説明

バンプ形成方法、この方法によりバンプが形成された基板、およびバンプ形成装置。

【課題】高さの高いバンプを低コストで製造可能なバンプ形成方法及び装置を提供する。
【解決手段】電気回路が形成された基板Wに回路接続用のバンプを形成するバンプ形成装置BSは、基板Wを保持する基板保持装置1と、ノズル30に供給された銅微粒子Gをノズル内部のガス気流に分散させて流下させ、下端の噴射口35から気体とともに噴射する噴射装置3とを備える。そして、基板保持装置1に保持された基板Wに、噴射口35から銅微粒子Gを気体とともに噴射して衝突固着させ、常温かつ常圧下で、基板Wの表面に銅バンプを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気回路が形成された基板に回路接続用のバンプを形成するバンプ形成方法、この方法によりバンプが形成された基板、およびバンプ形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気回路が形成された基板の代表例として、ICやトランジスタ等の部品が実装されるプリント配線基板がある。プリント配線基板には、当該基板に形成された電気回路と、この基板に実装される部品や外部引き出し用のリード線とを電気接続するため、パッドとも称される回路接続用のバンプ(Bump:突起)が形成されている。また、多層配線基板においては、複数の配線層の層間接続のため、バイア(Via)とも称されるバンプが基板内部に形成されている。
【0003】
従来では、このようなバンプを形成する手法として、例えば、基板に形成された銅箔パターン上にハンダをメッキするメッキ法や、スクリーン印刷したレジストパターンの開口部にハンダペーストを刷り込み、リフロー工程で加熱溶融させるハンダペースト刷り込み法などが用いられている。(例えば特許文献1,2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−284786号公報
【特許文献1】特開2004−14565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、メッキにより形成されるバンプの高さはせいぜい数十μm程度であり、これよりも高いバンプを形成することが難しい。このため、例えばパワートランジスタやトランス等のような電流容量が大きい部品を実装するパッドや、このような電流容量が大きい回路と外部引き出し用のリード線とを接続するパッド、電流容量が大きい回路を層間接続するバイアなどのように、導体抵抗が低く100μm程度の高さを要求されるバンプを含む基板は、一工程のメッキ法で形成することが困難であるという課題があった。
【0006】
一方、ハンダペースト刷り込み法は、スクリーン印刷されたレジストパターンの開口部にハンダペーストを埋め込み、これをリフローにより溶融固着させるため、比較的高さのあるバンプを形成することができる。しかしながら、この方法は工程が複雑で基板の製造に時間およびコストがかかり、また基板の回路パターンを変更するたびにレジストパターン等を製作しなおさなければならないという課題があった。
【0007】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、導体抵抗が低く高さの高いバンプを低い生産コストで製造可能なバンプ形成方法、バンプ形成装置などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的達成のため、第1の本発明は、電気回路が形成された基板に回路接続用のバンプを形成するバンプ形成方法である。このバンプ形成方法は、金属微粒子を気体の噴流に乗せてノズルから噴射し基板に衝突させて固着させ、常温かつ常圧下で基板にバンプを形成するように構成される。
【0009】
第2の本発明は、バンプが形成された基板であり、請求項1〜3のいずれかに記載のバンプ形成方法によりバンプが形成されることにより構成される。
【0010】
第3の本発明は、電気回路が形成された基板に回路接続用のバンプを形成するバンプ形成装置である。このバンプ形成装置は、電気回路が形成された基板を保持する基板保持装置と、ノズルに供給された金属微粒子をノズルの内部に設けられた流路を流れる気体に分散させて流下させ、流路の下流端部に設けられた噴射口から気体とともに噴射する噴射装置とを備え、基板保持装置に保持された基板に、噴射口から金属微粒子を気体の噴流に乗せて噴射して衝突固着させ、常温かつ常圧下で前記基板にバンプを形成するように構成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、金属微粒子を気体の噴流に乗せて基板に噴射して衝突固着させ、常温かつ常圧下でバンプが形成される。このため、導体抵抗が低く高さの高いバンプを低い生産コストで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】バンプ形成装置の概要構成図である。
【図2】図1におけるII−II矢視の平面図である。
【図3】噴射口近傍における金属微粒子の流れ、およびバンプの形成を説明するための模式図である。
【図4】バンプ形成条件−1により基板Wに形成された銅バンプの拡大写真である。
【図5】銅微粒子の噴射時間と基板に形成された銅バンプのバンプ高さとの関係を示すグラフである。
【図6】バンプ形成条件−2により形成した銅バンプに銅のリード線をレーザ溶接により接続した接続部の拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。まず、本発明に係るバンプ形成方法を実施するためのバンプ形成装置BSについて、その概要構成を略示する図1を参照しながら説明する。
【0014】
バンプ形成装置は、大別的には、電気回路が形成された基板Wを保持する基板保持装置1、基板保持装置1に保持された基板Wとノズル30とを相対移動させる移動機構2、ノズル30内部に金属微粒子を気体とともに流下させる流路を有し流路の下流端部に開口する噴射口35から気体の噴流に乗せて噴射する噴射装置3、噴射装置3による金属微粒子の噴射を制御する噴射制御部81および、移動機構2による基板Wとノズル30との相対移動を制御する移動制御部82を備えた制御装置8などから構成される。
【0015】
基板保持装置1は、噴射装置3に対して基板Wを位置決めした状態で固定保持可能に構成される。このような基板保持装置1の構成として、例えば、セラミックポーラスやメタルポーラス等のポーラス部材を利用し、テーブル10の上面に基板Wを吸着して固定保持する構成が例示される。テーブル10は、噴射装置3から噴射される金属微粒子と気体とからなる固気混相流の噴射力に対して十分な剛性を有して構成される。
【0016】
図1におけるII−II矢視の平面図を図2に示すように、本構成形態では、テーブル10に複数の位置決めピン12を出没変位可能に設け、テーブル上に載置した基板Wの側縁を位置決めピン12に付き当てることにより、基板Wがテーブル上の基準位置に位置決めされるようにした構成を示す。基板Wを支持する支持面(テーブル上面)11は、基板Wに対して相対的に高い平面度で平坦に形成されており、真空発生器等によりテーブル内部の排気路が排気されたときに、ポーラス部材の微細な孔部を通して支持面近傍の空気が吸引され、基板Wが支持面11に吸引されて強固に固定保持される。なお、このようなポーラス部材を用いた真空吸着手法ではなく、基板Wの周辺部を複数のクランプによりテーブル10に機械的に固定するように構成してもよい。
【0017】
移動機構2は、基板保持装置1に保持された基板Wとノズル30とを相対移動させる。ここで、基板Wおよびノズル30はいずれを移動させるように構成してもよいが、図示する構成形態では、上下に延びる噴射装置3の噴射軸CLに対し、これと直交する水平面内の二方向にテーブル10を移動させるX−Yステージ20を用いた構成例を示す。X−Yステージ20は、テーブル10をX軸方向に移動させるX軸移動機構21、およびテーブル10をY軸方向に移動させるY軸移動機構22から構成される。なるX−Yステージ形態の移動機構を示す。なお、基板Wとノズル30との上下方向の相対移動については、詳細図示を省略するZ軸駆移動機構により、テーブル10に対してノズル30を上下に移動させる構成になっている。
【0018】
噴射装置3は、ノズル30に供給された金属微粒子を、ノズル30の内部に設けられた流路を流れる気体に分散させて流下させ、下流端部に設けられた噴射口35から気体とともに噴射する。このような噴射装置として、例えば、本出願人に係る特開2000−94332号公報に開示したような噴射装置(単管タイプの噴射装置という)や、本出願人に係る特開2006−224205号公報に開示したような噴射装置(複合管タイプの噴射装置という)がある。本発明は、上記いずれの形態の噴射装置でも適用可能であるが、図1は、噴射装置3として複合管タイプの噴射装置を適用した構成例を示す。なお、噴射方向は水平でもよい。
【0019】
この噴射装置3は、金属微粒子を気体とともに噴射するノズル30と、ノズル30に金属微粒子Gを供給する微粒子供給ユニット40と、ノズル30に噴射用のガスを供給するガス供給ユニット45と、噴射口35から噴射されたが基板Wに固着されなかった金属微粒子を吸引する微粒子回収装置55などを備えて構成される。
【0020】
ノズル30には、基体となるボディ31の内部を上下に延びるパイプ状の供給ノズル32が設けられ、この供給ノズル32の上端部に接続されたガス供給パイプ46を介して、ガス供給ユニット45からガス(供給ガスという)が供給される。供給ノズル32の上下中間部には、金属微粒子が通過可能な孔部33が壁面を貫通して開口形成され、この孔部33の周囲に形成された微粒子供給溝43に微粒子導入路42を通って微粒子タンク41に貯留された金属微粒子Gが供給される。金属微粒子Gは、形成するバンプの特性に応じて適宜な組成のものを使用でき、例えば、平均粒径が10[μm]以下の、銅(Cu)微粒子、有鉛・無鉛(鉛フリー)のハンダ微粒子、銀(Ag)、金(Au)微粒子などが例示される。
【0021】
供給ノズル32の先端側には、供給ノズル32よりも大径の加速ノズル34が下方(噴射方向)に延びて同軸上に設けられ、この加速ノズル34の先端に噴射口35が形成される。供給ノズル32の先端部と加速ノズル34の基端部は一部重なって配設されており、この重複部に、幅が狭い円環状の加速ガス噴流路36が形成される。加速ノズル34の基端部には、加速ガス噴流路36と繋がる加速ガス導入路37が形成され、この加速ガス導入路37に接続された加速ガス供給配管47を介して、ガス供給ユニット45からガス(加速ガスという)が供給される。供給ガスおよび加速ガスは、キャリアガスとして一般的に用いられる窒素(N2)ガス、ヘリウム(He)ガス、乾燥空気(Air)のいずれか、またはこれらが組み合わされて使用され、ガスの種別および各供給圧力が制御装置8の噴射制御部81により制御される。
【0022】
加速ノズル34の先端側には、加速ノズルよりも大径の外筒部材50が上下に延びて同軸上に設けられ、噴射口35の外周側に金属微粒子の噴射領域JAを囲むように配設される。外筒部材50は、加速ノズル34の外周側に不図示のシール部材を介して上下に摺動自在に支持されるとともに、外筒部材50を上下に移動させる外筒移動機構25により加速ノズル34に対して上下に相対移動可能に構成されている。外筒移動機構25による外筒部材50の上下移動は、噴射制御部81により制御される。外筒移動機構25は、例えば、ノズルのボディ31と外筒部材50との間に設けたスプリングと電磁石または直動ソレノイド、ラックとピニオン、リードスクリューなどを利用して構成することができる。なお、外筒部材50の内径は、基板Wに噴射される金属微粒子の噴射領域JAの基板面における外径(噴射径)よりも幾分大きい程度に設定される。
【0023】
外筒部材50の先端部には、弾性材料により形成されたシール部51が設けられている。シール部51は、硬度が基板Wよりも低い高分子材料製の弾性材料により形成されており、外筒部材50が基板Wに押接されたときに柔軟に弾性変形して内外周を隙間なく仕切り、噴射口35から噴射された金属微粒子Gが放射方向に拡散しないように遮断する。シール部51は、例えば、円環状に打ち抜いたゴムスポンジを外筒部材50の先端に接着し、あるいは蛇腹状に成型したゴムブーツを外筒部材50の先端に固定するなどにより外筒部の先端に設けられる。
【0024】
このため、外筒移動機構により加速ノズル34に対して外筒部材50が下動され、外筒部材のシール部51が基板Wに押接されると、外筒部材50の内周側に周囲の空間と遮断された噴射室52が形成される。外筒部材50には壁面を貫通する排気ポート53が形成され、排気チューブ54を介して微粒子回収装置55が接続されている。微粒子回収装置55は、外筒部材内周側の固気混相流体(気体および金属微粒子)を吸引するバキュームブロワ、固気混相粒体から金属微粒子を分離して回収する微粒子回収器などから構成され、噴射口35から噴射室52に噴射されたが基板Wに固着されなかった金属微粒子を吸引して回収する。微粒子回収装置55の作動は制御装置8により制御される。
【0025】
このような構成のバンプ形成装置では、基板Wが吸着保持されたテーブル10をX軸移動機構21およびY軸移動機構22により移動させ、例えば基板Wに形成された銅箔パターンのパッド(電極)Pが噴射装置3の噴射軸CL上に位置するように位置決めする。次いで、Z軸移動機構によりノズル30を下動させ、加速ノズル34下端と基板W表面との距離h、すなわちノズルギャップを所定高さに設定する。また外筒移動機構25により外筒を下動させ、シール部51を基板表面に押接させる。これにより噴射領域JAの周囲が街頭で囲まれ噴射室52が形成される。そして、微粒子回収装置55を起動して噴射室52を排気し、噴射装置3による噴射加工を行う。
【0026】
噴射加工は、ガス供給ユニット45からノズルにガスを供給することにより行われる。ここで、金属微粒子Gの噴射形態には、供給ガスの供給のみによる噴射、加速ガスの供給のみによる噴射、両者を組み合わせた噴射などがあり、制御装置8により制御されるが、ここでは、両者を組み合わせで噴射する場合の作用を説明する。制御装置8は、ガス供給ユニット45からガス供給パイプ46を介して供給ノズル32の基端側に供給ガスを供給させ、ガス供給ユニット45から加速ガス供給配管47および加速ガス導入路37を介して加速ノズル34の基端側に加速ガスを供給させる。
【0027】
供給ノズル32の基端側に供給ガスが供給されると、供給ノズル32内を流れるガス流のエジェクター効果、およびガス供給パイプ46と供給ノズル32との段差部に生じる乱流の効果により、微粒子供給溝43に位置する金属微粒子Gが孔部33を通って供給ノズル32内に吸い出され、ガス流によって分散されながら供給ノズル内を下方に流下する。
【0028】
このとき、加速ガス導入路37に供給された加速ガスが円環状の加速ガス噴流路36を通って加速ノズル内に高速で噴出しており、供給ノズル32の出口領域では、加速ガス噴流路36から噴出する高速のガス流によって大きな負圧が発生し、また両流路とも流路断面積が急拡大するため大きな乱流が発生する。そのため,供給ノズル32を流下してきた金属微粒子が加速ノズル内に吸引されるとともに、乱流に巻き込まれて加速ガス中に分散され、加速ガスの噴流により加速されて下流端の噴射口35から噴射される。
【0029】
この様子を図3に模式的に示すように、噴射された金属微粒子は、基板Wに衝突して銅箔パターンのパッドPに固着し、順次堆積して噴射金属組成のバンプBが形成される。基板Wに固着しなかった金属微粒子は、噴射領域JAを覆う外筒部材50により放射方向への拡散が阻止され、排気ポート53に接続された排気チューブ54を介して微粒子回収装置55に回収される。ここで、外筒部材50は、内径が噴射領域JAの外径よりも幾分大きい程度に設定されている。このため、噴射口35から噴射された金属微粒子が、パッドの形成領域から拡散して周囲の回路パターンに付着し残留するようなことがない。
【0030】
なお、基板Wの表面と噴射口35との間隔(ノズルギャップ)hは、Z軸移動機構によりノズル30を上下移動させて加速ノズル下端の高さ位置を制御することにより設定され、通常では0.5〜2[mm]程度の高さ位置に設定される。また、金属微粒子Gの噴射速度は、ノズル30に供給する供給ガス、加速ガスの種類および圧力を制御することにより設定され、用いるガスの音速未満の速度(例えば、供給ガスおよび加速ガスが空気の場合には300[m/sec]以下の速度)で噴射される。
【0031】
以上のようなバンプ形成装置を製作し、発明者らは、基板Wへのバンプ形成について鋭意研究を進めた結果、加速ノズル34の内径が0.5[mm]以上のノズル30で、平均粒径が10[μm]以下の金属微粒子を用い、高さ100[μm]以上のバンプ形成を実現した。以下、バンプ形成の具体的な実施例について、基板上に銅のバンプ(銅バンプという)を形成した実験データを例示して説明する。
【0032】
本実施例では、加速ノズル34の内径が1[mm]の噴射装置3を用い、ノズルギャップhを1[mm]に設定して、以下のバンプ形成条件−1で銅微粒子を噴射し、基板Wに衝突固着させて銅バンプを形成した。なお、次述するバンプ形成条件−2を含め、基板Wとノズル30とは相対移動させずに固定した状態で銅バンプの形成を行っている。
【0033】
(バンプ形成条件−1)
・基板W :表面に厚さ1〜2[μm]程度の銅の薄膜が形成されたアルミナセラミック(Al23)基板
・金属微粒子G:平均粒径1[μm]の銅微粒子
・使用ガス :ヘリウム(He)
・供給ガス圧力:0[MPa]
・加速ガス圧力:0.2[MPa]
・噴射時間 :1,5,10[sec]
【0034】
上記バンプ形成条件−1により基板Wに形成された銅バンプB1,B2,B3の拡大写真を図4に、銅微粒子の噴射時間と形成された銅バンプB1〜B3のバンプ高さとの関係を図5に示す。バンプ高さ(図5においては最大膜厚と表記)は、上端部に形成されたウィスカー状の突起を除き、基板Wの表面から銅バンプ頂部までの高さを測定した。
【0035】
図4から理解されるように、基板Wに噴射された銅微粒子が順次衝突固着して堆積し、上方に盛り上がるように銅バンプが基板上に直接形成されている。バンプ高さは、噴射時間がわずか1秒の銅バンプB1で300[μm]を超えており、噴射時間が5秒の銅バンプB2では高さが800[μm]近い円錐状のバンプが形成されている。
【0036】
次に、上記実施例と同様にノズル内径が1[mm]の噴射装置3を用い、ノズルギャップを1[mm]に設定して、下記バンプ形成条件−2により銅バンプを形成した。
【0037】
(バンプ形成条件−2)
・基板W :表面に厚さ1〜2[μm]程度の銅薄膜により回路パターンが形成されたアルミナセラミックの回路基板における直径φ1[mm]のパッド部
・金属微粒子G:平均粒径2.5[μm]の銅微粒子
・使用ガス :ヘリウム(He)
・供給ガス圧力:0[MPa]
・加速ガス圧力:0.5[MPa]
・噴射時間 :3[sec]
【0038】
このとき、直径φ1[mm]のパッド部には、図4における銅バンプB1と同様に、上方に盛り上がる皿状ないし椀状の銅バンプが形成され、測定されたバンプ高さは160[μm]であった。
【0039】
このように、噴射装置3により銅微粒子を基板Wに噴射して衝突固着させるバンプ形成方法によって、常温、常圧下において、わずか一工程かつ極めて短時間の銅微粒子噴射により、バンプ高さが100[μm]を超える中実の銅バンプを高能率で形成することが実証された。
【0040】
以上では、加速ノズル34の内径が噴射口35においてφ1[mm]のものを用いた場合の実施例について説明したが、加速ノズル34の内径は0.5〜2[mm]程度の範囲で適宜なものを用いることができる。例えば、基板Wに形成されたパッドの直径に合わせてノズル内径が0.8[mm]のものや1.5[mm]のものを用い、あるいは、適宜な内径の加速ノズルを用いたうえで、移動機構2によりノズルに対して基板Wを水平面内で円形に移動させて所望の直径の銅バンプを形成することができる。
【0041】
また、金属微粒子の例として銅微粒子を例示したが、形成するバンプの仕様に応じて、金、銀などの微粒子、亜鉛を含まない鉛フリーハンダの微粒子など、他の組成の金属微粒子を使用してバンプを形成することもできる。鉛フリーハンダの微粒子を噴射して銅箔パッド上にハンダバンプを形成する手法によれば、バンプ高さが100[μm]以上の基板を簡明な工程で生産したのち、従来用いられているリフローハンダの生産設備を利用して部品実装することができる。
【0042】
次に、図6は、バンプ形成条件−2により銅箔パッド上に形成した銅バンプB5に、幅×厚さが0.6×0.2[mm]の銅のリード線Lを載置し、上方から赤外波長のレーザ光を集光照射してレーザ溶接により接続した接続部の拡大写真である。
【0043】
この拡大写真から、リード線Lおよび銅バンプが一体的に溶け込み、電気的・機械的に強固に接続されていることが確認される。このため、本手法により形成した銅バンプにリード線やパワートランジスタ等の部品をレーザ溶接して実装する基板製造方法によれば、リフローハンダによる基板製造方法のように複雑かつ多段の工程を必要としない極めて簡明な製造工程で、電気部品を実装した回路基板を生産することができる。また、ハンダを用いずに回路基板を製造できるため、ハンダに起因する鉛やハロゲンの問題を生じることがなく、環境保護に貢献することができる。
【符号の説明】
【0044】
BS バンプ形成装置
1 基板保持装置
2 移動機構
3 噴射装置
8 制御装置
30 ノズル(32 供給ノズル、34 加速ノズル)
35 噴射口
40 微粒子供給ユニット(吸引装置)
45 ガス供給ユニット
50 外筒部材
51 シール部
55 微粒子回収装置
G 金属微粒子
P パッド
B、B1,B2,B3、B5 バンプ
L リード線(部品)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気回路が形成された基板に回路接続用のバンプを形成するバンプ形成方法であって、
金属微粒子を気体の噴流に乗せてノズルから噴射し前記基板に衝突させて固着させ、常温かつ常圧下で前記基板にバンプを形成することを特徴とするバンプ形成方法。
【請求項2】
前記バンプが、前記電気回路に部品を電気接続するパッドであることを特徴とする請求項1に記載のバンプ形成方法。
【請求項3】
前記金属微粒子は、平均粒径が10μm以下の銅の微粒子であることを特徴とする請求項1または2に記載のバンプ形成方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のバンプ形成方法によりバンプが形成された基板。
【請求項5】
電気回路が形成された基板に回路接続用のバンプを形成するバンプ形成装置であって、
電気回路が形成された基板を保持する基板保持装置と、
ノズルに供給された金属微粒子を前記ノズルの内部に設けられた流路を流れる気体に分散させて流下させ、前記流路の下流端部に設けられた噴射口から気体とともに噴射する噴射装置とを備え、
前記基板保持装置に保持された前記基板に、前記噴射口から前記金属微粒子を前記気体の噴流に乗せて噴射して衝突固着させ、常温かつ常圧下で前記基板にバンプを形成するように構成したことを特徴とするバンプ形成装置。
【請求項6】
前記噴射口の外周側に金属微粒子の噴射領域を囲んで配設された外筒部材と、
前記噴射口の外周と前記外筒部材の内周との間に形成される間隙部を排気し、前記噴射口から噴射されたが前記基板に固着されなかった金属微粒子を吸引する吸引装置とを備え、
前記外筒部材には、前記噴射口を囲む先端部に弾性材料により形成されたシール部を有して前記噴射口に対して前記金属微粒子の噴射軸方向に移動可能に配設され、
前記シール部が前記基板の表面に接して前記噴射口が前記外筒部材により覆われ、前記外筒部材の内周側が前記吸引装置により排気された状態で、前記噴射口から前記金属微粒子が噴射されるように構成したことを特徴とする請求項5に記載のバンプ形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−212353(P2010−212353A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55128(P2009−55128)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】