説明

バルーン用フィルム

【課題】
湿度依存のない加工性、印刷適性、強靱性およびガスバリア性を兼ね備えたバルーン用フィルムおよびそれからなるバルーンを提供すること
【解決手段】
下記樹脂(A)からなる融点230℃〜265℃の二軸配向ポリエステルフィルムを基材層とし、ガスバリア層、ヒートシール層を構成中に含むバルーン用フィルム。
樹脂(A):エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とし、融点が240〜265℃であるポリエステル成分(a)を65〜95重量%と、ブチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とし、融点が185〜235℃であるポリエステル成分(b)を5〜35重量%含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿度依存のない加工性、強靱性およびガスバリア性を兼ね備えたバルーン用フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、玩具用、ディスプレイ、デコレーションなどに用いられるバルーンの多くは、主として天然もしくは合成ゴム、または数種のプラスチックフィルムがラミネートされた複合フィルムからなる球状の袋に、水素、ヘリウム、空気などのガスが充填されたものである。しかし、天然または合成ゴムからなるバルーンは形態保持能力に劣り、1、2日程度で浮遊しなくなる欠点がある。
【0003】
プラスチックフィルムからなるバルーンには、蒸着二軸延伸ポリアミドフィルムが強靱性に優れるため広く用いられている。しかし、ポリアミドフィルムを基材フィルムとして用いる場合、ポリアミドの構造に由来して吸湿による物性変動が起こり、さまざまなトラブルを引き起こす。例として、印刷工程でのピッチズレやツイストカールの発生、ヒートシール層とのラミネート工程でのシワの発生などによる歩留まりの低下などが挙げられる。
【0004】
一方、ポリエステルフィルム、中でもポリエチレンテレフタレートフィルムは、湿度による物性変動が小さく、腰があるため加工性に優れ、幅広い用途で蒸着フィルム基材として用いられているが、上記のポリアミドのフィルムと比較すると、柔軟性、強靭性が劣るために、クラックやピンホールの発生を起こしやすい。そのため、バルーン用フィルム基材として適用可能な範囲は極めて狭い点が問題であった。
【0005】
そこで、湿度依存のない安定した加工性、クラックやピンホールを発生しない強靱性、そして長時間浮遊出来るガスバリア性に優れたバルーン用フィルムが希求されていた。
【0006】
特許文献1にはガスバリア性を付与された二軸延伸ビニルアルコール共重合体からなる層とヒートシール層が積層されたフィルムからなるバルーンが提案されている。しかしながらこのバルーンは、基材として用いられているビニルアルコール共重合体が吸湿によって変性するため、加工性の悪さが問題であった。
【特許文献1】特開平02−43036
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は湿度依存のない優れた加工性、強靱性およびガスバリア性を兼ね備えたバルーン用フィルムおよびそれからなるバルーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は下記樹脂(A)からなる融点230℃〜265℃の二軸配向ポリエステルフィルムを基材層とするラミネート体であり、ガスバリア層、ヒートシール層を構成中に含むバルーン用フィルムによって達成される。
【0009】
樹脂(A):樹脂(A)を100重量%としてエチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とし、融点が240〜265℃であるポリエステル成分(a)を65〜95重量%と、ブチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とし、融点が185〜235℃であるポリエステル成分(b)を5〜35重量%含有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るバルーン用フィルムは湿度依存のない安定した加工性、クラックやピンホールを発生しない強靱性、そして浮遊能力を維持出来る高いガスバリア性を兼ね備えるため、玩具やディスプレイ、デコレーションなどのバルーン用途に好適に使用され産業的価値は非常に大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のバルーン用フィルムは下記樹脂(A)を用いてなる融点230℃〜265℃の二軸配向ポリエステルフィルムを基材層とするラミネート体であり、ガスバリア層、ヒートシール層を構成中に含むものである。
【0012】
本発明のバルーン用フィルムの基材層である二軸配向ポリエステルフィルムは、主たる繰り返し単位をエチレンテレフタレートとするポリエステル成分(a)と、主たる繰り返し単位をブチレンテレフタレートとするポリエステル成分(b)を含む樹脂(A)を用いてなるポリエステルフィルムである。なお、本発明において主たる繰り返し単位とはポリエステル成分(a)および(b)中に70モル%以上含まれる繰り返し単位を意味するものとする。
【0013】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを構成する樹脂(A)とはポリエステル成分(a),(b)を用いてなり、本発明におけるポリエステルとは主鎖中の主要な結合をエステル結合とする高分子化合物の総称であって、通常、ジカルボン酸成分とグリコール成分を重縮合反応させることによって得ることができる。
【0014】
ここで使用されるジカルボン酸成分は、主としてテレフタル酸である。本発明の効果を阻害しない限りにおいて、他のジカルボン酸成分、例えばナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキシンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸等を併用することができる。
【0015】
また、グリコール成分は、主としてエチレングリコールとブタンジオールである。本発明の効果を阻害しない限りにおいて、他のグリコール成分、例えば、プロパンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等の芳香族グリコール等を併用することができる。これらのジカルボン酸成分とグリコ−ル成分は二種以上を併用してもよい。
【0016】
また、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、例えば、トリメリット酸、トリメシン酸およびトリメチロ−ルプロパン等の多官能化合物や、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリブチレングリコール等のポリエーテルを共重合することもできる。
【0017】
本発明で使用されるポリエステルを製造する際の重合触媒としては、例えば、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、亜鉛化合物、鉛化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物およびチタン化合物等が挙げられ、中でもゲルマニウム化合物、アンチモン化合物およびチタン化合物が特に好ましく用いられる。また、ポリエステルを製造する際にリン化合物等の着色防止剤を使用することができる。
【0018】
これらの重合触媒と着色防止剤は、通常、ポリエステルの重合が完結する以前の任意の段階において、添加することが好ましい。このような方法としては、例えば、ゲルマニウム化合物を例にすると、ゲルマニウム化合物粉体をそのまま添加する方法や、あるいは、ポリエステルの出発原料であるグリコ−ル成分中にゲルマニウム化合物を溶解させ添加する方法(例えば、特公昭54−22234号公報参照。)等を挙げることができる。ゲルマニウム化合物としては、例えば、二酸化ゲルマニウム、結晶水含有水酸化ゲルマニウム、あるいはゲルマニウムテトラメトキシド、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラブトキシド、ゲルマニウムエチレングリコキシド等のゲルマニウムアルコキシド化合物、ゲルマニウムフェノレ−ト、ゲルマニウムβ−ナフトレ−ト等のゲルマニウムフェノキシド化合物、リン酸ゲルマニウム、亜リン酸ゲルマニウム等のリン含有ゲルマニウム化合物および酢酸ゲルマニウム等を使用することができる。中でも、二酸化ゲルマニウムが好ましい。また、アンチモン化合物としては、例えば、三酸化アンチモンなどのアンチモン酸化物および酢酸アンチモンなどを使用することができる。チタン化合物としては、テトラエチルチタネートやテトラブチルチタネートなどのアルキルチタネート化合物などが好ましく使用される。
【0019】
高温、減圧下で重縮合反応せしめたポリエステルは、さらに、その融点以下の温度で減圧下または不活性ガス雰囲気下で固相重合反応せしめ、アセトアルデヒドの含有量を減少させたり、所定の固有粘度、カルボキシル末端基量に調製したりすることができる。
【0020】
ポリエステル成分(a)は、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートで構成されるポリエステルであり、主に、ポリエチレンテレフタレートのホモポリエステルや、ポリエチレンテレフタレートに、イソフタル酸、1,4シクロヘキサンジカルボン酸およびプロパンジオールの少なくとも1種類を、本発明の効果を阻害しない限りにおいて共重合せしめたコポリエステルが好ましく使用される。
【0021】
ポリエステル成分(b)は、主たる繰り返し単位がブチレンテレフタレートで構成されるポリエステルであり、主に、ポリブチレンテレフタレートのホモポリエステルや、ポリブチレンテレフタレートに、イソフタル酸、1,4シクロヘキサンジカルボン酸、およびプロパンジオールの少なくとも1種類を本発明の効果を阻害しない限りにおいて共重合せしめたコポリエステルが好ましく使用される。
【0022】
本発明で用いられる二軸延伸ポリエステルフィルムは、樹脂(A)を100重量%として上記のポリエステル成分(a)を65〜95重量%とポリエステル成分(b)を5〜35重量%含有することが重要である。なお、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、グリコール成分としてエチレングリコールおよび1,4−ブタンジオールをエステル化反応もしくはエステル交換反応で共重合したものでも該組成となるが、コストの点および融点コントロールの観点から、ポリエステル成分(a)としてポリエチレンテレフタレートを主成分とする樹脂と、ポリエステル成分(b)としてポリブチレンテレフタレートを主成分とする樹脂とをブレンドして原料とする方法が好ましく用いられる。
【0023】
ポリエステル成分(a)の割合は、樹脂(A)を100重量%として65〜95重量%であることが重要であり、さらに好ましくは70〜90重量%、特に好ましくは70〜85重量%である。またポリエステル成分(b)の割合は5〜35重量%であることが必要であり、より好ましくは10〜30重量%、特に好ましくは15〜30重量%である。ポリエステル成分(a)および(b)の割合がかかる範囲であると本発明の目的である強靱性に優れたものになる。ポリエステル成分(a)が65重量%未満、またはポリエステル成分(b)が35重量%を超えると耐熱性、機械強度や寸法安定性などの性能が低下し、本発明の目的である加工性が劣るものとなり、またポリエステル成分(a)が95重量%を超えるか、またはポリエステル成分(b)が5重量%未満では、本発明の目的である強靱性が劣るものとなる。
【0024】
本発明のバルーン用フィルムの基材層として、樹脂(A)からなる層と樹脂(B)からなる層とを交互に5層以上積層された二軸配向ポリエステルフィルムを用いる場合、樹脂(B)は樹脂(B)を100重量%としてポリエステル成分(a)を55〜100重量%、ポリエステル成分(b)を0〜45重量%含有することが重要である。ポリエステル成分(a)の割合は、好ましくは60〜90重量%、特に好ましくは65〜85重量%であり、また、ポリエステル成分(b)の割合は好ましくは10〜40重量%、特に好ましくは15〜35重量%である。割合がかかる範囲であると、本発明の目的である強靱性に優れたものになる。ポリエステル成分(a)の割合が55重量%未満、またはポリエステル成分(b)の割合が45重量%を超えると、耐熱性、機械強度や寸法安定性などの性能が低下し、本発明の目的である加工性が劣るものとなる。
【0025】
樹脂(B)も前述した樹脂(A)と同じく、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、グリコール成分としてエチレングリコールおよび1,4−ブタンジオールを共重合することでも得られるが、コストの点よりポリエチレンテレフタレートを主成分とする樹脂と、ポリブチレンテレフタレートを主成分とする樹脂とをブレンドして原料とする方法が好ましい。
【0026】
ポリエステル成分(a)は240〜265℃、ポリエステル成分(b)は185〜235℃の融点であることが重要であり、かかる融点範囲を逸脱すると、寸法安定性、製膜安定性、耐熱性のいずれかが劣るものとなる。ポリエステル成分(a)および(b)に共重合成分を導入する際には注意が必要である。
【0027】
基材層の二軸配向ポリエステルフィルムの融点は230℃〜265℃であることが重要であり、かかる範囲であれば十分な寸法安定性、製膜安定性、耐熱性を有し、本発明の目的である加工性が良好となる。
【0028】
樹脂(A)を構成するポリエステル成分(a)と(b)をブレンドして用いる場合、ポリエステル成分(a)の融点と含有量が上述した範囲を満たしていれば、ポリエステルフィルムの融点は上記の範囲となる。しかし、ポリエステル成分(a)と(b)をテレフタル酸、エチレングリコールおよび1,4−ブタンジオールの共重合で得る場合には、ポリエステルフィルムの融点範囲を逸脱する恐れがあるので注意を要する。
【0029】
本発明において融点とは、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製DSC2)を用いて測定するものであり、10℃/分の速度で昇温する過程で結晶融解に基づく吸熱ピーク温度を融点(Tm)とする。なお、複数の吸熱ピークが観測されるときは、最も吸熱ピーク面積が大きいものを融点とする。
【0030】
樹脂(A)および/または(B)にガラス転移点が0℃以下の熱可塑性樹脂(C)を含有させることは本発明の目的である強靱性を向上させる点から好ましい。ただし、含有量は樹脂(A)、(B)それぞれを100重量%として10重量%を超えると機械強度や寸法安定性などの性能が低下し、フィルムのヘイズが上がる可能性がある。熱可塑性樹脂(C)は特に限定されるものでないが、熱可塑性エラストマーが好ましく用いられる。熱可塑性エラストマーは常温でエントロピー弾性を発揮するゴム成分(ソフトセグメント)と、高温で流動、常温では塑性変形を阻止する拘束成分(ハードセグメント)から構成されている。ポリスチレン系(ハードセグメント:ポリスチレン、ソフトセグメント:ポリブタジエン、ポリイソプレン、水素添加ポリブタジエン、エチレン−プロピレン共重合ゴムなど)、ポリオレフィン系(ハードセグメント:ポリエチレンまたはポリプロピレン、ソフトセグメント:エチレン−プロピレン共重合ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、水素添加ポリブタジエンなど)、ポリエステル系(ハードセグメント:ポリエステル、ソフトセグメント:ポリエーテルまたはポリエステル)、ポリアミド系(ハードセグメント:ポリアミド、ソフトセグメント:ポリエーテルまたはポリエステル)などが挙げられる。なかでもポリスチレン系、ポリエステル系が強靱性向上の観点から好ましい。具体的なスチレン系エラストマーとしては、SBS(スチレン−ブタジエン−スチレンコポリマー)、SEBS(スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンコポリマー)、SIS(スチレン−イソプレン−スチレンコポリマー)、SEP(スチレン−エチレン/プロピレンコポリマー)などが挙げられる。ポリエステル系エラストマーとしては、ローモッド(日本GE製)、ハイトレル(東レ・デュポン製)、アニテール(DSM製)、ペルプレン(東洋紡製)、ZTPE(日本ゼオン製)といったエラストマーが好適に使用できる。ポリエステル系ではポリオキシアルキレングリコールなどのポリエーテルエステル成分を含有することが好ましく、なかでもポリテトラメチレングリコール成分含有エラストマーが特に好ましく用いられる。ポリオキシアルキレングリコール成分を含む樹脂を添加する場合、ポリエステル樹脂にポリエーテルであるポリオキシアルキレングリコール成分を予め共重合しておいて製膜する、もしくは別途ポリエーテルエステルとして準備し、ポリエステル樹脂とブレンドして使用してもよい。 また、二軸配向ポリエステルフィルムに用いられる樹脂(A)、(B)には、発明の効果を妨げない範囲でポリエステル成分(a)、(b)および熱可塑性樹脂(C)以外の成分、例えば、帯電防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、結晶核剤、耐候剤、紫外線吸収剤、顔料および染料などを含有することが可能である。この場合、樹脂(A)、(B)の構成成分の合計をそれぞれ100重量%として、ポリエステル成分(a)、(b)および熱可塑性樹脂(C)が上述した規定の含有割合を満たすことが必要である。
【0031】
各種成分の中でも、取扱い性、加工性の観点から、平均粒子径0.01〜5μmの粒子を含有することが好ましい。樹脂(A)および(B)に添加することができる粒子は、フィルム添加用の公知の粒子であればよく、たとえば、内部粒子、無機粒子、有機粒子が好ましい。好ましくは0.01〜3重量%、より好ましくは0.03〜3重量%、さらに好ましくは0.05〜2重量%、特に好ましくは0.05〜1重量%含有される。
【0032】
内部粒子を析出させる方法としては公知の技術を用いることができ、例えば、特開昭48−61556号公報、特開昭51−12860号公報、特開昭53−41355号公報、および特開昭54−90397号公報などに記載の技術を採用することができる。さらに、特公昭55−20496号公報や特開昭59−204617号公報などに記載の他の粒子を併用することもできる。平均粒子径を0.01〜5μmとすると、ポリエステルフィルムに欠陥が生じず好ましい。
【0033】
無機粒子としては、例えば、湿式および乾式シリカ、コロイダルシリカ、ケイ酸アルミ、酸化チタン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミ、マイカ、カオリン、クレーなど、有機粒子としては、スチレン、シリコーン、アクリル酸類、メタクリル酸類、ポリエステル類、ジビニル化合物などを構成成分とする粒子を使用することができる。なかでも、湿式および乾式シリカ、アルミナなどの無機粒子およびスチレン、シリコーン、アクリル酸、メタクリル酸、ポリエステル、ジビニルベンゼンなどを構成成分とする粒子を使用することが好ましい。さらに、これらの内部粒子、無機粒子および有機粒子は二種以上を併用してもよい。
【0034】
なお、二軸配向ポリエステルフィルム中の樹脂(A)、樹脂(B)や熱可塑性樹脂(C)の組成およびその量は、プロトン核磁気共鳴分光法(H−NMR)もしくはカーボン13核磁気共鳴分光法(13C−NMR)により、モル比率、又は重量比率の定量を行うことができる。
【0035】
熱可塑性樹脂(C)は強靱性の観点から、二軸配向ポリエステルのフィルム面内方向に延びた円盤状に分散することが好ましく、そのアスペクト比は5以上が好ましい。熱可塑性樹脂(C)がより扁平な円盤状に分散することで、耐屈曲性を向上することが出来好ましい。
【0036】
なお、本明細書中の熱可塑性樹脂(C)のアスペクト比とは、以下の手法で分散形状を確認し、算出するものとする。フィルムをエポキシ樹脂に包埋し、フィルム断面がサンプル面となるようにミクロトームにて超薄切片を作製する。このフィルム断面の薄膜切片を四酸化ルテニウムにて染色し、透過型電子顕微鏡を用いて断面写真を撮影する。得られた写真から染色されて観察される熱可塑性樹脂(C)について面内方向の分散径と厚み方向の分散径を測定し、面内方向の分散径から厚み方向の分散径を除したものをアスペクト比とする。詳細については後述する実施例で説明する。
【0037】
熱可塑性樹脂(C)の分散径を制御する方法としては、特に限定されるものではないが、樹脂(A)および(B)のメインマトリックスであるポリエステルとの相溶性、溶融粘度差や剪断速度、ドラフト比などの溶融押出条件、延伸条件によって制御する方法を挙げることができる。特に、熱可塑性樹脂(C)としてのメインマトリックスと同じポリエステル系のエラストマーを用いた場合、延伸条件により高配向化することでフィルム面内方向の分散径を大きくすることができ、アスペクト比を大きくできる。高配向化は機械強度を向上させ、ひいては耐突刺性の向上にもつながり好ましい。
【0038】
ポリエステル非晶部の配向度の指標である面配向係数(fn)は、アッベ屈折計などを用いて測定されるフィルム長手方向、幅方向、厚み方向の屈折率(それぞれNx、Ny、Nz)から次式により算出される値である。二軸配向ポリエステルフィルムの面配向係数は好ましくは0.156以上、より好ましくは0.160、特に好ましくは0.163以上である。
【0039】
fn=(Nx+Ny)/2−Nz
次に、本発明のバルーン用フィルムを構成する二軸配向ポリエステルフィルムの代表的な製造方法について述べるが、本発明は、特にこれに限定されるものではない。ポリエステル成分(a)とポリエステル成分(b)からなる樹脂と、および必要に応じてガラス転移点0℃以下の熱可塑性樹脂(C)を含むペレットを必要に応じて乾燥した後、公知の溶融押出機に供給し、スリット状のダイからシート状に押出し、静電印加などの方式によりキャスティングドラムに密着させ冷却固化し、未延伸シートを得る。
【0040】
樹脂(A)と樹脂(B)からなる層が交互に5層以上積層された二軸配向ポリエステルフィルムを得る方法としては、押出工程にて2種類の樹脂をフィードブロックで3層以上に積層した後、スタティックミキサーの段数を変更して任意の総数に積層し、フラットダイにてシート状に成型する方法などが挙げられる。特に積層精度の点から、フィードブロック中の3層以上に積層される箇所からフラットダイ吐出部にいたる流路形状が角状であるスクウェアミキサーを用いることが好ましく用いられる。
【0041】
未延伸フィルムは加熱ロール間の周速差を用いて長手方向に延伸した後、クリップに把持して幅方向に延伸する、あるいは幅方向に延伸した後、長手方向に延伸する逐次二軸延伸法、クリップに把持してフィルムの長手方向、幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸法などにより延伸を行う。フィルムは予備加熱を行ったうえ、樹脂のガラス転移点〜ガラス転移点+40℃の間の温度範囲で延伸することが好ましい。上記した延伸方法において、採用される延伸倍率としては、それぞれの方向に好ましくは2.0〜5.5倍、さらに好ましくは2.5〜5.0倍であり、より好ましくは3.2〜4.5倍であり、延伸速度は1000〜200000%/分であることが好ましい。また、延伸は各方向に対して複数回行ってもよい。配向度を高めるには延伸工程における予熱・延伸温度の低温化と高延伸倍率化が有効であるが、樹脂組成などに応じ製膜性が変化するため、考慮が必要である。
【0042】
二軸延伸の後にフィルムの熱処理を行うが、この熱処理方法は特に限定されず、オ−ブン中や加熱されたロ−ル上などで熱処理する、公知の方法で行うことができる。熱固定温度は、ポリエステル成分(b)の融点−40℃〜融点+10℃が好ましく、より好ましくは融点−35℃〜融点、特に好ましくは融点−30℃〜融点−10℃である。かかる好ましい範囲であると本発明の目的である強靱性、中でも耐屈曲性が一層優れたものになる。ポリエステル成分(b)と相溶性の良いポリエステル成分(b)を混合し、かつ、ポリエステル成分(b)の融点近傍で熱処理を行うことにより、ポリエステル成分(a)の非晶部の配向が緩和され、分子運動性が高められ耐屈曲性が向上する。かかる熱処理温度がポリエステル成分(b)の融点−40℃未満では、非晶部の配向緩和が不十分であり、一方、ポリエステル成分(b)の融点+10℃を超えると、結晶化が進み脆くなりやすいため、耐屈曲性が劣ったものとなりやすい。
【0043】
また、二軸延伸を行った後、特定のエネルギーを与えることにより、ポリエステルの非晶部分の運動性を高める処理を行うことも好ましい。かかるエネルギーを付与する方法としては、赤外線や紫外線などの特定波長の電磁波を吸収する添加剤をあらかじめ添加して、電磁波を照射する方法、電子線を照射する方法、特定条件で加熱する方法や、これらの組み合わせなどを採用することができる。
【0044】
寸法安定性の点から上記熱処理はフィルムをその長手方向および/または幅方向に3〜10%弛緩させつつ行うことが好ましく、より好ましくは4〜8%、特に好ましくは5〜7%である。また、再延伸を各方向に対して1回以上行ってもよく、再延伸後、熱処理を行っても良い。
【0045】
本発明のバルーン用フィルムでは長期間浮遊することができる必要があるため、ガスバリア性を付与する層を有することが重要である。特に、ガスバリア層は加工性に優れる二軸配向ポリエステルフィルム面上に設けることが好ましい。中でも、二軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも片面にアルミニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化セリウム、酸化カルシウム、ダイアモンド状炭素膜、あるいはそれらの混合物のいずれかからなる蒸着層を設けることが好ましい。蒸着簿膜の作製方法としては、真空蒸着法、EB蒸着法、スパッタリング法イオンプレーティング法などの物理的蒸着法、プラズマCVDなど各種化学蒸着法などを用いることができる。生産性やコストの点からは真空蒸着法が特に好ましく用いられる。ガスバリア層として、厚さ5〜15μm程度のアルミニウム箔を積層することでも高いガスバリア性は得られるが、廃棄時の環境負荷低減の観点から、蒸着層を設ける方法が好ましく用いられる。
【0046】
蒸着層を設ける際には、蒸着膜密着性を向上させるため、あらかじめ二軸配向ポリエステルフィルム表面にコロナ放電処理などの方法による前処理を施しておくことが好ましい。コロナ処理を施す際の処理強度は5〜50W・min/mが好ましく、より好ましくは10〜45W・min/mである。さらに、プラズマ処理、アルカリ処理、火炎処理および電子線放射処理などの表面処理を必要に応じて施してもよい。また、コーティングと併用することにより、より高いガスバリア性を得られる。二軸配向ポリエステルフィルム上にあらかじめプライマー剤をインラインまたは、オフラインで塗布しておけば、密着性の高い蒸着膜が得られガスバリア性向上に有効である。また、蒸着膜上にアンカーコート剤を塗布すれば、蒸着膜の欠陥を補完しガスバリア性向上につながる。
【0047】
本発明のバルーン用フィルムは、蒸着に限らず、印刷などの加工は二軸配向ポリエステルフィルム面に施すことが好ましい。
【0048】
本発明のバルーン用フィルムを構成する二軸配向ポリエステルフィルムは、その厚みが6〜15μmであることが好ましく、より好ましくは8〜12μmである。6μmより小さいと強度やガスバリア性が不十分となったり、加工性が低下したりする恐れがある。一方、15μmを超えるとバルーン本体が重くなり、バルーン形状によっては浮遊しなくなる可能性がある。
【0049】
本発明のバルーン用フィルムのヒートシール層は、二軸配向ポリエステルフィルムより融点の低いホットメルト接着剤などをコーティングする、ポリオレフィン樹脂を押出ラミネートする、あるいはポリオレフィン樹脂からなるシーラントフィルムをドライラミネートするなどの方法を用いて設けられる。中でも、柔軟性に優れる直鎖状低密度ポリエチレン(エチレン−α− オレフィン共重合体)をドライラミネーションもしくは押出ラミネーションによって積層する方法が好ましく用いられる。また、シングルサイト触媒(メタロセン触媒)を用いた重合反応により得られる直鎖状低密度ポリエチレンは低温シールで強いシール強度が得られることからシール工程を高速化でき、成型されたバルーンに高い圧力でガスを充填できるため生産性に優れる、強靱性が高いなどの利点があり、好適に使用できる。
【0050】
本発明のバルーン用フィルムにおいては、高い強靱性やガスバリア性、意匠性などに重点を置く場合などに、発明の効果を妨げない範囲でプラスチックフィルムや紙、布など他の素材を積層または介在させることが可能である。例えば、二軸配向ポリエステルフィルムとヒートシール層の間および/または二軸配向ポリエステルフィルム外面に積層介在させることができる。ただし、上述したとおり、層数が増し、バルーンの重みが増せば、浮遊できなくなる恐れが生じるので、バルーン形状や充填ガス圧の考慮が必要となる。
【0051】
以下に、本発明で用いた各物性と特性の測定、評価方法について説明する。
【0052】
(1)融点、ガラス転移点
示差走査熱量計(パーキンエルマー社製DSC2)を用いて測定した。サンプル10mgを窒素気流下で280℃、5分間溶融保持し、ついで液体窒素で−100℃まで急冷した。得られたサンプルを−100〜280℃まで、10℃/分の速度で昇温した。JIS7121に従ってベースラインの変化を読み取り、中間点ガラス転移温度をガラス転移点(Tg)とし、結晶融解に基づく吸熱ピークの頂点の温度を融点(Tm)とした。なお、複数の吸熱ピークが観測されるときは、最も吸熱ピーク面積が大きいものを融点とした。
【0053】
(2)フィルム厚み
フィルムの厚みは、ダイヤルゲージにて任意の50ヶ所を測定し、その平均値を求めた。
【0054】
(3)アスペクト比
蒸着加工前の基材フィルムをエポキシ樹脂に包埋し、フィルムの長手方向−厚み方向断面を観察面とするようにミクロトームを使用して超薄切片を作製した。このフィルム断面の薄膜切片を四酸化ルテニウムにて染色し、透過型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製H−7100FA型)を用いて加速電圧100kv、倍率2万倍で断面写真を撮影した。得られた写真から、染色されている熱可塑性樹脂(C)について面内方向の分散径と厚み方向の分散径を10ヶ所測定し、その平均値をそれぞれ面内方向の平均分散径もしくは厚み方向の平均分散径とし、厚み方向分散径/面内方向の平均分散径をアスペクト比とした。
【0055】
(4)面配向係数(fn)
偏光子を備えた屈折計(アタゴ(株)製アッベ屈折率計4T)を用いて蒸着前の基材フィルムの長手方向、幅方向、厚み方向の屈折率(それぞれNx、Ny、Nz)を測定し、次式で面配向係数(fn)を求めた。
【0056】
fn=(Nx+Ny)/2−Nz
(5)光学濃度(OD)
光学濃度計(グレタグマクベス社製TR927)を用い、次式より算出した。
【0057】
試料に入射する投射光I0 と、その試料を通過した透過光Iの比、透過率の逆数の常用対数で表わす。
【0058】
OD=log(I0 /I)
(6)加工性
蒸着を施した基材フィルムの非蒸着面に約200mmの間隔で油性ペンを用いてマーキングし、30℃、85%RHの条件下で12時間調湿した後、その間隔(L1)を万能投影機にて測定した。このサンプルをマーキング面が接着層にならないよう最外面に配置し、ヒートシール層をラミネート加工した。蒸着・ラミネート条件については後述する実施例にて説明する。23℃、65%RHの条件下で24時間調湿した後マークの間隔(L2)を万能投影機にて測定し、下式より収縮率R(%)を求めた。○が合格である。
R(%)=(L1−L2)/L1×100
○:収縮率が2%未満
×:収縮率が2%以上、もしくは目視でしわが観測される。
(7)強靱性
(I.耐屈曲性)
ASTM F−392に規定されたゲルボテスターを使用し、ラミネートフィルムサンプル(A4サイズ:MD×TD 297mm×210mm)を20℃の雰囲気下、800回の繰り返し屈曲試験を実施した。試験後サンプルの280mm×180mmに存在するピンホール個数を測定した。サンプル5検体を測定した。○が合格である。
【0059】
×:ピンホールが15個以上
○:ピンホールが15個より少ない。
【0060】
(II.耐突刺性)
直径40mmのリングにラミネートフィルムサンプルを弛みのないように張り、先端角度60度、先端R0.5mmのサファイア製針を使用し、円の中央を50mm/分の速度で突き刺し、針が貫通するときの荷重を測定した。○が合格とする。
【0061】
×:突刺荷重が4.0Nより小さい
○:突刺荷重が4.0N以上。
(8)ガスバリア性
(酸素透過率測定)
ラミネートフィルムサンプルを温度23℃、湿度80%RHの条件で、酸素透過率測定装置(米国MOCON社製、OXTRAN 2/20)を使用して測定した。
【実施例】
【0062】
以下、実施例によって本発明のバルーン用フィルムを説明する。
【0063】
(ポリエステルの準備)
実施例と比較例には、以下のポリエステルを使用した。
【0064】
・ポリエステル成分(a−1)
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部の混合物に、テレフタル酸ジメチル量に対して酢酸マグネシウムと三酸化アンチモンをそれぞれ0.09重量部と0.03重量部添加して、140〜230℃の温度でメタノールを留出しつつエステル交換反応を行った。なお、エチレングリコールには、無粒子のエチレングリコールと平均粒子径1.1μmの凝集シリカ粒子のエチレングリコールスラリーを混合し、最終のポリエチレンテレフタレートポリマーの状態で凝集シリカを0.04重量部含有するようにした。次いで、得られたエステル交換反応生成物に、テレフタル酸ジメチル量に対して、リン酸85%水溶液0.020重量部を添加した後、重縮合反応層に移行した。次いで、反応系を230℃から290℃の温度にまで徐々に昇温するとともに、反応系を徐々に減圧して1mmHgの減圧下に、290℃の温度で3時間重縮合反応させ所定の撹拌トルクとなった時点で重縮合反応を停止し、冷水にストランド状に吐出、直ちにカッティングして融点255℃のポリエチレンテレフタレート樹脂を得た。
【0065】
・ポリエステル成分(a−2)
テレフタル酸ジメチル100重量部の代わりに、テレフタル酸ジメチル95重量部とイソフタル酸ジメチル5重量部を用いたこと以外は、上記ポリエステル成分(A−1)と同様にして、融点247℃のポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体樹脂を得た。
【0066】
・ポリエステル成分(a−3)
テレフタル酸ジメチル100重量部の代わりに、テレフタル酸ジメチル85重量部とイソフタル酸ジメチル15重量部を用いたこと以外は、上記ポリエステル成分(A−1)と同様にして、融点223℃のポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体樹脂を得た。
【0067】
・ポリエステル成分(b−1)
テレフタル酸100重量部と1,4−ブタンジオール110重量部の混合物を、窒素雰囲気下で140℃まで昇温して均一溶液とした後、テレフタル酸に対して、オルトチタン酸テトラ−n−ブチルとモノヒドロキシブチルスズオキサイドをそれぞれ0.054重量部と0.054重量部添加し、160℃〜230℃の温度まで昇温し、生成する水とテトラヒドロフランを留出しつつエステル化反応を行った。次いで、オルトチタン酸テトラ−n−ブチル0.066重量部を添加して、反応系を230℃の温度から徐々に250℃の温度まで昇温するとともに、1mmHgの減圧下で2時間50分重縮合反応を行い、冷水にストランド状に吐出、直ちにカッティングして固有粘度0.75のポリブチレンテレフタレート樹脂を得た。このようして得られたポリエステルペレットをさらに回転式反応容器に仕込み、190℃の温度で、67Paの減圧下において8時間固相重合を行い、融点226℃のポリブチレンテレフタレート樹脂を得た。
【0068】
・ポリエステル成分(b−2)
東レ(株)製ポリブチレンテレフタレート“トレコン1200S”(融点223℃)を用意した。
(実施例1)
樹脂(A)として樹脂(A)を100重量部としてポリエステル成分(a−1)75重量部とポリエステル成分(b−1)25重量部を180℃の温度で3時間真空乾燥した後、単軸押出機に供給し、押出温度280℃で溶融押出を行い、静電印加しながら鏡面冷却ドラムにて冷却固化して未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを、非粘着シリコーンロールにてロール/ロール間で延伸温度98℃にて長手方向に3.9倍延伸したのち、テンターにて95℃で幅方向に4.0倍延伸し、熱固定温度205℃にて5秒間熱処理しながら幅方向に5%弛緩して厚さ12.0μmの二軸配向ポリエステルフィルムを作製した。さらに、小幅にスリットした二軸配向ポリエステルフィルムに両面コロナ処理を施し、フィルム走行装置を具備した真空蒸着装置内にセット、1.00×10−2Paの高真空にした後に、20℃の冷却金属ドラムを介して走行させた。このとき、アルミニウム金属を加熱蒸発させ蒸着薄膜層を形成して巻取った。蒸着後、真空蒸着装置内を常圧に戻して、巻取ったフィルムを巻き返し、40℃の温度で2日間エージングして、蒸着二軸配向ポリエステルフィルムを得た。なお、蒸着フィルムの光学濃度は2.5となるよう蒸着厚みを制御した。得られた蒸着二軸配向ポリエステルフィルム上に日本ポリエチレン(株)製直鎖状低密度ポリエチレン“ノバテック”UE320を15μmの厚みに押出ラミネートした。得られた積層フィルムは、表1に示すとおり優れた特性を示した。
【0069】
(実施例2)
樹脂(A)を100重量部としてポリエステル成分(a−2)70重量部、およびポリエステル成分(b−2)30重量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして厚さ12.7μmの二軸配向ポリエステルフィルムを作製し、実施例1と同様に蒸着層を設け、ヒートシール層をラミネートした。得られた積層フィルムは、表1に示すとおり優れた特性を示した。
【0070】
(実施例3)
基材フィルムの蒸着の際、アルミニウム金属を加熱蒸発し、蒸発蒸気箇所に酸素ガスを導入して光学濃度0.08となるよう酸化アルミニウム蒸着層を設けた他は実施例1と同様とし、実施例1と同様にヒートシール層をラミネートした。蒸着膜厚は50nmとした。得られた積層フィルムは、表1に示すとおり優れた特性を示した。
【0071】

(実施例4)
樹脂(A)として、樹脂(A)を100重量部として180℃の温度で3時間真空乾燥させたポリエステル成分(a−1)80重量部とポリエステル成分(b−2)18重量部、100℃の温度で4時間熱風乾燥したデュポン(株)製“ハイトレル”(登録商標)5556(ガラス転移温度:−35℃)2重量部を混合し原料としたこと以外は、実施例1と同様にして二軸配向された厚さ12.1μmの二軸配向ポリエステルフィルムを作製し、実施例1と同様に蒸着層を設け、ヒートシール層をラミネートした。得られた積層フィルムは、表1に示すとおり優れた特性を示した。
【0072】
(実施例5)
二軸配向ポリエステルフィルムの延伸の際、長手方向の延伸温度110℃、延伸倍率3.2倍、幅方向延伸温度を110℃、延伸倍率を3.1倍に変更したこと以外は実施例4と同様にした厚さ12.0μmの二軸配向ポリエステルフィルムを作製し、実施例1と同様に蒸着層を設け、ヒートシール層をラミネートした。得られた積層フィルムは、表1に示すとおり優れた特性を示した。
【0073】
(実施例6)
180℃の温度で3時間真空乾燥したポリエステル成分(a−1)、(b−1)と100℃の温度で4時間熱風乾燥したデュポン(株)製“ハイトレル”3078(ガラス転移温度:−72℃)を準備した。樹脂(A)としてポリエステル成分(a−1)を80重量部、(b−1)を20重量部、樹脂(B)としてポリエステル成分(a−1)を80重量部、(b−1)を13重量部、“ハイトレル”3078を7重量部混合し、原料とした。各層の原料樹脂を2台の単軸溶融押出機を用いて吐出量の比率が樹脂(A)層:樹脂(B)層=3.5:1となるよう溶融押出を行い、フィードブロックにて樹脂(A)層が5層、樹脂(B)層が4層、交互に積層するよう合流させ、スクウェアミキサーを設けることにより257層に分割積層した後、静電印加しながらT字型口金より押出し、鏡面冷却ドラムにて冷却固化して未延伸フィルムを得た。樹脂(A)層、樹脂(B)層とも押出機の溶融温度は280℃とした。以下の製膜工程は実施例1と同様とし、二軸配向された厚さ12.5μmの二軸配向ポリエステルフィルムを作製し、実施例1と同様に蒸着層を設け、ヒートシール層をラミネートした。得られた積層フィルムは、表1に示すとおり優れた特性を示した。
【0074】
(実施例7)
二軸配向ポリエステルフィルムの延伸の際、長手方向の延伸温度105℃、延伸倍率3.1倍、幅方向延伸温度108℃、延伸倍率3.2倍に変更したこと以外は実施例4と同様にした厚さ12.3μmの二軸配向ポリエステルフィルムを作製し、実施例6と同様に蒸着層を設け、ヒートシール層をラミネートした。得られた積層フィルムは、表1に示すとおり優れた特性を示した。
【0075】
(実施例8)
ヒートシール層として出光ユニテック製直鎖状低密度ポリエチレンシーラントフィルム“ユニラックス”(商標登録)LS−722CN(厚み30μm)を用いた。実施例1と同様に作製した蒸着基材フィルム上に三井武田ケミカル(株)製“タケラック”(商標登録)A610、“タケネート”(商標登録)A50を9:1で混合し、40重量%酢酸エチル溶液とした接着剤をドライ厚さ3μmとなるよう塗布し、シーラントフィルムをドライラミネートした。得られた積層フィルムは表1に示すとおり優れた特性を示した。
【0076】
【表1】

【0077】
なお、上記表中の略号は以下のとおりである。
Tm:融点
Hyt:デュポン(株)製“ハイトレル”(登録商標)
MD:長手方向
TD:幅方向
fn:面配向係数
OD:光学濃度
LLDPE:直鎖状低密度ポリエチレン
EL:押出ラミネート
DL:ドライラミネート
(比較例1)
厚み12.0μmの東レフィルム加工(株)製蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム“VMPET”(登録商標)1200を基材層とし、ヒートシール層をラミネートした。積層フィルムは、表2に示すとおり、強靱性に劣っていた。
【0078】
(比較例2)
厚み12.0μmの東洋紡績(株)製蒸着ポリアミドフィルム“ハーデン”(登録商標)N7070を基材層とし蒸着面側に、実施例1と同様にヒートシール層をラミネートした。積層フィルムは、表2に示すとおり、加工性に劣っていた。(比較例3)
厚み12.0μmの(株)クラレ製蒸着ポリエチレン−ビニルアルコールフィルム“エバール”(登録商標)VM−XLを基材層とし、蒸着面側に実施例1と同様にヒートシール層をラミネートした。積層フィルムは、表2に示すとおり、強靱性と加工性に劣っていた。
【0079】

(比較例4)
二軸配向ポリエステルフィルムをなす樹脂としてポリエステル成分(a−1)99重量部、“ハイトレル”3078を1重量部混合して原料とした。長手方向の延伸温度を110℃、延伸倍率を3.7倍、幅方向の延伸温度を110℃、延伸倍率を3.6倍とし、熱固定温度を230℃とした他は実施例1と同様にして厚さ12.3μmの基材フィルムを作製した。実施例1と同様に蒸着層を設け、ヒートシール層をラミネートした。得られた積層フィルムは、表2に示すとおり強靱性に劣っていた。
【0080】
(比較例5)
二軸配向ポリエステルフィルムをなす樹脂について、樹脂全体を100重量部としてポリエステル成分(a−3)70重量部、およびポリエステル成分(b−1)30重量部としたこと以外は、実施例1と同様にして厚さ12.7μmの基材フィルムを作製し、実施例1と同様に蒸着層を設け、ヒートシール層をラミネートした。得られた積層フィルムは、表2に示すとおり強靱性、バリア性、加工性に劣っていた。
【0081】
(比較例6)
二軸配向ポリエステルフィルムをなす樹脂について、樹脂全体を100重量部としてポリエステル成分(a−1)70重量部、“ハイトレル”3046(ガラス転移温度:−69℃)30重量部に変更し、実施例5と同様にして厚さ12.4μmの基材フィルムを作製した。製膜ではポリマーの吐出が不安定で製膜性に劣った。得られた基材フィルムに実施例1と同様に蒸着層を設けようとしたが、蒸着工程で幅方向の収縮が起こり蒸着できず中止した。
【0082】
【表2】

【0083】
なお、上記表中の略号は以下のとおりである。
PET:ポリエチレンテレフタレートフィルム
PA:ポリアミドフィルム
EVOH:エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム
Tm:融点
Hyt:デュポン(株)製“ハイトレル”(登録商標)
MD:長手方向
TD:幅方向
fn:面配向係数
OD:光学濃度
LLDPE:直鎖状低密度ポリエチレン
EL:押出ラミネート
DL:ドライラミネート
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明によれば、湿度依存のない安定した加工性、クラックやピンホールを発生しない強靱性、浮遊能力を維持出来る高いガスバリア性を兼ね備えるため、玩具やディスプレイ、デコレーションなどのバルーン用途に好適に使用され産業的価値は非常に大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記樹脂(A)を用いてなる融点230℃〜265℃の二軸配向ポリエステルフィルムを基材層とするラミネート体であり、ガスバリア層、ヒートシール層を構成中に含むバルーン用フィルム。
樹脂(A):樹脂(A)を100重量%としてエチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とし、融点が240〜265℃であるポリエステル成分(a)を65〜95重量%と、ブチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とし、融点が185〜235℃であるポリエステル成分(b)を5〜35重量%含有する。
【請求項2】
樹脂(A)を用いてなるA層と下記樹脂(B)を用いてなるB層とが交互に5層以上積層されてなる融点230℃〜265℃の二軸配向ポリエステルフィルムを基材層とし、ガスバリア層、ヒートシール層を構成中に含むバルーン用フィルム。
樹脂(B):樹脂(B)を100重量%としてポリエステル成分(a)を55〜100重量%、ポリエステル成分(b)を0〜45重量%含有する。
【請求項3】
二軸配向ポリエステルフィルムを構成する樹脂(A)および/または樹脂(B)が、さらにガラス転移点が0℃以下の熱可塑性樹脂(C)を含有してなる請求項1または2いずれかに記載のバルーン用フィルム。
【請求項4】
二軸配向ポリエステルフィルム中の熱可塑性樹脂(C)がフィルム面内方向に円盤状に分散し、そのアスペクト比が5以上であることを特徴とする請求項3に記載のバルーン用フィルム。
【請求項5】
二軸配向ポリエステルフィルムの面配向係数が0.156以上である請求項1〜4いずれかに記載のバルーン用フィルム。
【請求項6】
前記ガスバリア層が二軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも片面にアルミニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化セリウム、酸化カルシウム、ダイアモンド状炭素膜、あるいはそれらの混合物のいずれかからなる蒸着層を設けてなる請求項1〜5いずれかに記載のバルーン用フィルム。
【請求項7】
ヒートシール層としてポリオレフィンからなる樹脂が押出ラミネートされてなる請求項1〜6のいずれかに記載のバルーン用フィルム。
【請求項8】
請求項1〜7いずれかに記載のバルーン用フィルムを含んだラミネート構成体からなるバルーン。

【公開番号】特開2006−305866(P2006−305866A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−131244(P2005−131244)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】