説明

バンドパスフィルタ装置

【課題】所定の通過域の周波数帯が広く、通過域での挿入損失量が少ないバンドパスフィルタ装置の提供。
【解決手段】ハイパス用弾性表面波共振子111とハイパス用弾性表面波共振子に並列に接続の第一のハイパス用インダクタ素子112とからなるハイパスフィルタ回路部110と、一端がハイパス用弾性表面波共振子の他端に接続された第一の弾性表面波共振子121と一端が第一の弾性表面波共振子の一端に接続され他端が接地されている第二の弾性表面波共振子122と第二の弾性表面波共振子に並列に接続されている第一のローパス用インダクタ素子124と一端が第一の弾性表面波共振子の他端に接続され他端が接地されている第三の弾性表面波共振子123と第三の弾性表面波共振子に並列に接続された第二のローパス用インダクタ素子125とからなるローパスフィルタ回路部120とを備え、ハイパスフィルタ回路部とローパスフィルタ回路部とが接続された構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の周波数帯の信号のみを通過させることができるバンドパスフィルタ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話の加入者の増加に伴い、電波を効率的に利用する必要性が高まっている。また、携帯電話を用いて、電子メールはもとより、インターネットの閲覧や動画配信などのブロードバンドサービスの需要が高まり、要求されるデータ通信量が増大している。
このような急速なデータ通信需要の増加に対応して、通信容量の拡大や通信速度の高速化を目指した次世代高速データ通信システムが次々誕生している。
【0003】
このような次世代高速データ通信システムには、例えば、2011年に廃止予定の地上波アナログ放送で用いられている周波数帯が用いられる。
この周波数帯は、例えば、その一部の周波数帯が携帯端末用のマルチメディア放送システムに用いられ、その他の一部が防災無線システムに用いられ、更にその他の一部が高速道路交通システムに用いられる。
【0004】
ここで、次世代高速データ通信システムの一例である携帯端末用のマルチメディア放送システムは、地上波アナログ放送で用いられている周波数帯、200MHz〜220MHzの周波数帯が用いられる予定となっている。
マルチメディア放送システムでは、従来の通信システムと比較して広い周波数帯、例えば、6MHz以上の周波数帯を使用することによって、従来の通信システムと比較して伝送容量の大容量化を測っている。
しかし、マルチメディア放送システムでは、隣接する周波数帯を他のシステムが占有しているため、他のシステムの信号により干渉を受けてしまう恐れがある。
【0005】
つまり、マルチメディア放送受信機能が搭載された携帯端末には、他のシステムからの緩衝を防ぐため、信号を受信する受信アンテナとマルチメディア放送を受信するマルチメディア受信回路部との間に、バンドパスフィルタ装置が設けられている。
このバンドパスフィルタ装置は、マルチメディア放送システムの信号のみを通過させ、その他の信号を除去する機能を果たす。
【0006】
このようなバンドパスフィルタ装置は、例えば、トランスバーサル型弾性表面波フィルタ装置である。
このトランスバーサル型弾性表面波フィルタ装置は、交差指上電極が圧電基板の一方の主面に設けられ、所定のフィルタ特性が得られるように電極の対数や周期などが調整されている。
【0007】
図16は、トランスバーサル型弾性表面波フィルタ装置の通過特性の一例を示す通過特性図である。図16では、横軸が周波数となっており、縦軸が挿入損失量となっている。
トランスバーサル型弾性表面波フィルタ装置の通過特性は、図16に示すように、中心周波数が約112MHzとなっている。
また、トランスバーサル型弾性表面波フィルタ装置の通過特性は、図16に示すように、通過域である周波数帯が約10MHzとなっており、通過域での挿入損失量が約10dBとなっている。
また、トランスバーサル型弾性表面波フィルタ装置の通過特性は、図16に示すように、中心周波数から約10MHz離れた周波数での挿入損失量が約30dBとなっている。言い換えると、トランスバーサル型弾性表面波フィルタ装置の通過特性は、図16に示すように、中心周波数から約10MHz離れた周波数での挿入損失量が30dBとなっている。
また、トランスバーサル型弾性表面波フィルタ装置は、図16に示すように、急峻な通過特性を備えている。
このように、トランスバーサル型弾性表面波フィルタ装置は、通過域の挿入損失量が約10dBであって通過域が約10MHzの周波数帯となっている通過特性を備え、急峻な減衰特性を備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
また、バンドパスフィルタ装置は、トランスバーサル型弾性表面波フィルタ装置の他に、例えば、縦結合多重モード型弾性表面波フィルタ装置がある。
縦結合多重モード弾性表面波フィルタ装置は、圧電基板の上に複数の交差指電極が設けられている。
縦結合多重モード弾性表面波フィルタ装置は、入力用交差指状電極と出力用交差指状電極と2つの反射器用電極とが圧電基板の一方の主面に設けられている。
入力用交差指状電極と出力用交差指状電極は、圧電基板の一方の主面であって、弾性表面波の伝播方向に沿って近接配置されている。
反射器用電極は、圧電基板の一方の主面であって、入力用交差指状電極と出力用交差指状電極との両側に配置されている。つまり、反射器用電極は、入力用交差指状電極と出力用交差指電極とを挟むように圧電基板の一方の主面に配置されている。
【0009】
ここで、この縦結合多重モード弾性表面波フィルタ装置の動作原理について説明する。
まず、縦結合多重モード弾性表面波フィルタ装置は、入力用交差指状電極に信号が入力されることで、入力用交差指状電極で励振され弾性表面波が発生する。
次に、縦結合多重モード弾性表面波フィルタ装置は、この弾性表面波が2つの反射器電極の間に閉じ込められて複数の共振モードが発生するので、この複数の共振モードが出力用指状電極から取り出される。
【0010】
縦結合多重モード弾性表面波フィルタ装置は、その動作原理が複数の共振モードを利用しているので、トランスバーサル型弾性表面波フィルタ装置と比較すると通過域での挿入損失量を少なくすることができる。
【0011】
図17は、縦結合多重モード弾性表面波フィルタ装置の通過特性の一例を示す通過特性図である。図17では、横軸が周波数となっており、縦軸が挿入損失量となっている。
縦結合多重モード弾性表面波フィルタ装置の通過特性は、図17に示すように、中心周波数が約315MHzとなっている。
また、縦結合多重モード弾性表面波フィルタ装置の通過特性は、図17に示すように、通過域の周波数帯が約0.4MHzとなっており、通過域での挿入損失量が約4dBとなっている。
また、縦結合多重モード弾性表面波フィルタ装置の通過特性は、図17に示すように、中心周波数から約1.3MHz離れた周波数帯で挿入損失量が約30dBとなっている。
また、縦結合多重モード弾性表面波フィルタ装置は、図17に示すように、急峻な減衰特性を備えている。
このように、縦結合多重モード弾性表面波フィルタ装置は、通過域での挿入損失量が約4dBであって通過域が約4MHzの周波数帯となっている通過特性を備え、急峻な減衰特性を備えている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平09−294046号公報
【特許文献2】特開2007−13681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、従来のトランスバーサル型弾性表面波フィルタ装置は、通過域での挿入損失量が約10dBとなっているので、入力された信号が減衰され出力されてしまう。
マルチメディア放送受信機能が搭載された携帯端末に用いる場合、従来のトランスバーサル型弾性表面波フィルタ装置は、入力された信号が減衰され出力されるので、マルチメディア受信回路部で受信を感知することができない恐れがある。
また、マルチメディア放送受信機能が搭載された携帯端末に用いる場合、従来のトランスバーサル型弾性表面波フィルタ装置は、減衰される出力された信号をマルチメディア受信回路部で受信することができる様に信号を増幅させる増幅器を設ける場合があるが、信号を増幅するために多く電力が消費されてしまい携帯端末のバッテリの寿命が短くなる恐れがある。
従って、従来のトランスバーサル型弾性表面波フィルタ装置は、マルチメディア放送受信機能が搭載された携帯端末に適していない。
【0014】
従来の縦結合多重モード型弾性表面波フィルタ装置は、通過域が約0.4MHzの周波数帯となっている。
このため、マルチメディア放送システムで用いる場合、従来の縦結合多重モード型弾性表面波フィルタ装置は、マルチメディア放送システムで用いられる周波数帯と比較して通過域の周波数帯が狭いので、通信容量を確保することができない恐れがある。
【0015】
そこで、本発明では、所定の通過域の周波数帯が広く、通過域での挿入損失量が少ないバンドパスフィルタ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するため、一端が信号入力端子に接続されているハイパス用弾性表面波共振子と、前記ハイパス用弾性表面波共振子に並列に接続されている第一のハイパス用インダクタ素子と、からなるハイパスフィルタ回路部と、一端が前記ハイパス用弾性表面波共振子の他端に接続され他端が信号出力端子に接続されている第一の弾性表面波共振子と、一端が前記第一の弾性表面波共振子の一端に接続され他端が接地されている第二の弾性表面波共振子と、前記第二の弾性表面波共振子に並列に接続されている第一のローパス用インダクタ素子と、一端が前記第一の弾性表面波共振子の他端に接続され他端が接地されている第三の弾性表面波共振子と、前記第三の弾性表面波共振子に並列に接続されている第二のローパス用インダクタ素子と、からなるローパスフィルタ回路部と、を備え、前記ハイパスフィルタ回路部と前記ローパスフィルタ回路部とが接続されていることを特徴とする。
【0017】
また、前記課題を解決するため、一端が信号入力端子に接続され他端が信号出力端子に接続されている第一の弾性表面波共振子と、一端が前記第一の弾性表面波共振子の一端に接続され他端が接地されている第二の弾性表面波共振子と、前記第二の弾性表面波共振子に並列に接続されている第一のローパス用インダクタ素子と、一端が前記第一の弾性表面波共振子の他端に接続され他端が接地されている第三の弾性表面波共振子と、前記第三の弾性表面波共振子に並列に接続されている第二のローパス用インダクタ素子と、からなるローパスフィルタ回路部と、前記第一の弾性表面波共振子と、前記第一の弾性表面波共振子に並列に接続されている第二のハイパス用インダクタ素子と、からなるハイパスフィルタ回路部と、を備えていることを特徴とする。
【0018】
また、前記課題を解決するため、ラダー型フィルタ回路部が接続されていることを特徴とする。
【0019】
また、前記課題を解決するため、縦結合多重モード型フィルタ回路部が接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
このようなバンドパスフィルタ装置は、ハイパス用弾性表面波共振子とこのハイパス用弾性表面波共振子に並列に接続されている第一のハイパス用インダクタ素子とでハイパスフィルタ回路部が構成されている。
このようなハイパスフィルタ回路部は、急峻な減衰特性を備え、従来のトランスバーサル型弾性表面波フィルタと比較して通過域での挿入損失量が小さいというハイパスフィルタの機能を備えている。
【0021】
また、このようなバンドパスフィルタ装置は、一端が前記ハイパス用弾性表面波共振子の他端に接続され他端が信号出力端子に接続されている第一の弾性表面波共振子と、一端が前記第一の弾性表面波共振子の一端に接続され他端が接地されている第二の弾性表面波共振子と、前記第二の弾性表面波共振子に並列に接続されている第一のローパス用インダクタ素子と、一端が前記第一の弾性表面波共振子の他端に接続され他端が接地されている第三の弾性表面波共振子と、前記第三の弾性表面波共振子に並列に接続されている第二のローパス用インダクタ素子とからローパスフィルタ回路部が構成されている。
このようなローパスフィルタ回路部は、急峻な減衰特性を備え、従来のトランスバーサル型弾性表面波フィルタ装置と比較して通過域での挿入損失量が小さいというローパスフィルタの機能を備えている。
【0022】
また、このようなバンドパスフィルタ装置は、ハイパスフィルタ回路部とローパスフィルタ回路部とが接続されているので、上述したハイパスフィルタの機能と上述したローパスフィルタの機能とを備えることができる。
【0023】
従って、このようなバンドパスフィルタ装置は、低い周波数側に急峻な減衰域を有したハイパスフィルタの機能を備えたハイパスフィルタ回路部と高い周波数側に急峻な減衰域を有したローパスフィルタの機能を備えたローパスフィルタ回路部とが組み合わさっていることにより、通過域の両端部に急峻な減衰特性を有することができる。
また、このようなバンドパスフィルタは、ハイパスフィルタ回路部とローパスフィルタ回路部とのそれぞれのフィルタの周波数を調整することにより、通過域の周波数帯を調整することができ、従来の縦結合多重モード弾性表面波フィルタ装置と比較して通過域の周波数帯を広くすることができる。
また、このようなバンドパスフィルタ装置は、通過域での挿入損失量が少ないというハイパスフィルタの機能を備えたハイパスフィルタ回路部と通過域での挿入損失量が少ないというローパスフィルタの機能を備えたローパスフィルタ回路部とを備えているので、従来のトランスバーサル型弾性表面波フィルタ装置と比較して通過域での挿入損失量を小さくすることができる。
【0024】
また、このようなバンドパスフィルタ装置は、一端が信号入力端子に接続され他端が信号出力端子に接続されている第一の弾性表面波共振子と、一端が前記第一の弾性表面波共振子の一端に接続され他端が接地されている第二の弾性表面波共振子と、前記第二の弾性表面波共振子に並列に接続されている第一のローパス用インダクタ素子と、一端が前記第一の弾性表面波共振子の他端に接続され他端が接地されている第三の弾性表面波共振子と、前記第三の弾性表面波共振子に並列に接続されている第二のローパス用インダクタ素子と、からなるローパスフィルタ回路部が構成されている。
このようなローパスフィルタ回路部は、急峻な減衰特性を備え、従来のトランスバーサル型弾性表面波フィルタ装置と比較して通過域での挿入損失量が小さいというローパスフィルタの機能を備えている。
【0025】
また、このようなバンドパスフィルタ装置は、ローパスフィルタ回路部の第一の弾性表面波共振子とこの第一の弾性表面波共振子に並列に接続されている第二のハイパス用インダクタ素子とでハイパスフィルタ回路部が構成されている。
このようなハイパスフィルタ回路部は、急峻な減衰特性を備え、従来のトランスバーサル型弾性表面波フィルタと比較して通過域での挿入損失量が小さいというハイパスフィルタの機能を備えている。
【0026】
つまり、このようなバンドパスフィルタ装置は、ローパスフィルタ機能とハイパスフィルタ機能とを備えている。
【0027】
従って、このようなバンドパスフィルタ装置は、低い周波数側に急峻な減衰域を有したハイパスフィルタの機能を備えたハイパスフィルタ回路部と高い周波数側に急峻な減衰域を有したローパスフィルタの機能を備えたローパスフィルタ回路部とが組み合わさっていることにより、通過域の両端部に急峻な減衰特性を有することができる。
また、このようなバンドパスフィルタは、ハイパスフィルタ回路部とローパスフィルタ回路部とのそれぞれのフィルタの周波数を調整することにより、通過域の周波数帯を調整することができ、従来の縦結合多重モード弾性表面波フィルタ装置と比較して通過域の周波数帯を広くすることができる。
また、このようなバンドパスフィルタ装置は、通過域での挿入損失量が少ないというハイパスフィルタの機能を備えたハイパスフィルタ回路部と通過域での挿入損失量が少ないというローパスフィルタの機能を備えたローパスフィルタ回路部とを備えているので、従来のトランスバーサル型弾性表面波フィルタ装置と比較して通過域での挿入損失量を小さくすることができる。
【0028】
また、このようなバンドパスフィルタ装置は、ラダー型フィルタ回路部が接続されているので、ラダー型フィルタ回路部の特性を備えることができる。
このため、このようなバンドパスフィルタ装置は、所定の通過域に隣接している周波数帯、つまり、減衰域を広くすることができる。
従って、このようなバンドパスフィルタ装置は、所定の通過域を含まない所定の他の通過域で用いられているシステムの信号を通過させず、所定の通過域で用いられている信号のみを通過させることができる。
【0029】
また、このようなバンドパスフィルタ装置は、縦結合多重モードフィルタ回路部が接続されているので、縦結合多重モードフィルタ回路部の特性を備えることができる。
このため、このようなバンドパスフィルタ装置は、所定の通過域に隣接している周波数帯、つまり、減衰域を広くすることができる。
また、このようなバンドパスフィルタ装置は、所定の通過域を含まない周波数帯の挿入損失量を従来のバンドパスフィルタ装置と比較して大きくすることができる。言い換えると、このようなバンドパスフィルタ装置は、従来のバンドフィルタ装置と比較して、減衰量を従来のバンドパスフィルタ装置と比較して大きくすることができる。
従って、このようなバンドパスフィルタ装置は、所定の通過域を含まない所定の他の通過域で用いられているシステムの信号を通過させず、所定の通過域で用いられている信号のみを通過させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第一の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置の一例を示す回路図である。
【図2】(a)は、対称2端子対回路を変換した対称格子型回路の等価回路図であり、(b)は、対称格子型回路を変換したT型回路の等価回路図である。
【図3】対称格子型回路に変形されたハイパスフィルタ回路部のリアクタンス特性の一例を示すリアクタンス特性図である。
【図4】ハイパスフィルタ回路部の通過特性の一例を示す通過特性図である。
【図5】対称格子型回路に変形されたローパスフィルタ回路部のリアクタンス特性の一例を示すリアクタンス特性図である。
【図6】ローパスフィルタ回路部の通過特性に一例を示す通過特性図である。
【図7】本発明の第一の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置の通過特性の一例を示す通過特性図である。
【図8】本発明の第二の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置の一例を示す回路図である。
【図9】本発明の第二の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置の通過特性の一例を示す通過特性図である。
【図10】ラダー型フィルタ回路部の一例を示す回路図である。
【図11】ラダー型フィルタ回路部の通過特性の一例を示す通過特性図である。
【図12】本発明の第三の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置の通過特性の一例を示す通過特性図である。
【図13】多重モード型フィルタ回路部の一例を示す回路図である。
【図14】多重モード型フィルタ回路部の通過特性の一例を示す通過特性図である。
【図15】本発明の第四の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置の通過特性の一例を示す通過特性図である。
【図16】従来のバンドパスフィルタ装置の通過特性の一例を示す通過特性図である。
【図17】別の従来のバンドパスフィルタ装置の通過特性の一例を示す通過特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、各図面において、各構成要素の状態をわかりやすくするために誇張して図示している。
【0032】
(第一の実施形態)
本発明の第一の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置について説明する。
本発明の第一の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置100は、例えば、図1に示すように、ハイパスフィルタ回路部110とローパスフィルタ回路部120とを備えている。
【0033】
ハイパスフィルタ回路部110は、図1に示すように、ハイパス用弾性表面波共振子111と第一のハイパス用インダクタ素子112とで構成されている。
【0034】
ハイパス用弾性表面波共振子111は、一端が信号入力端子ITに接続され、他端が後述するローパスフィルタ回路部120の一端に接続されている。
【0035】
第一のハイパス用インダクタ素子112は、図1に示すように、ハイパス用弾性表面波共振子111に並列に接続されている。
【0036】
つまり、ハイパスフィルタ回路部110は、ハイパス用弾性表面波共振子111に第一のハイパス用インダクタ素子112が並列に接続されている回路部である。
【0037】
このハイパスフィルタ回路部110の動作原理について説明する。
このハイパスフィルタ回路部110の動作の説明にはLCフィルタの解析に用いられている影像パラメータ法による解析を用いる。
この影像パラメータ法による解析に帰着するため、以下の変換を行う。
一般に、対称2端子対回路は、偶モード励振したときのインピーダンスを偶モードインピーダンスZeven、奇モード励振したときのインピーダンスを奇モードインピーダンスZoddとすると、図2(a)に示すような、対称格子型回路に変形できる。
【0038】
ここで、偶モード励振は、2端子対回路の両端に大きさと位相が同じ電圧を印加することである。
また、奇モード励振は、2端子対回路の両端に大きさが同じで位相が反転した電圧を印加することである。
また、偶モードインピーダンスZevenは、偶モード励振したときのインピーダンスである。つまり、偶モードインピーダンスZevenは、偶モード励振における電圧と流入する電流の比である。
また、奇モードインピーダンスZoddは、奇モード励振したときのインピーダンスでる。つまり、奇モードインピーダンスZoddは、奇モード励振における電圧と流入する電流の比である。
偶モードインピーダンスZevenの値及び奇モードインピーダンスZoddの値は、回路シミュレータなどにより容易に計算することができる。
【0039】
対称格子型回路は、図2(b)に示すようなT型回路に容易に変形することができる。
この変換されたT型回路について、影像インピーダンスをZ0、伝播定数をCとすると次式が成り立つ。
【0040】
(数1)
Z0=(Zodd×Zeven)0.5 ・・・(1)
tanh(C/2)=(Zodd/Zeven)0.5 ・・・(2)
【0041】
影像パラメータ法の理論によれば、伝播定数Cが虚数のときに通過域となるので、上記した式より、偶モードインピーダンスZevenと奇モードインピーダンスZoddとが異符号のときに通過域となっているといえる。
また、影像パラメータ法の理論によれば、伝播定数Cが実数のときに減衰域となるので、偶モードインピーダンスZevenと奇モードインピーダンスZoddとが同符号のときに減衰域となっているといえる。
【0042】
偶モードインピーダンスZeven及び奇モードインピーダンスZoddの符号を調べるには、インピーダンスのリアクタンス部の符号を調べればよい。
【0043】
図3は、T型回路に変換されたハイパスフィルタ回路部110の偶モードインピーダンスZevenと奇数モードインピーダンスZoddのリアクタンス特性の一例を示したリアクタンス特性図である。
図3では、横軸が周波数となっており、縦軸がリアクタンスとなっている。
【0044】
ハイパスフィルタ回路部110は、図3に示すリアクタンス特性から209MHz近傍の周波数帯に減衰域を確認することができる。
【0045】
ここで、近傍の周波数帯は、所定の周波数を中心に2MHzの周波数帯とする。
例えば、209MHz近傍の周波数帯は、207MHz〜211MHzの周波数帯とする。
【0046】
図4は、ハイパスフィルタ回路部110の通過特性の一例を示す通過特性図である。
また、図4は、横軸が周波数となっており、縦軸が挿入損失量となっている。
【0047】
ハイパスフィルタ回路部110は、図4に示すように、209MHz近傍の周波数帯に減衰域を確認することができる。
また、ハイパスフィルタ回路部110は、図4に示すように、減衰域より高い周波数側の通過域での挿入損失量が約2dBとなっている。
また、ハイパスフィルタ回路部110は、図4に示すように、減衰域より高い周波数側に着目すると、急峻な減衰特性を備えている。
【0048】
つまり、ハイパスフィルタ回路部110は、急峻な減衰特性を備え、従来のトランスバーサル型弾性表面波フィルタと比較して通過域での挿入損失量が小さい通過特性を備えているというハイパスフィルタの機能を備えている。
【0049】
ローパスフィルタ回路部120は、図1に示すように、第一の弾性表面波共振子121と第二の弾性表面波共振子122と第一のローパス用インダクタ素子124と第三の弾性表面波共振子123と第二のローパス用インダクタ素子125とから構成されている。
【0050】
第一の弾性表面波共振子121は、図1に示すように、一端がハイパスフィルタ回路部110の他端に接続されている。つまり、第一の弾性表面波共振子121は、一端が前記ハイパス用弾性表面波共振子111の他端に接続されている。
また、第一の弾性表面波共振子121は、図1に示すように、他端が信号出力端子OTに接続されている。
【0051】
第二の弾性表面波共振子122は、図1に示すように、一端が前記第一の弾性表面波共振子の一端に接続され他端が接地されている。
【0052】
第一のローパス用インダクタ素子124は、前記第二の弾性表面波共振子に並列に接続されている。第一のローパス用インダクタ素子124は、例えば、図1に示すように、一端が第二の弾性表面波共振子122に接続され、他端が接地されている。
【0053】
第三の弾性表面波共振子123は、図1に示すように、一端が前記第一の弾性表面波共振子121の他端に接続され他端が接地されている。
【0054】
第二のローパス用インダクタ素子125は、前記第三の弾性表面波共振子123に並列に接続されている。第二のローパス用インダクタ素子125は、例えば、図1に示すように、一端が第三の弾性表面波共振子123に接続され、他端が接地されている。
【0055】
つまり、ローパスフィルタ回路部120は、第一の弾性表面波共振子121の一端に第一のローパス用インダクタ素子124が並列に接続された第二の弾性表面波共振子122の一端に接続され、第一の弾性表面波共振子121の他端に第二のローパス用インダクタ素子125が並列に接続された第三の弾性表面波共振子123の一端に接続され、第二の弾性表面波共振子122の他端及び第三の弾性表面波共振子123の他端が接地されている回路部となっている。
【0056】
このローパスフィルタ回路部120の動作原理について説明する。
ローパスフィルタ回路部120は、ハイパスフィルタ回路部110の解析と同様に、影像パラメータ法を用いて解析する。
【0057】
図5は、T型回路に変換されたローパスフィルタ回路部120の偶モードインピーダンスZevenと奇数モードインピーダンスZoddのリアクタンス特性の一例を示したリアクタンス特性図である。
図5では、横軸が周波数となっており、縦軸がリアクタンスとなっている。
【0058】
ローパスフィルタ回路部120は、図5に示すリアクタンス特性から216MHz近傍の周波数帯に減衰域を確認することができる。
【0059】
図6は、ローパスフィルタ回路部120の通過特性の一例を示す通過特性図である。
また、図6は、横軸が周波数となっており、縦軸が挿入損失量となっている。
【0060】
ローパスフィルタ回路部120は、図6に示すように、216MHz近傍の周波数帯に減衰域を確認することができる。
また、ローパスフィルタ回路部120は、図6に示すように、減衰域より低い周波数側の通過域での挿入損失量が約2dBとなっている。
また、ローパスフィルタ回路部120は、図6に示すように、減衰域より低い周波数側に着目すると、急峻な減衰特性を備えている。
【0061】
つまり、ローパスフィルタ回路部120は、急峻な減衰特性を備え、従来のトランスバーサル型弾性表面波フィルタと比較して通過域での挿入損失量が小さい通過特性を備えているというローパスフィルタの機能を備えている。
【0062】
前述したように、本発明の第一の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置100は、ハイパスフィルタ回路部110とローパスフィルタ回路部120とを備えている。
この本発明の第一の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置100の通過特性の一例を図7に示す。
図7は、横軸が周波数となっており、縦軸が挿入損失量となっている。
【0063】
本発明の第一の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置100の通過特性は、図7に示すように、減衰域が209MHz近傍の周波数帯及び216MHz近傍の周波数帯に確認することができる。
また、本発明の第一の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置100の通過特性は、図7に示すように、この減衰域に挟まれた通過域の中心周波数が約213MHzとなっている。
また、本発明の第一の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置100の通過特性は、図7に示すように、2つの減衰域に挟まれた通過域が約9MHzの周波数帯となっている。
また、本発明の第一の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置100の通過特性は、図7に示すように、この減衰域に挟まれた通過域の挿入損失量が約2dBとなっている。
また、本発明の第一の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置100の通過特性は、図7に示すように、2つの減衰域に挟まれた通過域の両端部の周波数帯に着目すると、急峻な減衰特性を備えている。
【0064】
つまり、本発明の第一の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置100は、図7に示すように、ハイパスフィルタの機能とローパスフィルタの機能とのそれぞれのフィルタの機能を備えているといえる。
【0065】
このような本発明の第一の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置100は、ハイパス用弾性表面波共振子111とこのハイパス用弾性表面波共振子111に並列に接続されている第一のハイパス用インダクタ素子112とでハイパスフィルタ回路部112が構成されている。
このようなハイパスフィルタ回路部110は、急峻な減衰特性を備え、従来のトランスバーサル型弾性表面波フィルタと比較して通過域での挿入損失量が小さいというハイパスフィルタの機能を備えている。
【0066】
また、このような本発明の第一の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置100は、一端が前記ハイパス弾性表面波共振子111の他端に接続され他端が信号出力端子OTに接続されている第一の弾性表面波共振子121と、一端が前記第一の弾性表面波共振子121の一端に接続され他端が接地されている第二の弾性表面波共振子122と、前記第二の弾性表面波共振子122に並列に接続されている第一のローパス用インダクタ素子124と、一端が前記第一の弾性表面波共振子121の他端に接続され他端が接地されている第三の弾性表面波共振子123と、前記第三の弾性表面波共振子123に並列に接続されている第二のローパス用インダクタ素子125とからローパスフィルタ回路部120が構成されている。
このようなローパスフィルタ回路部120は、急峻な減衰特性を備え、従来のトランスバーサル型弾性表面波フィルタ装置と比較して通過域での挿入損失量が小さいというローパスフィルタの機能を備えている。
【0067】
また、このような本発明の第一の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置100は、ハイパスフィルタ回路部110とローパスフィルタ回路部120とが接続されているので、上述したハイパスフィルタの機能と上述したローパスフィルタの機能とを備えることができる。
【0068】
従って、このよう本発明の第一の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置100は、低い周波数側に急峻な減衰域を有したハイパスフィルタの機能を備えたハイパスフィルタ回路部110と高い周波数側に急峻な減衰域を有したローパスフィルタの機能を備えたローパスフィルタ回路部120とが組み合わさっていることにより、通過域の両端部に急峻な減衰特性を有することができる。
また、このような本発明の第一の実施形態に係るバンドパスフィルタ100は、ハイパスフィルタ回路部110とローパスフィルタ回路部120とのそれぞれのフィルタの周波数を調整することにより、通過域の周波数帯を調整することができ、従来の縦結合多重モード弾性表面波フィルタ装置と比較して通過域の周波数帯を広くすることができる。
また、このような本発明の第一の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置100は、通過域での挿入損失量が少ないというハイパスフィルタの機能を備えたハイパスフィルタ回路部110と通過域での挿入損失量が少ないというローパスフィルタの機能を備えたローパスフィルタ回路部120とを備えているので、従来のトランスバーサル型弾性表面波フィルタ装置と比較して通過域での挿入損失量を小さくすることができる。
【0069】
(第二の実施形態)
本発明の第二の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置200について説明する。
本発明の第二の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置200は、図8に示すように、第一の弾性表面波共振子221がローパスフィルタ回路部220を構成しつつハイパスフィルタ回路部210を構成している点で第一の実施形態異なる。つまり、本発明の第二の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置200は、図8に示すように、ローパスフィルタ回路部220中にハイパスフィルタ回路部210が設けられている点で第一の実施形態と異なる。
【0070】
本発明の第二の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置200は、図8に示すように、ハイパスフィルタ回路部210とローパスフィルタ回路部220とを備えている。
【0071】
ローパスフィルタ回路部220は、第一の弾性表面波共振子221と第二の弾性表面波共振子222と第三の弾性表面波共振子223と第一のローパス用インダクタ素子224と第二のローパス用インダクタ素子225とで構成されている。
【0072】
第一の弾性表面波共振子221は、一端が信号入力端子ITと第二の弾性表面波共振子223の一端と後述するハイパス用インダクタ素子212の一端と接続されている。また、第一の弾性表面波共振子221は、他端が信号出力端子OTと第三の弾性表面波共振子223の一端と後述するハイパス用インダクタ素子212の他端とに接続されている。
【0073】
つまり、ローパスフィルタ回路部220は、第一の弾性表面波共振子221の一端に第一のローパス用インダクタ素子224が並列に接続されている第二の弾性表面波共振子222の一端が接続され、第一の弾性表面波共振子221の他端に第二のローパス用インダクタ素子225が並列に接続されている第三の弾性表面波共振子223の一端が接続され、第二の弾性表面波共振子222の他端と第三の弾性表面波共振子223の他端とが接地されている回路部となっている。
【0074】
また、ローパスフィルタ回路部220は、第一の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置100に用いられているローパスフィルタ回路部120と同じ回路構成となっていることから、第一の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置100に用いられるローパスフィルタ回路部120と同様の通過特性を備えているといえる。
【0075】
ハイパスフィルタ回路部210は、図8に示すように、第二のハイパス用インダクタ素子212がローパスフィルタ回路部220の第一の弾性表面波共振子221に並列に接続されている回路部となっている。
【0076】
第二のハイパス用インダクタ素子112は、第一の弾性表面波共振子221に並列に接続されている。
【0077】
また、ハイパスフィルタ回路部210は、第一の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置100に用いられているハイパスフィルタ回路部110と同じ回路構成となっていることから、第一の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置100に用いられるハイパスフィルタ回路部110と同様の通過特性を備えているといえる。
【0078】
つまり、本発明の第二の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置200は、ハイパスフィルタの機能を備えたハイパスフィルタ回路部210とローパスフィルタの機能を備えたローパスフィルタ回路部220とを備えている。
この本発明の第二の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置200の通過特性の一例を図9に示す。
図9は、横軸が周波数となっており、縦軸が挿入損失量となっている。
【0079】
本発明の第二の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置200の通過特性は、図9に示すように、減衰域が209MHz近傍の周波数帯及び216MHz近傍の周波数帯に確認することができる。
また、本発明の第二の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置200の通過特性は、図9に示すように、この減衰域に挟まれた通過域の中心周波数が約213MHzとなっている。
また、本発明の第二の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置200の通過特性は、図9に示すように、2つの減衰域に挟まれた通過域が約9MHzの周波数帯となっている。
また、本発明の第二の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置200の通過特性は、図9に示すように、この減衰域に挟まれた通過域の挿入損失量が約2dBとなっている。
また、本発明の第二の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置200の通過特性は、図9に示すように、2つの減衰域に挟まれた通過域の両端部の周波数帯に着目すると、急峻な減衰特性を備えている。
【0080】
つまり、本発明の第二の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置100は、図9に示すように、ハイパスフィルタの機能とローパスフィルタの機能とのそれぞれのフィルタの機能を備えているといえる。
【0081】
このような本発明の第二の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置200は、第一の実施形態で用いられるハイパスフィルタ回路部110と同じ回路構成のハイパスフィルタ回路部210と第一の実施形態で用いられるローパスフィルタ回路部120と同じ回路構成のローパスフィルタ回路部220とを備えているので、第一の実施形態と同様の効果を奏する。
【0082】
また、このような本発明の第二の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置200は、第二の弾性表面波共振子221がハイパスフィルタ回路部210とローパスフィルタ回路部220とに用いられている。また、このような本発明の第二の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置200は、その通過特性が本発明の第一の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置100の通過特性とほぼ同じとなっている。
従って、本発明の第二の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置200は、本発明の第一の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置100より小型化することできる。
【0083】
(第三の実施形態)
本発明の第三の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置について説明する。
本発明の第三の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置は、ラダー型フィルタ回路部が接続されている点で第一の実施形態と異なる。
【0084】
本発明の第三の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置は、例えば、本発明の第一の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置100の信号入力端子IT及び信号出力端子OTにラダー型フィルタ回路部330が接続されている回路構成となっている。
つまり、本発明の第三の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置は、例えば、ラダー型回路部330が2つ設けられている。
【0085】
2つのラダー型フィルタ回路部330は、例えば、図10に示すように、3つのラダー型弾性表面波共振子331,332,333とから構成されている。
【0086】
ラダー型フィルタ回路部330は、図10に示すように、ラダー型弾性表面波共振子331と、一端がラダー型弾性表面波共振子331の一端に接続され他端がグラウンドに接続されているラダー型弾性表面波共振子332と、一端がラダー型弾性表面波共振子331の他端に接続され他端がグラウンドに接続されているラダー型弾性表面波共振子333と、から構成されている。
【0087】
ラダー型フィルタ回路部330の通過特性の一例を図11に示す。
図11は、横軸が周波数となっており、縦軸が挿入損失量となっている。
【0088】
ラダー型フィルタ回路部330の通過特性は、図11に示すように、約208MHz近傍の周波数帯と約219MHz近傍の周波数帯とに減衰域を確認することができる。
また、ラダー型フィルタ回路部330の通過特性は、図11に示すように、この減衰域に挟まれた通過域の中心周波数が約215MHzとなっている。
また、ラダー型フィルタ回路部330の通過特性は、図11に示すように、2つの減衰域に挟まれた通過域が約7MHzの周波数帯となっている。
また、ラダー型フィルタ回路部330の通過特性は、図11に示すように、この減衰域に挟まれた通過域の挿入損失量が約1dBとなっている。
また、ラダー型フィルタ回路部330の通過特性は、図11に示すように、2つの減衰域に挟まれた通過域の両端部の周波数帯に着目すると、急峻な減衰特性を備えている。
また、ラダー型フィルタ回路部330の通過特性は、図11に示すように、所定の通過域に隣接する周波数帯の挿入損失量、つまり、減衰量が一番少ない周波数帯であっても、約5dBとなっている。また、ラダー型フィルタ回路部330の通過特性は、図11に示すように、約198MHz〜約208MHz周波数帯と約219MHz〜約229MHz周波数帯とで挿入損失量が5dBより大きくなっている。
【0089】
つまり、ラダー型フィルタ回路部330は、急峻な減衰特性を備え、通過域の挿入損失量が1dBとなっており通過域に隣接している周波数帯が10MHzとなっている通過特性を備えている。
【0090】
前述したように、本発明の第三の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置は、例えば、本発明の第一の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置100にラダー型フィルタ部330が接続されている。
このような本発明の第三の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置の通過特性の一例を図12に示す。
図12は、横軸が周波数となっており、縦軸が挿入損失量となっている。
【0091】
本発明の第三の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置は、図12に示すように、約210MHz近傍の周波数帯と約218MHz近傍の周波数帯とに減衰域を確認することができる。
また、本発明の第三の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置の通過特性は、図12に示すように、この減衰域に挟まれた通過域の中心周波数が約213MHzとなっている。
また、本発明の第三の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置の通過特性は、図12に示すように、2つの減衰域に挟まれた通過域が約7MHzの周波数帯となっている。
また、本発明の第三の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置の通過特性は、図2に示すように、この減衰域に挟まれた通過域の挿入損失量が約3dBとなっている。
また、本発明の第三の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置の通過特性は、図12に示すように、2つの減衰域に挟まれた通過域の両端部の周波数帯に着目すると、急峻な減衰特性を備えている。
また、本発明の第三の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置の通過特性は、図12に示すように、所定の通過域に隣接する周波数帯の挿入損失量、つまり、減衰量が一番少ない周波数帯であっても、約15dBとなっている。
また、本発明の第三の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置の通過特性は、図12に示すように、所定の通過域に隣接する周波数帯の挿入損失量、つまり、減衰量が所定の通過域の挿入損失量と比較して約5倍の大きさとなっている。
【0092】
このような本発明の第三の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置は、本発明の第一の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置を含んでいることから、第一の実施形態と同様の効果を奏する。
【0093】
また、このような本発明の第三の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置は、ラダー型フィルタ回路部330が接続されているので、ラダー型フィルタ回路部330の特性を備えることができる。
このため、このような本発明の第三の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置は、所定の通過域に隣接している周波数帯、つまり、減衰域を広くすることができる。
従って、このような本発明の第三の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置は、所定の通過域を含まない所定の他の通過域で用いられているシステムの信号を通過させず、所定の通過域で用いられている信号のみを通過させることができる。
【0094】
なお、ラダー型フィルタ回路部330が2つ接続されている場合について説明しているが、例えば、ラダー型フィルタ回路部330を一つだけ接続しても同様の効果を奏することができる。
【0095】
なお、ラダー型フィルタ回路部330が本発明の第一の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置100に接続されている場合について説明しているが、本発明の第二の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置200に接続させても、同様の効果を奏することができる。
【0096】
(第四の実施形態)
第四の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置について説明する。
第四の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置は、ラダー型フィルタ回路部330の変わりに縦結合多重モード型フィルタ回路部440が接続されている点で第三の実施形態と異なる。
【0097】
本発明の第四の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置は、例えば、本発明の第一の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置100に縦結合多重モード型フィルタ回路部440が接続されている回路構成となっている。
【0098】
縦結合多重モード型フィルタ回路部440は、縦結合多重モード弾性表面波フィルタ装置と同じ回路構成となっている。
縦結合多重モード型フィルタ回路部440は、圧電基板の上に複数の交差指電極が設けられている。
縦結合多重モード型フィルタ回路部440は、入力用交差指状電極と出力用交差指状電極と2つの反射器用電極とが圧電基板の一方の主面に設けられている。
入力用交差指状電極と出力用交差指状電極は、圧電基板の一方の主面であって、弾性表面波の伝播方向に沿って近接配置されている。
反射器用電極は、圧電基板の一方の主面であって、入力用交差指状電極と出力用交差指状電極との両側に配置されている。つまり、反射器用電極は、入力用交差指状電極と出力用交差指電極とを挟むように圧電基板の一方の主面に配置されている。
【0099】
このような縦結合多重モード型フィルタ回路部440の通過特性の一例を図14に示す。
図14は、横軸が周波数となっており、縦軸が挿入損失量となっている。
【0100】
縦結合多重モード型フィルタ回路部440の通過特性は、図14に示すように、約208MHz近傍の周波数帯と約217MHz近傍の周波数帯とに減衰域を確認することができる。
また、縦結合多重モード型フィルタ回路部440の通過特性は、図14に示すように、この減衰域に挟まれた通過域の中心周波数が約213MHzとなっている。
また、縦結合多重モード型フィルタ回路部440の通過特性は、図14に示すように、2つの減衰域に挟まれた通過域が約6MHzの周波数帯となっている。
また、縦結合多重モード型フィルタ回路部440の通過特性は、図14に示すように、この減衰域に挟まれた通過域の挿入損失量が約1dBとなっている。
また、縦結合多重モード型フィルタ回路部440の通過特性は、図14に示すように、所定の通過域に隣接する周波数帯の挿入損失量、つまり、減衰量が一番少ない周波数帯であっても、約10dBとなっている。
【0101】
このような縦結合多重モード型フィルタ回路部440は、通過域での挿入損失量が約1dBとなっており、通過域を含まない挿入損失量、つまり、減衰量が10dBより大きくなっている。
【0102】
前述したように、本発明の第四の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置は、例えば、本発明の第一の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置100に接続されている。
このような第四の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置の通過特性の一例を図15に示す。
図15は、横軸が周波数となっており、縦軸が挿入損失量となっている。
【0103】
本発明の第四の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置は、図15に示すように、約208MHz近傍の周波数帯と約218MHz近傍の周波数帯とに減衰域を確認することができる。
また、本発明の第四の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置の通過特性は、図14に示すように、この減衰域に挟まれた通過域の中心周波数が約213MHzとなっている。
また、本発明の第四の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置の通過特性は、図14に示すように、2つの減衰域に挟まれた通過域が約7MHzの周波数帯となっている。
また、本発明の第四の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置の通過特性は、図14に示すように、この減衰域に挟まれた通過域の挿入損失量が約2dBとなっている。
また、本発明の第四の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置の通過特性は、図14に示すように、2つの減衰域に挟まれた通過域の両端部の周波数帯に着目すると、急峻な減衰特性を備えている。
また、本発明の第四の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置の通過特性は、図14に示すように、所定の通過域に隣接する周波数帯の挿入損失量、つまり、減衰量が一番少ない周波数帯であっても、約10dBとなっている。
また、本発明の第四の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置の通過特性は、図14に示すように、所定の通過域に隣接する周波数帯の挿入損失量、つまり、減衰量が所定の通過域の挿入損失量と比較して約5倍の大きさとなっている。
【0104】
このような本発明の第四の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置は、本発明の第一の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置を含んでいることから、第一の実施形態と同様の効果を奏する。
【0105】
また、このような本発明の第四の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置は、縦結合多重モードフィルタ回路部440が接続されているので、縦結合多重モードフィルタ回路部440の特性を備えることができる。
このため、このようなバンドパスフィルタ装置は、所定の通過域に隣接している周波数帯、つまり、減衰域を広くすることができる。
また、このような本発明の第四の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置は、所定の通過域を含まない周波数帯の挿入損失量を従来のバンドパスフィルタ装置と比較して大きくすることができる。言い換えると、このような本発明の第四の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置は、従来のバンドフィルタ装置と比較して、減衰量を従来のバンドパスフィルタ装置と比較して大きくすることができる。
従って、このような本発明の第四の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置は、所定の通過域を含まない所定の他の通過域で用いられているシステムの信号を通過させず、所定の通過域で用いられている信号のみを通過させることができる。
【0106】
なお、第四の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置が第一の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置100に多重モード型フィルタ回路部440が接続された場合について説明したが、第二の実施形態に係るバンドパスフィルタ装置200に多重モード型フィルタ回路部440を接続しても、同様の効果を奏することができる。
【0107】
なお、多重モード型フィルタ回路部440が2つ接続されている場合について説明しているが、例えば、多重モード型フィルタ回路部440を一つだけ接続しても同様の効果を奏することができる。
【0108】
なお、多重モード型フィルタ回路部440とラダー型フィルタ回路部330を接続してもよい。
【符号の説明】
【0109】
100,200 バンドパスフィルタ装置
110,210 ハイパスフィルタ回路部
120,220 ローパスフィルタ回路部
330 ラダー型フィルタ回路部
440 縦結合多重モード型フィルタ回路部
111 ハイパス用弾性表面波共振子
112,212 ハイパス用インダクタ素子
121,221 第一の弾性表面波共振子
122,123,222,223 ローパス用弾性表面波共振子
124,125,224,225 ローパス用インダクタ素子
331,332,333 ラダー型弾性表面波共振子
441,442,443 縦結合多重モード型弾性表面波共振子
IT 信号入力端子
OT 信号出力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が信号入力端子に接続されているハイパス用弾性表面波共振子と、
前記ハイパス用弾性表面波共振子に並列に接続されている第一のハイパス用インダクタ素子と、
からなるハイパスフィルタ回路部と、
一端が前記ハイパス用弾性表面波共振子の他端に接続され他端が信号出力端子に接続されている第一の弾性表面波共振子と、
一端が前記第一の弾性表面波共振子の一端に接続され他端が接地されている第二の弾性表面波共振子と、
前記第二の弾性表面波共振子に並列に接続されている第一のローパス用インダクタ素子と、
一端が前記第一の弾性表面波共振子の他端に接続され他端が接地されている第三の弾性表面波共振子と、
前記第三の弾性表面波共振子に並列に接続されている第二のローパス用インダクタ素子と、
からなるローパスフィルタ回路部と、
を備え、
前記ハイパスフィルタ回路部と前記ローパスフィルタ回路部とが接続されている
ことを特徴とするバンドパスフィルタ装置。
【請求項2】
一端が信号入力端子に接続され他端が信号出力端子に接続されている第一の弾性表面波共振子と、
一端が前記第一の弾性表面波共振子の一端に接続され他端が接地されている第二の弾性表面波共振子と、
前記第二の弾性表面波共振子に並列に接続されている第一のローパス用インダクタ素子と、
一端が前記第一の弾性表面波共振子の他端に接続され他端が接地されている第三の弾性表面波共振子と、
前記第三の弾性表面波共振子に並列に接続されている第二のローパス用インダクタ素子と、
からなるローパスフィルタ回路部と、
前記第一の弾性表面波共振子と、
前記第一の弾性表面波共振子に並列に接続されている第二のハイパス用インダクタ素子と、
からなるハイパスフィルタ回路部と、
を備えていることを特徴とするバンドパスフィルタ装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載されているバンドパスフィルタ装置にラダー型フィルタ回路部が接続されていることを特徴とするバンドパスフィルタ装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載されているバンドパスフィルタ装置に縦結合多重モード型フィルタ回路部が接続されていることを特徴とするバンドパスフィルタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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