説明

バーコードリーダ

【課題】 バーコードの読み取りの解像度を確保しながらもコストを極力抑制できるバーコードリーダを提供することである。
【解決手段】 フォトトランジスタ11は、バーコードリーダ1の長手方向に発光ダイオード13と重なるように、かつ、発光ダイオード13が光を発光する側に配置される。この場合、発光ダイオード13とフォトトランジスタ11とは、同じ光軸上に配置される。このため、発光ダイオード13の位置を物点としたときの像点を含む焦点深度と、フォトトランジスタ11の位置を像点としたときの物点を含む被写界深度と、が光軸方向に重なり、バーコードの読み取りの解像度を光軸方向の広い範囲で確保できることが推測できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーコードを読み取るためのバーコードリーダ及びその関連技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の従来技術の欄には、ペン型バーコードリーダ(以下、「ペン」と呼ぶ。)が開示されている。ここで紹介されているペンは、受光素子、絞り穴、微小球体、及び複数個の発光素子を備えている。
【0003】
【特許文献1】特開平7−192076号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記ペンは、複数個の発光素子を搭載して、バーコードに照射する光量を大きくしている。このため、発光素子を物点としたときの像点の位置を考慮した厳密な光学系の設計が不要である。しかし、複数個の発光素子を搭載するので、その分コストが高くなる。
【0005】
また、上記ペンでは、絞り穴(つまり、ピンホール)を受光素子の近傍に設けて、バーコードの読み取りの解像度を確保している。しかし、絞り穴を設けているので、これを光軸に合わせるために、光学系において高い寸法精度が要求され、構造部品が高額になるばかりでなく、組立調整にも多くの時間を要することになる。また、受光素子の近傍に絞り穴を設け、光を絞っているため、受光感度が弱くなり、受光素子の出力信号の増幅率を大きくする必要がある。そうすると、ノイズも大きくなるので、シールドを設けなければならず、これもまたコストを高くする要因となる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、バーコードの読み取りの解像度を確保しながらも、コストを極力抑制できるバーコードリーダ及びその関連技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点によれば、バーコードリーダは、発光素子と、受光素子と、を備え、前記受光素子は、前記バーコードリーダの長手方向に前記発光素子と重なるように、かつ、前記発光素子が光を発光する側に配置される。
【0008】
本発明の第2の観点によれば、バーコードリーダは、発光素子と、受光素子と、を備え、前記受光素子は、前記発光素子が発光した光の外部への出射口と前記発光素子との間に配置される。
【0009】
本発明の第1及び第2の観点によるバーコードリーダによれば、受光素子と発光素子とを同一軸上に配置できるので、発光素子の位置を物点としたときの像点を含む焦点深度と、受光素子の位置を像点としたときの物点を含む被写界深度と、を上記軸方向に重ねることができ、バーコードの読み取りの解像度を上記軸方向の広い範囲で確保できることが推測できる。また、従来技術のように、解像度を確保するための絞り穴(ピンホール)を設ける必要は必ずしもない。以上の結果、バーコードの読み取りの解像度を確保しながらも、コストを極力抑制できる。
【0010】
もちろん、本発明は、解像度を確保するための絞り穴を設けることを排除するものではない。
【0011】
本発明の第2の観点によるバーコードリーダは、前記出射口に設けられる第1レンズをさらに備え、前記第1レンズは、球状レンズである。また、前記出射口と前記受光素子との間に配置される第2レンズをさらに備えてもよく、前記第2レンズは、凸レンズである。さらに、前記第1レンズに近接して配置され、前記発光素子が発光した光の前記第1レンズへの入射光及び前記第1レンズから入射して前記受光素子へ向かう出射光を絞るための開口絞りを有する絞り部材を備えることができる。
【0012】
本発明の第1及び第2の観点によるバーコードリーダにおいて、前記受光素子と前記発光素子とは直線状に配置される。この場合、前記受光素子と前記発光素子とは、実質的に同一の軸上に配置される。さらに、前記受光素子と前記発光素子とは、所定距離だけ離れて配置される。
【0013】
また、前記発光素子が発光し、バーコードに照射され、前記バーコードが反射し、前記受光素子が受光し、電気信号に変換された光に基づいて、前記バーコードを解読する情報処理手段をさらに備えることができ、前記情報処理手段は、前記バーコードの解読結果をキーボードデータの形式に変換し、キーボードデータとしての前記解読結果と、その解読結果を用いて所定のコンピュータに所定の処理を実行させるためのキーボードデータの形式の所定コマンドと、を出力する。
【0014】
この構成によれば、コマンドが入力されたコンピュータは、そのコマンドに応答して所定の処理を実行する。従って、バーコードの解読結果を用いた所定の処理をコンピュータに実行させる場合に、専用のソフトウェアをインストールすることが不要となり、ユーザの利便性を向上できる。
【0015】
さらに、前記情報処理手段は、キーボードデータの形式の所定のサーバのアドレス情報を前記所定のコンピュータに出力し、前記所定のコマンドは、前記所定のコンピュータに対して、前記バーコードの前記解読結果を、前記アドレス情報が示す前記所定のサーバに送信させるためのコマンドである。
【0016】
この構成によれば、ユーザは、バーコードの読み取り処理を行うだけで、バーコードを所定のサーバに送信でき、そのサーバから所定のサービスの提供を容易に受けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一または相当部分については同一の参照符号を付してその説明を援用する。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態によるバーコードリーダ1の構造図である。図1を参照して、バーコードリーダ1は、円筒形のハウジング3を有する。そして、ハウジング3に、MCU(Micro Controller Unit)17及び増幅器19を実装した基板15、発光ダイオード13、フォトトランジスタ11、凸レンズ9、絞り部材7、及び球状レンズ5が内蔵される。
【0019】
基板15は、バーコードリーダ1の基端部に配置される。この基板15には、MCU17にその一方端が接続されるUSBケーブル21から、電源電圧Vcc及び接地電圧GNDが供給され、これらが、MCU17、増幅器19、フォトトランジスタ11、及び発光ダイオード13に与えられる。
【0020】
フォトトランジスタ11は、入力された光を電気信号に変換し、増幅器19に与える。増幅器19は、フォトトランジスタ11が出力した電気信号を増幅して、MCU17に与える。MCU17は、この電気信号を解読して、バーコード情報を取得する。また、MCU17は、USBコントローラの機能を有し、USBケーブル21の他方端と接続されるUSBコントローラ(図示せず)との間で通信を行い、取得したバーコード情報を送信する。
【0021】
フォトトランジスタ11は、バーコードリーダ1の長手方向に発光ダイオード13と重なるように、かつ、発光ダイオード13が光を発光する側に配置される。発光ダイオード13が発光した光の外部への出射口には、レンズ5が配置される。そして、レンズ5に近接して、円筒状の絞り部材7が配置される。この絞り部材7は、発光ダイオード13が発光した光のレンズ5への入射光及びレンズ5から入射してフォトトランジスタ11へ向かう出射光を絞るための開口絞り8を有する。ちなみに、この絞り部材7は、バーコードの読み取りの解像度を確保するための穴、いわゆるピンホールではない。また、フォトトランジスタ11と絞り部材7との間には、レンズ9が配置される。
【0022】
詳細に述べると、フォトトランジスタ11と発光ダイオード13とは、実質的に同一の軸上に配置され、つまり、レンズ9の光軸上に配置されている。また、フォトトランジスタ11と発光ダイオード13とは、レンズ9の光軸に沿って所定距離dだけ離れて配置される。この所定距離dの設定方法は、後述する。さらに、発光ダイオード13の光はレンズ5まで届かなければならないので、フォトトランジスタ11のサイズは、発光ダイオード13からの光を遮断しないように選択される。例えば、レンズ9の光軸方向から見たときに、フォトトランジスタ11(そのプラスチックモールド)が発光ダイオード13(そのプラスチックモールド)より小さくなるように、これらのサイズが選択される。
【0023】
レンズ5は相対的に固定されている。従って、レンズ9及び発光ダイオード13の位置(光軸上の)を調整することにより、発光ダイオード13の位置を物点としたときの像点の位置を調整できる。また、レンズ9及びフォトトランジスタ11の位置(光軸上の)を調整することにより、フォトトランジスタ11の位置を像点としたときの物点の位置を調整できる。
【0024】
フォトトランジスタ11と発光ダイオード13とをレンズ9の光軸上に配置し、所定距離dを適切に設定することで、発光ダイオード13の位置を物点としたときの像点を含む焦点深度と、フォトトランジスタ11の位置を像点としたときの物点を含む被写界深度と、を光軸方向に重ねること(「ダブルフォーカス」と呼ぶ。)ができて、バーコードの読み取りの解像度を光軸方向の広い範囲で確保できることが推測できる。この場合、発光ダイオード13、フォトトランジスタ11、レンズ9、及びレンズ5の位置関係を、実験及び試行錯誤等により適切に設定することで、バーコードリーダ1の外部であって、レンズ5の近傍に、ダブルフォーカスの位置を設定することができる。
【0025】
所定距離dの設定方法を詳細に説明する。所定距離dが短すぎると、フォトトランジスタ11が、発光ダイオード13からの光を直接拾ってしまい、バーコードからの反射光を判別できなくなる。つまり、この場合、フォトトランジスタ11が、発光ダイオード13からの直接光で完全にオンしてしまったり、それに近い状態になってしまう。一方、フォトトランジスタ11の応答速度を速くするためには、フォトトランジスタ11を弱くオンした状態にしておくことが好ましい。さらに、所定距離dが長すぎると、上記した焦点深度と被写界深度とが重ならず分離してしまい、ダブルフォーカスを実現できず、バーコードを精度良く認識できない範囲(光軸上の)が発生する。従って、所定距離dは、フォトトランジスタ11が完全にオンしない弱くオンする状態で、かつ、ダブルフォーカスを実現できるように、実験や試行錯誤等により決定する。
【0026】
図2(a)は、図1のバーコードリーダ1の電気的構成を示す図、図2(b)は、図2(a)のMCU17に内蔵されたROM51に格納されるプログラム及びデータの図解図である。図2(a)を参照して、バーコードリーダ1は、スキャナ33及びMCU17を含む。スキャナ33は、図1の光学系(増幅器19、発光ダイオード13、フォトトランジスタ11、レンズ9、絞り部材7、及びレンズ5)を含む。
【0027】
スキャナ33の発光ダイオード13が発光した光は、レンズ9、絞り部材7、及びレンズ5を介して、バーコード31に照射される。そして、バーコード31に照射された光は、レンズ5、絞り部材7、及びレンズ9を介して、フォトトランジスタ11で受光される。フォトトランジスタ11は、受光した光を電気信号に変換する。この電気信号は、増幅器19で増幅され、MCU17に与えられる。このように、MCU17には、バーコード31を構成するバーとスペースに応じた電気信号が与えられる。
【0028】
MCU17は、CPU(図示せず)、RAM(図示せず)、A/Dコンバータ(図示せず)、USBコントローラ(図示せず)、及び図2(b)に示すROM51等を内蔵している。ROM51には、デコードプログラム53、キーボードエミュレーションプログラム55、出力制御プログラム57、キーボードデータで表されたサーバ(図示せず)のURL(Uniform Resource Locator)59、キーボードデータで表された端末35へのコマンド61、並びにその他必要なプログラム及びデータが格納される。コマンド61は、端末(コンピュータ)35に対して、ブラウザを起動し、URL59が示すサーバへアクセスすることを指示するコマンドである。
【0029】
MCU17は、デコードプログラム53を実行して、入力されたバーコード31に応じた電気信号を解読して、バーコード情報を取得する。そして、MCU17は、キーボードエミュレーションプログラム55を実行して、バーコード情報をキーボードデータに変換し、RAMに格納する。そして、MCU17は、出力制御プログラム57を実行して、URL59及びコマンド61をROM51から取得すると共に、RAMからバーコード情報を取得し、USBコントローラに、これらキーボードデータを端末35に送信させる。
【0030】
すると、端末35は、受信したコマンド61に応答して、受信したURL59に基づき、受信したバーコード情報をインターネット(図示せず)を介してサーバへ送信する。なお、バーコードリーダ1が端末35に送信するキーボードデータには、当該バーコードリーダ1を特定するための識別データは含まれていない。ただし、もちろん、識別データを含めることも可能である。
【0031】
なお、MCU17の外部に、EEPROMやフラッシュメモリ等を搭載して、URLやプログラム等の変更が可能なようにすることもできる。
【0032】
さて、以上のように、本実施の形態では、フォトトランジスタ11は、バーコードリーダ1の長手方向に発光ダイオード13と重なるように、かつ、発光ダイオード13が光を発光する側に配置される。言い換えると、フォトトランジスタ11は、発光ダイオード13が発光した光の外部への出射口(レンズ5)と発光ダイオード13との間に配置される。この場合、発光ダイオード13とフォトトランジスタ11とは、同じ光軸上に配置される。このため、発光ダイオード13の位置を物点としたときの像点を含む焦点深度と、フォトトランジスタ11の位置を像点としたときの物点を含む被写界深度と、を光軸方向に重ねることができ、バーコード31の読み取りの解像度を光軸方向の広い範囲で確保できることが推測できる。
【0033】
また、従来技術のように、解像度を確保するための絞り穴、つまり、ピンホールを設けていない。従って、フォトトランジスタ11に対する入力として十分な光量を確保できる。このため、ピンホールを設ける場合と比較して、増幅器19の増幅率を小さくできるし、ノイズ抑制のためのシールドを省くこともできる。また、光学系において高い寸法精度が要求されることもない。
【0034】
以上の結果、バーコード31の読み取りの解像度を確保しながらも、コストを極力抑制できる。
【0035】
さらに、本実施の形態では、バーコードリーダ1からコマンド61が入力された端末35は、コマンド61に応答して、バーコードリーダ1から与えられたバーコード情報を、URL59が示すサーバへ送信する。従って、ユーザは、バーコード31の読み取り処理を行うだけで、バーコード情報をサーバに送信でき、そのサーバから所定のサービスの提供を容易に受けることができる。
【0036】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能であり、例えば、以下のような変形も可能である。
【0037】
(1)上記のレンズ5の材質として、例えば、BK7等の光学ガラス、PMMA(ポリメチルメタクリレート)等のプラスチック、又はサファイヤ等を使用でき、その材質は問わない。レンズ5として、サファイヤ等の比較的高屈折率のものを使用すれば、レンズ9は必ずしも必要ない。また、例えば、レンズ9として、BK7等の光学ガラス又はPMMA等のプラスチックを使用できる。
【0038】
(2)上記では、発光ダイオード13からの光の出射口にレンズ5を配置したが、これに代えて、出射口をピンホールとすることもできる。この場合、絞り部材7は不要である。
【0039】
(3)いずれにせよ、発光ダイオード13とフォトトランジスタ11とを上記のような配置にする限り、仕様や目的に合わせて、光学系を任意に構築できる。
【0040】
(4)上記では、USBケーブル21を使用したが、無線により、バーコードリーダ1と端末35とを接続することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施の形態によるバーコードリーダ1の構造図である。
【図2】(a)図1のバーコードリーダ1の電気的構成を示す図である。(b)図2(a)のMCU17に内蔵されたROM51に格納されるプログラム及びデータの図解図である。
【符号の説明】
【0042】
1…バーコードリーダ、3…ハウジング、5…球状レンズ、7…絞り部材、8…開口絞り、9…凸レンズ、11…フォトトランジスタ、13…発光ダイオード、15…基板、17…MCU、19…増幅器、21…USBケーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーコードリーダであって、
発光素子と、
受光素子と、を備え、
前記受光素子は、前記バーコードリーダの長手方向に前記発光素子と重なるように、かつ、前記発光素子が光を発光する側に配置される、バーコードリーダ。
【請求項2】
バーコードリーダであって、
発光素子と、
受光素子と、を備え、
前記受光素子は、前記発光素子が発光した光の外部への出射口と前記発光素子との間に配置される、バーコードリーダ。
【請求項3】
前記出射口に設けられる第1レンズをさらに備え、
前記第1レンズは、球状レンズである、請求項2記載のバーコードリーダ。
【請求項4】
前記出射口と前記受光素子との間に配置される第2レンズをさらに備え、
前記第2レンズは、凸レンズである、請求項2又は3記載のバーコードリーダ。
【請求項5】
前記第1レンズに近接して配置され、前記発光素子が発光した光の前記第1レンズへの入射光及び前記第1レンズから入射して前記受光素子へ向かう出射光を絞るための開口絞りを有する絞り部材をさらに備える、請求項3記載のバーコードリーダ。
【請求項6】
前記受光素子と前記発光素子とは直線状に配置される、請求項1から5記載のバーコードリーダ。
【請求項7】
前記受光素子と前記発光素子とは、実質的に同一の軸上に配置される、請求項6記載のバーコードリーダ。
【請求項8】
前記受光素子と前記発光素子とは、所定距離だけ離れて配置される、請求項1から7記載のバーコードリーダ。
【請求項9】
前記発光素子が発光し、バーコードに照射され、前記バーコードが反射し、前記受光素子が受光し、電気信号に変換された光に基づいて、前記バーコードを解読する情報処理手段をさらに備え、
前記情報処理手段は、前記バーコードの解読結果をキーボードデータの形式に変換し、キーボードデータとしての前記解読結果と、その解読結果を用いて所定のコンピュータに所定の処理を実行させるためのキーボードデータの形式の所定コマンドと、を出力する、請求項1から8記載のバーコードリーダ。
【請求項10】
前記情報処理手段は、キーボードデータの形式の所定のサーバのアドレス情報を前記所定のコンピュータに出力し、
前記所定のコマンドは、前記所定のコンピュータに対して、前記バーコードの前記解読結果を、前記アドレス情報が示す前記所定のサーバに送信させるためのコマンドである、請求項9記載のバーコードリーダ。

【図1】
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【図2】
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