説明

パケット中継伝送装置

【課題】 伝送帯域が異なるネットワークに対して伝送帯域に応じた中継を行うことができ、且つエラー率の高いネットワークにおいても通信品質を維持し、回線の輻輳を回避できるパケット中継伝送装置を提供する。
【解決手段】 送信処理部1が階層符号化データを組み合せた冗長なパケットを組み立てて送出し、中継処理部2が送信処理部1から受信したパケットより符号化データを抽出して次段のネットワークの伝送帯域に適した階層符号化データを組み合せた冗長なパケットを組み立て直して次段のネットワークに送出し、当該ネットワークを介して中継処理部2からパケットを受信した受信処理部3が、受信したパケットより符号化データを抽出して復号する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、伝送帯域が異なるネットワーク間で階層符号化したパケットデータを中継伝送するパケット中継伝送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
階層符号化データを伝送する従来のシステムとしては、例えば特許文献1に開示されるデータ送受信方法によるものがある。このシステムは、送信端末と受信端末との間の伝送路上に設けられたゲートウェイを含む中継点のうちの全部又は一部におけるデータの受信及び/又は送信の状態に基づいて、中継点後段の受信端末が、受信すべきデータを決定する。これにより、有線区間と無線区間とが混在した環境下でも、途切れない音声伝送、乱れない映像伝送を実現できる。
【0003】
【特許文献1】特開2003−152752号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の階層符号化技術を適用した伝送システムでは、中継点後段の受信端末が受信すべきデータに応じて中継点前段の送信端末がデータを作成して送信する。このため、中継点前段のネットワークに対して送信端末が必要以上の冗長データを送出することになり、回線の輻輳を招き、通信品質を劣化させてしまうという課題があった。
【0005】
具体的に説明すると、従来のシステムでは、中継点である中間ノードあるいは受信端末が受信データを選択して決定し、送信端末がそのデータを生成する。この場合、中間ノードあるいは受信端末が受信データを選択するまでの区間では、送信端末から選択肢となり得る全てのデータが伝送されることになる。このため、中継点後段のネットワークの状態によっては適切な冗長伝送を行うことができず、通話品質を劣化させてしまう。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、伝送帯域が異なるネットワークに対して伝送帯域に応じた中継を行うことができ、且つエラー率の高いネットワークにおいても通信品質を維持し、回線の輻輳を回避できるパケット中継伝送装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るパケット中継伝送装置は、階層符号化された符号化データを組み合わせてなり、この符号化データの組み合わせを特定するためのマーカーが付与されたパケットを中継元のネットワークから入力すると、マーカーに基づいて当該パケットに含まれる符号化データの組み合わせを判定する中継側判定部と、判定結果に基づいてパケットを符号化データに分解するパケット分解部と、分解結果の符号化データを用いてパケットを再び組み立て、中継先のネットワークへの送信パケットとして出力する中継側組立部とを有する中継処理部を備えるものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明のよれば、伝送帯域が異なるネットワークに対して伝送帯域に応じた中継を行うことができ、且つエラー率の高いネットワークにおいても通信品質を維持し、回線の輻輳を回避できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、階層符号化の概念を説明するための図であり、音声帯域の階層符号化信号である。図1では、符号化データL1が、ある音声帯域、例えば電話音声帯域に対して基本的な符号化処理を行った符号化データである。符号化データL2は符号化データL1の音声品質をさらに向上させるデータを符号化したものであり、符号化データL3は符号化データL1と符号化データL2(L1+L2)の音声品質をさらに向上させるデータを符号化したものである。また、符号化データL4は符号化データL1、符号化データL2、符号化データL3(L1+L2+L3)の音声品質をさらに向上させるデータを符号化したものである。
【0010】
例えば、符号化データL1〜L3が電話帯域(〜3400Hz)の音声データである場合、それに広域の音声データ用符号化データとして符号化データL4を加えると、例えば広帯域(〜7000Hz)の音声データとなる。このように本実施の形態1では、基本となる符号化データを基準としてそのデータ品質を向上させるデータを階層的に符号化する階層符号化方式を採用している。
【0011】
図2は、この発明の実施の形態1によるパケット中継伝送装置を音声伝送装置として適用した伝送システムの構成例を示す図であり、当該音声伝送装置の送信処理部1により送信されたパケットを、他の音声伝送装置の中継処理部2や受信処理部3が受信し、中継処理部2に中継されたパケットをさらに他の音声伝送装置の受信処理部3が受信する例を示している。
【0012】
また、送信処理部1と中継処理部2はネットワークX(中継元のネットワーク)を介して接続されており、中継処理部2と受信処理部3はネットワークY(中継先のネットワーク)を介して接続されている。ネットワークXは、ネットワークYより伝送帯域が大きく、さらにネットワークXには他の音声伝送装置の受信処理部3が別個接続している。つまり、中継処理部2はネットワークXとネットワークYとの中継点として機能する。また、送信処理部1から受信処理部3へのデータの流れにおいて、ネットワークXが中継点前段のネットワークに相当し、ネットワークYが中継点後段のネットワークに相当する。
【0013】
図3は、この発明の実施の形態1によるパケット中継伝送装置の送信処理部の構成を示すブロック図であり、図2中の音声伝送装置の送信処理部1を示している。実施の形態1によるパケット中継伝送装置の送信処理部1は、音声階層符号化部(符号化部)4、パケット組立部(送信側組立部)5−1〜5−3、マーカー付与部6−1〜6−3を備える。音声階層符号化部4は、入力した音声信号を階層符号化方式にて符号化処理し、符号化データL1〜L3としてパケット組立部5−1〜5−3に出力する。
【0014】
パケット組立部5−1は、音声階層符号化部4から入力した符号化データL1と符号化データL2を一つのパケットデータに組み立てて音声パケットとしてマーカー付与部6−1に出力する。パケット組立部5−2は、音声階層符号化部4から入力した符号化データL2と符号化データL3を一つのパケットデータに組み立てて音声パケットとしてマーカー付与部6−2に出力する。パケット組立部5−3は、音声階層符号化部4から入力した符号化データL1と符号化データL3を一つのパケットデータに組み立てて音声パケットとしてマーカー付与部6−3に出力する。
【0015】
マーカー付与部6−1は、入力した音声パケットに当該パケットのペイロード部のデータが符号化データL1と符号化データL2であることを示すマーカーを付与してネットワークX上に出力する。マーカー付与部6−2は、入力した音声パケットに当該パケットのペイロード部が符号化データL2と符号化データL3であることを示すマーカーを付与してネットワークX上に出力する。マーカー付与部6−3は、入力した音声パケットに当該パケットのペイロード部が符号化データL1と符号化データL3であることを示すマーカーを付与してネットワークX上に出力する。
【0016】
図4は、この発明の実施の形態1によるパケット中継伝送装置の中継処理部の構成を示すブロック図であり、図2中の音声伝送装置の中継処理部2を示している。本実施の形態1によるパケット中継伝送装置の中継処理部2は、パケット入力部7、マーカー判定部(中継側判定部)8、パケット分解部9、パケット組立部(中継側組立部)10−1,10−2、マーカー付与部11−1,11−2、パケット出力部12を備える。
【0017】
パケット入力部7は、ネットワークXを介してパケットを受信しマーカー判定部8及びパケット分解部9に出力する。マーカー判定部8は、入力したパケットのマーカーを抽出し、抽出したマーカーから当該パケットに含まれる符号化データの種別を判定する。パケット分解部9は、マーカー判定部8による判定結果に基づき入力したパケットを符号化データに分解し、パケット組立部10−1,10−2に出力する。
【0018】
パケット組立部10−1は、パケット分解部9から入力した符号化データL1をパケットデータに組み立ててマーカー付与部11−1に出力する。パケット組立部10−2は、パケット分解部9から入力した符号化データL1と符号化データL2を一つのパケットデータに組み立ててマーカー付与部11−2に出力する。
【0019】
マーカー付与部11−1は、入力した音声パケットに当該パケットのペイロードのデータが符号化データL1であることを示すマーカーを付与してパケット出力部12に出力する。マーカー付与部11−2は、入力した音声パケットに当該パケットのペイロードのデータが符号化データL1と符号化データL2であることを示すマーカーを付与してパケット出力部12に出力する。パケット出力部12は、マーカー付与部11−1,11−2から入力したパケットをネットワークYに出力する。
【0020】
図5は、この発明の実施の形態1によるパケット中継伝送装置の受信処理部の構成を示すブロック図であり、図2中の音声伝送装置の受信処理部3を示している。実施の形態1によるパケット中継伝送装置の受信処理部3は、パケット入力部13、マーカー判定部(受信側判定部)14、パケット分解部15、復号タイミング制御部(タイミング制御部)16−1〜16−3、音声復号部(復号部)17、基準タイミング制御部18を備える。
【0021】
パケット入力部13は、ネットワークX又はネットワークYを介してパケットを受信し、マーカー判定部14及びパケット分解部15に出力する。マーカー判定部14は、入力したパケットのマーカーを抽出し、抽出したマーカーより当該パケットに含まれる符号化データの種別を判定する。パケット分解部15は、マーカー判定部14による判定結果に基づき入力したパケットを符号化データに分解し、復号タイミング制御部16−1〜16−3に出力する。
【0022】
復号タイミング制御部16−1〜16−3は、基準タイミング制御部18からの制御情報に基づき符号化データL1〜L3をそれぞれ音声復号部17へ出力するタイミングを制御する。音声復号部17は、復号タイミング制御部16−1〜16−3から入力した符号化データL1〜L3に基づき音声復号処理を行い音声信号を出力する。基準タイミング制御部18は、復号処理の基準タイミングとして音声復号部17へ符号化データを出力するタイミングを復号タイミング制御部16−1〜16−3に通知する。
【0023】
次に動作について説明する。
以降では、図1に示したように符号化データL1が、例えば電話音声帯域に対して基本的な符号化処理を行ったものであり、この符号化データL1をさらに音声品質向上させる符号化データL2、符号化データL1と符号化データL2(L1+L2)をさらに音声品質向上させる符号化データL3について階層符号化している。ここで、図2の下段に示す例では、音声伝送装置の送信処理部1が、符号化データL1,L2,L3をそれぞれ二つずつ冗長処理したパケットを送信する場合を示している。
【0024】
また、伝送帯域の大きいネットワークXに接続する音声伝送装置の受信処理部3では、受信したパケットのうち、符号化データL1と符号化データL3をペイロード部に含むパケット、及び符号化データL2と符号化データL3をペイロードに含むパケットから、符号化データL1,L2,L3を抽出して復号処理を行い、高品質の再生音声を得る。
【0025】
ネットワークX,Y間に介在する音声伝送装置の中継処理部2は、受信したパケットのうち、符号化データL1と符号化データL3をペイロード部に含むパケット、及び符号化データL2と符号化データL3をペイロード部に含むパケットから、次段の伝送帯域が小さいネットワークYに対して、符号化データL1、及び符号化データL1と符号化データL2の新たな冗長処理したパケットを伝送帯域の小さいネットワークYに送信する。
【0026】
伝送帯域の小さいネットワークYに接続する音声伝送装置の受信処理部3は、受信したパケットのうち、符号化データL1をペイロード部に含むパケットから、符号化データL1を抽出して復号処理を行い、高品質の再生音声を得る。
【0027】
各処理部の構成要素との関係を含めて具体的に説明する。
先ず、伝送帯域の大きいネットワークXに接続する音声伝送装置の送信処理部1が、例えば電話音声帯域の音声信号を入力する。この送信処理部1内の音声階層符号化部4は、入力した音声信号について、図1に示したような符号化データL1〜L3に階層符号化処理を実施して、符号化データL1,L2をパケット組立部5−1に出力し、符号化データL2,L3をパケット組立部5−2に出力し、符号化データL1,L3をパケット組立部5−3に出力する。
【0028】
パケット組立部5−1では、入力した符号化データL1,L2をペイロード部に格納した一つのパケットを作成し、マーカー付与部6−1に出力する。また、パケット組立部5−2は、入力した符号化データL2,L3をペイロード部に格納した一つのパケットを作成し、マーカー付与部6−2に出力する。同様に、パケット組立部5−3は、入力した符号化データL1,L3をペイロード部に格納した一つのパケットを作成し、マーカー付与部6−3に出力する。
【0029】
マーカー付与部6−1では、パケット組立部5−1から入力したパケットに対して、このパケットに含まれる符号化データが符号化データL1+L2であることを示すマーカーを付与して音声パケットとしてネットワークX上に送出する。また、マーカー付与部6−2は、パケット組立部5−2から入力したパケットに対して、このパケットに含まれる符号化データが符号化データL2+L3であることを示すマーカーを付与して音声パケットとしてネットワークX上に送出する。同様に、マーカー付与部6−3では、パケット組立部5−3から入力したパケットに対して、このパケットに含まれる符号化データが符号化データL1+L3であることを示すマーカーを付与して音声パケットとしてネットワークX上に送出する。
【0030】
図6は、マーカー付与部6−1〜6−3によるマーカーの付与例を示す図である。図6では、ストリーム型の実時間マルチメディア通信プロトコルであるRTP(real-time transport protocol)をのせるRTPヘッダ部のシーケンス番号(SN)を利用し、上位3ビットで符号化データの種別を規定している。例えば、符号化データの種別がL1+L2である場合、シーケンス番号の上位3ビットを“000”とし、符号化データの種別がL2+L3であれば、シーケンス番号の上位3ビットを“001”とし、符号化データの種別がL1+L3であると、シーケンス番号の上位3ビットを“010”とする。
【0031】
つまり、図6中の上段の送信パケットは、シーケンス番号(SN)の上位4ビットが“0000”となっており、符号化データL1+L2を扱うマーカー付与部6−1による出力である。また、図6中の中段における送信パケットは、シーケンス番号の上位3ビットが“001”で上位4ビットが“0010”(=2)となっており、符号化データL2+L3を扱うマーカー付与部6−2による出力である。さらに、図6中の下段における送信パケットは、シーケンス番号の上位3ビットが“010”で上位4ビットが“0100”(=4)となっており、符号化データL1+L3を扱うマーカー付与部6−3による出力である。
【0032】
なお、同じ時間の音声信号を対象とする符号化データでは、シーケンス番号の全16ビットのうち、下位13ビットは同じ番号とし、上位3ビットを種別に応じて異ならせることにより、符号化データの種別を特定するマーカーとして用いることができる。
【0033】
この他のマーカー付与例を図7に示す。
図7では、同じ時間の音声信号を対象とした符号化データを組み合せたパケットに対して、マーカー付与部6−1ではシーケンス番号を“0”(図7中、“0000”)とし、マーカー付与部6−2ではシーケンス番号を“1”(図7中、“0001”)と、マーカー付与部6−3ではシーケンス番号を“2”(図7中、“0002”)とする。そして、次の時間のパケットに対して、マーカー付与部6−1は、シーケンス番号を“3”(図7中、“0003”)とし、マーカー付与部6−2はシーケンス番号を“4”(図7中、“0004”)とし、マーカー付与部6−3はシーケンス番号を“5”(図7中、“0005”)とする。これを同様に繰り返す。
【0034】
このようにシーケンス番号を設定することで、シーケンス番号を“3”で除算した余りが“0”ならば符号化データL1+L2であると特定することができ、また余りが“1”ならば符号化データL2+L3であると特定でき、さらに余りが“2”ならば符号化データL1+L3であると特定できることから、シーケンス番号をマーカーとして用いることができる。なお、シーケンス番号と同様に、RTPヘッダ部のタイムスタンプ値を符号化データ種別に応じてデジタル値を設定することでマーカーとして利用することもできる。
【0035】
図2に示す音声伝送装置の中継処理部2は、ネットワークXを介して前述のようにして他の音声伝送装置の送信処理部1から出力された音声パケットを受信する。この中継処理部2のパケット入力部7は、受信した音声パケットをマーカー判定部8及びパケット分解部9にそれぞれ出力する。
【0036】
マーカー判定部8では、パケット入力部7から入力した音声パケットからマーカーを読み取り、当該パケットのペイロード部に含まれる符号化データの種別を判定する。例えば、図6又は図7に示したようなマーカーの付与ルールをマーカー判定部8に設定しておき、入力した音声パケットのRTPヘッダ部のシーケンス番号のビット値又はこれを用いた所定の演算値から、パケットに含まれる符号化データがL1+L2なのか、L2+L3なのか、L1+L3なのか等の符号化データの組み合わせを特定する。この判定結果は、マーカー判定部8からパケット分解部9に出力される。
【0037】
パケット分解部9では、マーカー判定部8より受け取った判定結果に基づき、パケット入力部7から入力したパケットを分解し、符号化データL1はパケット組立部10−1及びパケット組立部10−2へ出力し、符号化データL2はパケット組立部10−2へ出力する。このとき、出力先のネットワークYの伝送帯域を考慮して、符号化データL1+L2の音声品質を向上させるための付加的データである符号化データL3は廃棄する。
【0038】
パケット組立部10−1は、パケット分解部8から入力した符号化データL1をペイロードに格納した一つのパケットを組み立ててマーカー付与部11−1に出力する。また、パケット組立部10−2は、パケット分解部8から入力した符号化データL1+L2をペイロードに格納した一つのパケットを組み立ててマーカー付与部11−2に出力する。
なお、上述したパケットの組み立て処理において、一つのパケットに組み立てられる符号化データL1と符号化データL2は同じ時間の音声信号を対象とした符号化データであり、同じ時間の符号化データが揃わない場合には、パケットとしての組み立ては行われないものとする。
【0039】
マーカー付与部11−1は、パケット組立部10−1から入力したパケットに対して、このパケットに符号化データL1が含まれることを示すマーカーを付与して音声パケットとしてパケット出力部12に出力する。また、マーカー付与部11−2では、パケット組立部10−2から入力したパケットに対して、このパケットに符号化データL1+L2が含まれることを示すマーカーを付与して音声パケットとしてパケット出力部12に出力する。このマーカー付与処理では、前述した図6又は図7に示す付与例を採用してもよい。パケット出力部12では、マーカー付与部11−2,11−2から入力したパケットをネットワークYへ出力する。
【0040】
図2に示すように、ネットワークYを介して音声伝送装置の中継処理部2と通信可能な音声伝送装置の受信処理部3は、前述のようにして中継処理部2から出力された音声パケットを受信する。この受信処理部3のパケット入力部13は、受信した音声パケットをマーカー判定部14及びパケット分解部15にそれぞれ出力する。
【0041】
マーカー判定部14では、パケット入力部13から入力した音声パケットからマーカーを読み取り、当該パケットのペイロード部に含まれる符号化データの種別を判定する。例えば、図6又は図7に示したようなマーカーの付与ルールをマーカー判定部14に設定しておき、入力した音声パケットのRTPヘッダ部のシーケンス番号のビット値又はこれを用いた所定の演算値からパケットに含まれる符号化データの組み合わせを特定する。この判定結果は、マーカー判定部14からパケット分解部15に出力される。
【0042】
パケット分解部15では、マーカー判定部14より受け取った判定結果に基づき、パケット入力部13から入力したパケットを分解し、符号化データL1は復号タイミング制御部16−1へ出力し、符号化データL2は復号タイミング制御部16−2へ出力する。
【0043】
また、基準タイミング制御部18は、復号タイミング制御部16−1,16−2が同じ時間の音声信号を対象とした符号化データを同じタイミングで音声復号部17に出力できるように基準となるタイミング制御情報を復号タイミング制御部16−1,16−2に出力する。
【0044】
これにより、復号タイミング制御部16−1は、入力した符号化データL1の復号タイミングを基準タイミング制御部18からのタイミング情報に基づいて制御し、符号化データL1を音声復号部17に出力する。一方、復号タイミング制御部16−2も同様に、入力した符号化データL2の復号タイミングを基準タイミング制御部18からのタイミング情報に基づいて制御し、符号化データL2を音声復号部17に出力する。
【0045】
音声復号部17では、復号タイミング制御部16−1,16−2から同じ時間の音声信号を対象とした符号化データが同じタイミングで入力され、これらの符号化データに基づいて復号処理を実施して再生音声を出力する。この復号処理において、最低一つの符号化データが入力された場合には、入力された符号化データを用いて復号処理を行い、一つも符号化データが入力されなかった場合には補間処理などのパケット損失対策処理を行う。
【0046】
例えば、図2の下段に示すように、送信処理部1のマーカー付与部6−1から伝送された音声パケットのうち、符号化データL1が損失した場合、中継処理部2では、上述したように、送信処理部1のマーカー付与部6−1〜6−3から伝送された音声パケットを用いて、符号化データL1を含む音声パケット及び符号化データL1+L2を含む音声パケットをネットワークYに出力する。
【0047】
このとき、中継処理部2のマーカー付与部11−2から伝送された音声パケットの符号化データL1が損失しても、受信処理部3では、中継処理部2のマーカー付与部11−1から伝送された音声パケットを用いて符号化データL1を復号することができ、中継処理部2のマーカー付与部11−2から伝送された音声パケットを用いて符号化データL2を復号することができる。
【0048】
一方、図2に示すように、ネットワークXを介して音声伝送装置の送信処理部1と通信可能な音声伝送装置の受信処理部3では、前述のようにして送信処理部1から出力された音声パケットを受信する。この受信処理部3のパケット入力部13は、受信した音声パケットをマーカー判定部14及びパケット分解部15にそれぞれ出力する。
【0049】
上述した処理と同様にして、マーカー判定部14は、パケット入力部13から入力した音声パケットからマーカーを読み取り、当該パケットのペイロード部に含まれる符号化データの種別を判定する。この判定結果は、マーカー判定部14からパケット分解部15に出力される。パケット分解部15では、マーカー判定部14より受け取った判定結果に基づき、パケット入力部13から入力したパケットを分解し、符号化データL1は復号タイミング制御部16−1へ出力し、符号化データL2は復号タイミング制御部16−2へ出力し、符号化データL3は復号タイミング制御部16−3へ出力する。
【0050】
このとき、基準タイミング制御部18は、復号タイミング制御部16−1,16−2,16−3が同じ時間の音声信号を対象とした符号化データを同じタイミングで音声復号部17に出力できるように基準となるタイミング制御情報を復号タイミング制御部16−1,16−2,16−3に出力する。
【0051】
これにより、復号タイミング制御部16−1は、入力した符号化データL1の復号タイミングを基準タイミング制御部18からのタイミング情報に基づいて制御し、符号化データL1を音声復号部17に出力する。また、復号タイミング制御部16−2も同様に、入力した符号化データL2の復号タイミングを基準タイミング制御部18からのタイミング情報に基づいて制御し、符号化データL2を音声復号部17に出力する。さらに、復号タイミング制御部16−3も、入力した符号化データL3の復号タイミングを基準タイミング制御部18からのタイミング情報に基づいて制御し、符号化データL3を音声復号部17に出力する。
【0052】
音声復号部17では、復号タイミング制御部16−1,16−2,16−3から同じ時間の音声信号を対象とした符号化データが同じタイミングで入力され、これらの符号化データに基づいて復号処理を実施して再生音声を出力する。この復号処理においても、最低一つの符号化データが入力された場合には、入力された符号化データを用いて復号処理を行い、一つも符号化データが入力されなかった場合には補間処理などのパケット損失対策処理を行う。
【0053】
以上のように、この実施の形態1によれば、送信処理部1が階層符号化データを組み合せた冗長なパケットを組み立てて送出し、中継処理部2が送信処理部1から受信したパケットより符号化データを抽出して次段のネットワークの伝送帯域に適した階層符号化データを組み合せた冗長なパケットを組み立て直して次段のネットワークに送出し、当該ネットワークを介して中継処理部2からパケットを受信した受信処理部3が、受信したパケットより符号化データを抽出して復号するので、伝送帯域の異なるネットワーク間のパケットを中継する伝送システムにおいても、その伝送帯域に応じた適切な冗長伝送を実現することができ、エラー率が高いネットワークでも通話音声品質を確保することができる。また、マーカーとしてRTPヘッダ部内の情報を活用することで、情報量を増やすことなく、冗長なパケットを区別することができる。
【0054】
実施の形態2.
図8は、この発明の実施の形態2によるパケット中継伝送装置の中継処理部の構成を示すブロック図である。本実施の形態2による中継処理部2Aは、上記実施の形態1で示した中継処理部2の構成に加え、符号化データL3に対応するパケット組立部(中継側組立部)10−3及びマーカー付与部11−3、伝送帯域監視部(監視部)19、パケット廃棄部20をさらに備える。
【0055】
伝送帯域監視部19は、出力先のネットワークの伝送帯域を監視してこの伝送帯域を特定するための伝送帯域監視情報をパケット廃棄部20に出力する。パケット廃棄部20は、伝送帯域監視情報により特定した出力先のネットワークの伝送帯域に応じて伝送量を削減するため、送出パケットの中からパケットを適宜廃棄する。なお、図4と同一又はこれに相当する構成要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0056】
次に動作について説明する。
本実施の形態2によるパケット中継伝送装置の送信処理部1及び受信処理部3の動作は上記実施形態1と同様であり、説明を省略する。以降では、上記実施の形態1で示した図2のシステムにおける、本実施の形態2の中継処理部2Aによる中継処理を説明する。
先ず、本実施の形態2による中継処理部2Aは、ネットワークXを介して上記実施の形態1と同様にして他のパケット中継伝送装置の送信処理部1から出力された音声パケットを受信する。この中継処理部2Aのパケット入力部7は、受信した音声パケットをマーカー判定部8及びパケット分解部9にそれぞれ出力する。
【0057】
マーカー判定部8では、パケット入力部7から入力した音声パケットからマーカーを読み取り、当該パケットのペイロードに含まれる符号化データの種別を判定する。例えば、上記実施の形態1で示した図6又は図7のようなマーカーの付与ルールをマーカー判定部8に設定しておき、入力した音声パケットのRTPヘッダ部のシーケンス番号のビット値又はこれを用いた所定の演算値から、パケットに含まれる符号化データがL1+L2なのか、L2+L3なのか、L1+L3なのか等の符号化データの組み合わせを特定する。この判定結果は、マーカー判定部8からパケット分解部9に出力される。
【0058】
パケット分解部9では、マーカー判定部8より受け取った判定結果に基づき、パケット入力部7から入力したパケットを分解し、符号化データL1をパケット組立部10−1及びパケット組立部10−2へ出力し、符号化データL2及び符号化データL3をパケット組立部10−2へ出力し、符号化データL1及び符号化データL3をパケット組立部10−3へ出力する。このとき、上記実施の形態1と異なり、パケット分解部9が符号化データを廃棄することはない。
【0059】
パケット組立部10−1は、パケット分解部8から入力した符号化データL1をペイロード部に格納した一つのパケットを組み立ててマーカー付与部11−1に出力する。パケット組立部10−2は、パケット分解部8から入力した符号化データL1+L2をペイロード部に格納した一つのパケットを組み立ててマーカー付与部11−2に出力する。パケット組立部10−3は、パケット分解部8から入力した符号化データL1+L3をペイロード部に格納した一つのパケットを組み立ててマーカー付与部11−3に出力する。
【0060】
なお、上述したパケットの組み立て処理において、一つのパケットに組み立てられる符号化データL1と符号化データL2、符号化データL1と符号化データL3は、同じ時間の音声信号を対象とした符号化データであり、同じ時間の符号化データが揃わない場合には、パケットとしての組み立ては行われないものとする。
【0061】
マーカー付与部11−1は、パケット組立部10−1から入力したパケットに対して、このパケットに符号化データL1が含まれることを示すマーカーを付与して音声パケットとしてパケット廃棄部20に出力する。また、マーカー付与部11−2では、パケット組立部10−2から入力したパケットに対して、このパケットに符号化データL1+L2が含まれることを示すマーカーを付与して音声パケットとしてパケット廃棄部20に出力する。マーカー付与部11−3では、パケット組立部10−3から入力したパケットに対して、このパケットに符号化データL1+L3が含まれることを示すマーカーを付与して音声パケットとしてパケット廃棄部20に出力する。このマーカー付与処理では、前述した図6又は図7に示す付与例を採用してもよい。
【0062】
伝送帯域監視部19は、出力先のネットワークYに接続する音声伝送装置の受信処理部3との間におけるデータ送受信に要する時間等に基づいて出力先のネットワークYの伝送帯域をモニタし、その結果を伝送帯域監視情報としてパケット廃棄部20に出力する。
【0063】
パケット廃棄部20では、伝送帯域監視部19から入力した伝送帯域監視情報に基づいて次段(中継点後段)のネットワークYの伝送帯域を特定し、送出されるパケットの伝送量がネットワークYの伝送帯域内になるように制御する。例えば、ネットワークYが、符号化データL1のパケットと符号化データL1+L2のパケットを伝送できる伝送帯域であるが、これらに符号化データL1+L3も加えるとその伝送帯域を越えてしまうような場合、パケット廃棄部20は、符号化データL1+L3のパケットを廃棄する。そして、パケット出力部12は、パケット廃棄部20から伝送すべき音声パケットを受け取り、ネットワークY上へ出力する。
【0064】
以上のように、この実施の形態2によれば、中継処理部2が次段のネットワークへ出力するパケットの伝送量をその伝送帯域に応じて制御するので、伝送帯域の異なるネットワークへパケットを中継する伝送システムにおいてもその伝送帯域に応じた適切な冗長伝送を実現することができる。これにより、ネットワークの輻輳を回避することができ、またエラー率が高いネットワークでも通話音声品質を確保することができる。
【0065】
また、上記実施の形態2による中継処理部として、図8に示した構成の他、例えば図9に示すような構成であってもよい。図9では、中継処理部2Bが、図8に示した構成に加え、復号タイミング制御部16−1〜16−3、音声復号部17、基準タイミング制御部18を備える。このように、中継処理部2Bとして、中継処理部2Aに受信処理部の構成を加えることで、受信した音声パケットを再生すると共に、次段のネットワークへ出力するパケットの伝送量をその伝送帯域に応じて制御することができる。
【0066】
なお、上記実施の形態1及び上記実施の形態2では、符号化対象を音声信号とした場合について説明したが、音声信号以外の例えば映像信号等を対象とする階層符号化方式を適用した場合であっても同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】階層符号化の概念を説明するための図である。
【図2】この発明の実施の形態1によるパケット中継伝送装置を適用した伝送システムの構成例を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1によるパケット中継伝送装置の送信処理部の構成を示すブロック図である。
【図4】この発明の実施の形態1によるパケット中継伝送装置の中継処理部の構成を示すブロック図である。
【図5】この発明の実施の形態1によるパケット中継伝送装置の受信処理部の構成を示すブロック図である。
【図6】マーカーの付与例を示す図である。
【図7】マーカーの他の付与例を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態2によるパケット中継伝送装置の中継処理部の構成を示すブロック図である。
【図9】実施の形態2によるパケット中継伝送装置の中継処理部の他の構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0068】
1 送信処理部、2,2A,2B 中継処理部、3 受信処理部、4 音声階層符号化部(符号化部)、5−1〜5−3,10−1〜10−3 パケット組立部(送信側組立部、中継側組立部)、6−1〜6−3,11−1〜11−3 マーカー付与部、7,13 パケット入力部、8,14 マーカー判定部(中継側判定部、受信側判定部)、9,15 パケット分解部、12 パケット出力部、16−1〜16−3 復号タイミング制御部(タイミング制御部)、17 音声復号部(復号部)、18 基準タイミング制御部、19 伝送帯域監視部(監視部)、20 パケット廃棄部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
階層符号化された符号化データを組み合わせてなり、この符号化データの組み合わせを特定するためのマーカーが付与されたパケットを中継元のネットワークから入力すると、前記マーカーに基づいて当該パケットに含まれる符号化データの組み合わせを判定する中継側判定部と、
前記判定結果に基づいて前記パケットを符号化データに分解するパケット分解部と、
前記分解結果の符号化データを用いてパケットを再び組み立て、中継先のネットワークへの送信パケットとして出力する中継側組立部とを有する中継処理部を備えたパケット中継伝送装置。
【請求項2】
入力信号を階層符号化する符号化部と、前記符号化部による符号化データを組み合わせたパケットを生成する送信側組立部と、前記符号化データの組み合わせを特定するためのマーカーを前記パケットに付与して送信データとして出力するマーカー付与部とを有する送信処理部を備えたことを特徴とする請求項1記載のパケット中継伝送装置。
【請求項3】
マーカー付与部は、パケットのヘッダ部におけるシーケンス番号情報の一部をマーカーとして設定することを特徴とする請求項2記載のパケット中継伝送装置。
【請求項4】
マーカー付与部は、パケットのヘッダ部におけるタイムスタンプ情報の一部をマーカーとして設定することを特徴とする請求項2記載のパケット中継伝送装置。
【請求項5】
パケット分解部は、中継先のネットワークの伝送帯域に応じて、パケット分解部による分解結果の符号化データを廃棄することを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載のパケット中継伝送装置。
【請求項6】
中継処理部は、中継先のネットワークの伝送帯域を監視する監視部と、その監視結果より特定された伝送帯域に応じて中継側組立部から出力されたパケットを廃棄するパケット廃棄部とを備えたことを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1項記載のパケット中継伝送装置。
【請求項7】
中継処理部は、パケット分解部による分解結果の符号化データの復号タイミングを制御するタイミング制御部と、前記符号化データを復号する復号部とを備えたことを特徴とする請求項1から請求項6のうちのいずれか1項記載のパケット中継伝送装置。
【請求項8】
受信したパケットのマーカーに基づいて当該パケットに含まれる符号化データの組み合わせを判定する受信側判定部と、前記判定結果に基づいて前記パケットを符号化データに分解するパケット分解部と、分解結果の符号化データの復号タイミングを制御するタイミング制御部と、前記符号化データを復号する復号部とを有する受信処理部を備えたことを特徴とする請求項1から請求項6のうちのいずれか1項記載のパケット中継伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−28432(P2007−28432A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−210355(P2005−210355)
【出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】