説明

パケット処理装置

【課題】入力されるパケットのトラヒック状況に関わらず所定の時間が経過すればリコンフィギュレーションが可能なパケット処理装置を提供する。
【解決手段】入力バッファ11は、入力速度V1のパケットを、V1+αの速度で出力する。リコンフィギュアブルデバイス14は、入力されたV1+αの速度のパケットに対して全てのパケットに対して同一の処理時間でパケット処理を行なって出力する。出力バッファ16は、リコンフィギュアブルデバイス14から出力されたV1+αの速度のパケットを入力し、V1の速度で出力する。入力バッファ11は、リコンフィギュアブルデバイス14をリコンフィギュレーションする際には、パケットの出力を停止し、所要の量(d)のパケットを一時的に蓄積し、リコンフィギュレーションの後、少なくとも、dに相当するパケット量/α時間を経過後に次のリコンフィギュレーションのためのパケットの蓄積を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードウェア回路の変更(リコンフィギュレーション)が可能なデバイスであるリコンフィギュラブルデバイスを用いたパケット処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図3は、リコンフィギャラブルデバイスを用いた従来のパケット処理装置のブロック図である。図3に示すように、パケット処理装置2は、入力バッファ21と、バッファ監視と入力バッファ21へのパケットの蓄積の制御を行う制御部22と、リコンフィギャラブルデバイス23と、パケットが流れる信号線211、212、213で構成され、データフロー型のパイプライン処理により全てのパケットに対して同一の処理遅延時間(レイテンシ)dでパケット処理を行なう。また、リコンフィギュラブルデバイス23はハードウェア回路の変更(リコンフィギュレーション)により機能または処理内容が変更可能である。図3では、簡単のため、リコンフィギャラブルデバイスが1つの場合を示しているが、複数のリコンフィギャラブルデバイスを直列に接続した構成でもよい。
【0003】
次に、図3を用いて、リコンフィギャラブルデバイスを用いた従来のパケット処理装置の通常動作について説明する。信号線211から入力バッファ21に入力されたパケットは、そのまま、信号線212を介してリコンフィギャラブルデバイス23に入力される。リコンフィギャラブルデバイス23はパケット処理を実施し、信号線213にパケットを出力する。ここで、リコンフィギャラブルデバイス23で処理されるパケットは、信号線211、213を介して速度V1で連続的に入出力されており、パケット処理装置2の内部の処理速度は、入出力信号線211、213の信号速度と同一の処理速度V1でデータフロー型のパイプライン処理が行なわれている。すなわち、通常では、入力バッファ21にパケットの滞留はない。
次に、リコンフィギャラブルデバイス23のハードウェア回路を変更する(リコンフィギュレーション)場合の動作について説明する。リコンフィギャラブルデバイス23をリコンフィギュレーションする場合は、誤動作や回路中にパケットの紛失またはデータ化けを避けるため、回路中にパケットが存在しない状態でリコンフィギュレーションする(無瞬断リコンフィギュレーションと呼ぶ)必要がある。このため、リコンフィギュレーションをする際は、制御部22の制御により予め入力バッファ21からのパケットの出力を停止し、リコンフィギャラブルデバイス23で行なわれる処理のレイテンシ分のパケットを入力バッファ21に蓄積し、パケットフローにパケットが存在しない空きタイミングを生成する。これにより、リコンフィギャラブルデバイス23は回路中にパケットが存在しない状態でリコンフィギュレーションを実施する。リコンフィギュレーションの実施後、入力バッファ21は、再びパケットの出力を速度V1で開始するが、入力バッファ21のパケットの滞留は引き続き入力されるパケットフローに空きがなければ解消されない。このため、次のリコンフィギュレーションを実施する際には、制御部22により、入力バッファ21でのパケットの滞留状況を監視して空きを確認後に実施する。
【0004】
図4は、入力バッファに入力されるパケットの平均実効レートと入力バッファ21のパケット滞留量を時間経過に沿って表した例である。無瞬断リコンフィギュレーションのためのパケットの蓄積の開始、すなわちバッファ出力の停止は、入力バッファ21にパケットが無い状態から開始して所要の量(dに相当するパケット量)まで行い、その後、リコンフィギュレーションが実施される。dは、リコンフィギャラブルデバイス23の回路中にパケットが存在しない状態にするのに必要な量である。ここでは、リコンフィギュレーションは、マルチコンテキスト型デバイスを用い瞬時に実施されると仮定している(非特許文献1)。リコンフィギュレーション後、入力バッファ21は出力を開始するが、入力バッファ21の出力速度は、入力回線速度V1と同一であるため入力バッファ21のパケットの滞留量は、入力の実効速度がV1未満とならなければ減少しない。このため、次の無瞬断リコンフィギュレーションの実施は、入力のトラヒック状況に依存することになる。
【0005】
このように、従来このようなパケット装置装置における無瞬断リコンフィギュレーションは、リコンフィギュレーションの必要が生じた時、入力バッファ21にパケットを一旦蓄積することで実施していた。
【0006】
なお、このような無瞬断リコンフィギュレーションの方法としては、複数のリコンフィギュアデバイスをシリアル接続した構成で、パケットの紛失等をさせずにリコンフィギュレーションする際に、入力バッファのパケットの蓄積状況を監視しながら必要な空きタイミングの確保を図るもの(例えば、非特許文献2参照)、外部から無瞬断リコンフィギュレーション用のリコンフィギュア制御パケットを入力して空きタイミングを確保するもの(例えば、非特許文献3参照)がある。
【非特許文献1】佐藤、「10nsで演算器間の構成を書き換えるダイナミック・リコンフィギュアラブル技術を開発」日経エレクトロニクス 2003年1月6日号、no.838、pp.111−122
【非特許文献2】リコンフィギュアブルインタフェースボードの高信頼化に関する一検討:吉田他、電子情報通信学会総合大会B−6−14(2003)
【非特許文献3】パケット転送処理回路における遠隔制御を用いた無瞬断リコンフィギュレーション法の検討:甲斐他、電子情報通信学会ソサエティ大会B−6−114(2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のリコンフィギュアブルデバイスを用いたパケット処理装置2、および非特許文献2、非特許文献3に記載された無瞬断リコンフィギュレーションでは、リコンフィギュレーション時に一旦、入力バッファに滞留したパケットは、引き続き入力するパケットのトラヒック量が少なくならないと解消しないため、次のリコンフィギュレーションが実施できないという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、入力されるパケットのトラヒック状況に関わらず所定の時間が経過すれば、リコンフィギュレーションが可能なパケット処理装置を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、この目的を実現するために行なう内部速度の高速化を有効に利用してリコンフィギャラブルデバイスの試験診断を経済的に実施できるパケット処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のパケット処理装置は、第1の速度のパケットを入力し、該第1の速度よりも大きい第2の速度でパケットを出力する入力バッファと、回路記述データの切り替えによりハードウェア回路の変更が可能な1つまたは複数直列され、前記入力バッファから出力された全てのパケットに対してデータフロー型のパイプライン処理により同一の処理遅延時間でパケット処理を行なって出力するリコンフィギュラブルデバイスと、該リコンフィギュラブルデバイスから出力された第2の速度のパケットを入力し、前記第1の速度で出力する出力バッファとを有し、前記入力バッファは、前記リコンフィギュラブルデバイスをリコンフィギュレーションする際、パケットの出力を停止し、前記処理遅延時間のパケットを一時的に蓄積した後、パケットの出力を開始し、少なくとも、前記処理遅延時間に相当するパケット量/(第2の速度と第1の速度の差分)の時間経過後に、次のリコンフィギュレーションのためのパケットの蓄積を開始するように構成されている。
【0011】
内部速度を回線速度よりも高速にすることにより所定の時間が経過すれば、回線トラヒックの状況に関わらずに入力バッファを空きにできるため、次のリコンフィギュレーションが可能となる。
【0012】
本発明の他のパケット処理装置は、前記リコンフィギュラブルデバイスの試験診断のための試験パケットを生成する試験パケット生成部と、通常は前記入力バッファから出力されたパケットを選択し、前記リコンフィギュラブルデバイスの試験時は、前記試験パケット生成部で生成された試験パケットを選択し、前記リコンフィギュラブルデバイスに入力するセレクタと、前記リコンフィギュラブルデバイスから出力された試験パケットから試験結果を判定し、試験パケットを除去し、前記出力バッファに出力する試験結果判定・試験パケット除去部とをさらに有する。
【0013】
パケットデータパスの余剰帯域を利用しインバンドで試験診断を行ない、専用の試験診断用の信号線を必要としないため、経済的に試験機能を実現することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、請求項1の発明によれば、内部速度を回線速度よりも高速にすることにより所定の時間が経過すれば、回線トラヒックの状況に関わらずに入力バッファを空きにできるため、次のリコンフィギュレーションや試験パケットによる試験診断が可能となり、保守運用性を向上させることができる。また、請求項2の発明によれば、パケットデータパスの余剰帯域を利用しインバンドで試験診断を行なう構成を採っており、専用の試験診断用の信号線を必要としないため経済的に試験機能を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態の、リコンフィギャラブルデバイスを用いたパケット処理装置1のブロック図である。本パケット処理装置1は入力バッファ11と試験パケット生成部12とセレクタ13とリコンフィギュラブルデバイス14と試験結果判定・試験パケット除去部15と出力バッファ16と制御部17と信号線111、112、113、114で構成されている。入力バッファ11は回線速度V1で入力されたパケットを速度V1+αで出力する。試験パケット生成部12は試験パケットを生成する。試験パケットはリコンフィギュラブルデバイス14の正常動作を確認するために入力するパケット、例えば通常のパケットに対して実施される処理と同一のデータを有すると共に、試験パケットの識別子を有し、処理結果などが収集可能なパケットである。セレクタ13は入力バッファ11から出力されたパケットまたは試験パケット生成部12から出力された試験パケットを選択し、出力する。リコンフィギャラブルデバイス14は、処理速度V1+αでパケットを入力し、データフロー型のパイプライン処理により全てのパケットに対して同一の処理遅延時間(レイテンシ)でパケット処理を行なう。ここでは、この処理のレイテンシをdとする。また、リコンフィギュラブルデバイス114は回路の変更(リコンフィギュレーション)により機能または処理内容を変更可能である。試験結果判定・試験パケット除去部15は、試験パケットを入力し、判定し、除去する。出力バッファ16は、V1+αで入力するパケットをV1で出力する。制御部17は、入力バッファ11へのパケットの蓄積の制御、試験パケット生成部12への試験パケットの送出指示、およびセレクタ13の制御を行う。制御部17は入力バッファ11への入力パケットの蓄積を制御する。図1では、簡単のため、リコンフィギャラブルデバイスは1つの場合を示しているが、複数のリコンフィギャラブルデバイスを直列に接続した構成でもよい。
【0017】
次に、図1を用いて、通常動作について説明する。信号線111から入力バッファ11に入力されたパケットは、V1+αに速度変換され、セレクタ13、信号線112、を介してリコンフィギャラブルデバイス14に入力される。リコンフィギャラブルデバイス14では、パケット処理が実施され、処理結果を信号線113に出力する。信号線113から、試験結果判定・試験パケット除去部15に入力されたパケットは、そのまま出力バッファ16に入力され、V1に速度変換され信号線114に出力される。すなわち、入力バッファ11の出力から出力バッファ16に至るまでは、速度V1+αで転送および処理されており、入出力信号線111、114の回線速度よりα分の速い速度でデータフロー型のパイプライン処理が行なわれている。
【0018】
次に、リコンフィギャラブルデバイス14のハードウェア回路を変更する(リコンフィギュレーション)場合の動作について説明する。リコンフィギャラブルデバイス14をリコンフィギュレーションする場合は、回路中のパケットの紛失やデータ化けを避けるため、回路中のパケットが存在しない状態でリコンフィギュレーションする(無瞬断リコンフィギュレーション)必要がある。このため、リコンフィギュレーションする際は、制御部17の制御により予め入力バッファ11でパケットの出力を停止し、処理のレイテンシ分のパケットを蓄積し、パケットフローにパケットが存在しない空きタイミングを生成する。リコンフィギャラブルデバイス14は回路中にパケットが存在しない状態でリコンフィギュレーションを実施する。リコンフィギュレーションの実施後、入力バッファ11は、再びパケットの出力を速度V1+αで開始する。したがって、入力バッファ11でのパケットの滞留は、少なくともαの速度で解消される。すなわち、少なくとも、dに相当するパケット量/αの時間で解消されることになる。
【0019】
図2は、無瞬断リコンフィギュレーション時の入力バッファでの滞留状況を説明するものであり、入力バッファ11に入力されるパケットの平均実効レートとバッファの滞留量を時間経過に沿って表した例である。無瞬断リコンフィギュレーションのためのパケットの蓄積の開始、すなわちバッファ出力の停止は、バッファにパケットが無い状態から開始し(時刻t1)所要の量(dに相当するパケット量)まで(時刻t2)行い、その後、リコンフィギュレーションが実施される。dは、リコンフィギャラブルデバイス14の回路中にパケットが存在しない状態にするのに必要な量である。ここでは、リコンフィギュレーションは、マルチコンテキスト型デバイスを用い瞬時に実施されると仮定している。リコンフィギュレーション後、入力バッファ11はパケットの出力を開始するが、出力バッファ16の出力速度は、入力回線速度V1であるため入力バッファ11でのパケットの滞留は、少なくともαの速度で解消される。すなわち、少なくとも、dに相当するパケット量/αの時間で解消されることになり、次の無瞬断リコンフィギュレーションの実施は、入力のトラヒック状況に依存せず実施できる。
【0020】
具体的数値をあげて説明する。V1=10Gb/s、α=1Gb/s、d=1000クロックで、パケット処理は172Mb/sのクロックで64bitパラレル処理(172×64=11Gb/s)とする。このとき、dに相当するパケット量は、1000×64=64kbitで、滞留解消のために必要な時間は、64kbit/1Gbit/sec=64μsとなる。
【0021】
次に、リコンフィギャラブルデバイス14の故障検出のため試験診断を実施する時の動作について説明する。なお、この試験動作は、リコンフィギュレーション動作がおこなわれない時に実施する。試験パケット生成部12は、試験動作のための試験パケットを生成する。試験パケットの送出する際には、制御部17の制御により入力バッファ11からの通常のパケットの出力を停止し、試験パケットをセレクタ13を介してリコンフィギャラブルデバイス14に入力する。試験パケットの最大長はdに依存し、最短送出が可能な間隔はdに相当するパケット量/αである。リコンフィギャラブルデバイス14は、試験パケットの入力に対して、処理情報を試験パケットに付加するなどの予め定められた動作を実施し、試験結果判定・試験パケット除去部15に出力する。試験結果判定・試験パケット除去部15は受信した試験パケットから試験結果を判定すると共に試験パケットを除去する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態の、リコンフィギュアブルデバイスを用いたパケット処理装置のブロック図である。
【図2】図1のパケット処理装置における無瞬断リコンフィギュレーション時の入力バッファにおけるパケットの滞留状況を説明する図である。
【図3】リコンフィギュアブルデバイスを用いた従来のパケット処理装置のブロック図である。
【図4】図3の従来のパケット処理装置の無瞬断リコンフィギュレーション時の入力バッファにおけるパケットの滞留状況を説明する図である。
【符号の説明】
【0023】
1、2 リコンフィギュアブルデバイスを用いたパケット処理装置
14、23 リコンフィギュアブルデバイス
11、21 入力バッファ
16 出力バッファ
111、112、113、114、211、212、213 信号線
12 試験パケット生成部
13 セレクタ
15 試験結果判定・試験パケット除去部
17、22 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の速度のパケットを入力し、該第1の速度よりも大きい第2の速度でパケットを出力する入力バッファと、回路記述データの切り替えによりハードウェア回路の変更が可能な1つまたは複数直列され、前記入力バッファから出力された全てのパケットに対してデータフロー型のパイプライン処理により同一の遅延処理時間でパケット処理を行なって出力するリコンフィギュラブルデバイスと、該リコンフィギュラブルデバイスから出力された第2の速度のパケットを入力し、前記第1の速度で出力する出力バッファと、を有するパケット処理装置において、
前記入力バッファは、前記リコンフィギュラブルデバイスをリコンフィギュレーションする際、パケットの出力を停止し、前記処理遅延時間のパケットを一時的に蓄積した後、パケットの出力を開始し、少なくとも、前記処理遅延時間に相当するパケット量/(第2の速度と第1の速度の差分)の時間経過後に、次のリコンフィギュレーションのためのパケットの蓄積を開始するように構成されていることを特徴とするパケット処理装置。
【請求項2】
前記リコンフィギュラブルデバイスの試験診断のための試験パケットを生成する試験パケット生成部と、
通常は前記入力バッファから出力されたパケットを選択し、前記リコンフィギュラブルデバイスの試験時は、前記試験パケット生成部で生成された試験パケットを選択し、前記リコンフィギュラブルデバイスに入力するセレクタと、
前記リコンフィギュラブルデバイスから出力された試験パケットから試験結果を判定し、試験パケットを除去し、前記出力バッファに出力する試験結果判定・試験パケット除去部と
をさらに有する、請求項1に記載のパケット処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−157243(P2006−157243A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−342147(P2004−342147)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】