説明

バリア性積層体、ガスバリアフィルムおよびこれらを用いたデバイス、ならびに、バリア性積層体の製造方法

【課題】高いバリア性を有するガスバリア性積層体を提供する。
【解決手段】少なくとも1層の有機層と、少なくとも1層の無機層を有し、有機層は、SP炭素のみからなる多環性芳香族骨格を有する(メタ)アクリレートを含む重合性組成物を硬化させてなることを特徴とする、バリア性積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリア性積層体、ガスバリアフィルムおよびこれらを用いたデバイスに関する。また、バリア性積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、有機層を有するガスバリアフィルムが種々検討されている(例えば、特許文献1)。また、特許文献2には、カルドポリマーを平坦化層に用いたガスバリアフィルムが開示されている。ここで、ガスバリアフィルムにおける、バリア性能の要求は、年々高くなっている。
また、ガスバリアフィルムをデバイスの基板に用いる場合、表面の平滑性が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−278167号公報
【特許文献2】特開2004−299230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記課題を解決することを目的としたものであって、より高いバリア性能を有するガスバリア性積層体を提供することを目的とする。また、表面が平滑化されたバリア性積層体を提供する。さらに、前記バリア性積層体を用いたガスバリアフィルムに関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題のもと、発明者が鋭意検討を行った結果、有機層に、多環性芳香族骨格を有する(メタ)アクリレートであって、該多環性芳香族骨格を構成する炭素原子が、いずれも、SP炭素原子である(メタ)アクリレートを含む重合性組成物を硬化させてなるものを用いることにより、上記課題を解決しうることを見出した。具体的には、下記手段により、上記課題を解決しうることを見出した。
(1)少なくとも1層の有機層と、少なくとも1層の無機層を有し、有機層は、多環性芳香族骨格を有する(メタ)アクリレートであって、該多環性芳香族骨格を構成する炭素原子が、いずれも、SP炭素原子である(メタ)アクリレートを含む重合性組成物を硬化させてなることを特徴とする、バリア性積層体。
(2)前記多環性芳香族骨格を有する(メタ)アクリレートが、下記一般式(1)または(2)で表される、(1)に記載のバリア性積層体。
一般式(1)
【化1】

一般式(2)
【化2】

(一般式(1)および(2)中、RおよびRは、それぞれ、置換基を表す。mおよびnは、それぞれ0〜5の整数であり、m≧2のとき、Rは、同じでも異なっていてもよく、n≧2のとき、Rは、同じでも異なっていてもよい。但し、一般式(1)または(2)で表される化合物は、1分子中に1つ以上のアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を含む。)
(3)多環性芳香族骨格を有する(メタ)アクリレートが、2官能以上であることを特徴とする、(1)または(2)に記載のバリア性積層体。
(4)前記重合性組成物が、さらに、3官能以上の(メタ)アクリレートを含有する、(1)〜(3)のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
(5)無機層が、金属酸化物からなる、(1)〜(4)のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
(6)無機層が、スパッタリング法で成膜されたものである、(1)〜(5)のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
(7)無機層が、アルミニウムおよび/またはケイ素の酸化物もしくは窒化物である、(1)〜(6)のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
(8)少なくとも2層の有機層と、少なくとも2層の無機層とが、交互に積層している、(1)〜(7)のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
(9)支持体上に、(1)〜(8)のいずれか1項に記載のバリア性積層体を設けたガスバリアフィルム。
(10)(9)に記載のガスバリアフィルムを基板に用いたデバイス。
(11)(9)に記載のガスバリアフィルムを用いて封止したデバイス。
(12)(1)〜(8)のいずれか1項に記載のバリア性積層体を用いて封止したデバイス。
(13)デバイスが、電子デバイスである、(10)〜(12)のいずれか1項に記載のデバイス。
(14)デバイスが、有機EL素子である、(10)〜(12)のいずれか1項に記載のデバイス。
(15)(1)〜(8)のいずれか1項に記載のバリア性積層体の製造方法であって、無機層をプラズマプロセスによって設けることを含む、製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、バリア性能が向上したバリア性積層体を提供することが可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。また、本発明における有機EL素子とは、有機エレクトロルミネッセンス素子のことをいう。本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタクリレートの両方を含む意味で使用される。
【0008】
<バリア性積層体>
本発明のバリア性積層体は、少なくとも1層の有機層と少なくとも1層の無機層を含むものであり、好ましくは有機層の表面に無機層を設けた構造を有するものであり、より好ましくは、少なくとも2層の有機層と少なくとも2層の無機層とが交互に積層した構造を有するものである。また、本発明におけるバリア性積層体は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、バリア性積層体を構成する組成が膜厚方向に有機領域と無機領域が連続的に変化するいわゆる傾斜材料層を含んでいてもよい。前記傾斜材料の例としては、キムらによる論文「Journal of Vacuum Science and Technology A Vol. 23 p971−977(2005 American Vacuum Society) ジャーナル オブ バキューム サイエンス アンド テクノロジー A 第23巻 971頁〜977ページ(2005年刊、アメリカ真空学会)」に記載の材料や、米国公開特許2004−46497号明細書に開示してあるように有機領域と無機領域が界面を持たない連続的な層等が挙げられる。
バリア性積層体を構成する層数に関しては特に制限はないが、典型的には2層〜30層が好ましく、3層〜20層がさらに好ましい。また、有機層および無機層以外の他の構成層を含んでいてもよい。
【0009】
(有機層)
本発明における有機層は、多環性芳香族骨格を有する(メタ)アクリレートであって、該多環性芳香族骨格を構成する炭素原子が、いずれも、SP炭素原子である(メタ)アクリレート(以下、「SP炭素のみからなる多環性芳香族骨格を有する(メタ)アクリレート」ということがある)を含む重合性組成物を硬化させてなる。
本発明における多環性芳香族骨格としては、ビフェニル骨格、ナフタレン骨格、ビナフチル骨格、アズレン骨格、ビフェニレン骨格、アセナフチレン骨格、フェナントレン骨格、アントラセン骨格、トリフェニレン骨格、ピレン骨格、クリセン骨格、ナフタセン骨格、ピセン骨格、ペリレン骨格、ベンゾピレン骨格が好ましい例として挙げられる。
【0010】
本発明におけるSP炭素のみからなる多環性芳香族骨格を有する(メタ)アクリレートは、1官能であっても、2官能以上であってもよいが、好ましくは2官能以上であり、さらに好ましくは2官能である。2官能以上の化合物を用いることにより、より高いバリア性能を達成することが可能になる。
さらに、本発明におけるSP炭素のみからなる多環性芳香族骨格を有する(メタ)アクリレートは、多環性芳香族骨格に(メタ)アクリロイル基が直接に結合していてもよいし、連結基を介して結合していても良い。好ましくは、2価の連結基を介して結合している場合である。ここで、2価の連結基の例として、アルキレン基(例えば、1,3−プロピレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロピレン基、1,6−ヘキシレン基、1,9−ノニレン基、1,12−ドデシレン基、1,16−ヘキサデシレン基等)、アリーレン基(例えば、フェニレン基、ナフチレン基)、エーテル基、イミノ基、カルボニル基、スルホニル基、およびこれらの2価基が複数個直列に結合した2価残基(例えば、ポリエチレンオキシ基、ポリプロピレンオキシ基、プロピオニルオキシエチレン基、ブチロイルオキシプロピレン基、カプロイルオキシエチレン基、カプロイルオキシブチレン基、2,2−プロピレンフェニレン基等)を挙げることができる。これらの中ではアルキレン基、アリーレン基が好ましい。連結基は置換基を有してもよく、連結基を置換することのできる置換基の例としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アシル基(例えば、アセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基等)、スルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基等)、スルフィニル基(メタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基等)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、硫黄原子等を含み、脂肪族ヘテロ環基であってもヘテロアリール基であってもよく、例えばイミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、チエニル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、カルバゾリル基、アゼピニル基等)等が挙げられる。これらの置換基は更に置換されていてもよい。
また、SP炭素のみからなる多環性芳香族骨格を有する(メタ)アクリレートは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、他の置換基を含んでいても良い。
本発明におけるSP炭素のみからなる多環性芳香族骨格を有する(メタ)アクリレートの分子量は、好ましくは、100〜1000であり、より好ましくは200〜500である。
【0011】
本発明におけるSP炭素のみからなる多環性芳香族骨格を有する(メタ)アクリレートは、下記一般式(1)または(2)で表されることが好ましい。
【0012】
一般式(1)
【化3】

一般式(2)
【化4】

(一般式(1)および(2)中、RおよびRは、それぞれ、置換基を表す。mおよびnは、それぞれ0〜5の整数であり、m≧2のとき、Rは、同じでも異なっていてもよく、n≧2のとき、Rは、同じでも異なっていてもよい。但し、一般式(1)または(2)で表される化合物は、1分子中に1つ以上のアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を含む。)
ここで、RおよびRのうち、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を含まない置換基はアルキル基、アリール基、アルコキシ基などが挙げられるが、水素原子が好ましい。
およびRのうち、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を含む置換基は、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基であってもよいが、2価の連結基とアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基からなる基であることが好ましい。2価の連結基としては、上述した2価の連結基が好ましい。
mおよびnは、それぞれ、2以上であることが好ましく、2であることがより好ましい。
このような化合物を採用することにより、よりバリア性能の高いバリア性積層体が得られる。
【0013】
以下に本発明で好ましく用いられる、SP炭素のみからなる多環性芳香族骨格を有する(メタ)アクリレートを例示するが、本発明はこれらに限定されるものではないことは言うまでも無い。
【化5】

【0014】
本発明における有機層は、さらに好ましくは、本発明におけるSP炭素のみからなる多環性芳香族骨格を有する(メタ)アクリレートと、他の(メタ)アクリレートを含む重合性組成物を硬化してなることが好ましい。他の(メタ)アクリレートを併用することにより、より高いバリア性能が得られる。
他の(メタ)アクリレートとしては、1官能であっても、2官能以上であってもよく、3官能以上が好ましく、3〜6官能がより好ましい。3官能以上の(メタ)アクリレートを採用することにより、より高いバリア性能が得られる。
【0015】
他の(メタ)アクリレート系化合物としては、(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートやポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が好ましい。以下に、本発明で好ましく用いられる(メタ)アクリレート系化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【化6】

【0016】
【化7】

【0017】
【化8】

【0018】
【化9】

【0019】
【化10】

【0020】
【化11】

【0021】
本発明の重合性組成物に含まれる重合性モノマー成分は、50〜100重量%がSP炭素のみからなる多環性芳香族骨格を有する(メタ)アクリレートであり、0〜50重量%が他の(メタ)アクリレートであることが好ましく、70〜100重量%がSP炭素のみからなる多環性芳香族骨格を有する(メタ)アクリレートであり、0〜30重量%が他の(メタ)アクリレートであることがより好ましい。
また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、他の重合性モノマーを含んでいてもよい。
【0022】
(酸性モノマー)
本発明で用いる重合性組成物には、酸性モノマーが含まれていても良い。酸性モノマーを含めることにより、層間密着性が向上する。酸性モノマーとは、カルボン酸、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸等の酸性基を含有するモノマーをいう。本発明で用いる酸性モノマーは、カルボン酸基またはリン酸基を含有するモノマーが好ましく、カルボン酸基またはリン酸基を含有する(メタ)アクリレートがより好ましく、リン酸エステル基を有する(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
【0023】
(リン酸エステル基を有する(メタ)アクリレート)
リン酸エステル基を有する(メタ)アクリレートとしては、下記一般式(P)で表される化合物を含んでいることがより好ましい。リン酸エステル基を有する(メタ)アクリレートを含むことにより、無機層との密着が良くなる。
一般式(P)
【化12】

(一般式(P)中、ZはAc−O−X−、重合性基を有しない置換基または水素原子を表し、ZはAc−O−X−、重合性基を有しない置換基または水素原子を表し、Ac、AcおよびAcはそれぞれアクリロイル基またはメタクリロイル基を表し、X、XおよびXはそれぞれ2価の連結基を表す。
一般式(P)で表される化合物は、以下の一般式(P−1)で表される単官能モノマー、以下の一般式(P−2)で表される2官能モノマー、および以下の一般式(P−3)で表される3官能モノマーが好ましい。
一般式(P−1)
【化13】

一般式(P−2)
【化14】

一般式(P−3)
【化15】

【0024】
Ac、Ac、Ac、X、XおよびXの定義は、一般式(P)における定義と同じである。一般式(P−1)および(P−2)において、Rは重合性基を有しない置換基または水素原子を表し、Rは重合性基を有しない置換基または水素原子を表す。
一般式(P)、(P−1)〜(P−3)において、X、XおよびXは、一般式(2)におけるL1と同様の基である。X、XおよびXとして好ましいのは、アルキレン基、またはアルキレンオキシカルボニルアルキレン基である。
一般式(P)、(P−1)〜(P−3)において、重合性基を有しない置換基としては、例えばアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた基などを挙げることができる。好ましいのはアルキル基である。
アルキル基の炭素数は、1〜12が好ましく、1〜9がより好ましく、1〜6がさらに好ましい。アルキル基の具体例として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が挙げられる。アルキル基は、直鎖状であっても分枝状であっても環状であっても構わないが、好ましいのは直鎖アルキル基である。アルキル基は、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基などで置換されていてもよい。
アリール基の炭素数は、6〜14が好ましく、6〜10がより好ましい。アリール基の具体例として、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基が挙げられる。アリール基は、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基などで置換されていてもよい。
本発明では、一般式(P)で表されるモノマーを1種類だけ用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、組み合わせて用いる場合は、一般式(P−1)で表される単官能モノマー、一般式(P−2)で表される2官能モノマー、および一般式(P−3)で表される3官能モノマーのうちの2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明では、上記のリン酸エステル基を有する重合性モノマー類として、日本化薬(株)製のKAYAMERシリーズ、ユニケミカル(株)製のPhosmerシリーズ等、市販されている化合物をそのまま用いてもよく、新たに合成された化合物を用いてもよい。
【0025】
以下に、本発明で好ましく用いられる酸性モノマーの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0026】
【化16】

【0027】
(重合開始剤)
本発明における重合性組成物は、重合開始剤を含んでいてもよい。光重合開始剤を用いる場合、その含量は、重合性化合物の合計量の0.1モル%以上であることが好ましく、0.5〜2モル%であることがより好ましい。このような組成とすることにより、活性成分生成反応を経由する重合反応を適切に制御することができる。光重合開始剤の例としてはチバ・スペシャルティー・ケミカルズ社から市販されているイルガキュア(Irgacure)シリーズ(例えば、イルガキュア651、イルガキュア754、イルガキュア184、イルガキュア2959、イルガキュア907、イルガキュア369、イルガキュア379、イルガキュア819など)、ダロキュア(Darocure)シリーズ(例えば、ダロキュアTPO、ダロキュア1173など)、ランベルティ(Lamberti)社から市販されているエザキュア(Ezacure)シリーズ(例えば、エザキュアTZM、エザキュアTZT、エザキュアKTO46など)が挙げられる。
【0028】
(有機層の形成方法)
有機層の形成方法としては、特に定めるものではないが、例えば、溶液塗布法や真空成膜法により形成することができる。溶液塗布法としては、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、スライドコート法、或いは、米国特許第2681294号明細書に記載のホッパ−を使用するエクストル−ジョンコート法により塗布することができる。真空成膜法としては、特に制限はないが、蒸着、プラズマCVD等の成膜方法が好ましい。本発明においてはポリマーを溶液塗布しても良いし、特開2000−323273号公報、特開2004−25732号公報に開示されているような無機物を含有するハイブリッドコーティング法を用いてもよい。
【0029】
本発明では、通常、重合性化合物を含む組成物を、光照射して硬化させるが、照射する光は、通常、高圧水銀灯もしくは低圧水銀灯による紫外線である。照射エネルギーは0.1J/cm以上が好ましく、0.5J/cm以上がより好ましい。本発明で用いるような(メタ)アクリレートは、空気中の酸素によって重合阻害を受けるため、重合時の酸素濃度もしくは酸素分圧を低くすることが好ましい。窒素置換法によって重合時の酸素濃度を低下させる場合、酸素濃度は2%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましい。減圧法により重合時の酸素分圧を低下させる場合、全圧が1000Pa以下であることが好ましく、100Pa以下であることがより好ましい。また、100Pa以下の減圧条件下で0.5J/cm以上のエネルギーを照射して紫外線重合を行うのが特に好ましい。
【0030】
本発明における有機層は、平滑で、膜硬度が高いことが好ましい。有機層を構成する重合性モノマーの重合率は85%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、92%以上であることが特に好ましい。ここでいう重合率とは重合性組成物中の全ての重合性基(例えば、アクリロイル基およびメタクリロイル基)のうち、反応した重合性基の比率を意味する。重合率は赤外線吸収法によって定量することができる。
【0031】
有機層の膜厚については特に限定はないが、薄すぎると膜厚の均一性を得ることが困難になるし、厚すぎると外力によりクラックを発生してバリア性が低下する。かかる観点から、有機層の厚みは50nm〜2000nmが好ましく、200nm〜1500nmがより好ましい。
また、有機層は先に記載したとおり平滑であることが好ましい。有機層の平滑性は1μm角の平均粗さ(Ra値)として1nm未満が好ましく、0.5nm未満であることがより好ましい。有機層の表面にはパーティクル等の異物、突起が無いことが要求される。このため、有機層の成膜はクリーンルーム内で行われることが好ましい。クリーン度はクラス10000以下が好ましく、クラス1000以下がより好ましい。
有機層の硬度は高いほうが好ましい。有機層の硬度が高いと、無機層が平滑に成膜されその結果としてバリア能が向上することがわかっている。有機層の硬度はナノインデンテーション法に基づく微小硬度として表すことができる。有機層の微小硬度は100N/mm以上であることが好ましく、150N/mm以上であることがより好ましい。
【0032】
(無機層)
無機層は、通常、金属化合物からなる薄膜の層である。無機層の形成方法は、目的の薄膜を形成できる方法であればいかなる方法でも用いることができる。例えば、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的気相成長法(PVD)、種々の化学的気相成長法(CVD)、めっきやゾルゲル法等の液相成長法がある。無機層に含まれる成分は、上記性能を満たすものであれば特に限定されないが、例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属酸化窒化物または金属酸化炭化物であり、Si、Al、In、Sn、Zn、Ti、Cu、CeおよびTaから選ばれる1種以上の金属を含む、酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物または酸化炭化物などを好ましく用いることができる。これらの中でも、Si、Al、In、Sn、ZnおよびTiから選ばれる金属の酸化物、窒化物または酸化窒化物が好ましく、特にSiまたはAlの金属酸化物、窒化物または酸化窒化物が好ましい。これらは、副次的な成分として他の元素を含有してもよい。
本発明により形成される無機層の平滑性は、1μm角の平均粗さ(Ra値)として1nm未満であることが好ましく、0.5nm以下がより好ましい。
無機層の成膜はクリーンルーム内で行われることが好ましい。クリーン度はクラス10000以下が好ましく、クラス1000以下がより好ましい。
【0033】
無機層の厚みに関しては特に限定されないが、1層に付き、通常、5〜500nmの範囲内であり、好ましくは10〜200nmである。無機層は複数のサブレイヤーから成る積層構造であってもよい。この場合、各サブレイヤーが同じ組成であっても異なる組成であってもよい。また、上述したとおり、米国公開特許2004−46497号明細書に開示してあるように有機層との界面が明確で無く、組成が膜厚方向で連続的に変化する層であってもよい。
【0034】
(有機層と無機層の積層)
有機層と無機層の積層は、所望の層構成に応じて有機層と無機層を順次繰り返し製膜することにより行うことができる。無機層を、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法などの真空製膜法で形成する場合、有機層も前記フラッシュ蒸着法のような真空製膜法で形成することが好ましい。バリア性積層体を作製する間、途中で大気圧に戻すことなく、常に1000Pa以下の真空中で有機層と無機層を積層することが特に好ましい。圧力は100Pa以下であることがより好ましく、50Pa以下であることがより好ましく、20Pa以下であることがさらに好ましい。
特に、本発明は、少なくとも2層の有機層と少なくとも2層の無機層を交互に積層した場合に、高いバリア性を発揮することができる。交互積層は支持体側から有機層/無機層/有機層/無機層の順に積層していても、無機層/有機層/無機層/有機層の順に積層していても良い。
【0035】
(機能層)
本発明のデバイスにおいては、バリア性積層体上、もしくはその他の位置に、機能層を有していても良い。機能層については、特開2006−289627号公報の段落番号0036〜0038に詳しく記載されている。これら以外の機能層の例としてはマット剤層、保護層、耐溶剤層、帯電防止層、平滑化層、密着改良層、遮光層、反射防止層、ハードコート層、応力緩和層、防曇層、防汚層、被印刷層、易接着層等が挙げられる。
【0036】
バリア性積層体の用途
本発明のバリア性積層体は、通常、支持体の上に設けるが、この支持体を選択することによって、様々な用途に用いることができる。支持体には、基材フィルムのほか、各種のデバイス、光学部材等が含まれる。具体的には、本発明のバリア性積層体はガスバリアフィルムのバリア層として用いることができる。また、本発明のバリア性積層体およびガスバリアフィルムは、バリア性を要求するデバイスの封止にも用いることができる。本発明のバリア性積層体およびガスバリアフィルムは、光学部材にも適用することができる。以下、これらについて詳細に説明する。
【0037】
<ガスバリアフィルム>
ガスバリアフィルムは、基材フィルムと、該基材フィルム上に形成されたバリア性積層体とを有する。ガスバリアフィルムにおいて、本発明のバリア性積層体は、基材フィルムの片面にのみ設けられていてもよいし、両面に設けられていてもよい。本発明のバリア性積層体は、基材フィルム側から無機層、有機層の順に積層していてもよいし、有機層、無機層の順に積層していてもよい。本発明のバリア性積層体の最上層は無機層でも有機層でもよい。
また、本発明におけるガスバリアフィルムは大気中の酸素、水分、窒素酸化物、硫黄酸化物、オゾン等を遮断する機能を有するバリア層を有するフィルム基板である。
ガスバリアフィルムを構成する層数に関しては特に制限はないが、典型的には2層〜30層が好ましく、3層〜20層がさらに好ましい。
ガスバリアフィルムはバリア性積層体、基材フィルム以外の構成成分(例えば、易接着層等の機能性層)を有しても良い。機能性層はバリア性積層体の上、バリア性積層体と基材フィルムの間、基材フィルム上のバリア性積層体が設置されていない側(裏面)のいずれに設置してもよい。
【0038】
(プラスチックフィルム)
本発明におけるガスバリアフィルムは、通常、基材フィルムとして、プラスチックフィルムを用いる。用いられるプラスチックフィルムは、有機層、無機層等のバリア性積層体を保持できるフィルムであれば材質、厚み等に特に制限はなく、使用目的等に応じて適宜選択することができる。前記プラスチックフィルムとしては、具体的には、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン樹脂、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィルンコポリマー、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、フルオレン環変性ポリエステル樹脂、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0039】
本発明のガスバリアフィルムを後述する有機EL素子等のデバイスの基板として使用する場合は、プラスチックフィルムは耐熱性を有する素材からなることが好ましい。具体的には、ガラス転移温度(Tg)が100℃以上および/または線熱膨張係数が40ppm/℃以下で耐熱性の高い透明な素材からなることが好ましい。Tgや線膨張係数は、添加剤などによって調整することができる。このような熱可塑性樹脂として、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN:120℃)、ポリカーボネート(PC:140℃)、脂環式ポリオレフィン(例えば日本ゼオン(株)製 ゼオノア1600:160℃)、ポリアリレート(PAr:210℃)、ポリエーテルスルホン(PES:220℃)、ポリスルホン(PSF:190℃)、シクロオレフィンコポリマー(COC:特開2001−150584号公報の化合物:162℃)、ポリイミド(例えば三菱ガス化学(株)ネオプリム:260℃)、フルオレン環変性ポリカーボネート(BCF−PC:特開2000−227603号公報の化合物:225℃)、脂環変性ポリカーボネート(IP−PC:特開2000−227603号公報の化合物:205℃)、アクリロイル化合物(特開2002−80616号公報の化合物:300℃以上)が挙げられる(括弧内はTgを示す)。特に、透明性を求める場合には脂環式ポレオレフィン等を使用するのが好ましい。
【0040】
本発明のガスバリアフィルムを偏光板と組み合わせて使用する場合、ガスバリアフィルムのバリア性積層体がセルの内側に向くようにし、最も内側に(素子に隣接して)配置することが好ましい。このとき偏光板よりセルの内側にガスバリアフィルムが配置されることになるため、ガスバリアフィルムのレターデーション値が重要になる。このような態様でのガスバリアフィルムの使用形態は、レターデーション値が10nm以下の基材フィルムを用いたガスバリアフィルムと円偏光板(1/4波長板+(1/2波長板)+直線偏光板)を積層して使用するか、あるいは1/4波長板として使用可能な、レターデーション値が100nm〜180nmの基材フィルムを用いたガスバリアフィルムに直線偏光板を組み合わせて用いるのが好ましい。
【0041】
レターデーションが10nm以下の基材フィルムとしてはセルローストリアセテート(富士フイルム(株):富士タック)、ポリカーボネート(帝人化成(株):ピュアエース、(株)カネカ:エルメック)、シクロオレフィンポリマー(JSR(株):アートン、日本ゼオン(株):ゼオノア)、シクロオレフィンコポリマー(三井化学(株):アペル(ペレット)、ポリプラスチック(株):トパス(ペレット))ポリアリレート(ユニチカ(株):U100(ペレット))、透明ポリイミド(三菱ガス化学(株):ネオプリム)等を挙げることができる。
また1/4波長板としては、上記のフィルムを適宜延伸することで所望のレターデーション値に調整したフィルムを用いることができる。
【0042】
本発明のガスバリアフィルムは有機EL素子等のデバイスとして利用されることから、プラスチックフィルムは透明であること、すなわち、光線透過率が通常80%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。光線透過率は、JIS−K7105に記載された方法、すなわち積分球式光線透過率測定装置を用いて全光線透過率および散乱光量を測定し、全光線透過率から拡散透過率を引いて算出することができる。
本発明のガスバリアフィルムをディスプレイ用途に用いる場合であっても、観察側に設置しない場合などは必ずしも透明性が要求されない。したがって、このような場合は、プラスチックフィルムとして不透明な材料を用いることもできる。不透明な材料としては、例えば、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、公知の液晶ポリマーなどが挙げられる。
本発明のガスバリアフィルムに用いられるプラスチックフィルムの厚みは、用途によって適宜選択されるので特に制限がないが、典型的には1〜800μmであり、好ましくは10〜200μmである。これらのプラスチックフィルムは、透明導電層、プライマー層等の機能層を有していても良い。機能層については、上述したもののほか、特開2006−289627号公報の段落番号0036〜0038に記載されているものを好ましく採用できる。
【0043】
<デバイス>
本発明のバリア性積層体およびガスバリアフィルムは空気中の化学成分(酸素、水、窒素酸化物、硫黄酸化物、オゾン等)によって性能が劣化するデバイスに好ましく用いることができる。前記デバイスの例としては、例えば、有機EL素子、液晶表示素子、薄膜トランジスタ、タッチパネル、電子ペーパー、太陽電池等)等の電子デバイスを挙げることができ有機EL素子に好ましく用いられる。
【0044】
本発明のバリア性積層体は、また、デバイスの膜封止に用いることができる。すなわち、デバイス自体を支持体として、その表面に本発明のバリア性積層体を設ける方法である。バリア性積層体を設ける前にデバイスを保護層で覆ってもよい。
【0045】
本発明のガスバリアフィルムは、デバイスの基板や固体封止法による封止のためのフィルムとしても用いることができる。固体封止法とはデバイスの上に保護層を形成した後、接着剤層、ガスバリアフィルムを重ねて硬化する方法である。接着剤は特に制限はないが、熱硬化性エポキシ樹脂、光硬化性アクリレート樹脂等が例示される。
【0046】
(有機EL素子)
ガスバリアフィルム用いた有機EL素子の例は、特開2007−30387号公報に詳しく記載されている。
【0047】
(液晶表示素子)
反射型液晶表示装置は、下から順に、下基板、反射電極、下配向膜、液晶層、上配向膜、透明電極、上基板、λ/4板、そして偏光膜からなる構成を有する。本発明におけるガスバリアフィルムは、前記透明電極基板および上基板として使用することができる。カラー表示の場合には、さらにカラーフィルター層を反射電極と下配向膜との間、または上配向膜と透明電極との間に設けることが好ましい。透過型液晶表示装置は、下から順に、バックライト、偏光板、λ/4板、下透明電極、下配向膜、液晶層、上配向膜、上透明電極、上基板、λ/4板および偏光膜からなる構成を有する。このうち本発明の基板は、前記上透明電極および上基板として使用することができる。カラー表示の場合には、さらにカラーフィルター層を下透明電極と下配向膜との間、または上配向膜と透明電極との間に設けることが好ましい。液晶セルの種類は特に限定されないが、より好ましくはTN型(Twisted Nematic)、STN型(Super Twisted Nematic)またはHAN型(Hybrid Aligned Nematic)、VA型(Vertically Alignment)、ECB型(Electrically Controlled Birefringence)、OCB型(Optically Compensated Bend)、IPS型(In-Plane Switching)、CPA型(Continuous Pinwheel Alignment)であることが好ましい。
【0048】
(太陽電池)
本発明のガスバリアフィルムは、太陽電池素子の封止フィルムとしても用いることができる。ここで、本発明のガスバリアフィルムは、接着層が太陽電池素子に近い側となるように封止することが好ましい。本発明のガスバリアフィルムが好ましく用いられる太陽電池素子としては、特に制限はないが、例えば、単結晶シリコン系太陽電池素子、多結晶シリコン系太陽電池素子、シングル接合型、またはタンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコン系太陽電池素子、ガリウムヒ素(GaAs)やインジウム燐(InP)等のIII−V族化合物半導体太陽電池素子、カドミウムテルル(CdTe)等のII−VI族化合物半導体太陽電池素子、銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池素子、色素増感型太陽電池素子、有機太陽電池素子等が挙げられる。中でも、本発明においては、上記太陽電池素子が、銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池素子であることが好ましい。
【0049】
(電子ペーパー)
本発明のガスバリアフィルムは、電子ペーパーにも用いることができる。電子ペーパーは反射型電子ディスプレイであり、高精細且つ高コントラスト比を実現することが可能である。
電子ペーパーは、基板上にディスプレイ媒体および該ディスプレイ媒体を駆動するTFTを有する。ディスプレイ媒体としては、従来知られているいかなるディスプレイ媒体でも用いることができる。電気泳動方式、電子粉粒体飛翔方式、荷電トナー方式、エレクトロクロミック方式等のいずれのディスプレイ媒体であっても好ましく用いられるが、電気泳動方式のディスプレイ媒体がより好ましく、なかでもマイクロカプセル型電気泳動方式のディスプレイ媒体が特に好ましい。電気泳動方式のディスプレイ媒体は、複数のカプセルを含むディスプレイ媒体であり、該複数のカプセルのそれぞれが懸濁流体内で移動可能な少なくとも1つの粒子を含む。ここでいう少なくとも1つの粒子は、電気泳動粒子または回転ボールであることが好ましい。また、電気泳動方式のディスプレイ媒体は、第1の面および該第1の面と対向する第2の面を有し、該第1および該第2の面の内の1つの面を介して観察イメージを表示する。
また、基板上に設けられるTFTは、少なくともゲート電極、ゲート絶縁膜、活性層、ソース電極及びドレイン電極を有し、活性層とソース電極の間か活性層とドレイン電極の間の少なくとも一方に、電気的に接続する抵抗層をさらに有する。電子ペーパーは、電圧印加により光の濃淡を生じる。
【0050】
高精細なカラー表示の電子ディスプレイを製造する場合は、アライメント精度を確保するためにカラーフィルター上にTFTを形成することが好ましい。ただし、電流効率が低い通常のTFTで必要な駆動電流を得ようとしてもダウンサイジングに限界があるため、ディスプレイ媒体の高精細化に伴って画素内のTFTが占める面積が大きくなってしまう。画素内のTFTが占める面積が大きくなると、開口率が低下しコントラスト比が低下する。このため、透明なアモルファスIGZO型TFTを用いても、光透過率は100%にはならず、コントラストの低下は避けられない。そこで、例えば特開2009−021554号公報に記載されるようなTFTを用いることにより、画素内のTFTの占める面積を小さくして、開口率とコントラスト比を高くすることができる。また、この種のTFTをカラーフィルター上に直接形成すれば、高精細化も達成することができる。
【0051】
(その他)
その他の適用例としては、特表平10−512104号公報に記載の薄膜トランジスタ、特開平5-127822号公報、特開2002-48913号公報等に記載のタッチパネル等が挙げられる。
【0052】
<光学部材>
本発明のガスバリアフィルムを用いる光学部材の例としては円偏光板等が挙げられる。
(円偏光板)
本発明におけるガスバリアフィルムを基板としλ/4板と偏光板とを積層し、円偏光板を作製することができる。この場合、λ/4板の遅相軸と偏光板の吸収軸とが45°になるように積層する。このような偏光板は、長手方向(MD)に対し45°の方向に延伸されているものを用いることが好ましく、例えば、特開2002−865554号公報に記載のものを好適に用いることができる。
【実施例】
【0053】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0054】
ガスバリアフィルムの作製(1)
1.常圧下での重合による有機層の形成、およびガスバリアフィルムの作成
ポリエチレンナフタレートフィルム(PENフィルム、100μm厚、帝人デュポン社製、商品名:テオネックスQ65FA)を20cm角に裁断し、その平滑面側に以下の手順でバリア層を形成して評価した。
【0055】
(1)第1層(有機層)の形成
PENフィルム上に、下記表に示す組成を有する重合性化合物(20g)、紫外線重合開始剤(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製、商品名:Cibaイルガキュアー907)0.6g、2−ブタノン190gからなる重合性組成物を、ワイヤーバーを用いて塗布し、窒素置換法により酸素濃度が0.1%となったチャンバー内にて高圧水銀ランプの紫外線を照射(積算照射量約1J/cm)して有機層を硬化させ、膜厚が1000nm±50nmの有機層を形成した。
【0056】
(2)第2層(無機層)の形成
スパッタリング装置を用いて、前記有機層の上に無機層(酸化アルミニウム層)を形成した。ターゲットとしてアルミニウムを、放電ガスとしてアルゴンを、反応ガスとして酸素を用いた。製膜圧力は0.1Pa、膜厚は50nmであった。このようにして有機層の上に無機層を積層してガスバリアフィルムを作成した。
得られたガスバリアフィルムの特性値(平滑性(Ra)、水蒸気透過率)を下記表1に示した。
【0057】
<カルシウム法による水蒸気透過率の測定(バリア性能)>
G.NISATO、P.C.P.BOUTEN、P.J.SLIKKERVEERらSID Conference Record of the International Display Research Conference 1435-1438頁に記載の方法を用いて水蒸気透過率(g/m/day)を測定した。このときの温度は40℃、相対湿度は90%とした。結果を以下のとおり評価した。
×:0.005g/m/day以上
○:0.001g/m/day以上0.005g/m/day未満
◎:0.001g/m/day未満
【0058】
<平滑性(Ra)の測定>
原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、上記(2)で作製した無機層の表面の平滑性を測定した。このとき、平滑性は1μm角の測定範囲に対する平均粗さRaを測定し、以下のとおり評価した。
3nmより大きい:××
1nm以上3nm未満:×
1nm未満:○
【0059】
【表1】

【0060】
本願実施例で用いた化合物は、下記のとおりである。
化合物A
【化17】

化合物B
【化18】

化合物C
【化19】

化合物D
【化20】

化合物E
【化21】

【0061】
上記表の結果から明らかなとおり、本発明のガスバリアフィルムは、いずれも、水蒸気透過率が、0.005g/m/day未満であった。また、本発明の無機層は、その表面の平滑性を維持していた。さらに、多環性芳香族骨格を有する(メタ)アクリレートとして2官能の化合物である化合物Cと3官能以上の(メタ)アクリレートである化合物Eを併用することにより、特に優れた効果が得られることが分かった。
【0062】
ガスバリアフィルムの作製(2)
上記ガスバリアフィルムの作製に対し、第1層有機層の重合性組成物を表1に示す組成を有する重合性化合物(19g)と下記に示すリン酸エステルアクリレート(日本化薬社製、KAYAMER PM-21、1g)、紫外線重合開始剤(ランベルティ社製、エザキュアKTO46、0.6g)、2−ブタノン(190g)に変更した以外は同様に行って本発明の5〜8のガスバリアフィルムを作製した。このガスバリアフィルムについて、ガスバリアフィルムの作製(1)と同様の方法で水蒸気透過率を測定したところ、同じ性能が得られた。また、下記方法に従って、密着性も評価した。
【化22】

【0063】
[密着性]
ガスバリアフィルムの密着性を評価する目的で、JIS K5400に準拠した碁盤目試験を行なった。ガスバリアフィルムの表面にそれぞれカッターナイフで膜面に対して90°の切込みを1mm間隔で入れ、1mm間隔の碁盤目を100個作製した。この上に2cm幅のマイラーテープ[日東電工製、ポリエステルテープ(No.31B)]を貼り付け、テープ剥離試験機を使用して貼り付けたテープをはがした。結果は下記で示した。
◎:100個の碁盤目のうち90個以上剥離せずに残存
○:100個の碁盤目のうち50個以上剥離せずに残存
×:100個の碁盤目のうち残存した碁盤目が50個未満
【0064】
【表2】

上記表から明らかなとおり、本発明5〜8のいずれについても、バリア性能に優れたものであった。さらに、リン酸エステルアクリレートを添加することにより、密着性についても優れたものが得られることが確認された。
【0065】
2.多層積層ガスバリアフィルムの作成
上記1で作成したガスバリアフィルムにおいて、有機層と無機層をそれぞれ2層づつ設け、他は同様に行い、多層積層ガスバリアフィルムを作成した。これらの多層積層ガスバリアフィルムは、それぞれ、対応する上記1で作成したガスバリアフィルムよりも、バリア性能がより向上することが確認された。
【0066】
3.有機EL素子の作成と評価
有機EL素子の作成
ITO膜を有する導電性のガラス基板(表面抵抗値10Ω/□)を2−プロパノールで洗浄した後、10分間UV−オゾン処理を行った。この基板(陽極)上に真空蒸着法にて以下の有機化合物層を順次蒸着した。
(第1正孔輸送層)
銅フタロシアニン 膜厚10nm
(第2正孔輸送層)
N,N’−ジフェニル−N,N’−ジナフチルベンジジン 膜厚40nm
(発光層兼電子輸送層)
トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム 膜厚60nm
最後にフッ化リチウムを1nm、金属アルミニウムを100nm順次蒸着して陰極とし、その上に厚さ5μm窒化珪素膜を平行平板CVD法によって付け、有機EL素子を作成した。
【0067】
熱硬化型の接着剤(ダイゾーニチモリ(株)製、エポテック310)を用いて、上記ガスバリアフィルムとそれぞれ貼り合せ、65℃で3時間加熱して接着剤を硬化させた。このようにして封止された有機EL素子を各20素子ずつ作成した。
【0068】
作成直後の有機EL素子をKeithley社製SMU2400型ソースメジャーユニットを用いて7Vの電圧を印加して発光させた。顕微鏡を用いて発光面状を観察したところ、いずれの素子もダークスポットの無い均一な発光を与えることが確認された。
次に各素子を60℃・相対湿度90%の暗い室内に500時間静置した後、発光面状を観察した。直径300μmよりも大きいダークスポットが観察された素子の比率を故障率と定義し、各素子の故障率を測定したところ、いずれも1%以下であった。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の製造方法により製造されたバリア性積層体は、水蒸気透過率が低い。また、本発明により製造されたバリア性積層体を有するガスバリアフィルムを容易に製造することができる。さらに、本発明の有機EL素子は、水蒸気透過性も故障率も低いため、産業上の利用可能性が高く、有用である。
加えて、本発明のガスバリアフィルムは、無機層の表面に設ける無機層表面を平滑にすることができるため、デバイスの基板に用いる場合に特に好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1層の有機層と、少なくとも1層の無機層を有し、有機層は、多環性芳香族骨格を有する(メタ)アクリレートであって、該多環性芳香族骨格を構成する炭素原子が、いずれも、SP炭素原子である(メタ)アクリレートを含む重合性組成物を硬化させてなることを特徴とする、バリア性積層体。
【請求項2】
前記多環性芳香族骨格を有する(メタ)アクリレートが、下記一般式(1)または(2)で表される、請求項1に記載のバリア性積層体。
一般式(1)
【化1】

一般式(2)
【化2】

(一般式(1)および(2)中、RおよびRは、それぞれ、置換基を表す。mおよびnは、それぞれ0〜5の整数であり、m≧2のとき、Rは、同じでも異なっていてもよく、n≧2のとき、Rは、同じでも異なっていてもよい。但し、一般式(1)または(2)で表される化合物は、1分子中に1つ以上のアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を含む。)
【請求項3】
多環性芳香族骨格を有する(メタ)アクリレートが、2官能以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載のバリア性積層体。
【請求項4】
前記重合性組成物が、さらに、3官能以上の(メタ)アクリレートを含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
【請求項5】
無機層が、金属酸化物からなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
【請求項6】
無機層が、スパッタリング法で成膜されたものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
【請求項7】
無機層が、アルミニウムおよび/またはケイ素の酸化物もしくは窒化物である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
【請求項8】
少なくとも2層の有機層と、少なくとも2層の無機層とが、交互に積層している、請求項1〜7のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
【請求項9】
支持体上に、請求項1〜8のいずれか1項に記載のバリア性積層体を設けたガスバリアフィルム。
【請求項10】
請求項9に記載のガスバリアフィルムを基板に用いたデバイス。
【請求項11】
請求項9に記載のガスバリアフィルムを用いて封止したデバイス。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のバリア性積層体を用いて封止したデバイス。
【請求項13】
デバイスが、電子デバイスである、請求項10〜12のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項14】
デバイスが、有機EL素子である、請求項10〜12のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項15】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のバリア性積層体の製造方法であって、無機層をプラズマプロセスによって設けることを含む、製造方法。

【公開番号】特開2010−30292(P2010−30292A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−149090(P2009−149090)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】