説明

パイロット制御装置

【課題】 パイロット制御装置に関し、簡素な構成で、簡素な構成かつ低コストで、高度な制御性及び応答性を実現できるようにする。
【解決手段】 作業装置のオペレータに操作されて、その操作量に応じた電気信号を出力する操作装置1と、入力された電気信号の大きさに応じた油圧の第1パイロット圧油を出力する第1電油変換弁2と、電気信号の入力時に所定圧の第2パイロット圧油を出力する第2電油変換弁3と、第1パイロット圧油と第2パイロット圧油とのうちいずれか高圧の一方を選択し、制御弁6のパイロット圧油として出力する高圧選択弁5と、第2パイロット圧油の高圧選択弁5への流通を遮断しうるカット弁4と、操作装置1から出力された電気信号に応じて、カット弁4における第2パイロット圧油の流通を制御するコントローラ7とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の油圧駆動式の作業装置を搭載した作業機械において、作業装置を駆動するアクチュエータへの作動油流量を調整する制御弁のパイロット圧を制御するのに用いて好適な制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の油圧駆動系作業装置を搭載した作業機械には、作動油によって作業装置(例えばブーム装置やスティック装置,バケット装置等)を駆動するための油圧回路が構成されている。この油圧回路上には、エンジンの動力で作動する油圧ポンプや、油圧ポンプから供給される作動油によって作業装置を駆動する油圧アクチュエータ、油圧ポンプと油圧アクチュエータとを連結する油圧回路上に介装された制御弁、制御弁を開閉制御する操作装置等が設けられるようになっている。
【0003】
一般に操作装置は、作業機械のキャブ室内の操作レバーとともに設けられるようになっており、操作レバーの操作量に応じて制御弁の開度を制御することによって、各油圧アクチュエータへ供給される作動油流量をコントロールし作業装置に所望の動作をさせることができるようになっている。
このような油圧駆動式の作業機械の操作装置には、例えば特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1に記載の技術では、操作入力に比例した圧力、すなわち、パイロット圧をパイロットラインに発生させる操作レバーが用いられている。そして、パイロットラインに発生した圧力を制御弁(パイロット駆動式制御弁)のスプール両端の受圧部へ導入することによって、制御弁を開閉制御できるようになっている。
【0004】
ところで、特許文献1に記載されたような操作装置を用いた場合、操作レバーが備えられるキャブ室内と油圧回路上に介装される制御弁との間を、パイロット圧を伝達するパイロットラインで連結しなければならないため、車両上に多くのパイロットラインを這わすことになり、組立工数の低減及びコスト削減が難しい。
そこで近年、操作レバーと制御弁とをパイロットラインで連結するのではなく、図5に示すブロック構成図のように、操作レバーと制御弁とを電気回路で接続して、制御弁を電気的に制御する制御装置が開発されている。
【0005】
例えば、図5に示すように、操作量に応じた大きさの電気信号を出力する電気操作レバー1と、電気操作レバー1から出力された電気信号を制御弁6へのパイロット油圧信号へ変換する電油変換弁2とを備えた制御装置を作業機械の油圧回路に適用することにより、キャブ室内と制御弁6との間を連結するパイロットラインを廃して油圧ラインの簡素化を図ることができるようになっている。
【特許文献1】特開平9−273180号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図5に示されたような、入力された電気信号を制御弁6のパイロット油圧信号に変換して制御を行う方式の制御装置(以下、単に電子−油圧パイロット式の制御装置ともいう)では、制御弁6のパイロット油圧信号を出力する電油変換弁2に高度な制御性が求められるため、減圧弁方式の変換弁が用いられるようになっている。しかし、減圧弁方式の変換弁では、電気信号をパイロット油圧信号へ変換する際に生じる僅かな応答遅れによって、電気操作レバー1の操作に対する制御弁6の反応に僅かな遅れが生じる。
【0007】
つまり、電子−油圧パイロット式の制御装置では、電気信号の伝達及び変換にかかる時間分の僅かなロスによって、特許文献1に記載されたような操作レバーと制御弁とが直接パイロットラインで連結されたものよりも、応答性を向上させることが難しく、オペレータの操作感にもたついた印象を与えかねない。したがって、電子−油圧パイロット式の制御装置を用いて従来のものと略同一の応答性を確保しようとすると、応答性能の優秀な高価な変換弁を用いる必要が生じてコスト高を招いてしまう。
【0008】
一方、図5に示されたような制御装置において、電油変換弁2を用いず、電気信号によって直接制御弁6を制御する方法も考えられる。しかしこの場合、制御弁6のスプールを駆動しうる大きな動力を電気的に発生させる必要が生じるため、スプールを駆動する装置が別個に必要となり、却ってコスト高となってしまう。
本発明は、このような課題に鑑み案出されたもので、簡素な構成かつ低コストで、高度な制御性及び応答性を実現できるようにした、パイロット制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目標を達成するため、本発明のパイロット制御装置(請求項1)は、油圧駆動式の作業装置を搭載した作業機械において、パイロット圧を制御されて該作業装置を駆動するアクチュエータへの作動油流量を調整する制御弁の制御装置であって、該作業装置のオペレータに操作されて、その操作量に応じた電気信号を出力する操作装置と、入力された該電気信号の大きさに応じた油圧の第1パイロット圧油を出力する第1電油変換弁と、該電気信号の入力時に所定圧の第2パイロット圧油を出力する第2電油変換弁と、該第1パイロット圧油と該第2パイロット圧油とのうちいずれか高圧の一方を選択し、該制御弁のパイロット圧油として出力する高圧選択弁と、該第2電油変換弁から出力される該第2パイロット圧油の該高圧選択弁への流通を遮断しうるカット弁と、該操作装置から出力された該電気信号に応じて、該カット弁における該第2パイロット圧油の流通を制御するコントローラとを備えたことを特徴としている。
【0010】
例えば、該コントローラは、該電気信号に基づき該オペレータによって高い応答性が要求されたと判断した場合に、該カット弁を開放して該第2パイロット圧油を流通させ、該オペレータによって高い応答性が要求されていないと判断した場合に、該カット弁を閉鎖して該第2パイロット圧油の流通を遮断する(請求項2)。
また、例えば、該コントローラは、該電気信号に基づき該操作装置の操作開始を検出したときに、該オペレータによって高い応答性が要求されたと判断する(請求項3)。
【0011】
さらに、例えば、該コントローラは、該操作装置の最大操作量に対応する該電気信号を検出したときに、該オペレータによって高い応答性が要求されたと判断する(請求項4)。
さらに、例えば、該コントローラは、該電気信号の大きさの変化勾配が所定勾配以上であるときに、該オペレータによって高い応答性が要求されたと判断する(請求項5)。
【発明の効果】
【0012】
本発明のパイロット制御装置(請求項1)によれば、簡素な構成及び低コストで、電気信号の入力に応じた良好な応答性と電気信号の大きさに応じた良好な制御性とを実現できる。
また、本発明のパイロット制御装置(請求項2)によれば、オペレータの要求に応じて、応答性を向上させる制御と制御性を向上させる制御とを選択することができ、操作状態に合った制御を行うことができる。
【0013】
また、本発明のパイロット制御装置(請求項3)によれば、操作開始時におけるアクチュエータの動作遅れをなくすことができ、本発明のパイロット制御装置(請求項4)によれば、最大操作時におけるアクチュエータの動作遅れをなくすことができ、本発明のパイロット制御装置(請求項5)によれば、急操作時におけるアクチュエータの動作遅れをなくすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面により、本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図4は本発明の一実施形態にかかるパイロット制御装置を示すものであり、図1は本装置が適用された油圧回路の全体構成を模式的に示すブロック構成図、図2は本装置の作用・効果を説明するためのグラフであり、(a)は電気操作レバー操作時におけるのレバー操作量の時間変化を示すグラフ、(b)は電気操作レバーから出力される電流値の時間変化を示すグラフ、(c),(d)は電油変換弁から出力されるパイロット圧の時間変化を示すグラフ、(e)は制御弁のスプールストロークの時間変化を示すグラフ、図3は本装置の電気操作レバーから出力される電流値とレバー操作量との関係を示すグラフ、図4は本発明のパイロット制御装置が適用された作業機械の全体構成を示す模式的斜視図である。
【0015】
図4に、本発明の一実施形態としてのパイロット制御装置が適用された作業機械を示す。この作業機械11は、無限軌道の走行装置(クローラ)を設けられた下部走行体12と、下部走行体12の上部に旋回可能に載架された上部旋回13とを備えて構成されている。
上部旋回体13には、その骨組みをなすスイングフレーム上に、作業機械11の駆動源となるエンジン10や油圧ポンプ9,掘削や揚重等の各種作業を行うための作業装置14及びオペレータが搭乗するキャブ13等が備えられている。また、作業装置14は、ブーム装置やスティック装置,バケット装置等の独立作動部位から構成されており、各作動部位に対して各々を駆動するための油圧式アクチュエータ(油圧シリンダ)8が設けられている。
【0016】
図1に本パイロット制御装置が適用された油圧回路の全体構成を模式的に示す。
まず、作業装置14を作動させるための本油圧回路には、エンジン10の動力によって駆動する油圧ポンプ9が備えられており、油圧ポンプ9から吐出された作動油が制御弁6を介して各アクチュエータ8へ供給されるようになっている。なお、ここでは、複数のアクチュエータ8のうちのひとつを代表して示している。
【0017】
制御弁6は、ステム(流量制御スプール)の位置を切り替えて作動油の流通方向及び流量を可変制御できるスプール弁として構成されている。また、制御弁6のステム位置の切り替え及びその弁開度は、パイロットライン5aから導入されるパイロット圧に応じて設定されるようになっている。例えば、パイロット圧が大きくなると、ステムの移動量が大きくなって制御弁6の開度が開放方向へ制御されて、油圧ポンプ9からアクチュエータ8への作動油流量が増加するようになっている。また、パイロット圧が小さくなると、ステムの移動量が小さくなって制御弁8の開度が閉鎖(絞り)方向へ制御されて、油圧ポンプ9からアクチュエータ8への作動油流量が減少するようになっている。
【0018】
制御弁6のパイロットライン5a側には、電気操作レバー(操作装置)1,電油変換弁(第1電油変換弁)2,電油変換オンオフ弁(第2電油変換弁)3,油圧カット弁(カット弁)4,高圧選択弁5及びコントローラ7が備えられている。
電気操作レバー1は、作業機械11のオペレータに操作されて、その操作量に応じた電気信号をアクチュエータ8の作動量の指標として出力するようになっている。
【0019】
なお、ここでは、電気操作レバー1の操作量に応じた電気信号として、図3に示すような対応関係で電流値(電流の大きさ)Aが出力されるようになっている。すなわち、電気操作レバー1が何も操作されていない状態では出力される電流値が0であり、電気操作レバー1の操作量が大きくなるほど大きな電流値の電流が出力され、電気操作レバー1がフル操作されたときに電流値A1の電流が出力されるようになっている。出力された電流値Aは、後述する電油変換弁2,電油変換オンオフ弁3及びコントローラ7へ入力されるようになっている。
【0020】
電油変換弁2は、電気操作レバー1から入力された電流値Aの大きさに応じた圧力のパイロット圧油(第1パイロット圧油)を出力するようになっている。この電油変換弁2には、一般的に制御性の良い減圧弁が用いられている。なお、ここで出力されたパイロット圧油は、後述する高圧選択弁5へ導入されるようになっている。
また、電油変換オンオフ弁3は、電気操作レバー1から出力された電流値Aの大きさに関わらず、電流が入力されたときに所定圧P0のパイロット圧油(第2パイロット圧油)を出力するようになっている。この電油変換オンオフ弁3には、一般的に応答性の良いオンオフ弁が用いられており、電油変換オンオフ弁3から出力されるパイロット圧油の圧力値は、電油変換弁2から出力される圧力と比較して、速やかに上昇又は下降するようになっている。なお、ここで出力される圧油の所定圧P0は、電油変換弁2において出力される最大のパイロット圧の20〜30%程度の大きさに設定されるようになっている。また、出力されたパイロット圧油は、後述する高圧選択弁5へ導入されるようになっている。
【0021】
なお、電油変換弁2と電油変換オンオフ弁3とは、パイロットライン5aに対して並列に接続されて配置されている。すなわち、図1に示すように、制御弁6へ接続されたパイロットライン5aは、高圧選択弁5から分岐して、電油変換弁2へと接続されるラインと、電油変換オンオフ弁3へ接続されるラインとの2つのラインから構成されている。
高圧選択弁5は、電油変換弁2と電油変換オンオフ弁3との双方から出力されるパイロット圧油のうちいずれか高圧の一方を選択して、制御弁8のパイロット圧油としてパイロットライン5a側へ出力するようになっている。ここでパイロットライン5aへ出力されたパイロット圧油の圧力(すなわち、パイロット圧)が、制御弁6のステム制御にかかるパイロット圧として働くようになっている。
【0022】
油圧カット弁4は、電油変換オンオフ弁3と高圧選択弁5との間に介装されて、電油変換オンオフ弁3から出力されるパイロット圧油の高圧選択弁5への流通を遮断しうるようになっており、この油圧カット弁4の開閉制御は後述するコントローラ7によって行われるようになっている。
コントローラ7は、電気操作レバー1から出力された電流値Aに基づき、オペレータによって高い応答性が要求されているか否かを判断するようになっている。そして、高い応答性が要求されていると判断した場合には、油圧カット弁4を開放制御し、要求されていないと判断した場合には、油圧カット弁4を閉鎖制御してパイロット圧油の流通を遮断するようになっている。
【0023】
具体的には、電気操作レバー1が操作されて電流値Aが検出されたレバー操作開始時には、高い応答性が要求されていると判断するようになっている。これにより、電油変換オンオフ弁3から出力されたパイロット圧油は、レバー操作開始時から高圧選択弁5へ流通することになる。
また、電気操作レバー1が操作されてから所定時間d2が経過すると、すでに高い応答性は要求されていないと判断するようになっている。そして、コントローラ7は油圧カット弁4を閉鎖するように制御して、電油変換オンオフ弁3から出力されるパイロット圧油の高圧選択弁5への流通を遮断させるようになっている。これにより、電油変換オンオフ弁3から出力されるパイロット圧油は、電気操作レバー1が操作されてから所定時間d2経過するまでの間にのみ高圧選択弁5側へ流通するようになっている。
【0024】
本発明の一実施形態にかかるパイロット制御装置は上述のように構成されているので、以下のように作用する。
まず、図2(a)に示すように、オペレータにより電気操作レバー1が時刻t0から操作され始めたとき、電気操作レバー1から出力される電気信号としての電流値Aは、図2(b)に示すように、時刻t0までの間は0であり、時刻t0から増大し始める。この電流値Aは電油変換弁2,電油変換オンオフ弁3及びコントローラ7へ出力される。
【0025】
次に、電油変換弁2では、図2(c)に示すように、入力された電流値Aの大きさに応じた油圧P1のパイロット圧油が出力される。ここで、電油変換弁2には減圧弁が用いられているため、僅かな応答遅れ時間d1の経過後の時刻t1から、電流値Aの変化に追従するようにパイロット圧P1が変動することになる。
一方、電油変換オンオフ弁3では、図2(d)に実線で示すように、入力された電流値Aの大きさに関わらず、電流値Aが入力されたときに所定圧P0のパイロット圧油が出力される。ここで、電油変換オンオフ弁3にはオンオフ弁が用いられているため、電流値Aが入力された時刻t0からすぐにパイロット圧P2が上昇して所定圧P0に達し、電流値Aが変動したとしても一定の所定圧P0が保たれることになる。
【0026】
一方、コントローラ7では、電気操作レバー1が操作されて電流値Aが検出されたレバー操作開始時、すなわち時刻t0に、高い応答性が要求されたと判断される。つまり、コントローラ7によって油圧カット弁4が開放制御されて、電油変換オンオフ弁3から出力されたパイロット圧油が、レバー操作開始時から高圧選択弁5へ流通する。
また、電気操作レバー1が操作された時刻t0から所定時間d2が経過したときには、コントローラ7において、すでに高い応答性は要求されていないと判断される。そして、油圧カット弁4が閉鎖するように制御されて、電油変換オンオフ弁3から出力されるパイロット圧油の高圧選択弁5への流通が遮断される。これにより、電油変換オンオフ弁3から出力されるパイロット圧P2は、図2(d)に実線で示すように時刻t0から時刻t3の間にのみ高圧選択弁5側へ導入される。
【0027】
つまり、電油変換弁2からは、パイロット圧P1が電流値Aの変動に応じた大きさで、応答遅れd1を伴って出力され、一方、電油変換オンオフ弁3からは、パイロット圧P2が略応答遅れなく出力されることになる。
そして、高圧選択弁5では、双方の電油変換弁2,3から出力されたパイロット圧油のうち、いずれか高圧の一方が選択されて、制御弁8のパイロット圧油としてパイロットライン5a側へ出力される。つまり、電油変換弁2から出力されるパイロット圧P1を図2(d)に重ねて破線で示すと、時刻t0から時刻t2(すなわち、破線で示されたパイロット圧P1と実線で示されたパイロット圧P2とが交差する時刻)までの間は、パイロット圧P2のパイロット圧油がパイロットライン5aへ出力され、時刻t2以降はパイロット圧P1のパイロット圧油がパイロットライン5aへ出力されることになる。
【0028】
したがって、制御弁6のスプールストロークは、図2(e)に示すように、電気操作レバー1が操作された時刻t0からすぐに立ち上がることになり、レバー操作開始時の応答遅れなく制御弁6を制御することができる。また、時刻t2以降には電油変換弁2から出力されるパイロット圧P1によって制御弁6のスプールストロークが制御されて、良好な制御性を保つことができる。
【0029】
このように、本発明のパイロット制御装置によれば、簡素な構成かつ低コストで、電気信号の入力に応じた良好な応答性と電気信号の大きさに応じた良好な制御性とを実現することができる。
また、電気操作レバー1の操作に基づいて、オペレータによる操作要求を判断し制御を行っているため、高い応答性が要求される操作開始時に応答遅れなく制御弁6を制御することができ、また、高い応答性が要求されていない時には減圧弁を用いた従来の制御性のよい制御を行うことができる。
【0030】
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
まず、上述の実施形態では、コントローラ7において、電気操作レバー1が操作されて電流値Aが検出されたレバー操作開始時t0から所定時間d2が経過する時刻t3までの時間が、高い応答性が要求されている時間であると判断されているが、オペレータの要求をどのように判断するか(どのような操作状態のときに、「高い応答性が要求されている」と判断するか)についてはこれに限定されない。
【0031】
また、上述の実施形態では、電油変換オンオフ弁3から出力される圧油の大きさ(すなわち、所定圧P0)が、電油変換弁2において出力される最大のパイロット圧の20〜30%程度の大きさに設定されるようになっているが、所定圧P0の設定値は任意に設定することができる。また、コントローラ7が所定圧P0の設定を行うように構成することも可能である。
【0032】
例えば、電気操作レバー1がフル操作された場合に、高い応答性が要求されていると判断して、油圧カット弁4を開放するように構成してもよいし、または、電気操作レバー1から入力された電流値Aが所定電流値以上の場合に、高い応答性が要求されていると判断してもよい。この場合、電油変換オンオフ弁3から出力される圧油の所定圧を、電油変換弁2において出力される最大のパイロット圧と略同一の大きさに設定しておくことにより、オペレータが高い応答性を要求するフルレバー操作時(電気操作レバー1が略最大まで操作された状態)に、応答遅れなく制御弁6を制御することができるようになる。
【0033】
また、電気操作レバー1の操作時間や操作速度に基づいて、オペレータの要求を判断するように構成してもよいし、電油変換オンオフ弁3から出力される圧油の所定圧の設定値を任意に変更してもよい。
例えば、電気操作レバー1の操作速度が所定速度よりも大きくなったときに、高い応答性が要求されていると判断するとともに、電油変換オンオフ弁3から出力される圧油の所定圧を電気操作レバー1の操作速度の大きさに応じて設定するように構成することが考えられる。このような構成では、オペレータによる操作が素早いほど電油変換オンオフ弁3から出力されるパイロット圧を大きくすることができ、直ちに制御弁6のスプールストロークを大きく制御することが可能となる。
【0034】
また、コントローラ7は、上述のような応答性の判断条件を複数備えたものでもよい。つまり、「高い応答性が要求されている」と判断する電気操作レバー1の操作状態には、さまざまな状態が考えられるため、コントローラ7において各々の操作状態に対応した判断条件を用いて判断を行うことにより、いずれかの判断条件が満たされたときに「高い応答性が要求されている」と判断して、コントローラ7における判断をより正確なものとすることができ、多様な操作場面において応答性を向上させることができる。
【0035】
また、コントローラ7は、単に高い応答性が要求されているか否かだけでなく、要求されている応答性の度合い、すなわち、どの程度の「高い応答性」が要求されているかを判断するよう構成することも可能である。
例えば、電気操作レバー1の操作が開始された操作開始時であって、かつ、フル操作されたような場合(複数の応答性の判断条件が満たされた場合)には、高応答性の要求が強いものと判断して、電油変換オンオフ弁3から出力される圧油の所定圧を、電油変換弁2において出力される最大のパイロット圧よりも大きく設定することなどが考えられる。このように、電気操作レバー1の操作状態に応じて、要求されている応答性の度合いを判断し、その度合いに見合う制御を行うように構成することによって、より高度な制御性及び応答性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態としてのパイロット制御装置が適用された油圧回路の全体構成を模式的に示すブロック構成図である。
【図2】本発明の一実施形態としてのパイロット制御装置の作用・効果を説明するためのグラフであり、(a)は電気操作レバー操作時におけるのレバー操作量の時間変化を示すグラフ、(b)は電気操作レバーから出力される電流値の時間変化を示すグラフ、(c),(d)は電油変換弁から出力されるパイロット圧の時間変化を示すグラフ、(e)は制御弁のスプールストロークの時間変化を示すグラフである。
【図3】本発明の一実施形態としてのパイロット制御装置の電気操作レバーから出力される電流値とレバー操作量との関係を示すグラフである。
【図4】本発明の一実施形態としてのパイロット制御装置のパイロット制御装置が適用された作業機械の全体構成を示す模式的斜視図である。
【図5】従来例としてのパイロット制御装置を説明するためのブロック構成図である。
【符号の説明】
【0037】
1 電気操作レバー(操作装置)
2 電油変換弁(第1電油変換弁)
3 電油変換オンオフ弁(第2電油変換弁)
4 油圧カット弁(カット弁)
5 高圧選択弁
5a パイロットライン
6 制御弁
7 コントローラ
8 アクチュエータ
9 油圧ポンプ
10 エンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧駆動式の作業装置を搭載した作業機械において、パイロット圧を制御されて該作業装置を駆動するアクチュエータへの作動油流量を調整する制御弁の制御装置であって、
該作業装置のオペレータに操作されて、その操作量に応じた電気信号を出力する操作装置と、
入力された該電気信号の大きさに応じた油圧の第1パイロット圧油を出力する第1電油変換弁と、
該電気信号の入力時に所定圧の第2パイロット圧油を出力する第2電油変換弁と、
該第1パイロット圧油と該第2パイロット圧油とのうちいずれか高圧の一方を選択し、該制御弁のパイロット圧油として出力する高圧選択弁と、
該第2電油変換弁から出力される該第2パイロット圧油の該高圧選択弁への流通を遮断しうるカット弁と、
該操作装置から出力された該電気信号に応じて、該カット弁における該第2パイロット圧油の流通を制御するコントローラと
を備えたことを特徴とする、パイロット制御装置。
【請求項2】
該コントローラは、該電気信号に基づき該オペレータによって高い応答性が要求されたと判断した場合に、該カット弁を開放して該第2パイロット圧油を流通させ、該オペレータによって高い応答性が要求されていないと判断した場合に、該カット弁を閉鎖して該第2パイロット圧油の流通を遮断する
ことを特徴とする、請求項1記載のパイロット制御装置。
【請求項3】
該コントローラは、該電気信号に基づき該操作装置の操作開始を検出したときに、該オペレータによって高い応答性が要求されたと判断する
ことを特徴とする、請求項2記載のパイロット制御装置。
【請求項4】
該コントローラは、該操作装置の最大操作量に対応する該電気信号を検出したときに、該オペレータによって高い応答性が要求されたと判断する
ことを特徴とする、請求項2又は3記載のパイロット制御装置。
【請求項5】
該コントローラは、該電気信号の大きさの変化勾配が所定勾配以上であるときに、該オペレータによって高い応答性が要求されたと判断する
ことを特徴とする、請求項2〜4のいずれか1項に記載のパイロット制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−220193(P2006−220193A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−32875(P2005−32875)
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【出願人】(000190297)新キャタピラー三菱株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】