説明

バルブ機構

【課題】液面よりも上方においてオイルを排出させる場合であっても、気泡の発生を最小限に抑制可能なバルブ機構の提供を目的とした。
【解決手段】バイパスバルブ80は、オイルクーラに向けて流れるオイルが流通する油路に接続されたバイパス流路に設けられるものである。バイパスバルブ80は、バイパス流路へのオイルの流入を調整するための弁体100を備えた弁部90と、弁部90と連通したオイル溜部92とを有する。バイパスバルブ80は、オイル溜部92の底部に排出孔96が設けられており、排出孔96の開口領域の大きさが、オイル溜部92の断面領域の大きさよりも小さい。また、オイル溜部92には、オイルを横方向に排出可能な開口98が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される変速装置のバルブボデーにおいてオイルをドレンさせるために設けられたオイルドレン部におけるバルブ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されている自動変速機の油圧制御装置のように、変速装置のバルブボデーにおいて、一方向弁にて余分なオイルを排出させるためのバルブ機構を備えたものが提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平7−20437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術のバルブ機構においては、オイルがバルブボデー内に形成された経路において衝突等する間に空気を巻き込んだ状態になり、気泡を多く含む状態で排出される傾向にある。また、近年、車両の軽量化、小型化等のためにオイルの使用量が抑制され、液面よりも上方においてバルブボデーからオイルが排出される傾向にあり、排出されたオイルが液面に衝突することに伴う衝撃によってオイルが泡立ってしまう可能性がある。特に、排出されたオイルの流速が早い場合には、気泡の発生率が顕著に上昇する傾向にある。気泡を多く含むオイルがストレーナを介してオイルポンプに吸い込まれると、異音が発生し、ユーザーに不快感を与えてしまいかねない。
【0005】
そこで、本発明は、液面よりも上方においてオイルを排出させる場合であっても、気泡の発生を最小限に抑制可能なバルブ機構の提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決すべく提供される本発明のバルブ機構は、車両に搭載される変速装置のバルブボデーにおいてオイルが流通する主流路に接続されたバイパス流路に設けられるものであって、前記バイパス流路へのオイルの流入を調整するための弁体を備えた弁部と、前記弁部と連通したオイル溜部と、を有する。本発明のバルブ機構は、前記オイル溜部の底部に排出孔が設けられており、前記排出孔の開口領域の大きさが、前記オイル溜部の断面領域の大きさよりも小さいこと、を特徴としている。
【0007】
かかる構成によれば、弁部を通過してきたオイルがオイル溜部に一旦溜められた状態になり、その後に排出孔から排出されるため、排出孔に至る経路の途中でオイルが空気を巻き込むことを阻止し、気泡率の上昇を防止することができる。また、オイル溜部を設けることにより、オイルの排出速度を低下させ、オイルの排出に伴う気泡の発生率を抑制することが可能となる。従って、本発明のバルブ構造を採用することにより、気泡を含むオイルがオイルポンプに吸い込まれることによる異音の発生を防止できる。
【0008】
本発明のバルブ機構は、前記弁部からオイル溜部に至る経路、及び/又はオイル溜部に、オイルを横方向に排出可能な開口が設けられたものであることが好ましい。
【0009】
かかる構成とすることにより、オイル溜部の底部に設けられた排出孔から液面に向けて直接的に排出されるオイルの排出量を抑制することが可能となる。これにより、オイルが液面に衝突することによる気泡の発生を防止しうる。また、排出孔に加え、横方向にオイルを排出可能な開口を設けることにより、オイルの排出能力を十分確保することが可能である。これにより、バイパス流路側に対するオイルの流入量が増加した場合であっても、オイルの排出速度の上昇を抑制し、オイルが液面に衝突することによる気泡の発生を防止しうる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車両の軽量化、小型化等のためにオイルの使用量が抑制され、液面よりも上方においてバルブボデーよりオイルを排出させる場合であっても、気泡の発生を最小限に抑制可能なバルブ機構を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係るバルブ機構を搭載した車両のスケルトン図である。
【図2】図1に示す車両に搭載されているトランスミッションシステムを一部破断した状態で示した側面図である。
【図3】図1に示す車両に採用されている油圧経路を示す回路図である。
【図4】図3に示す油圧経路において、本発明の一実施形態に係るバルブ機構を含む部分を示した回路図である。
【図5】(a)は図1に示す車両に搭載されているバルブボデーにおいてバルブ機構が形成された部位を示した平面図であり、(b)はバルブ機構が形成された部分を拡大した拡大図である。
【図6】本発明の一実施形態に示すバルブ機構を示す断面図であり、(a)は弁体が閉じた状態、(b)は弁体が開いた状態を示す。
【図7】本発明の一実施形態に示すバルブ機構をバルブボデーの天面側の部分を取り除いた状態で示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
続いて、本発明の一実施形態に係るバイパスバルブ80(バルブ機構)、バイパスバルブ80を備えたバルブボデー70、バルブボデー70を搭載した車両Aについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本実施形態は、バイパスバルブ80に特徴を有するものであるが、バイパスバルブ80の説明に先立ち車両A及びバルブボデー70の構造について簡単に説明する。また、車両Aは、図3に示すような油圧回路OCを備えているが、本実施形態のバイパスバルブ80に関連する箇所を除く他の部分についての説明については省略する。また、図5及び図7については、後に詳述するバルブボデー70においてバイパスバルブ80に直接的に関係する部分及びその近傍についてのみ図示し、他の部分については省略する。
【0013】
本実施形態の車両Aは、図1に示すようにトランスミッションシステムT、エンジンE等を備えている。トランスミッションシステムTは、FF横置き式の自動車用変速機であり、エンジン出力軸1によりトルクコンバータ2を介して駆動される入力軸3、入力軸3の回転を正逆切り替えて駆動軸10に伝達する前後進切替装置4、駆動プーリ11と従動プーリ21と両プーリ間に巻き掛けられたVベルト15とからなる無段変速装置7、従動軸20の動力を出力軸32に伝達するデファレンシャル装置30などをケーシング5内に収容した構造とされている。入力軸3と駆動軸10とは同一軸線上に配置され、従動軸20とデファレンシャル装置30の出力軸32とが入力軸3に対して平行でかつ非同軸に配置されている。したがって、このトランスミッションシステムTは、全体として3軸構成とされている。
【0014】
本実施形態において採用されているVベルト15は、一対の無端状張力帯と、これら張力帯に支持された多数のブロックとで構成された公知の金属ベルトである。
【0015】
トランスミッションシステムTを構成する各部品は、ケーシング5の中に収容されている。トルクコンバータ2は、入力側のポンプインペラ2a、出力側のタービンランナ2b、及びステータ2cを備えている。ポンプインペラ2aとタービンランナ2bとの間には、両者を機械的に係脱するロックアップクラッチ2dが設けられている。ポンプインペラ2aは、エンジンEの出力軸1と連結されている。タービンランナ2bは、入力軸3と連結されている。ロックアップクラッチ2dの片側には、締結側油室2eが設けられており、他方側には解放側油室2fが設けられている。締結側油室2e及び解放側油室2fの差圧は、後に詳述する油圧回路OCに設けられたロックアップ用油圧調整バルブ72、ソレノイドバルブ74、及び制御油圧調整バルブ76を用いて制御することができる。
【0016】
トルクコンバータ2と前後進切替装置4との間には、オイルポンプ6が配置されている。このオイルポンプ6は、図1では示さないが、ケーシング5に固定されたオイルポンプボデーと、オイルポンプボデーに対して固定されたオイルポンプカバーと、オイルポンプボデーとオイルポンプカバーとの間に収容されたポンプギヤとで構成されている。そして、ポンプギヤはトルクコンバータ2のポンプインペラ2aにより駆動される。
【0017】
オイルポンプ6は、エンジンEから入力される動力により作動するものである。従って、オイルポンプ6の動作は、エンジンEと連動する。すなわち、エンジンEの作動中はオイルポンプ6も作動するが、エンジンEが停止するとオイルポンプ6も停止する。また、オイルポンプ6を作動させることにより、後に詳述する前後進切替装置4やCVT7などの各油圧作動装置に向けてオイルを圧送し、ライン圧(油圧)を作用させることができる。従って、エンジンEの停止中は、前後進切替装置4やCVT7に対して油圧を作用させることができない。
【0018】
前後進切替装置4は、遊星歯車機構40と、逆転ブレーキ50と、直結クラッチ51とで構成されている。遊星歯車機構40は、いわゆるシングルピニオン方式のものであり、サンギヤ41が入力回転部材である入力軸3に連結され、リングギヤ42が出力回転部材である駆動軸10に連結された構成とされている。逆転ブレーキ50は、本発明における発進クラッチに相当するものであり、ピニオンギヤ43を支えるキャリア44とケーシング5との間に設けられている。また、直結クラッチ51は、キャリア44とサンギヤ41との間に設けられている。直結クラッチ51を解放して逆転ブレーキ50を締結すると、入力軸3の回転が逆転され、かつ減速されて駆動軸10へ伝えられる。逆に、逆転ブレーキ50を解放して直結クラッチ51を締結すると、遊星歯車機構40のキャリア44とサンギヤ41とが一体に回転するので、入力軸3と駆動軸10とが直結される。
【0019】
無段変速装置7の駆動プーリ11は、固定シーブ11aと、可動シーブ11bと、油圧サーボ12とを備えている。固定シーブ11aは、駆動軸(プーリ軸)10の軸上に一体的に形成されている。可動シーブ11bは、駆動軸10上にローラスプライン部を介して軸方向移動自在に、かつ一体回転可能に支持されている。油圧サーボ12は、可動シーブ11bの背後に設けられている。可動シーブ11bの外周部には、背面側へ延びるピストン部が一体に形成され(図示せず)、このピストン部の外周部が駆動軸10に固定されたシリンダ(図示せず)の内周部に摺接している。可動シーブ11bとシリンダとの間に油圧サーボ12の作動油室12aが形成され、この作動油室12aへの油圧を制御することにより、変速制御が実施される。
【0020】
従動プーリ21は、固定シーブ21aと、可動シーブ21bと、油圧サーボ22とを備えている。固定シーブ21aは、従動軸(プーリ軸)20上に一体的に形成されている。可動シーブ21bは、従動軸20上にローラスプライン部(図示せず)を介して軸方向移動自在に、かつ一体回転可能に支持されている。油圧サーボ22は、可動シーブ21bの背後に設けられている。可動シーブ21bの外周部には、背面側へ延びるシリンダ部(図示せず)が一体に形成され、シリンダ部の内周部に従動軸20に固定されたピストン(図示せず)が摺接している。可動シーブ21bとピストンとの間に油圧サーボ22の作動油室22aが形成され、この作動油室22aの油圧を制御することによりVベルト15に作用する挟圧が調整され、トルク伝達に必要なベルト推力が与えられる。なお、作動油室22aには初期推力を与えるスプリング24が配置されている。Vベルト15に作用する挟圧の大きさは、図示しない油圧回路において作動油室22aに至る経路に設けられた圧力センサから発信された検知信号に基づき、後に詳述する油圧制御装置CPにおいて検知することができる。
【0021】
従動軸20の一端部は、エンジンE側に向かって延びており、この一端部に出力ギヤ27が固定されている。出力ギヤ27はデファレンシャル装置30のリングギヤ31に噛み合っており、デファレンシャル装置30から左右に延びる出力軸32に動力が伝達され、車輪が駆動される。
【0022】
エンジンEは、内燃機関によって構成されるものであり、開度(出力)を調節し得る電子制御式のスロットルSを備えている。エンジンEは、出力軸1を介して上述したトランスミッションシステムTに接続されており、動力をトルクコンバータ2やオイルポンプ6に対して入力可能とされている。エンジンEは、上述したCVT7と連携作動するように動作制御されている。
【0023】
ケーシング5は、エンジンEのクランクケースに結合され、上記トルクコンバータ2及びデファレンシャル装置30を収容している。図2に示すように、ケーシング5の下合面には、オイルが充填されたオイルパン60がボルト締め固定されている。オイルパン60内にはストレーナ62が配置されている(図2においては不図示)。
【0024】
ケーシング5の底部であってストレーナ62の上方側の位置には、バルブボデー70が配置されている。バルブボデー70は、図3に示す油圧経路OCを構成するための溝及び凹部等が形成されたブロックを複数のボルトによって油密に結合した構造のものである。バルブボデー70には、油圧経路に連通するストレーナ62の吐出口が接続されている。また、バルブボデー70には、油圧経路OCにおける油圧を調整するためのロックアップ用油圧調整バルブ72、ソレノイドバルブ74、制御油圧調整バルブ76、レギュレータ弁110、クラッチモジュレータ弁111、ソレノイドモジュレータ弁112、ガレージシフト弁113、マニュアル弁114、アップシフト用制御弁115、ダウンシフト用制御弁116、レシオチェック弁117、挟圧コントロール弁118、変速ソレノイド弁119,120、リニアソレノイド弁SLS等が接続されている。
【0025】
図3及び図4に示すように、油圧経路OCには、トルクコンバータ2のロックアップ制御を行うための油圧経路OC1が含まれている。油圧経路OC1は、オイルポンプ6とトルクコンバータ2とを繋ぐ経路である。図3及び図4に示すように、油圧経路OC1は、ロックアップ用油圧調整バルブ72、ソレノイドバルブ74、制御油圧調整バルブ76、オイルクーラ78、バイパスバルブ80(バルブ機構)、及び、これらを繋ぐ油路によって形成されている。
【0026】
図3等に示すように、ロックアップ用油圧調整バルブ72は、スプリング72a、スプール72b、信号ポート72c、入力ポート72d、第1出力ポート72g(図4においては不図示)、第2出力ポート72hを有する。スプール72bは、スプリング72aにより一方向から付勢されており、スプリング72aと対向する位置に設けられた信号ポート72cにソレノイドバルブ74から出力された出力圧Psが入力されている。入力ポート72dには、制御油圧調整バルブ76から元圧Poが入力されている。第1出力ポート72gは、油路82を介してロックアップクラッチ2dの解放側油室2fと接続されている。また、第2出力ポート72hは、油路84を介してロックアップクラッチ2dの締結側油室2eと接続されている。
【0027】
ソレノイドバルブ74からロックアップ用油圧調整バルブ72の信号ポート72cに入力される出力圧Psが所定値以下の場合には、元圧Poが入力ポート72d、第1出力ポート72gを介してロックアップクラッチ2dの解放側油室2fに供給され、ロックアップクラッチ2dが解放された状態になる。ソレノイドバルブ74から信号ポート72cに入力される出力圧Psが所定値以上に上昇すると、元圧Poが入力ポート72d、及び第2出力ポート72hを介してロックアップクラッチ2dの締結側油室2eに供給され、ロックアップクラッチ2dが締結された状態になる。
【0028】
オイルクーラ78は、ロックアップ用油圧調整バルブ72を通過してきたオイルの油温を低下させるために設けられたものある。オイルクーラ78は、油路86(主流路)を介してロックアップ用油圧調整バルブ72の第2出力ポート72hとロックアップクラッチ2dの締結側油室2eとを繋ぐ油路84の中途に接続されている。
【0029】
また、バイパスバルブ80は、オイルクーラ78に作用する油圧を制限するために設けられたものである。バイパスバルブ80は、オイルクーラ78に繋がる油路86の中途に接続されたバイパス油路88に対して接続されている。
【0030】
図5(a)に示すように、バイパスバルブ80は、バルブボデー70の側面70a近傍に設けられている。図5〜図7に示すように、バイパスバルブ80は、弁部90、オイル溜部92、排出経路94、排出孔96、及び開口98をバルブボデー70に形成し、弁体100及びバネ102を弁部90に収容した構造とされている。図5(b)、図6(b)及び図7において矢印で示すように、バイパスバルブ80は、弁部90の上方に形成されている流入口104を介してバイパス油路88からオイルを流入させ、排出孔96及び開口98からオイルパン60に向けてドレンさせることが可能とされている。
【0031】
バイパスバルブ80の構造についてさらに詳細に説明すると、弁部90及びオイル溜部92は、溝状の排出経路94を介して上端側(バルブボデー70の天面側)の位置において連通するように形成されている。弁部90は、開口形状が円形の凹部によって構成されている。弁体100は、バネ102によってバルブボデー70の天面側に向けて付勢されておいる。弁体100は、常時においては、図6(a)に示すように弁部90の真上に形成されている流入口104、及び排出経路94と弁部90との境界部分を封鎖している。また、バイパス油路88における油圧が所定圧以上になると、弁体100は、図6(b)に示すようにバネ102の付勢力に反してバルブボデー70の底面側に押圧され移動した状態になる。このように弁体100が作動することにより、流入口104と排出経路94とが連通し、バイパス油路88からバイパスバルブ80側にオイルが流入可能な状態になる。
【0032】
オイル溜部92は、バルブボデー70に形成された開口形状が円形の凹部によって構成されている。オイル溜部92は、底面側に排出孔96を有し、天面側の位置に開口98を有する。バルブボデー70を車両Aに組み付けた状態において、排出孔96及び開口98は、オイルパン60に貯留されているオイルの液面よりも上方側に位置している。排出孔96は、オイル溜部92に流入したオイルを下方に向けて排出するための孔である。排出孔96の開口領域の大きさは、オイル溜部92の断面積よりも小さい。具体的には、排出孔96の開口径は、オイル溜部92の内径よりも小さい。言い換えれば、オイル溜部92は、底面側において開口面積が縮小されている。また、開口98は、バルブボデー70の側面に向けて開口しており、排出経路94に流入したオイルを横方向に排出することができる。
【0033】
本実施形態のバイパスバルブ80は、オイル溜部92の底部に設けられた排出孔96の開口領域の大きさ(開口径)が、オイル溜部92の断面領域の大きさ(内径)よりも小さい。これにより、弁体100を押し動かし、弁部90及び排出経路94を通過してきたオイルがオイル溜部92に一旦溜めた後、排出孔96から排出されることになり、排出孔96に至る経路の途中でオイルが空気を巻き込むことを阻止し、気泡率の上昇を防止することができる。また、オイル溜部92を設けることにより、オイルパン60内に貯留されているオイルの液面に向けて排出されるオイルの排出速度を低下させ、気泡の発生率を抑制することが可能となる。従って、バイパスバルブ80を上述したような構成とすることにより、気泡を含むオイルがオイルポンプ6に吸い込まれることによる異音の発生を防止できる。
【0034】
また、上述したバイパスバルブ80は、オイル溜部92の天面側の位置にオイル排出用の開口98が設けられているため、オイル溜部92の底部に設けられた排出孔96から液面に向けて直接的に排出されるオイルの排出量を抑制することが可能となる。これにより、排出孔96から下方に向けて排出されたオイルが、オイルパン60内に貯留されているオイルに衝突することによる気泡の発生を防止しうる。また、排出孔96に加えて開口98を設けることにより、バイパスバルブ80におけるオイルの排出能力を十分確保することが可能である。これにより、バイパス油路88へのオイルの流入量が増加した場合であっても、オイルの排出速度の上昇を抑制し、オイルが液面に衝突することによる気泡の発生を防止しうる。
【0035】
本実施形態では、オイルを横方向に排出するための開口98をオイル溜部92に設けた構成を例示したが、本発明はこれに限定される訳ではなく、開口98は排出経路94に設けられていても良く、排出経路94からオイル溜部92に亘って設けられていても良い。また、上述した開口98は、オイル溜部92の天面側に形成されたものであるが、オイル溜部92の高さ方向中間部、オイル溜部92の底部近傍等に形成されていても良い。
【0036】
また、本実施形態では、オイル溜部92の底面に設けられた排出孔96を略円形の開口によって構成し、オイル溜部92の側面に設けられた開口98を略矩形の開口によって構成した構成を例示したが、本発明はこれに限定されるわけではなく、排出孔96及び開口98の形状はいかなる形状であっても良い。
【0037】
本実施形態では、バイパスバルブ80を無段変速装置7を搭載した車両Aに用いた例を例示したが、本発明はこれに限定される訳ではなく、オートマチック式のトランスミッションを搭載した車両等にも好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0038】
80 バイパスバルブ
86 油路(主流路)
88 バイパス油路
90 弁部
92 オイル溜部
94 排出経路
96 排出孔
98 開口
100 弁体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される変速装置のバルブボデーにおいてオイルが流通する主流路に接続されたバイパス流路に設けられるバルブ機構であって、
前記バイパス流路へのオイルの流入を調整するための弁体を備えた弁部と、
前記弁部と連通したオイル溜部と、を有し、
前記オイル溜部の底部に排出孔が設けられており、
前記排出孔の開口領域の大きさが、前記オイル溜部の断面領域の大きさよりも小さいこと、を特徴とするバルブ機構。
【請求項2】
前記弁部からオイル溜部に至る経路、及び/又はオイル溜部に、オイルを横方向に排出可能な開口が設けられていること、を特徴とする請求項1に記載のバルブ機構。

【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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