説明

パケット損失推定方法及び装置及びプログラム

【課題】 多数のTCPフローが競合する状態を簡便な方式でモデル化し、通信品質の推定方式を確立する。
【解決手段】 本発明は、多数のTCPフローを収容するリンク等の通信品質を推定する際に、パケット廃棄が発生して低下するスループット(以下、余剰帯域と記す)を算出し、前記データ通信プロトコルの輻輳ウィンドウサイズの挙動から生じた余剰帯域を再び使い切るまでにかかる時間を算出し、廃棄パケット数及び前記パラメータ算出ステップで求められた前記時間で送出したパケット数からリンク全体のパケット廃棄率を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターネットやイントラネット等のパケット通信ネットワークにおける通信品質制御技術に係り、特に、TCP(Transmission Control Protocol)のようなウィンドウ制御による自律的な送信レート制御機構を有するデータ通信プロトコルの転送品質を推定するためのパケット損失推定方法及び装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年通信網の広帯域化が進んでおり、より多くのトラヒックがインターネットを介して流通するようになった。また、インターネットトラヒックの多くは、TCP 通信であることが報告されており(例えば、非特許文献1参照)、ネットワークインフラの広帯域化に伴って、 VPNや映像配信等の高品質な通信を要求するサービスをTCPで実現する例も登場している。
【0003】
TCPはウィンドウ制御による自律的な送信レート制御機構を有するプロトコルであり、同一経路上に存在するトラヒック、特に他のTCPフローの影響を大きく受ける。そのため、TCPフローの本数や往復遅延時間などの条件が既知のときに、TCP通信のスループット及びパケット損失率を推定する方式が必要とされている。
【0004】
従来から、TCPフローのスループットを解析的に導出する理論式がある(例えば、非特許文献2参照)。
【0005】
非特許文献2では、TCPのウィンドウサイズの遷移状態をパケット損失率からモデル化し、
【0006】
【数1】

と与えた。ここで、MSSはパケットサイズを、RTTは平均の往復遅延時間を、pはパケット損失率を、T0はタイムアウト値を、bは一つのACKにより到着確認されるパケット数を示す。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】K. Cho, K. Fukuda, H. Esaki and Akira Kato, "Observing Slow Crustal Movement in Residential User Traffic," ACM CoNEXT2008, Dec. 2008.
【非特許文献2】Jitendra Padhye, Victor Froiu, Don Towsley, Jim Kurose, "Modeling TCP Throughput: A Simple Model and its Empirical Validation", ACM-SIGCOMM, pp.303-314,Sep. 1998.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の非特許文献2のモデルでは、ルータのバッファ量がRTTに、他フローとの競合の影響がpに組み込まれているが、もともとのモデル化においては、他フローとの競合や輻輳状態における挙動を想定していない。そのため、他のTCPフローが混在し、輻輳が生じる状態については適用できず、通信品質の推定方法としては精度が悪い方式となる。
【0009】
このように、TCPはウィンドウ制御による自律的な送信レート制御機構を有するプロトコルであり、同一経路上に存在するトラヒック、特に、他のTCPフローの影響を大きく受ける。そのため、TCPフローの本数や往復遅延時間などの条件が既知のときに、TCP通信のスループット及びパケット損失率を推定する方式が望まれている。
【0010】
本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、多数のTCPフローが競合する状態を簡便な方式でモデル化し、通信品質の推定方式を確立することが可能なパケット損失推定方法及び装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明(請求項1)は、パケット交換により通信を行うネットワークを介して、受信端末が送信端末からのデータパケットの受信時に受信確認パケットを上記送信端末に返信し、該送信端末は受信確認パケットにより、受信端末が受信したデータ量を把握する機能、送出済みのデータのうち、受信側に未達のデータ量をウィンドウサイズ以下に抑えて送信する機能を有し、
該ウィンドウサイズが前記受信端末からの受信確認パケットが届くごとに増加するデータ通信プロトコルのフローを収容するネットワークにおいて、通信中の通信品質を推定するパケット損失推定方法であって、
前記送信端末において、
パラメータ算出手段が、
パケット廃棄が発生して低下するスループット(以下、余剰帯域と記す)を算出し、前記データ通信プロトコルの輻輳ウィンドウサイズの挙動から生じた余剰帯域を再び使い切るまでにかかる時間を算出するパラメータ算出ステップと、
パケット損失率算出手段が、
廃棄パケット数及び前記パラメータ算出ステップで求められた前記時間で送出したパケット数からリンク全体のパケット廃棄率を求めるパケット損失率算出ステップと、を行う。
【0012】
また、本発明(請求項2)は、請求項1において、パラメータ入力手段が、
前記パラメータ算出ステップで求められた値をパラメータとして取得し、
前記パケット損失率算出ステップにおいて、
前記パラメータ入力手段により入力された値を、所定の計算式に代入することにより前記パケット廃棄率を求める。
【0013】
また、本発明(請求項3)は、請求項2の前記パケット損失率算出ステップにおいて、
前記パラメータ入力手段より、前記パラメータとして、通信経路上のボトルネックとなるリンクにおけるバッファ量Bf、該リンク帯域BW、該リンクに収容する通信のフロー数N、往復遅延時間RTT、パケットサイズpkt、係数α、kを取得し、前記パケット廃棄率を求める。
【0014】
また、本発明(請求項4)は、請求項3の前記パケット損失率算出ステップにおいて、
前記パラメータ入力手段より、前記パラメータとして、ボトルネックリンク以外でかかる遅延時間RTTminを更に取得し、
前記往復遅延時間RTTを、前記遅延時間RTTminに前記バッファ量Bfを前記リンク帯域BWで除した値を加えた値とし、前記パケット廃棄率を求める。
【0015】
また、本発明(請求項5)は、請求項2の前記パケット損失率算出ステップにおいて、
前記パラメータ入力より、前記パラメータとして、前記リンク帯域BWを任意のスループットRで除した値を、前記フロー数Nとして取得し、任意のスループットに対するパケット廃棄率を求める。
【0016】
また、本発明(請求項6)は、請求項5の前記パケット損失率算出ステップにおいて、
前記パラメータ入力手段より、前記パラメータとして、ボトルネックリンク以外でかかる遅延時間RTTminを更に取得し、
前記往復遅延時間RTTを、前記遅延時間RTTminに前記バッファ量Bfを前記リンク帯域BWで除した値として、前記パケット廃棄率を求める。
【0017】
また、本発明(請求項7)は、パケット交換により通信を行うネットワークを介して、受信端末が送信端末からのデータパケットの受信時に受信確認パケットを上記送信端末に返信し、該送信端末は受信確認パケットにより、受信端末が受信したデータ量を把握する機能、送出済みのデータのうち、受信側に未達のデータ量をウィンドウサイズ以下に抑えて送信する機能を有し、
該ウィンドウサイズは前記受信端末からの受信確認パケットが届くごとに増加するデータ通信プロトコルのフローを収容するネットワークにおける通信中の通信品質を推定する送信端末内のパケット損失推定装置であって、
パケット廃棄が発生して低下するスループット(以下、余剰帯域と記す)を算出し、前記データ通信プロトコルの輻輳ウィンドウサイズの挙動から生じた余剰帯域を再び使い切るまでにかかる時間を算出するパラメータ算出手段と、
廃棄パケット数及び前記パラメータ算出ステップで求められた前記時間で送出したパケット数からリンク全体のパケット廃棄率を求めるパケット損失率算出手段と、を有する。
【0018】
また、本発明(請求項8)は、請求項7のパケット損失率推定装置において、
前記パラメータ算出手段で算出されたパラメータを取得して、前記パケット損失率算出手段に入力するパラメータ入力手段を更に有し、
前記パケット損失率算出手段は、
前記パラメータ入力手段により入力された前記パラメータを、所定の計算式に代入することにより前記パケット廃棄率を求める手段を含む。
【0019】
また、本発明(請求項9)は、請求項8のパケット損失率推定装置において、
前記パラメータ入力手段は、
前記パラメータとして、通信経路上のボトルネックとなるリンクにおけるバッファ量Bf、該リンク帯域BW、該リンクに収容する通信のフロー数N、往復遅延時間RTT、パケットサイズpkt、係数α、kを前記パケット損失率算出手段に入力する手段を含み、
前記パケット損失率算出手段は、
前記パラメータ入力手段より取得した前記パラメータを用いて前記パケット廃棄率を求める手段を含む。
【0020】
また、本発明(請求項10)は、請求項9のパケット損失率推定装置において、
前記パラメータ入力手段は、
前記パラメータとして、ボトルネックリンク以外でかかる遅延時間RTTminを、更に前記パケット損失率算出手段に入力する手段を含み、
前記パケット損失率算出手段は、
前記往復遅延時間RTTを、前記パラメータ入力手段より取得した前記遅延時間RTTminに前記バッファ量Bfを前記リンク帯域BWで除した値を加えた値として、前記パケット廃棄率を求める手段を含む。
【0021】
また、本発明(請求項11)は、請求項8記載のパケット損失推定装置において、
前記パラメータ入力手段は、
前記パラメータとして、前記リンク帯域BWを任意のスループットRで除した値を、前記フロー数Nとして前記パケット損失率算出手段に入力する手段を含み、
前記パケット損失率算出手段は、
前記フロー数Nを用いて、任意のスループットに対するパケット廃棄率を求める手段を含む。
【0022】
また、本発明(請求項12)は、請求項11記載のパケット損失推定装置において、
前記パラメータ入力手段は、
前記パラメータとして、ボトルネックリンク以外でかかる遅延時間RTTminを、更に前記パケット損失率算出手段に入力する手段を含み、
前記パケット損失率算出手段は、
前記往復遅延時間RTTを、前記遅延時間RTTminに前記バッファ量Bfを前記リンク帯域BWで除した値として、前記パケット廃棄率を求める手段を含む。
【0023】
また、本発明(請求項13)は、請求項7乃至12のいずれか1項に記載のパケット損失推定装置を構成する各手段としてコンピュータを機能させるためのパケット損失推定プログラムである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、多重化されたTCPフローの合計スループットを簡便な方式で模式化を行うことで、TCPフローを複数多重化した際のスループット及びパケット損失率の関係を推定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】TCPスループットのモデル化の例である。
【図2】本発明の一実施の形態におけるパケット損失推定装置の構成図である。
【図3】本発明の第1の実施例の動作のフローチャートである。
【図4】本発明の第2の実施例の動作のフローチャートである。
【図5】本発明の第3の実施例の動作のフローチャートである。
【図6】パケットシミュレーションによるスループットと損失率の関係及び第3の実施例の推定式における結果である。
【図7】本発明の第4の実施例の動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下図面と共に、本発明の実施の形態を説明する。
【0027】
本発明は、パケット交換により通信を行うネットワークに送信端末と受信端末が接続されているシステムにおいて、多数のTCPフローを収容するネットワークの通信品質を推定する技術であって、ボトルネックのバッファ量や往復伝搬遅延、パケットサイズ、及びTCPフローの本数またはフローのスループットを与えることで、当該フローのパケット損失率を推定するものである。
【0028】
当該ネットワークにおいて、受信端末が送信端末からのデータパケットの受信時に受信確認パケットを送信端末に返信し、送信端末は受信確認パケットにより、受信端末が受信したデータ量を把握する機能を有する。また、送信端末は、送出済みのデータのうち、受信側に未達のデータ量をウィンドウサイズ以下に抑えて送信する機能を有し、ウィンドウサイズは受信端末からの受信確認パケットが届く毎に増加する。
【0029】
以下では、上記の送信端末内においてTCPフローの通信品質を推定するパケット損失通信装置について説明する。
【0030】
本発明では、以下に示すモデル化を行い、TCPフローの通信品質推定を行う。
【0031】
TCP はウィンドウ制御による自律的な送信レート制御機構を有するプロトコルであり、典型的なTCPでは、パケット損失が発生した場合に輻輳ウィンドウサイズを半減させ、送信レートを低下させる動作をとる。
【0032】
一般に多数のTCPフローが混在する場合には、各フローが送信レートを順次上げ、合計の送信レートがある一定を超えた場合パケット廃棄が発生する。パケット廃棄は通常複数フローに発生し、廃棄のあったフローは送信レートを低下させる。それにより廃棄のあったフローの低下したレートの合計分だけ余剰帯域が発生すると考えることができる。
【0033】
これらの動作をより簡易に表現すると、以下のように考えることができる。
【0034】
図1は、TCPスループットのモデル化の例を示す。
【0035】
1)各TCPフローが輻輳ウィンドウサイズを増加させ、送信レートを増加;
2)合計スループットが一定を超えるとパケット廃棄が発生;
3)パケット損失が発生したフローは輻輳ウィンドウサイズを半分にし、送信レートを減少させる、余剰帯域が発生;
4)各フローが輻輳ウィンドウサイズを増加させ、送信レートを増加させ、余剰帯域を消費する;
5)以下、2)〜4)の繰り返し。
【0036】
図2は、本発明の一実施の形態におけるパケット損失推定装置の構成を示す。
【0037】
同図に示すパケット損失推定装置は、パケット損失率の計算を行うためのパラメータが入力されるパラメータ入力部10、入力されたパラメータを用いてパケット損失率を計算するパケット損失率算出部20、計算されたパケット損失率を格納するメモリ30、メモリ30からパケット損失率を読み出して出力する出力部50から構成される。
【0038】
パラメータ入力部10は、予め、パラメータ算出手段(図示せず)にて求められたパケット廃棄が発生して低下するスループット(余剰帯域)及び、TCPの輻輳ウィンドウサイズの挙動から生じた余剰帯域を再び使い切るまでにかかる時間を取得して、それらをパラメータとしてパケット損失率算出部20に入力する。
【0039】
パケット損失率算出部20は、パラメータ入力部10から入力された廃棄パケット数、TCPの輻輳ウィンドウサイズの挙動から生じた余剰帯域を再び使い切るまでにかかる時間で送出したパケット数から廃棄率を求める。なお、パケット損失率算出部20の計算については、実施例にて詳述する。
【実施例】
【0040】
[第1の実施例]
図3は、本発明の第1の実施例の動作のフローチャートである。
【0041】
パケット損失率算出部20は、図2に示すパラメータ入力部10から通信経路上のボトルネックとなるリンクにおけるバッファ量Bf、該リンク帯域BW、該リンクに収容する通信の本数N、平均往復遅延時間RTT、パケットサイズpktが入力されると(ステップ101)、これらのパラメータを用いて以下の計算を行う。本実施例では、N本のすべてのフローが同一の平均往復遅延時間RTTを持つ場合の、リンク全体のパケット損失率を推定する(ステップ102)。なお、パラメータ入力部10は、パラメータ算出手段(図示せず)で求められた値及び、オペレータからの入力、または、ネットワークから必要なパラメータを取得してパケット損失率算出部20に入力するものとする。
【0042】
TCPフローの送信レートの合計が、リンク帯域BWに達すると、パケットがNフローのうち、kフローに各αパケットのパケット損失が発生するものとする。
【0043】
このとき、パケット損失が発生したフローに
【0044】
【数2】

の送信レートが低下するとみなすと、kフロー合計のスループット低下△decは、
【0045】
【数3】

と表される。
【0046】
パケット損失発生後には、パケットの実際の往復遅延時間RTT経過するごとに各TCPフローがウィンドウサイズを1つずつ増加させ、送信レートが高くなるものとする。
【0047】
1RTT経過するたびに増加する送信レート△incは、
【0048】
【数4】

であると考えられるため、再びパケット損失が発生するまでの時間は、
【0049】
【数5】

となる。したがって、リンク全体のパケット損失率LN
【0050】
【数6】

と推定できる。
【0051】
ここで、ρは、平均帯域使用率で、本モデルでは、
【0052】
【数7】

と表される。
【0053】
上記のように求められたパケット損失率LNをメモリ30に出力する。
【0054】
出力部40は、メモリ30からパケット損失率LNを読み出して出力する。
【0055】
[第2の実施例]
前述の第1の実施例では、平均往復遅延時間を用いたが、本実施例においては、平均往復遅延時間を推定する。
【0056】
図4は、本発明の第2の実施例の動作のフローチャートである。
【0057】
パラメータ入力部10にTCPフロー数N、ボトルネックのリンク帯域BW、ボトルネックのバッファ量Bfが入力されると(ステップ201)、パケット損失率算出部20は、以下の計算を行い、メモリ30にパケット損失率LNを格納する(ステップ202)。
【0058】
ボトルネックリンク以外でかかる遅延時間RTTmin及びバッファ量Bfを用いて、
【0059】
【数8】

とおき、前述の第2の実施例と同様に、パケット損失率LN、及び平均帯域使用率ρを推定する。
【0060】
出力部40は、メモリ30からパケット損失率LNを読み出して出力する(ステップ203)。
【0061】
[第3の実施例]
前述の第1の実施例では、TCPのフロー数をNとおき、N本多重した際のパケット損失率を推定したが、本実施例では、それを応用し、任意のスループットに対するパケット損失率を推定する。本実施例では、異なるRTTのTCPフローが混在した場合であっても、そのTCPフローのスループット及びRTTが既知のときに、パケット損失率を推定することを特徴とする。
【0062】
図5は、本発明の第3の実施例の動作のフローチャートである。
【0063】
パラメータ入力部10に、TCPフローのスループットR、平均往復遅延時間RTT、ボトルネックのリンク帯域BWが入力されると(ステップ301)、パケット損失率算出部20は、以下の計算を行い、メモリ30にパケット損失率Lrを格納する(ステップ302)。
【0064】
ここで、パケット損失率算出部20は、TCPフローのスループットRと、第1の実施例におけるNを
【0065】
【数9】

とみなし、パケット損失率Lr
【0066】
【数10】

として推定を行い、パケット損失率Lrをメモリ30に格納する。
【0067】
出力部40は、メモリ30からパケット損失率LNを読み出して出力する(ステップ203)。
【0068】
本実施例により任意のスループットに対するパケット損失率を推定することができる。
【0069】
図6に、パケットシミュレーションによるスループットと損失率の関係、及び本実施例の推定式における結果を示す。k=N、α=1、RTT=(往復伝搬遅延)+Buf/BWとしたばあいのスループットと損失率の関係(プロット点がさまざまな条件下によるシミュレーションの結果、点線が本発明による推定結果を示す。シミュレーション条件として、対象フローの往復の伝搬遅延を10msと20msのフローをさまざまな比率で混合した際の、10msのフローのみのスループットとパケット損失率をプロットした。
【0070】
のパケット損失率Lr推定式により精度よくシミュレーションの値を表していることが分かり、高い効果が得られた。
【0071】
[第4の実施例]
前述の第3の実施例において、平均往復遅延時間を用いたが、本実施例においては、平均往復遅延時間を推定する。
【0072】
図7は、本発明の第4の実施例の動作のフローチャートである。
【0073】
パラメータ入力部10にTCPスループットR、ボトルネックのリンク帯域BW、ボトルネックのバッファ量Bfが入力されると(ステップ401)、パケット損失率算出部20は、以下の計算を行い、メモリ30にパケット損失率LNを格納する(ステップ402)。
【0074】
パケット損失率算出部20は、ボトルネックリンク以外でかかる遅延時間RTTmin及びバッファ量Bfを用いて、
【0075】
【数11】

とおき、第3の実施例と同様にパケット損失率Lrを推定する。
【0076】
パケット損失率Lrをメモリ30に格納する。
【0077】
出力部40は、メモリ30からパケット損失率LNを読み出して出力する(ステップ403)。
【0078】
上記の第1〜第4の実施例により、多重化されたTCPフローの合計スループットを、モデル化することで、高い精度でパケット損失率の推定を行うことが可能となる。
【0079】
また、第1〜第4の実施例の動作を行うパケット損失推定装置の構成要素の動作をプログラムをとして構築し、パケット損失推定装置として動作するコンピュータにインストールして実行させる、または、ネットワークを介して流通させることが可能である。
【0080】
また、構築されたプログラムを、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD−ROM等の可搬記憶媒体に格納し、コンピュータにインストールする、または、配布することが可能である。
【0081】
なお、本発明は、上記の実施の形態及び実施例に限定されることなく、特許請求の範囲内において、種々変更・応用が可能である。
【符号の説明】
【0082】
10 パラメータ入力部
20 パケット損失率算出部
30 メモリ
40 出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パケット交換により通信を行うネットワークを介して、受信端末が送信端末からのデータパケットの受信時に受信確認パケットを上記送信端末に返信し、該送信端末は受信確認パケットにより、受信端末が受信したデータ量を把握する機能、送出済みのデータのうち、受信側に未達のデータ量をウィンドウサイズ以下に抑えて送信する機能を有し、
該ウィンドウサイズが前記受信端末からの受信確認パケットが届くごとに増加するデータ通信プロトコルのフローを収容するネットワークにおいて、通信中の通信品質を推定するパケット損失推定方法であって、
前記送信端末において、
パラメータ算出手段が、
パケット廃棄が発生して低下するスループット(以下、余剰帯域と記す)を算出し、前記データ通信プロトコルの輻輳ウィンドウサイズの挙動から生じた余剰帯域を再び使い切るまでにかかる時間を算出するパラメータ算出ステップと、
パケット損失率算出手段が、
廃棄パケット数及び前記パラメータ算出ステップで求められた前記時間で送出したパケット数からリンク全体のパケット廃棄率を求めるパケット損失率算出ステップと、
を行うことを特徴とするパケット損失推定方法。
【請求項2】
パラメータ入力手段が、
前記パラメータ算出ステップで求められた値をパラメータとして取得し、
前記パケット損失率算出ステップにおいて、
前記パラメータ入力手段により入力された値を、所定の計算式に代入することにより前記パケット廃棄率を求める
請求項1記載のパケット損失率推定方法。
【請求項3】
前記パケット損失率算出ステップは、
前記パラメータ入力手段より、前記パラメータとして、通信経路上のボトルネックとなるリンクにおけるバッファ量Bf、該リンク帯域BW、該リンクに収容する通信のフロー数N、往復遅延時間RTT、パケットサイズpkt、係数α、kを取得し、前記パケット廃棄率を求める
請求項2記載のパケット損失率推定方法。
【請求項4】
前記パケット損失率算出ステップにおいて、
前記パラメータ入力手段より、前記パラメータとして、ボトルネックリンク以外でかかる遅延時間RTTminを更に取得し、
前記往復遅延時間RTTを、前記遅延時間RTTminに前記バッファ量Bfを前記リンク帯域BWで除した値を加えた値とし、前記パケット廃棄率を求める
請求項3記載のパケット損失推定方法。
【請求項5】
前記パケット損失率算出ステップにおいて、
前記パラメータ入力より、前記パラメータとして、前記リンク帯域BWを任意のスループットRで除した値を、前記フロー数Nとして取得し、任意のスループットに対するパケット廃棄率を求める
請求項2記載のパケット損失推定方法。
【請求項6】
前記パケット損失率算出ステップにおいて、
前記パラメータ入力手段より、前記パラメータとして、ボトルネックリンク以外でかかる遅延時間RTTminを更に取得し、
前記往復遅延時間RTTを、前記遅延時間RTTminに前記バッファ量Bfを前記リンク帯域BWで除した値として、前記パケット廃棄率を求める
請求項5記載のパケット損失推定方法。
【請求項7】
パケット交換により通信を行うネットワークを介して、受信端末が送信端末からのデータパケットの受信時に受信確認パケットを上記送信端末に返信し、該送信端末は受信確認パケットにより、受信端末が受信したデータ量を把握する機能、送出済みのデータのうち、受信側に未達のデータ量をウィンドウサイズ以下に抑えて送信する機能を有し、
該ウィンドウサイズは前記受信端末からの受信確認パケットが届くごとに増加するデータ通信プロトコルのフローを収容するネットワークにおける通信中の通信品質を推定する送信端末内のパケット損失推定装置であって、
パケット廃棄が発生して低下するスループット(以下、余剰帯域と記す)を算出し、前記データ通信プロトコルの輻輳ウィンドウサイズの挙動から生じた余剰帯域を再び使い切るまでにかかる時間を算出するパラメータ算出手段と、
廃棄パケット数及び前記パラメータ算出ステップで求められた前記時間で送出したパケット数からリンク全体のパケット廃棄率を求めるパケット損失率算出手段と、
を有することを特徴とするパケット損失推定装置。
【請求項8】
前記パラメータ算出手段で算出されたパラメータを取得して、前記パケット損失率算出手段に入力するパラメータ入力手段を更に有し、
前記パケット損失率算出手段は、
前記パラメータ入力手段により入力された前記パラメータを、所定の計算式に代入することにより前記パケット廃棄率を求める手段を含む
請求項7記載のパケット損失率推定装置。
【請求項9】
前記パラメータ入力手段は、
前記パラメータとして、通信経路上のボトルネックとなるリンクにおけるバッファ量Bf、該リンク帯域BW、該リンクに収容する通信のフロー数N、往復遅延時間RTT、パケットサイズpkt、係数α、kを前記パケット損失率算出手段に入力する手段を含み、
前記パケット損失率算出手段は、
前記パラメータ入力手段より取得した前記パラメータを用いて前記パケット廃棄率を求める手段を含む
請求項8記載のパケット損失率推定装置。
【請求項10】
前記パラメータ入力手段は、
前記パラメータとして、ボトルネックリンク以外でかかる遅延時間RTTminを、更に前記パケット損失率算出手段に入力する手段を含み、
前記パケット損失率算出手段は、
前記往復遅延時間RTTを、前記パラメータ入力手段より取得した前記遅延時間RTTminに前記バッファ量Bfを前記リンク帯域BWで除した値を加えた値として、前記パケット廃棄率を求める手段を含む
請求項9記載のパケット損失推定装置。
【請求項11】
前記パラメータ入力手段は、
前記パラメータとして、前記リンク帯域BWを任意のスループットRで除した値を、前記フロー数Nとして前記パケット損失率算出手段に入力する手段を含み、
前記パケット損失率算出手段は、
前記フロー数Nを用いて、任意のスループットに対するパケット廃棄率を求める手段を含む
請求項8記載のパケット損失推定装置。
【請求項12】
前記パラメータ入力手段は、
前記パラメータとして、ボトルネックリンク以外でかかる遅延時間RTTminを、更に前記パケット損失率算出手段に入力する手段を含み、
前記パケット損失率算出手段は、
前記往復遅延時間RTTを、前記遅延時間RTTminに前記バッファ量Bfを前記リンク帯域BWで除した値として、前記パケット廃棄率を求める手段を含む
請求項11記載のパケット損失推定装置。
【請求項13】
請求項7乃至12のいずれか1項に記載のパケット損失推定装置を構成する各手段としてコンピュータを機能させるためのパケット損失推定プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−54781(P2012−54781A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196035(P2010−196035)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】