説明

バリスティック透明体

バリスティック透明体10が、周縁部42を有する第1の層12と、第1の層12から間隔を置いて配置される、周縁部46を有する第2の層18と、第1の層12と第2の層18の間に配置されるポリマー層24と、ポリマー層24内に延びる第1の端部52、並びに第1の層12及び第2の層18の周縁部46、42を越えて延びる第2の端部54を有する少なくとも1つの可撓性マウント部材38とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2008年2月25日出願の米国仮出願第61/031,081号の優先権を主張するものであり、その全体を参照によって本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、一般にバリスティック透明体(ballistic transparency)に関するものであり、特定の一実施例では、防弾又は防爆車両用の透明体として特に有用なバリスティック透明体に関する。本発明はまた、バリスティック透明体をフレームに固定する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
バリスティック透明体は、車両の乗員を保護すると同時に、車両の乗員が車両の中から外を見ることができるようにする目的で長く用いられてきた。バリスティック透明体は、一般的には「防弾」又は「防爆」窓と呼ばれ、軍用車両及び警備車両に広く用いられている。従来型のバリスティック透明体は通常、互いに結合されて積層構造を形成するガラス及び/又はプラスチックの板ガラスの形をとる。
【0004】
バリスティック透明体を車両に取り付けるための様々な方法が知られている。例えば、1つの周知の方法では、バリスティック透明体は特別に製造された金属ケースメント(または枠)の内部に配置され、そのケースメントが車両に取り付けられる。しかし、この方法に伴う問題は、透明体をケースメントに取り付けることが難しく、時間がかかることである。また、透明体を取り外すこと又は交換することも困難である。
【0005】
他の周知の方法では、積層体のガラス板の1つの周縁部が他の板ガラスを越えて延びて、通常の車両のウィンド・フレームと係合させることが可能な突出部又は「リップ」を形成し、その結果、透明体を車両に取り付けるために特別に製造されたフレーム又はケースメントを不要にしている。この取付け方法は、ケースメントの方法に勝る利点をもたらすが、この方法に伴う問題は、厳しい爆発のデトネーション及び/又は透明体に対する高速の投射物の衝撃などによって引き起こされる極度の負荷の下では、透明体をフレーム内に保持する透明体の突出したリップに破断又は亀裂が生じる可能性があることである。最悪のシナリオの場合には、これによって透明体がフレームから部分的に又は完全に外れる可能性があり、車両の乗員を、その結果生じた穴を通して車両に入る弾丸又は他の物体の危険に曝すことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国仮出願第61/031,081号
【特許文献2】米国特許第4,746,347号
【特許文献3】米国特許第4,792,536号
【特許文献4】米国特許第5,030,593号
【特許文献5】米国特許第5,030,594号
【特許文献6】米国特許第5,240,886号
【特許文献7】米国特許第5,385,872号
【特許文献8】米国特許第5,393,593号
【特許文献9】米国特許第4,287,107号
【特許文献10】米国特許第3,762,988号
【特許文献11】米国特許第5,796,055号
【特許文献12】米国特許第6,280,826号
【特許文献13】米国特許第6,276,100号
【特許文献14】米国特許第5,445,890号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、周知のバリスティック透明体に伴う問題の少なくともいくつかを解消又は軽減する、バリスティック透明体、及びバリスティック透明体をフレームに取り付ける方法が提供されると有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
バリスティック透明体が、周縁部を有する第1の層と、第1の層から間隔を置いて配置される、周縁部を有する第2の層と、第1の層と第2の層の間に配置されるポリマー層と、ポリマー層の中に延びる第1の端部、並びに第1の層及び第2の層の周縁部を越えて延びる第2の端部を有する少なくとも1つの可撓性マウント部材とを有している。
【0009】
他のバリスティック透明体は、外側ガラス層と、内側ガラス層と、内側ガラス層と外側ガラス層の間でガラス層を互いに結合するように位置決めされた第1の中間層と、ポリカーボネート層と、内側ガラス層とポリカーボネート層の間で内側ガラス層及びポリカーボネート層を互いに結合するように位置決めされた第2の中間層と、内側ガラス層と外側ガラス層の間に位置決め及び積層された第1の部分、並びに透明体の周辺部を越えて延びる第2の部分を有する少なくとも1つの可撓性マウント部材とを有しており、この可撓性マウント部材は織ワイヤ・クロスである。
【0010】
バリスティック透明体組立体は、周縁部を有する第1の層と、第1の層から間隔を置いて配置される、周縁部を有する第2の層であって、第1の層の周縁部が第2の層の周縁部を越えて延びて突出部を形成している第2の層と、第1の層と第2の層の間に配置されるポリマー層と、ポリマー層内に延びる第1の端部、並びに第1の層及び第2の層の周縁部を越えて延びる第2の端部を有する少なくとも1つの可撓性マウント部材とを有するバリスティック透明体を有している。組立体はまた、係合要素を有するフレームを有し、第1の層の突出部はフレームの係合要素と係合し、可撓性部材の第2の端部はフレームに接続される。
【0011】
本発明の車両は、可撓性部材の第2の部分を通って延びるボルトによって車両内の開口部に少なくとも部分的に固定された、風防ガラスなどである本発明のバリスティック透明体を有する。
【0012】
以下の図面を参照して本発明を説明するが、全体を通して同じ参照番号は同じ部品を示す。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の特徴を組み込んだバリスティック透明体の平面図(一定の縮尺ではない)である。
【図2】図1の線II−IIに沿って得られる、図1のバリスティック透明体の横断面図(一定の縮尺ではない)である。
【図3】車両フレームに取り付けられた本発明のバリスティック透明体の縁部の横断面図(一定の縮尺ではない)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書で使用するとき、「左」、「右」、「内側」、「外側」、「上」、「下」などの空間又は方向に関する用語は、図面に示されている本発明に関連している。しかしながら、本発明は、様々な別の向きを想定することが可能であり、したがってそうした用語は限定するものとみなすべきではないことを理解されたい。さらに、本明細書で使用するとき、明細書及び特許請求の範囲で用いる寸法、物理的特徴、処理パラメータ、構成要素の数量、反応条件などを表すすべての数字は、すべての場合において「約」という用語によって修飾されているものと理解されたい。したがって特に指示しない限り、以下の明細書及び特許請求の範囲に記載される数値は、本発明によって得ようとする所望の特性に応じて変えることができる。最低限でも、また均等の原則の適用を特許請求の範囲に限定しようとするのではなく、各数値は少なくとも、報告された有効桁数を考慮し、通常の丸め技法を適用することによって解釈すべきである。さらに、本明細書において開示されるすべての範囲は、開始及び終了の範囲値、並びにその中に包含されるすべての部分範囲を含むものと理解されたい。例えば、指定された「1〜10」という範囲は、最小値1と最大値10の間の(且つそれらを含む)すべての部分範囲、すなわち、1以上の最小値で始まり、10以下の最大値で終わるすべての部分範囲、例えば1〜3.3、4.7〜7.5、5.5〜10などを含むとみなすべきである。さらに、本明細書で使用するとき、「〜の上に形成される」、「〜の上に置かれる」又は「〜の上に設けられる」という用語は、下にある面の上であるが、必ずしもその面に直接接触せずに形成されること、置かれること又は設けられることを意味する。例えば、基体「の上に形成された」層とは、形成された層と基体の間に配置される、同じ又は異なる構成の1つ又は複数の他の層の存在を排除するものではない。本明細書で使用するとき、「ポリマー」又は「ポリマーの」という用語は、オリゴマー、ホモポリマー、コポリマー及びターポリマー、例えば2種類以上のモノマー又はポリマーから形成されたポリマーを含む。「可視領域」又は「可視光」という用語は、380nm〜780nmの範囲の波長を有する電磁放射線を指す。「赤外領域」又は「赤外線」という用語は、780nm超〜100,000nmの範囲の波長を有する電磁放射線を指す。「紫外領域」又は「紫外線」という用語は、100nm〜380nm未満の範囲の波長を有する電磁エネルギーを意味する。さらに、それだけに限らないが、発行された特許及び特許出願など本明細書で参照されるすべての文書は、その全体を「参照によって援用する」ものとみなされたい。
【0015】
以下の考察のために、本発明は、車両フレームに取り付けられる車両用風防ガラスなど、車両用透明体の形の例示的且つ非限定的なバリスティック透明体に関連して論じられる。しかしながら、本発明は車両用透明体との使用に限定されず、それだけに限らないがほんの数例を挙げると、住宅用及び/又は商業建物用の窓、絶縁ガラス・ユニット、カーテン・ウォール、店頭(storefront)並びに/或いは陸上、航空、宇宙、水上及び水中車両用の透明体(例えば自動車用風防ガラス、サイド・ライト、バック・ライト、サンルーフ及びムーン・ルーフ)など、他の分野の物品と共に実施可能であることを理解されたい。したがって、特に開示される例示的な実施例は、単に本発明の全体的な概念を説明するために示され、本発明はこれらの特定の例示的な実施例に限定されるものではないことを理解されたい。
【0016】
以下に論じるように、本発明のバリスティック透明体は、それだけに限らないが、バリスティック透明体を形成するように互いに積層させたガラス及び/又はポリマー層など、複数の保護層を有する積層構造体である。使用される層の数及び/又はタイプは、バリスティック透明体の所望の用途に応じて大きく変えることが可能である。原則として、保護層が厚くなるほど多くの保護が与えられるが、透明体は重くなる。図1及び図2に示す例示的且つ非限定的な実施例では、バリスティック透明体10は、車両の外側に面するように設計された第1の主面14、すなわち外側主面、及び車両の内側に面する第2の主面16、すなわち内側主面を有する第1の保護層12(外側層)を含む。第2の保護層18は、第1の層12から間隔を置いて配置され、外側主面20及び内側主面22を有する。第1の層12及び第2の層18は、接着材料、例えば第1の接着性中間層24によって互いに固定される。第3の層28は、第2の層18から間隔を置いて配置され、外側主面30及び内側主面32を有する。第3の層28は、接着材料、例えば第2の接着性中間層34によって第2の層18に固定される。本発明の1つの観点では、少なくとも1つの本発明による周辺の補強及びマウント部材、例えば可撓性の取付け又はマウント部材38を、バリスティック透明体10に接続又は取付ける。可撓性部材38は、透明体10の外周辺部を越えて延び、透明体10を周囲の構造体若しくはフレームに固定するための手段、及び/又はバリスティック透明体10のフレームへの取付けを補強するための手段を提供する。バリスティック透明体10は、透明体の周辺部の少なくとも一部のまわりに不透明な辺縁40を含むことができる。バリスティック透明体10は、透明体10の周縁部に適用されたポリマー・シーラントを含むこともできる。
【0017】
本発明の広範な実施において、層12、18及び/又は28は、任意の所望の特性を有する、任意の所望の材料を含むことができる。例えば、層の1つ又は複数を、可視光に対して透過性又は半透過性とすることが可能である。「透過性」とは、可視光など所望の波長範囲において0%超から100%までの透過率を有することを意味する。或いは、層の1つ又は複数を半透過性にすることが可能である。「半透過性」とは、電磁放射線(例えば可視光)を透過させることができるが、この放射線を拡散又は散乱しないことを意味する。層に適切な材料の実例には、それだけに限らないが、熱可塑性、熱硬化性若しくはエラストマーのポリマー材料、ガラス、セラミックス、及びそれらの組合せ、複合材又は混合物が含まれる。適切な材料の特定の実例には、それだけに限らないが、プラスチック基体(例えば、ポリアクリレート類などのアクリル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレートなどのポリアルキルメタクリレート類、ポリウレタン類、ポリカーボネート類、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリアルキルテレフタレート類、ポリシロキサン含有ポリマー、若しくはこれらを調製するための任意のモノマーのコポリマー、又はそれらの任意の混合物)、セラミック基体、ガラス基体、又は前述のものの任意の混合物若しくは組合せが含まれる。例えば、層の1つ又は複数は、通常のソーダ石灰ケイ酸塩ガラス、ホウケイ酸塩ガラス又は鉛ガラスを含むことができる。ガラスは、透明なガラスとすることができる。「透明なガラス」とは、無色又は無着色のガラスを意味する。或いは、ガラスは色付きの又は着色したガラスとすることができる。ガラスは、焼鈍又は熱処理したガラスとすることができる。本明細書で使用するとき、「熱処理した」という用語は、焼き入れ、曲げ、熱強化又は積層が行われたことを意味する。ガラスは、通常のフロート・ガラスなど、任意のタイプのものとすることが可能であり、例えば可視透過率、紫外線透過率、赤外線透過率、及び/又は全体的な太陽エネルギーの透過率のうちの任意の値など、任意の光学特性を有する任意の組成のものとすることができる。層の1つ又は複数は、例えば透明なフロート・ガラス、又は色付きの若しくは着色したガラスとすることができる。本発明を限定するものではないが、層の1つ又は複数に適したガラスの実例が、米国特許第4,746,347号、第4,792,536号、第5,030,593号、第5,030,594号、第5,240,886号、第5,385,872号及び第5,393,593号に記載されている。層12、18及び/又は28は、任意の所望の寸法、例えば長さ、幅、形又は厚さのものとすることができる。本発明を実施するために使用することができるガラスの非限定的な実例には、それだけに限らないが、Starphire(登録商標)、Solarphire(登録商標)、Solarphire(登録商標)PV、Solargreen(登録商標)、Solextra(登録商標)、GL−20(登録商標)、GL−35(商標)、Solarbronze(登録商標)、CLEAR、及びSolargray(登録商標)ガラスが含まれ、これらはすべて、PPG Industries Inc.(ペンシルバニア州ピッツバーグ)から市販されている。
【0018】
図示した非限定的な実施例では、第1の層12はガラス層(外側ガラス層)である。ガラスは、通常のフロート・ガラス、又は焼鈍若しくは熱強化した(例えば焼き入れした)ガラスとすることができる。図2に示すように、外側ガラス層12は、他の層18及び28の周縁部46及び48をそれぞれ越えて延びる、第1の層12の周辺部によって画定される突出部42を形成している。以下にさらに詳しく説明するように、この突出部42によって、バリスティック透明体10を通常の車両用のウィンド・システムのフレームなどの構造体の係合要素と係合することが可能になる。特定の非限定的な一実施例では、第1の層12は、0.25〜7.5cm(0.1インチ〜3インチ)、0.25〜5cm(0.1インチ〜2インチ)、1.25〜5cm(0.5インチ〜2インチ)、1.25〜3.75cm(0.5インチ〜1.5インチ)、1.25〜2.5cm(0.5インチ〜1インチ)など、0.25〜10cm(0.1インチ〜4インチ)の範囲の厚さを有する。
【0019】
図示した非限定的な実施例では、第2の層18もガラス層(内側ガラス層)である。ガラスは、通常のフロート・ガラス、又は焼鈍若しくは熱強化した(例えば焼き入れした)ガラスとすることができる。特定の非限定的な一実施例では、第2の層18は、0.25〜7.5cm(0.1インチ〜3インチ)、0.25〜5cm(0.1インチ〜2インチ)、1.25〜5cm(0.5インチ〜2インチ)、1.25〜3.75cm(0.5インチ〜1.5インチ)、1.25〜2.5cm(0.5インチ〜1インチ)など、0.25〜10cm(0.1インチ〜4インチ)の範囲の厚さを有する。第1の層12及び第2の層18は、厚さが同じでも異なっていてもよく、またガラスのタイプが同じものでも異なったものでもよい。
【0020】
図示した非限定的な実施例では、第3の層28(内側層)はポリマー材料を含み、それは前述のポリマー材料の任意のものとすることができる。特定の非限定的な一実施例では、第3の層28はポリカーボネート層である。非限定的な一実施例では、第3の層は、0.3〜1.8cm(0.125インチ〜0.75インチ)、0.3〜1.25cm(0.125インチ〜0.5インチ)、0.3〜0.6cm(0.125インチ〜0.25インチ)など、0.25〜2.5cm(0.1インチ〜1インチ)の範囲の厚さを有することができる。
【0021】
前述のように、層12、18、28は、接着材料、例えば中間層24及び34によって互いに固定される。中間層24、34は、任意の所望の材料のものとすることが可能であり、1つ又は複数の層を含むことができる。例えば、中間層24、34は、例えばポリビニルブチラール、塑性化ポリ塩化ビニルなどのポリマー若しくはプラスチック材料、又はポリエチレンテレフタレートなどの多層熱可塑性材料などを含むことができる。適切な中間層の材料は、例えば米国特許第4,287,107号及び第3,762,988号に開示されているが、それらを限定するものとしてみなすべきではない。中間層24、34は、層12、18及び28を互いに固定する。さらに、中間層24、34は、エネルギー吸収を可能にし、ノイズを低減し、積層構造の強度を高めることができる。中間層24、34は、例えば米国特許第5,796,055号に記載される吸音又は減衰材料を含むこともできる。中間層24、34の一方又は両方が、その上に設けられた若しくは内部に組み込まれた太陽光制御コーティングを有すること、又は太陽エネルギー透過率を低減する着色材料を含むことが可能である。
【0022】
非限定的な一実施例では、第1の中間層24はポリビニルブチラールであり、0.5mm〜4mm、0.5〜3mm、0.5〜2.5mm、0.5mm〜1.5mm、0.75mm〜1.5mm、1mm〜1.5mm、1.25mmなど、0.5mm〜5mmの範囲の厚さを有する。第1の中間層24及び第2の中間層34は、厚さが同じでも異なっていてもよい。他の非限定的な実施例では、第1の中間層24はポリビニルブチラールとすることが可能であり、1mm〜3mm、2mm〜3mm、2.3mmなど、0.5mm〜3mmの範囲の厚さを有することができる。非限定的な一実施例では、第1の中間層24を第2の中間層34より厚くすることができる。
【0023】
非限定的な一実施例では、第2の中間層34はポリビニルブチラールであり、0.5mm〜4mm、0.5〜3mm、0.5〜2mm、0.5mm〜1.5mm、0.75mm〜1.5mm、1mm〜1.5mm、1.25mmなど、0.5mm〜5mmの範囲の厚さを有する。
【0024】
本発明を実施する際には、バリスティック透明体10に少なくとも1つの可撓性マウント部材38が取り付けられる。図1に示す実施例では、4つの別個の間隔を置いて配置された可撓性マウント部材38が示されている。図示した実施例では、バリスティック透明体10のそれぞれのAポスト(フロント・ピラー)に沿って2つの可撓性部材38が位置決めされ、中央近くに置かれており、互いに2.5〜10cm(1インチ〜4インチ)、2.57〜5cm(1インチ〜3インチ)、2.5〜5cm(1インチ〜2インチ)、3.75cm(1.5インチ)など、1.25〜12.5cm(0.5インチ〜5インチ)など、離れた距離のところに配置される。図2に示すように、可撓性マウント部材38の内側端部52は、中間層の1つ、例えば第1の中間層24に固定されるか、又はその中に組み込まれる。可撓性マウント部材38の外側端部54は、外層12の周縁部56を越えて延びている。特定の非限定的な一実施例では、可撓性マウント部材38の内側端部52は、第1の中間層24の中に、少なくとも1.8cm(0.75インチ)、少なくとも2.5cm(1インチ)、少なくとも3.75cm(1.5インチ)、少なくとも5cm(2インチ)、少なくとも6.25cm(2.5インチ)、少なくとも6.9cm(2.75インチ)、1.25〜7.5cm(0.5インチ〜3インチ)の範囲など、少なくとも1.25cm(0.5インチ)だけ延びている。内側端部52が積層体、例えば第1の中間層24の中に延びる距離は、所望の保護レベルに応じて変えることができる。原則として、内側端部52が積層体の中へ遠くに延びるほど、透明体10の周囲のフレームへの取付けが強固になる。可撓性部材38の内側端部52が、透明体10の視野領域を過度に減少させる、或いは視野領域に悪影響を及ぼすほど中間層24の中に深く延びすぎないことが望ましい。可撓性マウント部材38の外側端部54は、可撓性部材38の少なくとも一部をフレームの一部のまわりに巻き付ける、又はフレームの一部と少なくとも接触することができるように十分な距離だけ延びるようにする。非限定的な一実施例では、外側端部54が外層12の周縁部56を、少なくとも2.5cm(1インチ)、少なくとも3.75cm(1.5インチ)、少なくとも5cm(2インチ)、少なくとも7.5cm(3インチ)、少なくとも10cm(4インチ)、少なくとも12.5cm(5インチ)、11.25〜12.5cm(4.5インチ〜5インチ)の範囲など、少なくとも1.25cm(0.5インチ)だけ越えるようにする。
【0025】
可撓性マウント部材38は、バリスティック透明体10を車両フレームに固定するのに十分な強度及び完全性を有する任意の可撓性材料で製造することができる。「可撓性」とは、損傷又は破断することなく簡単に曲げる又は撓ませることができる材料を意味する。可撓性部材38に適した可撓性材料の非限定的な実例には、それだけに限らないが、ワイヤ・メッシュ又は織ワイヤ・クロスが含まれる。本明細書で使用するとき、「ワイヤ・クロス」という用語は、ワイヤ(2.5cm(1インチ)あたりのワイヤ)のメッシュの大きさ又は線密度によって決まる開口部を有する、格子若しくはスクリーンのパターンに織られた又は編まれた金属ワイヤを含む物品を指す。本発明の実施に有用なワイヤ・メッシュ製品は、それだけに限らないが、織り及び編みの様式、ワイヤの直径並びに材料のタイプを含む。ワイヤ・メッシュ及びワイヤ・クロス用の一般的な織りの様式には、平織り、綾織り及び畳織り、並びに変形形態が含まれる。ワイヤの直径及びメッシュの大きさは変えることができる。例えば非限定的な一実施例では、ワイヤの大きさを直径0.02〜0.9cm(0.007インチ〜0.375インチ)まで変えることができ、メッシュ(線2.5cm(1インチ)あたりの開口部の数)を4〜38まで変えることができる。織りのパターンによって様々な形の開口部を設けることが可能であり、ほんの数例を挙げると、正方形(すなわち、x方向とy方向の両方でメッシュが同じ長さである)、長方形(すなわち、x方向とy方向でメッシュが異なる)又はダイヤモンド形などがある。さらに、ただし本発明を制限することなく、ワイヤに使用可能な金属には、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、真鍮、青銅、チタン、ニッケル、モリブデン、タンタル、タングステン及びこれらの材料の合金が含まれる。他の実施例では、可撓性部材に対して、金属材料ではなく繊維材料を用いることが可能である。適切な繊維材料の実例には、それだけに限らないが、Kevlar(登録商標)、アラミド、又は高強度のファイバーグラス繊維が含まれる。これらの材料は、その耐候性及び耐用年数を改善するために、追加のコーティングを含むことができる。可撓性部材に適した材料の他の実例には、穿孔された金属及び延伸された金属の物品が含まれる。
【0026】
特定の非限定的な一実施例では、可撓性部材38は、Edward J.Darby&Sons,Inc.(ペンシルバニア州フィラデルフィア)から入手可能な直径0.03cm(0.012インチ)のT−304ステンレス鋼のワイヤ材で製造された、30メッシュ、正方形メッシュの織ワイヤ・クロスで形成される。可撓性部材38は任意の所望の寸法のものとすることが可能であり、同じ寸法のものでも異なる寸法のものでもよい。非限定的な一実施例では、可撓性部材38は、5〜37.5cm(2インチ〜15インチ)、7.5〜25cm(3インチ〜10インチ)、12.5〜25cm(5インチ〜10インチ)、15〜22.5cm(6インチ〜9インチ)、20cm(8インチ)など、2.5〜50cm(1インチ〜20インチ)の範囲の幅を有し、5〜37.5cm(2インチ〜15インチ)、12.5〜37.5cm(5インチ〜15インチ)、15〜37.5cm(6インチ〜15インチ)、20〜30cm(8インチ〜12インチ)、25cm(10インチ)など、2.5〜50cm(1インチ〜20インチ)の範囲の長さを有することができる。
【0027】
可撓性部材38は、任意の追加の方法で周囲の構造体又はフレームに固定することが可能である。非限定的な一実施例では、以下にさらに詳しく説明するように、可撓性部材38は、可撓性部材38をフレームに固定するために、1つ又は複数の穴60、或いはボルト又はねじなどの締結要素62を受け入れるように構成された他の締結部材を含むことができる。或いは、可撓性部材38の外側端部54は、溶接又はタック溶接によって構造体又はフレームに固定することができる。非限定的な一実施例では、透明体10は、2.5〜10cm(1インチ〜4インチ)、2.5〜7.5cm(1インチ〜3インチ)など、2.5〜12.5cm(1インチ〜5インチ)の範囲の厚さを有することができる。
【0028】
通常のセラミック・フリット又は塗料などの不透明な辺縁40を、ガラス層12、18の少なくとも1つに適用して、可撓性部材38の内側端部52を隠すこと又は覆うことができる。
【0029】
バリスティック透明体組立体66を図3に示す。外側層12の突出部42は、通常の接着剤又はシール・ストリップ70を用いて突出部42を溝又はチャネルなどの係合要素72の中に固定することなどにより、通常の車両のフレーム68などの構造体に固定される。しかし、他のバリスティック透明体とは異なり、本発明のバリスティック透明体10は、1つ又は複数の可撓性部材38によってもフレーム68(例えば、車両のAポストのなど車両の支柱の1つ)に固定される。図示した実施例では、可撓性部材38の外側端部54は、車両のAポストの少なくとも一部のまわりなど、フレーム68の一部の上又はまわりに少なくとも部分的に巻き付けられる。可撓性部材38を車両フレーム68に固定するために、ねじなどの締結要素62が可撓性部材38内の穴60と係合する。或いは、可撓性部材38を溶接によってフレームに固定することができる。したがって、本発明のバリスティック透明体10は、通常の実質的に剛性の接続(すなわち、通常の接着剤又は通常のシール・ストリップ70)によるだけではなく、可撓性部材38によってもフレーム68に固定され、それにより、第1の層12の突出部分(突出部42)に破断又は亀裂が生じた場合にも、バリスティック透明体10をフレーム68内に保持するのに十分な強度が与えられる。可撓性部材38は、突出部42が完全に破断した場合も、バリスティック透明体10がフレーム68から完全に分離するのを防止する。すなわち、爆発又は他の衝撃が外側層の突出部42に破断又は亀裂を生じさせるのに十分な力のものであっても、バリスティック透明体10は、1つ又は複数の可撓性部材38によっても固定されているため、依然としてフレーム68から完全に外れることがない。したがって、本発明のバリスティック透明体10は、これまでのバリスティック透明体に勝る利点をもたらす。
【0030】
次に、本発明のバリスティック透明体10を製造する方法について説明する。バリスティック透明体10は、米国特許第6,280,826号、第6,276,100号及び第5,445,890号に記載されるものなど、積層の技術分野でよく知られている従来型の積層技術を用いて製造することが可能である。層を上下に重ね、層の間に1つ又は複数の通常のポリマー・フイルムが存在するように配置することによって、「サンドイッチ」構造が作製される。結果として生じる中間層24、34の厚さは、いくつのポリマー・フイルムを使用するかによって決まる。外側の中間層24を形成するために、1つ又は複数のポリマー・フイルム・シートの周辺部を切り取り、可撓性部材38の内側端部52を内部に配置することが可能な空間を形成することができる。次いで、サンドイッチ構造を通常の方法で加熱してポリマー・シートを溶かし、可撓性部材38の内側端部52が最も外側の中間層24の中に埋め込まれた又は囲まれた状態で、中間層24、34を形成することができる。
【0031】
前述の説明において開示した概念から逸脱することなく、本発明に変更を加えることが可能であることが当業者には容易に理解されるであろう。したがって、本明細書において詳しく説明した特定の実施例は例示的なものにすぎず、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲の全範囲及びそのすべての均等物に与えられるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周縁部を有する第1の層と、
前記第1の層から間隔を置いて配置された、周縁部を有する第2の層と、
前記第1の層と前記第2の層の間に配置されたポリマー層と、
前記ポリマー層内に延びる第1の端部、並びに前記第1の層及び前記第2の層の前記周縁部を越えて延びる第2の端部を有する少なくとも1つの可撓性マウント部材と
を有するバリスティック透明体。
【請求項2】
前記第1の層及び前記第2の層がガラスである請求項1に記載の透明体。
【請求項3】
前記ポリマー層がポリビニルブチラールを含む請求項1に記載の透明体。
【請求項4】
前記可撓性マウント部材が織ワイヤ・クロスを含む請求項1に記載の透明体。
【請求項5】
前記透明体の周辺部のまわりに位置決めされた織ワイヤ・クロス部材であって、複数で別々の、間隔を置いて配置された織ワイヤ・クロス部材を含む請求項4に記載の透明体。
【請求項6】
他のポリマー層によって前記第2の層に固定されたポリカーボネート層を含む請求項1に記載の透明体。
【請求項7】
バリスティック透明体であって、
外側ガラス層と、
内側ガラス層と、
前記内側ガラス層と前記外側ガラス層の間に、前記ガラス層を互いに結合するように位置決めされた第1の中間層と、
ポリカーボネート層と、
前記内側ガラス層と前記ポリカーボネート層の間に、前記内側ガラス層及び前記ポリカーボネート層を互いに結合するように位置決めされた第2の中間層と、
前記内側ガラス層と前記外側ガラス層の間に位置決め及び積層された第1の部分、並びに前記透明体の周辺部を越えて延びる第2の部分を有する少なくとも1つの可撓性マウント部材と
を有するバリスティック透明体であって、
前記可撓性マウント部材が織ワイヤ・クロスであるバリスティック透明体。
【請求項8】
前記織ワイヤ・クロスが前記透明体の全周辺部のまわりに延びている請求項7に記載の透明体。
【請求項9】
前記可撓性マウント部材が、前記透明体の前記周辺部のまわりの所定の場所に位置決めされた織ワイヤ・クロス部材であって、複数で別々の、間隔を置いて配置された織ワイヤ・クロス部材を含む請求項7に記載の透明体。
【請求項10】
前記透明体が、車両用風防ガラス、バック・ライト又はサイド・ライトである請求項7に記載の透明体。
【請求項11】
前記透明体が車両用風防ガラスであり、前記可撓性マウント部材が少なくとも2つの間隔を置いて配置された織ワイヤ・クロス部材を含み、該織ワイヤ・クロス部材が、前記透明体の各Aポストに沿って位置決めされている請求項7に記載の透明体。
【請求項12】
請求項5に記載の風防ガラスを有する車両であって、前記風防ガラスが、前記可撓性部材の前記第2の部分を通って延びるボルトによって前記車両内の開口部に少なくとも部分的に固定されている車両。
【請求項13】
バリスティック透明体およびフレームを有するバリスティック透明体組立体であって、
前記バリスティック透明体が、
周縁部を有する第1の層と、
前記第1の層から間隔を置いて配置された、周縁部を有する第2の層であって、前記第1の層の前記周縁部が前記第2の層の前記周縁部を越えて延びて突出部を形成している第2の層と、
前記第1の層と前記第2の層の間に配置されたポリマー層と、
前記ポリマー層内に延びる第1の端部、並びに前記第1の層及び前記第2の層の前記周縁部を越えて延びる第2の端部を有する少なくとも1つの可撓性マウント部材と
を有し、
前記フレームが係合要素を有し、前記第1の層の前記突出部が前記フレームの前記係合要素と係合し、また前記可撓性部材の前記第2の端部が前記フレームに接続されるバリスティック透明体組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−523916(P2011−523916A)
【公表日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−547858(P2010−547858)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【国際出願番号】PCT/US2009/035110
【国際公開番号】WO2009/139944
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(399074983)ピーピージー・インダストリーズ・オハイオ・インコーポレイテッド (60)
【氏名又は名称原語表記】PPG Industries Ohio,Inc.
【Fターム(参考)】