説明

バッテリー冷却システム

【課題】最小の空間でバッテリーモジュールを冷却することが可能な、シンプルで、軽量且つ費用対効果の高いバッテリー冷却システムを提供する。
【解決手段】本発明のバッテリーシステムは、バッテリー1と、このバッテリー1に対して長手方向に且つ互いに所定距離を置いて平行に配置された2つのバッテリー冷却管3と、このバッテリー冷却管3を、熱接触のためにバッテリーモジュール1に対して押し付ける挟持部材4と、を有し、この挟持部材4は、2つの挟持ウィング8と、これらの挟持ウィング8同士の間に位置する中央部9と、を備え、各挟持ウィング8は、長手方向に延びてバッテリー冷却管3に接触することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良された熱接触のために、自動車のバッテリー又はバッテリーモジュールに押し付けられ、均一な接触力をもたらすバッテリー冷却管が設けられたバッテリー冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気エネルギー格納部では、通常バッテリーとして知られる、ほとんどの場合、複数のバッテリーモジュールである、電気自動車又はハイブリッド車といった自動車の電圧供給のためのデバイスが使用され、これは電解質により、酸化及び還元の電気化学的原理で機能し、熱損失を生じさせる。
【0003】
個々のバッテリーモジュールのスタックが、ほとんどの場合、エネルギー格納部を構築するためにメカニカルエンドプレート及びタイロッドを介して、挟持される。モジュール同士の機械的な固定に加えて、エンドプレート及びタイロッドは、特にバッテリーモジュールを操作する際に発生するガスの圧力変化による変形に妨げるのに役立つ。
【0004】
バッテリーモジュールは、通常、必要な動作温度を確保するため、すなわち、バッテリー冷却器として知られている熱交換器を介して余分な熱を放散するために冷却する必要がある。ハイブリッド車では、エンジンの冷却水回路に、電気自動車ではHVACシステムの冷媒回路に、バッテリー冷却器を接続することができる。
【0005】
先行技術では、バッテリー冷却器、又はバッテリー冷却管のそれぞれが、直接バッテリーに接合される、又は、バッテリー筐体上でバッテリーモジュールに対し押し付けられる。
【0006】
例えば、特許文献1では、バッテリーモジュールのための冷却システムには、バッテリーモジュールの底部に対し冷却システムを平らに押し付けるスプリングシステムが設けられ、このスプリングシステムは、バッテリー筐体と冷却システムとの間に配置され、バッテリー筐体の底部に対して支持する。
【0007】
特許文献2では、バッテリーモジュールのための冷却システムが、弾力性を備え、予め圧力がかけられて、バッテリーの底部に対し自身を押し付ける、冷却システムの平らな接触プレートを備えている。
【0008】
特許文献3では、バッテリーモジュールのための冷却システムが、平らな冷却体をバッテリーモジュールの底部に押し付けるいくつかの挟持部材を備えている。
【0009】
一般的に、バッテリー冷却器をバッテリーモジュールに押し付けるための現行の概念では、バッテリー冷却器が多くの設置スペースを要し、バッテリーの総重量に大きい影響を与えるように、非常に強靭に設計される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】独国特許出願公開第102010038600号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第2337142号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開102010029872号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、最小の空間でバッテリーモジュールを冷却することが可能な、シンプルで、軽量且つ費用対効果の高いバッテリー冷却システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の課題は、請求項1の特徴による主要部によって解決され、さらなる実施形態は、従属請求項で与えられる。
【0013】
本発明によれば、この課題は、より具体的には、バッテリー、2つのバッテリー冷却管、及び熱的接触のためにバッテリーに対してバッテリー冷却管を押し付ける挟持部材と、を備えたバッテリー冷却システムによって解決される。バッテリーは、通常、長方形状であると仮定して、バッテリー冷却管は、互いに平行で、離間し、長手方向にバッテリーに配置される。挟持部材は、中央部、及び、中央部の両側から延びる2つの挟持ウィングで設計され、各挟持ウィングは、長手方向に延びるようにバッテリー冷却管と接触する。このようにして、バッテリー冷却管は、平らなパイプとして設けられる好ましい実施形態に対し、その全長にわたってバッテリーに押し付けられ、且つ適切な力が提供され、バッテリーの熱損失は、平らなパイプの大きい表面にわたって吸収することができる。
【0014】
バッテリー冷却管の長手方向の広がりすべてに亘って均一な挟持力を達成するため、挟持ウィングが延びる挟持部材の中央部には、好ましくは補強部が設けられている。
【0015】
長手方向に延びる補強部は、有利にも、ビード又はリブとして設けられている。
【0016】
挟持部材自体は、有利にも、金属材料からなるスプリングシートとして設けられている。
【0017】
本発明の有利な実施形態によれば、挟持部材は、中央部でボルト接続により、バッテリーへの成形及び密着した押し付けによって直接可逆的に接続される。変形例として、筐体が密着して成形するガイドの役割をなし、電池のボルトの締めが共に圧力をかける。
【0018】
個々のエネルギー格納部の電池は、事前の組み立て時に既にバッテリー冷却器にボルト留めすることができるため、最終組み立て時に要される労力は比較的少ない。
【0019】
挟持部材は、挟持部材を通して入ってくる望まれない熱を防止するため、好ましくは、バッテリー冷却管に対して断熱されて設けられる。
挟持部材が直接バッテリーに接続される場合、バッテリーからの挟持部材を通したバッテリー冷却管への熱の追加の熱伝達を要求することができ、そして一方よりバッテリーから直接、及び、もう一方より挟持部材を通して間接的に、バッテリー冷却管に入る。
【0020】
本発明の好ましい実施形態によれば、挟持部材は150mm〜400mmの長さを有し、バッテリーの長さに適合する。
挟持部材の材料の厚さは、シートで設置した場合、0.3mm〜1.0mmである。
【0021】
好ましくは、挟持部材は、補強のための硬質のキャリアにて保持され、6mm〜10mmの材料の厚さを有するキャリアを備えている。
変形例として、組み立て時に所定の方法で変形される、予め反らされたキャリヤを用いることもできる。この場合、材料の厚さは6mm未満とすることができる。
キャリアは、スプリングシートが支持するリブなどのバッテリーケーシングの一部とすることもできる。
本発明の好ましい実施形態は、キャリアが補強のためのプレキャンバーが設けられ、したがって、6mm未満の材料の厚さを有することである。
【0022】
本発明のさらなる有利な実施形態によれば、硬質のキャリアが、バッテリーの筐体構造に設けられる。
【0023】
好ましくは、本発明の概念は、所定の変形が、それぞれ、バッテリー冷却器からバッテリー上へ、又はバッテリーモジュール上へ、接触力を発生させる、金属シートで作成された挟持部材によって確立される。
技術的な要件によれば、ばね特性は、フックの法則に従い、材料の特性、材料の厚さ、及び挟持部材の形態デザインにより、調整することができる。
設置スペース及びバッテリーモジュールの大きな許容差のため、可塑的にスプリングシートを第1の組み立て上で変形させること、又は、意図的に塑性変形を可能とすることは、それぞれ有利である可能性がある。このように、いわば、設置スペースに応じてスタンピングが生ずる。
【0024】
追加の支持なしに長い幅にわたり挟持部材を使用するために、中央部が補強される。
短い幅の場合、補強は板材の上のビード又はリブにより行うことができる。
200mmよりも長い幅の場合、分離されたキャリアによる追加の補強が有利である。
追加のキャリアの使用は、より正確にスプリングシートのスプリングの特性を必要な接触力へと適合させることを可能にする。
【0025】
本発明の有利な実施形態では、長手方向軸線に垂直なスリットを有する挟持部材の挟持ウィングが提供される。そのため、個々の区分は、互いに柔軟に独立して形成される。平らなパイプは非常に柔軟であるため、バッテリーの凹凸表面に非常によく適応する。挟持ウィングの個々の柔軟な区分は、正確に単一のばねのように機能し、これにより、平らなパイプのバッテリーの表面へのより良く適応させる。
【0026】
本発明では、非常に低重量及び少設置スペースという利点が、構成部材の大きな寸法の許容差に対しても、バッテリー冷却管のバッテリーへの一定した押し付けを実現する可能性と結びつく。
【0027】
本発明のさらなる詳細、特徴及び利点は、添付図面と関連する例示的な実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】バッテリー冷却システムの断面図である。
【図2】挟持部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、バッテリー冷却システムの断面図を示す。この断面図は、バッテリー冷却の基本的な構造を示し、本発明の図にて、挟持部材4は、バッテリー冷却管3をそれぞれ、バッテリー又はバッテリーモジュール1に対して押し付けるスプリングシート4として設置される。バッテリーモジュール1、バッテリー冷却管3、及びスプリングシート4のバッテリー筐体2への取り付け中、スプリングシート4は、予め圧力がかけられ、バッテリー1の長手方向に延びるバッテリー冷却管3への一定した押し付けを確保する。
【0030】
スプリングシート4の長さとして200mmを越える幅が提供される場合、本発明として示される特定の実施形態では、分離された硬質のキャリア5によって確立される長手方向のスプリングシート4のさらなる補強により有利である。その中央部9を備えたスプリングシート4は、スプリングシート4の挟持ウィング8の弾発力を吸収するキャリア5に固定される。キャリア5は、バッテリー筐体2に接続され、ばね力をバッテリー筐体2に伝達する。変形例として、ばね力をキャリアを介して筐体構造に伝達させてもよい。
バッテリー冷却管3は、バッテリーモジュール1と熱接触する表面が比較的大きく設置されるよう、平らなパイプとして設計される。スプリングシート4は、W字型断面を有する。挟持ウィング8は、外側の足であって、挟持ウィング8がバッテリー冷却管3上で平らなままであるよう、両端で角度を有する。したがって、平らなパイプ3は、機械的負荷に対して比較的敏感であり、挟持ウィング8の鋭利なエッジのスプリングシートにより、ばね力及び挟持ウィング8の起こり得る相対運動によって損傷されない。さらに、平らなパイプ3への均一で所定方向の力の伝達が確保されている。
【0031】
図2は、長手方向軸線7の両側に確立される補強部を備えたスプリングシート4の一実施形態を示す。スプリングシート4は、両側で挟持ウィング8になる中央部9を備え、図示された設計では、スプリングシート4が、適切に形成されて熱処理されているシートの一部分が作られている。図示では、挟持ウィング8がそれぞれ上方向の接触力を発生させるように、断面が鏡面対称である。補強部は、スプリングシート4の長手方向軸線7と平行なシートにてビード4又はリブ6として形成される。
【符号の説明】
【0032】
1 バッテリー、バッテリーモジュール
2 バッテリー筐体
3 バッテリー冷却管
4 挟持部材、スプリングシート
5 硬質のキャリア
6 ビード、リブ
7 縦軸
8 挟持ウィング
9 中央部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーシステムであって、
バッテリー(1)と、
このバッテリー(1)に対して長手方向に且つ互いに所定距離を置いて平行に配置された2つのバッテリー冷却管(3)と、
このバッテリー冷却管(3)を、熱接触のためにバッテリーモジュール(1)に対して押し付ける挟持部材(4)と、を有し、
上記挟持部材(4)は、2つの挟持ウィング(8)と、これらの挟持ウィング(8)同士の間に位置する中央部(9)と、を備え、
各挟持ウィング(8)は、長手方向に延びて上記バッテリー冷却管(3)に接触することを特徴とするバッテリー冷却システム。
【請求項2】
上記挟持部材(4)の上記中央部(9)には、長手方向に延びる補強部が設けられている請求項1記載のバッテリー冷却システム。
【請求項3】
上記長手方向に延びる補強部は、ビード又はリブ(6)として設けられている請求項1又は2に記載のバッテリー冷却システム。
【請求項4】
上記挟持部材(4)は、金属材料からなるスプリングシートとして設けられている請求項1乃至3の何れか1項に記載のバッテリー冷却システム。
【請求項5】
上記挟持部材(4)は、上記バッテリー(1)に密着する形状により、上記中央部(9)でボルト接続により可逆的に接続される請求項1乃至4の何れか1項に記載のバッテリー冷却システム。
【請求項6】
上記挟持部材(4)は、上記バッテリー冷却管(3)に対して断熱的に設けられている請求項1乃至5の何れか1項に記載のバッテリー冷却システム。
【請求項7】
上記挟持部材(4)は、150mm〜400mmの長さを有する請求項1乃至6の何れか1項に記載のバッテリー冷却システム。
【請求項8】
上記挟持部材(4)は、0.3mm〜1.0mmの材料の厚さを有する請求項1乃至7の何れか1項に記載のバッテリー冷却システム。
【請求項9】
上記挟持部材(4)は、補強のために硬質のキャリア(5)で保持される請求項1乃至8の何れか1項に記載のバッテリー冷却システム。
【請求項10】
上記硬質のキャリア(5)は、補強のために6mm〜10mmの材料の厚さを有する請求項9記載のバッテリー冷却システム。
【請求項11】
上記硬質のキャリア(5)は、補強のためにキャンバーが設けられ、そのため6mm未満の材料の厚さを有する請求項9記載のバッテリー冷却システム。
【請求項12】
上記キャリア(5)は、上記バッテリーの筐体構造内に設けられている請求項9乃至11の何れか1項に記載のバッテリー冷却システム。
【請求項13】
上記挟持ウィング(8)は、長手方向軸線(7)に垂直なスリットを備え、このスリットは、上記挟持ウィング(8)を互いに独立した柔軟性のある個々の区分へと分割する請求項1乃至12の何れか1項に記載のバッテリー冷却システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−69690(P2013−69690A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−225478(P2012−225478)
【出願日】平成24年9月21日(2012.9.21)
【出願人】(505450755)ビステオン グローバル テクノロジーズ インコーポレイテッド (140)
【Fターム(参考)】