説明

バリア性積層体、バリア性フィルム基板およびデバイス

【課題】 高いバリア性能を有するバリア性フィルム基板を提供する。
【解決手段】少なくとも1つの有機層と、少なくとも1つの無機層とを有し、前記有機層が、ビスフェノール骨格を有し、かつ、脂肪族基を有する重合性化合物を1〜50重量%含有する重合性組成物を硬化させてなることを特徴とする、バリア性積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリア性積層体、バリア性フィルム基板およびデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、有機層と無機層からなるバリア性フィルム基板が検討されている。これは、無機層と有機層が互層構造を取ることによりバリア性能が向上することに基づく。このようなバリア性フィルム基板として、特許文献1には、無機層の上に、特定の構造を有するビスフェノールA型エポキシアクリレートからなる有機層が設けられたバリア性フィルム基板が開示されている。また、特許文献2には、25℃では非流動性を示し50℃〜100℃では流動性を示す光硬化性組成物を硬化した有機層とセラミック膜のそれぞれ1層以上からなるバリア性フィルム基板が開示されている。
しかし、近年、より高いバリア性能が求められる傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−165368号公報
【特許文献2】特開2007−38445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記課題を解決することを目的としたものであって、より高いバリア性能を有するバリア性フィルム基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題のもと、本発明者が鋭意検討を行った結果、下記手段により上記課題を解決しうることを見出した。
(1)少なくとも1つの有機層と、少なくとも1つの無機層とを有し、前記有機層が、ビスフェノール骨格を有し、かつ、脂肪族基を有する重合性化合物を1〜50重量%含有する重合性組成物を硬化させてなることを特徴とする、バリア性積層体。
(2)前記重合性化合物が、単官能の(メタ)アクリレートおよび単官能のエポキシ(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種である、(1)に記載のバリア性積層体。
(3)前記重合性化合物が、一般式(A)で表される化合物である、(1)に記載のバリア性積層体。
一般式(A)
【化1】

(一般式(A)中、Xは単結合または2価の連結基であり、L、L、LおよびLは、それぞれ、2価の連結基であり、R、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR10は、それぞれ、水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表わすが、少なくとも一つが置換もしくは無置換のアルキル基である。)
(4)前記重合性組成物が、多官能モノマーを50〜99重量%含有する、(1)〜(3)のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
(5)前記重合性組成物が、ビスフェノール骨格を有する多官能モノマーを50〜99重量%含有する、(1)〜(3)のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
(6)前記重合性組成物が、一般式(B)で表される化合物および/または一般式(E)で表される化合物を合計で50〜99重量%含有する、(1)〜(3)のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
一般式(B)
【化2】

(一般式(B)中、Xは単結合または2価の連結基であり、L、L、LおよびLは、それぞれ、2価の連結基であり、R、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR10は、それぞれ、水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表わす。)
一般式(E)
【化3】

(一般式(E)中、Xは単結合または2価の連結基であり、LおよびLは、それぞれ、2価の連結基であり、R11、R12、R13、R14、R15およびR16は、それぞれ、水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表わす。mおよびnはそれぞれ0〜12の整数を表す。)
(7)前記一般式(B)で表される化合物および/または一般式(E)で表される化合物のうち、少なくとも、一般式(B)で表される化合物を含む、(6)に記載のバリア性積層体。
(8)前記一般式(B)で表される化合物および/または一般式(E)で表される化合物のうち、少なくとも、一般式(E)で表される化合物を含む、(6)に記載のバリア性積層体。
(9)前記重合性組成物が、一般式(B)で表される化合物を50〜99重量%含有する、(1)〜(3)のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
一般式(B)
【化4】

(一般式(B)中、Xは単結合または2価の連結基であり、L、L、LおよびLは、それぞれ、2価の連結基であり、R、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR10は、それぞれ、水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表わす。)
(10)前記重合性組成物が、さらに、少なくとも1種のリン酸エステル基を有する(メタ)アクリレートモノマーを含有する、(1)〜(9)のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
(11)前記重合性組成物が、さらに、下記一般式(P)で表される化合物を少なくとも1種含有する、(1)〜(9)のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
一般式(P)
【化5】

(一般式(P)中、ZはAc−O−X−、重合性基を有しない置換基または水素原子を表し、ZはAc−O−X−、重合性基を有しない置換基または水素原子を表し、Ac、AcおよびAcはそれぞれアクリロイル基またはメタクリロイル基を表し、X、XおよびXはそれぞれアルキレン基、アルキレンオキシ基、アルキレンオキシカルボニル基、アルキレンカルボニルオキシ基、またはこれらの組み合わせからなる基を表す。)
(12)有機層と無機層とが互層構造になっている領域を含む、(1)〜(11)のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
(13)有機層と無機層とが互層構造になっている領域を含み、かつ、無機層を2層以上含む、(1)〜(11)のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
(14)無機層が、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属酸化窒化物または金属酸化炭化物を含む、(1)〜(13)のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
(15)基材フィルム上に、(1)〜(14)のいずれか1項に記載のバリア性積層体を設けたバリア性フィルム基板。
(16)(15)に記載のバリア性フィルム基板を基板に用いたデバイス。
(17)(15)に記載のバリア性フィルム基板を用いて封止したデバイス。
(18)(1)〜(14)のいずれか1項に記載のバリア性積層体を用いて封止したデバイス。
(19)前記デバイスが、電子デバイスである、(16)〜(18)のいずれか1項に記載のデバイス。
(20)前記デバイスが、有機EL素子である、(16)〜(18)のいずれか1項に記載のデバイス。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、バリア性能が向上したバリア性フィルム基板を提供することが可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。また、本発明における有機EL素子とは、有機エレクトロルミネッセンス素子のことをいう。さらに、本明細書における「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタアクリレートを意味する。
【0008】
<バリア性積層体>
本発明のバリア性フィルム積層体は、少なくとも1つの有機層と、少なくとも1つの無機層とを有し、かつ、有機層が、少なくとも1種のビスフェノール骨格を有し、かつ、脂肪族基を有する重合性化合物を1〜50重量%含有する重合性組成物を硬化させてなることを特徴とする。このような有機層を有するバリア性積層体とすることにより、バリア性をより向上させることができる。本発明のバリア性積層体は、好ましくは、少なくとも2層の有機層と、少なくとも2層の無機層とが交互に積層した構造(互層構造)である。
【0009】
(有機層)
本発明における有機層は、少なくとも1種のビスフェノール骨格を有し、かつ、脂肪族基を有する重合性化合物を1〜50重量%含有する重合性組成物を硬化させてなることを特徴とする。
【0010】
(重合性化合物)
本発明で用いる重合性化合物は、ビスフェノール骨格を有し、かつ、脂肪族基を有する重合性化合物であり、ビスフェノール骨格としては、ビスフェノールA(BPA)、ビスフェノールS、ビスフェノールP、ビスフェノールFなどを挙げることができ、ビスフェノールA、ビスフェノールSが好ましい。本発明で用いる重合性化合物は、より好ましくは、単官能の(メタ)アクリレートおよび単官能のエポキシ(メタ)アクリレートから選択される化合物であり、さらに好ましくは、一般式(A)で表される化合物である。
一般式(A)
【化6】

(一般式(A)中、Xは単結合または2価の連結基であり、L、L、LおよびLは、それぞれ、2価の連結基であり、R、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR10は、それぞれ、水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表わすが、少なくとも一つが置換もしくは無置換のアルキル基である。)
【0011】
Xは2価の連結基であることが好ましく、アルキレン基、アリーレン基、エーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、スルホニル基、ならびにこれらの組み合わせであることがより好ましく、アルキレン基であることがさらに好ましい。これらの基は、置換基を有していても良く、これらの基同士が、または、これらの基が有する置換基同士が互いに結合して環を形成していてもよい。アルキレン基の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましく、1〜5がさらに好ましい。炭素数をこのような範囲にすることにより、重合性組成物の粘度が必要以上に高くなりすぎず、精製や取り扱いが容易になる。
L、L、LおよびLは、それぞれ、炭素数20以下の直鎖または分岐のアルキレン基が好ましく、エーテル結合を挿んでいてもよい。更に、炭素数1〜10であることがより好ましい。
は、水素またはメチル基が好ましい。
およびRは、それぞれ、水素または炭素数20以下のアルキルカルボニル基もしくはアリールカルボニル基が好ましく、そのアルキル基やアリール基はエーテル結合を挿んでいてもよい。更により好ましくは炭素数10以下である。
、R、R、R、RおよびRは、それぞれ、水素または炭素数20以下の直鎖または分岐のアルキレン基であることが好ましく、炭素数10以下であることがより好ましい。
10は、炭素数20以下の、直鎖または分岐のアルキル基、アリール基、炭素数アルキルカルボニル基またはアリールカルボニル基が好ましく、そのアルキル基やアリール基はエーテル結合を挿んでいてもよい。更により好ましくは炭素数10以下である。
【0012】
重合性化合物は、重合性組成物中に、1〜50重量%含有し、1〜40重量%含有することが好ましく、1〜30重量%含有することがより好ましい。このような範囲で含めることにより、硬化条件が不足した場合になっても未硬化物の熱移動による流出に起因する故障(ブリードアウト)の発生を抑制できる。重合性化合物は2種類以上含んでいてもよい。
【0013】
(多官能モノマー)
本発明の重合性組成物は、多官能モノマーを含んでいることが好ましく、ビスフェノール骨格を有する多官能モノマーを含んでいることがより好ましく、下記一般式(B)で表される化合物および/または一般式(E)で表される化合物を含んでいることがさらに好ましく、少なくとも一般式(B)で表される化合物を含んでいることが特に好ましい。多官能モノマーを含むことにより、硬化スピードが上がり生産性を向上させることができる。一般式(B)
【化7】

(一般式(B)中、Xは単結合または2価の連結基であり、L、L、LおよびLは、それぞれ、2価の連結基であり、R、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR10は、それぞれ、水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表わす。)
X、L、L、L、L、R、R、R、R、R、R、R、RおよびRの好ましい範囲は、上記一般式(A)のそれと同じである。
10の好ましい範囲は、上記一般式(A)のRと同じである。
【0014】
一般式(E)
【化8】

(一般式(E)中、Xは単結合または2価の連結基であり、LおよびLは、それぞれ、2価の連結基であり、R11、R12、R13、R14、R15およびR16は、それぞれ、水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表わす。mおよびnはそれぞれ0〜12の整数を表す。)
【0015】
Xの好ましい範囲は、上記一般式(A)のXと同じである。
LおよびLは、それぞれ炭素数20以下の直鎖または分岐のアルキレン基が好ましく、エーテル結合を挿んでいてもよい。更に、炭素数1〜10であることがより好ましい。
11およびR16は、水素原子またはメチル基が好ましい。
12、R13、R14およびR15の好ましい範囲は、上記一般式(A)のR、R、RおよびRと同じである。
【0016】
一般式(B)または一般式(E)で表される化合物のような、ビスフェノール骨格を有する多官能モノマーは、例えば、ヒドロキシル基を有するビスフェノール誘導体と(メタ)アクリル酸クロリドとを反応させることにより合成することができる。前記ヒドロキシル基を有するビスフェノール誘導体は、例えばエチレンオキシ変性ビスフェノール類などであり、これらはビスフェノール類にエチレンオキシドを反応させることにより合成することができる。
一般式(B)または一般式(E)で表される化合物のような、ビスフェノール骨格を有する多官能モノマーは、エポキシ基を有するビスフェノール誘導体と(メタ)アクリル酸とを反応させることによっても合成することができる。前記エポキシ基を有するビスフェノール誘導体は、例えば、ビスフェノール類にエピクロロヒドリンを反応させることにより合成することができる。
一般式(A)で表されるビスフェノール骨格を有する単官能アクリレートモノマーは、一般式(B)と同様にして(メタ)アクリロイル基を導入後に、残るヒドロキシル基あるいはエポキシ基を置換することにより合成することができる。
一般式(E)で表される化合物は、一般式(B)で表される化合物と共に用いることがより好ましい。
【0017】
上記以外の化合物としては、下記化合物が挙げられる。
アクリレート系化合物としては、アクリレート、ウレタンアクリレートやポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート等の2官能基以上を有する多官能の放射線硬化型のアクリル系化合物が挙げられ、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリルトリ(メタ)アクリレート、トリアリル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート等が好ましい。
スチレン系化合物としては、2官能基以上を有する多官能の放射線硬化型スチレン系化合物として、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン等が好ましい。
【0018】
以下に、アクリレート系化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【化9】

【0019】
【化10】

【0020】
【化11】

【0021】
【化12】

【0022】
本発明において多官能モノマーは、重合性組成物中に、50〜99重量%含有するが、60〜99重量%含有することが好ましく、70〜99重量%含有することがさらに好ましい。このような範囲で含めることにより、本発明の重合性化合物の効果がより発現しやすくなる。また、多官能モノマーは2種類以上含んでいてもよい。
【0023】
(リン酸エステル基を有する(メタ)アクリレート)
本発明の重合性組成物は、リン酸エステル基を有する(メタ)アクリレートを含んでいることが好ましく、下記一般式(P)で表される化合物を含んでいることがより好ましい。リン酸エステル基を有する(メタ)アクリレートを含むことにより、無機層との密着が良くなる。
一般式(P)
【化13】

(一般式(P)中、ZはAc−O−X−、重合性基を有しない置換基または水素原子を表し、ZはAc−O−X−、重合性基を有しない置換基または水素原子を表し、Ac、AcおよびAcはそれぞれアクリロイル基またはメタクリロイル基を表し、X、XおよびXはそれぞれアルキレン基、アルキレンオキシ基、アルキレンオキシカルボニル基、アルキレンカルボニルオキシ基、またはこれらの組み合わせからなる基を表す。)
一般式(P)で表される化合物は、以下の一般式(P−1)で表される単官能モノマー、以下の一般式(P−2)で表される2官能モノマー、および以下の一般式(P−3)で表される3官能モノマーが好ましい。
一般式(P−1)
【化14】

一般式(P−2)
【化15】

一般式(P−3)
【化16】

【0024】
Ac、Ac、Ac、X、XおよびXの定義は、一般式(P)における定義と同じである。一般式(P−1)および(P−2)において、Rは重合性基を有しない置換基または水素原子を表し、Rは重合性基を有しない置換基または水素原子を表す。
一般式(P)、(P−1)〜(P−3)において、X、XおよびXの炭素数は、1〜12が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜4がさらに好ましい。X、XおよびXが採りうるアルキレン基の具体例、および、X、XおよびXが採りうるアルキレンオキシ基、アルキレンオキシカルボニル基、アルキレンカルボニルオキシ基のアルキレン部分の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基が挙げられる。アルキレン基は、直鎖状であっても分枝状であっても構わないが、好ましいのは直鎖アルキレン基である。X、XおよびXとして好ましいのは、アルキレン基である。
一般式(P)、(P−1)〜(P−3)において、重合性基を有しない置換基としては、例えばアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、またはこれらを組み合わせた基などを挙げることができる。好ましいのはアルキル基、アルコキシ基であり、さらに好ましいのはアルコキシ基である。
アルキル基の炭素数は、1〜12が好ましく、1〜9がより好ましく、1〜6がさらに好ましい。アルキル基の具体例として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が挙げられる。アルキル基は、直鎖状であっても分枝状であっても環状であっても構わないが、好ましいのは直鎖アルキル基である。アルキル基は、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基などで置換されていてもよい。
アリール基の炭素数は、6〜14が好ましく、6〜10がより好ましい。アリール基の具体例として、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基が挙げられる。アリール基は、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基などで置換されていてもよい。
アルコキシ基のアルキル部分、アリールオキシ基のアリール部分については、上記アルキル基とアリール基の説明をそれぞれ参照することができる。
本発明では、一般式(P)で表されるモノマーを1種類だけ用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、組み合わせて用いる場合は、一般式(P−1)で表される単官能モノマー、一般式(P−2)で表される2官能モノマー、および一般式(P−3)で表される3官能モノマーのうちの2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明では、上記のリン酸エステル基を有する重合性モノマー類として、日本化薬(株)製のKAYAMERシリーズ、ユニケミカル(株)製のPhosmerシリーズ等、市販されている化合物をそのまま用いてもよく、新たに合成された化合物を用いてもよい。
【0025】
以下に、本発明で好ましく用いることができる、リン酸エステル基を有する(メタ)アクリレートを例示するが本発明はこれらに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0026】
【化17】

【0027】
リン酸エステル基を有する(メタ)アクリレートは、重合性組成物中に、0.01〜50重量%含有することが好ましく、0.1〜30重量%含有することがより好ましい。
なお含有最大量は、本発明の重合性化合物と足し合わせて、重合性組成物中に、50重量%以下が好ましく、30重量%以下が好ましい。
このような範囲で含めることにより、硬化条件が不足した場合になっても未硬化物の熱移動による流出に起因する故障(ブリードアウト)が生じにくくなる。
【0028】
(重合開始剤)
本発明における重合性組成物は、重合開始剤を含んでいてもよい。光重合開始剤を用いる場合、その含量は、重合性化合物の合計量の0.1モル%以上であることが好ましく、0.5〜2モル%であることがより好ましい。このような組成とすることにより、活性成分生成反応を経由する重合反応を適切に制御することができる。光重合開始剤の例としてはチバ・スペシャルティー・ケミカルズ社から市販されているイルガキュア(Irgacure)シリーズ(例えば、イルガキュア651、イルガキュア754、イルガキュア184、イルガキュア2959、イルガキュア907、イルガキュア369、イルガキュア379、イルガキュア819など)、ダロキュア(Darocure)シリーズ(例えば、ダロキュアTPO、ダロキュア1173など)、クオンタキュア(Quantacure)PDO、ランベルティ(Lamberti)社から市販されているエザキュア(Ezacure)シリーズ(例えば、エザキュアTZM、エザキュアTZT、エザキュアKTO46など)等が挙げられる。
【0029】
(有機層の形成方法)
有機層の形成方法としては、特に定めるものではないが、例えば、溶液塗布法や真空成膜法により形成することができる。溶液塗布法としては、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、スライドコート法、或いは、米国特許第2681294号明細書に記載のホッパ−を使用するエクストル−ジョンコート法により塗布することができる。真空成膜法としては、特に制限はないが、蒸着、プラズマCVD等の成膜方法が好ましい。本発明においてはポリマーを溶液塗布しても良いし、特開2000−323273号公報、特開2004−25732号公報に開示されているような無機物を含有するハイブリッドコーティング法を用いてもよい。
【0030】
本発明では、重合性化合物を含む組成物を、光照射して硬化させるが、照射する光は、通常、高圧水銀灯もしくは低圧水銀灯による紫外線である。照射エネルギーは0.1J/cm以上が好ましく、0.5J/cm以上がより好ましい。重合性化合物として、(メタ)アクリレート系化合物を用いる場合、空気中の酸素によって重合阻害を受けるため、重合時の酸素濃度もしくは酸素分圧を低くすることが好ましい。窒素置換法によって重合時の酸素濃度を低下させる場合、酸素濃度は2%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましい。減圧法により重合時の酸素分圧を低下させる場合、全圧が1000Pa以下であることが好ましく、100Pa以下であることがより好ましい。また、100Pa以下の減圧条件下で0.5J/cm以上のエネルギーを照射して紫外線重合を行うのが特に好ましい。
【0031】
本発明における有機層は、平滑で、膜硬度が高いことが好ましい。有機層の平滑性は10μm角の平均粗さ(Ra値)として10nm以下であることが好ましく、2nm以下であることがより好ましい。モノマーの重合率は85%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、92%以上であることが特に好ましい。ここでいう重合率とはモノマー混合物中の全ての重合性基(アクリロイル基およびメタクリロイル基)のうち、反応した重合性基の比率を意味する。重合率は赤外線吸収法によって定量することができる。
【0032】
有機層の膜厚については特に限定はないが、薄すぎると膜厚の均一性を得ることが困難になるし、厚すぎると外力によりクラックを発生してバリア性が低下する。かかる観点から、有機層の厚みは50nm〜2000nmが好ましく、200nm〜1500nmがより好ましい。
また、有機層は先に記載したとおり平滑であることが好ましい。有機層の平滑性は10μm角の平均粗さ(Ra値)として2nm以下が好ましく、1nm以下であることがより好ましい。有機層の表面にはパーティクル等の異物、突起が無いことが要求される。このため、有機層の成膜はクリーンルーム内で行われることが好ましい。クリーン度はクラス10000以下が好ましく、クラス1000以下がより好ましい。
有機層の硬度は高いほうが好ましい。有機層の硬度が高いと、無機層が平滑に成膜されその結果としてバリア能が向上することがわかっている。有機層の硬度はナノインデンテーション法に基づく微小硬度として表すことができる。有機層の微小硬度は100N/mm以上であることが好ましく、150N/mm以上であることがより好ましい。
有機層は2層以上積層することが好ましい。この場合、各層が同じ組成であっても異なる組成であってもよい。また、2層以上積層する場合は、各々の有機層が上記の好ましい範囲内にあるように設計することが好ましい。また、上述したとおり、米国公開特許2004−46497号明細書に開示してあるように無機層との界面が明確で無く、組成が膜厚方向で連続的に変化する層であってもよい。
【0033】
(無機層)
無機層は、通常、金属化合物からなる薄膜の層である。無機層の形成方法は、目的の薄膜を形成できる方法であればいかなる方法でも用いることができる。例えば、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的気相成長法(PVD)、種々の化学的気相成長法(CVD)、めっきやゾルゲル法等の液相成長法がある。この中では、無機層形成時の基材フィルムへの熱の影響を回避することができ、生産速度が速く、均一な薄膜層を得やすい点で、物理的気相成長法(PVD)や化学的気相成長法(CVD)を用いることが好ましい。無機層に含まれる成分は、上記性能を満たすものであれば特に限定されないが、例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属酸化窒化物または金属酸化炭化物であり、Si、Al、In、Sn、Zn、Ti、Cu、Ce、またはTa等から選ばれる1種以上の金属を含む酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物または酸化炭化物などを好ましく用いることができる。これらの中でも、Si、Al、In、Sn、Zn、Tiから選ばれる金属の酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物が好ましく、特にSiまたはAlの金属酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物が好ましい。これらは、副次的な成分として他の元素を含有してもよい。
本発明により形成される無機層の平滑性は、10μm角の平均粗さ(Ra値)として2nm未満であることが好ましく、1nm以下がより好ましい。このため、無機層の成膜はクリーンルーム内で行われることが好ましい。クリーン度はクラス10000以下が好ましく、クラス1000以下がより好ましい。
【0034】
無機層の厚みに関しては特に限定されないが、1層に付き、通常、5〜500nmの範囲内であり、好ましくは20〜200nmである。無機層は2層以上積層してもよい。本発明では、無機層を2層以上設ける態様において、層間の密着性が向上し、かつ、電子デバイスに用いたときの故障率を低減することができる。また、2層以上設ける場合、各層が同じ組成であっても異なる組成であってもよい。また、2層以上積層する場合は、各々の無機層が上記の好ましい範囲内にあるように設計することが望ましい。また、上述したとおり、米国公開特許2004−46497号明細書に開示してあるように有機層との界面が明確で無く、組成が膜厚方向で連続的に変化する層であっても良い。
【0035】
(有機層と無機層の積層)
有機層と無機層の積層は、所望の層構成に応じて有機層と無機層を順次繰り返し製膜することにより行うことができる。無機層を、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法などの真空製膜法で形成する場合、有機層も前記フラッシュ蒸着法のような真空製膜法で形成することが好ましい。バリア層を製膜する間、途中で大気圧に戻すことなく、常に1000Pa以下の真空中で有機層と無機層を積層することが特に好ましい。圧力は100Pa以下であることがより好ましく、50Pa以下であることがより好ましく、20Pa以下であることがさらに好ましい。
【0036】
(機能層)
本発明のデバイスにおいては、バリア性積層体上、もしくはその他の位置に、機能層を有していても良い。機能層については、特開2006−289627号公報の段落番号0036〜0038に詳しく記載されている。これら以外の機能層の例としてはマット剤層、保護層、帯電防止層、平滑化層、密着改良層、遮光層、反射防止層、ハードコート層、応力緩和層、防曇層、防汚層、被印刷層、易接着層等が挙げられる。
【0037】
バリア性積層体の用途
本発明のバリア性積層体は、通常、支持体の上に設けるが、この支持体を選択することによって、様々な用途に用いることができる。支持体には、基材フィルムのほか、各種のデバイス、光学部材等が含まれる。具体的には、本発明のバリア性積層体はバリア性フィルム基板のバリア層として用いることができる。また、本発明のバリア性積層体およびバリア性フィルム基板は、ガスバリア性を要求するデバイスの封止に用いることができる。本発明のバリア性積層体およびバリア性フィルム基板は、光学部材にも適用することができる。以下、これらについて詳細に説明する。
【0038】
<バリア性フィルム基板>
バリア性フィルム基板は、基材フィルムと、該基材フィルム上に形成されたバリア性積層体とを有する。バリア性フィルム基板において、本発明のバリア性積層体は、基材フィルムの片面にのみ設けられていてもよいし、両面に設けられていてもよい。本発明のバリア性積層体は、基材フィルム側から無機層、有機層の順に積層していてもよいし、有機層、無機層の順に積層していてもよい。本発明の積層体の最上層は無機層でも有機層でもよい。
また、本発明におけるバリア性フィルム基板は大気中の酸素、水分、窒素酸化物、硫黄酸化物、オゾン等を遮断する機能を有するバリア層を有するフィルム基板である。
バリア性フィルム基板を構成する層数に関しては特に制限はないが、典型的には2層〜30層が好ましく、3層〜20層がさらに好ましい。
バリア性フィルム基板はバリア性積層体、基材フィルム以外の構成成分(例えば、易接着層等の機能性層)を有しても良い。機能性層はバリア性積層体の上、バリア性積層体と基材フィルムの間、基材フィルム上のバリア性積層体が設置されていない側(裏面)のいずれに設置してもよい。
【0039】
(プラスチックフィルム)
本発明におけるバリア性フィルム基板は、通常、基材フィルムとして、プラスチックフィルムを用いる。用いられるプラスチックフィルムは、有機層、無機層等の積層体を保持できるフィルムであれば材質、厚み等に特に制限はなく、使用目的等に応じて適宜選択することができる。前記プラスチックフィルムとしては、具体的には、金属支持体(アルミニウム、銅、ステンレス等)ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン樹脂、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィルンコポリマー、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、フルオレン環変性ポリエステル樹脂、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0040】
本発明のバリア性フィルム基板を後述する有機EL素子等のデバイスの基板として使用する場合は、プラスチックフィルムは耐熱性を有する素材からなることが好ましい。具体的には、ガラス転移温度(Tg)が100℃以上および/または線熱膨張係数が40ppm/℃以下で耐熱性の高い透明な素材からなることが好ましい。Tgや線膨張係数は、添加剤などによって調整することができる。このような熱可塑性樹脂として、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN:120℃)、ポリカーボネート(PC:140℃)、脂環式ポリオレフィン(例えば日本ゼオン(株)製 ゼオノア1600:160℃)、ポリアリレート(PAr:210℃)、ポリエーテルスルホン(PES:220℃)、ポリスルホン(PSF:190℃)、シクロオレフィンコポリマー(COC:特開2001−150584号公報の化合物:162℃)、ポリイミド(例えば三菱ガス化学(株)ネオプリム:260℃)、フルオレン環変性ポリカーボネート(BCF−PC:特開2000−227603号公報の化合物:225℃)、脂環変性ポリカーボネート(IP−PC:特開2000−227603号公報の化合物:205℃)、アクリロイル化合物(特開2002−80616号公報の化合物:300℃以上)が挙げられる(括弧内はTgを示す)。特に、透明性を求める場合には脂環式ポレオレフィン等を使用するのが好ましい。
【0041】
本発明のバリア性フィルム基板を偏光板と組み合わせて使用する場合、バリア性フィルム基板のバリア性積層体がセルの内側に向くようにし、最も内側に(素子に隣接して)配置することが好ましい。このとき偏光板よりセルの内側にバリア性フィルム基板が配置されることになるため、バリア性フィルム基板のレターデーション値が重要になる。このような態様でのバリア性フィルム基板の使用形態は、レターデーション値が10nm以下の基材フィルムを用いたバリア性フィルム基板と円偏光板(1/4波長板+(1/2波長板)+直線偏光板)を積層して使用するか、あるいは1/4波長板として使用可能な、レターデーション値が100nm〜180nmの基材フィルムを用いたバリア性フィルム基板に直線偏光板を組み合わせて用いるのが好ましい。
【0042】
レターデーションが10nm以下の基材フィルムとしてはセルローストリアセテート(富士フイルム(株):富士タック)、ポリカーボネート(帝人化成(株):ピュアエース、(株)カネカ:エルメック)、シクロオレフィンポリマー(JSR(株):アートン、日本ゼオン(株):ゼオノア)、シクロオレフィンコポリマー(三井化学(株):アペル(ペレット)、ポリプラスチック(株):トパス(ペレット))ポリアリレート(ユニチカ(株):U100(ペレット))、透明ポリイミド(三菱ガス化学(株):ネオプリム)等を挙げることができる。
また1/4波長板としては、上記のフィルムを適宜延伸することで所望のレターデーション値に調整したフィルムを用いることができる。
【0043】
本発明のバリア性フィルム基板は有機EL素子等のデバイスとして利用されることから、プラスチックフィルムは透明であること、すなわち、光線透過率が通常80%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。光線透過率は、JIS−K7105に記載された方法、すなわち積分球式光線透過率測定装置を用いて全光線透過率および散乱光量を測定し、全光線透過率から拡散透過率を引いて算出することができる。
本発明のバリア性フィルム基板をディスプレイ用途に用いる場合であっても、観察側に設置しない場合などは必ずしも透明性が要求されない。したがって、このような場合は、プラスチックフィルムとして不透明な材料を用いることもできる。不透明な材料としては、例えば、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、公知の液晶ポリマーなどが挙げられる。
本発明のバリア性フィルム基板に用いられるプラスチックフィルムの厚みは、用途によって適宜選択されるので特に制限がないが、典型的には1〜800μmであり、好ましくは10〜200μmである。これらのプラスチックフィルムは、透明導電層、プライマー層等の機能層を有していても良い。機能層については、特開2006−289627号公報の段落番号0036〜0038に詳しく記載されている。これら以外の機能層の例としてはマット剤層、保護層、帯電防止層、平滑化層、密着改良層、遮光層、反射防止層、ハードコート層、応力緩和層、防曇層、防汚層、被印刷層、易接着層等が挙げられる。
【0044】
<デバイス>
本発明のバリア性積層体およびバリア性フィルム基板は空気中の化学成分(酸素、水、窒素酸化物、硫黄酸化物、オゾン等)によって性能が劣化するデバイスに好ましく用いることができる。前記デバイスの例としては、例えば、有機EL素子、液晶表示素子、薄膜トランジスタ、タッチパネル、電子ペーパー、太陽電池等)等の電子デバイスを挙げることができ有機EL素子に好ましく用いられる。
【0045】
本発明のバリア性積層体は、また、デバイスの膜封止に用いることができる。すなわち、デバイス自体を支持体として、その表面に本発明のバリア性積層体を設ける方法である。バリア性積層体を設ける前にデバイスを保護層で覆ってもよい。
【0046】
本発明のバリア性フィルム基板は、デバイスの基板や固体封止法による封止のためのフィルムとしても用いることができる。固体封止法とはデバイスの上に保護層を形成した後、接着剤層、バリア性フィルム基板を重ねて硬化する方法である。接着剤は特に制限はないが、熱硬化性エポキシ樹脂、光硬化性アクリレート樹脂等が例示される。
【0047】
(有機EL素子)
バリア性フィルム基板用いた有機EL素子の例は、特開2007−30387号公報に詳しく記載されている。
【0048】
(液晶表示素子)
反射型液晶表示装置は、下から順に、下基板、反射電極、下配向膜、液晶層、上配向膜、透明電極、上基板、λ/4板、そして偏光膜からなる構成を有する。本発明におけるバリア性フィルム基板は、前記透明電極基板および上基板として使用することができる。カラー表示の場合には、さらにカラーフィルター層を反射電極と下配向膜との間、または上配向膜と透明電極との間に設けることが好ましい。透過型液晶表示装置は、下から順に、バックライト、偏光板、λ/4板、下透明電極、下配向膜、液晶層、上配向膜、上透明電極、上基板、λ/4板および偏光膜からなる構成を有する。このうち本発明の基板は、前記上透明電極および上基板として使用することができる。カラー表示の場合には、さらにカラーフィルター層を下透明電極と下配向膜との間、または上配向膜と透明電極との間に設けることが好ましい。液晶セルの種類は特に限定されないが、より好ましくはTN型(Twisted Nematic)、STN型(Super Twisted Nematic)またはHAN型(Hybrid Aligned Nematic)、VA型(Vertically Alignment)、ECB型(Electrically Controlled Birefringence)、OCB型(Optically Compensated Bend)、CPA型(Continuous Pinwheel Alignment)、IPS型(In-Plane Switching)であることが好ましい。
【0049】
(その他)
その他の適用例としては、特表平10−512104号公報に記載の薄膜トランジスタ、特開平5-127822号公報、特開2002-48913号公報等に記載のタッチパネル、特開2000−98326号公報に記載の電子ペーパー、特願平7−160334号公報に記載の太陽電池等が挙げられる。
【0050】
<光学部材>
本発明のバリア性フィルム基板を用いる光学部材の例としては円偏光板等が挙げられる。(円偏光板)
本発明におけるバリア性フィルム基板を基板としλ/4板と偏光板とを積層し、円偏光板を作製することができる。この場合、λ/4板の遅相軸と偏光板の吸収軸とが45°になるように積層する。このような偏光板は、長手方向(MD)に対し45°の方向に延伸されているものを用いることが好ましく、例えば、特開2002−865554号公報に記載のものを好適に用いることができる。
【実施例】
【0051】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0052】
本願実施例では、下記の化合物を用いた。
A−1:
【化18】

A−2:
【化19】

A−3:
【化20】

A−4:
【化21】

A−5:
【化22】

A−6:
【化23】

A−7:
【化24】

A−8:
【化25】

B−1:ビスフェノールA型エポキシアクリレート(新中村化学製、NKオリゴ(登録商標) EA−1020)
【化26】

B−2:
【化27】

B−3:
【化28】

B−4:
【化29】

B−5:
【化30】

B−6:
【化31】

B−7:
【化32】

B−8:
【化33】

B−9
【化34】

B−10
【化35】

【0053】
C−1:重合開始剤(チバスペシャリティケミカルズ社、IRGACURE907)
【化36】

C−2:重合開始剤(ランベルティ社、エザキュアKTO46)
【化37】

【0054】
D−1
【化38】

【0055】
D−2
【化39】

【0056】
E−1:ビスフェノールA型EO変性ジアクリレート(東亞合成社製、M−210)
【化40】

【0057】
バリア性フィルム基板の作製(1)
支持体(東レ社製、ルミラーT60、厚さ100μm)上に、下記表に示した重合性化合物(合計20重量部)と重合開始剤(チバスペシャリティケミカルズ社、IRGACURE907)とからなる組成物を乾燥膜厚が500nmとなるようにメチルエチルケトンで調整して製膜し、酸素100ppm雰囲気下で紫外線照射量0.5J/cmで照射して硬化させ、有機層を作製した。その有機層表面に、膜厚が50nmとなるようにAlOを真空スパッタで製膜してバリア性フィルム基板を作製した。得られたバリア性フィルム基板について、下記手法により水蒸気透過率を測定した。
【0058】
[水蒸気透過率(g/m/day)]
MOCON社製、「PERMATRAN−W3/31」(40℃・相対湿度90%)を用いて測定した。結果を下記表に示した。尚、水蒸気透過率が本測定方法の測定限界である0.01g/m/day未満のものについては、<0.01と示した。
【0059】
【表1】

【0060】
上記表から明らかなとおり、本発明のバリア性フィルム基板は、水蒸気透過率がいずれも0.01g/m/day未満と優れていた。また、本発明のバリア性フィルム基板は、有機層の表面がいずれも平滑であったが、比較例3は、有機層の表面が硬化後もべとついており、無機層が均一に製膜できなかった。
【0061】
上記実施例1と比較例1を、有機層をフラッシュ蒸着法にて製膜し、他は同様に行ったところ、上記と同様の結果であった。
【0062】
実施例1、実施例12、比較例1、比較例4について、上記MOCON装置の測定限界である0.01g/m/day以下の水蒸気透過率について、G.NISATO、P.C.P.BOUTEN、P.J.SLIKKERVEERらSID Conference Record of the International Display Research Conference 1435-1438頁に記載の方法を用いて測定した。このときの温度は40℃、相対湿度は90%である。結果を下記表に示した。
【0063】
【表2】

【0064】
上記表から明らかなとおり、本発明のバリア性フィルム基板は、著しくバリア性が高いことが分かる。特に、近年、0.01g/m/day以下のレベルでのバリア性の向上が求められており、その点で本発明は極めて有意である。
【0065】
バリア性フィルム基板の作製(2)
支持体(帝人デュポン社製、テオネックスQ65FA、厚さ100μm)上に、下記表に示した重合性化合物(合計20重量部)と重合開始剤(チバスペシャリティケミカルズ社、IRGACURE907)とからなる組成物を乾燥膜厚が1000nmとなるようにメチルエチルケトンで調整して製膜し、酸素100ppm雰囲気下で紫外線照射量1.2J/cmで照射して硬化させ、有機層を作製した。その有機層表面に、膜厚が60nmとなるようにAlOを真空スパッタで製膜してバリア性フィルム基板を作製した。得られたバリア性フィルム基板について、下記手法により水蒸気透過率を測定した。
【0066】
[水蒸気透過率(g/m/day)]
G.NISATO、P.C.P.BOUTEN、P.J.SLIKKERVEERらSID Conference Record of the International Display Research Conference 1435-1438頁に記載の方法を用いて測定した。このときの温度は40℃、相対湿度は90%である。結果を下記表に示した。
【0067】
【表3】

【0068】
バリア性フィルム基板の作製(3)
上記バリア性フィルム基板の作製(1)と同様にして、下記組成のバリア性フィルム基板を作製した。ここで、有機層(実施例1)とは、上記実施例1の有機層と同じ組成であることを意味する。他の有機層についてもこれに習って示した。
【0069】
実施例21(互層)(本発明)
支持体/有機層(実施例1)/無機層(Al2O3)/有機層(実施例1)/無機層(Al2O3
実施例31(互層)(本発明)
支持体/有機層(実施例4)/無機層(Al2O3)/有機層(実施例4)/無機層(Al2O3
比較例21(互層)
支持体/有機層(比較例1)/無機層(Al2O3)/有機層(比較例1)/無機層(Al2O3
【0070】
実施例22(表面互層、裏面互層)(本発明)
無機層(Al2O3)/有機層(実施例1)/無機層(Al2O3)/有機層(実施例1)/支持体/有機層(実施例1)/無機層(Al2O3)/有機層(実施例1)/無機層(Al2O3
実施例32 (表面互層、裏面互層)(本発明)
無機層(Al2O3)/有機層(実施例4)/無機層(Al2O3)/有機層(実施例4)/支持体/有機層(実施例4)/無機層(Al2O3)/有機層(実施例4)/無機層(Al2O3
比較例22(表面互層、裏面互層)
無機層(Al2O3)/有機層(比較例1)/無機層(Al2O3)/有機層(比較例1)/支持体/有機層(比較例1)/無機層(Al2O3)/有機層(比較例1)/無機層(Al2O3
【0071】
実施例23(表面互層、裏面互層)(本発明)
無機層(Al2O3)/有機層(実施例1)/無機層(Al2O3)/有機層(実施例1)/無機層(Al2O3)/有機層(実施例1)/支持体/有機層(実施例1)/無機層(Al2O3)/有機層(実施例1)/無機層(Al2O3)/有機層(実施例1)/無機層(Al2O3
実施例33(表面互層、裏面互層)(本発明)
無機層(Al2O3)/有機層(実施例4)/無機層(Al2O3)/有機層(実施例4)/無機層(Al2O3)/有機層(実施例4)/支持体/有機層(実施例4)/無機層(Al2O3)/有機層(実施例4)/無機層(Al2O3)/有機層(実施例4)/無機層(Al2O3
比較例23(表面互層、裏面互層)
無機層(Al2O3)/有機層(比較例1)/無機層(Al2O3)/有機層(比較例1)/無機層(Al2O3)/有機層(比較例1)/支持体/有機層(比較例1)/無機層(Al2O3)/有機層(比較例1)/無機層(Al2O3)/有機層(比較例1)/無機層(Al2O3
【0072】
(密着性の試験)
バリア性積層体の密着性を評価する目的で、JIS K5400に準拠した碁盤目試験を行なった。上記層構成を有するバリア性フィルム基板の表面にそれぞれカッターナイフで膜面に対して90°の切込みを1mm間隔で入れ、1mm間隔の碁盤目を100個作製した。この上に2cm幅のマイラーテープ[日東電工製、ポリエステルテープ(No.31B)]を貼り付け、テープ剥離試験機を使用して貼り付けたテープをはがした。積層フィルム上の100個の碁盤目のうち剥離せずに残存したマスの数(n)をカウントし評価した。
【0073】
(有機EL発光素子での評価)
ガスバリア性を評価するために、水蒸気や酸素で黒点(ダークスポット)欠陥を生じる有機EL素子を作成し評価した。まず、ITO膜を有する導電性のガラス基板(表面抵抗値10Ω/□)を2−プロパノールで洗浄した後、10分間UV−オゾン処理を行った。この基板(陽極)上に真空蒸着法にて以下の化合物層を順次蒸着した。
(第1正孔輸送層)
銅フタロシアニン:膜厚10nm
(第2正孔輸送層)
N,N’−ジフェニル−N,N’−ジナフチルベンジジン:膜厚40nm
(発光層兼電子輸送層)
トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム:膜厚60nm
(電子注入層)
フッ化リチウム:膜厚1nm
この上に、金属アルミニウムを100nm蒸着して陰極とし、その上に厚さ3μm窒化珪素膜を平行平板CVD法によって付け、有機EL素子を作成した。
次に、熱硬化型接着剤(エポテック310、ダイゾーニチモリ(株))を用いて、作成した有機EL素子上と、上記でバリア性フィルム基板(3)で作製した各バリア性フィルム基板を、バリア層が有機EL素子の側となるように貼り合せ、65℃で3時間加熱して接着剤を硬化させた。このようにして封止された有機EL素子を各20素子ずつ作成した。
作成直後の有機EL素子をソースメジャーユニット(SMU2400型、Keithley社製)を用いて7Vの電圧を印加して発光させた。顕微鏡を用いて発光面状を観察したところ、いずれの素子もダークスポットの無い均一な発光を与えることが確認された。
最後に、各素子を60℃・相対湿度90%の暗い室内に24時間静置した後、発光面状を観察した。直径300μmよりも大きいダークスポットが観察された素子の比率を故障率と定義し、各素子の故障率を算出した。
その結果を下記表に示した。下記表中の層構成において、「有」は有機層を、「無」は無機層をそれぞれ示している。
【0074】
【表4】

【0075】
さらに、実施例23、実施例33および比較例23のバリア性フィルム基板を用いた有機EL発光素子を、TV等に必要な500cd/mで連続点灯させて、輝度を測定した。300cd/□になるまで、実施例23は2100時間、実施例33は2100時間、比較例23は1500時間必要だった。
【0076】
バリア性フィルム基板の作製(4)
上記バリア性フィルム基板の作製(2)と同様にして、支持体(帝人デュポン社製、テオネックスQ65FA、厚さ100μm)上に、下記表5に示した重合性化合物(合計20重量部)と重合開始剤(ランベルティ社、エザキュアKTO46)とからなる組成物を乾燥膜厚が600nmとなるようにメチルエチルケトンで調整して製膜し、酸素100ppm雰囲気下で紫外線照射量1.2J/cm2で照射して硬化させ、有機層を作製した。
その有機層表面に、膜厚が50nmとなるようにAlO3を真空スパッタで製膜してバリア性フィルム基板を作製した。得られたバリア性フィルム基板について、上記記載の実施例101と同様の手法で水蒸気透過率を測定した。また該バリアフィルムで有機EL素子を作製したところ、いずれの素子も、本発明のバリアフィルムを用いた場合は良好に点灯した。
【0077】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの有機層と、少なくとも1つの無機層とを有し、前記有機層が、ビスフェノール骨格を有し、かつ、脂肪族基を有する重合性化合物を1〜50重量%含有する重合性組成物を硬化させてなることを特徴とする、バリア性積層体。
【請求項2】
前記重合性化合物が、単官能の(メタ)アクリレートおよび単官能のエポキシ(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のバリア性積層体。
【請求項3】
前記重合性化合物が、一般式(A)で表される化合物である、請求項1に記載のバリア性積層体。
一般式(A)
【化1】

(一般式(A)中、Xは単結合または2価の連結基であり、L、L、LおよびLは、それぞれ、2価の連結基であり、R、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR10は、それぞれ、水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表わすが、少なくとも一つが置換もしくは無置換のアルキル基である。)
【請求項4】
前記重合性組成物が、多官能モノマーを50〜99重量%含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
【請求項5】
前記重合性組成物が、ビスフェノール骨格を有する多官能モノマーを50〜99重量%含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
【請求項6】
前記重合性組成物が、一般式(B)で表される化合物および/または一般式(E)で表される化合物を合計で50〜99重量%含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
一般式(B)
【化2】

(一般式(B)中、Xは単結合または2価の連結基であり、L、L、LおよびLは、それぞれ、2価の連結基であり、R、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR10は、それぞれ、水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表わす。)
一般式(E)
【化3】

(一般式(E)中、Xは単結合または2価の連結基であり、LおよびLは、それぞれ、2価の連結基であり、R11、R12、R13、R14、R15およびR16は、それぞれ、水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表わす。mおよびnはそれぞれ0〜12の整数を表す。)
【請求項7】
前記一般式(B)で表される化合物および/または一般式(E)で表される化合物のうち、少なくとも、一般式(B)で表される化合物を含む、請求項6に記載のバリア性積層体。
【請求項8】
前記一般式(B)で表される化合物および/または一般式(E)で表される化合物のうち、少なくとも、一般式(E)で表される化合物を含む、請求項6に記載のバリア性積層体。
【請求項9】
前記重合性組成物が、一般式(B)で表される化合物を50〜99重量%含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
一般式(B)
【化4】

(一般式(B)中、Xは単結合または2価の連結基であり、L、L、LおよびLは、それぞれ、2価の連結基であり、R、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR10は、それぞれ、水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表わす。)
【請求項10】
前記重合性組成物が、さらに、少なくとも1種のリン酸エステル基を有する(メタ)アクリレートモノマーを含有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
【請求項11】
前記重合性組成物が、さらに、下記一般式(P)で表される化合物を少なくとも1種含有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
一般式(P)
【化5】

(一般式(P)中、ZはAc−O−X−、重合性基を有しない置換基または水素原子を表し、ZはAc−O−X−、重合性基を有しない置換基または水素原子を表し、Ac、AcおよびAcはそれぞれアクリロイル基またはメタクリロイル基を表し、X、XおよびXはそれぞれアルキレン基、アルキレンオキシ基、アルキレンオキシカルボニル基、アルキレンカルボニルオキシ基、またはこれらの組み合わせからなる基を表す。)
【請求項12】
有機層と無機層とが互層構造になっている領域を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
【請求項13】
有機層と無機層とが互層構造になっている領域を含み、かつ、無機層を2層以上含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
【請求項14】
無機層が、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属酸化窒化物または金属酸化炭化物を含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
【請求項15】
基材フィルム上に、請求項1〜14のいずれか1項に記載のバリア性積層体を設けたバリア性フィルム基板。
【請求項16】
請求項15に記載のバリア性フィルム基板を基板に用いたデバイス。
【請求項17】
請求項15に記載のバリア性フィルム基板を用いて封止したデバイス。
【請求項18】
請求項1〜14のいずれか1項に記載のバリア性積層体を用いて封止したデバイス。
【請求項19】
前記デバイスが、電子デバイスである、請求項16〜18のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項20】
前記デバイスが、有機EL素子である、請求項16〜18のいずれか1項に記載のデバイス。

【公開番号】特開2010−234791(P2010−234791A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96759(P2009−96759)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】