電源装置について説明する。図14は、第5の実施の形態に係る電源装置の構成を示すブロック図である。図14に示すように、この電源装置700は、電力貯蔵装置710および電力変換装置720を備える。電力貯蔵装置710は、電流測定部210、モジュール装置群711およびコントローラ712を備える。モジュール装置群711は複数のモジュール装置590を含む。
【0269】
複数のモジュール装置590の各々は、図13のモジュール装置590と同じ構成を有する。複数のモジュール装置590のバッテリモジュール10は、互いに並列に接続されてもよく、または互いに直列に接続されてもよい。本例では、複数のモジュール装置590のバッテリモジュール10が直列に接続される。
【0270】
複数のバッテリモジュール10の複数のバッテリセルのうち最低電位を有するバッテリセルのマイナス電極および最高電位を有するバッテリセルのプラス電極がそれぞれ図13の電源線501を介して電力変換装置720に接続される。なお、図14では電源線501の図示を省略する。
【0271】
モジュール装置群711の各モジュール装置590の通信部200x(図13)がコントローラ712に接続される。コントローラ712には、モジュール装置群711の複数のモジュール装置590から各バッテリセルの端子電圧が中間電圧Vth_Mを超えたか否かを示す比較結果が与えられる。
【0272】
モジュール装置590と電力変換装置720とを繋ぐ電源線501(図13)の一部に電流測定部210が設けられる。この電流測定部210は、図1の電流測定部210と同じ構成を有し、コントローラ712に接続される。これにより、コントローラ712においては、電源線501の一部のシャント抵抗211(図1)による電圧降下量およびシャント抵抗211(図1)の抵抗値に基づいてモジュール装置群711に流れる電流の値が算出される。
【0273】
コントローラ712は、各モジュール装置590から与えられる比較結果およびモジュール装置群711に流れる電流の値に基づいて上述のバッテリモジュール状態検出処理を実行する。
【0274】
これにより、コントローラ712は、複数のモジュール装置590の全てのバッテリセルの残存容量の差を検出する。バッテリモジュール状態検出処理において、コントローラ712は、検出された全てのバッテリセルの残存容量の差に基づいて、充電状態調整処理を行う。この場合、コントローラ712は、通信部200x(図13)を介して複数の調整ユニット310(図13)のスイッチング素子SW(図13)のオンおよびオフを制御する。このようにして、複数のバッテリセルの充電状態が調整される。
【0275】
さらに、本実施の形態では、コントローラ712は、電力変換装置720を制御する。コントローラ712は、モジュール装置590のバッテリモジュール10の放電または充電に関する制御として、後述する制御を行う。
【0276】
電力変換装置720は、DC/DC(直流/直流)コンバータ721およびDC/AC(直流/交流)インバータ722を含む。DC/DCコンバータ721は入出力端子721a,721bを有し、DC/ACインバータ722は入出力端子722a,722bを有する。DC/DCコンバータ721の入出力端子721aは図示しない電源線501(図13)を介して電力貯蔵装置710のモジュール装置群711に接続される。
【0277】
DC/DCコンバータ721の入出力端子721bおよびDC/ACインバータ722の入出力端子722aは互いに接続されるとともに電力出力部PU1に接続される。DC/ACインバータ722の入出力端子722bは電力出力部PU2に接続されるとともに他の電力系統に接続される。
【0278】
電力出力部PU1,PU2は例えばコンセントを含む。電力出力部PU1,PU2には、例えば種々の負荷が接続される。他の電力系統は、例えば商用電源または太陽電池を含む。電力出力部PU1,PU2および他の電力系統が電源装置に接続される外部の例である。なお、電力系統として太陽電池を用いる場合、DC/DCコンバータ721の入出力端子721bに太陽電池が接続される。一方、電力系統として太陽電池を含む太陽光発電システムを用いる場合、DC/ACインバータ722の入出力端子722bに太陽光発電システムのパワーコンディショナのAC出力部が接続される。
【0279】
DC/DCコンバータ721およびDC/ACインバータ722がコントローラ712によって制御されることにより、モジュール装置群711の放電および充電が行われる。モジュール装置群711の放電時には、モジュール装置群711から与えられる電力がDC/DCコンバータ721によりDC/DC(直流/直流)変換され、さらにDC/ACインバータ722によりDC/AC(直流/交流)変換される。
【0280】
電源装置700が直流電源として用いられる場合、DC/DCコンバータ721によりDC/DC変換された電力が電力出力部PU1に供給される。電源装置700が交流電源として用いられる場合、DC/ACインバータ722によりDC/AC変換された電力が電力出力部PU2に供給される。また、DC/ACインバータ722により交流に変換された電力を他の電力系統に供給することもできる。
【0281】
コントローラ712は、モジュール装置群711の放電時に、各モジュール装置590から与えられる比較結果(各バッテリセルの端子電圧が中間電圧Vth_Mを超えたか否かを示す比較結果)およびモジュール装置群711を流れる電流の値に基づいて、モジュール装置群711の放電を停止するか否かまたは放電電流(または放電電力)を制限するか否かを判定し、判定結果に基づいて電力変換装置720を制御してもよい。
【0282】
一方、モジュール装置群711の充電時には、他の電力系統から与えられる交流の電力がDC/ACインバータ722によりAC/DC(交流/直流)変換され、さらにDC/DCコンバータ721によりDC/DC(直流/直流)変換される。DC/DCコンバータ721からモジュール装置群711に電力が与えられることにより、モジュール装置群711に含まれる複数のバッテリセルが充電される。
【0283】
コントローラ712は、モジュール装置群711のバッテリモジュール10の充電に関する制御の一例として、次の制御を行ってもよい。
【0284】
上述のように、バッテリセルの端子電圧は、その内部抵抗に起因する電圧降下により変化する。内部抵抗に起因する電圧降下は、バッテリセルに流れる電流が少ないほど小さくなる。そこで、モジュール装置群711の充電時に、コントローラ712は、モジュール装置群711に流れる電流の値が予め定められた上述の電流しきい値(例えばバッテリセルの定格電流)以下となるように電力変換装置720を制御してもよい。
【0285】
この場合、モジュール装置群711の充電中でかつバッテリモジュール状態検出処理が行われる場合に、複数のモジュール装置590の全てのバッテリセルの残存容量の差を正確に検出することが可能となる。
【0286】
バッテリセルに流れる電流値が大きく変動すると、内部抵抗に起因する電圧降下も大きく変動する。そこで、モジュール装置群711の充電開始時点から充電終了時点までの間、コントローラ712は、モジュール装置群711に流れる電流の値が予め定められた範囲を超えて変動しないように電力変換装置720を制御してもよい。
【0287】
例えば、バッテリセルの定格電流が5A(1C)である場合に、コントローラ712は、モジュール装置群711に流れる電流の値が3A以上5A以下の範囲を超えて変動しないように電力変換装置720を制御する。この場合、モジュール装置群711に流れる電流の値が0Aから5Aに渡って大きく変動する場合に比べて、内部抵抗に起因する電圧降下の変動を小さくすることができる。したがって、モジュール装置群711の充電中でかつバッテリモジュール状態検出処理が行われる場合に、複数のモジュール装置590の全てのバッテリセルの残存容量の差を正確に検出することが可能となる。
【0288】
なお、上記の予め定められる電流値の範囲は、上述の電流しきい値以下の範囲内で設定されることが好ましい。この場合、複数のモジュール装置590の全てのバッテリセルの残存容量の差をより正確に検出することが可能となる。
【0289】
さらに、モジュール装置群711の充電時に、コントローラ712は、モジュール装置群711に流れる電流の値が一定となるように電力変換装置720を制御してもよい。
【0290】
例えば、バッテリセルの定格電流が5A(1C)である場合に、コントローラ712は、モジュール装置群711に流れる電流の値が定格電流以下の所定の値(例えば、1A、2Aまたは3A等)で一定となるように電力変換装置720を制御する。この場合、モジュール装置群711の充電時に内部抵抗に起因する電圧降下の大きさに変動が生じない。したがって、モジュール装置群711の充電中でかつバッテリモジュール状態検出処理が行われる場合に、複数のモジュール装置590の全てのバッテリセルの残存容量の差をさらに正確に検出することが可能となる。
【0291】
上記のように、モジュール装置群711の充電時において、モジュール装置群711に流れる電流の値が予め定められた上述の電流しきい値以下となるように、あるいはモジュール装置群711に流れる電流の値が予め定められた範囲を超えて変動しないように、電力変換装置720が制御される。この場合、バッテリモジュール状態検出処理中の図7のステップS32において、電流値の条件を満たすセル状態情報の組み合わせが選択されやすくなる。これにより、バッテリモジュール状態検出処理を短時間で円滑に行うことが可能となる。
【0292】
商用電源から供給される夜間電力を用いてモジュール装置群711の充電を行う場合には、電力変換装置720を制御することによりモジュール装置群711に流れる電流の値を容易に制御することができる。したがって、バッテリモジュール状態検出処理を短時間で円滑に行うことが可能になるとともに、容易かつ正確に全てのバッテリセルの残存容量の差を検出することが可能となる。
【0293】
満充電容量に対する残存容量の比率(以下、SOCと呼ぶ)が100%である場合のバッテリセルの開放電圧が約4.2Vであるバッテリセルにおいては、SOCが90%である場合のバッテリセルの開放電圧が約4.0Vである。バッテリセルを満充電状態となるように繰り返し充電して用いる場合、SOCが90%を超えるまたは90%以下になる頻度が多くなる。
【0294】
したがって、上記のように、例えば夜間電力を用いてモジュール装置群711を充電する場合には、中間電圧Vth_Mは、SOC90%に対応する開放電圧として約4.0V(3.9V以上3.1V以下)に設定されることが好ましい。これにより、各バッテリセルの端子電圧が約4.0Vに等しくなる時点を多くすることができるので、複数のバッテリセルの残存容量の差を算出するための電流積算値を容易に取得することができる。
【0295】
なお、電源装置700と外部との間で互いに電力を供給可能であれば、電力変換装置720がDC/DCコンバータ721およびDC/ACインバータ722のうちいずれか一方のみを有してもよい。また、電源装置700と外部との間で互いに電力を供給可能であれば、電力変換装置720が設けられなくてもよい。
【0296】
本実施の形態において、コントローラ712は、モジュール装置群711の複数のバッテリセルの残存容量の差の大きさに基づいて電力変換装置720を制御してもよい。例えば、コントローラ712は、複数のバッテリセルの残存容量の差が予め定められたしきい値を超える場合に、電力変換装置720を制御することによりモジュール装置群711の充電または放電を停止させてもよい。これにより、複数のバッテリセルの残存容量が大きくばらついている状態で、複数のバッテリセルの充電および放電が行われることが防止される。したがって、各バッテリセルの過放電および過充電の発生を十分に低減することができる。
【0297】
図13および図14のモジュール装置590には、図1の電流測定部210が設けられないが、図13および図14のモジュール装置590に電流測定部210が設けられてもよい。この場合、コントローラ712においては、各モジュール装置590に流れる電流の値が算出される。したがって、複数のモジュール装置590のバッテリモジュール10が並列に接続されている場合でも、各モジュール装置590から与えられる比較結果および各モジュール装置590に流れる電流の値に基づいて、バッテリモジュール状態検出処理が行われる。
【0298】
(2)効果
電源装置700においては、コントローラ712によりモジュール装置群711と外部との間の電力の供給が制御される。それにより、モジュール装置群711に含まれる各バッテリセルの過放電および過充電が防止される。
【0299】
電源装置700においては、コントローラ712により、複数のモジュール装置590の全てのバッテリセルについての電流積算値の差が算出される。この場合、電流積算値の差は複数のバッテリセルの残存容量の差に相当する。したがって、各バッテリセルの電圧値を測定することなく、複数のバッテリセルに流れる電流値を測定することにより、充電および放電を行いつつ複数のバッテリセルの残存容量の差を簡単な構成および低コストで検出することができる。その結果、電源装置700の低コスト化が実現される。
【0300】
[6]他の実施の形態
(1)上記の実施の形態では、図5のフローチャートに示すように、一度バッテリモジュール状態が検出されると、メインスイッチ502がオフするまでの間再びバッテリモジュール状態が検出されることはない(図5のステップS5およびS8参照)。
【0301】
これに代えて、バッテリモジュール状態は、メインスイッチ502がオンしてからメインスイッチ502がオフするまでの間繰り返し検出されてもよい。
【0302】
この場合、例えば制御部271は、セル状態情報抽出処理によりバッテリモジュール状態が算出されることにより、記憶部272に記憶されたセル状態情報を全て消去するとともに電流積算部273により算出される電流積算値をリセットする。続いて、制御部271は、図5のステップS3,S4,S6およびS7の処理により再びバッテリモジュール状態を検出する。さらに、制御部271は、バッテリモジュール状態を検出するごとに、記憶部272によりメモリに既に記憶されているバッテリモジュール状態を消去する。
【0303】
このようにして、複数のバッテリセル10a〜10cのバッテリモジュール状態が繰り返し検出されるとともに、最新の検出結果が記憶部272に記憶される。これにより、メインスイッチ502がオンしてからメインスイッチ502がオフするまでの間に複数のバッテリセル10a〜10cの残存容量が変動する場合でも、記憶部272に記憶されるバッテリモジュール状態の検出結果に大きな誤差が生じることが十分に防止される。
【0304】
また、メインスイッチ502がオンしてからメインスイッチ502がオフするまでの時間が著しく長い場合でも、メインスイッチ502がオフする直前の検出結果を用いて充電状態調整処理を行うことができる。これにより、複数のバッテリセル10a,10b,10cの充電状態を精度よく調整することができる。
【0305】
(2)上記の実施の形態では、図5のフローチャートに示すように、一度バッテリモジュール状態が検出されると、メインスイッチ502がオフするまでの間再びバッテリモジュール状態が検出されることはない(図5のステップS5およびS8参照)。
【0306】
これに代えて、制御部271は、以下のようにバッテリモジュール状態を検出してもよい。例えば、制御部271は、レコード番号、セル識別情報、電流積算値、電流値および記憶時刻からなるセル状態情報を作成する。
【0307】
この場合、例えば図3および図4の時点t1では、レコード番号「1」、セル識別情報「CELL1」、電流積算値「IC(t1)As」、電流値「7A」および記憶時刻「t1」からなるセル状態情報が作成される。例えば、図3および図4の時点t10では、レコード番号「5」、セル識別情報「CELL3」、電流積算値「IC(t10)As」、電流値「3A」および記憶時刻「t10」からなるセル状態情報が作成される。
【0308】
また、制御部271は、一度バッテリモジュール状態が検出された後も、メインスイッチ502がオフするまでの間、電流積算部273により算出される電流積算値をリセットすることなくセル状態情報記憶処理およびセル状態情報抽出処理を繰り返す。この場合、繰り返しセル状態情報抽出処理が行われることにより、図7のステップS32で複数の電流値の組み合わせが抽出される場合がある。
【0309】
ここで、電源線501に流れる電流の検出結果には誤差が生じる。この場合、電流積算部273による電流積算値の算出誤差は、時間の経過とともに大きくなる。そのため、バッテリモジュール状態を検出するために用いることができるセル状態情報の組み合わせが複数存在する場合には、記録時刻が互いに近いセル状態情報の組み合わせを用いて複数のバッテリセル10a〜10cの残存容量の差を検出することが好ましい。
【0310】
そこで、制御部271は、互いに異なるバッテリセルのセル状態情報の組み合わせのうち電流値の条件を満たす組み合わせを複数抽出した場合には、抽出した複数の組み合わせから最先の記憶時刻と最後の記憶時刻との差(ばらつき)が最も短い組み合わせを充電状態の差の検出に用いる。これにより、電流値の測定誤差の影響を低減しつつ、精度よく充電状態の差を検出することが可能となる。
【0311】
(3)制御部271は、上記のステップS35(図7)で算出されたバッテリモジュール状態を用いて、残存容量以外のバッテリセル10a〜10cの充電状態の差を検出してもよい。残存容量以外の充電状態としては、例えばSOC、開放電圧、および放電深度(DOD)がある。
【0312】
残存容量と、SOC、開放電圧、および放電深度(DOD)との間には一定の関係がある。そこで、例えば残存容量と、SOC、開放電圧、および放電深度(DOD)のいずれかまたは全部との関係を示すテーブルを、バッテリECU270のメモリに記憶しておく。これにより、メモリに記憶されたテーブルと検出されたバッテリモジュール状態とを用いて、残存容量以外の充電状態(SOC、開放電圧、および放電深度(DOD)の差を検出することが可能となる。
【0313】
放電深度とは、例えばバッテリセルの満充電容量に対する充電可能容量(バッテリセルの満充電容量から残存容量を減算した容量)の比率であり、(100−SOC)%で表すことができる。
【0314】
(4)上記の実施の形態では、バッテリモジュール状態検出装置、バッテリモジュール状態制御装置およびバッテリシステムを電動車両に用いる例を説明したが、バッテリモジュール状態検出装置、バッテリモジュール状態制御装置およびバッテリシステムは、充放電が可能な複数のバッテリセルを備える民生機器に用いることもできる。
【0315】
(5)上記の実施の形態では、バッテリシステム500が1または複数の調整ユニット310を含む例を説明したが、バッテリシステム500は必ずしも調整ユニット310を含まなくてもよい。例えば、バッテリシステム500は、図1のバッテリモジュール10および図1のバッテリモジュール状態検出装置200から構成されてもよい。
【0316】
この場合においても、複数のバッテリセル10a,10b,10cに流れる電流の積算値(積算電流値)の差がバッテリモジュール状態検出装置200によりバッテリモジュール状態として検出される。
【0317】
そこで、例えば図1の例と同様に、バッテリシステム500の外部装置として調整ユニット310を複数のバッテリセル10a,10b,10cに接続する。これにより、検出されたバッテリモジュール状態に基づいて複数のバッテリセル10a,10b,10cの充電状態を調整することができる。
【0318】
[7]請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0319】
上記実施の形態においては、バッテリモジュール状態検出装置200がバッテリモジュール状態検出装置の例であり、バッテリセル10a,10b,10cが複数のバッテリセルの例であり、バッテリモジュール10がバッテリモジュールの例であり、電流測定部210が電流測定部の例であり、電流積算部273が電流積算部の例であり、中間電圧Vth_Mが電圧しきい値の例であり、電圧比較ユニット290が比較部の例であり、制御部271が算出部の例である。
【0320】
また、バッテリモジュール状態制御装置300がバッテリモジュール状態制御装置の例であり、調整ユニット310が充電状態調整装置の例であり、バッテリシステム500がバッテリシステムの例であり、電動自動車600が電動車両の例であり、モータ602がモータの例であり、駆動輪603が駆動輪の例である。
【0321】
車体610、船の船体、航空機の機体、エレベータの籠および歩行ロボットの胴体が移動本体部の例であり、モータ602が動力源の例であり、スクリュー、プロペラ、昇降用ロープ、および足が駆動部の例であり、電動自動車600、船、航空機、エレベータおよび歩行ロボットが移動体の例である。
【0322】
さらに、コントローラ712が充放電制御部の例であり、通信部200xが通信部の例であり、電力貯蔵装置710が電力貯蔵装置の例であり、電源装置700が電源装置の例であり、電力出力部PU1,PU2および他の電力系統(商用電源または太陽電池を含む電力系統)が電源装置に接続される外部の例であり、電力変換装置720が電力変換装置の例である。
【0323】
請求項の各構成要素として、上記実施の形態に記載された構成要素の他、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の構成要素を用いることもできる。
【0324】
なお、図5のステップS3が課題を解決するための手段における複数のバッテリセルに流れる電流値を取得する処理またはステップの例であり、図5のステップS4が課題を解決するための手段における取得された電流値に基づいて電流積算値を算出する処理またはステップの例であり、図6のステップS23が課題を解決するための手段における各バッテリセルの電圧と予め定められた電圧しきい値との比較結果を取得する処理またはステップの例であり、図7のステップS35が課題を解決するための手段における比較結果および算出される電流積算値に基づいて、各バッテリセルの電圧が電圧しきい値と実質的に等しくなった時点での電流積算値を求め、複数のバッテリセルについてそれぞれ求められた電流積算値の差をバッテリモジュール状態として算出する処理またはステップの例である。
【産業上の利用可能性】
【0325】
本発明は、電力を駆動源とする種々の移動体、電力の貯蔵装置またはモバイル機器等に有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0326】
10 バッテリモジュール
10a,10b,10c バッテリセル
10 バッテリモジュール
200 バッテリモジュール状態検出装置
200x 通信部
210 電流測定部
211 シャント抵抗
212 差動増幅器
230 コンパレータ
240 基準電圧出力ユニット
241,242,243 電圧出力部
250 判定回路
260 比較結果保持回路
270 バッテリECU
271 制御部
272 記憶部
273 電流積算部
290 電圧比較ユニット
300 バッテリモジュール状態制御装置
310 調整ユニット
311 充電器
400 主制御部
401 始動停止指示部
500 バッテリシステム
501 電源線
502 メインスイッチ
510 負荷
590 モジュール装置
600 電動自動車
601 電力変換部
602 モータ
603 駆動輪
604 アクセル装置
604a アクセルペダル
604b アクセル検出部
605 ブレーキ装置
605a ブレーキペダル
605b ブレーキ検出部
606 回転速度センサ
610 車体
710 電力貯蔵装置
712 コントローラ
720 電力変換装置
721 DC/DCコンバータ
722 DC/ACインバータ
721a,721b,722a,722b 入出力端子
DS 放電部
MP1 第1のマルチプレクサ
MP2 第2のマルチプレクサ
MP3 第3のマルチプレクサ
N ノード
PU1,PU2 電力出力部
R 抵抗
SW,SW1,SW2 スイッチング素子
Vth_O 上限電圧
Vth_M 中間電圧
Vth_U 下限電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列接続された複数のバッテリセルを含むバッテリモジュールの状態を検出するバッテリモジュール状態検出装置であって、
前記複数のバッテリセルに流れる電流値を測定する電流測定部と、
前記電流測定部により測定された電流値に基づいて電流積算値を算出する電流積算部と、
各バッテリセルの電圧と予め定められた電圧しきい値とを比較する比較部と、
前記比較部の比較結果および前記電流積算部により算出される電流積算値に基づいて、各バッテリセルの電圧が前記電圧しきい値と実質的に等しくなった時点での電流積算値を求め、前記複数のバッテリセルについてそれぞれ求められた電流積算値の差を前記バッテリモジュール状態として算出する算出部とを備えることを特徴とするバッテリモジュール状態検出装置。
【請求項2】
前記算出部は、各バッテリセルの電圧が前記電圧しきい値と実質的に等しくなった時点で前記電流測定部により測定される電流値を取得し、各バッテリセルの電圧が前記電圧しきい値と実質的に等しくなった時点での電流積算値のうち、前記取得された電流値の絶対値が予め定められた第1の電流しきい値以下となる場合における電流積算値を選択し、前記複数のバッテリセルについてそれぞれ選択された電流積算値の差を前記バッテリモジュール状態として算出することを特徴とする請求項1記載のバッテリモジュール状態検出装置。
【請求項3】
前記算出部は、各バッテリセルの電圧が前記電圧しきい値と実質的に等しくなった時点で前記電流測定部により測定される電流値を取得し、各バッテリセルの電圧が前記電圧しきい値と実質的に等しくなった時点での電流積算値から前記複数のバッテリセルについての前記電流積算値の組み合わせを求め、前記取得された最大および最小の電流値の差の絶対値が予め定められた第2の電流しきい値以下である組み合わせを選択し、選択された組み合わせにおける前記電流積算値の差を前記バッテリモジュール状態として算出することを特徴とする請求項1または2記載のバッテリモジュール状態検出装置。
【請求項4】
前記複数のバッテリモジュールの温度を測定する温度測定部をさらに備え、
前記算出部は、各バッテリセルの電圧がしきい値と実質的に等しくなった時点で前記温度測定部により測定される温度を取得し、各バッテリセルの電圧が前記電圧しきい値と実質的に等しくなった時点での電流積算値のうち、前記取得された温度が予め定められた温度以上である場合における電流積算値を選択し、前記複数のバッテリセルについてそれぞれ選択された電流積算値の差を前記バッテリモジュール状態として算出することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のバッテリモジュール状態検出装置。
【請求項5】
前記電圧しきい値は、3.6V以上3.8V以下または3.9V以上4.1V以下に設定されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のバッテリモジュール状態検出装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のバッテリモジュール状態検出装置と、
前記バッテリモジュール状態検出装置により検出される前記バッテリモジュール状態に基づいて前記複数のバッテリセルの充電状態を均一に調整する充電状態調整装置とを備えるバッテリモジュール状態制御装置。
【請求項7】
直列接続された複数のバッテリセルを含むバッテリモジュールと、
前記バッテリモジュールの状態を検出し、検出されたバッテリモジュール状態に基づいて前記複数のバッテリセルの充電状態を均一に調整する請求項6記載のバッテリモジュール状態制御装置とを備えることを特徴とするバッテリシステム。
【請求項8】
前記バッテリモジュールの状態を検出し、検出されたバッテリモジュール状態に基づいて前記複数のバッテリセルの充電状態を均一に調整する請求項7記載のバッテリシステムと、
前記バッテリモジュールの電力により駆動されるモータと、
前記モータの回転力により回転する駆動輪とを備えることを特徴とする電動車両。
【請求項9】
前記バッテリモジュールの状態を検出し、検出されたバッテリモジュール状態に基づいて前記複数のバッテリセルの充電状態を均一に調整する請求項7記載のバッテリシステムと、
移動本体部と、
前記複数のバッテリセルからの電力を前記移動本体部を移動させるための動力に変換する動力源と、
前記動力源により変換された動力により前記移動本体部を移動させる駆動部とを備えることを特徴とする移動体。
【請求項10】
直列接続された複数のバッテリセルと、
前記複数のバッテリセルに流れる電流値を測定する電流測定部と、
前記複数のバッテリセルの充電または放電に関する制御を行う充放電制御部と、
各バッテリセルの電圧と予め定められた電圧しきい値とを比較する比較部と、
前記比較部の比較結果を前記充放電制御部に出力する通信部とを備え、
前記充放電制御部は、前記電流測定部により測定された電流値に基づいて電流積算値を算出し、前記通信部から入力される前記比較部の比較結果および前記算出された電流積算値に基づいて、各バッテリセルの電圧が前記電圧しきい値と実質的に等しくなった時点での電流積算値を求め、前記複数のバッテリセルについてそれぞれ求められた電流積算値の差を算出することを特徴とする電力貯蔵装置。
【請求項11】
前記充放電制御部は、前記複数のバッテリセルの充電時に、前記外部から前記複数のバッテリセルに流れる電流値が予め定められた第3の電流しきい値以下となるように前記複数のバッテリセルの充電に関する制御を行うことを特徴とする請求項10記載の電力貯蔵装置。
【請求項12】
前記充放電制御部は、前記複数のバッテリセルの充電時に、前記外部から前記複数のバッテリセルに流れる電流値が予め定められた範囲を超えて変動しないように前記複数のバッテリセルの充電に関する制御を行うことを特徴とする請求項10または11記載の電力貯蔵装置。
【請求項13】
外部に接続可能な電源装置であって、
請求項10〜12のいずれかに記載の電力貯蔵装置と、
前記電力貯蔵装置の前記充放電制御部により制御され、前記電力貯蔵装置の前記複数のバッテリセルと前記外部との間で電力変換を行う電力変換装置とを備えることを特徴とする電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−221012(P2011−221012A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65374(P2011−65374)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】