説明

バーンイン装置

【課題】 動作することによって発熱する複数の被試験体の温度のばらつきを抑制することによって試験条件を揃え、バーンイン試験およびエージング試験の信頼性を向上させることができるバーンイン装置を提供する。
【解決手段】 保持手段4に保持される各半導体レーザ素子2の放熱部58は、ヒートシンク5に接触するので、各半導体レーザ素子2が動作することによって発生する熱は、ヒートシンク5に伝達される。ヒートパイプ6は、保持手段4によって保持される各半導体レーザ素子2の配列方向に沿ってヒートシンク5に設けられ、ヒートシンク5に熱を伝達し、かつヒートシンク5から熱が伝達されるので、各半導体レーザ素子2の配列方向に沿ってヒートシンク5の温度のばらつきを抑制することができ、これによって各半導体レーザ素子2の温度のばらつきを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置などの被試験体のバーンイン試験工程およびエージング試験工程などに用いられるバーンイン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術では、1つの恒温槽の収容空間に複数の半導体レーザを高密度に収容して、収容空間を予め定める温度に保持し、半導体レーザ素子を駆動して、動作不良となる半導体レーザ素子を検出している(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】実開平7−2933号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、収容空間に収容される複数の半導体レーザ素子の温度が均一化されないので、各半導体レーザ素子の試験条件がそれぞれ異なってしまうという問題がある。このため実用的には、複数の半導体レーザ素子の温度を均一化するために、複数の半導体レーザ素子に接触するように金属製のヒートシンクが設けられる。しかしながらヒートシンクを設けても、各半導体レーザ素子の熱の伝達が不十分であるため、複数の半導体レーザ素子の温度にばらつきが生じてしまうという問題がある。特に、動作不良の半導体レーザ素子の温度は、正常に動作する半導体レーザ素子の温度よりも低くなるので、このような動作不良の半導体レーザ素子がある場合、同じヒートシンクに接触する半導体レーザ素子における温度のばらつきが大きくなってしまうという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、動作することによって発熱する複数の被試験体の温度のばらつきを抑制することによって試験条件を揃え、バーンイン試験およびエージング試験の信頼性を向上させることができるバーンイン装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、発熱部を有し、動作することによって発熱部が発熱する複数の被試験体を、収容可能な収容空間を有する恒温槽と、
収容空間に設けられ、複数の被試験体を保持可能な保持手段と、
保持手段に保持される各被試験体に、各被試験体を動作させるための動作信号を与え、動作信号が与えられた各試験体の出力を検出して、検出した結果を動作状態として出力する動作状態検出手段と、
収容空間に設けられ、保持手段に保持される各被試験体の発熱部に接触するヒートシンクと、
保持手段によって保持される各被試験体の配列方向に沿ってヒートシンクに設けられ、ヒートシンクの熱を伝達するヒートパイプとを含むことを特徴とするバーンイン装置である。
【0007】
また本発明は、前記保持手段は、互いに離反して複数設けられ、
前記ヒートシンクは、各保持手段に対応して複数設けられ、各ヒートシンクは、ヒートパイプを介して相互に接続されることを特徴とする。
【0008】
また本発明は、前記ヒートパイプは、金属粉末を含む液体を介してヒートシンクに接続されることを特徴とする。
【0009】
また本発明は、前記保持手段は、被試験体の放熱部をヒートシンク上で弾発的に押圧する押圧部を有することを特徴とする。
【0010】
また本発明は、ヒートパイプの温度を検出する温度検出手段と、
温度検出手段の検出結果に基づいて、保持手段に保持される複数の被試験体の温度が、予め定める温度範囲内の温度となるように収容空間における雰囲気の温度を保持する温度保持手段とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、恒温槽の収容空間に収容される複数の被試験体に、動作状態出力手段によって動作信号を与えると、被試験体のうち正常なものが動作する。動作状態出力手段は、動作信号が与えられた各被試験体の出力を検出して、検出した結果、すなわち正常に動作しているのか、あるいは動作不良となっているのかを表す動作状態を出力するので、この出力を取得することによって、初期不良となる被試験体および長期にわたって使用することによって動作不良となるおそれのある被試験体などを判別する、いわゆるバーンイン試験およびエージング試験などを実施することができる。
【0012】
保持手段に保持される各被試験体の発熱部は、ヒートシンクに接触するので、各被試験体が動作することによって発生する熱は、ヒートシンクに伝達される。ヒートパイプは、保持手段によって保持される各被試験体の配列方向に沿ってヒートシンクに設けられ、ヒートシンクに熱を伝達し、かつヒートシンクから熱が伝達されるので、各被試験体の配列方向に沿ってヒートシンクの温度のばらつきを抑制することができ、これによって各被試験体の温度のばらつきを抑制することができる。
【0013】
特に、複数の被試験体のうち、動作不良となる被試験体がある場合、この被試験体の温度は、正常に動作する被試験体の温度よりも低くなり、動作不良となる被試験体が接触するヒートシンクの温度が、正常に動作する被試験体が当接するヒートシンクの温度よりも低くなる。これによって動作不良となる被試験体の周りの被試験体の温度が低下してしまうが、ヒートシンクに比べて熱伝達率の高いヒートパイプによって、ヒートシンクの熱が移動することによって、各被試験体の温度のばらつきを可及的に抑制して、各被試験体の温度を可及的に均一化することができる。
【0014】
このように、各被試験体の温度を均一化することによって、各被試験体の試験条件を均一化することができ、バーンイン試験およびエージング試験の信頼性を向上させることができる。
【0015】
また本発明によれば、保持手段は、複数設けられる。各保持手段は、互いに離反し、たとえば空気を介在させて、相互に熱が伝わりにくい状態にして、設けられる。ヒートシンクは、各保持手段に対応して、複数設けられる。このためヒートシンクは、相互に離反している。
【0016】
各ヒートシンクは、ヒートパイプを介して相互に接続されるので、各ヒートシンクの熱は、ヒートパイプを介して他のヒートシンクに伝達される。これによって、各保持手段において、動作する被試験体の数が異なる場合であっても、動作する被試験体の多い保持手段におけるヒートシンクと、動作する被試験体の少ない保持手段におけるヒートシンクとの温度のばらつきを抑制することができ、各保持手段に保持される被試験体の温度のばらつきを可及的抑制することができる。
【0017】
また本発明によれば、前記ヒートパイプは、ヒートシンクに金属粉末を含む液体を介して接続される。ヒートパイプとヒートシンクとの間に気体が介在されると、熱抵抗となってしまいヒートパイプとヒートシンクとにおける熱の移動を妨げてしまうが、ヒートパイプとヒートシンクとの間に金属粉末を含む液体を介在させることによって、ヒートシンクとヒートパイプとの間における熱の伝達が円滑に行われる。各被試験体の温度のばらつきをさらに抑制することができる。金属粉末は、たとえば銅から成る。
【0018】
また本発明によれば、押圧部によって前記被試験体の放熱部をヒートシンク上で弾発的に押圧するので、被試験体に与える負荷が大きくなり過ぎることを防止しつつ、放熱部をヒートシンクに確実に接触させることができる。
【0019】
また本発明によれば、温度検出手段によってヒートパイプの温度を検出し、温度保持手段は、この検出結果に基づいて、保持手段に保持される複数の被試験体の温度が、予め定める温度範囲内の温度となるように収容空間における雰囲気の温度を調整する。ヒートパイプの温度は、被試験体の温度の変化に対して敏感に反応して変化し、ヒートパイプの温度は、複数の被試験体の温度を表す基準となる。各試験体の熱は、ヒートシンクを介してヒートパイプに伝達されるので、各被試験体の温度を直接測定しなくても、ヒートパイプの温度を測定することによって、被試験体の温度を測定することができる。ヒートパイプの温度を検出した検出結果に基づいて、温度保持手段が、収容空間における雰囲気の温度を調整することによって、簡単な構成で、保持手段に保持される複数の被試験体の温度が、予め定める温度範囲内の温度に保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、本発明の実施の一形態のバーンイン装置1の構成を模式的に示す正面図である。図1では、収容空間13を恒温槽3の外部の空間に開放した状態を示す。図2は、図1の切断面線II−IIから見たバーンイン装置1の構成を模式的に示す断面図である。図3は、図2において収容空間13を外部の空間から閉鎖し試験状態としたバーンイン装置1の構成を模式的に示す断面図である。図4は、バーンイン装置1の電気的構成を示す機能ブロック図である。
【0021】
バーンイン装置1は、被試験体のバーンイン試験およびエージング試験に用いられる。バーンイン試験では、バーンイン装置1によって、被試験体を、その使用前に一定の期間動作させ、初期不良となるおそれのあるものを検出する。またエージング試験では、バーンイン装置1によって、常温よりも高い温度である予め定める温度環境下において、被試験体を動作させ、ストレスを与えたときの被試験体の状態を検出することによって、被試験体を長期にわたって使用する場合における信頼性を検出する。本実施の形態において被試験体は、半導体レーザ素子2である。半導体レーザ素子2は、発熱する発熱部を含む。図1〜図3では、半導体レーザ素子2も実線で示している。
【0022】
バーンイン装置1は、恒温槽3と、第1および第2保持手段4a,4bと、第1および第2ヒートシンク5a,5bと、ヒートパイプ6と、入力手段7と、動作状態検出手段8と、温度調整手段9とを含む。
【0023】
恒温槽3は、収容容器であって、恒温槽本体11と、恒温槽蓋体12とを含み、複数の半導体レーザ素子2を収容可能な予め定める収容空間13を有する。以後、予め定める収容空間13を単に収容空間13と記載する。恒温槽本体11は、略有底筒形状の内周面を有する。恒温槽本体11の開口部14は、略矩形状に形成される。恒温槽蓋体12は、収容空間13を恒温槽3の外部の空間に開放可能、かつ収容空間13を恒温槽3の外部の空間から閉鎖可能に、恒温槽本体11に設けられる。図2に示すように、収容空間13が恒温槽3の外部の空間に開放された状態を開放状態とし、図3に示すように、収容空間13が恒温槽3の外部空間から閉鎖された状態を閉鎖状態とする。恒温槽3は、ステンレスおよび鉄などの金属材料によって形成される。
【0024】
恒温槽蓋体12は、矩形板形状を有し、閉鎖状態で収容空間13に臨む面は、平面に形成される。恒温槽蓋体12は、その一端部15が第1ヒンジ部16によって恒温槽本体11の開口部14の一端部17に連結される。恒温槽蓋体12は、第1ヒンジ部16の軸線L1まわりに角変位可能であり、前記閉鎖状態では、開口部14に当接して恒温槽本体11の開口を塞ぐ。閉鎖状態から軸線L1まわりに図2に示す矢符F1向きに恒温槽蓋体12を角変位させると、恒温槽本体11の内周面が露出する。恒温槽3の収容空間13は、恒温槽3の内周面によって囲まれた領域であり、前記閉鎖状態で、略直方体形状である。
【0025】
閉鎖状態において、収容空間13に臨み、前記軸線L1の延びる方向に平行な第1方向A1(図1の左右方向)における恒温槽3の内周面間の寸法をW1とし、第1方向A1に垂直であり、閉鎖状態における恒温槽蓋体12の収容空間13に臨む面に平行な第2方向A2(図1の上下方向)に沿う恒温槽12の内周面間の寸法をW2とし、第1方向A1および第2方向A2に垂直な第3方向A3(図1の紙面に垂直な方向)に沿う方向の恒温槽12の内周面間の寸法W3とすると、前記W1は、たとえば200mm〜500mmに選ばれ、W2は、たとえば100mm〜300mmに選ばれ、W3は、たとえば25mm〜80mmに選ばれる。本実施の形態では、たとえばW1=350mm、W2=170mmおよびW3=50mmに選ばれる。
【0026】
第1および第2保持手段4a,4bは、恒温槽3によって形成される前記収容空間13に収容される。第1および第2保持手段4a,4bは、複数の半導体レーザ素子2を着脱自在に保持することができる。第1および第2ヒートシンク5a,5bは、収容空間に設けられ、第1ヒートシンク5aは、第1保持手段4aに保持される各半導体レーザ素子2の放熱部に接触し、第2ヒートシンク5bは、第2保持手段4bに保持される各半導体レーザ素子2の放熱部に接触する。ヒートパイプ6は、第1および第2保持手段4a,4bによって保持される各半導体レーザ素子2の配列方向に沿って第1および第2ヒートシンク5a,5bに設けられ、第1および第2ヒートシンク5a,5bの熱を伝達する。保持手段4、第1および第2ヒートシンク5a,5bおよびヒートパイプ6の詳細な説明については、後述する。
【0027】
入力手段7は、バーンイン装置1に与える動作指令を表す指令情報を入力するインタフェースである。入力した指令情報は、動作状態検出手段8および後述する温度保持手段22に与えられる。これによってバーンイン装置1が動作して、試験を行うことができる。入力手段7には、たとえばコンピュータによって実現される情報処理装置が着脱自在に接続され、この情報処理装置から指令情報が与えられる。指令情報には、バーンイン装置1による試験を開始するための開始指令を表す開始情報、バーンイン装置1による試験を終了するための終了指令を表す終了情報および半導体レーザ素子2を駆動する条件を表す駆動条件情報を含む。
【0028】
温度調整手段9は、温度検出手段21および温度保持手段22を含む。温度検出手段21は、熱電対を含んで実現され、後述するヒートパイプ6の温度を検出する。温度保持手段22は、温度検出手段21の検出結果に基づいて、恒温槽3の収容空間13の雰囲気の温度を調整して、保持手段4によって保持される半導体レーザ素子2の温度を予め定める温度範囲内の温度に保持する。温度保持手段22は、入力手段7から開始情報が与えられると、動作し、また入力手段7から終了指令が与えられると、動作を停止する。
【0029】
動作状態検出手段8は、入力手段7から与えられる駆動条件情報に基づいて、保持手段4に保持される各半導体レーザ素子2を動作させるための動作信号を与え、動作信号が与えられた各半導体レーザ素子2の出力を検出して、検出した結果を動作状態として出力する。動作状態検出手段8は、半導体レーザ素子2に駆動信号を与える駆動部23と、半導体レーザ素子2から発せられる光を受けることによって半導体レーザ素子の出力を検出する受光部24と、半導体レーザ素子2の動作状態を表す所定の信号を出力する出力部25とを含む。
【0030】
本実施の形態において、半導体レーザ素子2のエージング試験は、予め定める温度環境下において、光量が一定となるように半導体レーザ素子2を駆動したときの、半導体レーザ素子2の駆動電流の変化を評価することによって行なわれる。このような試験を、APC(Automatic Power Control)試験とよぶ。前記予め定める温度は、常温である恒温槽3の周囲の気温よりも高く、たとえば50℃以上80℃未満に選ばれる。このような常温よりも高い温度にすることによって、半導体レーザ素子2の劣化を早めることができ、長期にわたって半導体レーザ素子2を使用したときの、経年変化の特性を推定することができる。
【0031】
受光部24は、保持手段4保持される各半導体レーザ素子2にそれぞれ対応して設けられ、駆動される各半導体レーザ素子2が出力する光量を受光し、光量に応じた電気信号を出力する複数の受光素子26を含む。受光素子26は、たとえばインジウムガリウム砒素(InGaAs)フォトダイオードなどのフォトダイオードによって実現される。前記InGaAsフォトダイオードは、配置される雰囲気の温度が変化しても暗電流の変化が小さいので、半導体レーザ素子2と同じ恒温槽3に収容しても、半導体レーザ素子2の光量を正確に検出することができる。装着部27には、受光部コネクタ29が設けられる。各受光素子26は、受光部コネクタ29と装着部27に設けられる配線を介して接続される。受光部コネクタ29には、ハーネスが着脱可能に接続され、各受光素子26は、受光部コネクタ29およびハーネスを介して駆動部23および出力部25に接続される。
【0032】
駆動部23は、保持手段4に保持される各半導体レーザ素子2に駆動電流を与える。具体的には駆動部23は、各受光素子26によって検出した各半導体レーザ素子2の光量に基づいて、この光量が一定となるように各半導体レーザ素子2に与える駆動電流を調整して、各半導体レーザ素子2に駆動電流を与える。また駆動部23は、前記半導体レーザ素子2の駆動電流を表す信号を、出力部25に与える。本実施の形態において、半導体レーザ素子2の動作状態を表す情報とは、前記APC試験における半導体レーザ素子2の駆動電流を表す信号である。
【0033】
出力部25は、コネクタを含んで実現される。出力部25は、各半導体レーザ素子2の駆動電流を表す信号を出力する駆動電流出力端子を含む。動作不良である半導体レーザ素子2においては、駆動電流が予め定めるしきい値よりも大きくなる。これによって、半導体レーザ素子2が動作不良であるか否かを判定することができる。
【0034】
恒温槽蓋体12は、受光部24の複数の受光素子26を着脱自在に装着する装着部27を有する。受光部24の複数の受光素子26は、装着部27によって恒温槽蓋体12に着脱自在に装着される。装着部27は、恒温槽蓋体12からわずかに離間した状態で、ねじ部材28によって恒温槽蓋体12に着脱自在に固定される。受光部24の各受光素子26は、閉鎖状態で、前記保持手段4に保持される各半導体レーザ素子2に対向する。
【0035】
恒温槽蓋体12の遊端部31には、係合部32が形成され、恒温槽本体11には閉鎖状態で、前記係合部32に係合して、恒温槽蓋体12を係止する係止部33が設けられ、閉鎖状態において、係止部33によって前記係合部32を係合して係止することによって、恒温槽本体11と恒温槽蓋体12とを密着させて、収容空間13の気密性を向上させることができ、また半導体レーザ素子2の試験中に収容空間13が恒温槽3の外部の空間に開放されることが防止される。収容空間13には、予め定める気体が存在する。本実施の形態において、予め定める気体は、空気である。
【0036】
第1および第2保持手段4a,4bは、複数の半導体レーザ素子2を恒温槽本体11の第1方向A1の一端部3a寄りの領域から他端部3b寄りの領域にわたって並べて保持する。第1および第2保持手段4a,4bは、第2方向A2に予め定める距離T2離間して2つ設けられる。前記予め定める距離T2は、空気を介在させて、第1および第2保持手段4a,4bの熱が相互に伝わりにくい状態となるように選ばれ、たとえば5cm〜20cmに選ばれる。以後、第1および第2保持手段4a,4bを総称する場合には、単に保持手段4と記載する場合がある。第1および第2保持手段4a,4bは、同じ構成である。
【0037】
各保持手段4は、複数の導体体レーザ素子2を、第1方向A1に沿って1列に並べて保持する。各保持手段4は、それぞれ20個の半導体レーザ素子2を保持可能である。保持手段4は、半導体レーザ素子2を、その出射端面が恒温槽蓋体12に設けられる受光部24の受光素子26に臨むように保持する。各保持手段4は、並列に設けられる。閉鎖状態では、各受光素子26の受光部24と、この受光部24に対応する半導体レーザ素子2とがわずかな間隙T1をあけて、それぞれ対向する。前記間隙T1は、たとえば0.2mm〜3.0mmに選ばれる。
【0038】
本発明の他の実施の形態において、保持手段4が保持する半導体レーザ素子2の数は20個に限らず、保持手段4は、たとえば10個〜100個程度の半導体レーザ素子2を保持可能であってもよい。
【0039】
図5は、保持手段4、ヒートシンク5およびヒートパイプを拡大して示す平面図であり、図6は、図3の領域VIを拡大して示す断面図であり、図7は、図2の領域VIIを拡大して示す断面図である。図8は、複数の半導体レーザ素子2をフレーム34に接続された状態で示す平面図である。図9は、フレーム34に接続される複数の半導体レーザ素子2のうち1つの半導体レーザ素子2を拡大して示す図である。図5〜図7では、半導体レーザ素子2も実線で示している。
【0040】
保持手段4は、恒温槽本体11に固定されるベース部41と、ベース部41に、角変位可能に設けられる可動部42とを有する。可動部42は、ベース部41に第2ヒンジ部43を介して連結される。可動部42は、ベース部41の基端部44寄りで、ベース部41に連結される。第2ヒンジ部43は、第1連結片45と、第2連結片46と、第1連結片45および第2連結片46が角変位可能に連結される軸部47とを含む。軸部47の軸線L2まわりに、第1連結片45および第2連結片46を相対的に角変位させることができる。第1連結片45は、可動部42に接続され、第2連結片46は、ベース部41に固定される。これによって、可動部42は、前記軸線L2まわりに角変位することができる。前記軸線L2は、第1方向A1に平行に延びる。
【0041】
保持手段4は、ベース部41と可動部42との間で、複数の半導体レーザ素子2を挟持することによって、複数の半導体レーザ素子2を保持する。可動部42には、可動部42とベース部41との間で、複数の半導体レーザ素子2を挟持させたときに、可動部42とベース部との相対的な変位を防止する変位阻止部48が設けられる。変位阻止部48は、可動部42の長手方向、すなわち第1方向A1の両端部48にそれぞれ設けられる。変位阻止部48は、雄ねじが形成される雄ねじ形成部51と、雄ねじ形成部51を、この雄ねじ形成部51の軸線まわりに回転するための、つまみ部52とを含む。つまみ部52は、雄ねじ形成部51の軸線まわりに回転可能に可動部42に支持される。可動部42には、前記雄ねじ形成部51が羅合する雌ねじ部53が形成される。可動部42とベース部41との間で、複数の半導体レーザ素子2を挟持させ、つまみ部52を操作して、雄ねじ形成部51を雌ねじ部54に羅着することによって、可動部42とベース部との相対的な変位が防止される。
【0042】
可動部42とベース部41とを相対的に角変位させて、可動部42とベース部41との間に、半導体レーザ素子2を保持可能な状態を保持状態とし、可動部42とベース部41との間に保持される半導体レーザ素子2を離脱可能な状態を展開状態とする。ベース部41は、保持状態において可動部42に対向する第1保持面54を有する。可動部42は、保持状態においてベース部41に対向する第2保持面55を有する。保持状態で、半導体レーザ素子2は、第1および第2保持面54,55の間で保持される。第1および第2保持面54,55は、平面である。第1保持面54は、第2方向A2に垂直である。
【0043】
複数の半導体レーザ素子2は、フレーム34に接続された状態で、保持手段4に保持される。フレーム34は、アルミニウムなどの導電性材料によって形成される。複数の半導体レーザ素子2をフレーム34に接続された状態で、保持手段4に保持させることによって、半導体レーザ素子2を1つ1つ保持手段4に保持させる場合と比較して、容易に複数の半導体レーザ素子2を保持手段4に保持させ、また保持手段4から離脱させることができ、試験される半導体レーザ素子2の交換の時間を短くして、試験効率を向上させることができる。
【0044】
フレーム34は、複数の半導体レーザ素子2の出射端面が、同じ方向に臨むように、複数の半導体レーザ素子2に連結される。フレーム34は、半導体レーザ素子2の阻止端子部57の遊端部に接続され、半導体レーザ素子2の配列方向に沿って延びるフレーム基部35と、フレーム基部35から半導体レーザ素子2が接続される側に突出して、半導体レーザ素子2の素子本体56の側方まで延びるフレーム突部36とを有する。フレーム突部36は、半導体レーザ素子2の放熱部58と相互に接続される。
【0045】
半導体レーザ素子2は、素子本体56と、素子端子部57とを有する。素子本体56は、半導体レーザチップ、および放熱部58を含む。放熱部58は、発熱部である。放熱部58は、半導体レーザチップにおいて発生する熱を放射する機能を有する。素子端子部57は、素子本体56から突出し、半導体レーザ素子2を駆動する電流を供給するためのプラス(+)端子57aと、グランド端子57bとを有する。半導体レーザ素子2は、たとえばCD(Compact Disk)用またはDVD(Digital Versatile Disk)用の半導体レーザチップを含む。前記半導体レーザチップは、単波長または2つの波長の光を出力する構成であってもよい。
【0046】
グランド端子57bは、放熱部58およびフレーム34と連結される。フレーム34には、位置決め孔59が形成され、この位置決め孔59を、後述する保持手段4の突部119に嵌合させることによって、保持手段4における半導体レーザ素子2の位置決めを行うことができる。前記放熱部58は、放熱面61を有し、放熱面61は平面に形成される。素子端部57の各端子は、放熱面61よりも素子本体56の中央寄りに退避して形成され、放熱面61と平行に延びる。
【0047】
ベース部41は、合成樹脂などの熱絶縁材料によって形成されるベース部本体62と、保持状態で、半導体レーザ素子2の素子端子部57が接触する接続端子部63と、導電性材料から成る配線が形成されるベース基板63と、コネクタ部66とを含む。接続端子部63は、保持手段4によって保持することができる複数の半導体レーザ素子2のプラス端子57aおよびグランド端子57bに個別に接触する端子片65を有する。各端子片65は、導電性材料によって形成される。各端子片65は、ベース部41の第1保持面54からわずかに突出するように設けられる。各端子片65は、前記ベース基板64に形成される配線を介して、コネクタ部66に接続される。コネクタ部66には、ハーネスが着脱可能に接続される。ハーネスは、駆動部23に接続され、駆動部23から、ハーネス、コネクタ部66、基板に形成される配線および端子片65を介して、半導体レーザ素子2に駆動電流が与えられる。
【0048】
第1ヒートシンク5aは、第1保持手段4に設けられ、第2ヒートシンク5bは、第1保持手段4に設けられる。第1および第2ヒートシンク5a,5bは、同様の構成である。第1および第2ヒートシンク5a,5bを総称する場合、単にヒートシンク5と記載する場合がある。
【0049】
ヒートシンク5は、ベース部41の遊端部、すなわち第3方向A3の他端部67に設けられる。ヒートシンク5は、ベース部本体62に金属製の第2ねじ部材71によって着脱可能に固定される。ヒートシンク5は、アルミニウムによって形成される。ヒートシンク5は、保持手段4に保持される各半導体レーザ素子2の放熱部58が、保持状態で接触する接触面72を有する。接触面72は、平面であり、第2方向に垂直である。ヒートシンク5は、接触面72が、第1保持面54よりも第2方向一方側にわずかに退避するように設けられる。前記半導体レーザ素子2の素子端子部57は、放熱部58の放熱面61よりも、素子本体56の中央寄りに設けられる。前記ヒートシンク5の接触面72の第1保持面54から第2方向一方への退避量は、接触面72に半導体レーザ素子2の放熱部58が接触した状態で、端子片65が、第1保持面54に接触するように選ばれる。ヒートシンク5は、表面積が可及的大きくなり、かつ熱容量が可及的小さくなるように形成される。
【0050】
ヒートシンク5には、ヒートパイプ6が設けられる。ヒートシンク5は、ヒートパイプ6を保持するヒートパイプ保持部73を有する。ヒートパイプ保持部73は、ヒートパイプ6の直径よりもわずかに大きな内径を有する貫通孔74を有する。貫通孔74は、ヒートシンク5の長手方向に沿って、すなわちヒートパイプ保持部73に保持される半導体レーザ素子2の配列方向に沿って延びる。
【0051】
ヒートパイプ6は、棒形状を有し、円筒形状を有する円筒部75および円筒部の両端部の開口を閉鎖する閉鎖部76を有するケース体77と、ケース体77の内周面80に沿って、ケース体77の両端部77a,77b間にわたって、ケース体77に外囲される空間に設けられるウィック材78と、熱媒体とを含む。ヒートパイプ6は、いわゆるウィック式ヒートパイプである。ヒートパイプ6は、ヒートシンク5と比較して、熱伝導率が数倍から数十倍程度高い。ウィック材78は、ケース体77の両端部77a,77b間にわたって延び、金属から成る複数の金属線材を含む。金属線材は、数十本〜数百本設けられる。ウィック材78は、ヒートパイプばね部材79によってケース体77の内周面80に向かって押圧される。これによってケース体77の内部空間の中央部には、予め定める空間が形成される。ケース体77の内部空間は、減圧されている。ケース体77の内部空間において、熱媒体が移動し、蒸発潜熱の教授によって、ヒートパイプ6の延びる方向において熱移動が行われる。ヒートパイプ6の直径は、たとえば4mm〜6mmに選ばれる。前記ケース体77は、銅材料から成る。本発明の他の実施の形態において、ケース体77は、たとえばアルミニウムおよびステンレス鋼によって形成されてもよい。また熱媒体は、水である。本発明の他の実施の形態において、熱媒体は、ナフタリン、ダウサム―A、メタノール、アンモニア、アセトン、およびフロン―12などであってもよい。
【0052】
ヒートパイプ6は、各ヒートシンク5の貫通孔74に挿通されて、ヒートシンク5に保持される。したがって、ヒートパイプ6は、接触面72に平行に延び、ヒートシンク5に保持される部分では、保持手段4に保持される半導体レーザ素子2の配列方向に平行に延びる。ヒートパイプ5は、各ヒートシンク5を熱的に接続する。ヒートパイプ6は、各ヒートシンク5の熱を伝達する。第1および第2保持手段4a,4bは、互いに離反し、空気を介在させて、相互に熱が伝わりにくい状態にして、設けられる。したがって第1および第2ヒートシンク5a,5bは、相互に離反しているが、各ヒートシンク5は、ヒートパイプ6を介して相互に接続されるので、各ヒートシンク5の熱は、ヒートパイプ6を介して他のヒートシンク5に伝達され、各保持手段4において、動作する半導体レーザ素子2の数が異なる場合であっても、動作する半導体レーザ素子2の多い保持手段4におけるヒートシンク5と、動作する半導体レーザ素子2の少ない保持手段4におけるヒートシンク5との温度のばらつきを抑制することができ、各保持手段4に保持される半導体レーザ素子2の温度のばらつきを可及的抑制することができる。
【0053】
ヒートパイプ6は、各ヒートシンク5の第1方向A1の端部81,82からそれぞれ突出し、各ヒートシンク5の第1方向A1の他端部82から突出する部分が、円弧状に連なって形成される。したがって、ヒートパイプ6は、略コ字状に折り曲げられた状態で、各ヒートシンク5に接続される。
【0054】
ヒートパイプ6とヒートシンク5との間、具体的にはヒートパイプ6のケース体77の外周面と、ヒートシンク5の挿通孔74に臨む内周面との間には、金属粉末を含む流体が介在される。前記流体は、シリコングリスによって実現される。ヒートパイプ6とヒートシンク5との間に空気が介在されると、熱抵抗となってしまいヒートパイプ6とヒートシンク5とにおける熱の移動を妨げてしまうが、ヒートパイプ6とヒートシンク5との間に金属粉末を含むシリコングリス83を介在させることによって、ヒートシンク5とヒートパイプ6との間における熱の伝達が円滑に行われ、各半導体レーザ素子2の温度のばらつきをさらに抑制することができる
可動部42には、第1押圧部85、第1弾発付勢手段86、第2押圧部87および第2弾発付勢手段88が設けられる。
【0055】
第1押圧部85は、第1弾発付勢手段86によって、弾発的に付勢される。第1弾発付勢手段86は、第1ばね部材91と、第1ばね部材91を支持する第1ばね支持部92とを含む。第1ばね部材91、第1ばね支持部92、および第1押圧部85は、押圧ねじ部材93に設けられる。第1ばね部材91は、コイルばねによって実現される。押圧ねじ部材93は、略円柱形状を有し、外周部にねじが形成される。押圧ねじ部材93は、軸線方向一方に開口する有底筒状の第1孔部94を有する。この第1孔部94によって第1ばね支持部92が形成される。第1孔部94には、第1ばね部材91および第1押圧部85の一部が収容され、第1ばね部材91の軸線方向の一端部が第1孔部94の底壁に接触し、他端部が第1押圧部85に接触し、ばね力によって第1押圧部85を軸線方向一方に付勢する。押圧ねじ部材93は、可動部42の遊端部96に設けられる。
【0056】
第1押圧部85の先端部95は、押圧ねじ部材93の開口から押圧ねじ部材93の外方に突出する。第1押圧部85の先端部95は、半球形状に形成される。押圧ねじ部材93の第1孔部94の軸線方向一端部97の内径は、他の部分の内径よりも小さく形成され、第1押圧部85の基端部98は、直円柱形状に形成され、その直径は、第1孔部94の軸線方向一端部97の内径よりも大きく形成される。これによって展開状態では、第1ばね部材91のばね力によって、第1押圧部85の基端部98が、第1孔部94の軸線方向一端部97に当接し、第1押圧部85が可動部42から離脱しまうことが防止される。第1押圧部85は、合成樹脂材料などの電気絶縁性材料によって形成される。
【0057】
押圧ねじ部材93は、可動部42に形成されるねじ孔99に羅着され、押圧ねじ部材93を、この押圧ねじ部材の軸線まわりに螺進または螺退させることによって、保持状態における第1押圧部85とヒートシンク5との間の距離を調整することができる。これによって、第1押圧部85と、ヒートシンク5とに間に挟持される半導体レーザ素子2を押圧する押圧力を調整することができる。
【0058】
押圧ねじ部材93の第1押圧部85が突出する側とは、反対側の端部111には、押圧ねじ部材93を軸線まわりに回転させるための係合工具が係合される係合部が形成される。前記係合部を覆うように、ナット112が押圧ねじ部材93に羅着される。ナット112を螺退させて、押圧ねじ部材93から取り外すことによって係合部が露出し、係合部に係合工具を係合して、回転させることができる。
【0059】
可動部42が第2ヒンジ部43の軸線L2まわりに角変位することによって、第1押圧部85は、軸線L2まわりに円弧形状の移動経路に沿って移動する。第1押圧部85は、前記第1押圧部85の移動経路の接線方向に向かって、第1ばね部材91によって付勢される。
【0060】
保持状態では、第1押圧部85は、半導体レーザ素子2の素子本体56に当接する。保持状態では、前記第1押圧部85の基端部98と、第1孔部94の軸線方向一端部97とが離反する。これによって、第1押圧部85がヒートシンク5上で、素子本体56に弾発的に当接し、第1押圧部85は、第1ばね部材91のばね力によって、確実にヒートシンク5上に素子本体56を押圧することができる。第1押圧部85は、ヒートシンク5の接触面72に垂直な方向から、素子本体56を押圧する。これによって半導体レーザ素子2の放熱部58を確実にヒートシンク5に接触させることができる。第1押圧部85は、素子本体56を弾発的に押圧するので、半導体レーザ素子2に与える負荷が大きくなり過ぎることを防止しつつ、放熱部58をヒートシンクに確実に接触させることができる。また第1押圧部85の先端部95は、半球形状に形成されるので、第1押圧部85は、半導体レーザ素子2を傷つけることなく、半導体レーザ素子2を押圧することができる。
【0061】
第2押圧部87は、第2弾発付勢手段88によって、弾発的に付勢される。第2弾発付勢手段88は、第2ばね部材114と、第2ばね部材114を支持する第2ばね支持部115とを含む。第2ばね部材114、第2ばね支持部115、および第2押圧部87は、可動部42に設けられる。第2ばね部材114は、コイルばねによって実現される。可動部42は、有底筒状の第2孔部116を有する。第2孔部116は、押圧ねじ部材93よりも可動部42の基端部寄りに設けられる。第2孔部116は、保持状態で、ベース部41に臨んで開口する。この第2孔部116によって第2ばね支持部115が形成される。第2孔部116には、第2ばね部材114および第2押圧部87の一部が収容される。第2ばね部材114は、第2ばね支持部115および第2押圧部87に接触し、ばね力によって第2押圧部87を保持状態で、第2押圧部87の軸線方向一方に付勢する。第2押圧部87は、略直円筒状のピン部材によって形成される。
【0062】
第2押圧部87の先端部117は、可動部42の第2保持面55から突出する。第2押圧部87の先端部95は、半球形状に形成される。第2孔部116の第2保持面55寄りの内径は、他の部分の内径よりも小さく形成され、第2押圧部87の基端部118は、直円筒形状に形成され、その直径は、第2孔部116の第2保持面55寄りの内径よりも大きく形成される。これによって展開状態では、第2ばね部材114のばね力によって、第2押圧部87の基端部118が、第2孔部116の第2保持面55寄りの部分に当接し、第2押圧部87が可動部42から離脱しまうことが防止される。第2押圧部87は、合成樹脂材料などの電気絶縁性材料によって形成される。
【0063】
可動部42が第2ヒンジ部43の軸線L2まわりに角変位することによって、第2押圧部87は、軸線L2まわりに円弧形状の移動経路に沿って移動する。第2押圧部87は、前記第2押圧部87の移動経路の接線方向に向かって、第2ばね部材114によって付勢される。
【0064】
可動部42には、第2保持面55から突出する突部119を有する。突部119は、可動部42の第1方向A1の両端部にそれぞれ設けられる。突部119には、前述したフレーム34の位置決め孔59に挿通される。これによって、保持手段4に保持される複数の半導体レーザ素子2の位置決めを行うことができる。
【0065】
保持状態では、第2押圧部87は、半導体レーザ素子2の素子端子部57に当接し、ベース部41に設けられる接続端子63の端子片65上に素子端子部57を押し付ける。保持状態では、第2押圧部87の基端部118が、展開状態で接触している第2孔部116の第2保持面55寄りの部分から離反する。これによって、第2押圧部87が第1保持面54上で、素子端子部57に弾発的に当接し、第2押圧部87は、第2ばね部材114のばね力によって、確実に端子片65に素子端子部57の端子を押圧して、接触させることができる。第2押圧部87は、第1保持面54に垂直な方向から、素子端子部57を押圧する。これによって素子端子部57を確実に端子片65に接触させることができる。また第2押圧部87の先端部117の端面は、平面に形成される。素子端子部57の各端子は、細い金属線であるので、第2押圧部87の先端部117の端面を、平面にすることによって、第2押圧部87によって素子端子部57を確実に押圧して、端子片65に接触させることができる。
【0066】
前記ヒートシンク5と、保持手段4の可動部42とは、熱絶縁状態で組み立てられている。すなわちヒートシンク5の熱が、可動部42に伝達しにくいように、ヒートシンク5と可動部42と間に絶縁性部材から成るベース部本体62が介在されて、組み立てられている。
【0067】
保持状態において、保持手段4に保持される複数の半導体レーザ素子2の放熱部58が、ヒートシンク5に接触することによって、駆動されることによって発熱する複数の半導体レーザ素子2の熱が、収容空間13に放出されやすくなるとともに、同じヒートシンク5に接触する複数の半導体レーザ素子2の温度を可及的に均一化することができる。本実施の他の形態において、ヒートシンク5は、熱伝導率の高い材料によって形成されればよく、たとえば銅、およびステンレスによって形成されてもよい。
【0068】
ヒートパイプ6は、保持手段4の各ヒートシンク5に接続される。2つの保持手段4は、互いに離反し、空気が介在されているので、相互に熱が伝わりにくい状態となっている。ヒートシンク5は、各保持手段4に設けられており、ヒートシンク5は、相互に離反している。各ヒートシンク5は、ヒートパイプ6を介して相互に接続されるので、各ヒートシンク5の熱は、ヒートパイプ6を介して他のヒートシンク5に伝達される。たとえば第1保持手段4に設けられる第1ヒートシンク5の温度が第2保持手段4に設けられる第2ヒートシンク5の温度よりも高い場合には、ヒートパイプ6は、図5の矢符C1で示すように第1ヒートシンク5から第2ヒートシンク5に熱を伝達する。またたとえば第1保持手段4に設けられる第1ヒートシンク5の温度が第2保持手段4に設けられる第2ヒートシンク5の温度よりも低い場合には、ヒートパイプ6は、図5の矢符C2で示すように第2ヒートシンク5から第1ヒートシンク5に熱を伝達する。
【0069】
これによって、各保持手段4において、動作する半導体レーザ素子2の数が異なる場合であっても、動作する半導体レーザ素子2の多い保持手段4におけるヒートシンク5と、動作する半導体レーザ素子2の少ない保持手段4におけるヒートシンク5との温度のばらつきを抑制することができ、各保持手段4に保持される半導体レーザ素子2の温度のばらつきを可及的抑制することができる。
【0070】
図10は、図2の切断面線X−Xから見たバーンイン装置1の断面図である。恒温槽3には、温度調整手段9が設けられる。温度調整手段9は、温度検出手段21と、温度保持手段22と、予め定める温度調整空間121を形成する温度調整筐体122とを含む。温度調整筐体122は、加熱部123と、送風部124と、加熱部123および送風部124を制御する温度制御部125を含む。
【0071】
温度検出手段21は、熱電対を含んで実現される。熱電対は、第1および第2ヒートシンク5a,5bの間で露出するヒートパイプ6の中間部126で、第1および第2ヒートシンク5a,5bから等距離の位置に接触して設けられる。熱電対は、ヒートパイプ6のケース体77の外表面に接触する。
【0072】
温度調整筐体122は、温度調整空間形成体であって、恒温槽3の前記第3方向A3の一端部に設けられ、予め定める温度調整空間121を形成する。以後、予め定める温度調整空間121を単に温度調整空間と記載する場合がある。
【0073】
収容空間13に臨む恒温槽本体11の底壁部130には、第1および第2通気孔131,132が形成される。第1通気孔131は、恒温槽本体11の第2方向A2の一端部133に形成され、恒温槽本体11を第3方向A3に貫通する。第2通気孔132は、恒温槽本体11の第2方向A2の他端部134に形成され、恒温槽本体11を第3方向A3に貫通する。第1および第2通気孔131,132は、恒温槽本体11の第1方向A1の両端部3a,3b間にわたって、長孔形状に形成される。
【0074】
第1および第2通気孔131,132は、第2方向A2において、保持手段4に保持される半導体レーザ素子2の外方に形成される。言い換えれば、第1通気孔131は、第1保持手段4の第2方向A2の一方に、第2通気孔132は、第2保持手段4の第2方向A2の他方に形成される。第1および第2通気孔131,132は、温度調整筐体122の温度調整空間121に連通する。第1および第2通気孔131,132は、略等しく形成され、かつ第2方向A2に垂直な仮想一平面に関して、面対称に形成される。第1方向A1で、第1通気孔131に臨んでいる内周面の間距離と、第1方向A1で、第2通気孔132に臨んでいる内周面の間の距離とは、各保持手段4によって保持される複数の半導体レーザ素子2の第1方向A1の配列幅よりも大きく選ばれ、またヒートシンク5および保持手段4の長手方向の寸法よりも大きく選ばれる。第1および第2通気孔131,132は、保持手段4によって保持される複数の半導体レーザ素子2のうち第1方向A1の一端で保持される半導体レーザ素子2が配置される位置よりも、第1方向A1の一方寄りまで形成され、また保持手段4によって保持される複数の半導体レーザ素子2のうち第1方向A1の他端で保持される半導体レーザ素子2が配置される位置よりも第1方向A1の他方寄りまで形成される。第1方向A1の一方および他方から前記第1および第2通気孔131,132に臨む内周面は、外に凸となる曲面によって形成され、これによって第1および第2通気孔131,132を通過する空気の滞留を防止することができる。
【0075】
温度調整手段9は、第1通気孔131を介して恒温槽3の予め定める収容空間13に、空気を供給し、第2通気孔132を介して恒温槽3内の収容空間13の空気を温度調整空間121に排出することによって、収容空間13の雰囲気を所定の温度範囲の温度に調整する。
【0076】
加熱部123は、温度制御部125に制御されて、温度調整空間121の雰囲気を加熱、つまり温度調整空間121の空気を加熱する。加熱部123は、ニクロム線ヒータ136を含んで実現され、発熱することによって、前記雰囲気を加熱する。温度調整空間121は、収容空間13の容積と同様な大きさに選ばれる。加熱部123のニクロム線ヒータ136は、前記第1方向A1に沿って延び、第2方向A2において第1通気孔131寄りに配置される。ニクロム線ヒータ136は、第1方向A1において、温度調整筐体122の両端部間にわたって設けられる。収容空間13の雰囲気を所定の温度範囲の温度にしようとする場合、たとえば収容空間13に空気を加熱する加熱する加熱部123を配置すると、加熱部123に近づくほど雰囲気の温度が高くなり、加熱部123から遠ざかるほど雰囲気の温度が低くなってしまうので、収容空間13において雰囲気の温度にむらができ、収容空間13全体を所定の温度範囲内の温度に保持することが難しい場合があるが、恒温槽3の外部空間から加熱した空気を、第1通気孔131を介して収容空間13に供給することによって、収容空間13全体の雰囲気の温度をできるだけ温度むらを抑制した状態で上昇させることができ、収容空間13の温度を、所定の温度範囲の温度に容易に保持しやすい。
【0077】
送風部124は、送風によって温度調整空間121の空気を、第1通気孔131を介して収容空間13に供給する。また送風部124によって、収容空間13の空気を第2通気孔132を介して温度調整空間121に吸引することによって、収容空間13の空気を温度調整空間121に排出させることができる。
【0078】
このような構成とすることによって、収容空間13および温度調整空間121の空気を循環させて、収容空間13の雰囲気の温度を調整することができる。温度制御部22は、温度検出手段22によって検出されたヒートパイプ6の温度が、予め定める温度範囲の温度よりも低くなったと判断すると、加熱部123に温度調整空間122の雰囲気を加熱させて、加熱部123によって加熱した空気を送風部124に送風させる。これによって、加熱された空気が収容空間13に供給され、収容空間13の温度を上昇させて、試験中の半導体レーザ素子2の温度が低下してしまうことが抑制される。
【0079】
また温度制御部22は、温度検出手段22によって検出されたヒートパイプ6の温度が、予め定める温度範囲の温度よりも高くなったと判断すると、加熱部123に温度調整空間121の空気を加熱することを停止させるか、送風部124による送風および吸引を停止させるか、またはその両者を行わせる。これによって、収容空間13の温度の上昇を停止させて、試験中の半導体レーザ素子2の温度が、高くなりすぎてしまうことが抑制される。
【0080】
恒温槽3では、第2方向A2において、一端部133から収容空間13に空気が供給され、他端部134から収容空間13の空気が排出されるので、収容空間13に空気が滞留してしまうことを可及的抑制することができ、収容空間13において温度むらが発生してしまうことを抑制することができる。
【0081】
送風部124は、第1および第2回転駆動部141a,141bと、第1および第2羽根車142a,142bと、はずみ車143とを含む。第1および第2回転駆動部141a,141bを総称する場合、回転駆動部141と記載する。第1および第2羽根車142a,142bを総称する場合、羽根車142と記載する。
【0082】
回転駆動部141は、たとえばモータによって実現される。羽根車142は、回転駆動部141の回転軸144に固定され、回転駆動部141を駆動することによって、回転軸144の回転軸線L3まわりの、予め定める方向に回転する。前記回転軸144は、第3方向A3に沿って延びる。羽根車142は、前記回転軸線L3まわりに回転することによって、回転軸線L3から離反する方向に空気を移動させることができ、言い換えると送風することができる。はずみ車143は、各回転駆動部141の回転軸144にそれぞれ固定される。はずみ車143は、温度調整空間121には配置されず、温度調整筐体122の外方に配置される。はずみ車143は、羽根車142と回転軸144を回転させる回転駆動部141との間に設けられる。はずみ車143を設けることによって、回転駆動部141の急激な回転速度の変化を防止することができ、これによって羽根車142による送風が安定する。回転駆動部141の回転軸144の回転軸線L2は、前記第3方向A3に沿って延びる。羽根車142は、第1方向A1に沿って並べて配置される。羽根車142および回転軸144の一部が前記温度調整空間121に収容される。
【0083】
羽根車142は、第2方向A2においてニクロム線ヒータ136よりも、第2通気孔132寄りに配置される。これによって、羽根車142を回転軸144の軸線まわりに回転させると、ニクロム線ヒータ136によって加熱された空気が、第1通気孔131を介して、収容空間13に供給することができる。
【0084】
温度調整筐体122には、第1および第2風向き制御板145a,145bが設けられる。第1および第2風向き制御板145a,145bを総称する場合、単に風向き制御板145と記載する。風向き制御板145は、各羽根車142にそれぞれ対応して設けられ、各羽根車142が回転することによって移動する空気が、予め定める方向に流れるように空気の流れを整える。風向き制御板145は、回転軸線L3を中心とする円弧形状の内周面を有する。風向き制御板145は、板状部材によって実現され、羽根車142の回転軸線L3を中心とする半径方向外方で、前記内周面が羽根車142のほぼ半周を覆うように形成される。風向き制御板145は、第1通気孔131側に空気が移動するように、羽根車142を挟んで予め定める第1通気孔131が形成される側とは第2方向A2の反対側から羽根車142を覆う。また風向き制御板145は、その両端部146が、回転軸線L3の第1方向A1の外方を覆うように設けられる。
【0085】
ニクロム線ヒータ136は、羽根車142を挟んで風向き制御板145とは反対側で、温度調整空間121に設けられる。ニクロム線ヒータ136は、温度調整筐体122の第1方向A1の両端部間にわたって、第1方向A1に平行に延びる部分を有する。ニクロム線ヒータ136は、温度調整筐体122から所定の間隔をあけて、ヒータ保持部147によって温度調整筐体122に固定される。
【0086】
また温度調整筐体122には、羽根車142が回転することによって移動する空気を予め定める第1通気孔131に導くための第1流路形成部148と、第2通気孔132から流入する空気を羽根車142に導くための第2流路形成部149とが設けられる。第1流路形成部148は、羽根車142よりも恒温槽3寄りで、かつ回転軸線L3よりも第1通気131寄りの領域で、羽根車142の外方に形成される。
【0087】
また温度調整筐体122は、羽根車142の第2方向A1の一方で、温度調整空間121を、第1通気孔131の延びる方向、すなわち第1方向A1において複数の所定の空間に区切る仕切り板151を有する。仕切り板151は、温度調整筐体122の第2方向A2の一端部から、第2方向A2においてニクロム線ヒータ136よりも、羽根車142寄りの空間まで延びる。これによってニクロム線ヒータ136は、仕切り板151によって区切られる複数の所定の空間に設けられることになり、所定の空間の空気を加熱する。
【0088】
仕切り板151は、平板状部材であって、その厚み方向は、第1方向A1と平行に設けられる。仕切り板151は、温度調整筐体122の第1方向A1の中央に配置され、風向き制御板145a,145bの間に形成されるセンタ仕切り板152を有する。センタ仕切り板152は、温度調整筐体122の第2方向A2の一端部から、風向き制御板145の端部146にわたって形成される。センタ仕切り板152を設けることによって、各羽根車142が回転することによって発生する風が干渉してしまうことが防止される。また仕切り板151は、第1方向A1において、センタ仕切り板152と、温度調整筐体122の温度調整空間121に臨む内周面との間に配置される複数の調整仕切り板153を含む。調整仕切り板153は、第1〜第6調整仕切り板153a〜153fを含む。
【0089】
第1〜第3調整仕切り板153a〜153cは、センタ仕切り板152の第1方向一方に設けられ、第4〜第6調整仕切り板153d〜153fは、センタ仕切り板152の第1方向他方に設けられる。羽根車142が回転することによって移動する空気は、各仕切り板151に仕切られた所定の空間にそれぞれ流入する。
【0090】
第1〜第6調整仕切り板153a〜153fの各間の空間の空気を、ニクロム線ヒータ136によって加熱し、送風部124によって各空間において加熱された空気を第1処理空間に供給するときに、第1方向A1において第1通気孔131から流出する空気の温度が略均一となるように、第1〜第6調整仕切り板153a〜153fの第1方向A1における間隔が選ばれる。これによって第1通気孔131の延びる方向、すなわち第1方向A1において、第1通気孔131から収容空間13に供給される加熱された空気の温度の均一性をさらに向上させることができる。本実施の形態においては、第1〜第6調整仕切り板153a〜153fの6つの仕切り板が設けられるが、本発明の他の実施の形態において、仕切り板の数は、6つに限らない。
【0091】
また温度調整筐体122には、羽根車142が回転することによって移動する空気を第1通気孔131に導くための第1流路形成部148と、第2通気孔132から流入する空気を羽根車142に導くための第2流路形成部149とが設けられる。第1流路形成部148は、仕切り板151によって形成される各所定の空間と、第1通気孔131とを連通するように形成される。羽根車142が回転することによって、図3の矢符E1に示すように、温度調整空間121の空気が、第2方向A2の一方に移動する。前記第2方向A2の一方に送られた空気は、仕切り板151によって区切られた所定の空間を通過して、温度調整筐体122の第2方向A2の端部から図3の矢符E2に示すように、第3方向A3の他方に送られ、第1流路形成部148を通り、第1通気孔131を通過して収容空間13に流入する。収容空間13内に流入した空気は、図3の矢符E3に示すように、第2方向A2の他方に向かう。前記収容空間13内で、前記第2方向A2の他方に送られた空気は、第2通気孔132を通過して、恒温槽3の第2方向A2の端部から図3の矢符E4に示すように、第3方向A3の一方に流れ、羽根車142の回転による吸引力によって、温度調整空間121に流入する。温度調整空間121内に流入した空気は、第2流路形成部149によって羽根車142の回転軸線L3付近に導かれる。第2流路形成部149は、羽根車142よりも恒温槽3寄りで、かつ第2貫通孔132寄りの領域で、羽根車142の回転軸線L3近傍と第2通気孔132との間にわたって形成される。このように羽根車62が回転することによって、収容空間13と温度調整空間121との空気を循環させることができる。
【0092】
温度調整筐体122には、第3方向A3の温度調整筐体122の一方側に突出する回転駆動部141を保護する保護部材155が設けられる。保護部材155は、温度調整筐体122の第3方向A3の一方側に突出して、回転軸線L2まわりの外方から回転駆動部141を覆う。
【0093】
収容空間13では、第1通気孔131から第2通気孔132に空気が流れ、第1通気孔131寄りに設けられる第1保持手段4に設けられる第1ヒートシンク5は、第2保持手段4に設けられる第2ヒートシンク5と比較して風が当たりやすので、第1ヒートシンク5の温度は、第2ヒートシンク5の温度よりも低下しやすいが、第1ヒートシンク5の温度が低下したとしてもヒートパイプ6によって、熱が伝達されることによって第1ヒートシンク5と第2ヒートシンク5とに温度差が生じてしまうことを可及的抑制することができ、複数の半導体レーザ素子2の検査条件を可及的揃えることができ、試験の信頼性を向上させることができる。また収容空間13における空気の移動方向に拘らず、保持手段4を配置することができ、設計の自由度を向上させることができる。
【0094】
表1は、本実施の形態のバーンイン装置1の各保持手段4に、複数の半導体レーザ素子2を保持させて、駆動したときの半導体レーザ素子2の温度の実験結果を示す。表1では、第1保持手段4を「A」とし、第2保持手段4を「B」として示している。表1において、実験番号1〜11までの各実験では、直径が4mmのヒートパイプ6を用い、実験番号12および13の各実験では、直径が6mmのヒートパイプ6を用いた。ヒートパイプ6の延在方向の一端から、延在方向他方に50mmの範囲を加熱部分とし、他端から延在方向一方に250mmの範囲を冷却部分としたとき、直径が4mmのヒートパイプ6の熱抵抗は、0.38K/Wであり、直径が6mmのヒートパイプ6の熱抵抗は、0.24K/Wである。
【0095】
【表1】

【0096】
各実験において、第1および第2保持手段4a,4bには、それぞれ20個の半導体レーザ素子2を保持させた。また各実験において、各保持手段4に保持される半導体レーザ素子2のうち、第1方向A1の一方から他方に向かって1番目、5番目、10番目、15番目および20番目に保持される半導体レーザ素子2の温度を検出した。第1保持手段4に保持される半導体レーザ素子2のうち、第1方向A1の一方から他方に向かって1番目、5番目、10番目、15番目および20番目に保持されるものを、それぞれF−CH1、F−CH5、F−CH10、F−CH15およびF−CH20としている。また第2保持手段4に保持される半導体レーザ素子2のうち、第1方向A1の一方から他方に向かって1番目、5番目、10番目、15番目および20番目に保持されるものを、それぞれR−CH1、R−CH5、R−CH10、R−CH15およびR−CH20としている。
【0097】
表1には、試験番号と、点灯状況と、Aの温度と、Bの温度と、Aの温度分布と、Bの温度分布と、全体の温度分布と、Aの平均温度と、Bの平均温度と、全体の平均温度と、基準との比較とを示している。
【0098】
点灯状況は、点灯させた半導体レーザ素子2の数を示している。点灯状況は、全体の点灯数と、第1保持手段4a(A)によって保持される半導体レーザ素子2の点灯数と、第2保持手段4b(B)によって保持される半導体レーザ素子2の点灯数とを示している。たとえば実験番号4では、全体で29個の半導体レーザ素子2を点灯させ、第1保持手段4に保持される半導体レーザ素子2のうち、19個の半導体レーザ素子2を点灯させ、第2保持手段4に保持される半導体レーザ素子2のうち、10個の半導体レーザ素子2を点灯させたことを表す。
【0099】
Aの温度は、前記F−CH1、F−CH5、F−CH10、F−CH15およびF−CH20の温度を示している。F−CH1、F−CH5、F−CH10、F−CH15およびF−CH20のうち、消灯しているものには、「消」と記している。
【0100】
Bの温度は、前記R−CH1、R−CH5、R−CH10、R−CH15およびR−CH20の温度を示している。R−CH1、R−CH5、R−CH10、R−CH15およびR−CH20のうち、消灯しているものには、「消」と記している。
【0101】
Aの温度分布は、前記F−CH1、F−CH5、F−CH10、F−CH15およびF−CH20のうち、点灯しているものについて、最大の温度と最小の温度との差を表している。つまり第1保持手段4aに保持される半導体レーザ素子2の温度のばらつきを示している。
【0102】
Bの温度分布は、前記R−CH1、R−CH5、R−CH10、R−CH15およびR−CH20のうち、点灯しているもについて、最大の温度と最小の温度との差を表している。つまり第2保持手段4bに保持される半導体レーザ素子2の温度のばらつきを示している。
【0103】
全体の温度分布は、前記F−CH1、F−CH5、F−CH10、F−CH15およびF−CH20ならびにR−CH1、R−CH5、R−CH10、R−CH15およびR−CH20のうち、点灯しているもについて、最大の温度と最小の温度との差を表している。つまり第1および第2保持手段4a,4bに保持される半導体レーザ素子2の温度のばらつきを示している。
【0104】
Aの平均温度は、前記F−CH1、F−CH5、F−CH10、F−CH15およびF−CH20のうち、点灯しているものについて、平均温度を表している。
【0105】
Bの平均温度は、前記R−CH1、R−CH5、R−CH10、R−CH15およびR−CH20のうち、点灯しているものについて、平均温度を表している。
【0106】
全体の平均温度は、前記F−CH1、F−CH5、F−CH10、F−CH15およびF−CH20、ならびに前記R−CH1、R−CH5、R−CH10、R−CH15およびR−CH20のうち、点灯しているものについて、平均温度を示している。
【0107】
実験番号1〜3では、第1および第2保持手段4に保持された半導体レーザ素子2のうち、19個の半導体レーザ素子2を点灯させた。表1には、実験番号1〜3についての各項目の平均値も示している。実験番号1〜3についての平均値をみると、各保持手段4において保持される半導体レーザ素子2の温度のばらつきが、第1保持手段4aでは、2.9℃であり、第2保持手段4bでは、5.1℃となっている。また全体の半導体レーザ素子2の温度のばらつきは、5.1℃となっており、各保持手段4を個別にみたときに、各保持手段4に保持される半導体レーザ素子2の温度のばらつきが小さく、また全ての保持手段4をみたときにも、半導体レーザ素子2の温度のばらつきが小さいことがわかる。
【0108】
基準との比較は、各実験番号の実験における半導体レーザ素子2の全体の平均温度と、基準とする全体の平均温度との差を表す。この差が小さいほど、保持手段4によって保持される半導体レーザ素子2の点灯数に拘らず、各半導体レーザ素子2の試験条件をできるだけ揃えることができる。つまり、たとえば保持手段4に保持される複数の半導体レーザ素子2のうち、19個点灯している場合と、10個しか点灯していない場合とにおいてであっても、半導体レーザ素子2の温度をできるだけ近づけることができる。これによって、バーンイン装置1を用いて、複数の半導体レーザ素子2の試験において、1回の試験で恒温槽3の収容空間に収容される複数の半導体レーザ素子2だけでなく、バーンイン装置1を用いて試験されるすべての半導体レーザ素子2の試験条件を可及的に揃えることができる。基準との比較において、基準となる温度の±5℃、好ましくは±3℃であれば、信頼性の高い試験結果が得られる。
【0109】
複数の半導体レーザ素子2のうち、動作不良となるものがある場合、この半導体レーザ素子2の温度は、正常に動作する半導体レーザ素子2の温度よりも低くなり、ヒートシンク5のうち、動作不良となる半導体レーザ素子2が接触する部分の温度が、正常に動作する半導体レーザ素子2が当接する部分の温度よりも低くなる。これによって動作不良となる半導体レーザ素子2の周りの半導体レーザ素子2の温度が低下してしまうが、バーンイン装置1では、ヒートシンク5に比べて熱伝達率の高いヒートパイプ6によって、ヒートシンク5の熱が移動することによって、各半導体レーザ素子2の温度のばらつきを可及的に抑制して、各半導体レーザ素子2の温度を可及的に均一化することができる。このように、各半導体レーザ素子2の温度を均一化することによって、各半導体レーザ素子2の試験条件を均一化することができ、バーンイン試験およびエージング試験の信頼性を向上させることができる。
【0110】
またバーンイン装置1では、バーンイン試験およびエージング試験の途中で温度を変える必要があったとしても、ヒートパイプ6によってヒートシンク5の熱が伝達されることによって、温度を変化させる指令に、半導体レーザ素子2の温度を素早く追従させることができる。
【0111】
バーンイン装置1では、複数の各恒温槽3の収容空間13に、半導体レーザ素子2を収容し、収容空間13の雰囲気を所定の温度範囲内の温度に保持した状態で、動作状態検出手段8によって、駆動される半導体レーザ素子2の状態を表す所定の信号を出力する。前記所定の信号を得ることによって、半導体レーザ素子2の初期不良を検出することができ、また所定の試験条件下における半導体レーザ素子2の動作状態を知ることができる。
【0112】
また恒温槽本体11および恒温槽蓋体12を相対的に移動させることによって、収容空間13を恒温槽3の外部の空間に開放すると、半導体レーザ素子2および受光素子26の収容空間13内における配置が容易となる。たとえば受光素子26に不具合が生じたときには、受光素子26を離脱させることができ、交換および修理が容易となる。また半導体レーザ素子2の交換が容易となるので、試験の効率が向上する。
【0113】
またバーンイン装置1では、予め定める半導体レーザ素子2が収容される収容空間13の雰囲気を直接ニクロム線ヒータ136によって加熱するのではなく、まず温度調整空間121の雰囲気を加熱して、この加熱した雰囲気を送風部124によって収容空間13に送り込む。このような構成とすると、収容空間13の一部の雰囲気の温度だけが上昇することが防止され、収容空間13の雰囲気の温度を所定の温度範囲内で、ほぼ均一に保持することができる。
【0114】
本実施の形態のバーンイン装置1では、2つの保持手段4を有しているが、本発明の他の実施の形態において、3つ以上の保持手段4を有する構成としてもよい。この場合、各保持手段4に設けられるヒートシンク5は、ヒートパイプ6によって接続されることによって、前記実施の形態のバーンイン装置1と同様の効果を得ることができる。
【0115】
本実施の形態のバーンイン装置1は、半導体レーザ素子2のバーンイン試験およびエージング試験に用いられるが、半導体レーザ素子2に限らず、たとえば発光ダイオード(
Light Emitting Diode:略称LED)および集積回路(Integrated Circuit:略称IC)チップなどのバーンイン試験およびエージング試験に用いられてもよい。
【0116】
また本実施の形態では、保持手段4は、半導体レーザ素子2を第1方向Aに一列に保持するが、本発明の他の実施の形態において、保持手段4は、半導体レーザ素子2の配列は、これに限らない。
【0117】
また本発明の実施の他の形態において、半導体レーザ素子2のエージング試験は、予め定める温度環境下において、半導体レーザ素子2の駆動電流を一定に保った場合の光出力の変化を評価することによって行なわれてもよい。このような試験を、ACC(
Automatic Power Control)試験と呼ぶ。この場合、駆動部23は、半導体レーザ素子2の駆動電流を一定にして、受光部24によって検出される光量に対応する情報を出力部25に与える。
【0118】
前述した実施の形態において、所定の気体を空気としたが、所定の気体は、空気以外の不可燃性の気体であればよく、たとえば窒素ガスなどであってもよい。
【0119】
本実施の形態のバーンイン装置1において、ヒートシンク5は、アルミニウム材料によって形成されるが、本発明の他の実施の形態において、前記ヒートシンク5は、銅材料およびステンレス材料などによって形成されてもよい。ヒートシンク5を銅材料によって形成すると、半導体レーザ素子2の温度のばらつきをより、均一化することができる。
【0120】
本発明の他の実施の形態において、前記ヒートパイプ6のケース体77と、ヒートシンクとは一体的に形成されてもよい。
【0121】
バーンイン装置1では、前記ヒートシンク5とヒートパイプ6との間に金属粉末を含むシリコングリスを介在させているが、本発明の他の実施の形態において、ヒートシンク5とヒートパイプ6とを直接接触させてもよい。このような構成であっても同様な効果をえることができる。
【0122】
本発明の他の実施の形態において、前記第1および第2ヒートシンク5a,5bに接続されるヒートパイプ6は、円環状に形成されてもよい。すなわち、図1のヒートパイプ6の両端部が相互に接続されて形成されてもよい。これによって、第1および第2ヒートシンク5a,5b間で熱の移動がさらに円滑に行われ、各保持手段4に保持される各半導体レーザ素子2の温度のばらつきをさらに低減することができる。本発明の各実施の形態のバーンイン装置では、前記実施の形態のバーイン装置1と同様な効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明の実施の一形態のバーンイン装置1の構成を模式的に示す正面図である。
【図2】図1の切断面線II−IIから見たバーンイン装置1の構成を模式的に示す断面図である。
【図3】図2において収容空間13を外部の空間から閉鎖し試験状態としたバーンイン装置1の構成を模式的に示す断面図である。
【図4】バーンイン装置1の電気的構成を示す機能ブロック図である。
【図5】保持手段4、ヒートシンク5およびヒートパイプを拡大して示す平面図である。
【図6】図3の領域VIを拡大して示す断面図である。
【図7】図2の領域VIIを拡大して示す断面図である。
【図8】複数の半導体レーザ素子2をフレーム34に接続された状態で示す平面図である。
【図9】フレーム34に接続される複数の半導体レーザ素子2のうち1つの半導体レーザ素子2を拡大して示す図である。
【図10】図2の切断面線X−Xから見たバーンイン装置1の断面図である。
【符号の説明】
【0124】
1 バーンイン装置
2 半導体レーザ素子
3 恒温槽
4 保持手段
5 ヒートシンク
6 ヒートパイプ
8 動作状態検出手段
9 温度調整手段
85 第1押圧部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱部を有し、動作することによって発熱部が発熱する複数の被試験体を、収容可能な収容空間を有する恒温槽と、
収容空間に設けられ、複数の被試験体を保持可能な保持手段と、
保持手段に保持される各被試験体に、各被試験体を動作させるための動作信号を与え、動作信号が与えられた各試験体の出力を検出して、検出した結果を動作状態として出力する動作状態検出手段と、
収容空間に設けられ、保持手段に保持される各被試験体の発熱部に接触するヒートシンクと、
保持手段によって保持される各被試験体の配列方向に沿ってヒートシンクに設けられ、ヒートシンクの熱を伝達するヒートパイプとを含むことを特徴とするバーンイン装置。
【請求項2】
前記保持手段は、互いに離反して複数設けられ、
前記ヒートシンクは、各保持手段に対応して複数設けられ、各ヒートシンクは、ヒートパイプを介して相互に接続されることを特徴とする請求項1記載のバーンイン装置。
【請求項3】
前記ヒートパイプは、金属粉末を含む液体を介してヒートシンクに接続されることを特徴とする請求項1または2記載のバーンイン装置。
【請求項4】
前記保持手段は、被試験体の放熱部をヒートシンク上で弾発的に押圧する押圧部を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のバーンイン装置。
【請求項5】
ヒートパイプの温度を検出する温度検出手段と、
温度検出手段の検出結果に基づいて、保持手段に保持される複数の被試験体の温度が、予め定める温度範囲内の温度となるように収容空間における雰囲気の温度を保持する温度保持手段とを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のバーンイン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−145396(P2006−145396A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−336277(P2004−336277)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】