説明

パケット送受信方法及び装置

【課題】本発明はパケット送受信方法及び装置に関し、パケットの初回送信時と再送時の伝搬路状態が異なった場合に、無駄な再送パケットの送信を防ぎ、効率的な無線リソースの使用を可能とすることを目的としている。
【解決手段】伝搬路の状態に応じた変調パラメータを選択して送信するAMC方式と、パケットデータに誤りがあった場合、再送データを送信し、その前に受信した誤りのあるパケットデータを合成してデータを再生するH−ARQ方式とを組み合わせて用いるパケット送受信装置において、AMC制御により決定した初回に送信したパケットデータの変調パラメータと再送パケットデータを送信する時の受信品質を基にAMC制御により決定する変調パラメータとを比較する比較手段と、初回送信時のものより再送時の変調パラメータが低伝搬路品質対応のものであった場合、再送回数を制御して再送を停止する再送制御手段とを有して構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパケット伝送を行なう移動通信システムにおいて、伝搬路状態に応じてパケットを効率的に送信するためのパケット送受信方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信システムは、マルチメディアやインターネットへの対応が必要となり、様々な品質や伝送レートを効率よく伝送することが要望されている。効率的な伝送を行なう手段としてAMC(Adaptive Modulation and Coding)やH-ARQ(Hybrid Automatic Repeat Request)がある。以下に、AMC方式とH−ARQ方式の動作について説明する。
1)AMC方式
無線伝搬路は刻一刻と変化するために、伝送路の状態に合わせた信号の送信が必要となってくる。その一例として、変調パラメータ(変調方式、符号化率、拡散率等)を伝搬路状態に合わせて変える方法がある。ここで、符号化率とは送信するデータを符号化して出力する時の符号化に関する値であり、例えばある信号を符号化して3個に拡大する場合の符号化率は1/3であるという。拡散率は、符号化された信号を複数にコピーして伝搬し、受信局側で合成して元のデータを再生する場合のコピーの数をいう。例えば、1つの信号を2系統に分けて伝搬する場合、拡散率は2であるという。
【0003】
この方法はAMC(適応変調又は適応変復調)と呼ばれる。送受信データは、一般的に各種の多値変調方式により変調され、誤り訂正が施される。伝搬路状態が良い場合は、多値数を増やし、符号化率を1に近づけることで送信データを増加させ伝送スループットを高くする。そのため、伝送誤り率に対する耐力は弱くなる。
【0004】
逆に、伝搬路状態が悪い場合は、多値数を減らし、符号化率を小さくすることで、送信データ量を減らし、伝送誤り率の上昇を防止することができる。このように、伝搬路の状態に応じて変調パラメータを変えることで、伝送誤りの上昇が抑えられ効率的な伝送が可能となる。
2)H-ARQ方式
受信したパケットを再度送信する再送方式がある。受信側では、受信したパケットが正確に復号されているかどうかの判定を行ない、受信成功(ACK)/失敗(NACK)を送信側に通知する。送信側では、送信したパケットのデータ情報をバッファに蓄えており、受信失敗の通知があった場合、そのパケットを再送する。
【0005】
更に、再送信号の受信品質を改善させるために、受信側でデータを合成する方法がある。受信側では、受信に失敗し、NACKとなった誤りを含むパケットデータをバッファに蓄積する。そして、再送されてきたパケットを受信した際に、バッファ内のデータと再送データとを合成する。データの合成とは、1回目のデータと2回目のデータとを足して割ることで、受信品質が改善される。この場合、再送回数が増えるほど改善の度合いが高くなり、パケット受信の成功率が高まる。
【0006】
従来のこの種の技術としては、再送パケット信号に付加されている第1のパラメータとバッファから取り出したパケットデータに付加されている第2のパラメータとを比較し、比較により再送時の伝搬路状態が悪い場合、バッファから取り出したパケットデータの一部を取り出して再送パケットと合成し、復号部でこの合成結果に基づいて復号処理を行なう技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0007】
また、受信するパケットのヘッダ部分に含まれるサービスクラス単位に、制御方法を設定し、受信パケットの格納を行なうバッファメモリにおける各サービスクラスについての割り当て領域を前記サービスクラスの設定数に応じて変更する技術が知られている(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005−33399号公報(段落0023〜0031、図1、図3、図5)
【特許文献2】特開2004−180019号公報(段落0031〜0050、図1〜図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
伝搬路状態に応じて変調パラメータを変えて信号を伝送するAMCにおいて、受信に失敗したパケットを再送する場合、初回送信時と同一の変調パラメータで信号変調されたパケットを送信することになる。これは、受信側において初回時と再送時のパケットデータを合成しなければならず、変調パラメータが変わると合成できなくなるためである。
【0009】
そこで、初回送信時よりも再送時の伝搬路状態が悪い場合、再送データは伝搬路状態が良い時の変調パラメータで再送されるため、多くの受信誤りが発生し、合成による品質改善が望めなくなる。このような場合、再送合成を継続してパケットを正常に受信することができず、無駄に無線リソースを使用してしまうことになる。
【0010】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、パケットの初回送信時と再送時の伝搬路状態が異なった場合に、無駄な再送パケットの送信を防ぎ、効率的な無線リソースの使用を可能とするパケット送受信方法及び装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)請求項1記載の発明は、送信局と受信局とでパケットデータの送受信を行なう場合であって、伝搬路の状態に応じた変調パラメータを選択して送信するAMC方式と、パケットデータに誤りがあった場合、再送データを送信し、その前に受信した誤りのあるパケットデータを合成してデータを再生するH−ARQ方式とを組み合わせて用いるパケット送受信方法において、AMC制御により決定した初回に送信したパケットデータの変調パラメータと再送パケットデータを送信する時の受信品質を基にAMC制御により決定する変調パラメータを比較し、初回送信時のものより再送時の変調パラメータが低伝搬路品質対応のものであった場合、再送回数を制御して再送を停止することを特徴とする。
【0012】
(2)請求項2記載の発明は、送信局と受信局とでパケットデータの送受信装置を行なう装置であって、伝搬路の状態に応じた変調パラメータを選択して送信するAMC方式と、パケットデータに誤りがあった場合、再送データを送信し、その前に受信した誤りのあるパケットデータを合成してデータを再生するH−ARQ方式とを組み合わせて用いるパケット送受信装置において、AMC制御により決定した初回に送信したパケットデータの変調パラメータと再送パケットデータを送信する時の受信品質を基にAMC制御により決定する変調パラメータとを比較する比較手段と、初回送信時のものより再送時の変調パラメータが低伝搬路品質対応のものであった場合、再送回数を制御して再送を停止する再送制御手段と、を有して構成されることを特徴とする。
【0013】
(3)請求項3記載の発明は、パケットデータを再送する場合に、その再送回数をN段で保護するN段保護回路を更に設け、送信局でのパラメータ比較結果が連続でN回再送終了と判断された場合にのみ前記再送制御手段は再送停止の制御を行なうことを特徴とする。
【0014】
(4)請求項4記載の発明は、前記再送制御手段は、前記変調パラメータの代わりに、受信局で計測した伝搬路品質を監視し、再送要求受信時に初回送信時からの伝搬路品質劣化量を計測し、その値と初回送信時の変調パラメータを判定要因として、予めテーブルとして用意する初回変調パラメータ毎に再送終了判定用の閾値との比較判定により再送の制御を行なうようにしたことを特徴とする。
【0015】
(5)請求項5記載の発明は、伝搬路品質劣化量と判定閾値による再送終了判定に連続N段の保護回路を設け、送信局でのパラメータ比較結果が連続でN回再送終了と判定された場合にのみ前記再送制御手段は再送停止の制御を行なうことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
(1)請求項1記載の発明によれば、再送時の変調パラメータが初回送信時の変調パラメータが初回時のものよりも低伝搬路品質のものであった場合に、再送を停止することにより、無駄な再送パケットの送信を防ぎ、効率的な無線リソースの使用を可能とすることができる。
【0017】
(2)請求項2記載の発明によれば、再送時の変調パラメータと初回送信時の変調パラメータとを比較手段により比較し、再送時の変調パラメータが初回時のものよりも低伝搬路品質のものであった場合に、再送を停止することにより、無駄な再送パケットの送信を防ぎ、効率的な無線リソースの使用を可能とすることができる。
【0018】
(3)請求項3記載の発明によれば、N段の保護回路を設け、N回再送しても変調パラメータが改善しない場合に、再送を停止し、無駄な再送パケットの送信を防ぎ、効率的な無線リソースの使用を可能とすることができる。
【0019】
(4)請求項4記載の発明によれば、前記変調パラメータの代わりに伝搬路品質を用い、該伝搬路品質の劣化量が所定の閾値よりも大きくなったら再送を停止することにより、無駄な再送パケットの送信を防ぎ、効率的な無線リソースの使用を可能とすることができる。
【0020】
(5)請求項5記載の発明によれば、伝搬路品質劣化量と判定閾値による再送終了判定に連続N段の保護回路を設けることにより、N回送信しても伝搬路品質が改善されなかった場合に再送を停止することにより、無駄な再送パケットの送信を防ぎ、効率的な無線リソースの使用を可能とすることができる。
【0021】
以上の発明の構成における再送の原因としては、基本的に伝送路の品質劣化に伴うデータパケットの受信エラーを想定している。他の再送要因としては、パケットデータと共に送信される制御チャネルデータの受信エラー、装置の送受信特性に起因する瞬時的な特性劣化(装置固有の特性)による受信データエラー等が考えられるが、受信局側のベースバンド処理部からみた場合、いずれも伝送路の品質劣化が原因とみなせる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態例を詳細に説明する。図1は本発明の第1の実施の形態例を示すブロック図である。図に示す装置は、伝搬路状態に応じて再送回数を制御するパケット送受信装置を示すものである。図において、20は送信局、30は受信局である。送信局20と受信局30間は無線で送受信される。
【0023】
送信局20において、1は送信データ、2は該送信データを一時的に格納する送信データバッファ、3は送信データを変調する変調部、4は該変調部3で変調されたデータを送信する送信部である。5は送信データバッファ2に格納されているデータの再送制御を行なう再送制御部、6は受信局30からの伝搬路品質データを受けて変調部3の変調パラメータを決めるAMC制御部である。
【0024】
該AMC制御部6の出力は、変調部3と再送制御部5とAMC比較部7に与えられている。7は再送制御部5及びAMC制御部6の出力とを受けて先の送信時と、今回送信時における変調パラメータを比較して再送制御部5を制御するAMC比較部である。
【0025】
受信局30において、8は送信局20から送られてきたデータを受ける受信部、9は該受信部8で受信されたデータを復調する復調部、12は受信部8の出力を受けて伝搬路の品質を測定する品質測定部である。該品質測定部12の出力は、例えばSIR等であり、送信局20のAMC制御部6に通知される。
【0026】
13は復調部9の出力を受けて再送されてきたデータを読取り、読取り結果に基づいて制御を行なう再送制御部、10は復調部9で復調されたデータに対して、再送制御部13から与えられる制御データを基に再送データの合成を行なう再送合成部である。14は再送合成部10で合成されたデータを一時的に格納する合成データバッファ、11は再送合成部10で合成されたデータを判定するデータ判定部である。該データ判定部11からはACK信号、NACK信号が送信局20の再送制御部5に与えられる。前記再送制御部13の制御信号は合成データバッファ14にも与えられている。
【0027】
図2は送信局から受信局へのデータフォーマット例を示す図である。送信データは、パイロット部50と、再送制御データ部51と、再送制御データ部52から構成されている。この内、制御部51は、パケット番号51aと、変調パラメータ51bと、再送回数51cから構成されている。パケット番号51aはデータを識別するために付与する番号、変調パラメータ51bはデータを変調した時のパラメータ、再送回数51cは何回目の再送かまたは再送終了かを示す。このように構成された装置の動作を説明すれば、以下の通りである。
【0028】
図3は送信局の動作を示すフローチャート、図4は受信局の動作を示すフローチャートである。図3、図4において、「最大再送回数」とあるが、一般的に該当する送受信装置に実装する再送バッファ容量等の制限により、再送データの格納数が限られてくるところからくる再送処理が実行可能な回数を意味するものであり、ここでは説明上、最大再送回数に達した場合に再送処理を終了するという位置づけとしている。
(送信局の動作)
送信局20において、再送制御部5は受信局30から送られてくるACK/NACK情報により初回送信データか再送データかを決定する(S1)。データがACK(新規データ)である場合再送制御部5は送信データ1を、データがNACKである場合、送信データバッファ2のデータを選択する。
【0029】
初回送信データの場合、送信データを送信データバッファ2に格納する(S2)。AMC制御部6において、受信局30からの伝搬路品質情報を受けて送信データの変調パラメータを決定し(S3)、再送制御部5と変調部3に通知する。再送制御部5では、変調パラメータを送信データバッファ2に格納し(S4)、再送制御データ51を送信データに付加する(S5)。その後、送信データは続く変調部3で選択された変調パラメータで変調され(S6)、送信部4より送信される(S7)。
【0030】
受信局30から送られてくるデータが再送データであった場合、再送制御部5は再送回数をインクリメントし(S8)、初回送信時の送信データと変調パラメータを送信データバッファ2より読み出す(S9)。そして、今回の変調パラメータを判定する(S10)。具体的には、AMC制御部6で決定された変調パラメータと、初回送信時の変調パラメータをAMC比較部7で比較する(S11)。比較結果により、以下の2つの動作となる。
1)今回の変調パラメータが初回送信時の変調パラメータと同じかよい場合(初回送信時よりも伝搬路状態が悪くなっていない場合:初回≦今回)、再送制御部5は最大再送回数でない場合には、再送回数をインクリメントした再送制御データを送信データに付加し(S5)、変調部3で変調し(S6)、送信部4より送信する(S7)。また、再送回数をインクリメントした場合、最大再送回数になった場合は、送信データバッファ2をクリアしてその送信データの再送制御が終了する(S13)。
2)今回の変調パラメータが初回送信時の変調パラメータより悪い場合(初回送信時よりも伝搬路状態が悪くなっている場合:初回>今回)、再送終了と判定する回数Rをカウントする(S14)。ここで、回数Rは、図3のシーケンスで初回>今回と連続で判定した回数のことである。判定結果が前記1)の場合にはRカウント値はリセットされる。
【0031】
次に、再送制御部5はRカウント値≧保護段数Nの条件が満たされた場合、再送回数を再送終了を示す値(最大再送回数)に設定し(S16)、再送制御データを送信データに付加し(S5)、変調部3で変調し(S6)、送信部4より送信する(S7)。また、送信データバッファ2をクリアし再送を終了する(強制終了。S17)。
(受信局の動作)
受信局30においては、受信部8でデータを受信すると(S1)、品質測定部12で品質を測定し(S2)、送信局20に対して品質情報を送信する(S3)。また、受信データは、復調部9にて復調され、再送制御部13は受信データから再送制御データ51を抽出する(S4)。
【0032】
そして、再送制御データ51から受信したデータが再送データであるかどうかチェックする(S5)。再送データでなかった場合、即ち初期送信データであった場合には、データ判定部11にてデータの正常性を判定する(S6)。判定の結果、データが正常であった場合には、送信局20に対してACKを送信する(S7)。判定の結果、データが正常でなかった場合には、送信局20に対してNACK送信を行ない(S8)、エラーとなった受信データを再送合成部10で前のデータと合成し、受信データと共に合成データバッファ14に格納する(S9)。
【0033】
ステップS5において、受信データが再送データであった場合、再送合成部10は合成データバッファ14に格納されているデータを取り出し(S10)、受信したデータとのデータ合成を行なう(S11)。そして、ステップS6でデータ判定を行ない、送信局20に対してACK/NACKの送信を行なう。また、ステップS12において、制御データ51の再送回数51cが最大再送回数又は再送終了を示す値であれば、合成データバッファ14をクリアしそのデータの再送制御を終了する(S13)。
【0034】
なお、保護段数N=0であった場合には、初回送信時の変調パラメータが初回時のものよりも低伝搬路品質のものであるかどうかチェックし、そうであった場合には、保護動作を行わず、直ちに再送を停止する。
【0035】
このように、この実施の形態例によれば、再送時の変調パラメータと初回送信時の変調パラメータとを比較手段により比較し、再送時の変調パラメータが初回時のものよりも低伝搬路品質のものであった場合に、再送を停止することにより、無駄な再送パケットの送信を防ぎ、効率的な無線リソースの使用を可能とすることができる。
【0036】
また、N段の保護回路を設け、N回再送しても変調パラメータが改善しない場合に、再送を停止し、無駄な再送パケットの送信を防ぎ、効率的な無線リソースの使用を可能とすることができる。N段の保護回路を設けた場合、再送データがたまたま瞬時的におかしくなった場合等において、データ再送が停止されるのを防止することができる。瞬時的な再送データの不具合は、N回の保護回路動作により救済することができるからである。
【0037】
図5は本発明の第2の実施の形態例を示すブロック図である。図1と同一のものは、同一の符号を付して示す。図5に示す実施の形態例は、図1におけるAMC比較部7をSIR劣化計測部15に置き換え、更に再送終了判定テーブル16を設けたものである。それ以外のものは、図1と同一である。特に、受信局30は、図1と同じである。
【0038】
SIR劣化計測部15は、AMC制御部6からSIR信号を受けてSIRの劣化を計算する。再送制御部5は、SIR劣化計測部15からの信号を基に再送終了判定テーブル16の内容を参照して再送制御を行なう。
【0039】
図6は再送終了判定テーブル16の構成例を示す図である。再送終了判定テーブル16は、初回送信時の変調パラメータセットと、再送終了判定閾値と、再送終了判定から構成されている。初回送信時の変調パラメータセットは、#0〜#7までの8個あるものとする。それぞれの変調パラメータセットに対して、再送終了判定閾値(SIR劣化量閾値)は変調パラメータセットに対して、#0〜#7まで設けられている。
【0040】
SIR劣化量は、例えば前回送信時のSIR値がA1、今回のSIR値がA2であった場合、|A1−A2|で表される。この|A1−A2|を閾値と比較することになる。判定方法は、SIR劣化量が閾値よりも大きい場合には再送終了し、SIR劣化量が閾値よりも小さい場合には再送を継続するものである。なお、パラメータセット#0〜#7にいくに従い、SIRが高くなるようになっている。SIRが低い場合には伝送スループットが小さく、SIRが高い場合には伝送スループットが大きい。
【0041】
このように構成された装置の動作を説明すれば、以下の通りである。図7は送信局の動作を示すフローチャートである。受信局の動作は、図4に示すものと同じである。
送信局20において、再送制御部5は受信局30から送られてくるACK/NACK情報により初回送信データか再送データかが決定される(S1)。データがACK(新規データ)である場合再送制御部5は送信データ1を、データがNACKである場合、送信データバッファ2のデータを選択する。
【0042】
初回送信データの場合、送信データを送信データバッファ2に格納する(S2)。AMC制御部6において、受信局30からの伝搬路品質情報を受けて送信データの変調パラメータを決定し(S3)、再送制御部5と変調部3に通知する。再送制御部5では、変調パラメータを送信データバッファ2に格納し(S4)、再送制御データ51を送信データに付加する(S5)。その後、送信データは続く変調部3で選択された変調パラメータで変調され(S6)、送信部4より送信される(S7)。
【0043】
受信局30から送られてくるデータが再送データであった場合、再送制御部5は再送回数をインクリメントし(S8)、初回送信時の送信データと、変調パラメータと、初回SIR値を送信データバッファ2より読み出す(S9)。次に、品質測定部12から送られてくるSIR値をSIR劣化計測部15に取り込み、初回送信時からのSIR劣化量を計測する(S10)。
【0044】
再送制御部5では、SIR劣化計測部15からのSIR劣化量と、初回送信時の変調パラメータを基に再送終了判定テーブル16から変調パラメータ毎に予め用意する再送終了判定用の閾値を取得し、再送終了判定を行なう(S11)。SIR劣化量と閾値との比較結果により異なる動作となる(S12)。
1) SIR劣化量≧閾値の場合、即ち、初回送信時よりも伝搬路状態が悪くなっていない場合、又は多少は伝搬路状態が悪くなっているが、再送処理は効果があると判断できる場合には、再送回数をインクリメントした再送制御データ51を送信データに付加し(S5)、変調部3で変調したデータ(S6)を送信部4より送信する(S7)。
【0045】
また、再送回数をインクリメントした場合、ステップS13で最大再送回数に達したかどうかをチェックし、最大再送回数になった場合には、送信データバッファ2をクリアし(S14)、その送信データの再送制御を終了する。
2) 初回送信時からのSIR劣化計測値(瞬時SIR値による計測)が、該当パラメータの閾値以上の場合、即ち初回送信時よりも伝搬路状態が著しく悪くなっており、以降の再送処理を継続しても効果を得るのは困難であると判断できる場合、再送終了と判定するRをカウントする(S15)。ここで、Rは図7のシーケンスで再送終了と連続で判定した回数である。判定結果が1)でRカウント値はリセットされる。
【0046】
次に、再送制御部5はR≧N(保護回数)であるかどうかをチェックする(S16)。そうであった場合には、再送回数を再送終了を示す値(最大再送回数)に設定した(S17)再送制御データを送信データに付加し(S5)、変調部3で変調し(S6)、送信部4より送信する(S7)。また、送信データバッファ2をクリアし、その送信データの再送制御が終了する(S18:強制終了)。
【0047】
なお、保護段数N=0であった場合には、SIR劣化量と閾値とを比較し、SIR劣化量≧閾値の場合には、保護動作を行わず、直ちに再送を停止する。
この実施の形態例によれば、伝搬路品質劣化量と判定閾値による再送終了判定に連続N段の保護回路を設けることにより、N回送信しても伝搬路品質が改善されなかった場合に再送を停止することにより、無駄な再送パケットの送信を防ぎ、効率的な無線リソースの使用を可能とすることができる。
【0048】
従来技術では、再送パケットを送信する際の変調パラメータは、H-ARQ合成を正常に行なう都合上、再送パケット送信時の伝搬路状態に関係なく、新規データ送信時の変調パラメータにて処理を行なう必要があり、この場合、伝搬路状態が新規データ送信時から著しく悪化した場合、多くの受信誤りが発生し、合成による品質改善が望めなくなる。その結果、品質改善が望めないにも関わらず、再送データの送信を行なうという状態が発生するため、無駄に無線リソースを利用してしまう。
【0049】
本発明によれば、パケットの初回送信時と再送時の伝搬路状態が異なった場合に無駄な再送パケットの送信を防ぎ効率的な無線リソースの使用を可能(現状の伝搬路状態に最適な変調パラメータによる新規パケットデータの送信に割り当てる等)とする効果が得られる。また、再送を強制終了させたパケットデータは、正常受信できていないため、上位レイヤにて救済され、本発明のパケット送受信間では新規データとして現状の伝搬路状態に最適な変調パラメータにて再送信されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1の実施の形態例を示すブロック図である。
【図2】送信局から受信局へのデータフォーマット例を示す図である。
【図3】送信局の動作を示すフローチャートである。
【図4】受信局の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2の実施の形態例を示すブロック図である。
【図6】再送終了判定テーブルの構成例を示す図である。
【図7】送信局の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0051】
1 送信データ
2 送信データバッファ
3 変調部
4 送信部
5 再送制御部
6 AMC制御部
7 AMC比較部
8 受信部
9 復調部
10 再送合成部
11 データ判定部
12 品質測定部
13 再送制御部
14 合成データバッファ
20 送信局
30 受信局

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信局と受信局とでパケットデータの送受信を行なう場合であって、伝搬路の状態に応じた変調パラメータを選択して送信するAMC方式と、パケットデータに誤りがあった場合、再送データを送信し、その前に受信した誤りのあるパケットデータを合成してデータを再生するH−ARQ方式とを組み合わせて用いるパケット送受信方法において、
AMC制御により決定した初回に送信したパケットデータの変調パラメータと再送パケットデータを送信する時の受信品質を基にAMC制御により決定する変調パラメータを比較し、
初回送信時のものより再送時の変調パラメータが低伝搬路品質対応のものであった場合、再送回数を制御して再送を停止することを特徴とするパケット送受信方法。
【請求項2】
送信局と受信局とでパケットデータの送受信装置を行なう装置であって、伝搬路の状態に応じた変調パラメータを選択して送信するAMC方式と、パケットデータに誤りがあった場合、再送データを送信し、その前に受信した誤りのあるパケットデータを合成してデータを再生するH−ARQ方式とを組み合わせて用いるパケット送受信装置において、
AMC制御により決定した初回に送信したパケットデータの変調パラメータと再送パケットデータを送信する時の受信品質を基にAMC制御により決定する変調パラメータとを比較する比較手段と、
初回送信時のものより再送時の変調パラメータが低伝搬路品質対応のものであった場合、再送回数を制御して再送を停止する再送制御手段と、
を有して構成されることを特徴とするパケット送受信装置。
【請求項3】
パケットデータを再送する場合に、その再送回数をN段で保護するN段保護回路を更に設け、
送信局でのパラメータ比較結果が連続でN回再送終了と判断された場合にのみ前記再送制御手段は再送停止の制御を行なうことを特徴とする請求項2記載のパケット送受信装置。
【請求項4】
前記再送制御手段は、前記変調パラメータの代わりに、受信局で計測した伝搬路品質を監視し、再送要求受信時に初回送信時からの伝搬路品質劣化量を計測し、その値と初回送信時の変調パラメータを判定要因として、予めテーブルとして用意する初回変調パラメータ毎に再送終了判定用の閾値との比較判定により再送の制御を行なうようにしたことを特徴とする請求項2記載のパケット送受信装置。
【請求項5】
伝搬路品質劣化量と判定閾値による再送終了判定に連続N段の保護回路を設け、送信局でのパラメータ比較結果が連続でN回再送終了と判定された場合にのみ前記再送制御手段は再送停止の制御を行なうことを特徴とする請求項4記載のパケット送受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−300258(P2007−300258A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−124838(P2006−124838)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】