説明

バブル発生装置

【課題】マイクロバブル等の新たな発生装置を提案する。
【解決手段】バブル発生装置1は本体部2とボール3とで構成されている。本体部2の内側には、ボールハウス5があり、ボールハウス5の先端側には開口部8が設けられており、開口部8は、ボール3を保持できる様に窄められている。ボールハウス5の座面10には、放射状の溝11が設けられ、溝11は、さらにボールハウス5の内壁16に連通し、先端の開口部8に至っている。バブル発生装置1は、水槽等の壁面に1個又は複数個取付けられ、先端側を液中に臨ませて使用される。そして後端側のバック孔6から空気等の気体、または気体と液体の混合物を所定の圧力で導入し、先端の開口部8の欠落部20から液中に気体を噴射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水等の液中に微小な気泡を発生させる装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水中に微小な気泡を発生させる技術が、例えば特許文献1に開示されている。
気泡は、その大きさに応じて、ミリバブル、マイクロバブル、ナノバブルなどと称されている。
これらの気泡は、汚泥処理や、漁業、医療等の多用途に渡って利用されている。
例えば牡蠣の養殖筏の近傍にマイクロバブルを発生させると、牡蠣の生育が著しく増進することが知られている。
またナノバブルを含んだ水を使用すれば、淡水魚と海水魚を同一の水槽で飼育することができる。
マイクロバブルとオゾン殺菌を併用すると、オゾンが水中に円滑に溶解し、殺菌効果が増大する。
マイクロバブルを汚水中に発生させることにより、汚水の酸欠状態が解消し、富栄養化が阻止されて赤潮の発生が抑制される。
マイクロバブル等の発生方法や用途等については、例えば非特許文献1に詳細に紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4168068号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「マイクロバブル・ナノバブルの最新技術」2007年9月5日第1刷発行監修 柘植秀樹発行者 辻 賢司発行所 株式会社シーエムシー出版
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記した非特許文献1には、マイクロバブルやナノバブルの代表的な発生方法が開示されている。
しかしながら、マイクロバブルやナノバブルは開発途上の技術であり、非特許文献1に開示されたいずれの発生方法についても改良すべき点がある。
本発明は、マイクロバブルやナノバブルの技術分野における現状に注目し、マイクロバブル等の新たな発生装置を提案することを解決課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、ボールと本体部とを有し、前記本体部は、前記ボールを収納するボールハウスと、前記ボールハウスと外部とを連通し、前記ボールの一部が嵌まり込むことが可能な開口部と、ボールハウスの内側面から前記開口部に渡って形成された溝を有し、前記ボールは本体部のボールハウス内にあり、前記ボールの一部が開口部に嵌まり込んだ状態においては前記溝を介してボールハウスの内外が連通することを特徴とするバブル発生装置である。
【0007】
本発明のバブル発生装置では、開口部の端縁とボールとの間に溝の端部が開き、開口部の端縁とボールとの間に溝による微小な開口が形成される。当該開口から気体又は気体と液体の混合物を噴射することにより、液体中に微小な気泡を混入させることができる。
本発明のバブル発生装置は、ボールペン用のペン先チップに類似した構造を有するものであり、ボールペンのペン先チップを成形する際の精密加工技術を応用することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、新規のバブル発生装置であり、用途に応じて所望の大きさの気泡を発生させることができる。
また本発明はボールペンのペン先チップを成形する際の精密加工技術を応用することができ、大量生産が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態のバブル発生装置の斜視図である。
【図2】図1のA方向矢視図である。
【図3】図1のバブル発生装置の断面図であり、図2を断面A−A方向から観察したものである。
【図4】(a)は、図1のバブル発生装置の正面図であり、(b)は同図のA方向矢視図であり、(c)は同図のB−B断面図であり、(d)は同図のC−C断面図である。
【図5】図1のバブル発生装置の分解図であり、本体部は開口をかしめる前の状態を図示している。
【図6】(a)は図1のバブル発生装置の一部破断分解斜視図であり、(b)はその一部拡大図である。
【図7】図1のバブル発生装置の製造工程を示す説明図である。
【図8】(a)は図1のバブル発生装置の製造工程を示す斜視図であって溝を形成する工程を示し、(b)は同図のA−A断面図であってブローチの断面形状を示し、(c)は同図のB−B断面における端面図であり、(d)は同図のC−C断面における端面図である。
【図9】図1のバブル発生装置の使用時の状態を示す断面図である。
【図10】本発明の他の実施形態のバブル発生装置の一部破断分解斜視図である。
【図11】図10のバブル発生装置の本体部であって先端をかしめる前の形状を示す斜視図である。
【図12】(a)は、本発明のさらに他の実施形態のバブル発生装置の正面図であり、(b)は同図のA方向矢視図であり、(c)は同図のB−B断面図であり、(d)は同図のC−C断面図である。
【図13】(a)は、本発明のさらに他の実施形態のバブル発生装置の正面図であり、(b)は同図のA方向矢視図であり、(c)は同図のB−B断面図であり、(d)は同図のC−C断面図であり、(e)は同図のD−D断面図である。
【図14】(a)は、本発明のさらに他の実施形態のバブル発生装置の製造工程を示す斜視図であって溝を形成する工程を示し、(b)は同図のA−A断面図であってブローチの断面形状を示し、(c)は同図のB−B断面における端面図であり、(d)は同図のC−C断面における端面図である。
【図15】本発明の実施形態のバブル発生装置の使用時の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下さらに本発明の実施形態について説明する。本発明のバブル発生装置1は、ボールペン用のペン先チップに似た構造をしている。
即ち本実施例で採用するバブル発生装置1は、図1,3,5,6の様に、本体部2とボール3とで構成されている。
本体部2の外形は、先端側が円錐状をしており、他の部位は、円柱状をしている。バブル発生装置1の本体部2の内側には、その先端側にボールハウス5があり、後側にバック孔6が開放されている。またボールハウス5の先端側には開口部8が設けられており、当該開口部8によってボールハウス5の内外が連通している。先端の開口部8は、ボール3を保持できる様に窄められている。
【0011】
ボールハウス5の後端側には、ボール3が当接する座面10がある。また座面10の中央に前記したバック孔6が連通している。
座面10には、図6、図8(d)の様な放射状の溝11が設けられている。
【0012】
放射状の溝11は、前記したバック孔6を中心として座面10に放射状に延びるものであり、本実施形態では、図8(d)の様に、3本の放射辺12,13,15を持つ。
また溝11は、さらにボールハウス5の内壁に連通し、先端の開口部8に至っている。
【0013】
即ちボールハウス5の形状は、概ね円柱状であるが、その内壁16には、3本の溝17が形成されている。当該溝17は、内壁16を軸方向の延び、先端の開口部8に至っている。
【0014】
前記した様に、バブル発生装置1は、ボールペンのペン先チップに似た構造をしており、ボール3は、ボールハウス5内に収納されている。そしてボール3の一部は、ボールハウス5の先端に設けられた開口部8に嵌まり込み、ボール3の一部は、開口部8から露出している。
またボール3は、ボールハウス5の開口部8に嵌まり込んだ状態であるから、ボール3は、開口部8の大部分を占める円弧状の部位と接している。
【0015】
一方、前記した様に、ボールハウス5の内壁16に3本の溝17が形成されており、当該溝17は、先端の開口部8に至っているから、溝17の端部は、開口部8の開口端に開いている。そのため開口部8の形状は、図2、図8(a)の様に、円の一部に3か所、欠落部20が形成された状態となっている。
従って、ボール3の一部が開口部8に嵌まり込んだ状態においては、ボール3は、開口部8の大部分を占める円弧状の部位と接しているが、欠落部20ではボール3は、開口部8と接していない。そのため欠落部20は、ボール3によって封鎖されず、欠落部20を通してボールハウス5の内外が連通している。
【0016】
本実施形態のバブル発生装置1は、図9の様に、水槽等の壁面に1個又は複数個取付けられ、先端側を液中(水中等)の臨ませて使用される。そして後端側のバック孔6から空気等の気体、または気体と液体(水等)の混合物を所定の圧力で導入し、先端の開口部8の欠落部20から液中に気体を噴射する。
即ち気体又は気体と液体の混合物は、バック孔6からバブル発生装置1内に入り、ボールハウス5の内壁16とボール3の間を通過し、先端の開口部8の欠落部20から液中に噴射される。
気体は、小孔たる欠落部20から放出されるので、細かい気泡となって液中に開放されることとなる。
また本実施形態のバブル発生装置1のバック孔6にマイクロバブルを含む液を通すことにより、バブル発生装置1で気泡径をさらに小さくすることもでき、ナノバブル化することもできる。
【0017】
気泡の大きさ等は、開口部8の径や、欠落部20の大きさ、溝17の数や深さ、ボールハウス5の内壁16とボール3の隙間等によって変わる。
【0018】
開口部8の径、欠落部20の大きさ、溝17の数や深さ、ボールハウス5の内壁16とボール3の隙間等は、ボールペンのペン先チップを製造する際の製造技術を応用することによって精密に加工することができる。
次に、バブル発生装置1を製造する工程について説明する。以下の工程は、ボールペンのペン先チップを製造する際の精密加工技術を応用したものである。
【0019】
本発明で採用するバブル発生装置1は図7(a)の様に所定長さに切断された線材21を素材として加工される。
そして、バブル発生装置1を製造する最初の工程では、所定の長さに切断された線材21に、図示しないドリルでバック孔6を設ける。
【0020】
次に図7(c)の様に線材21の外周加工がなされ、先端側にテーパ22が形成される。
そして線材21の先端側、即ちテーパ22が設けられた側の頂面から図示しないドリルを挿入し、ボールハウス5となるフロント穴23が設けられる。
【0021】
次にこのようなバック孔6と、フロント穴23を備えた線材21に、図7(e)の様にドリル24で導通孔(バック孔6の先端)となる細孔26を加工する。具体的には、ドリル24の錐先をフロント穴23の中心部に当て、バック孔6の本体部25まで貫通する。
【0022】
以上の様に細孔26を加工した後、図7(f)の様に座面10の溝11及び内壁16の溝17を設ける。
座面10の溝11及び内壁16の溝17は、ブローチ加工によって形成する。即ち図8の様に、断面形状が放射状であり、3条の切れ刃31を有するブローチ30をフロント穴23に挿通し、バック孔6の本体部23まで抜き通す。
ここでブローチ30の最も外径の大きい部位は、フロント穴23の内径よりも僅かに大きい。そのためブローチ30を挿通することによって、フロント穴23の内周面が削れ、フロント穴23の内周面に、3条の溝17が形成される。
また座面10には、放射条の溝11が形成される。
【0023】
その後、図7(g)の様に、フロント穴23にボール3を挿入する。そして最後にフロント穴23の開口端をかしめ、フロント穴23の開口端を窄める。
【0024】
その結果、ボールハウス5(フロント穴23)内にボール3が収納され、開口部8からボール3の一部が露出したバブル発生装置1が完成する。
バブル発生装置1の内部には、バック孔6から欠落部20に至る一連の流路が形成されている。
【0025】
以上説明した実施形態では、溝11,17の数は、3本であったが、溝11,17の数は任意である。また溝11,17の断面形状も任意であり、三角形状や半円状であってもよい。
【0026】
また上記した実施形態のバブル発生装置1では、内壁16の溝17は、バブル発生装置1の軸線と平行に延びているが、螺旋状に延びるものであってもよい。
即ち前記したバブル発生装置1では、内壁16の溝17が直線的であったが、図10,11に示すバブル発生装置40の様に、溝41が曲線的であってもよい。
内壁16の溝41を螺旋形状とすることにより、後端側のバック孔6から空気等の気体、または気体と液体(水等)の混合物を所定の圧力で導入したとき、ボールハウス5内で気体と液体等の流れに旋回が発生し、気泡を細かく粉砕して気泡径を小さくする。
同様の作用効果を期待してバック孔6の内壁に、螺旋状の溝やリブを設けてもよい。
【0027】
またバブル発生装置に対する気体や液体の導入方向を工夫して旋回流が発生しやすい構造とすることも考えられる。
図12に示すバブル発生装置45では、ボールハウス5内及びバック孔6内に螺旋状の溝46が形成されている。ボールハウス5内及びバック孔6内に設けられた溝46の螺旋の方向は同一である。
【0028】
また図12に示すバブル発生装置45では、ボールハウス5に気体導入管47が接続されている。気体導入管47は、図12(c)の様に、ボールハウス5に対して接線方向に接続されている。気体導入管47の向きは、ボールハウス5内の螺旋状の溝46の方向と同一方向である。
【0029】
図12に示すバブル発生装置45では、バック孔6側から水等の液体を加圧状態で導入する。
一方、空気等の気体は、気体導入管47を通じて、ボールハウス5に接線方向に導入される。
バック孔6から導入された液体は、バック孔6内に設けられた螺旋状の溝(旋回流発生手段)46に沿って旋回的に流れる。
そして液体は、旋回流を維持した状態で、ボールハウス5に流れ込む。一方、ボールハウス5内には、気体が接線方向に導入されている。そのため気体の流れによって液体の旋回流が加速され、混入されて気体の粒子が微小化する。そして微小化された気体は、先端の開口部8の欠落部20から液中に噴射される。
【0030】
図12に示した実施形態では、気体をボールハウス5に導入したが、バック孔6内に導入してもよい。
図13は、バック孔6内に気体導入管47を接続した例を示している。気体導入管47は、図13(e)の様に、バック孔6に対して接線方向に接続されている。気体導入管化7の向きは、バック孔6内の螺旋状の溝46の方向と同一方向である。
【0031】
また本実施形態のバブル発生装置45によってマイクロバブルを粉砕し、気泡をナノバブル化することもできる。
【0032】
前述した実施形態では、断面形状が放射状のブローチ30を使用して溝17を形成したが、図14の様な断面形状が多角形のブローチ48を採用してもよい。図14に示した実施形態では、断面形状が三角形のブローチ48をしている。
断面形状が三角形のブローチ48を採用した場合は、図14(c)の様に溝49の断面形状は三角形となる。また図14(d)の様に座面10の溝が無くなり導通孔(バック孔6の先端)52の開口形状が三角形となる。
【0033】
上記したバブル発生装置1,45は、いずれも先端部の外形形状が円錐形状であるが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、円柱形であったり、角錐状であってもよい。
【0034】
本発明のバブル発生装置1,45は、単独で微小な気泡を発生させることもできるが、他の気泡発生装置と組み合わせてより微細な気泡を作ることもできる。
例えば図15に示す様に、他の気泡発生装置50の後段部に本発明のバブル発生装置51を取り付けた状態を示している。
バブル発生装置51は、前記した実施形態と略同一の構成であるが、バック孔53がテーパ形状である点が先の実施形態と異なる。またバブル発生装置51は、バック孔53に螺旋溝55が形成されている。
前段のバブル発生装置51は、気泡が混入した液体を噴射するものであり、螺旋溝55に沿った方向に気泡と液体の混合物が導入される。そして本発明のバブル発生装置51内で気泡が細分化され、先端の開口部8の欠落部20から液中に噴射される。
即ち本実施形態のバブル発生装置51によってマイクロバブルを粉砕し、気泡をナノバブル化することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 バブル発生装置
2 本体部
3 ボール
5 ボールハウス
8 開口部
10 座面
11 溝
12,13,15 放射辺
16 内壁
17 溝
20 欠落部
30 ブローチ
40 バブル発生装置
41 溝
45 バブル発生装置
47 気体導入管
48 ブローチ
49 溝
51 バブル発生装置
55 螺旋溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボールと本体部とを有し、前記本体部は、前記ボールを収納するボールハウスと、前記ボールハウスと外部とを連通し、前記ボールの一部が嵌まり込むことが可能な開口部と、ボールハウスの内側面から前記開口部に渡って形成された溝を有し、前記ボールは本体部のボールハウス内にあり、前記ボールの一部が開口部に嵌まり込んだ状態においては前記溝を介してボールハウスの内外が連通することを特徴とするバブル発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−20096(P2011−20096A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169402(P2009−169402)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(390039734)株式会社サクラクレパス (211)
【Fターム(参考)】