説明

バルブ駆動機構およびバルブ装置

【課題】弁体の可動量が大きい場合であっても、弁体の移動方向において、小型化を図ることが可能なバルブ駆動機構を提供すること。
【解決手段】流体の流入部または流体の流出部を開閉する弁体14の開閉動作を行うバルブ駆動機構5は、駆動用コイル26と、駆動用コイル26の一端面に対向配置される略平板状の駆動用磁石27と、駆動用コイル26が形成される基板25と、Z方向を軸方向として配置され基板25を回動可能に支持する軸受部28とを備えている。このバルブ駆動機構5は、駆動用磁石27に対する軸受部28を中心とした基板25の揺動動作によって、弁体14の開閉動作を行う。また、駆動用コイル26の端部に接続されるリード線47は、基板25の側面25e、25fに沿って引き回されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流れを制御するための弁体の開閉動作を行うバルブ駆動機構およびこのバルブ駆動機構を備えるバルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体の流れを制御するバルブ装置として、軸方向に往復移動して弁室から流体が流出する流出口の開閉を行う可動軸と、可動軸を駆動するためのコイルおよび永久磁石とを備えるバルブ装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載のバルブ装置では、円筒状に巻回されたコイルと、円筒状に形成された永久磁石とが可動軸の軸方向で重なるように配置されている。また、可動軸は、磁性体で形成されており、コイルおよび永久磁石の内周側に配置されている。このバルブ装置では、コイルへの通電方向を切り替えることで、可動軸の端部に形成される磁極が切り替わり、可動軸が軸方向に移動して流出口の開閉を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−16935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のバルブ装置では、可動軸が軸方向に移動して流出口の開閉を行う。そのため、このバルブ装置では、可動軸の可動量を大きくすると、可動軸の軸方向でコイルおよび永久磁石が大型化する。すなわち、このバルブ装置では、可動軸の可動量を大きくすると、可動体の移動方向において、可動軸を駆動するための駆動機構を小型化することが困難である。
【0005】
そこで、本発明の課題は、弁体の可動量が大きい場合であっても、弁体の移動方向において、小型化を図ることが可能なバルブ駆動機構およびこのバルブ駆動機構を備えるバルブ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明は、流体の流入部または流体の流出部を開閉する弁体の開閉動作を行うバルブ駆動機構において、駆動用コイルと、駆動用コイルの一端面に対向配置される略平板状の駆動用磁石と、駆動用コイルが形成されまたは配置される基板と、駆動用コイルと駆動用磁石との対向方向に略平行な方向を軸方向として配置され基板を回動可能に支持する軸受部とを備え、駆動用磁石に対する軸受部を中心とした基板の揺動動作によって、弁体の開閉動作を行うとともに、駆動用コイルの端部側、または、駆動用コイルの端部に接続される配線は、基板の、駆動用コイルが形成または配置される面に略直交する側面に沿って引き回されていることを特徴とする。
【0007】
本発明のバルブ駆動機構では、略平板状の駆動用磁石と駆動用コイルの一端面とが対向配置され、駆動用コイルが形成される基板の、駆動用磁石に対する軸受部を中心とした揺動動作によって、弁体の開閉動作を行っている。そのため、基板の揺動量を大きくすれば、弁体の可動量を大きくすることが可能になる。すなわち、弁体の移動方向において、駆動用コイルおよび駆動用磁石を大型化しなくても、弁体の可動量を大きくすることが可能になる。したがって、本発明では、弁体の可動量が大きい場合であっても、弁体の移動方向において、バルブ駆動機構を小型化することが可能になる。
【0008】
また、本発明では、駆動用コイルが形成される基板が揺動する。そのため、駆動用磁石が揺動する場合と比較して、揺動する部材の慣性モーメントを低減することができ、揺動する部材の応答性を向上させることが可能になる。さらに、本発明では、駆動用コイルの端部側、または、駆動用コイルの端部に接続される配線は、基板の、駆動用コイルが形成または配置される面に略直交する側面に沿って引き回されている。したがって、揺動する部材の慣性モーメントを低減させるため、駆動用コイルが形成される基板を揺動させる場合であっても、駆動用コイルと駆動用磁石との対向方向において、駆動用コイルの端部側または配線の影響でバルブ駆動機構が大型化するのを抑制することができる。その結果、基板を揺動させる場合であっても、駆動用コイルと駆動用磁石との対向方向において、バルブ駆動機構を小型化することが可能になる。
【0009】
本発明において、基板は、円周方向の一部に切欠部を有する略扇形状に形成され、駆動用コイルの端部側または配線は、基板の径方向における切欠部の内側部分から径方向の外側に向かって、かつ、切欠部の側面に沿って引き回されていることが好ましい。このように構成すると、基板からの、駆動用コイルの端部側の引出し部分または配線の引出し部分を切欠部の中に配置することができる。したがって、基板の径方向外側に向かって、駆動用コイルの端部側の引出し部分または配線の引出し部分が突出するのを防止することが可能になり、駆動用コイルと駆動用磁石との対向方向に直交する方向において、バルブ駆動機構を小型化することが可能になる。
【0010】
本発明において、駆動用コイルの端部側または配線は、切欠部において弛む弛み部を備えることが好ましい。この場合には、たとえば、弛み部は、駆動用コイルの端部側または配線が折り曲げられて形成されている。このように構成すると、基板が揺動するときの駆動用コイルの端部側や配線の突っ張りを防止して、駆動用コイルの端部側や配線の断線を防止することが可能になる。また、弛み部は、切欠部に配置されているため、基板の径方向外側に向かって、弛み部が突出するのを防止することが可能になり、駆動用コイルと駆動用磁石との対向方向に直交する方向において、バルブ駆動機構を小型化することが可能になる。
【0011】
本発明において、バルブ駆動機構は、弛み部の一部を固定する固定部材を備えることが好ましい。このように構成すると、基板が揺動するときに、弛み部が基板に引っ掛かるのを防止することが可能になる。
【0012】
本発明において、径方向における切欠部の内側端には、径方向の内側に向かって窪む凹部が形成され、凹部から駆動用コイルの端部側が引き出され、または、凹部で駆動用コイルの端部に配線が接続されていることが好ましい。このように構成すると、駆動用コイルの端部側の引出し部分あるいは駆動用コイルの端部と配線との接続部分と、他の構成部品との接触を防止することが可能になり、駆動用コイルの端部側の引出し部分、あるいは、駆動用コイルの端部と配線との接続部分を適切に保護することが可能になる。
【0013】
本発明のバルブ機構は、流入部および流出部が形成されるとともに弁体を有するバルブ機構を備えるバルブ装置に用いることができる。このバルブ装置では、弁体の可動量が大きい場合であっても、弁体の移動方向において、バルブ駆動機構を小型化することが可能になる。また、このバルブ装置では、揺動する部材の応答性を向上させることが可能になるとともに、駆動用コイルと駆動用磁石との対向方向において、駆動用コイルの端部側または配線の影響でバルブ駆動機構が大型化するのを抑制することができる。
【0014】
本発明において、バルブ装置は、たとえば、軸受部の軸方向から見たときの形状が略四角形状となるように形成されるとともに、駆動用コイルの端部または配線の端部が接続される2個の端子を備え、端子は、バルブ装置の四隅のうちの、対角線上に配置される2箇所のそれぞれに配置され、駆動用コイルの端部側または配線は、側面としての基板の外周面に沿って端子まで引き回されている。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明では、弁体の可動量が大きい場合であっても、弁体の移動方向において、バルブ駆動機構およびバルブ装置を小型化することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態にかかるバルブ装置の斜視図である。
【図2】図1のバルブ装置の分解斜視図である。
【図3】図1に示すバルブ機構の斜視図である。
【図4】図3に示すバルブ機構の断面図である。
【図5】図3に示すバルブ機構の分解斜視図である。
【図6】図1に示すバルブ装置からカバー部材を取り外した状態を示す平面図である。
【図7】図6のE−E断面の断面図である。
【図8】図2に示す減速板および連結部材の斜視図である。
【図9】図1に示すバルブ装置の、弁体が流入部を開放しているときの状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
(バルブ装置の概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるバルブ装置1の斜視図である。図2は、図1のバルブ装置1の分解斜視図である。
【0019】
本形態のバルブ装置1は、図1に示すように、扁平な略直方体状に形成されている。このバルブ装置1は、非常に小さくかつ薄く形成されており、たとえば、その縦幅および横幅は15mm程度であり、その厚さは1.5mm程度である。バルブ装置1は、図1、図2に示すように、流体の流入口2および流出口3を有するバルブ機構4と、バルブ機構4を構成する後述の弁体14の開閉動作を行うためのバルブ駆動機構5とを備えている。また、バルブ装置1は、平板状に形成されるベース部材6と、ベース部材6上に配置されるバルブ駆動機構5を覆うカバー部材7とを備えている。
【0020】
なお、以下の説明では、図1に示すように、互いに直交する3方向のそれぞれをX方向、Y方向およびZ方向とする。また、図1のX1方向側を「右」側、X2方向側を「左」側、Y1方向側を「前」側、Y2方向側を「後(後ろ)」側、Z1方向側を「上」側、Z2方向側を「下」側とする。
【0021】
(バルブ機構の構成)
図3は、図1に示すバルブ機構4の斜視図である。図4は、図3に示すバルブ機構4の断面図である。図5は、図3に示すバルブ機構4の分解斜視図である。
【0022】
バルブ機構4は、図4、図5に示すように、内部に弁室10が形成される本体部11を備えている。本体部11には、弁室10に流入する流体が通過する流入部12と弁室10から流出する流体が通過する流出部13とが形成されている。また、バルブ機構4は、流入部12を開閉する弁体14と、流入部12に繋がる流入孔17aと流出部13に繋がる流出孔17bとが形成されるシール部材17とを備えている。
【0023】
本体部11は、上下方向に扁平な略直方体状に形成されている。この本体部11は、前後方向に分割可能な樹脂製の第1本体部19と第2本体部20とを備えている。本形態では、第1本体部19が後ろ側に配置され、第2本体部20が前側に配置されており、第1本体部19と第2本体部20とは互いに固定されている。
【0024】
第1本体部19は、上下方向に扁平な略直方体状に形成されている。この第1本体部19の内部に、弁室10、流入部12および流出部13が形成されている。また、第1本体部19には、弁体14を構成する後述のダイヤフラム部14bが配置される第1配置凹部19aと、シール部材17が配置される第2配置凹部19bとが形成されている。第1配置凹部19aは、第1本体部19の前端面から後ろ側に向かって窪むように形成され、第2配置凹部19bは、第1本体部19の後端面から前側に向かって窪むように形成されている。
【0025】
弁室10は、第1配置凹部19aに繋がるように、第1本体部19の前端側に形成されている。図5に示すように、弁室10と第1配置凹部19aとの境界部には、Z方向とX方向とから形成されるZX平面に平行な段差面19cが形成されている。流入部12は、弁室10の右端側の後面に繋がるように形成されるとともに、第2配置凹部19bに繋がるように形成されている。流出部13は、弁室10の左端側の後面に繋がるように形成されるとともに、第2配置凹部19bに繋がるように形成されている。
【0026】
流入部12には、前後方向から見たときの形状が略円形状となる丸孔状の小径部12aと、小径部12aよりも径の大きな丸孔状の大径部12bとが形成されている。図4に示すように、小径部12aは、流入部12の前端側に形成されており、小径部12aの前端は、前側に向かうにしたがって前後方向に直交する方向に広がるように形成された円錐台状の傾斜面部12cを介して弁室10に繋がっている。大径部12bは、流入部12の後端側に形成されており、大径部12bの後端は、第2配置凹部19bに繋がっている。また、小径部12aと大径部12bとの境界には、後ろ側に向かうにしたがって前後方向に直交する方向に広がるように形成された円錐台状の傾斜面部12dが形成されている。なお、流出部13は、前後方向から見たときの形状が略円形状となる径が一定の丸孔状に形成されている。
【0027】
第2本体部20は、略平板状に形成されている。この第2本体部20には、弁体14を構成する後述のピストン部14aが配置されるピストン配置孔20aが前後方向に貫通するように形成されている。本形態では、流入部12の前方にピストン配置孔20aが形成されている。
【0028】
弁体14は、ゴムで形成されている。この弁体14は、略円柱状に形成されるピストン部14aと、ピストン部14aを前後方向に移動可能に保持するためのダイヤフラム部14bとを備えている。ピストン部14aの後端側の約半分は、弁室10、流入部12およびピストン配置孔20aの中に配置され、ピストン部14aの前端側の約半分は、本体部11から前側に向かって突出している。ダイヤフラム部14bは、第1配置凹部19aの中に配置されている。
【0029】
ピストン部14aの下端には、後ろ側から傾斜面部12dに当接して流入部12を塞ぐ弁部14cが形成されている。また、ピストン部14aの上端には、バルブ駆動機構5に連結される連結部14dが形成されている。弁部14cおよび連結部14dの径は、ピストン部14aの、弁部14cおよび連結部14d以外の部分の径よりも大きくなっている。本形態では、弁部14cの径は、流入部12の小径部12aの径よりも大きく、かつ、大径部12bの径よりも小さくなっており、弁部14cの前端側が傾斜面部12dに当接可能となっている。また、弁部14cは、弁体14が流入部12を閉鎖している状態では、大径部12bおよび傾斜面部12dの内周側に配置されている。
【0030】
ダイヤフラム部14bは、膜状に形成されるとともに、前後方向におけるピストン部14aの中間位置から前後方向に直交する方向に広がる略鍔状に形成されている。このダイヤフラム部14bは、ピストン部14aの中間位置に固定されている。また、ダイヤフラム部14bは、弁室10の前端側の全域を覆うように第1配置凹部19aの中に配置されている。具体的には、ダイヤフラム部14bの外周側部分が第2本体部20の後面と段差面19cとの間に挟まれた状態で、ダイヤフラム部14bは第1配置凹部19aの中に配置されている。本形態では、ダイヤフラム部14bの弾性変形を利用してピストン部14aが前後方向へ移動する。また、本形態のダイヤフラム部14bは、第1本体部19と第2本体部20との合せ目における弁室10からの流体の漏れを防止するシール機能を果たしている。
【0031】
シール部材17は、ゴムで形成されている。このシール部材17は、第2配置凹部19bの中に配置されている。具体的には、流入部12に流入孔17aが繋がり、流出部13に流出孔17bが繋がるように、シール部材17は第2配置凹部19bの中に配置されている。本形態では、流入孔17aの後端が流入口2となり、流出孔17bの後端が流出口3となっている。
【0032】
以上のように構成されたバルブ機構4では、ピストン部14aが前側に引っ張られると、弁部14cが流入部12の傾斜面部12dに当接して、流入部12が閉鎖される。また、ピストン部14aが後ろ側に押されると、弁部14cが傾斜面部12dから離れ、流入部12が開放される。
【0033】
なお、本形態では、図4に示すように、ピストン配置孔20aとピストン部14aとの間には、所定の隙間が形成されているため、ピストン部14aが前側に引っ張られたときには、ピストン部14aは円滑に前側へ移動して、弁部14cが傾斜面部12dに確実に当接する。すなわち、ピストン配置孔20aとピストン部14aとの間に隙間がないと、ピストン部14aが前側に引っ張られたときに、ダイヤフラム部14bの、ピストン部14aが固定された部分が第2本体部20に後面に当接してしまうため、ピストン部14aが円滑に前側へ移動せず、弁部14cを傾斜面部12dに確実に当接させることが困難になるが、本形態では、ピストン部14aが円滑に前側へ移動して、弁部14cが傾斜面部12dに確実に当接する。このように、ピストン配置孔20aとピストン部14aとの間の隙間は、ピストン部14aを円滑に前側に移動させて、弁部14cを傾斜面部12dに確実に当接させるための逃しスペースとして機能している。
【0034】
(バルブ駆動機構の構成)
図6は、図1に示すバルブ装置1からカバー部材7を取り外した状態を示す平面図である。図7は、図6のE−E断面の断面図である。図8は、図2に示す減速板29および連結部材41の斜視図である。なお、以下の説明では、図6の時計方向を「時計方向」、図6の反時計方向を「反時計方向」とする。また、図6では、弁体14が流入部12を閉鎖しているときのバルブ装置1の状態を図示している。
【0035】
バルブ駆動機構5は、図2に示すように、表面上に駆動用コイル26が形成される樹脂製の基板25と、ベース部材6の上面に固定される駆動用磁石27と、上下方向を軸方向とする回動が可能となるように基板25を支持する軸受部28とを備えている。このバルブ駆動機構5は、駆動用磁石27に対して基板25が軸受部28を中心とする揺動動作を行うように構成されている。
【0036】
また、バルブ駆動機構5は、基板25の揺動を減速して弁体14に伝達するための減速板29と、減速板29と弁体14とを連結するための連結機構30と、駆動用コイル26の両端部のそれぞれが連結される2個の端子31と、端子31を保持する端子台32とを備えている。本形態では、減速板29は、ベース部材6に固定される支点軸33を中心にして回動可能となっている。
【0037】
基板25は、図2に示すように、平板状に形成されている。また、基板25は、円周方向の一部に切欠部25aを有する略扇形状に形成されている。具体的には、基板25は、その中心角θ(図6参照)が180°以上となる略扇形状に形成されている。本形態の基板25の中心角θは、略270°となっている。
【0038】
基板25の中心部には、軸受部28を構成する後述の転がり軸受35が挿通される円形の貫通孔25bが形成されている。基板25の外周側には、減速板29に形成される後述の係合突起29bに係合する係合溝25cが形成されている。切欠部25aの径方向内側端には、径方向の内側に向かって窪む略半円状の2個の凹部25dが周方向で隣接するように形成されている。すなわち、基板25の、切欠部25aが形成された部分の側面には、2個の凹部25dが形成されている。
【0039】
係合溝25cは、基板25の径方向外側端から径方向の内側に向かって窪むように形成されている。また、円周方向における切欠部25aの中心、円周方向における係合溝25cの中心および基板25の中心が略同一直線上に配置されるように、係合溝25cが形成されている。係合溝25cの径方向内側端面は、上下方向から見たときの形状が半円形状となる曲面状に形成されている。また、係合溝25cの周方向の両端面は、平面状に形成されている。すなわち、係合溝25cは、上下方向から見たときの形状が略U形状となるように形成されている。
【0040】
基板25の下面には、2個の駆動用コイル26が形成されている。本形態では、図2に示すように、略扇形状に巻回された導線パターンが基板25の下面に印刷されており、印刷された導線パターンによって2個の駆動用コイル26が形成されている。2個の駆動用コイル26は、導線パターンが同じ方向に順次、巻回されて形成されており、直列に接続されている。また、2個の駆動用コイル26は、円周方向に所定のピッチで配置されている。なお、駆動用コイル26の下面は、絶縁性の材料で形成された絶縁シートによって覆われている。
【0041】
2個の駆動用コイル26を形成する導線パターンの一端は、2個の凹部25dのうちの一方の凹部25dの側面に配置されている。また、導線パターンの他端は、他方の凹部25dの側面に配置されている。すなわち、導線パターンの一端側は、一方の凹部25dの側面まで形成され、導線パターンの他端側は、他方の凹部25dの側面まで形成されている。
【0042】
駆動用磁石27は、図2に示すように、平板状に形成されている。また、駆動用磁石27は、円周方向の一部に切欠部27aを有する略扇形状に形成されている。具体的には、駆動用磁石27は、その中心角が180°以上となる略扇形状に形成されている。また、駆動用磁石27の中心角は、基板25の中心角θよりも大きく形成されている。具体的には、駆動用磁石27の中心角は、基板25の揺動角度と略同程度分だけ、基板25の中心角θより大きく形成されている。なお、駆動用磁石27の外径は、基板25の外径よりもわずかに大きくなっている。
【0043】
駆動用磁石27の中心には、軸受部28が配置される貫通孔27bが形成されている。貫通孔27bは、切欠部27aに繋がる略丸孔状に形成されている。駆動用磁石27は、図2に示すように、円周方向で多極に着磁されている。駆動用磁石27は、たとえば、上面がN極に着磁された略扇形状の2個の磁石片27Aと、上面がS極に着磁された略扇形状の2個の磁石片27Bとが時計方向に交互に配置されて構成されている。なお、駆動用磁石27が1個の磁石片で構成され、この1個の磁石片の上面が円周方向で多極に着磁されていても良い。
【0044】
軸受部28は、下端がベース部材6の中心部に固定されるとともに軸受部28の中心に配置される中心軸34と、内輪が中心軸34に固定される転がり軸受35と、転がり軸受35の外輪に固定されるとともに基板25を支持する基板支持部材36と、転がり軸受35の上下両側に配置される円環状のスペーサ37とを備えている。この軸受部28は、上下方向を軸方向として配置されている。
【0045】
基板支持部材36は、円筒状に形成されており、その内周面が転がり軸受35の外輪に固定されている。また、基板25の貫通孔25bの周縁部分が基板支持部材36の上端面に載置されて固定されており、基板25は中心軸34を中心にして回動可能となっている。なお、基板25は、引張りコイルバネ等の付勢部材(図示省略)によって、反時計方向に付勢されている。
【0046】
スペーサ37は、転がり軸受35の内輪の上下両端に当接している。また、スペーサ37は、図7に示すように、カバー部材7を構成する後述の上面部7aの下面またはベース部材6の上面に当接している。
【0047】
減速板29は、非磁性材料で形成されている。また、減速板29は、平板状に形成されている。図2に示すように、減速板29の中心には、軸受部28との接触を防止するための貫通孔29aが形成されている。すなわち、減速板29の中心には、軸受部28の外径よりも大きな貫通孔29aが形成されている。また、減速板29には、基板25の係合溝25cに係合する係合突起29bと、支点軸33に支持される支持部29cとが形成されている。
【0048】
係合突起29bは、減速板29の外周側部分に形成されている。また、係合突起29bは、減速板29の上面から上方向へ突出する円柱状に形成されている。本形態では、係合溝25cと係合突起29bとによって、基板25と減速板29とが連結される第1連結部39が構成されている。第1連結部39では、第1連結部39を中心とする基板25と減速板29との相対回動が可能になるように、基板25と減速板29とが連結されている。
【0049】
本形態では、第1連結部39で、基板25と減速板29とが相対回動可能に連結され、かつ、減速板29は、ベース部材6に固定される支点軸33を中心にして回動可能となっている。そのため、本形態では、減速板29が回動するときには、係合突起29bは、係合溝25cの周方向の端面に沿って(すなわち、係合溝25cの周方向の端面にガイドされながら)、基板25の径方向へ移動する。
【0050】
支持部29cは、径方向の外側へ突出するように形成されている。具体的には、支持部29cは、貫通孔29aに対して、係合突起29bが形成された部分と反対側に向かって突出するように形成されている。また、貫通孔29aから支持部29cに向かって直線状の溝29dが形成されている。具体的には、係合突起29bの中心、溝29dの中心および貫通孔29aの中心が略同一直線上に配置されるように、溝29dが形成されている。
【0051】
支持部29cの径方向外側端は、連結機構30を構成する後述の連結部材41に当接する当接部29eとなっている。また、支持部29cの径方向外側部分は、後述の連結部材41に形成される配置溝部41cの中に配置されている。
【0052】
支点軸33は、略円柱状に形成されている。この支点軸33は、その軸方向と上下方向とが略一致するように、ベース部材6の上面に固定されている。支点軸33の軸方向の中間位置には、径が小さくなった小径部33aが形成されている。小径部33aの上下方向の幅は、減速板29の厚さよりもわずかに広くなっている。また、小径部33aの径は、減速板29の溝29dの幅よりもわずかに小さくなっており、小径部33a以外の支点軸33の径は、溝29dの幅よりも大きくなっている。小径部33aは、溝29dに係合しており、減速板29は、支点軸33を中心とする回動が可能となるように、支点軸33に保持されている。本形態では、小径部33aは、溝29dの径方向外側端に常に当接している。
【0053】
なお、本形態の支点軸33は、軸方向の中間位置に小径部33aが形成された段付軸であり、溝29dに小径部33aが係合するため、溝29dは、貫通孔29aから支持部29cに向かって直線状に形成されているが、たとえば、減速板29の、支点軸33を中心とする回動が可能となるように、支点軸33の上端部分と減速板29とが連結されるのであれば、減速板29に形成された丸孔状等の貫通孔に支点軸33の上端部分が係合すれば良い。すなわち、減速板29には、溝29dに代えて、支点軸33が係合する貫通孔が形成されれば良い。
【0054】
図6に示すように、基板25の切欠部25aと駆動用磁石27の切欠部27aとが上下方向で重なるように、基板25が基板支持部材36の上端面に固定され、駆動用磁石27がベース部材6の上面に固定されている。また、減速板29は、上下方向において、基板25と駆動用磁石27との間に配置されている。すなわち、減速板29は、上下方向において、基板25の下面に形成される駆動用コイル26と駆動用磁石27との間に配置されており、駆動用コイル26の下面と駆動用磁石27の上面とは、その間に減速板29が配置された状態で、上下方向で対向している。
【0055】
本形態では、駆動用コイル26の、基板25の径方向に略平行な径方向辺26a、26bのうちの、反時計方向側に配置される径方向辺26aと磁石片27Aとが対向している。また、径方向辺26a、26bのうちの、時計方向側に配置される径方向辺26bと磁石片27Bとが対向している。また、図7に示すように、上下方向において、基板25の下面と減速板29の上面との間にはわずかな隙間が形成され、減速板29の下面と駆動用磁石27の上面との間にはわずかな隙間が形成されている。なお、駆動用磁石27の上面には、減速板29の下面に当接して減速板29を支持する支持部材(図示省略)が固定されている。この支持部材は、摺動性に優れた材料で形成されており、減速板29は、この支持部材と支点軸33とによって支持されている。
【0056】
連結機構30は、弁体14の連結部14dを保持する保持凹部41aが形成される連結部材41と、連結部材41の右端側を回動可能に保持する保持部材42と、弁体14が流入部12を閉鎖している状態を維持するための保持用磁石43と、保持用磁石43のバックヨークとなる磁性部材44とを備えている。
【0057】
連結部材41は、磁性材料で形成されている。また、連結部材41は、略ブロック状に形成されている。連結部材41には、図8に示すように、上述の保持凹部41aに加え、保持部材42に保持される回動中心部41bと、減速板29の支持部29cの径方向外側部分が配置される配置溝部41cと、減速板29の当接部29eが当接する当接面41dとが形成されている。連結部材41は、減速板29からの動力を弁体14に伝達する機能を果たしている。すなわち、連結部材41は、減速板29と弁体14とを連結する機能を果たしている。
【0058】
保持凹部41aは、連結部材41の後面から前側に向かって窪むように形成されている。保持凹部41aの縁には、保持凹部41a内に配置される弁体14の連結部14dの抜けを防止するための一対の抜止め突起41eが形成されている(図8参照)。本形態では、連結部14dと保持凹部41aとによって、弁体14と連結部材41とが連結される第2連結部45が構成されている。
【0059】
回動中心部41bは、連結部材41の右端側に形成され、配置溝部41cは、連結部材41の左端側に形成されている。当接面41dは、連結部材41の前面の一部を構成するとともに、配置溝部41cの右側に形成されている。
【0060】
保持部材42は、矩形の平板状に形成されている。この保持部材42の後端には、図2に示すように、連結部材41の回動中心部41bが回動可能に保持される保持溝42aが前側に向かって窪むように形成されている。保持用磁石43は、矩形の平板状に形成され、連結部材41の前方に配置されている。磁性部材44は、矩形の平板状に形成され、保持部材42の前端に固定されている。また、磁性部材44の後面には、保持用磁石43の前面が固定されている。
【0061】
上述のように、連結部材41は、磁性材料で形成されている。そのため、連結部材41と保持用磁石43との間には、連結部材41と保持用磁石43との距離に応じた吸引力が生じている。
【0062】
本形態では、減速板29が時計方向に回動すると、減速板29の当接部29eが当接面41dに当接して、当接面41dを後ろ側へ押す。当接面41dが後ろ側へ押されると、連結部材41は、回動中心部41bを中心にして反時計方向に回動する。連結部材41が反時計方向に回動すると、連結部材41によってピストン部14aが後ろ側に移動する。
【0063】
一方、ピストン部14aが後ろ側に押された状態で、減速板29が反時計方向に回動すると、連結部材41と保持用磁石43との間の吸引力やダイヤフラム部14bの復元力によって、連結部材41は、回動中心部41bを中心にして時計方向に回動し、ピストン部14aは、前側に移動する。
【0064】
図6等に示すように、切欠部25a、27aは、バルブ装置1の右後端部分に配置されている。すなわち、上下方向から見たときの形状が略四角形状に形成されるバルブ装置1の四隅の1箇所に切欠部25a、27aが配置されている。また、切欠部25a、27aには、バルブ機構4、連結機構30および支点軸33が配置されている。具体的には、バルブ機構4はバルブ装置1の右後端に配置され、連結機構30はバルブ機構4の前側に配置され、支点軸33は連結機構30の左側に配置されている。また、本形態では、流入口2および流出口3がバルブ装置1の後面に配置されるように、バルブ機構4が配置されている。すなわち、本形態では、バルブ装置1の後面に流入口2および流出口3が形成されている。
【0065】
また、図6に示すように、第1連結部39から支点軸33までの距離は、第1連結部39から軸受部28までの距離よりも長くなっている。また、第1連結部39から支点軸33までの距離は、第2連結部45から支点軸33までの距離よりも長くなっている。そのため、基板25の揺動は減速されて弁体14に伝達される。また、本形態では、支点軸33が切欠部25a、27aに配置されており、第1連結部39の中心と支点軸33の中心とを結ぶ直線の近傍に軸受部28の中心が配置されている。すなわち、支点軸33は、第1連結部39の中心と軸受部28の中心とを結ぶ直線の延長線の近傍に配置されている。
【0066】
ベース部材6は、磁性材料で形成されている。ベース部材6の中心には、図7に示すように、中心軸34の下端が固定される固定孔6aが形成されている。カバー部材7は、磁性材料で形成されている。このカバー部材7は、基板25の上面側を覆う上面部7aと、バルブ駆動機構5の側面を覆う側面部7bとを備えている。上面部7aには、中心軸34の上端が固定される固定孔7cが形成されており、中心軸34の上端は、固定孔7cに挿入されて固定されている。また、側面部7bの下端は、ベース部材6の端部に固定されている。
【0067】
端子31は、端子台32に保持された状態で、バルブ装置1の右前端および左後端に配置されている。すなわち、端子31は、バルブ装置1の四隅のうちの、対角線上に配置される2箇所に配置されている。本形態では、配線としてのリード線47を介して、駆動用コイル26と端子31とが接続されている。すなわち、駆動用コイル26の端部にリード線47の一端が接続され、リード線47の他端が端子31に接続されている。具体的には、駆動用コイル26を形成する導線パターンの一端は、リード線47によって、2個の端子31のうちの一方の端子31に接続され、導線パターンの他端は、他方の端子31に接続されている。
【0068】
リード線47は、上下方向に直交する基板25の側面に沿って引き回されている。すなわち、リード線47は、上下方向において、基板25とほぼ同じ位置で引き回されている。具体的には、以下のように、リード線47は引き回される。まず、図2、図6に示すように、リード線47の一端は、基板25の凹部25dに半田付けされて固定される。すなわち、リード線47の一端は、凹部25dにおいて駆動用コイル26の端部に接続される。一端が凹部25dに固定されたリード線47は、切欠部25aの径方向内側部分から径方向の外側に向かって、かつ、切欠部25aの側面25eに沿って引き回される。
【0069】
基板25の径方向の外側に向かって引き回されたリード線47は、切欠部25aの側面25eと磁性部材44との間、あるいは、切欠部25aの側面25eとバルブ機構4との間で弛みを持たされる。すなわち、基板25の径方向の外側に向かって引き回されたリード線47は、切欠部25aで弛んでおり、リード線47は、切欠部25aで弛む弛み部47aを備えている。弛み部47aは、たとえば、図6に示すように、基板25の径方向の外側に向かって引き回されたリード線47が、切欠部25aの側面25eと磁性部材44との間、あるいは、切欠部25aの側面25eとバルブ機構4との間で数回、折り曲げられて形成される。なお、弛み部47aの一部は、カバー部材7の側面部7bあるいは磁性部材44に固定されても良いし、どこにも固定されていない状態で切欠部25aに配置されていても良い。
【0070】
なお、後述のように揺動する基板25の揺動動作がリード線47によって妨げられることがないように(具体的には、リード線47のバネ作用で基板25の揺動動作が妨げられることがないように)、弛み部47aで折り曲げられるリード線47の直線部分は、図6に示すように、比較的長くなっている。
【0071】
切欠部25aで弛まされたリード線47は、その後、基板25の外周面(側面)25fに沿って、端子31が配置されているバルブ装置1の右前端および左後端まで引き回される(図6、図7参照)。また、端子31まで、引き回されたリード線47の他端は、端子31に半田付けされて固定される。
【0072】
(バルブ装置の概略動作)
図9は、図1に示すバルブ装置1の、弁体14が流入部12を開放しているときの状態を示す平面図である。
【0073】
以上のように構成されたバルブ装置1の概略動作を説明する。
【0074】
駆動用コイル26に電流が供給されていないときには、図6に示すように、基板25は、付勢部材(図示省略)によって反時計方向に付勢されている。このときには、減速板29も反時計方向に付勢されている。また、連結部材41は保持用磁石43に近づいた位置に配置されており、連結部材41と保持用磁石43との間に生じる所定の吸引力によって、ピストン部14aは前側に引っ張られている。
【0075】
したがって、このときには、弁部14cは流入部12の傾斜面部12dに当接しており、流入部12が閉鎖されている。すなわち、駆動用コイル26に電流が供給されていないときには、弁体14によって流入部12が閉鎖されており、流入口2から流出口3に向かって流体は流れない。なお、このときには、連結部材41と保持用磁石43との間に生じる吸引力によって、弁体14が流入部12を閉鎖している状態が維持されている。
【0076】
駆動用コイル26に電流が供給されると、図9に示すように、基板25が軸受部28を中心にして時計方向へ回動する。また、減速板29も支点軸33を中心にして時計方向へ回動する。減速板29が時計方向に回動すると、減速板29の当接部29eが当接面41dを後ろ側へ押し、連結部材41が回動中心部41bを中心にして反時計方向に回動する。連結部材41が反時計方向に回動すると、ピストン部14aは後ろ側に移動して、弁部14cが傾斜面部12dから離れ、流入部12が開放される。流入部12が開放されると、流入口2から流出口3に向かって流体が流れる。このように、バルブ駆動機構5による弁体14の開動作によって、弁部14cが傾斜面部12dから離れ、流入部12から弁室10に流体が流入するとともに、流出部10から流体が流出する。
【0077】
また、流入口2から流出口3に向かって流体が流れている状態で、駆動用コイル26への電流の供給が停止されると、図示を省略する付勢部材の付勢力で、基板25が軸受部28を中心にして反時計方向へ回動する。また、減速板29も支点軸33を中心にして反時計方向へ回動する。減速板29が反時計方向に回動すると、連結部材41と保持用磁石43との間の吸引力やダイヤフラム部14bの復元力によって、連結部材41が回動中心部41bを中心にして時計方向に回動し、ピストン部14aは前側に移動する。ピストン部14aが前側に移動すると、弁部14cが流入部12の傾斜面部12dに当接して、流入部12が閉鎖され、流入口2から流出口3への流体の流れが止まる。このように、バルブ駆動機構5による弁体14の閉動作によって、弁部14cが傾斜面部12dに当接して、流入部12から弁室10への流体の流入が停止するとともに、流出部13からの流体の流出が停止する。
【0078】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、駆動用コイル26と駆動用磁石27とが上下方向で対向配置され、駆動用磁石27に対する軸受部28を中心とした基板25の揺動動作によって、弁体14の開閉動作を行っている。そのため、基板25の揺動量を大きくすれば、前後方向に移動する弁体14の可動量を大きくすることができる。すなわち、弁体14の移動方向となる前後方向において、駆動用コイル26および駆動用磁石27を大型化しなくても、弁体14の可動量を大きくすることが可能になる。したがって、本形態では、弁体14の可動量を大きくしても、前後方向でバルブ駆動機構5を小型化することが可能になり、その結果、前後方向でバルブ装置1を小型化することが可能になる。
【0079】
本形態では、駆動用コイル26が形成される基板25が揺動動作を行う。そのため、駆動用磁石27が揺動動作を行う場合と比較して、揺動する部材の慣性モーメントを低減することができ、揺動する部材の応答性を向上させることができる。また、駆動用磁石27が揺動動作を行う場合には、磁性材料で形成されるベース部材6やカバー部材7に渦電流が発生するため、また、ベース部材6やカバー部材7と駆動用磁石27との間に磁気的吸引力が発生するため、バルブ駆動機構5の駆動力が低下するおそれがあるが、本形態では、かかる問題の発生を防止することができる。
【0080】
本形態では、略平板状の基板25上に形成された駆動用コイル26と、略平板状の駆動用磁石27とが上下方向で対向配置されている。そのため、上下方向でバルブ駆動機構5およびバルブ装置1を小型化することが可能になる。すなわち、バルブ駆動機構5およびバルブ装置1を薄型化することが可能になる。
【0081】
特に本形態では、リード線47は、基板25の側面25e、25fに沿って引き回されている。したがって、揺動する部材の慣性モーメントを低減させる等の理由で、基板25を揺動させる場合であっても、上下方向において、リード線47の影響でバルブ駆動機構5が大型化するのを抑制することができる。その結果、本形態では、基板25を揺動させる場合であっても、バルブ駆動機構5およびバルブ装置1を薄型化することが可能になる。
【0082】
本形態では、リード線47は、切欠部25aの径方向内側部分から径方向の外側に向かって、かつ、切欠部25aの側面25eに沿って引き回されている。そのため、基板25からのリード線47の引出し部分を切欠部25aの中に配置することができる。したがって、基板25の径方向外側端よりも径方向の外側に、リード線47の引出し部分が突出するのを防止することが可能になり、基板25の径方向において、バルブ駆動機構5を小型化することが可能になる。
【0083】
本形態では、リード線47は、切欠部25aにおいて弛む弛み部47aを備えている。そのため、基板25が揺動するときのリード線47の突っ張りを防止して、リード線47の断線を防止することが可能になる。また、リード線47の突っ張りを防止することができるため、基板25の凹部25dまたは端子31に半田付けされて固定されるリード線47の端部が、基板25の凹部25dおよび端子31から剥がれるのを防止することが可能になる。また、弛み部47aは、切欠部25aに配置されているため、基板25の径方向外側端よりも径方向の外側に、弛み部47aが突出するのを防止することが可能になり、基板25の径方向において、バルブ駆動機構5を小型化することが可能になる。
【0084】
本形態では、切欠部25aの径方向内側端に凹部25dが形成されている。また、リード線47の一端は、凹部25dで駆動用コイル26の端部に接続されている。そのため、リード線47と駆動用コイル26の端部との接続部分と、他の構成部品との接触を防止することが可能になり、リード線47と駆動用コイル26の端部との接続部分を適切に保護することが可能になる。
【0085】
なお、本形態において、弛み部47aの一部が、カバー部材7の側面部7bあるいは磁性部材44に固定されている場合には、基板25が揺動するときに、弛み部47aが基板25に引っ掛かるのを防止することが可能になる。また、この場合には、カバー部材7あるいは磁性部材44は、弛み部47aの一部が固定される固定部材となる。
【0086】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0087】
上述した形態では、印刷された導線パターンによって駆動用コイル26が基板25上に形成されている。この他にもたとえば、導線が巻回されて形成された駆動用コイル26が基板25上に固定されても良い。この場合には、たとえば、駆動用コイル26を構成する導線の端部側が上述のリード線47と同様に、基板25の側面25e、25fに沿って引き回される。また、駆動用コイル26を構成する導線の端部側が基板25の側面25e、25fに沿って引き回される場合には、導線の端部側は、たとえば、凹部25dから引き出される。また、導線が巻回されて形成された駆動用コイル26が基板25上に固定される場合には、駆動用コイル26を構成する導線の端部にリード線47の端部が接続され、リード線47が上述した形態と同様に引き回されても良い。
【0088】
上述した形態では、駆動用コイル26を形成する導線パターンの両端は、凹部25dの側面まで形成され、リード線47の一端は、凹部25dで駆動用コイル26の端部に接続されている。この他にもたとえば、駆動用コイル26を形成する導線パターンの両端が凹部25d以外の箇所まで形成され、リード線47の一端が凹部25d以外の箇所で駆動用コイル26の端部に接続されても良い。
【0089】
上述した形態では、基板25の下面には、2個の駆動用コイル26が形成されている。この他にもたとえば、基板25の下面に形成される駆動用コイル26の数は1個でも良いし、3個以上でも良い。この場合には、基板25に形成される駆動用コイル26の数に応じて、駆動用磁石27は、円周方向で多極に着磁される。たとえば、基板25の下面に3個の駆動用コイル26が形成され、駆動用磁石27は、円周方向で6極に着磁される。
【0090】
上述した形態では、減速板29は、基板25と駆動用磁石27との間に配置されているが、減速板29は、基板25の上側に配置されても良い。また、上述した形態では、バルブ駆動機構5は減速板29を備えているが、基板25が直接、連結部材41に当接するように、バルブ駆動機構5を構成しても良い。すなわち、減速板29を設けなくても良い。
【0091】
上述した形態では、軸受部28は、転がり軸受35を備えているが、軸受部28は、転がり軸受35の代わりに滑り軸受を備えていても良い。また、摺動性に優れる軸によって軸受部28が構成されても良い。また、減速板29の溝29dと、支点軸33の小径部33aとの間に滑り軸受等の軸受を配置しても良い。
【0092】
上述した形態では、基板25は、引張りコイルバネ等の付勢部材(図示省略)によって、反時計方向に付勢されている。この他にもたとえば、リード線47の弾性復帰力を利用して、基板25を反時計方向に付勢しても良い。また、上下方向で対向配置される駆動用コイル26と駆動用磁石27との円周方向における磁気バランスを利用して基板25を反時計方向に付勢しても良い。なお、基板25を反時計方向に付勢する付勢部材を設けなくても良い。この場合には、駆動用コイル26に電流を供給して、基板25を反時計方向に回動させれば良い。
【0093】
上述した形態では、端子31は、バルブ装置1の右前端および左後端に配置されているが、端子31は、バルブ装置1の右前端および左前端に配置されても良いし、バルブ装置1の左前端および左後端に配置されても良い。すなわち、端子31は、バルブ装置1の対角線上に配置されなくても良い。また、端子31は、バルブ装置1の四隅に配置されなくても良い。
【0094】
上述した形態では、バルブ装置1の後面に流入口2および流出口3が形成されているが、流入口2および/または流出口3は、バルブ装置1の下面あるいは上面に形成されても良い。また、上述した形態では、弁体14によって、流入部12の開閉が行われているが、弁体14によって、流出部13の開閉が行われても良い。
【符号の説明】
【0095】
1 バルブ装置
4 バルブ機構
5 バルブ駆動機構
7 カバー部材(固定部材)
12 流入部
13 流出部
14 弁体
25 基板
25a 切欠部
25d 凹部
25e 側面
25f 外周面(側面)
26 駆動用コイル
27 駆動用磁石
28 軸受部
31 端子
44 磁性部材(固定部材)
47 リード線(配線)
47a 弛み部
Z 上下方向(駆動用コイルと駆動用磁石との対向方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流入部または前記流体の流出部を開閉する弁体の開閉動作を行うバルブ駆動機構において、
駆動用コイルと、前記駆動用コイルの一端面に対向配置される略平板状の駆動用磁石と、前記駆動用コイルが形成されまたは配置される基板と、前記駆動用コイルと前記駆動用磁石との対向方向に略平行な方向を軸方向として配置され前記基板を回動可能に支持する軸受部とを備え、
前記駆動用磁石に対する前記軸受部を中心とした前記基板の揺動動作によって、前記弁体の開閉動作を行うとともに、
前記駆動用コイルの端部側、または、前記駆動用コイルの端部に接続される配線は、前記基板の、前記駆動用コイルが形成または配置される面に略直交する側面に沿って引き回されていることを特徴とするバルブ駆動機構。
【請求項2】
前記基板は、円周方向の一部に切欠部を有する略扇形状に形成され、
前記駆動用コイルの端部側または前記配線は、前記基板の径方向における前記切欠部の内側部分から前記径方向の外側に向かって、かつ、前記切欠部の前記側面に沿って引き回されていることを特徴とする請求項1記載のバルブ駆動機構。
【請求項3】
前記駆動用コイルの端部側または前記配線は、前記切欠部において弛む弛み部を備えることを特徴とする請求項2記載のバルブ駆動機構。
【請求項4】
前記弛み部は、前記駆動用コイルの端部側または前記配線が折り曲げられて形成されていることを特徴とする請求項3記載のバルブ駆動機構。
【請求項5】
前記弛み部の一部が固定される固定部材を備えることを特徴とする請求項3または4記載のバルブ駆動機構。
【請求項6】
前記径方向における前記切欠部の内側端には、前記径方向の内側に向かって窪む凹部が形成され、
前記凹部から前記駆動用コイルの端部側が引き出され、または、前記凹部で前記駆動用コイルの端部に前記配線が接続されていることを特徴とする請求項2から5のいずれかに記載のバルブ駆動機構。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載のバルブ駆動機構と、前記流入部および前記流出部が形成されるとともに前記弁体を有するバルブ機構とを備えることを特徴とするバルブ装置。
【請求項8】
前記軸受部の軸方向から見たときの形状が略四角形状となるように形成されるとともに、前記駆動用コイルの端部または前記配線の端部が接続される2個の端子を備え、
前記端子は、前記バルブ装置の四隅のうちの、対角線上に配置される2箇所のそれぞれに配置され、
前記駆動用コイルの端部側または前記配線は、前記側面としての前記基板の外周面に沿って前記端子まで引き回されていることを特徴とする請求項7記載のバルブ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−210068(P2010−210068A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59776(P2009−59776)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】