説明

バルブアダプタおよびこのバルブアダプタを備えた自転車

【課題】英式のタイヤバルブなどに設けられる切溝を有するバルブステムに装着することができ、かつ、米式のタイヤバルブなどに装着する一般的な空気圧測定器を接続可能なバルブアダプタを提供する。
【解決手段】バルブステム2内に配設され、空気通路31aを有するインナ31と、バルブステム2の反タイヤ側開口端部に取り付けられ、タイヤ側へ弁体32aが押されることにより空気がタイヤ内部に注入されることを許容するバルブコア32を有するアウタ33と、を備え、インナ31の外周面に、バルブステム2の内周面に接触してタイヤ内部からの空気が外部に洩れることを防止するシール部31cが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車用などのタイヤに取り付けられたタイヤバルブに装着されるバルブアダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
自転車のタイヤには、空気が注入されるチューブが内装されている。このようにチューブが内装されたタイヤには、チューブへの空気の注入を許容し、かつ注入された空気を保持するタイヤバルブが取り付けられている。このタイヤバルブは、英式バルブと米式バルブと仏式バルブとの3種類のものがある。特に日本では、自転車のタイヤバルブとしては殆ど英式バルブが用いられている。なお、オートバイなどの二輪車や自動車のタイヤバルブとしては、日本では米式バルブが用いられている。
【0003】
図14〜図16に示すように、英式のタイヤバルブ1は、外周面におねじ部2aが、また内部に空気通路2dが形成されているとともにタイヤとは反対側の開口端部における2箇所に切溝2bが形成されている略円筒形状のバルブステム2と、バルブステム2内に挿入されるとともに虫ゴム(ゴムチューブ)3が装着されるプランジャ4と、バルブステム2の端部に装着されるトップナット(いわゆる袋ナット)5と、バルブステム2におけるトップナット5から突出する部分に被せられるキャップ6と、バルブステム2を車輪のリム(図示せず)に固定するナット8などから構成されている。なお、7はチューブに接合されるゴム座で、このゴム座7に代わりに、座金でチューブに接合されるものもある。また、2cはバルブステム2のおねじ部2aの一部が面状に除去された面取り部である。なお、以下においては、タイヤバルブ1やバルブステム2、プランジャ4などにおいて、ゴム座7が設けられる側をタイヤ側、キャップ6が装着される側を反タイヤ側などと称することにする。
【0004】
プランジャ4は、バルブステム2と同軸心で軸心方向に延びる略棒形状とされ、その外周面には、タイヤ側から順に、細径部4a、テーパ面部4b、段付溝部4c、太径部4d、おねじ部4eなどが形成されている。また、プランジャ4の内部には、プランジャ4の軸心方向に沿って反タイヤ側端部からタイヤ側端部近傍まで延びる空気通路4fと、空気通路4fのタイヤ側端部からプランジャ4の半径方向に延びて、空気通路4fをプランジャ4の外側に連通させる連通孔4gとが形成されている。プランジャ4の細径部4a、テーパ面部4bおよび段付溝部4cには、連通孔4gが開口する箇所も含めて虫ゴム3が装着され、空気注入時以外には、虫ゴム3により連通孔4gが塞がれて、チューブ内の空気が保持される。また、バルブステム2にも、プランジャ4のテーパ面部4bに対応する位置に、反タイヤ側ほど広がるテーパ面部2fが形成されており、このバルブステム2のテーパ面部2fとプランジャ4のテーパ面部4bとが虫ゴム3を挟んだ状態で対向するように配設される。
【0005】
さらに、プランジャ4には、バルブステム2の切溝2bに嵌まり込む突条部4hが形成されている。そして、トップナット5をバルブステム2のおねじ部2aにねじ込むことで、突条部4hでプランジャ4がタイヤ側に押圧され、これにより、テーパ面部2f、4b間の虫ゴム3が圧縮されて、テーパ面部2f、4b間および切溝2bから空気が逃げないようシールされる。
【0006】
この英式のタイヤバルブ1が取り付けられているタイヤに空気を注入する場合には、ポンプの接続部に設けられた鰐口状の口金をタイヤバルブ1に係合させた状態で、ポンプから圧力をかけて空気を注入する。これにより、注入される空気の圧力により虫ゴム3が径方向外側に押し開かれてタイヤのチューブ内に空気が導入される。
【0007】
これに対して、米式のタイヤバルブ10は、図17、図18に示すように、反タイヤ側開口端の外周面におねじ部12aが形成された略円筒形状のバルブステム12と、このバルブステム12内に配設されたバルブコア(逆止弁)13と、キャップ14などから構成されている。また、バルブコア13には、空気通路13aが形成されたコア本体13bと、このコア本体13bを貫通して出退自在に配設され、バルブステム12内の先端部側にその先端が突出されたロッド部13cと、ロッド部13cに固定されてロッド部13cと一体的に移動する弁体13dと、弁体13dが空気通路13aを閉じる方向(ロッド部13cが反タイヤ側に戻る方向)に付勢する付勢ばね13eなどが設けられている。
【0008】
この米式のタイヤバルブ10が取り付けられているタイヤに空気を注入する場合には、ポンプの接続部に設けられた突起部21を有する口金20をタイヤバルブ10に係合させることで、突起部21がロッド部13cに当接して、弁体13dがコア本体13bから離脱して開けられるので、この状態でポンプから空気を注入する。米式のタイヤバルブ10に対しては、タイヤの内圧を測定する空気圧測定器も装着することができ、空気圧測定器の口金もポンプと同様に突起部を有する構造とされている。また、同様な構成の口金を有する空気圧測定器付きのポンプも米式のタイヤバルブ10に接続することが可能である。
【0009】
ところで、タイヤ(詳しくはタイヤのチューブ)には走行する際に最適な空気圧がある。この最適空気圧よりも空気圧が低い場合には、路面抵抗が増加して走行時により大きな力を必要としたり、接地面にある突起物などに対して、チューブを挟んだ状態でリムが当接してパンク(いわゆるリム打ちパンク)し易くなったりする不具合を生じる。また、最適空気圧よりも空気圧が高い場合には、地面からの振動を吸収し難くなって乗り心地が悪くなるなどの不具合を生じる。したがって、自転車においても、自動車やオートバイなどの二輪車と同様に、タイヤを最適な空気圧に保つことが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−159647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、英式のタイヤバルブ1は、ポンプ側から高めの空気圧を作用させることで、虫ゴム3が押し開かれて、ポンプ側とチューブ内とが通じる構造であるので、米式のタイヤバルブ10に接続する一般的な空気圧測定器を英式のタイヤバルブ1に取り付けても、虫ゴム2が閉じたままであり、タイヤの空気圧を測定することができない。したがって、一般には、英式のタイヤバルブ1が取り付けられている自転車のタイヤに対しては空気圧を管理したり、空気圧を測定しながらタイヤに空気を入れたりすることができないという課題があった。
【0012】
なお、英式のタイヤバルブ1に対しても空気圧を測定可能にするものとして、特許文献1に、英式のタイヤバルブ1に取り付け可能な自転車用タイヤバルブが開示されている。しかし、この自転車用タイヤバルブは極めて複雑な構造であり、しかも、前記自転車用タイヤバルブに対応した専用の空気圧測定器を装着する構造である。そのため、自転車用タイヤバルブおよび専用の空気圧測定器の製造コストがかさむことが考えられ、世間一般に広くは普及していないのが現状である。
【0013】
本発明は上記課題を解決するもので、英式のタイヤバルブなどに設けられる切溝を有するバルブステムに装着することができ、かつ、米式のタイヤバルブなどに装着する一般的な空気圧測定器を接続可能なバルブアダプタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明は、反タイヤ側開口端部に切溝が形成されたバルブステムに装着されるバルブアダプタであって、バルブステム内に配設され、空気通路を有するインナと、前記バルブステムの反タイヤ側開口端部に取り付けられ、タイヤ側へ弁体が押されることにより空気がタイヤ内部に注入されることを許容するバルブコアを有するアウタと、を備え、前記インナの外周面に、前記バルブステムの内周面に接触してタイヤ内部からの空気が外部に洩れることを防止するシール部が設けられていることを特徴とする。
【0015】
この構成において、一般に用いられる空気圧測定器やポンプの口金をバルブアダプタに接続すると、空気圧測定器やポンプの口金に設けられている突起部によりバルブコアに設けられている弁体がタイヤ側へ押されて開けられる。これにより、タイヤ内の空気圧を測定したり、ポンプから空気を注入したりすることを支障なく行うことができる。また、空気圧測定器やポンプの口金を接続していない場合には、バルブコアの弁体が閉じられるとともに、インナに設けられたシール部がバルブステムの内周面に接触しているので、バルブステムに設けられた切溝などからタイヤ内部の空気が外部に洩れることを防止できる。
【0016】
また、本発明のバルブアダプタは、前記バルブステムの内周部に、反タイヤ側ほど広がるテーパ面部が形成され、前記インナのシール部が前記テーパ面部に圧接されていることを特徴とする。この構成により、インナのシール部がバルブステムのテーパ面部に圧接されてバルブステムに設けられた切溝などからタイヤ内部の空気が外部に洩れることを良好に防止できる。
【0017】
また、本発明のバルブアダプタは、前記インナのシール部の少なくとも一部が、バルブステム内における前記切溝よりもタイヤ寄り位置に配設されていることを特徴とする。この構成により、バルブステムに設けられた切溝からタイヤ内部の空気が外部に洩れることを良好に防止できる。
【0018】
なお、インナのシール部の全体が、バルブステム内における前記切溝よりもタイヤ寄り位置になるように配設してもよい。このように構成すると、インナのシール部の全体が、前記切溝を通して外部に露出しない構造となるので、インナのシール部が切溝を通して外部に露出している場合と比較して、シール部の劣化が最小限に抑えられ、シール効果を長期間にわたって良好に維持できる。
【0019】
また、本発明のバルブアダプタの前記アウタは、バルブステムの反タイヤ側開口端部から反タイヤ側に延びる姿勢で取り付けられ、空気通路を有するアウタボディと、このアウタボディ内に配設されている前記バルブコアとを備え、前記バルブコアは、前記弁体とこの弁体から反タイヤ方向に延びるロッド部とを有することを特徴とする。この構成によれば、比較的簡単な構成で前記アウタを構成することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、バルブステム内に空気通路を有するインナを配設し、前記インナの外周面に、前記バルブステムの内周面に接触してタイヤ内部からの空気が外部に洩れることを防止するシール部を設けたので、バルブステムに設けられた切溝などからタイヤ内部の空気が外部に洩れることを防止できる。また、バルブステムの反タイヤ側開口端部に、タイヤ側へ弁体が押されることにより空気がタイヤ内部に注入されることを許容するバルブコアを有するアウタを設けたので、一般に用いられる空気圧測定器やポンプの口金をバルブアダプタに接続することができて、タイヤ内の空気圧を測定したり、ポンプから空気を注入したりすることを支障なく行うことができる。
【0021】
また、インナのシール部が、前記バルブステムの内周部に形成されたテーパ面部に圧接される構造とすることにより、バルブステムに設けられた切溝などからタイヤ内部の空気が外部に洩れることをより良好に防止できる。
【0022】
また、インナのシール部の全体が、バルブステム内における前記切溝よりもタイヤ寄り位置になるように配設すると、インナのシール部の全体が、前記切溝を通して外部に露出しない構造となるので、インナのシール部が切溝を通して外部に露出している場合と比較して、シール部の劣化が最小限に抑えられ、シール効果を長期間にわたって良好に維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に係るバルブアダプタを、自転車のタイヤに取り付けられたバルブステムに装着した状態を示す斜視図
【図2】同バルブアダプタを、バルブステムに装着する状態を示す分解斜視図
【図3】同バルブアダプタを、バルブステムに装着する状態を示す分解断面図
【図4】同バルブアダプタを、バルブステムに装着した状態を示す断面図
【図5】同バルブアダプタのインナの断面図
【図6】同バルブアダプタのアウタの断面図
【図7】同バルブアダプタに口金を接続した状態を示す断面図
【図8】本発明の実施の形態に係るバルブアダプタにおけるインナの変形例の断面図
【図9】同インナを有するバルブアダプタを、バルブステムに装着した状態を示す断面図
【図10】本発明の実施の形態に係るバルブアダプタにおけるインナの他の変形例の断面図
【図11】同インナを有するバルブアダプタを、バルブステムに装着した状態を示す断面図
【図12】本発明の他の実施の形態に係るバルブアダプタを、バルブステムに装着した状態を示す断面図
【図13】同バルブアダプタに口金を接続した状態を示す断面図
【図14】英式のタイヤバルブの断面図
【図15】英式のタイヤバルブの分解断面図
【図16】英式のタイヤバルブの分解斜視図
【図17】米式のタイヤバルブの断面図
【図18】米式のタイヤバルブに口金を接続した状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態に係るバルブアダプタについて、図面を参照しながら説明する。なお、従来の英式のタイヤバルブ1の構成要素と同じものには同符号を付す。
図1において、30はバルブアダプタであり、このバルブアダプタ30は、自転車等のタイヤ50(詳しくは、タイヤ50に内装されたチューブ)への空気注入口となる英式のタイヤバルブ1(図14〜図16参照)に用いられているバルブステム2に装着される。なお、図1における51はタイヤ50が装着されるリムである。また、この実施の形態においても、バルブステム2やバルブアダプタ30の各構成要素において、タイヤ50に接合されるゴム座7が設けられる側(図1、図4などにおける下側)をタイヤ側、キャップ34が装着される側(図1、図4などにおける上側)を反タイヤ側、円筒状のバルブステム2やバルブアダプタ30の中心を通る方向を軸心方向などと称することにする。
【0025】
図2、図3などに示すように、バルブステム2は、図14〜図16に示す英式のタイヤバルブ1から、虫ゴム3が装着されたプランジャ4やトップナット5およびキャップ6が取り外されて、残っている状態であり、残されたバルブステム2に対してバルブアダプタ30が組み付けられている。なお、上述したように、バルブステム2は略円筒形状とされており、外周面におねじ部2aが、また内部に空気通路2dが形成されているとともにタイヤとは反対側の開口端部における2箇所に切溝2bが形成されている。さらに、バルブステム2のおねじ部2aの一部が面状に除去されて面取り部2cが形成され、バルブステム2の内周には、反タイヤ側ほど広がるテーパ面部2fが形成されている。また、図2、図3などにおける7は、タイヤ50に内装されたチューブに接合されるゴム座で、このゴム座7に代わりに、座金でチューブに接合されるものもある。
【0026】
図4に示すように、バルブアダプタ30は、バルブステム2の反タイヤ側開口端部からバルブステム2内に挿入された状態で配設され、空気通路31aを有するインナ31と、バルブステム2の反タイヤ側開口端部からさらに反タイヤ側に延びる姿勢で取り付けられ、内部に設けられた弁体32aがタイヤ側へ押されることにより空気がタイヤ50の内部に注入されることを許容するバルブコア32を有するアウタ33と、アウタ33に被せられるキャップ34などを備えている。
【0027】
図5に示すように、インナ31は、軸心方向に延びる空気通路31aを有するインナ本体31bと、インナ本体31bにおけるタイヤ側の細径部に装着されているシール部31cとから構成されている。ここで、シール部31cは、バルブステム2内に配設された状態において、バルブステム2の内周面に形成されたテーパ面部2fに接触して、タイヤ50の内部からの空気が外部に洩れることを防止する。また、この実施の形態においては、シール部31cは、一部がバルブステム2の切溝2bから外部側に露出しているが、シール部31cのタイヤ側箇所は、バルブステム2内における切溝2bよりもタイヤ寄り位置まで配設されている。また、この実施の形態においては、インナ本体31bの反タイヤ側端部には、太径の鍔状部31dが一体形成されている。ここで、例えば、インナ本体31bは、真鍮またはアルミニウムなどの金属で構成し、シール部31cは、樹脂またはゴムからなる弾性体で構成することが好ましい。インナ本体31bをアルミニウムで構成した場合は、軽くて腐食し難い利点がある。また、シール部31cに用いる弾性体材料は、適度な弾力を有していればよい。特に、シール部31cの弾性体材料として、ナイロンを用いることで、安価で、成形性に優れ、適度な弾力を有する利点がある。また、シール部31cとして、ハイスチレンゴムを用いることで、適度な硬度を得られ易い利点がある。
【0028】
図6に示すように、アウタ33は、略円筒形状のアウタボディ部35と、このアウタボディ部35の軸心方向に沿って延びる孔部35a内に配設されているバルブコア32と、アウタボディ部35のタイヤ側寄りの孔部35b内に配設されている円環形状のパッキン36とからなる。なお、孔部35aは、空気通路とバルブコア配設空間との機能を兼ねている。さらに、アウタボディ部35の内部には、孔部35a、35bの間を軸心方向に繋ぐように形成された空気通路35cと、孔部35bからタイヤ側に延びて、バルブステム2のおねじ部2aに螺合するめねじ部35dが形成されている。アウタボディ部35の外周には、キャップ34が被せられるおねじ部35eと、アウタ33をバルブコア32に取り付ける際にねじ込み易いように凹凸が形成された把持用部35fとが形成されている。
【0029】
バルブコア32は、軸心方向に出退自在に配設されたロッド部32bと、ロッド部32bのタイヤ側端部近傍に取り付けられた弁体32aと、孔部35aの壁面に接するとともにタイヤ側に弁体32aが当接される弁座部32fが形成されている外枠部32cと、弁体32aを反タイヤ側に付勢する付勢ばね32dと、外枠部32cとロッド部32bとの間に形成された空気通路32eなどを有している。そして、ロッド部32bが外力を受けない状態では、弁体32aが閉じられて、バルブコア32を通して空気が流通することがないよう保持されている。
【0030】
上記構成において、オートバイなどの二輪車や自動車のタイヤバルブとしては米式バルブが用いられているが、この米式バルブに対して接続される、一般的な空気圧測定器やポンプの口金20をバルブアダプタ30に接続すると、図7に示すように、空気圧測定器やポンプの口金20に設けられている突起部21によりバルブコア32に設けられているロッド部32bがタイヤ側へ押圧される。これにより、バルブコア32の弁体32aがタイヤ側へ押されて弁座部32fから離間して開けられ、バルブコア32を通して空気が自由に流通可能な状態となる。したがって、空気圧測定器を接続した場合にはタイヤ50内(詳しくはタイヤ50のチューブ内)の空気が空気圧測定器側に流れ込んで、タイヤ50内の空気圧を正確かつ容易に測定することができる。また、ポンプを接続した場合には、ポンプからの空気がタイヤ50内(詳しくはタイヤ50のチューブ内)に良好に流れ込んで、タイヤ50に空気を良好に注入することができる。これにより、最適な空気圧でタイヤ50に空気を良好に注入することができて、リム打ちパンクの発生を最小限に抑えることができ、かつ、地面からの振動を良好に吸収できて良好な乗り心地を維持できる。
【0031】
また、この際、空気圧測定器やポンプの口金20をバルブアダプタ30に接続するだけで弁体32aがタイヤ側へ押されて開けられるので、弁体32aを開けるための空気圧などを余分に必要せず、ポンプが手押しポンプである場合でも比較的小さな力で空気を注入することができる。つまり、英式のタイヤバルブ1が装着される場合には、虫ゴム3を空気圧で押し開くための力を余分に必要とするので、ポンプが手押しポンプである場合では大きな空気圧となるまで比較的大きな力で空気を注入しなければならないが、本発明の実施の形態によればこのようなことがない。また、英式のタイヤバルブ1用のポンプに空気圧測定器を付けることも考えられるが、この場合には、空気圧測定器で測定した空気圧よりも、虫ゴム3を押し開くための空気圧分だけ低い空気圧しかタイヤに注入できていないため、最適な空気圧でタイヤに空気を注入したつもりでも、タイヤの空気圧が低くてリム打ちパンクを生じやすくなる恐れがある。これに対して、本発明の実施の形態によればこのような不具合を生じない。
【0032】
また、空気圧測定器やポンプの口金20をバルブアダプタ30に接続していない場合には、図4などに示すように、付勢ばね32dの付勢力によってバルブコア32の弁体32aが閉じられる。また、インナ31に設けられたシール部31cがバルブステム2の内周面に設けられているテーパ面部2fに接触しているので、バルブステム2に設けられた切溝2bなどからタイヤ内部の空気が外部に洩れることを防止できる。
【0033】
なお、この実施の形態では、インナ31のシール部31cの少なくとも一部が、バルブステム2内における切溝2bに露出する位置に配設されている場合を述べたが、これに限るものではない。すなわち、図8、図9に示すように、インナ31のシール部31cの全体が、バルブステム2内における切溝2bよりもタイヤ寄り位置になるようにインナ31を形成してもよい。
【0034】
このように構成すると、インナ31のシール部31c全体が、切溝2bを通して外部に露出しない構造となるので、インナ31のシール部31cが切溝2bを通して外部に露出している場合と比較して、シール部31cの劣化が最小限に抑えられ、シール効果を長期間にわたって良好に維持できる。つまり、シール部31cが切溝2bを通して外部に露出する場合には、露出部分が外気や雨水等に晒されることになるので、劣化が早まることがあるが、本構成によればこのようなことがない。
【0035】
また、上記実施の形態では、インナ31が、金属などからなるインナ本体31bと、弾性体からなるシール部31cとの2つの部品から構成した場合を述べたが、これに限るものではない。すなわち、図10、図11に示すように、シール部31cを含めてインナ31全体を弾性体で一体形成してもよい。この構成によれば、インナ31全体を1つの部品で構成できるため、インナ本体31bとシール部31cとの2つの部品から構成した場合と比べて部品点数を低減できる利点がある。また、この場合に、インナ31における反タイヤ側端部に設けられている太径の鍔状部31dの厚さを大きくして、この鍔状部31dが、アウタ33のパッキンの機能を兼用できるよう構成しても良い。この構成によれば、さらに部品点数ならびに組立工数を低減できて、コスト低減を図ることが可能となる。インナ31に用いる弾性体材料として、ナイロンを用いることで、安価で、成形性に優れ、適度な弾力を有する利点がある。また、インナ31として、ハイスチレンゴムを用いることで、適度な硬度を得られ易い利点がある。インナ31の弾性体材料は、これらと同等の弾力を有していればよく、例示した弾性体材料に限るものではない。
【0036】
また、上記実施の形態では、バルブアダプタ30の反タイヤ側部分の形状を米式バルブと共通形状または類似形状などに構成して、米式バルブに対して接続される、一般的な空気圧測定器やポンプの口金20に接続できるよう構成したが、これに限るものではなく、図12、図13に示すように、バルブアダプタ130の反タイヤ側部分(すなわち接続部)の形状を仏式バルブと共通の形状に構成して、仏式バルブに対して接続される、空気圧測定器やポンプの口金120に接続できるよう構成してもよい。
【0037】
すなわち、図12、図13に示すように、バルブステム2に接続されるインナ31は、上記バルブアダプタ30と同様な構成を採用すればよい。一方、アウタ133は例えば以下のような構成とする。アウタボディ部135内を、弁体132aとロッド部132bとを有するバルブコア部132が、軸心方向に沿って形成された空気通路132e内を移動自在に構成する。そして、バルブコア部132の反タイヤ側に形成されたねじ部132gに螺合するめねじ部品136を回転することで、バルブコア部132が軸心方向に沿って移動して、バルブコア部132の弁体132aがアウタボディ部135に形成された弁座部132fに当接させて空気通路132eを閉鎖したり(図12参照)、離間させたりして空気通路132eを開放させたりする(図13参照)。この場合、アウタ133の、口金120に接続するおねじ部133aの形状を仏式バルブと共通の形状に構成すればよい。このような構成によっても、仏式バルブに対して接続される、空気圧測定器やポンプの口金120に良好に接続でき、空気圧を良好に計測できる。
【0038】
なお、上記実施の形態では、タイヤ5にチューブが内挿されている場合を述べ、チューブに空気が注入される場合について述べたが、これに限るものではなく、チューブがないタイヤ(すなわちチューブレスタイヤ)に接合されたバルブステム2に装着するバルブアダプタとしても適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のバルブアダプタは、英式のタイヤバルブのバルブステムだけでなく、反タイヤ側開口端部に切溝が形成されたバルブステムに装着することが可能である。
また、車椅子等、自転車用のタイヤが使用できるものであれば、本発明のバルブアダプタを用いることができる。
【符号の説明】
【0040】
2 バルブステム
2a おねじ部
2b 切溝
2c 面取り部
2d 空気通路
2f テーパ面部
30 バルブアダプタ
31 インナ
31a 空気通路
31b インナ本体
31c シール部
31d 鍔状部
32 バルブコア
32a 弁体
32b ロッド部
32d 付勢ばね
32e 空気通路
32f 弁座部
33 アウタ
35 アウタボディ部
50 タイヤ
130 バルブアダプタ
133 アウタ
135 アウタボディ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反タイヤ側開口端部に切溝が形成されたバルブステムに装着されるバルブアダプタであって、
バルブステム内に配設され、空気通路を有するインナと、
前記バルブステムの反タイヤ側開口端部に取り付けられ、タイヤ側へ弁体が押されることにより空気がタイヤ内部に注入されることを許容するバルブコアを有するアウタと、
を備え、
前記インナの外周面に、前記バルブステムの内周面に接触してタイヤ内部からの空気が外部に洩れることを防止するシール部が設けられていることを特徴とするバルブアダプタ。
【請求項2】
前記バルブステムの内周部に、反タイヤ側ほど広がるテーパ面部が形成され、前記インナのシール部が前記テーパ面部に圧接されていることを特徴とする請求項1記載のバルブアダプタ。
【請求項3】
前記インナのシール部の少なくとも一部が、バルブステム内における前記切溝よりもタイヤ寄り位置に配設されていることを特徴とする請求項1または2に記載のバルブアダプタ。
【請求項4】
前記インナのシール部の全体が、バルブステム内における前記切溝よりもタイヤ寄り位置に配設されていることを特徴とする請求項3に記載のバルブアダプタ。
【請求項5】
前記アウタは、バルブステムの反タイヤ側開口端部から反タイヤ側に延びる姿勢で取り付けられ、空気通路を有するアウタボディと、このアウタボディ内に配設されている前記バルブコアとを備え、
前記バルブコアは、前記弁体とこの弁体から反タイヤ方向に延びるロッド部とを有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のバルブアダプタ。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載のバルブアダプタを備えていることを特徴とする自転車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−149738(P2012−149738A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10318(P2011−10318)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】