説明

バッテリー収容器支持体

【課題】 ロック状態の安定化が図られたバッテリー収容器支持体を提供する。
【解決手段】
本発明に係るバッテリー収容器支持体(バッテリー固定装置30)においては、たとえば車両が水平状態にあるときには、バッテリーケース21をロック状態にするために、フック34をロック位置にしたとき、ロッド部材24が、バッテリー固定装置30の固定軸32の鉛直下方に位置する。それにより、ロッド部材24から負荷されるバッテリーユニット20の重力の方向と、ロッド部材24と固定軸32とが並列する方向とが一致することとなり、ロック状態におけるモーメントの発生が抑制されるため、ロック状態の安定化が実現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーを自動車に搭載するためのバッテリー収容器を支持するバッテリー収容器支持体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車の分野において、着脱可能なバッテリーに関する研究が進められている。このようなバッテリーを支持する技術は、たとえば、下記特許文献1に開示されている。この特許文献1には、フックにより、バッテリーを収容する収容器から延出するシャフトを支持した状態で、当該収容器をロックする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開2010/0071979号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来技術には、以下に示すような課題が存在している。すなわち、バッテリー収容器をロックした状態において、ロックが解除される向きの力(モーメント)が常に負荷されており、不安定な状態であった。そのため、ロック状態を維持するためには、その力との均衡を保つ必要があり、そのための補強や機構追加といった無駄が生じていた。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、ロック状態の安定化が図られたバッテリー収容器支持体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るバッテリー収容器支持体は、バッテリーを自動車に搭載するためのバッテリー収容器を、自動車に対して着脱可能に下方より支持するバッテリー収容器支持体であって、バッテリー収容器から水平方向に延びるシャフトに対して平行な固定軸と、固定軸に回動可能に取り付けられ、バッテリー収容器のシャフトを下方から支持するフックと、フックを、固定軸周りに回動させる回動手段とを備え、フックは、回動手段により、シャフトをロック状態にするロック位置とシャフトのロック状態が解かれた開放位置との間で固定軸周りに回動され、フックがロック位置のときに、固定軸の鉛直下方にシャフトを位置させる。なお、固定軸の鉛直下方とは、自動車が水平に配置された状態における固定軸の真下方向を示す。また、バッテリー収容器から水平方向とは、バッテリー収容器が水平に配置された自動車に取り付けられた状態における水平方向を示す。
【0007】
このバッテリー収容器支持体においては、バッテリー収容器をロック状態にするために、フックをロック位置にしたとき、シャフトが、バッテリー収容器支持体の固定軸の鉛直下方に位置する。それにより、シャフトに負荷される重力の方向と、シャフトと固定軸とが並列する方向とが一致することとなり、ロック状態におけるモーメントの発生が抑制されるため、本発明に係るバッテリー収容器支持体によれば、ロック状態の安定化が実現される。
【0008】
また、フックは、固定軸に取り付けられる軸受部と、軸受部と一体的に設けられ、固定軸の軸線に関して周方向に延在するシャフト支持部とを有し、フックがロック位置のときに、シャフト支持部が、固定軸の鉛直下方の位置でシャフトを支持する態様であってもよい。
【0009】
さらに、フックが板状であり、フックが、バッテリー収容器の側面に対して平行に配置され、かつ、側面に沿って回動する態様であってもよい。この場合、バッテリー収容器支持体の設置および支持動作に必要なスペースの低減が図られる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ロック状態の安定化が図られたバッテリー収容器支持体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る電気自動車のバッテリーユニットの搭載状態を示した図である。
【図2】図2は、図1に示す電気自動車の底面を示した図である。
【図3】図3は、図1に示すバッテリーユニットを示した図である。
【図4】図4は、図2に示すバッテリー固定装置を示した図である。
【図5】図5は、図4に示すバッテリー固定装置のロック位置および開放位置を示した図である。
【図6】図6は、従来技術に係るバッテリー固定装置を示した図である。
【図7】図7は、図4とは異なる態様のバッテリー固定装置を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る電気自動車のバッテリーユニットについて、図1−3を参照しつつ説明する。なお、図中の座標軸は、車両を基準としており、X軸は車両の前後方向、Y軸は車両の左右方向、Z軸は車両の高さ方向を指している。
【0014】
図1および図2に示すように、電気自動車10の底部11には、後述するバッテリーユニット20を車両下方より脱着可能なバッテリー固定部12が設けられている。
【0015】
バッテリー固定部12は、車両底部のフロアパン、サイドメンバロッカー部や左右のサイドメンバロッカー部間に橋渡しされるリンフォース等の車両底面骨格部14、および、バッテリー固定部12に取り付けられたバッテリーユニット20を保護する枠体13によって構成されている。枠体13は、車両前後方向に延びる長方形の外形を有し、鉄材によって枠組みされ、車両底面骨格部14に取り付けられている。
【0016】
車両底面骨格部14には、枠体13の内周に接するように、バッテリー固定装置(バッテリー収容器支持体)30が取り付けられている。本実施形態では、4つのバッテリー固定装置30が、枠体13の四隅に、車両側面側に位置する左右の辺に接するように取り付けられている。
【0017】
また、枠体13には、各辺に、車両下方に向けてテーパ状に広がる車両側ガイド片15が2つずつ取り付けられている。さらに、枠体13には、車両に搭載された自動車機器とバッテリーユニット20とを電気的に接続するための、車両側電気コネクタ(図示せず)が取り付けられている。
【0018】
図3に示すように、電気自動車10に取り付けられるバッテリーユニット20は、バッテリーケース(バッテリー収容器)21の中に、バッテリーセル及びコントローラ(ともに図示せず)が収容されている。
【0019】
バッテリーケース21の外面には、バッテリー固定装置30に支持されることでバッテリーユニット20を車両に固定するためのストライカ22が取り付けられている。ストライカ22は、ボルト等でバッテリーケース21に固定されるベースプレート23と、ベースプレート23の側面21aに対して垂直方向(図のY方向)に延びる円筒突起状のロッド部材(シャフト)24とによって構成されている。本実施形態においては、バッテリーケース21の外面のうち、車両側面側に位置する両側面21aに、それぞれ2つのストライカ22が取り付けられている。
【0020】
また、バッテリーユニット20を車両のバッテリー固定部12に取り付けた状態で、車両側ガイド片15に対応する箇所には、半円筒状のバッテリー側ガイド片25が取り付けられている。さらに、バッテリーケース21における車両側電気コネクタに対応した箇所には、バッテリーケース側電気コネクタ(図示せず)が設けられており、バッテリーユニット20がバッテリー固定部12に配置された状態では、車両側電気コネクタとバッテリー側電気コネクタが接触し、電気的に接続された状態となる。
【0021】
図4および図5に示すように、バッテリー固定装置30は、固定軸32と、フック34と、回動リンク機構(回動手段)36とによって構成されている。
【0022】
固定軸32は、バッテリー固定部12の枠体13に固定されており、バッテリーユニット20を車両のバッテリー固定部12に取り付けた状態で、ストライカ22のロッド部材24と平行になるように、Y軸方向に延在している。
【0023】
フック34は、略V字状を有する薄型プレート部材であり、たとえば金属プレート等からの切り出しによって形成される。フック34は、その一端部が上記固定軸32に取り付けられる軸受部34aとなっており、他端部がロッド部材24を支持する支持部(シャフト支持部)34bとなっており、これらの端部が一体的に設けられている。
【0024】
フック34は、バッテリーユニット20を車両のバッテリー固定部12に取り付けた状態で、バッテリーケース21の側面21aと平行となるように、固定軸32に回動可能に取り付けられる。そのため、フック34は、Y軸に直交する面(X−Z面)内において、バッテリーケース21の側面21aと平行な状態のまま、回動することができる。
【0025】
支持部34bは、フック34の回動方向(すなわち、固定軸32の軸線に関して周方向)に延在しており、固定軸32の周りを所定距離だけ離間した状態で回動する。このように、フック34の支持部34bが回動することで、軸受部34aと支持部34bとの間の開口部35から、ロッド部材24が導入されたり排出されたりする。
【0026】
フック34は、開口部35とは反対側に位置する屈曲部34cにおいて、回動リンク機構36の先端部に接続されている。
【0027】
回動リンク機構36は、2つのリンク(第1のリンク36a、第2のリンク36b)によって構成されている。この回動リンク機構36は、第1のリンク36aの駆動軸がモータMによって回動制御されることで、第2のリンク36bを移動させ、それにより、第2のリンク36bの先端部に接続されたフック34を回動させる。なお、モータMは、車内に配置された制御システムによって制御され、バッテリーユニット20とは別に車両に設けられた車体側バッテリーから給電されるように接続されている。モータMは、制御システムからの指示によって駆動電流が供給されると、駆動電流に応じて軸が正逆回転するモータ部と、モータ部の軸に取り付けられる図示しないモータギヤ部とで構成される。モータMは図示しないホルダによって枠体13に取り付けられている。なお、モータMは、駆動電流が供給されていない状態では、モータが回転しないように制御されている。
【0028】
回動リンク機構36は、図5に実線で示すように、バッテリーユニット20をロック状態にするときは、伸張するように回動制御され、このとき、フック34は、開口部35から導入されたロッド部材24を支持部34bにおいて下方から支持する位置(以下、ロック位置と称す。)に配置される。一方、図5に仮想線(二点鎖線)で示すように、バッテリーユニット20のロック状態を解くときは、回動リンク機構36は屈曲するように回動制御され、このとき、フック34は、上記ロック位置から回動リンク機構36側に引き上げられた位置(以下、開放位置と称す)に配置される。
【0029】
次に、電気自動車10のバッテリーユニット20を交換するバッテリー交換装置60について説明する。
【0030】
図1に記載されているように、バッテリー交換装置60は、下部は地下に配置され、上部は地上に配置されている。バッテリー交換装置60の上部には、電気自動車10を積載可能な水平な積載台61が設けられ、積載台61にはバッテリーユニット20及びバッテリーユニット20を昇降する昇降手段62が昇降及び通過可能な開口部63が設けられている。さらに、積載台61の上部には、開口部63を挟んで、電気自動車10のバッテリー固定部12が開口部63の上方に配置されるように、電気自動車10の車幅方向の位置決めを行う一対の位置決めレール64が設置される。そして、位置決めレール64の端には、電気自動車10のバッテリー固定部12が開口部63の上方に配置されるように、電気自動車10の前後方向の位置決めを行う二コブ山形状の車輪止め65が設置されている。
【0031】
なお、電気自動車10において、前輪16の車軸に対するバッテリー固定部12の位置は全車種において規格化し統一しておく事が望ましい。そして、電気自動車10のバッテリー交換の際には、電気自動車10の前輪16間に位置決めレール64が配置されるように電気自動車10を移動する。そして、前輪16がニコブ山形状の車輪止め65の中央に位置するように停車することで、電気自動車10のバッテリー固定部12とバッテリー交換装置60の昇降手段62とにおいて、ある程度の位置合せを行う。これによって、車輪止め65へのタイヤの当接状態の違いに起因する車両前後方向におけるバッテリー固定部12の位置と、昇降手段62との位置のずれを数十mm程度に抑えることが可能である。
【0032】
バッテリー交換装置60には、積載台61の開口部63を通り、上下方向に昇降可能な位置に昇降手段62が設けられている。昇降手段62は、電気自動車10より取り外したバッテリーユニット20をバッテリー交換装置60内に収容、又は、バッテリー交換装置60内に保管されていたバッテリーユニットを電気自動車10のバッテリー固定部12へ移載するための装置であり、基台66、移載テーブル67、アーム68、移載テーブルを昇降させるための油圧シリンダ69によって構成されている。
【0033】
バッテリー交換装置60内の昇降手段62の周りに、はチェーンコンベア71からなる運搬手段70が設置されている。運搬手段70は、バッテリーユニット20を昇降手段62との聞で移載する移載位置と、図示しないバッテリー貯蔵手段との間において、バッテリーユニット20を運搬する装置である。なお、バッテリー貯蔵手段とは、回収された使用済みのバッテリーユニット20を一時貯蔵するとともに、充電された充電済みバッテリーユニット20を貯蔵する装置であり、例えば、自動倉庫で構成される。
【0034】
このように構成されたバッテリー交換装置60によって、電気自動車10に搭載されているバッテリーユニット20が交換される。バッテリーユニット20の交換時には、電気自動車10を、バッテリー交換装置の積載台61上に移動させ、電気自動車10の前輪16を車輪止め65の二コブ山形状の中央に位置するように停止させる。停止後、バッテリー交換の指令がだされると、バッテリー交換装置60は、油圧シリンダ69を駆動することで、移載テーブル67を上昇させ、バッテリー固定部12に収容されているバッテリーユニット20の底面に移載テーブル67を当接させる。
【0035】
当接後、車内に設けられた制御システムにより上述のモータMを駆動して、電気自動車10にバッテリーユニット20を固定しているバッテリー固定装置30のロックを解除し、フック34を開放位置に配置させる。その後、バッテリー交換装置60は油圧シリンダ69を駆動することで移載テーブル67を下降させ、バッテリーユニット20はバッテリー交換装置60内に収容される。収容されたバッテリーユニット20は、運搬手段70により、バッテリー貯蔵手段に運ばれ保管される。
【0036】
そして、バッテリー貯蔵手段に貯蔵されていた他の充電済みのバッテリーユニット20がバッテリー貯臓手段より取り出され、運搬手段70によって昇降手段62まで運ばれる。昇降手段62に運ばれたバッテリーユニット20は、昇降手段62によって上昇される。バッテリー固定部12とバッテリーユニット20との位置のずれは、バッテリーユニット20が上昇時に、バッテリーユニット20に取り付けられたバッテリー側ガイド片25と車両側ガイド片15とが接触することによって修正される。バッテリーユニット20の上昇を続けると、双方のガイド片15、25によってバッテリーユニット20の位置ずれや傾きが補正され、バッテリーユニット20がバッテリー固定部12に挿入される。
【0037】
なお、車両の底部11のバッテリー固定部12の周囲には、図示しない複数の押圧スイッチが取り付けられており、全てのスイッチが移載テーブル67によって押圧されると、バッテリーユニット20がバッテリー固定部12に収容された状態として検知される。バッテリー固定部12にバッテリーユニット20が収納された状態が検知されたら、車内に設けられた上述の制御システムによりモータMを駆動し、バッテリー固定装置30をロック状態にしてフック34をロック位置に配置させることで、バッテリーユニット20がロックされ、電気自動車のバッテリーが交換される。
【0038】
ここで、バッテリー固定装置30がロック状態のときのフック34の位置(ロック位置)について説明する。
【0039】
図5に実線で示したように、バッテリー固定装置30は、フック34がロック位置にあるときに、固定軸32とロッド部材24とがZ軸方向に並ぶ。なお、Z軸方向は車両の高さ方向であるため、車両が水平状態にあるときには、Z軸方向は鉛直方向に相当する。
【0040】
すなわち、バッテリー固定装置30は、バッテリーケース21を含むバッテリーユニット20をロック状態にするために、フック34をロック位置にしたとき、車両が水平状態にあるときにはロッド部材24が固定軸32の鉛直下方に位置する。
【0041】
このとき、ロッド部材24に負荷される重力の方向(Z軸方向)と、ロッド部材24と固定軸32との並列する方向(Z軸方向)とが一致する。そのため、バッテリー固定装置30においては、ロック状態におけるモーメントの発生が抑制され、ロック状態の安定化が実現されている。
【0042】
一方、図6に示すように、従来技術に係るバッテリー固定装置30Aのフック34Aは、ロックした状態において、バッテリーユニットの自重Fにより、ロッド部材24からフック34Aに対してロックが解除される向きの力Faが常に負荷される状態であり、回転モーメントが生じ、不安定な状態である。
【0043】
この従来技術においてロック状態を安定に維持させるには、その力やモーメントとの均衡を保つ必要があり、フックやリンク機構を補強したり補強機構を追加したりする等の対処が必要であった。特に、蓄電可能な電力容量を増やすためにバッテリーユニットの重量が重くなりがちな電気自動車においては、各構成部材の強度を十分に確保しておく必要がある。そのため、バッテリー固定装置30において必要十分な強度および信頼性を確保するために、構成部品の大型化や質量の増大、コスト増大、燃費の悪化等が避けられなかった。
【0044】
以上で説明したように、バッテリー固定装置30は、バッテリーを電気自動車10に搭載するためのバッテリーケース21を、電気自動車10に対して着脱可能に下方より支持するバッテリー固定装置であって、バッテリーケース21からY方向(車両が水平状態にあるときには水平方向)に延びるロッド部材24に対して平行な固定軸32と、固定軸32に回動可能に取り付けられ、バッテリーケース21のロッド部材24を下方から支持するフック34と、フック34を、固定軸32周りに回動させる回動リンク機構36とを備え、フック34は、回動リンク機構36により、ロッド部材24をロック状態にするロック位置とロッド部材24のロック状態が解かれた開放位置との間で固定軸32周りに回動され、フック34がロック位置のときに、固定軸32のY軸方向下側(車両が水平状態にあるときには鉛直下方)にロッド部材24を位置させる。
【0045】
このバッテリー固定装置30においては、たとえば車両が水平状態にあるときには、バッテリーケース21をロック状態にするために、フック34をロック位置にしたとき、ロッド部材24が、バッテリー固定装置30の固定軸32の鉛直下方に位置する。それにより、ロッド部材24から負荷されるバッテリーユニット20の重力の方向と、ロッド部材24と固定軸32とが並列する方向とが一致することとなり、ロック状態におけるモーメントの発生が抑制されるため、ロック状態の安定化が実現される。
【0046】
また、上述したように、フック34が板状の薄型プレート部材であり、フック34は、バッテリーケース21の側面21aに対して平行に配置され、かつ、側面21aに沿って回動する。そのため、フック34がバッテリーケース21に接触する事態を有意に回避しつつ、フック34をバッテリーケース21の側面21aに近接配置することができる。したがって、バッテリーケース21の側面21aに対して交差する面において、フック34が延在したり回動したりする場合に比べて、バッテリー固定装置30は、その設置および支持動作に必要なスペースの低減を図ることができる。
【0047】
なお、上述した実施形態では、バッテリー固定装置30が、枠体13の左右の辺に接するように取り付けられ、バッテリーケース21をその側面21aの側から固定する態様を示したが、図7に示すような態様であってもよい。
【0048】
図7に示すバッテリー固定装置30は、枠体13の前後の辺に一対ずつ取り付けられ、バッテリーケース21をその前後面21bの側から固定するものである。バッテリーケース21の後面21bには、後面21bに対して平行にY軸方向に延びるロッド部材24Aと、ロッド部材24Aを後面21bに連結するために両端支持する一対の連結部26とが設けられている。
【0049】
図7に示すバッテリー固定装置30も、上述したバッテリー固定装置同様、バッテリー固定部12の枠体13に固定されてY軸方向に延びる固定軸32と、固定軸32に回動可能に取り付けられ、バッテリーケース21の後面21bから連結部26を介してY軸方向に延びるロッド部材24Aを下方から支持するフック34と、フック34を固定軸32周りに回動させる回動リンク機構36とによって構成されている。
【0050】
そして、図7に示すバッテリー固定装置30においても、フック34がロック位置にあるときに、固定軸32とロッド部材24AとがZ軸方向に並ぶため、ロック状態におけるモーメントの発生が抑制され、ロック状態の安定化が実現される。
【0051】
ただし、図7に示したバッテリー固定装置30の配置は、図4に示したバッテリー固定装置30の配置に比べて、その設置および支持動作のために、車両の枠体13やバッテリーユニット20の前後方向(図のX方向)に大きなスペースを確保する必要がある。その結果、バッテリースペースが減少し、バッテリー容量の削減が必要になる場合も考えられる。また、バッテリースペースを維持するためには、ホイールベースや車両の拡大等が必要となり、車両諸元に大きく影響してしまう。さらに、図3に示すように、バッテリーユニット20が車両の前後に長い状態で配置される場合には、図7に示したバッテリー固定装置30の配置は、図4に示したバッテリー固定装置30の配置に比べて、その支持位置がバッテリー重心から離れてしまい、高い支持強度を確保するのが難しくなる。加えて、車両の前後方向からの衝撃の際、図7に示したバッテリー固定装置30の配置は、図4に示したバッテリー固定装置30の配置に比べて、バッテリー固定装置30を介してその衝撃がバッテリーユニット20に伝わりやすい。
【0052】
以上に挙げた理由により、図4に示したバッテリー固定装置30の配置のほうが、図7に示したバッテリー固定装置30の配置に比べて好適である。
【0053】
なお、本発明は上述した実施形態に限らず、様々な変形が可能である。たとえば、バッテリー固定装置30に取り付けられるモータMは、各装置に一つずつ取り付けて個々に回動制御する態様の他、Y方向に並ぶ一対のバッテリー固定装置30を一つのモータで回動制御する態様であってもよい。また、フック34の形状は、V字状に限らず、支持部34bにおいて固定軸32のY軸方向下側の位置でロッド部材24を支持する形状であれば、U字状やその他の形状であっても構わない。
【符号の説明】
【0054】
10…電気自動車、20…バッテリーユニット、21…バッテリーケース、24、24A…ロッド部材、30…バッテリー固定装置、32…固定軸、34…フック、34a…軸受部、34b…支持部、36…回動リンク機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーを自動車に搭載するためのバッテリー収容器を、自動車に対して着脱可能に下方より支持するバッテリー収容器支持体であって、
前記バッテリー収容器から水平方向に延びるシャフトに対して平行な固定軸と、
前記固定軸に回動可能に取り付けられ、前記バッテリー収容器の前記シャフトを下方から支持するフックと、
前記フックを、前記固定軸周りに回動させる回動手段と
を備え、
前記フックは、前記回動手段により、前記シャフトをロック状態にするロック位置と前記シャフトのロック状態が解かれた開放位置との間で前記固定軸周りに回動され、
前記フックが前記ロック位置のときに、前記固定軸の鉛直下方に前記シャフトを位置させる、バッテリー収容器支持体。
【請求項2】
前記フックは、
前記固定軸に取り付けられる軸受部と、
前記軸受部と一体的に設けられ、前記固定軸の軸線に関して周方向に延在するシャフト支持部と
を有し、
前記フックが前記ロック位置のときに、前記シャフト支持部が、前記固定軸の鉛直下方の位置で前記シャフトを支持する、請求項1に記載のバッテリー収容器支持体。
【請求項3】
前記フックが板状であり、
前記フックが、前記バッテリー収容器の側面に対して平行に配置され、かつ、前記側面に沿って回動する、請求項1または2に記載のバッテリー収容器支持体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−188096(P2012−188096A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55797(P2011−55797)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】