説明

パターニングされた細胞シート及びその製造方法

本発明は、少なくとも2つの異なる細胞種を含む細胞シートの製造方法に関し、当該方法は、形状遷移特性及び/又は変更可能な表面特性を備える基板上に配置される連続的な細胞シートを提供するステップ、パターニングされた様式で、前記連続的な細胞シートを解放作用因子に曝露するステップ、解放作用因子によって影響を及ぼされた細胞を除去するために、解放作用因子への曝露の後に細胞シートを洗浄するステップ、並びに、解放作用因子によって影響を及ぼされた細胞が除去された後に残る間隙に、第2の細胞種を再配置するステップを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は組織工学の分野に関連する。より具体的には、本発明は、パターニングされた細胞シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
再生医療は、医学の分野における新たな来るべき学問である。多数の方法及びアプローチが再生医療において用いられる。それらは、大まかに、生体外及び生体内組織工学を含む4つの分野に分けられることができる。
【0003】
生体外組織工学において、組織は、足場(scaffold)及び細胞を用いて体の外で培養される。作られた組織は、その後、損傷を受けた又は失われた組織を置き換えるために、患者に移植される。
【0004】
生体内組織工学において、損傷を受けた組織を復元するために周囲の健康な組織からの細胞の成長を誘発する目的で、損傷を受けた組織領域に足場が配置される。
【0005】
しかしながら、足場の利用は多くの短所及び欠点を被る。特定のアプリケーションにおいて、細胞シート工学が、足場ベースの組織再構成及び細胞療法の限界を回避することができる。細胞シートは、接眼面組織、歯根膜、心臓パッチ及び膀胱拡張の再構成のために用いられている。さらに複雑なアプリケーションでは、細胞が特定の場所に又は予め定められたパターンで配置されることが必要であり、したがって、パターニングされた細胞シートが望まれる。さらに複雑な組織の再構成のために、異種多細胞シートの使用が必要である。この目的のために、異なる細胞種が所望のパターンでマイクロパターニングされた細胞シートを得るために、異なる細胞種がパターニングされて共培養されなければならない。
【0006】
パターニングされた細胞シートを得るための最高水準の技術である方法は、細胞がその上で培養される表面をパターニングすることに基づく。これらの方法は、各々の基板が(ソフト)リソグラフィを用いて別々にパターニングされることを必要とする。さらに、これらの方法は、独立したパターニングされた細胞シートの製造を容易にしない。
【0007】
US6939378において、膜質組織の処置のための方法が開示され、この方法は、所望のトポロジ及び組織に対する表面接着特性を提供するために、膜質組織の表面及び内部を生物学的にエッチングするのに有効な、膜質組織上へのタンパク質分解酵素の堆積物を提供する。
【0008】
しかしながら、残った細胞が、単なる接着及び静電力に起因するだけでなく、コラーゲン、とりわけ、フィブリン、エラスチン、フィブロネクチン、ラミニン、ナイドジェン及びインテグリンのような細胞外タンパクによって、基板にしっかりと付着するので、そのように生成された細胞シートの取り外しはわずらわしい場合がある。
【0009】
Tsuda et al., Biomaterials 26 (2005), 1885 - 1893において、独立した異種パターン細胞シート(heterogeneous patterned cell sheet)及びそのような細胞シートの製造方法が開示される。しかしながら、前記方法は、いくつかの重度の欠点を持ち、とりわけ、(i)それは、複数の(パターニングされた)電子ビーム照射ステップを含み、製造するのが非常に複雑である基板の使用を必要とし、(ii)それは、2つの異なる細胞種を有する細胞シートを示すのみであり、この方法では2つより多くの細胞種を組み込む細胞シートを得ることは困難であり、(iii)この方法おいて、細胞種のうちの一つは27°Cで培養されることを必要とし、この温度は、細胞成長、細胞増殖、細胞分化等のために最適な温度からは程遠い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、これらの限界を回避する、少なくとも2つの異なる細胞種を有する細胞シートの製造のための方法を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、独立請求項によるパターニングされた細胞シートの製造のための方法によって満たされる。従属請求項は、好ましい実施の形態を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明が詳細に説明される前に、本発明は、特定の記載された装置の構成部分又は記載された方法のプロセスステップに制限されず、そのような装置及び方法は変化しうることが理解されるべきである。本願明細書において使用される用語は、特定の実施の形態を説明することのみを目的としており、制限的であることを意図しないことも理解されるべきである。本明細書及び添付の請求の範囲において用いられるとき、文脈が明確に別の意味を表さない限り、単数形は単数及び/又は複数を含むことに留意されたい。数値によって境界を決められるパラメータ範囲が与えられる場合には、その範囲はこれらの境界値を含むとみなされることがさらに理解されるべきである。
【0013】
本発明の目的のさらなる詳細、特徴、特性及び利点は、従属請求項、一例として本発明による好ましい実施の形態を示す図面、それぞれの図面及び例の以下の説明に開示される。しかしながら、これらの図面は決して本発明の範囲を制限するものとして理解されるべきではない。
【0014】
明細書を不必要に長くすることなく包括的な開示を提供するために、出願人は、参照によってここに参照される特許及び特許出願の各々を組み込む。
【0015】
詳細な実施の形態中の要素及び特徴の特定の組み合わせは、単に一例である。これらの教示を、本出願及び参照として組み込まれた特許/特許出願中の他の教示と交換すること及び置き換えることも、明白に意図される。当業者が認識するように、請求される本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、本願明細書において説明されるもののバリエーション、変更及び他の実現例を当業者は思いつくことができる。したがって、上記説明は単に一例であって、制限的であることは意図されない。本発明の範囲は、以下の請求の範囲及びその均等物によって定義される。さらに、詳細な説明及び請求の範囲において使用される参照符号は、請求される本発明の範囲を制限しない。
【0016】
本発明によれば、少なくとも2つの異なる細胞種を含む細胞シートの製造方法が提供され、当該方法は、
a)誘導性形状遷移特性及び/又は変更可能な表面特性備える基板上に配置される連続的な細胞シートを用意するステップ、
b)パターニングされた様式で前記連続的な細胞シートを解放作用因子に曝露するステップ、
c)解放作用因子によって影響を及ぼされた細胞を除去するために、解放作用因子への曝露後に細胞シートを洗浄するステップ、並びに
d)解放作用因子によって影響を及ぼされた細胞が除去された後に残る間隙に第2の細胞種を再配置するステップを有する。
【0017】
驚くべきことに、そのような方法は、従来技術による方法に伴う上述の欠点を回避することが判明した。
【0018】
さらに、本発明者らは、驚いたことに、US6939378に記載された生物学的エッチング方法は単層細胞シートに同様に適用されることができ、そしてエッチングされた領域が第2細胞種で再配置されることができることを見いだした。本発明による方法は、したがって、独立した異種パターン細胞シートの製造を大幅に容易にする。
【0019】
"パターニングされた様式"との用語は、規則的なパターン(例えばグレーティング)又は不規則なパターンを意味する。この定義はさらに不均一なパターンを含む。
【0020】
「誘導性形状遷移特性を備える基板」という本願明細書において用いられる用語は、所与の刺激に応じて、その形状、そのボリューム、その含水量及び/又はその固有の密度を変える基板に関連する。そのような基板に含まれる可能性がある材料及び前記遷移を生じさせるために有用である可能性がある刺激は、以下に記載される。
【0021】
「変更可能な表面特性を備える基板」という本願明細書において用いられる用語は、所与の刺激に応じて、表面張力、表面親水性、表面正味電荷、表面接触角、表面粗さ及び表面付着性からなるグループから選択されるその表面特性のうちの少なくとも一つを変える基板に関連する。
【0022】
本願明細書において用いられる「解放作用因子」という用語は、当該作用因子と接触するときに個々の細胞の解放を支援する作用因子に関連する。したがって、それぞれの細胞と基板との間又は隣接する細胞間の接着性の接続は、それぞれ、直接的又は間接的に、阻害され、分離され、消化される等する。そのような接着性の接続は、例えば、足場タンパク質(anchorage protein)のような細胞外基質の一部である場合があり、考えられる解放作用因子は以下に記載される。
【0023】
好ましい実施の形態では、上述の方法は、ステップb)- d)の少なくとも一回の反復をさらに有する。好ましくは、第2の(及びオプションとして後続の)サイクルにおいて細胞シートが曝露される解放作用因子パターンは、先行するサイクル(例えば第1のサイクル)におけるパターンとは異なる。
【0024】
さらに他の本発明の好ましい実施の形態において、独立した細胞シートの製造方法が提供され、当該方法は少なくとも2つの異なる細胞種を含み、当該方法は、先行する請求項に記載のステップa)-d)に加えて、e)得られた細胞シートを、前記基板の形状遷移を引き起こすことによって解放するステップを有する。
【0025】
驚くべきことに、誘導性形状遷移特性及び/又は変更可能な表面特性を備える基板の使用は、細胞シートの解放に関する上述の問題を解決することが判明した。本発明者は、多くの場合、基板の形状遷移又はその表面特性の変更の後、生成された間隙に起因して多くの場合非常に脆弱であるパターニングされた細胞層が、解放作用因子の追加の使用を伴わずに基板から容易に解放されることができることを見いだした。このように解放された細胞層は別の基板に容易に移しかえることができ、そして、細胞が非常に元気であり、すなわち異種性組織の製造のために用いられることができることが判明した。これは、組織工学におけるそれらの使用のための重要な要件である。
【0026】
好ましい実施の形態において、前記解放作用因子は化学的試剤である。そのような化学的解放作用因子は、例えば、Ca2+のような二価陽イオンと結合することが知られ、インテグリンのコファクターであり、コラーゲン合成に必要とされるEDTAであることができる。したがって、EDTAのみの使用は、結果として細胞外基質の破壊をもたらし、したがって細胞の解放につながる。同じことがEGTAにあてはまるが、しかしながら、それはCa2+に優先して結合する。
【0027】
当業者は、この教示から、その適用が細胞外基質の破壊をもたらし、したがって細胞の解放に結びつく他の化学的作用剤を見いだす。これらの実施の形態は、したがって、本発明の範囲に該当するとみなされる。
【0028】
他の化学的解放作用因子は、細胞毒性作用剤を含む。この場合には、それぞれの細胞はむしろ不活性化され、又は殺され、これは、それらの分解及びその後のそれらの解放につながる。これは、直接的な破壊、分離又は消化につながる処理とは対照的に、それぞれの細胞と基板との間、又は隣接する細胞間の接着性の接続がそれぞれ、間接的に破壊され、分離され又は消化されることを意味する。
【0029】
さらに他の好ましい実施の形態において、前記解放作用因子は酵素である。前記酵素は、好ましくは、トリプシン、コラゲナーゼ又はプロナーゼのようなタンパク質分解酵素である。これらの酵素は、細胞外基質タンパク質(例えば、フィブロネクチンやコラーゲン、とりわけ、フィブリン、エラスチン、ラミニン、ナイドジェン及びインテグリン)の主要な部分を消化し、したがって、細胞の解放につながる。他の考えうる酵素は、分解酵素(splitase)や、(多くの場合ウシ起源である)上述の酵素が汚染(BSA、ウイルス等)のリスクのため用いられることができない幾つかのアプリケーションにおいて有用である甲殻類酵素である。
【0030】
これらの酵素の中でも、トリプシンが、全ての主要な細胞外タンパク質に対するその幅広い活性並びに細胞の活動及び生存力への少ない影響によって特に好ましい。
【0031】
好ましい実施の形態において、前記酵素は、EDTA又はEGTAと組み合わせて用いられる。EDTA又はEGTAの追加は、上に記載された効果をもたらす。さらに、二価陽イオン(とりわけCa2+)は、タンパク質分解酵素(特にトリプシン) を阻害する傾向がある。したがって、EDTAによる媒質からのこれらの陽イオンの除去は、前記酵素の活性を高める。
【0032】
当業者は、この教示から、その適用が細胞外基質の少なくとも一部の消化に結びつき、したがって細胞の解放をもたらす他の酵素を見いだす。したがって、これらの実施の形態は、本発明の範囲に該当するとみなされる。
【0033】
さらに他の好ましい実施の形態において、前記解放作用因子は物理的刺激である。そのような物理的刺激は、例えば、レーザ放射、X線、アルファ放射線、ベータ放射線又はガンマ放射線のような、任意の種類の電磁放射又は粒子放射であることができる。
【0034】
これらの刺激は、スキャン装置によって、すなわち、パターニングされた様式で細胞層上をスキャンされる放射の小さいスポットを供給する装置によって、又は、フォトリソグラフィで知られるプロセスと同様のパターニングされた放射スキームを細胞シート上に提供する投影装置によって、細胞シートに接触されることができる。今回も、それぞれの細胞はむしろ不活性化され、又は殺され、これは、それらの分解及びその後のそれらの解放につながる。これは、直接的な破壊、分離又は消化につながる処理とは対照的に、それぞれの細胞と基板との間、又は隣接する細胞間の接着性の接続がそれぞれ、間接的に破壊され、分離され又は消化されることを意味する。
【0035】
他の物理的刺激は、電気の適用を含むことができる。これらの刺激は、パターニングされた電極アレイ又は細胞層の表面上でスキャンされる少なくとも一つの電極によって、細胞シートに接触されることができる。これらの場合、電気パラメータは、電極に接触した細胞が不活性化され、又は殺され、それらの分解及びその後のそれらの解放につながるように、選択される。これは、直接的な破壊、分離又は消化につながる処理とは対照的に、それぞれの細胞と基板との間、又は隣接する細胞間の接着性の接続がそれぞれ、間接的に破壊され、分離され又は消化されることを意味する。
【0036】
更に他の物理的刺激は、熱刺激(すなわち加熱及び/又は冷えの適用)を含むことができる。そのような刺激は、パターニングされたスタンプ(例えば、細胞と接触する側に格子パターンを持つピエゾ素子)によって、又は細胞層の表面上でスキャンされる少なくとも一つの熱プローブによって、細胞にもたらされることができる。熱パラメータは、電極に接触した細胞が不活性化され、又は殺され、それらの分解及びその後のそれらの解放につながるように、選択される。これは、直接的な破壊、分離又は消化につながる処理とは対照的に、それぞれの細胞と基板との間、又は隣接する細胞間の接着性の接続がそれぞれ、間接的に破壊され、分離され又は消化されることを意味する。
【0037】
さらに他の物理的刺激は、物理的力(すなわち圧力又は真空)の適用を含むことができる。今回も、その適用は、例えば、パターニングされたスタンプ若しくはパターニングされた真空素子によって、又は、細胞層の表面上をスキャンされる走査圧力プローブ若しくは走査真空素子によって、パターニングされた様式で行われなければならない。その物理パラメータは、電極に接触した細胞が不活性化され、又は殺され、それらの分解及びその後のそれらの解放につながるように選択される。これは、直接的な破壊、分離又は消化につながる処理とは対照的に、それぞれの細胞と基板との間又は隣接する細胞間の接着性の接続がそれぞれ間接的に破壊され、分離され又は消化されることを意味する。
【0038】
好ましくは、前記解放作用因子は、生成されるべき細胞パターンに対応するレリーフ構造を持つスタンプ上に供給される。この方法は、化学的又は酵素解放作用因子が用いられる場合に特に有用である。前記レリーフは、一つの好ましい実施の形態において、わずかな体積の酵素又はキレート剤のような解放作用因子を取り込むパターニングされた微小キャビティを提供することができる。そしてスタンプは、細胞シートに接触させられて、そこで所与の期間留まり、それぞれの作用剤を細胞に接触させる。
【0039】
別の好ましい実施の形態において、(「生物学的インク」とも呼ばれる)解放作用剤が、(「インキングステップ」と呼ばれる)第1ステップにおいてスタンプ材料の中に拡散し、すなわちスタンプが解放作用剤に浸され、解放作用剤は、細胞層に接触する(「印刷ステップ」と呼ばれる)第2ステップにおいて、スタンプ材料の外に拡散するか又は圧力の行使によってスタンプ材料からしぼり出される。
【0040】
細胞シートとスタンプとの間の接触領域においてのみ、細胞は解放作用剤(すなわちトリプシン)にさらされて、それらの領域においてのみ、それぞれの細胞と基板との間又は隣接する細胞間の接着性の接続が解放作用剤によって切断されて、細胞が基板から解放される。言い換えると、細胞のパターニングされた解放が、解放作用剤のマイクロコンタクト印刷(microcontact printing)によって達成される。
【0041】
好ましくは、そのようなスタンプは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)のようなエラストマから作られる。パターニングされたレリーフ構造を有するそのようなエラストマスタンプは、マイクロコンタクト印刷の従来技術において周知の標準的な方法によって生成される。
【0042】
別の好ましい実施の形態において、前記解放作用剤は、プロッタによってパターニングされた様式で細胞に投与される。
【0043】
今回も、この方法は、化学的又は酵素解放作用剤が用いられる場合に特に有用である。そのようなプロッタは、例えば、インクジェットプリンタ又はニードルプリンタと同様に機能することができる。
【0044】
さらに、誘導性形状遷移特性及び/又は変更可能な表面特性を備える前記基板は、ヒドロゲルである。「ヒドロゲル」という本明細書で用いられる用語は、それぞれの材料の少なくとも一部が、水中で水膨張ネットワーク及び/又は水溶性であるポリマー鎖のネットワークを形成するポリマーを含むことを意味する。好ましくは、ヒドロゲル浸透層は、膨張した状態において、50%以上、より好ましくは70%以上、最も好ましくは80%以上の水及び/又は溶媒を含む。
【0045】
応答性ヒドロゲルが、特に好ましい。本発明の意味において、「応答性」との用語は、特に、ヒドロゲルが、その性質が上記においてさらに特定された特定のパラメータの変化又は特定の刺激の適用に応じて(例えば、pHの誘発変化、温度の誘発変化、電磁波に対する誘発露出、特定の塩若しくは有機化合物に対する又はその所与の濃度に対する誘発露出、電場の印加、磁場の印加、音の印加、振動の印加)、形状及び全体のボリュームの変化を受けるように応答性であることを意味及び/又は含む。他の刺激は、酵素若しくは他の生物分子のような専用の検体の存在又は濃度を含む(上記解説参照)。
【0046】
ヒドロゲルは、pH、イオン濃度、温度、溶媒組成及び/又は電位に対して形状が高感度であることが知られている。これらのパラメータは、相、形状、機構、屈折率、認識又は透過度の変化を生じさせることができ、それらは、材料を元の状態に戻すために、その後逆転することができる。
【0047】
さらに、これらのヒドロゲルは、pH、イオン濃度、温度、溶媒組成及び/又は電位の変化に応じて、表面張力、表面親水性、表面正味電荷、表面接触角、表面粗さ及び表面付着性のようなその表面特性の変化を受けることができる。
【0048】
刺激感応性ヒドロゲルは、さらに、制御可能なアクチュエータを設計するために、酵素、タンパク質模倣体及び抗体と統合された。これらのヒドロゲルは、ターゲット分子の追加に応じて膨張することが示された。これらのヒドロゲルの膨張の量は、ポリマーネットワーク中の非共有結合性相互作用の変化に起因すると考えられた。ヒドロゲルはさらに、ターゲット分子の存在に応じて膨張するように設計されることができ、さらに、膨張の規模が存在するリガンドの濃度に対して比例することができるように構成されることができる。
【0049】
本発明の一実施例によれば、ヒドロゲル材料は、ポリアクリル材料(ポリメタクリル材料)、置換ビニル材料又はそれらの混合物を含むグループから選択される材料を含み、同様に、エポキシド、オキセタン誘導体及びチオレンを含む。
【0050】
本発明の他の実施例によれば、ヒドロゲル材料は、少なくとも1つのアクリルモノマー(又はメタクリルモノマー)及び少なくとも1つの多官能性アクリルモノマー(又は多官能性メタクリルモノマー)の重合から作られるポリアクリル材料(又はポリメタクリル材料)を含む。
【0051】
本発明のさらに他の実施の形態によれば、アクリルモノマー(又はメタクリルモノマー)は、N-イソプロピルアクリルアミド(又はメタクリルアミド)、アクリルアミド(又はメタクリルアミド)、ヒドロキシエチルアクリレート(又はメタクリレート)、エトキシエトキシエチルアクリレート(又はメタクリレート)又はそれらの混合物を含むグループから選択される。
【0052】
本発明のさらに別の実施の形態によれば、多官能性アクリルモノマー(又は多官能性メタクリルモノマー)は、ビスアクリル(若しくはビスメタクリル)及び/又はトリアクリル(若しくはトリメタクリル)及び/又はテトラアクリル(若しくはテトラメタクリル)及び/又はペンタアクリル(若しくはペンタメタクリル)モノマーである。
【0053】
本発明の一実施例によれば、多官能性アクリルモノマー(又は多官能性メタクリルモノマー)は、ビスアクリルアミド(若しくはメタクリルアミド)、ジエチレングリコールジアクリレート(若しくはジメタクリレート)、トリエチレングリコールジアクリレート(若しくはジメタクリレート)、テトラエチレングリコールジアクリレート(若しくはジメタクリレート)、トリプロピレングリコールジアクリレート(若しくはジメタクリレート)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(若しくはトリメタクリレート)、ポリエチレングリコールジアクリレート(若しくはジメタクリレート)、エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート(若しくはジメタクリレート)、ヘキサンジオールジアクリレート(若しくはジメタクリレート)、又はそれらの混合物を含むグループから選択される。
【0054】
本発明者によって実行された実験において上述の目的のために適していると判明した他の物質は、エチルヘキシルアクリレート(又はメタクリレート)、ヒドロキシエチルアクリレート(又はメタクリレート)、PNIPAA-co-イソブチルアクリレート(又はメタクリレート)(80:20)、PMMA、PMMA-co-トリメチロールプロパントリアクリレート、TMPTA、DEGDA、DEGDMA、Polystyrene、PMMA-co-DEGDA(2:1)、PMMA-co-DEGDMA(2:1)、PS-co-TMPTA(2:1)、PS-co-DEGDA(2:1)、PS-co-DEGDMA(2:1)及びトリス2-ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリアクリレートを含む。
【0055】
本発明の一実施例によれば、ヒドロゲル材料は、中性モノマーのグループから選択される、好ましくは酢酸ビニル、ヒドロキシエチルアクリレート(若しくはメタクリレート)アクリルアミド(若しくはメタクリルアミド)、エトキシエトキシエチルアクリレート(メタクリレート)若しくはその混合物を含むグループから選択される少なくとも1つのモノマーと共重合させられる、好ましくはアクリル酸(若しくはメタクリル酸)、2-エチルアクリル酸、2-プロピルアクリル酸、アリールスルホン酸、特にスチレンスルホン酸、イタコン酸、クロトン酸、スルホンアミド若しくはそれらの混合物を含むグループから選択される陰イオン性ポリアクリル(若しくはメタクリル)材料、及び/若しくは、好ましくはビニルピリジン、ビニルイミダゾール、アミノエチルアクリレート(メタクリレート)若しくはそれらの混合物を含むグループから選択される陽イオン性ポリアクリル(若しくはメタクリル)材料、又はそれらの混合物を含む。
【0056】
広範囲にわたるこれらの共重合体が、pHの関数としてそれらの形状を変えて、印加された電場及び/又は電流に応答することが知られている。したがって、これらの物質は、本発明の範囲内の広範囲にわたるアプリケーションのために有用である。
【0057】
本発明の実施の形態によれば、ヒドロゲル材料は、置換ビニル材料、好ましくはビニルカプロラクタム及び/又は置換ビニルカプロラクタムを含む。
【0058】
本発明の一実施例によれば、ヒドロゲル材料は、N-イソプロピルアミド、ジエチルアクリルアミド、カルボキシイソプロピルアクリルアミド、ヒドロキシメチルプロピルメタクリルアミド、アクリロイルアルキルピペラジン及びそのコポリマーを含むグループから選択される熱反応性モノマーに基づき、ヒドロキシエチルアクリレート(若しくはメタクリレート)、アクリル酸(若しくはメタクリル酸)、アクリルアミド、ポリエチレングリコールアクリレート(若しくはメタクリレート)又はそれらの混合物を含む親水性モノマーのグループから選択されるモノマーを伴い、及び/又は、ブチル(イソ)アクリレート(若しくはメタクリレート)、メタクリル酸メチル、イソボルニルアクリレート(若しくはメタクリレート)若しくはそれらの混合物を含む疎水性モノマーのグループから選択されるモノマーによって共重合される。これらの共重合体は、熱応答性であることが知られており、したがって、本発明の範囲内で広範囲にわたるアプリケーションで使用されることができる。
【0059】
これらの反応性ヒドロゲルのための好ましい例は、ポリ-n-イソプロピルアクリルアミド(PNIPAA)である。
【0060】
さらにまた、本発明による方法の好ましい実施の形態において、形状遷移特性を備える基板の形状遷移の誘導及び/又は変更可能な表面特性を備える基板の表面特性の変更は、以下から構成されるグループから選択される少なくとも一つのステップ或いはそれらの組み合わせを含む。
・媒質の温度の上昇及び/又は下降、
・媒質の浸透性の増加及び/又は低下、
・媒質のpHの上昇及び/又は下降、
・媒質への電気刺激の供給、
・媒質への光による刺激(特にIR又はUV光)の供給、
・磁場。
【0061】
さらに、少なくとも1つが各々少なくとも2つの異なる細胞種を含む少なくとも2つの異なるシートを含む積み重ねられた細胞シートの製造方法が提供され、当該方法は、先行する請求項に記載されるステップa)-e)に加えて、少なくとも1つのシートが先行する請求項によって達成される方法で得られた少なくとも2つの細胞シートを重畳するステップf)を含む。
【0062】
上記による異なる細胞種は、(i)生物学的な意味で異なる細胞種であるか、(ii)同じ起源を持ち、少なくとも1つの種が以下からなるグループから選択される少なくとも1つの処理を受けている。
・酵素による及び/又は製薬学的処理、
・遺伝子操作処理、
・電磁放射又は粒子放射に対する露出、
・熱及び/又は冷えに対する露出、
・磁場に対する露出、
・表現型及び/又は遺伝型特性決定の後の選択等。
【0063】
さらに他の実施の形態において、細胞シート及び/又は細胞シートの積層が前述の方法のいずれかによって生成され、前記細胞シート及び/又は細胞シートの積層はパターニングされた形状を持ち、前記細胞シート及び/又は細胞シートの積層は、少なくとも2つの異なる細胞種及び/又は少なくとも2つの異なる細胞シートを有する。
【0064】
この実施例において、細胞層が重畳されるときに不均一組織を作成するために、少なくとも2つの細胞シートのパターンは、好ましくは、相補的に互いに対して適応されている。この実施例において、解放ステップe)は、ステップii)の後又はその前に行われることができる。この実施の形態の範囲に入るオプションとして、相補的なパターンを持つ3つ以上のパターニングされた細胞シートを提供し、3つ以上の異なる細胞種を持つ組織を生成するためにそれらを重畳する。
【0065】
本発明のさらに他の実施の形態において、細胞シート及び/又は細胞シートの積層が提供され、前記細胞シート及び/又は細胞シートの積層はパターニングされた形状を有し、前記細胞シート及び/又は細胞シートの積層は、少なくとも2つの異なる細胞種及び/又は少なくとも2つの異なる細胞シートを有する。
【0066】
さらに、接眼面組織、歯根膜、心臓パッチ、膀胱組織、二次元組織、三次元組織、骨材料、皮膚及び/又は軟骨材料の製造のための本発明による細胞シート及び/又は積み重ねられた細胞シートの使用が提供される。
【0067】
他の一実施例において、積み重ねられた不均一細胞シートの製造のための本発明による細胞シートの使用が提供される。
【0068】
さらに、人工組織及び/又は器官の製造のための本発明による細胞シート、積み重ねられた細胞シート及び/又は生成物の使用が提供される。
【0069】
さらに、人間又は動物の処置のための本発明の細胞シート、積み重ねられた細胞シート、生成物並びに/又は人工組織及び/若しくは器官の使用が提供される。
【0070】
「パターニングされた形状」という用語は、例えばグリッド、細胞が並んだ配置、又は、特定の組織タイプ若しくは組織パッチの製造のための異なる細胞種の所望の分布に対応する任意のパターンであることができる。
【0071】
以下において、本発明が実施例として示されるが、それらは決して本発明の範囲を制限するように理解されてはならない。
【実施例1】
【0072】
パターニングされたレリーフ構造を有するエラストマスタンプが、解放剤としてのトリプシンを含む溶液中に部分的に浸漬される。3T3マウス繊維芽細胞が、従来技術において周知の標準的な方法を用いて6ウェルプレート中で培養される。細胞が>90%の集合に達すると、ウェルプレートは恒温器から取り出され、培養液がウェルから慎重にピペットで移される。その後、トリプシンが供給されたスタンプが、3T3マウス繊維芽細胞の連続的なシート上に配置される。ウェルプレートは培養のために5分間恒温器に戻され、その後、スタンプは慎重に取り外され、そして細胞シートはPBSによって慎重に洗浄される。洗浄によって、解放剤に接触していた細胞が解放され、図1に示されるようなパターニングされた細胞シートが得られる。図1はグリッドパターンの細胞シート(図1A)及びラインパターンの細胞シート(図1B)を示す。パターンは、およそ1 mmの間隙サイズを持つ。50μmまで減少した間隙サイズを有するより小さいパターンは、適切なスタンプを用いて達成されることができる。
【実施例2】
【0073】
誘導性形状遷移特性及び/又は変更可能な表面特性を備える基板上で細胞を成長させることによって、当該基板の形状遷移を誘導することでマイクロコンタクト印刷ステップ後のパターニングされた細胞シートを解放することが可能である。そのような基板は、例えば、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAA)の薄層で被覆されている寒天培地であることができる。形状遷移は、32℃以下まで温度を下げることによって誘導される。この温度において、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)は、折り畳まれた疎水性状態から親水性の膨張したヒドロゲル状態への遷移を示し、基板に対する細胞の親和性に影響を及ぼす。この遷移の結果として、パターニングされた細胞シートは、細胞間の相互作用を破壊することなく、基板から解放される。オプションとして、パターニングされた細胞シートは、解放を容易にするために、形状遷移の前に解放作用因子で処理されることができる。
【0074】
前記形状遷移を誘導するために使用される刺激は、熱的刺激である。室温において、反応性ヒドロゲルは水の中で強い膨張を示す。しかしながら、細胞培養のために使用される恒温器の中は、約37C℃の温度が維持され、この温度ではヒドロゲルは折り畳まれる(PNIPAAは33℃の下部臨界完溶温度(LCST)を持つ)。
【0075】
本発明の目的の更なる詳細、特徴、特性及び利点は、一例として本発明によるプロセス及び断片の好ましい実施の形態を示す、従属請求項、図面並びにそれぞれの図面及び例の以下の説明中に開示される。
【0076】
図1a及び1bは、少なくとも2つの異なる細胞種を有する独立した細胞シートの一部を形成する、単一の細胞層を有するパターニングされた細胞シートの顕微鏡写真を示す。顕微鏡写真中の特徴サイズは、約1mmである。
【0077】
図1aにおいて、得られたパターンは格子パターンである。この目的のために、印刷ステップのために使用されるスタンプは、それぞれの四角の間に格子状のキャビティを有する四角のパターンを持つ。図1bにおいて、得られたパターンはラインパターンである。この目的のために、印刷ステップのために用いられるスタンプは、間にライン状のキャビティを有するラインパターンである。
【0078】
図2は、単一の細胞層を有するパターニングされた細胞シートの調製のための方法を示し、3つのサブステップA(インキングステップ)、B(印刷ステップ)及びC(洗浄ステップ)に細分化される。ステップAにおいて、エラストマ材料から作られた突起22によるレリーフパターンを持つスタンプ21が提供され、本発明による解放作用剤に事前に浸漬されている(インキングステップ)。ステップBにおいて、スタンプは、誘導性形状遷移特性及び/又は変更可能な表面特性を備える基板25上でペトリ皿24中で成長した同種の細胞シート23上に配置される。細胞シートとの接触に応じて、解放作用剤は、細胞シートの中に拡散するか、又は圧力の行使に起因してスタンプ材料からしぼり出される。所与の培養時間の後、スタンプは取り外され、解放作用剤と接触していた細胞26は、ステップCにおいて洗い流される。そのように生成されたパターニングされた細胞シートは、本説明にしたがって誘導性形状遷移特性及び/又は変更可能な表面を備える基板25から解放されることができる。
【0079】
図3は、誘導性形状遷移特性及び/又は変更可能な表面特性を備える基板32上でペトリ皿31の中で成長した単一の細胞層を有するパターニングされた細胞シートの解放を示す。所与の刺激が基板33の形状遷移をもたらし、解放作用剤の追加の使用を伴わずに細胞シートの解放を促進する。そのように解放された細胞層34は、別の基板に容易に移しかえることができ、細胞は非常に元気なままであり、すなわち、それらは異種組織の製造のために用いられることができる。これは、組織工学におけるそれらの使用のための重要な要件である。前記刺激は、例えば、以下からなるグループから選択されることができる。
・媒質の温度の上昇及び/又は低下(ΔH)
・媒質の浸透性の増加及び/又は減少(Osm)
・媒質のpHの増加及び/又は低下(pH)
・媒質への電気的刺激(U)
・媒質に対する光による刺激(hν)
【0080】
例えば、前記基板がポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAA)の薄層で被覆されている寒天培地からなる場合、形状遷移は、32℃以下に温度を低くすることによって誘導される。この温度において、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)は、折り畳まれた疎水性状態から親水性の膨張したヒドロゲル状態への遷移を示し、基板に対する細胞の親和性に影響を及ぼす。この遷移の結果として、パターニングされた細胞シートは、細胞間の相互作用を破壊することなく、基板から解放される。オプションとして、パターニングされた細胞シートは、解放を容易にするために、形状遷移の前に解放作用因子で処理されることができる。
【0081】
前記形状遷移を誘導するために使用される刺激は、熱的刺激である。室温において、反応性ヒドロゲルは水の中で強い膨張を示す。しかしながら、細胞培養のために使用される恒温器の中は、約37C℃の温度が維持され、この温度ではヒドロゲルは折り畳まれる(PNIPAAは33℃の下部臨界完溶温度(LCST)を持つ)。
【0082】
前記説明に該当する更なる実施の形態が本文中に記載される。
【0083】
図4は、ステップ41-45によって、少なくとも2つの異なる細胞種を有する細胞シートの製造のための本発明による方法を示す。ステップ41は、好ましくは形状遷移特性及び/又は変更可能な表面特性を備える基板上で連続的な細胞シートを栽培するステップを示す。ステップ42は、図2に示されるようなパターニングされた「印刷及び解放ステップ」を示す。3つのそれぞれの列において異なるパターンが生成されていることに留意されたい。ステップ43は、第2の細胞種による再増殖ステップを示す。ステップ44は、そのように生成された異種細胞シートの図3に示されるような解放ステップを示す。このステップのために、基板の形状遷移特性及び/又は変更可能な表面特性が重要である(説明参照)。ステップ45は、異種組織又はパッチを構成するために、そのように生成されたそれぞれの異種細胞シートを積み重ねるステップを示す。そのようなパッチは、接眼面組織、歯根膜、心臓パッチ、膀胱組織、二次元組織、三次元組織、骨材料、皮膚及び/又は軟骨材料の製造のために例えば用いられることができる。
【0084】
図4に示される以外に、パッチは2つ又は3つ以上の異種細胞シートで同様に構成されることができる。
【0085】
この文脈において、本発明の好ましい実施の形態では、
・形状遷移特性及び/又は変更可能な表面特性を備える基板(好ましくはヒドロゲル層)の厚さは、5nm-50μmの範囲である。
・基板の厚さは、形状遷移特性及び/又は変更可能な表面特性を備える基板がPNiPAAである場合には、5nm-50μmの範囲であり、より好ましくは5nm-50nmの範囲である。
・細胞シートの面積は、1cm2-500cm2の範囲である。
・形状遷移特性を備える基板の形状遷移及び/又は表面特性の変更の誘導のための刺激が温度刺激(ΔT)である場合には、そのような刺激は、0.05-5℃の範囲であり、好ましくは2℃以下である。
・生成される細胞パターンは、3μm-20mmの範囲の幅及び/又は距離による間隔、細胞ギャップ等を持つ。
・細胞パターンの作成のための機器(例えばスタンプ)は、3μm-20mmの範囲の幅及び/又は距離の格子、インターバル、ギャップ等を伴うエッチングパターンを有する。
【図1a】

【図1b】

【図2A−2C】

【図3】

【図4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの異なる細胞種を含む細胞シートの製造方法であって、
a)形状遷移特性及び/又は変更可能な表面特性を備える基板上に配置される連続的な細胞シートを用意するステップ、
b)パターニングされた様式で前記連続的な細胞シートを解放作用因子に曝露するステップ、
c)前記解放作用因子によって影響を及ぼされた細胞を除去するために前記解放作用因子への曝露後に前記細胞シートを洗浄するステップ、並びに
d)前記解放作用因子によって影響を及ぼされた細胞が除去された後に残る間隙に第2の細胞種を再配置するステップ、
を有する製造方法。
【請求項2】
ステップb)からd)の少なくとも一回の反復をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のステップa)からd)に加えて、e)得られた細胞シートを前記基板の形状遷移を引き起こすことによって解放するステップを有する、少なくとも2つの異なる細胞種を含む独立した細胞シートを製造するための方法。
【請求項4】
前記解放作用因子が、化学試剤、酵素、若しくは物理的刺激、又はそれらの任意の組み合わせである、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記解放作用因子が、製造されるべき細胞パターンに対応するレリーフ構造を持つスタンプに供給される、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記解放作用因子が、プロッタによってパターニングされた様式で細胞に投与される、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
形状遷移特性を備える前記基板がヒドロゲルである、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
形状遷移特性を備える基板における形状遷移の誘導及び/又は変更可能な表面特性を備える基板における表面特性の変更が、
媒質の温度の上昇及び/又は下降、
媒質の浸透性の増加及び/又は低下、
媒質のpHの上昇及び/又は下降、
媒質への電気刺激の供給、
からなるグループから選択される少なくとも一つのステップを含む、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも一つが少なくとも2つの異なる細胞種を各々含む少なくとも2つの異なるシートを含む積み重ねられた細胞シートの製造方法であって、f)少なくとも一つのシートが請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の方法により得られる少なくとも2つの細胞シートを重畳するステップを含む方法。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の方法によって製造される細胞シート及び/又は細胞シートの積層であって、前記細胞シート及び/又は細胞シートの積層はパターニングされた形状を持ち、前記細胞シート及び/又は細胞シートの積層は少なくとも2つの異なる細胞種及び/又は少なくとも2つの異なる細胞シートを含む細胞シート及び/又は細胞シートの積層。
【請求項11】
細胞シート及び/又は細胞シートの積層であって、前記細胞シート及び/又は細胞シートの積層はパターニングされた形状を持ち、前記細胞シート及び/又は細胞シートの積層は少なくとも2つの異なる細胞種及び/又は少なくとも2つの異なる細胞シートを含む細胞シート及び/又は細胞シートの積層。
【請求項12】
積み重ねられた異種細胞シートの製造のための請求項10又は請求項11に記載の細胞シートの使用。
【請求項13】
接眼面組織、歯根膜、心臓パッチ、膀胱組織、二次元組織、三次元組織、骨材料及び/又は軟骨材料の製造のための、請求項10又は請求項11に記載の細胞シート及び/又は請求項12に記載の積み重ねられた細胞シートの使用。
【請求項14】
人工組織及び/又は器官の製造のための、請求項10若しくは請求項11に記載の細胞シート、請求項12に記載の積み重ねられた細胞シート及び/又は請求項13に記載の製品の使用。
【請求項15】
人又は動物の処置のための、請求項10若しくは請求項11に記載の細胞シート、請求項12に記載の積み重ねられた細胞シート、請求項13に記載の製品、並びに/又は請求項14に記載の人工組織及び/若しくは器官の使用。

【公表番号】特表2011−505802(P2011−505802A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536574(P2010−536574)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【国際出願番号】PCT/IB2008/055115
【国際公開番号】WO2009/074932
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】