説明

パイル織物およびパイル織物製造方法

【課題】この発明は、パイル表面に凹凸を有し、変化に富んだ外観や触感を有するパイル織物およびその製造方法を提供すことを目的とする。
【解決手段】上記の目的を解決するために、この発明のパイル織物製造方法は、熱収縮率の異なる複数のパイル糸2,3を用いて製織し、熱処理を行うことによって、熱収縮率の大きいパイル糸2が現れた部分には低いパイル面4(凹部)を形成し、熱収縮率の小さいパイル糸3が現れた部分は、相対的に高いパイル面5(凸部)を形成して、凹凸を有するパイル面を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイル織物およびパイル織物製造方法に関するものであり、表面に凹凸を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のパイル織物は表面に一定の高さのパイル面が形成されており、全体的には凹凸感のない外観を有している。また、表面が平面であることから使用時の肌触りも単調であった。
【0003】
なお、先行文献1には、毛布に凹凸触感を表すために、熱収縮率を異にする2種類あるいは3種類以上の複数パイル糸を用い、これをダブルラッセル径編機によって径編みすることが記載されている。
【特許文献1】特開平10−259554号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のパイル織物は平坦なパイル面を有し、凹凸感がなく、外観も触感も単調で変化に乏しいものであった。タオルなどにおいて、刺繍を施したり、パイル面を構成しない部分的を形成して、文字や模様を表すことは行われているが手間のかかる作業であり、またその部分においてはパイル生地のもつ触感のよさが失われる。
【0005】
また、先行文献1に記載の発明は経編地である毛布に適用されるものであって、パイル織物ではない。また、熱処理を行った後にシャーリング加工を行うので、出来上がった毛布の表面は均一な平坦面である。したがって、熱収縮率を異にするパイル糸によって密度の違いが外観や触感に現れ、凹凸があるような感じを与えるであろうが、本当の凹凸ではない。
【0006】
この発明は、パイル表面に凹凸を有し、変化に富んだ外観や触感を有するパイル織物およびその製造方法を提供すことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を解決するために、この発明のパイル織物製造方法は、熱収縮率の異なる複数のパイル糸を用いて製織し、熱処理を行って熱収縮率の違いによる表面の凹凸を形成するものである。また、製織後、シャーリングを行ってから熱処理を行うようにしてもよい。綿糸と、ポリエステルと綿の混合糸とをパイル糸として使用するものとすることもできる。
【0008】
この発明のパイル織物は、異なるパイル高さによって表面に凹凸が形成されているものである。綿糸と、ポリエステルと綿の混合糸とをパイル糸として有し、綿糸による高いパイル面と、ポリエステルと綿の混合糸による低いパイル面によって表面に凹凸が形成されているものとすることもできる。
【発明の効果】
【0009】
この発明は、熱収縮率の異なるパイル糸によって、パイル高さのことなる表面を形成し、凹凸感・立体感があり、変化に富んだ触感を有するパイル織物を実現できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この発明を実施するための最良の形態について図面に基づいて説明する。図1は、この発明のパイル織物製造方法の例を示す説明図である。
【0011】
この発明においては熱収縮率の異なる複数のパイル糸2,3が使用される。ここで、熱収縮率の異なる複数のパイル糸には、熱収縮率の大きいパイル糸と小さいパイル糸の組合せのほか、熱収縮糸と綿糸のようにほとんど熱収縮を起こさない糸の組合せも含まれる。この実施形態では、熱収縮性ポリエステルと綿を混合して熱収縮率が30%程度のポリエステル混綿糸2と、綿糸3の2種類のパイル糸を準備した。一方の糸を上パイル糸とし、他方を下パイル糸となるようにボビンに整経する。
【0012】
織機としては例えばジャッガード機など通常のパイル織物用の織機を使用することができる。上下パイル糸の切り替えを行ってパイル織物1の表面に模様を構成するようにする。ここで、高いパイル面を形成する部分(凸部)には綿糸3が表面に表れるように、低いパイル面を形成する部分(凹部)にはポリエステル混綿糸2が表面に表れるように上下パイル糸の切り替えを行ってパイル織物地を作る。製織が完了した時点では、まだパイル面はほぼ均一の高さになっている(図1a)。
【0013】
ついで、パイル織物地に熱処理をほどこす。熱収縮糸が熱収縮するのに必要な熱を加える処理であればどのようなものでもよいが、ここでは洗浄したパイル織物地の乾燥処理を兼ねた熱処理を行った(図1b)。熱処理前においてはほぼ均一の高さのループを形成するパイル糸によって平坦なパイル面が構成されていたが、熱処理を行うことによって、ポリエステル混綿糸など熱収縮率の大きいパイル糸2は熱収縮を起こして、ループの高さが低くなる。一方、綿糸のパイル糸3はほとんど熱収縮を起こさないので、ループの高さは下がらない。したがって、熱収縮率の大きいパイル糸2が表れた部分ではパイル面が低くなって凹部4を形成し、一方、熱収縮率の低いパイル糸3(熱収縮をほとんど起こさない糸を含む)が表れた部分は相対的に高いパイル面5(凸部)を形成する。
【0014】
以上のようにして、パイル織物1の表面には凹凸が形成される。従来は、主に色の異なるパイル糸を使用して模様を形成していたが、この発明を適用すれば例えば同色系のパイル糸を使用しながらも凹凸による立体感のある模様を形成することができる。もちろん、熱収縮率だけでなく色も異なるパイル糸を使用してもよく、やはり立体感のある模様を形成できる。これらは、これまでのパイル織物にはない変化にとんだ、新しい印象の外観を形成する。また、パイル面に凹凸を有することによって、触感もこれまでにない新しい変化に富むものである。
【0015】
熱収縮率の異なる2種類のパイル糸を使用することによって、高低2段階の差がある凹凸を形成したが、さらに熱収縮率の異なる3種類以上のパイル糸を使用することによって、3段階あるいはそれ以上の高低のある凹凸面を形成することもできる。なお、ここで示した実施形態においては、整経ボビン、パイル織物用織機、洗浄装置、乾燥機(熱処理)など全て、従来のパイル織物用の設備が活用されており、設備や工程の大幅な変更を伴うことなく本発明を導入することができる。
【0016】
つぎに、本発明の別の実施の形態について説明をする。図2は、パイル織物の製造方法の別の例を示す説明図である。本例においても先の実施の形態と同様に、熱収縮性ポリエステルと綿を混合して熱収縮率が30%程度のポリエステル混綿糸2と、綿糸3の2種類のパイル糸を準備し、一方の糸を上パイル糸とし、他方を下パイル糸となるようにボビンに整経する。そして、やはり、凹部となる部分にはポリエステル混綿糸が表面に表れ、凸部となる部分には綿糸が表面に表れるように製織する(図2a)。この後、この実施の形態においてはパイル面のシャーリング加工を行う(図2b)。これによって、パイル糸のループの先端が切り取られて、やはり均一な高さのパイル面が形成される。シャーリング加工後、さらにプリント印刷を行ってもよい。
【0017】
つぎに、パイル織物を熱処理する(図2c)。これによって、熱収縮率の大きいパイル糸2は熱収縮を起こし、パイル高さが大きく下がる。したがって熱収縮率の大きいパイル糸2が現れた部分は、低いパイル面4(凹部)を形成する。一方、熱収縮率の小さいパイル糸3が現れた部分は、相対的に高いパイル面5(凸部)を形成する。このようにして、この実施の形態では、シャーリング加工を施した面においても凹凸を形成することができる。
【実施例1】
【0018】
本発明の実施例について説明する。本実施例では図1に示すパイル織物製造方法の形態に基く。パイル糸は2種類を使用し、それぞれを上下パイル糸として整経した。一方のパイル糸は30/2番手の双糸の綿糸である。他方のパイル糸は熱収縮性ポリエステルと綿を1/2ずつ混合したポリエステル綿混合糸であり、135℃以上の熱処理より35〜40%程度の熱収縮するものである。この2種類の糸は濃淡の異なる同色系の染色がされている。このパイル糸を使用して図1に示すパイル織物製造方法を適用しパイル織物を製造する。パイル織物には例えば花柄などを表すようにすると、同色系の濃淡による表現に加えてパイル面の凹凸によって陰影が効果的に表現される。これまでのパイル織物にはない斬新で高級感のある外観を有し、高級志向の用途など付加価値の高い製品にも適している。
【産業上の利用可能性】
【0019】
この発明は、凹凸を有するパイル面をもつパイル織物として、広く利用することができる。これまでにない新しく変化に富む外観と触感を有し、付加価値が高いものである。したがって、タオルなど以外にも高級な用途の織物として利用できるものである。しかも、既存の設備を活用することもでき、設備・生産工程を大幅に変更しなくても実施できるので、導入がしやすいものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】パイル織物の製造方法の例を示す説明図である。
【図2】パイル織物の製造方法の例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0021】
1.パイル織物
2.熱収縮率の高いパイル糸
3.熱収縮率の低いパイル糸
4.低いパイル面(凹部)
5.高いパイル面(凸部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱収縮率の異なる複数のパイル糸を用いて製織し、熱処理を行って熱収縮率の違いによる表面の凹凸を形成するパイル織物製造方法。
【請求項2】
製織後、シャーリングを行ってから熱処理を行う請求項1に記載のパイル織物製造方法。
【請求項3】
綿糸と、ポリエステルと綿の混合糸とをパイル糸として使用する請求項1または2に記載のパイル織物製造方法。
【請求項4】
異なるパイル高さによって表面に凹凸が形成されているパイル織物。
【請求項5】
綿糸と、ポリエステルと綿の混合糸とをパイル糸として有し、綿糸による高いパイル面と、ポリエステルと綿の混合糸による低いパイル面によって表面に凹凸が形成されている請求項4に記載のパイル織物。





【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−97169(P2006−97169A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−283391(P2004−283391)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(504365571)有限会社G.P. (2)
【Fターム(参考)】