説明

パイプの溶接方法及びパイプの水平自動溶接装置

【課題】 円筒状に曲げ加工したワークの両端を突合せ溶接する際にワークの両端を密着状態で正確に突合せ、溶接不良の無い真円度の高いパイプを作製する。
【解決手段】 マンドレル2に挿着したワークWの円周方向一端をセンタープレート16に押し当ててその一端部をマンドレル2上のバックバー3へ軽く押圧し、次にセンタープレート16を下降させてワークWの円周方向他端部をバックバー3上へ軽く押圧し、引き続き二つのタブ材18でワークWを長手方向両側から挾持してワークWの軸心方向のズレを修正すると共に、ワークWの両側端にタブ材18を密着させ、その後ワークWの一端部をバックバー3上へ強く押圧固定し、この状態でワークWの下端部を押し上げると共に、ワークWの両側面を加圧してワークWの両端を隙間無く密着状態で突合せた後、ワークWの他端部をバックバー3上へ強く押圧固定し、最後に、ワークWの突合せ部を突合せ溶接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステンレス板や鋼板等の金属板を円筒状に曲げ加工して成るワークの円周方向の両端を突合せ溶接してパイプを作製するようにしたパイプの溶接方法及びパイプの水平自動溶接装置に係り、特に、円筒状に曲げ加工した金属板製のワークを突合せ溶接する際に溶接不良を無くすと共に、真円度の高いパイプを作製することができるようにしたパイプの溶接方法及びパイプの水平自動溶接装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、金属製のパイプを溶接により作製する場合、素材となるステンレス板等の金属板をロール成形機等により曲げ加工して円筒状のワークを形成し、当該ワークの円周方向の両端をTIG溶接等により突合せ溶接している。
【0003】
従来、円筒状に曲げ加工したワークからパイプを作製する装置としては、円筒状のワークをマンドレルの外周面にセットしてマンドレル上でワークの円周方向の両端を突合せ固定し、この状態でワークの突合せ部をTIG溶接等により突合せ溶接するようにした水平型の自動溶接装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
即ち、前記水平型の自動溶接装置は、図示していないが、フレーム本体に支持され、円筒状に曲げ加工したワークを支持する水平姿勢の長尺状のマンドレルと、マンドレルの上面側に設けた長尺状のバックバーと、マンドレルに設けられ、ワークの円周方向の両端がバックバー上で突合されるようにワークの端面の位置決めを行うセンター位置決め機構と、マンドレルの上方位置に配設され、ワークの円周方向の両端を突合せた状態でバックバー上へ押圧固定するクランプ機構と、マンドレルの上方位置に配設され、ワークの突合せ部を突合せ溶接するTIG溶接装置とから構成されており、マンドレルにセットしたワークの両端をセンター位置決め機構により位置決めすると共に、位置決めされたワークの両端をクランプ機構によりバックバー上で突合せ固定し、この突合せ部をTIG溶接装置により突合せ溶接して接合するようにしたものである。
【0005】
ところで、ステンレス板等の金属板を円筒状に曲げ加工する方法としては、弾性ロール(ウレタンロール)と硬質ロール(スチールロール)とを圧接する状態で回転自在に設けたロール成形機(例えば、井上産業株式会社製のツインロール成形機)を用い、当該ロール成形機の両ロール間に金属板を挿入通過させることによって、金属板を円筒状に曲げ加工するようにした方法が知られている。
【0006】
ところが、弾性ロール(ウレタンロール)を用いて曲げ加工により作製した円筒状のワークWは、図21に示す如く、円周方向の両端の中央部分のみが密着し、両端部分に隙間Gが生じることになる。これは、ワークWの長手方向の中央部に比べて両端部のスプリングバックが大きいために生じる現象と思われる。特に、小径で細長い円筒状のワークWを作製する場合に、前記問題がより一層顕著に現われる。
【0007】
従って、両端部に隙間Gが生じたワークWを上述した水平型の自動溶接装置を用いて突合せ溶接した場合、例えば、仮付け溶接を行わずにワークWの突合せ部を直接本溶接W1すると、図22に示す如く、ワークWの両端部が完全に突合されていないためにワークWの両端部に穴あき不良が50%〜70%の確立で発生することになり、歩留まりが極めて悪いと云う問題があった。尚、図22に於いて、TはワークWの長手方向の両端に密着状態で配設したタブである。
【0008】
又、図23に示す如く、ワークWの両端部を予め仮付け溶接W2してワークWの両端部の隙間Gを少なくし、この状態でワークWの突合せ部を本溶接W1すると、溶接の不良率は3%近くまで減少するが、溶接不良を完全に無くすことは困難であった。
何故なら、弾性ロール(ウレタンロール)を用いた金属板の曲げ加工に於いては、金属板の巻き始めの端部と巻き終わりの端部に、曲面に成形し切れなかった直線部が生じ、ワークWの円周方向の両端を密着させることが困難であるからである。この直線部はワークWの板厚の3〜5倍程度生じ、特に、小径のワークWに於いては、無視できない寸法である。
【0009】
そのため、円周方向の両端部が直線部に形成されたワークWの両端を突合せ溶接する際、図24に示す如く、ワークWの突合せ部にV字状の隙間Gが生じ、これが穴あき等の溶接不良の原因となっている。
仮に、ワークWの両端の突合せ溶接をうまく行えたとしても、ワークWの円周方向の両端が完全に密着した状態で突合せ溶接されていないため、出来上がったパイプPが図25に示すように「おむすび」形状となり、極めて真円度の悪いパイプが作製されることになる。
又、ワークWの円周方向の両端を作業員が手作業により突合せているため、ワークWの突合せ度合いにもバラツキが生じ、これも溶接不良の要因になっているものと思われる。
【特許文献1】特開2003−205369号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような問題点に鑑みて為されたものであり、その目的は、円筒状に曲げ加工した金属板製のワークを突合せ溶接する際に、ワークの円周方向の両端を密着状態で突合せることができ、穴あき等の溶接不良の無い真円度の高いパイプを作製することができるようにしたパイプの溶接方法及びパイプの水平自動溶接装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1の発明は、円筒状に曲げ加工した金属板製のワークを水平姿勢のマンドレルに挿着し、ワークの円周方向の一端をマンドレルに上下動自在に設けたセンタープレートに押し当て、この状態でワークの円周方向の一端部をクランプによりマンドレルに設けたバックバー上へ軽く押圧し、次に、センタープレートを下降させると共に、ワークの円周方向の他端部をクランプによりバックバー上へ軽く押圧し、引き続き、マンドレルの基端部上面及び先端部上面に夫々配設したタブ材の何れか一方のタブ材を他方のタブ材側へ移動させ、両タブ材でワークを長手方向両側から加圧状態で挾持してワークの長手方向両端の軸心方向のズレを修正すると共に、ワークの長手方向両端にタブ材を夫々密着させ、その後、ワークのセンタープレートに当接させた方の一端部をクランプによりバックバー上へ強く押圧固定し、この状態でワークの下端部を押し上げると共に、ワークの両側面を両側方から加圧してワークの円周方向の両端を隙間無く密着状態で突合せた後、ワークの円周方向の他端部をクランプによりバックバー上へ強く押圧固定し、最後に、一方のタブ材から他方のタブ材へ向ってワークの突合せ部を溶接装置により突合せ溶接するようにしたことに特徴がある。
【0012】
本発明の請求項2の発明は、二つのタブ材によりワークを長手方向両側から挾持する際に、一方のタブ材をマンドレルへ固定状態にすると共に、他方のタブ材をタブ押しシリンダにより固定側のタブ材側へ移動させ、ワークを長手方向両側から加圧状態で挾持するようにしたことに特徴がある。
【0013】
本発明の請求項3の発明は、ワークの両側面を両側方から加圧する際に、ワークの長手方向の両端部両側面を加圧用シリンダにより両側方から加圧するようにしたことに特徴がある。
【0014】
本発明の請求項4の発明は、フレーム本体に水平姿勢で支持され、円筒状に曲げ加工した金属板製のワークを支持するマンドレルと、マンドレルの上面側に設けた長尺状のバックバーと、マンドレルに設けられ、ワークの円周方向の端面の位置決めを行う上下動自在なセンタープレートを備えたセンター位置決め機構と、マンドレルに設けられ、ワークを長手方向両側から挾持してワークの長手方向両端の軸心方向のズレを修正する二つのタブ材を備えたズレ修正機構と、マンドレルの上方位置に配設され、ワークの円周方向の両端部をバックバー上へクランプするクランプ機構と、マンドレルの下方側周囲に配設され、ワークの下端部を押し上げると共に、ワークの両側面を両側方から加圧してワークの円周方向の両端を隙間無く密着状態で突合せるワーク突合せ機構と、ワークの突合せ部を突合せ溶接する溶接装置とを具備したことに特徴がある。
【0015】
本発明の請求項5の発明は、ズレ修正機構が、マンドレルの基端部上面に固定状態で配設され、ワークの長手方向の一端に当接する固定側のタブ材と、マンドレルの先端部上面にマンドレルの長手方向へ移動自在に配設され、ワークの長手方向の他端に当接する可動側のタブ材と、可動側のタブ材を固定側のタブ材側へ移動させるタブ押しシリンダとから成り、可動側のタブ材をタブ押しシリンダにより固定側のタブ材側へ移動させ、両タブ材でワークを長手方向両側から加圧状態で挾持してワークの長手方向両端の軸心方向のズレを修正すると共に、両タブ材をワークの長手方向両端に夫々密着させる構成としたことに特徴がある。
【0016】
本発明の請求項6の発明は、ワーク突合せ機構が、マンドレルの下方位置に配設した昇降テーブルと、昇降テーブルを昇降自在に支持する昇降支持機構と、昇降テーブルに設けられ、昇降テーブルの上昇時にマンドレルに支持されたワークの下端部を押し上げるワーク受けローラと、昇降テーブルにマンドレルを挟んで対向状に設けられ、マンドレルに支持されたワークの両側面を両側方から加圧する左右の加圧機構とから構成されていることに特徴がある。
【0017】
本発明の請求項7の発明は、左右の加圧機構が、昇降テーブル上にマンドレルと直交する水平姿勢で設けた加圧用シリンダと、加圧用シリンダのロッドに設けられ、加圧用シリンダの伸長時にマンドレルに支持されたワークの側面に当接してワークの側面を加圧する加圧部材とから成り、昇降テーブルにマンドレルを挟んで二つずつ配設され、マンドレルに支持されたワークの長手方向の両端部両側面を両側方から加圧できるように構成されていることに特徴がある。
【0018】
本発明の請求項8の発明は、左右の二つの加圧機構が、昇降テーブルにマンドレルの長手方向へ移動調整自在に配設されていることに特徴がある。
【発明の効果】
【0019】
本発明の請求項1に記載のパイプの溶接方法は、マンドレルに挿着したワークの円周方向の一端をマンドレルに設けたセンタープレートに押し当ててこの状態でワークの一端部をクランプによりマンドレルに設けたバックバー上へ軽く押圧し、次に、センタープレートを下降させてワークの円周方向の他端部をクランプによりバックバー上へ軽く押圧し、引き続き、マンドレルの基端部上面及び先端部上面に夫々配設したタブ材の何れか一方のタブ材を他方のタブ材側へ移動させ、両タブ材でワークを長手方向両側から加圧状態で挾持してワークの長手方向両端の軸心方向のズレを修正すると共に、ワークの長手方向両端にタブ材を夫々密着させ、その後、ワークのセンタープレートに当接させた方の一端部をクランプによりバックバー上へ強く押圧固定し、この状態でワークの下端部を押し上げると共に、ワークの両側面を両側方から加圧してワークの円周方向の両端を隙間無く密着状態で突合せた後、ワークの円周方向の他端部をクランプによりバックバー上へ強く押圧固定し、最後に、一方のタブ材から他方のタブ材へ向ってワークの突合せ部を溶接装置により突合せ溶接するようにしているため、ワークの円周方向の両端が軸心方向へズレたり、或いは、ワークの突合せ部に隙間が生じると云うことがなく、ワークの円周方向の両端を完全に密着する状態で正確に突合せることができると共に、この状態でワークの突合せ部を突合せ溶接することができる。その結果、本発明の請求項1に記載のパイプの溶接方法を用いれば、穴あき等の溶接不良を生じることがなく、真円度の高いパイプを作製することができる。
又、本発明の請求項1に記載のパイプの溶接方法は、ワークの長手方向の両端に密着させた一方のタブ材から他方のタブ材へ向ってワークの突合せ部を突合せ溶接するようにしているため、ワークの突合せ部の両端に溶け落ち等の溶接欠陥を生じることがない。
【0020】
本発明の請求項2に記載のパイプの溶接方法は、一方のタブ材をマンドレルに固定状態にすると共に、他方のタブ材をタブ押しシリンダにより固定側のタブ材側へ移動させ、タブ押しシリンダを用いて両タブ材によりワークを長手方向両側から加圧状態で挾持するようにしているため、ワークの長手方向両端の軸心方向のズレをより一層確実且つ良好に修正することができる。
【0021】
本発明の請求項3に記載のパイプの溶接方法は、ワークの長手方向の両端部両側面を加圧用シリンダにより両側方から加圧するようにしているため、ワークの長手方向両端部に生じている隙間を確実に無くすことができ、ワークの円周方向の両端を隙間無く密着状態で確実且つ良好に突合せることができる。その結果、ワークの突合せ溶接時に発生する穴あき等の溶接不良を確実に防止することができる。
【0022】
本発明の請求項4に記載のパイプの水平自動溶接装置は、上記のパイプの溶接方法を好適に実施することができ、ワークの円周方向の両端を軸心方向へズレルことなく完全に密着する状態で正確に突合せることができると共に、この状態でワークの突合せ部を突合せ溶接することができる。その結果、穴あき等の溶接不良を生じることがなく、真円度の高いパイプを作製することができる。
【0023】
本発明の請求項5に記載のパイプの水平自動溶接装置は、ズレ修正機構が、マンドレルの基端部上面に固定状態で配設した固定側のタブ材と、マンドレルの先端部上面に配設した可動側のタブ材と、可動側のタブ材を固定側のタブ材側へ移動させるタブ押しシリンダとから成り、タブ押しシリンダを用いて両タブ材によりワークの長手方向両側から加圧状態で挾持する構成としているため、ワークの長手方向両端の軸心方向のズレをより一層確実且つ良好に修正することができる。
【0024】
本発明の請求項6に記載のパイプの自動水平溶接装置は、ワーク突合せ機構が、マンドレルの下方位置に配設した昇降テーブルと、昇降テーブルを昇降自在に支持する昇降支持機構と、昇降テーブルに設けられ、昇降テーブルの上昇時にマンドレルに支持されたワークの下端部を押し上げるワーク受けローラと、昇降テーブルにマンドレルを挟んで対向状に設けられ、マンドレルに支持されたワークの両側面を両側方から加圧する左右の加圧機構とから構成されているため、ワークの円周方向の両端を隙間無く密着状態で確実且つ良好に突合せることができる。
【0025】
本発明の請求項7に記載のパイプの自動水平溶接装置は、左右の加圧機構が、マンドレルと直交する水平姿勢で設けた流体圧シリンダと、流体圧シリンダのロッドに設けられ、流体圧シリンダの伸長時にマンドレルに支持されたワークの側面に当接してワークの側面を加圧する加圧部材とを備えており、昇降テーブルにマンドレルを挟んで二つずつ配設され、マンドレルに支持されたワークの長手方向の両端部両側面を加圧用シリンダにより加圧部材を介して両側方から加圧するようにしているため、ワークの長手方向両端部に生じている隙間を確実に無くすことができ、ワークの円周方向の両端を隙間無く密着状態で確実且つ良好に突合せることができる。
【0026】
本発明の請求項8に記載のパイプの自動水平溶接装置は、左右の二つの加圧機構が、昇降テーブルにマンドレルの長手方向へ移動調整自在に構成されているため、加圧機構をマンドレルの長手方向へ移動調整することによって、ワークの長さに関係なく、ワークの長手方向の両端部両側面を両側方から確実且つ良好に加圧することができる。その結果、ワークの長さに関係なく、ワークの円周方向の両端を隙間無く密着状態で確実且つ良好に突合せることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1及び図2は本発明のパイプの溶接方法に用いるパイプの水平自動溶接装置を示し、当該パイプの水平自動溶接装置は、ステンレス板や鋼板等の金属板を円筒状に曲げ加工して成るワークWの円周方向の両端を突合せ溶接してパイプを作製するものであり、円筒状に曲げ加工したワークWを突合せ溶接する際に、ワークWの円周方向の両端を軸心方向へズレルことなく密着状態で正確に突合せることができ、穴あき等の溶接不良の無い真円度の高いパイプを作製することができるものである。
【0028】
即ち、前記パイプの水平自動溶接装置は、ボックス状のフレーム本体1と、フレーム本体1に片持ち状態で支持され、ワークWを支持する水平姿勢のマンドレル2と、マンドレル2の上面側に設けたバックバー3と、マンドレル2に設けられ、ワークWの両端がバックバー3上で突合されるようにワークWの端面の位置決めを行うセンター位置決め機構4と、マンドレル2に設けられ、ワークWを長手方向両側から挾持してワークWの長手方向両端の軸心方向のズレを修正する二つのタブ材18を備えたズレ修整機構5と、マンドレル2の上方位置に配設され、ワークWの円周方向の両端部をバックバー3上へクランプするクランプ機構6と、マンドレル2の下方側周囲に配設され、ワークWの下端部を押し上げると共に、ワークWの両側面を両側方から加圧してワークWの円周方向の両端を隙間無く密着状態で突合せるワーク突合せ機構7と、マンドレル2の上方位置に配設され、ワークWの突合せ部を突合せ溶接する溶接装置8(この例では、TIG溶接装置)とから構成されている。
【0029】
具体的には、前記フレーム本体1は、図1及び図2に示す如く、上部に前方へ水平姿勢で突出する長尺状の上部フレーム1aを有すると共に、下部に上部フレーム1aと同じ方向へ水平姿勢で突出して床面へ設置されるベース1bを備えており、フレーム本体1の内部には、溶接用電源装置、アルゴンガス等の溶接用ガスボンベ、コンプレッサ(何れも図示省略)等が夫々収容されている。
又、上部フレーム1aの上面には、先端部に溶接装置8の溶接条件や電極位置等を設定する操作盤9を取り付けた旋回アーム10が旋回自在に配設されている。
更に、ベース1bのマンドレル2の下方に位置する部分には、配電盤・スイッチボックス11が配設されている。
【0030】
前記マンドレル2は、図2及び図3に示す如く、アルミ合金等の金属材により断面形状が略長方形状の角柱状に形成された本体部2Aと、本体部2Aの先端にボルトにより取り付けられ、上部フレーム1aの先端部に設けたマンドレル受け12に抜き差し自在に挿入される受け軸2aを有する受け部2Bと、本体部2Aの基端に連設された断面形状が円形の保持部2Cとから成り、保持部2Cをフレーム本体1に設けたマンドレルガイド13に挿着することによって、フレーム本体1に片持ち状態で且つ水平姿勢で支持されている。
又、マンドレル2の本体部2Aの上面には、長尺状のバックバー3とズレ修整機構5の固定側のタブ材18が着脱自在に嵌め込まれる取付け溝2bがマンドレル2の長手方向に沿って形成されている。この取付け溝2bの底面には、アルゴンガス等のシールドガスが流れる細幅のガス溝2cがマンドレル2の長手方向に沿って形成されていると共に、センター位置決め機構4の駆動部17が設けられる凹部2dが複数個所形成されている。
更に、マンドレル2の本体部2Aには、ガス溝2cへアルゴンガス等のシールドガスを供給するためのガス供給口(図示省略)と、凹部2dの底面に形成したピストン穴2eへ作動流体として圧縮空気を供給する圧縮空気供給口2hとが夫々形成されている。
【0031】
そして、マンドレル2は、ワークWの突合せ作業時や溶接作業時等には先端側の受け部2Bがマンドレル受け12により支持されており、マンドレルガイド13及びマンドレル受け12により両持ち状態となっている。
尚、マンドレル受け12は、ロータリーアクチュエータ14により水平位置から鉛直位置に亘って揺動するように構成されており、マンドレル受け12を水平位置から鉛直位置へ回動させ、マンドレル受け12に形成した支持穴にマンドレル2の受け軸2aを挿入することによって、マンドレル2の先端部を支持することができるようになっている。
【0032】
前記バックバー3は、図4乃至図6に示す如く、銅材により断面形状が長方形の長尺な各柱状に形成した左右のバックバー3′,3′から成り、左右のバックバー3′,3′を対向させた状態で且つ左右のバックバー3′,3′の間にスリット状の溝3aが形成されるようにマンドレル2の取付け溝2bに着脱自在に嵌め込まれている。
又、マンドレル2の取付け溝2bに嵌め込まれたバックバー3は、左右のバックバー3′,3′を複数本のボルト15でマンドレル2側へ締め付け固定することによって、マンドレル2にその軸心方向へ沿う姿勢で取り付けられる。
このバックバー3は、ワークWの円周方向の両端を突合せ溶接する際に余分な熱を吸収してビードの溶け落ちや穴あき、ワークWの熱ひずみ等を防止すると共に、ワークWの突合せ部の裏面側にシールドガスを流して溶接部の酸化を防止するものである。
又、左右のバックバー3′,3′間に形成されたスリット状の溝3aは、センター位置決め機構4のセンタープレート16を遊嵌状態で挿入すると共に、アルゴンガス等のシールドガスを流すためのものである。
尚、バックバー3をマンドレル2に取り付けたときには、左右のバックバー3′,3′間に幅が0.7mmのスリット状の溝3aが形成され、又、左右のバックバー3′,3′の上面がマンドレル2の本体部2Aの上面から上方へ3mm程度突出するようになっている。
【0033】
前記センター位置決め機構4は、ワークWの円周方向の両端がバックバー3のスリット状の溝3a上で突合されるようにワークWの円周方向の端面の位置決めを行うものであり、図4乃至図6に示す如く、バックバー3のスリット状の溝3a内に上下動自在に挿入された薄鋼板製の長尺状のセンタープレート16と、マンドレル2の本体部2Aに形成した凹部2dに設けられ、センタープレート16を上下動させるピストン構造の駆動部17とから構成されている。
【0034】
即ち、センタープレート16は、図5及び図6に示す如く、バックバー3のスリット状の溝3aに遊嵌状態で上下動自在に挿入されており、その上端部がバックバー3の上面から上方へ突出可能になっていると共に、バックバー3の上面から突出した上端部の側面にワークWの円周方向の端面が当接するようになっている。このセンタープレート16の厚みは、バックバー3のスリット状の溝3aの幅よりも薄くなるように設定されている。その結果、センタープレート16をバックバー3のスリット状の溝3aに挿入したときには、センタープレート16の側面とバックバー3との間にアルゴンガス等のシールドガスが流れるスリット状の間隙が形成されることになる。
【0035】
一方、駆動部17は、図5及び図6に示す如く、本体部2Aの各凹部2dに上下動自在に嵌め込まれ、センタープレート16が起立姿勢でボルトにより支持固定された支持盤17aと、支持盤17aの下面側に設けられ、凹部2dの底面に形成したピストン穴2eにOリング17bを介して上下方向へ摺動自在に挿入されたピストン17cと、左右のバックバー3′,3′と支持盤17aとの間に夫々介設され、支持盤17a及びピストン17cを下方へ附勢してセンタープレート16の上端部をバックバー3のスリット状の溝3a内へ位置させる復帰用の圧縮スプリング17dとから構成されており、コンプレッサ(図示省略)からの圧縮空気を圧縮空気供給口2hからピストン穴2eへ供給すると、ピストン17c、支持盤17a及びセンタープレート16が圧縮スプリング17dの弾性力に抗して上昇し、センタープレート16の上端部がバックバー3の上面から上方へ突出し、又、圧縮空気の供給を停止すると、圧縮スプリング17dの弾性力により支持盤17a、ピストン17c及びセンタープレート16が下降し、センタープレート16の上端部がバックバー3のスリット状の溝3a内へ収納されるようになっている。
【0036】
前記ズレ修整機構5は、ワークWを長手方向両側から加圧状態で挾持してワークWの長手方向両端の軸心方向のズレを修正すると共に、ワークWの円周方向の両端を突合せ溶接する際にワークWの長手方向両端部の溶け落ちを防止する機能を有するものである。
【0037】
即ち、ズレ修整機構5は、図4、図7乃至図9に示す如く、マンドレル2の本体部2Aの基端側で且つ取付け溝2bに挿入固定され、ワークWの長手方向の一端に当接するブロック状(又は板状)の固定側のタブ材18と、マンドレル2の受け部2B上面に形成した溝2f内に摺動自在に挿入され、マンドレル2の軸心方向へ往復移動自在なブロック材19と、ブロック材19の上面にビスにより固定され、ワークWの長手方向の他端に当接する板状の可動側のタブ材18と、マンドレル2の受け部2Bに内蔵され、可動側のタブ材18を固定側のタブ材18側へ移動させるタブ押しシリンダ20とから構成されている。
又、タブ押しシリンダ20は、マンドレル2の受け部2Bに形成したピストン穴2gにOリング20aを介して摺動自在に挿入され、マンドレル2の軸心方向へ往復移動するピストン20bと、ピストン20bに連設され、可動側のタブ材18を固定したブロック材19が連結固定されるロッド20cと、ロッド20cと本体部2A先端との間に介設され、ピストン20b及びロッド20cをマンドレル2の先端方向へ押圧附勢する圧縮スプリング20dとから成り、コンプレッサからの圧縮空気を受け部2Bに形成した圧縮空気供給口2iからピストン20bの前面側へ供給すると、ピストン20b及びロッド20cが圧縮スプリング20dの弾性力に抗してマンドレル2の基端方向へ移動すると共に、これに伴って可動側のタブ材18がブロック材19を介して固定側のタブ材18側へ移動し、又、圧縮空気の供給を停止すると、圧縮スプリング20dの弾性力によりピストン20b及びロッド20cがマンドレル2の先端方向へ復帰し、これに伴って可動側のタブ材18も元の位置へ復帰するように構成されている。
【0038】
而して、このズレ修整機構5によれば、マンドレル2にワークWを挿着してワークWの円周方向の両端をバックバー3上に位置させた後、タブ押しシリンダ20に圧縮空気を供給して作動させると、ピストン20b、ロッド20c、ブロック材19及び可動側のタブ材18がマンドレル2の基端方向へ移動し、固定側のタブ材18と可動側のタブ材18とによりワークWを長手方向両側から加圧状態で挾持してワークWの長手方向両端の軸心方向のズレを修正すると共に、両タブ材18がワークWの長手方向両端に密着し、又、圧縮空気の供給を停止すると、ピストン20b、ロッド20c、ブロック材19及び可動側のタブ材18が圧縮スプリング20dの弾性力によりマンドレル2の先端方向へ移動して、ワークWの長手方向に於ける加圧状態が解除されるようになっている。
【0039】
前記クランプ機構6は、ワークWの円周方向の両端部をバックバー3上へ動ける程度に軽く押圧すると共に、ワークWの円周方向の両端を完全に突合せた状態でバックバー3上へ強く押圧固定するものであり、図10に示す如く、マンドレル2の上方位置に対向状に配置され、上部フレーム1aにヒンジ21を介して上下方向へ揺動自在に支持された左右の支持板22と、両支持板22の先端部に取り付けられ、マンドレル2に支持されたワークWの両端部上面に当接する銅材製の左右のクランプ23と、上部フレーム1aと左右の支持板22との間に夫々介設され、圧縮空気の供給により膨張して左右の支持板22及び左右のクランプ23を下方へ押し下げるエアーチューブ24と、上部フレーム1aと左右の支持板22との間に夫々介設され、左右の支持板22及び左右のクランプ23を上方へ附勢する引張りスプリング25と、左右の支持板22及び左右のクランプ23を水平移動させて左右のクランプ23間の間隙を調整する調整ネジ26等から構成されている。
【0040】
而して、このクランプ機構6によれば、コンプレッサからエアーチューブ24に圧縮空気を供給し、エアーチューブ24を少しだけ膨張させると、左右の支持板22及び左右のクランプ23が引張りスプリング25の弾性力に抗して下方へ揺動し、左右のクランプ23がマンドレル2に支持されたワークWの両端部に軽く当接してワークWの両端部をバックバー3上へ動ける程度に軽く押圧し、又、エアーチューブ24を大きく膨張させると、同じく左右の支持板22及び左右のクランプ23が引張りスプリング25の弾性力に抗して下方へ揺動し、左右のクランプ23がマンドレル2に支持されたワークWの両端部に強く当接してワークWの両端部をバックバー3上へ強く押圧固定し、更に、圧縮空気の供給を停止すると、左右の支持板22及び左右のクランプ23が引張りスプリング25の弾性力により上方へ揺動し、ワークWの押圧状態が解除されるようになっている。
【0041】
前記ワーク突合せ機構7は、マンドレル2に支持されたワークWの下端部を押し上げると共に、ワークWの両側面を両側方から加圧してワークWの円周方向の両端を隙間無く密着状態で突合せるものであり、図11乃至図14に示す如く、マンドレル2の下方位置に配設した昇降テーブル27と、配電盤・スイッチボックス11の上面に配設され、昇降テーブル27を昇降自在に支持する昇降支持機構28と、昇降テーブル27の上面に設けられ、昇降テーブル27の上昇時にマンドレル2に支持されたワークWの下端部を押し上げるワーク受けローラ29と、昇降テーブル27の上面にマンドレル2を挟んで対向状に設けられ、マンドレル2に支持されたワークWの両側面を両側方から加圧する左右の四つの加圧機構30とから構成されている。
【0042】
即ち、昇降テーブル27は、厚肉の金属板により長方形状に形成されており、マンドレル2の下方位置で且つ配電盤・スイッチボックス11上に昇降支持機構28を介して昇降自在に支持されている。
この昇降テーブル27には、図11及び図12に示す如く、昇降支持機構28のガイド軸28gが摺動自在に挿入される穴27aと、昇降テーブル27の昇降時に昇降支持機構28の駆動モータ28dとの干渉を回避するための開口27bと、加圧機構30をマンドレル2の長手方向に沿って移動調整自在に取り付けるためのマンドレル2に沿う左右の凸状のガイド溝27cとが夫々形成されている。
又、昇降テーブルの外周縁部には、昇降支持機構28を覆う安全カバー31が垂下状態で取り付けられている。
【0043】
又、昇降支持機構28は、図11乃至図14に示す如く、配電盤・スイッチボックス11の上面に設けた基板28aに軸受28bを介して鉛直姿勢で正逆回転自在に支持された四本のネジ軸28cと、昇降テーブル27の下面に取り付けられ、四本のネジ軸28cが夫々螺挿される四つのブロックナット28dと、基板28a上に配設した駆動モータ28eと、ネジ軸28cと駆動モータ28eとの間に介設され、駆動モータ28eの回転力を四本のネジ軸28cに伝達して四本のネジ軸28cを同期的に同じ方向へ正逆回転させるベルト伝動機構28fと、基板28aの四隅に立設され、上端部が昇降テーブル27の穴27aに摺動自在に挿入された四本のガイド軸28gとから成り、駆動モータ28e及びベルト伝動機構により四本のネジ軸28cを同期的に同じ方向へ正逆回転させると、廻り止めされた四つのブロックナット28dが各ネジ軸28cに沿って上下方向へ往復移動し、昇降テーブル27を昇降させるようになっている。
【0044】
更に、ワーク受けローラ29は、図11乃至図14に示す如く、昇降テーブル27の上面に配設した支持枠29aに水平姿勢で取り付けられ、マンドレル2の長手方向に沿う長尺板状の支持板28bと、支持板29b上に一定間隔毎に配設した複数のボール受け29cと、各ボール受け29cに回転自在に保持されたボール29dとから成り、昇降テーブル27を上昇させて複数のボール29dをマンドレル2に支持されたワークWの下端部に押し当てることによって、ワークWの下端部を押し上げることができるようになっている。
【0045】
そして、左右の四つの加圧機構30は、図11乃至図14に示す如く、昇降テーブル27上に設けた支持台30aと、支持台30aにマンドレル2と直交する水平姿勢で取り付けた加圧用シリンダ30bと、加圧用シリンダ30bのロッドに設けられ、加圧用シリンダ30bの伸長時にマンドレル2に支持されたワークWの側面に当接してワークWの側面を加圧する加圧部材30cとから夫々構成されており、昇降テーブル27にマンドレル2を挟んで二つずつ配設され、マンドレル2に支持されたワークWの長手方向の両端部両側面を両側方から加圧できるように構成されている。
又、各加圧機構30は、その支持台30aが昇降テーブル27に形成した凸状のガイド溝27cにボルト及びナットから成る緊締具30dにより固定されており、緊締具30dを弛めることによって、支持台30aが昇降テーブル27のガイド溝27cに沿って移動可能となり、又、緊締具30dを締め付けることによって、支持台30aを昇降テーブル27に固定できるようになっている。即ち、各加圧機構30は、マンドレル2の長手方向へ移動調整自在となっており、マンドレル2に支持されたワークWの長さに関係なく、各加圧機構30を移動調整することによって、ワークWの長手方向の両端部両側面を両側方から加圧することができるようになっている。
【0046】
尚、図11に於いて、30eは加圧部材30cを廻り止めして案内するガイド棒、30fはガイド棒30eに設けたストッパーである。
【0047】
前記溶接装置8(TIG溶接装置)は、図2に示す如く、上部フレーム1aの上面にガイドレール32を介してマンドレル2の長手方向へ往復移動自在に配設した走行台33と、走行台33に昇降自在に支持され、先端部からアルゴンガス等のシールドガスを流すと共に、タングステン電極棒を挿着した溶接用トーチ34と、溶接用トーチ34を昇降動させるサーボモータ等から成るトーチ上下駆動装置(図示省略)と、溶接開始前に於けるタングステン電極棒とワークWの接触事故を直ちに検知する電極接触検知装置(図示省略)と、走行台33をマンドレル2の長手方向へ往復走行させるモータ及びボールネジ機構から成る駆動装置(図示省略)等から構成されており、ワークWの突合せ部を突合せ溶接する際に溶接用トーチ34の先端が自動的に高さ調整され且つ走行台33及びこれに支持された溶接用トーチ34が所定の速度でワークWの突合せ部に沿って直線移動するようになっている。
【0048】
次に、上述したパイプの水平自動溶接装置を用いて円筒状に曲げ加工したワークWの円周方向の両端を突合せ溶接する場合について説明する。
【0049】
先ず、円筒状に曲げ加工したワークWを片持ち状態のマンドレル2の先端からマンドレル2の本体部2Aに挿着し、固定側のタブ材18と可動側のタブ材18との間に位置させた後、マンドレル2の受け部2Bをマンドレル受け12により支持して長尺状のマンドレル2の撓みを防止する。
【0050】
次に、マンドレル2に設けたセンター位置決め機構4のセンタープレート16を駆動部17により上昇させてセンタープレート16の上端部をバックバー3の上面から上方へ突出させ、マンドレル2に挿着したワークWの円周方向の一端をセンタープレート16の上端部側面に当接させると共に、ワークWの長手方向の一端を固定側のタブ材18に当接させ、この状態でクランプ機構6の一方のクランプ23(センタープレート16に当接しているワークWの一端部上方に位置するクランプ23)を下降させ、当該クランプ23によりワークWの円周方向の一端部をバックバー3上へ軽く押圧する(図15及び図16参照)。この実施の形態では、ワークWの一端部を一方のクランプ23により約0.15MPaの圧力でバックバー3上へ軽く押圧している。
【0051】
ワークWの円周方向の一端部を一方のクランプ23によりバックバー3上へ軽く押圧したら、センター位置決め機構4の駆動部17に供給されている圧縮空気の供給を停止する。そうすると、復帰用の圧縮スプリング17dの弾性力によりセンタープレート16が下降し、センタープレート16の上端部がバックバー3のスリット状の溝3a内に収納される。
【0052】
センタープレート16が下降したら、クランプ機構6の他方のクランプ23を下降させ、ワークWの円周方向の他端部を他方のクランプ23によりバックバー3上へ軽く押圧する(図17参照)。この実施の形態に於いては、ワークWの他端部を他方のクランプ23により約0.15MPaの圧力でバックバー3上へ軽く押圧している。
【0053】
ワークWの円周方向の両端部がクランプ機構6の左右のクランプ23によりバックバー3上へ軽く押圧されたら、ズレ修整機構5を作動させて可動側のタブ材18をタブ押しシリンダ20により固定側のタブ材18側へ移動させる。これによって、ワークWが長手方向両側から前記両タブ材18により加圧状態で挾持される(図18参照)。このとき、ワークWの円周方向の両端部が左右のクランプ23によりバックバー3上へ軽く押圧されているため、ワークWの両端が軸心方向へズレている場合には、ワークWの円周方向の両端部がバックバー3と左右のクランプ23との間で軸心方向へ動くことになる。その結果、ワークWの長手方向両端の軸心方向のズレが強制的に修正されると共に、ワークWの長手方向両端にタブ材18が夫々密着状態で当接することになる。
【0054】
その後、ワークWのセンタープレート16に当接していた方の一端部をクランプ機構6の一方のクランプ23によりバックバー3上へ強く押圧固定する。これにより、ワークWの円周方向の一端部は、バックバー3上で動かないように固定されることになり、ワークWの一端部先端が基準面としての機能を果たすことになる。この実施の形態では、ワークWの一端部を一方のクランプ23により約0.3MPaの圧力でバックバー3上へ強く押圧固定している。
【0055】
引き続き、昇降テーブル27を昇降支持機構28により上昇させてマンドレル2に支持されているワークWの下端部をワーク受けローラ29により押し上げると共に、左右の加圧機構30の加圧部材30cを加圧用シリンダ30bにより前進させてワークWの長手方向の両端部両側面を両側方から加圧し、ワークWの円周方向の両端を突合せる(図19参照)。
即ち、ワークWの下端部がワーク受けローラ29により押し上げられると、ワークWの形状が円筒形状から楕円形状に変化し、ワークWの円周方向の両端部が一直線状に配置されてワークWの両端を密着させ易くなる。又、ワークWの長手方向の両端部両側面が左右の加圧機構30の加圧部材30cにより両側方から加圧されると、クランプ機構6の他方のクランプ23により軽くバックバー3上へ押圧されているワークWの円周方向の他端部が、一方のクランプ23により強くバックバー3上へ押圧固定されているワークWの円周方向の一端部側へ移動し、ワークWの円周方向の両端が密着状態で突合される。このとき、バックバー3上へ強く押圧固定されているワークWの一端部端面が移動しないで基準面となり、この基準面にワークWの他端部端面が突合されるため、ワークWの円周方向の両端はバックバー3のスリット状の溝3a上で正確且つ確実に突合されることになる。
【0056】
ワークWの円周方向の両端が密着状態で突合されたら、クランプ機構6の他方のクランプ23により軽くバックバー3上へ押圧されているワークWの円周方向の他端部を他方のクランプ23によりバックバー3上へ強く押圧固定する。この実施の形態では、ワークWの他端部を他方のクランプ23により約0.3MPaの圧力でバックバー3上へ強く押圧固定している。
【0057】
そして、ワークWの円周方向の両端がバックバー3のスリット状の溝3a上で突合せ固定されたら、マンドレル2のガス供給口(図示省略)からバックバー3のスリット状の溝3a内にアルゴンガス等のシールドガスを供給しつつ、溶接装置8によりワークWの突合せ部を突合せ溶接する(図20参照)。
即ち、溶接用トーチ34が下降してタングステン電極棒の先端を固定側のタブ材18の表面に臨ませ、この状態でタングステン電極棒と固定側のタブ材18との間にアークを発させ、このアークが安定した状態になってから走行台33が駆動装置(図示省略)により前進して溶接用トーチ34をワークWの突合せ部に沿って所定の速度で走行させ、ワークWの突合せ部を順次突合せ溶接した後、溶接用トーチ34が可動側のタブ材18の上へ来た時点で通電を停止してアークをストップする。このように、固定側のタブ材18を溶接の開始点、可動側のタブ材18を溶接の終了点とすれば、ワークWの突合せ部を安定したアーク状態で突合せ溶接することができるうえ、ワークWの溶接開始部及び溶接終了部に溶け落ち等の溶接欠陥の無い突合せ溶接を行えることになる。
【0058】
ワークWの突合せ溶接が終了すると、バックバー3へのシールドガスの供給を停止すると共に、溶接装置8の溶接用トーチ34が元の位置に復帰する。その後、左右の加圧機構30の加圧部材30cが後退すると共に、昇降テーブル27が下降する。又、クランプ機構6によるワークWの押圧状態が解除されると共に、マンドレル受け12が鉛直位置から水平位置へ回動してマンドレル2の先端を開放する。これにより、突合せ溶接されたワークW(パイプ)をマンドレル2から引き抜くことができる。
【0059】
このように、パイプの水平自動溶接装置8を用いて円筒状に曲げ加工したワークWを突合せ溶接すると、ワークWの円周方向の両端を軸心方向へズレルことなく完全に密着する状態で正確に突合せることができると共に、この状態でワークWの突合せ部を突合せ溶接することができる。その結果、穴あき等の溶接不良を生じることがなく、真円度の高いパイプを作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明のパイプの溶接方法に用いるパイプの水平自動溶接装置の一部切欠正面図である。
【図2】同じくパイプの水平自動溶接装置の一部切欠側面図である。
【図3】水平自動溶接装置のマンドレルを示し、(A)はマンドレルの側面図、(B)はマンドレルの平面図である。
【図4】バックバー、センター位置決め機構及びズレ修正機構を設けたマンドレルを示し、(A)はマンドレルの側面図、(B)はマンドレルの平面図である。
【図5】バックバー及びセンター位置決め機構を設けたマンドレルの要部を示し、(A)はマンドレルの要部の側面図、(B)はマンドレルの要部の平面図である。
【図6】バックバー及びセンター位置決め機構を設けたマンドレルの拡大縦断正面図である。
【図7】ズレ修正機構を設けたマンドレルの先端部の平面図である。
【図8】ズレ修正機構を設けたマンドレルの先端部を示し、(A)はズレ修正機構の非作動時の縦断側面図、(B)ズレ修正機構の作動時の縦断側面図である。
【図9】ズレ修正機構を設けたマンドレルの縦断正面図である。
【図10】クランプ機構の縦断正面図である。
【図11】ワーク突合せ機構の正面図である。
【図12】ワーク突合せ機構の平面図である。
【図13】ワーク突合せ機構の一部切欠側面図である。
【図14】ワーク突合せ機構の縦断正面図である。
【図15】ワークの円周方向の一端部を位置決めしてクランプによりバックバー上へ軽くクランプした状態の縦断正面図である。
【図16】図15の一部省略平面図である。
【図17】ワークの円周方向の両端部を左右のクランプによりバックバー上へ軽くクランプした状態の縦断正面図である。
【図18】ワークの軸心方向のズレを修正した状態の一部省略平面図である。
【図19】ワークの円周方向の両端をワーク突合せ機構により突合せた状態の一部省略縦断正面図である。
【図20】ワークの突合せ部を溶接している状態の一部省略縦断正面図である。
【図21】曲げ加工により形成したワークの平面図である。
【図22】突合せ溶接したワークの平面図である。
【図23】仮付け溶接したワークの平面図である。
【図24】ワークの突合せ部の拡大正面図である。
【図25】突合せ溶接により作製したパイプの正面図である。
【符号の説明】
【0061】
1はフレーム本体、2はマンドレル、3はバックバー、4はセンター位置決め機構、5はズレ修整機構、6はクランプ機構、7はワーク突合せ機構、8は溶接装置、16はセンタープレート、18はタブ材、20はタブ押しシリンダ、27は昇降テーブル、28は昇降支持機構、29はワーク受けローラ、30は加圧機構、30bは加圧用シリンダ、30cは加圧部材、Wはワーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状に曲げ加工した金属板製のワーク(W)を水平姿勢のマンドレル(2)に挿着し、ワーク(W)の円周方向の一端をマンドレル(2)に上下動自在に設けたセンタープレート(16)に押し当て、この状態でワーク(W)の円周方向の一端部をクランプ(23)によりマンドレル(2)に設けたバックバー(3)上へ軽く押圧し、次に、センタープレート(16)を下降させると共に、ワーク(W)の円周方向の他端部をクランプ(23)によりバックバー(3)上へ軽く押圧し、引き続き、マンドレル(2)の基端部上面及び先端部上面に夫々配設したタブ材(18)の何れか一方のタブ材(18)を他方のタブ材(18)側へ移動させ、両タブ材(18)でワーク(W)を長手方向両側から加圧状態で挾持してワーク(W)の長手方向両端の軸心方向のズレを修正すると共に、ワーク(W)の長手方向両端にタブ材(18)を夫々密着させ、その後、ワーク(W)のセンタープレート(16)に当接させた方の一端部をクランプ(23)によりバックバー(3)上へ強く押圧固定し、この状態でワーク(W)の下端部を押し上げると共に、ワーク(W)の両側面を両側方から加圧してワーク(W)の円周方向の両端を隙間無く密着状態で突合せた後、ワーク(W)の円周方向の他端部をクランプ(23)によりバックバー(3)上へ強く押圧固定し、最後に、一方のタブ材(18)から他方のタブ材(18)へ向ってワーク(W)の突合せ部を溶接装置により突合せ溶接するようにしたことを特徴とするパイプの溶接方法。
【請求項2】
二つのタブ材(18)によりワーク(W)を長手方向両側から挾持する際に、一方のタブ材(18)をマンドレル(2)へ固定状態にすると共に、他方のタブ材(18)をタブ押しシリンダ(20)により固定側のタブ材(18)側へ移動させ、ワーク(W)を長手方向両側から加圧状態で挾持するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のパイプの溶接方法。
【請求項3】
ワーク(W)の両側面を両側方から加圧する際に、ワーク(W)の長手方向の両端部両側面を加圧用シリンダ(30b)により両側方から加圧するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のパイプの溶接方法。
【請求項4】
フレーム本体(1)に水平姿勢で支持され、円筒状に曲げ加工した金属板製のワーク(W)を支持するマンドレル(2)と、マンドレル(2)の上面側に設けた長尺状のバックバー(3)と、マンドレル(2)に設けられ、ワーク(W)の円周方向の端面の位置決めを行う上下動自在なセンタープレート(16)を備えたセンター位置決め機構(4)と、マンドレル(2)に設けられ、ワーク(W)を長手方向両側から挾持してワーク(W)の長手方向両端の軸心方向のズレを修正する二つのタブ材(18)を備えたズレ修正機構(5)と、マンドレル(2)の上方位置に配設され、ワーク(W)の円周方向の両端部をバックバー(3)上へクランプするクランプ機構(6)と、マンドレル(2)の下方側周囲に配設され、ワーク(W)の下端部を押し上げると共に、ワーク(W)の両側面を両側方から加圧してワーク(W)の円周方向の両端を隙間無く密着状態で突合せるワーク突合せ機構(7)と、ワーク(W)の突合せ部を突合せ溶接する溶接装置(8)とを具備したことを特徴とするパイプの水平自動溶接装置。
【請求項5】
ズレ修正機構(5)は、マンドレル(2)の基端部上面に固定状態で配設され、ワーク(W)の長手方向の一端に当接する固定側のタブ材(18)と、マンドレル(2)の先端部上面にマンドレル(2)の長手方向へ移動自在に配設され、ワーク(W)の長手方向の他端に当接する可動側のタブ材(18)と、可動側のタブ材(18)を固定側のタブ材(18)側へ移動させるタブ押しシリンダ(20)とから成り、可動側のタブ材(18)をタブ押しシリンダ(20)により固定側のタブ材(18)側へ移動させ、両タブ材(18)でワーク(W)を長手方向両側から加圧状態で挾持してワーク(W)の長手方向両端の軸心方向のズレを修正すると共に、両タブ材(18)をワーク(W)の長手方向両端に夫々密着させる構成としたことを特徴とする請求項4に記載のパイプの水平自動溶接装置。
【請求項6】
ワーク突合せ機構(7)は、マンドレル(2)の下方位置に配設した昇降テーブル(27)と、昇降テーブル(27)を昇降自在に支持する昇降支持機構(28)と、昇降テーブル(27)に設けられ、昇降テーブル(27)の上昇時にマンドレル(2)に支持されたワーク(W)の下端部を押し上げるワーク受けローラ(29)と、昇降テーブル(27)にマンドレル(2)を挟んで対向状に設けられ、マンドレル(2)に支持されたワーク(W)の両側面を両側方から加圧する左右の加圧機構(30)とから構成されていることを特徴とする請求項4に記載のパイプの水平自動溶接装置。
【請求項7】
左右の加圧機構(30)は、昇降テーブル(27)上にマンドレル(2)と直交する水平姿勢で設けた加圧用シリンダ(30b)と、加圧用シリンダ(30b)のロッドに設けられ、加圧用シリンダ(30b)の伸長時にマンドレル(2)に支持されたワーク(W)の側面に当接してワーク(W)の側面を加圧する加圧部材(30c)とから成り、昇降テーブル(27)にマンドレル(2)を挟んで二つずつ配設され、マンドレル(2)に支持されたワーク(W)の長手方向の両端部両側面を両側方から加圧できるように構成されていることを特徴とする請求項6に記載のパイプの水平自動溶接装置。
【請求項8】
左右の二つの加圧機構(30)は、昇降テーブル(27)にマンドレル(2)の長手方向へ移動調整自在に配設されていることを特徴する請求項7に記載のパイプの水平自動溶接装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2009−142840(P2009−142840A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321520(P2007−321520)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(591286823)
【Fターム(参考)】