説明

パターン印刷装置および凸版印刷版

【課題】 パターン印刷の際、印刷されるパターンの線幅、膜厚、印刷位置の均一性を向上させるパターン印刷装置および凸版印刷版50を提供する。
【解決手段】 基板90上に所望の画像パターンを印刷するパターン印刷装置において、版胴33の外周面に装着された凸版印刷版50の表面には、所望の画像パターンに対応する凸部551を一方面の画像形成領域55に設ける基部53が形成されている。そして、供給ローラ43により凸版印刷版50の表面に印刷材料が供給されつつ、版胴33が回転し凸版印刷版50を押圧することで、凸部551を介して画像パターンが基板90に印刷される。その際、凸部551が押圧されることによって生じる凸部551aの変形を抑制するため、基部53の両側部あるいは全周部には補強部57が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凸版印刷技術を用いて印刷版の表面に形成された画像パターンにパターン形成用の印刷材料を供給し、ガラス基板等の基板上に画像パターンを印刷する技術に関し、例えば、有機エレクトロルミネッセンス(以下、ELと称す)素子や液晶表示用カラーフィルタ等にパターニングするパターン印刷装置および印刷版に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELデバイスが照明やディスプレイに利用される動きが活発になっている。これらの有機ELデバイスを製造する際には、基板に対して比較的大きなサイズの薄膜状に有機EL材料を塗布したり、赤、緑、および青色発光の有機EL材料を微細なストライプ状に塗り分けたりすることが必要となる。これらの塗布作業を繰り返して層を重ねることによって、有機ELデバイスの発光層が形成される。
【0003】
例えば、有機ELデバイスの製造工程において、有機発光材料を高精細にパターニングする方法として、樹脂製の印刷版から印刷材料を転写させる凸版印刷方法が知られている。しかし、この方法では凸形状を有するパターン転写エリアの外周部は印圧の影響を受けやすく、また、周りに凸形状を有するパターンが無いため強度が弱い等により、印刷線幅、膜厚、位置精度などの印刷品質が低くなるという問題があった。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1では、有機EL素子の製造方法として、均一な層厚の有機発光層を形成するため、基材21上の画像形成領域とその周囲のダミー領域とに凸部11を設け、有機発光層の形成を行う。その際、印刷によって印圧のムラが生じやすいダミー領域を有機発光層の形成に用いず、印圧の均一な内部の画像形成領域のみを用いて、有機発光層を形成する技術が開示されている。また、特許文献2では、液晶パネル用の配向膜印刷において、印圧の変化から生じる配向剤の転写量の増減を防ぐため、配向膜印刷版1a上に印刷パターン2と被印刷物と接触するダミーパターン4aを備える配向膜印刷版が開示されている。
【0005】
また、特許文献3では、配線材料や発光材料を基板に転写し微細なパターンを形成するための高精細樹脂凸版印刷において、印刷版ベース1aの上面に画像パターン部の凸部3と、その周辺に壁状で外枠状である、かつ凸部3と同じ高さのダミーパターン2が設けられた高精細樹脂凸版印刷版が開示されている。また、特許文献4では、フレキソ印刷等に用いられる印刷版として、基板23上に形成された凸部31の間に、凸部31の高さの60〜95%程度の高さである補強部32が形成される印刷版の製造技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−278206
【特許文献2】特開平4−240819
【特許文献3】特開2009−137085
【特許文献4】特開2007−264224
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、凸版印刷版を用いて配線材料や発光材料を基板上に高精細にパターンを印刷する場合、印刷版の凸形状の画像パターンと基板との印圧が均一になることが重要である。そのため、従来技術では、パターンに相当する凸部が形成される基材上に該凸部と同じ高さのダミーパターンに相当する凸部を設けることで、印刷版の画像パターンの凸部にかかる印圧を均一にするとともに、ダミーパターンによって印刷されたパターンの領域は使用しないようにしている。しかしながら、従来技術では基板に印刷される画像パターンの外側にダミーパターンを印刷するため、発光材料等の必要量が増えるコストの増大につながるとともに、ダミーパターンが印刷された領域から発光材料等を除去、あるいは該領域を使用しないようにする必要があるため生産効率が悪くなる。また、印刷版自体を大きくすることも、コストの増大につながる。さらにダミー領域を有することで不必要にその領域に付着した印刷材料を洗浄する必要も生じる(特許文献1、2、3)。
【0008】
また、従来技術では、各凸部の間に凸部の高さよりも低い凸形状を有する補強部を設けることで各凸部の強度を向上させ印圧が均一になるように印刷版を構成しているが、該印刷版を製造するためには製版の条件出しが困難であり、また凸部からなる画像パターンを変更するごとに製版の条件出しを行う必要があるため現実的にこのような印刷版の採用が難しいという問題がある(特許文献4)。このように、凸版印刷技術を用いて発光材料等を基板上に高精細にパターニングするパターン印刷装置において、高精細なパターンの形成という点で改善の余地がある。
【0009】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、凸版印刷技術を用いて印刷材料を基板上に高精細にパターニングするためのパターン印刷装置および印刷版を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するため、基板を水平に保持するステージと、所望の形状の画像パターンが形成される印刷版と、印刷版に印刷材料を供給する供給機構と、印刷版を押圧し基板に画像パターンを転写する転写機構とを備え、印刷版は、画像パターンに対応する凸部と、凸部を一方面の画像形成領域に設ける基部と、基部の側部で画像形成領域外に設けられた基部の厚みよりも小さい厚みの補強部とを備えることを特徴とする。
【0011】
このように構成された発明では、基板に転写するための画像パターンに対応する凸部を一方面の画像形成領域に備える基部の側部で、画像形成領域外に、転写時における凸部の変形を抑制するための補強部を備えることで、印圧による凸部の変形を抑制することができる。すなわち、凸部の印圧による変形を抑制することで、転写された画像パターンの線幅、膜厚、位置などの精度の低下を防ぎ高精細な画像パターンを形成することができる。
【0012】
また、本願発明に係るパターン印刷装置において、補強部の厚みは、基部の厚みの平均を減算した厚みよりも小さい厚みであることを特徴とする。これにより、補強部は凸部の印圧による変形を抑制するとともに、転写機構により押圧された際も、確実に補強部が基板に当接しないようにすることができるため、補強部による基板への印刷材料の転写が発生しない。すなわち、不要な印刷材料の転写が行われないため、印刷材料のコスト増大を抑制することができる。また、所望の画像パターンを印刷版に多面付けする場合でも、効率良く画像パターンを印刷版に配置することができるため生産効率を高くすることができる。
【0013】
また、本願発明に係るパターン印刷装置において、凸部は、基部の一方端から他方端に延設されており、補強部は、凸部が延設される方向と平行となる基部の少なくとも両側部で画像形成領域外に設けられていることを特徴とする。これにより、延設された凸部形状であっても、補強部は確実に凸部の印圧による変形を抑制することができる。
【0014】
また、本願発明に係るパターン印刷装置において、補強部は、基部の全周部で画像形成領域外に設けられていることを特徴とする。これにより、凸部の全周にわたり印圧による変形を抑制することができる。よって、さらに高精細なパターンを形成することができる。
【0015】
また、本願発明に係るパターン印刷装置において、転写機構は、印刷版を外周面に装着する版胴を有し、供給機構は、版胴と平行に配置され印刷版の表面に印刷材料を供給する供給ローラと、供給ローラの表面に印刷材料を供給する供給部とを有し、版胴の外周面に装着された印刷版に供給ローラを介して印刷材料を供給しつつ、版胴によって印刷版を基板に押圧し、画像パターンを基板に転写することを特徴とする。
【0016】
所望の形状の画像パターンに対応する凸部と、凸部を一方面の画像形成領域に設ける基部と、基部の側部で画像形成領域外に設けられた基部の厚みよりも小さい厚みの補強部と、を備えることを特徴とする。
【0017】
このように構成された発明では、基部が所望の画像パターンに対応する凸部を、一方面の画像形成領域に設けるとともに、基部の両側部で画像形成領域外には補強部を備えることで、凸部の変形を抑制することができる。また、基部の両側部に補強部を設けるだけであり、印刷版を製造するための製版の条件出しが容易であり実用度が高い。
【0018】
また、本願発明に係る凸版印刷版において、補強部の厚みは、基部の厚みから凸部の厚みの平均を減算した厚みよりも小さい厚みであることを特徴とする。これにより、確実に補強部が対象物に当接しないようにすることができる。
【0019】
また、本願発明に係る凸版印刷版において、凸部は、基部の一方端から他方端に延設されており、補強部は、凸部が延設される方向と平行となる基部の少なくとも両側部で、画像形成領域外に設けられていることを特徴とする。これにより、延設された凸部形状であっても、補強部は確実に凸部の印圧による変形を抑制することができる。
【0020】
また、本願発明に係る凸版印刷版において、補強部は、基部の全周部で画像形成領域外に設けられていることを特徴とする。これにより、凸部の印圧による変形および凸部の自重による撓みによる変形を抑制することができる。また、本願発明に係る凸版印刷版において、凸部、基部および補強部は同一材料により一体形成されていることを特徴とする。これにより、公知の印刷版形成方法などを用いて凸版印刷版を作成することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、基板に転写するための所望の画像パターンに対応する凸部を、一方面の画像形成領域に設ける基部の両側部で、画像形成領域外に補強部を形成することで、凸部の印圧による変形を抑制することができる。すなわち、凸部の変形を抑制することで、転写されたパターンの線幅、膜厚、位置などの精度の低下を防ぎ高精細なパターンを印刷することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るパターン印刷装置の一実施形態を示す斜視図である
【図2】本発明に係るパターン印刷装置の要部を示す概要図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る印刷版を示す概略図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る印刷版を示す概略図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る印刷版を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は本発明に係るパターン印刷装置の一実施形態を示す斜視図である。また、図2は本発明に係るパターン印刷装置の要部を示す概要図である。以下、図1および図2を参照して、本発明の一実施形態に係るパターン印刷装置について説明する。なお、具体的に説明するため、パターン印刷装置が有機EL材料を溶解した溶液をインク(印刷材料とも称する)として用いる有機ELデバイスを製造するパターン印刷装置に適用された例を用いて、以下の説明を行う。そして、本明細書における有機EL材料は、有機ELデバイスにおける有機層(正孔注入層、正孔輸送層、赤色発光、緑色発光、青色発光の発光層、電子輸送層、電子注入層等のうちで有機物を含む層)を形成する材料であり、具体的には、高分子有機EL材料である。また有機層を形成する材料のうちで溶媒に可溶な材料であれば印刷材料として用いることができる。
【0024】
パターン印刷装置1は、有機ELデバイスを製造する工程において、ガラス基板(以降、単に基板90と称す)の上面に所望の形状の画像パターン(例えば、ラインとスペースの画像パターン)を印刷するための装置として構成される。パターン印刷装置1は、主に、基板90を保持するステージ10と、ステージ10を移動させる搬送機構20と、ステージ10に保持された基板90に凸版印刷版50に形成された画像パターンを転写するための転写機構30と、転写機構30に印刷材料を供給するための供給機構40と、これらを載置する基台60と、昇降テーブル65とを備える。
【0025】
ステージ10は、平板状の外形を有しており、その上面に基板90を水平に保ちつつ図示を省略するチャック機構により固定的に保持する。そして、基台60上を搬送機構20により主走査方向(Y軸方向)に往復移動する。
【0026】
搬送機構20は、ステージ10を主走査方向(Y軸方向)に往復移動させるための機構であって、一対のガイド23、搬送駆動部24により構成される。一対のガイド23は、後述する版胴33の軸心に対して直交する水平方向に延設され基台60の上面に固定される。搬送駆動部24は、一対のガイド23の延設方向を駆動方向とし、例えばリニアモータで構成される。そして、ステージ10は一対のガイド23および搬送駆動部24と連結されており、搬送駆動部24の駆動力を受けてステージ10を版胴33の軸心に対して直交する主走査方向(Y軸方向)に往復移動させる。
【0027】
昇降テーブル65は、後述する転写機構30とステージ10の鉛直方向(Z軸方向)の距離を調整するための機構であって、図示を省略する昇降駆動部および昇降ガイドにより、昇降テーブル65は昇降ガイドに沿って昇降可能となる。昇降テーブル65には、転写機構30および供給機構40が搭載されており、転写機構30および供給機構40は、昇降テーブル65とともに昇降可能となる。
【0028】
転写機構30は、ステージ10に保持された基板90に所望の画像パターンを転写するための機構である。転写機構30は、凸版印刷版50をその外周面に装着する版胴33と、版胴33を軸支する版胴支持部37と、版胴33に装着された凸版印刷版50を洗浄するための洗浄機構35とから構成される。
【0029】
版胴33は、左右一対の版胴支持部37により軸支されており、軸支された状態で軸心を中心に回転可能に設けられている。そして、図示を省略する回転駆動機構からの駆動力を受けて所定の回転速度で回転する。版胴33の下方空間にはステージ10が移動可能な空間が配設される。上述したように、ステージ10の上面には基板90が保持され水平方向に移動可能に構成されており、搬送駆動部24からの駆動力を受けて所定の速度で、版胴33の軸心に対して直交する主走査方向(Y軸方向)に移動し、版胴33の下方空間を通過する。このとき、あらかじめステージ10に保持された基板90と版胴33の外周面に装着された凸版印刷版50との間に生じる隙間または基板90に対する後述する凸部551の押込量が所定の範囲内になるように、昇降テーブル65の位置が調整される。
【0030】
また、版胴33の外周面に装着された凸版印刷版50から基板90に印刷材料が転写された後、凸版印刷版50の表面は洗浄機構35により洗浄される。なお、洗浄機構35は版胴33から離間した装置の端部と版胴33に近接した位置との間を移動可能となっている。
【0031】
供給機構40は印刷材料を転写機構30に供給するための機構である。供給機構40は、供給ローラ43と、供給部45と、供給ローラ支持部47と、洗浄機構49とから構成される。
【0032】
供給ローラ43は、その軸心が版胴33の軸心と平行に配置される。例えば、供給ローラ43は、その外周面が平滑な平ローラで構成される。そして、供給ローラ43はその外周面を版胴33に装着された凸版印刷版50に当接させながら互いに反対方向に回転することによって、凸版印刷版50の表面に印刷材料を供給する。なお、供給ローラ43は、左右一対の供給ローラ支持部47によって軸支されている。そして、供給ローラ支持部47は、版胴支持部37に対して離接可能な構成となっている。
【0033】
供給部45は、図示を省略する供給源と接続されており供給源に貯留される印刷材料を供給ローラ43に供給する。例えば、供給部45には供給ローラ43の軸心方向を長手方向とするスリットを有するスリットノズルなどが用いられる。そして、供給源から供給される印刷材料を、供給ローラ43の外周面上に所定の流量で吐出して、当該外周面上に印刷材料の膜を形成する。なお、供給部45と供給ローラ43の外周面までは所定の距離だけ離間しており、その距離が図示を省略するモータが駆動することによって調整される。
【0034】
洗浄機構49は、供給ローラ43の表面を洗浄する。印刷材料を凸版印刷版50の表面に供給した後、供給ローラ43の表面に印刷材料が残存した場合、その上にさらに供給部45から供給ローラ43の表面に印刷材料が供給されたとき、印刷材料の膜厚が増加することで膜厚が不均一となり、必要な膜厚をもった所望の画像パターンの転写が不可能となる。このため、供給ローラ43の表面を洗浄するための機構として洗浄機構49が設けられてもよい。
【0035】
このように、パターン印刷装置1においては、供給部45から供給ローラ43の外周面に印刷材料が供給され、供給ローラ43の表面に印刷材料の膜が形成される。そして、印刷材料は、凸版印刷版50に形成された所望の画像パターンに供給され、凸版印刷版50上に印刷材料の薄膜パターンが形成される。この凸版印刷版50上に形成された印刷材料の薄膜パターンが、基板90上に転写されることで所望の画像パターンが印刷される。
【0036】
パターン印刷装置1の図示を省略する制御部は、搬送機構20を制御することによって基板90を保持したステージ10を主走査方向(Y軸方向)に移動させて版胴33の下部空間を通過させる際、図示を省略する回転駆動機構を制御することによってステージ10の主走査方向(Y軸方向)の移動速度に応じて互いに速度差が生じないように版胴33の回転を制御する。これによって、ステージ10に保持された基板90と凸版印刷版50とが所定の隙間を維持して対向しながら、凸版印刷版50に供給された印刷材料が基板90に転写されていく。
【0037】
次に図3を用いて凸版印刷版50の第1の実施形態についてについて説明する。図3は本発明に係る凸版印刷版50の第1の実施形態をあらわす概要図であって、図3(a)は凸版印刷版50を上から見た図であり、図3(b)は凸版印刷版50を図中の下方から見た一部拡大図である。
【0038】
凸版印刷版50は版胴33の外周面に装着するため柔軟性を有した材料で構成されている。例えば、樹脂で形成される。本実施例では、平版状の幅広なフィルム59上に樹脂材料を塗布し所望の画像パターンを樹脂で形成した凸版印刷版50を用いる。なお、樹脂材料に限らず適宜好適な材料で製版したものを用いてもよい。なお、凸版印刷版50として機能するためにフィルム59は必須の構成要件ではない。
【0039】
凸版印刷版50は、表面に所望の画像パターンが形成されており、該表面に供給機構40により印刷材料が供給された後、転写機構30により押圧されることで所望の画像パターンを基板90に転写するためのものである。凸版印刷版50には、所望の画像パターンに対応する凸部551と、凸部551を一方面の画像形成領域55に設ける基部53(図3(b)中のAの領域に相当)と、凸部551を補強するための補強部57(図3(b)中のCの領域に相当)とから構成される。
【0040】
基部53は、後述する凸部551を保持するとともに、版胴33から押圧される力を受けるためのもので画像形成領域を形成する。すなわち、基部53は、一方面が画像形成領域55となっており、該領域に凸部551が形成されるとともに、凸部551を保持する。したがって、基部53の一方面の面積は、所望の画像パターンの面積と同じになるように構成されている。
【0041】
基部53の他方面は、フィルム59が装着されており、版胴33の外周面にフィルム59を介して当接し、版胴33の図示を省略する保持機構(例えば、クランプ機構など)によりフィルム59を保持することで版胴33の外周面に固定的に保持される。なお、フィルム59を介さずに、基部53の他方面が直接版胴33の外周面に当接し保持される構成であってもよい。この場合、保持機構として例えば吸着等により固定的に保持することが可能である。
【0042】
凸部551は、所望の画像パターンに対応するように形成されている。凸部551の頂部は基板90に印刷材料を転写するための印刷面が形成されており、該印刷面に印刷材料が供給され保持されることで、基板90へ該画像パターンを転写することが可能となる。また、凸部551の形状は、断面視で印刷面を最頂部として徐々に広がりながら凹部553の最深部に向かって傾斜するように形成されている。つまり、凸部551の側方には凹部553が形成されることになる。
【0043】
凹部553の底面から凸部551の印刷面までの高さは100μm以上であって、押圧された際に凹部553の底面が基板90に当接しない高さに形成されていることが好ましい。これによって、該底面は、転写機構30による押圧によっても印刷されず、かつ印刷面に供給された印刷材料が凹部553に流れに込みにくいというという効果を得ることができる。また、凸部551の印刷面に微細突起を形成してもよい。微細突起を設けることで印刷材料が凹部553に流れ込むのをさらに抑制することができる。
【0044】
補強部57は、版胴33からの押圧による凸部551の変形を抑制するため凸版印刷版50を補強するためのものであり、基部53の主走査方向と平行な両側部であって、画像形成領域55外に設けられる。すなわち、補強部57は各凸部551の間には設けないことで、印圧による凸部551の変形を抑制することができる凸版印刷版50を比較的容易に製造することができる。
【0045】
また、補強部57は断面視で矩形となる形状となっており、その幅は短すぎては補強する力が不十分となり、長すぎると補強部57を構成する材料の増加や、凸版印刷版50を版胴33に保持する際に保持機構の構造が大きくなってしまうため、その幅は5〜10mm程度であることが好ましい。また、補強部57の断面視で矩形となる形状以外に、基部53の側部から、補強部57の上面を最頂部として徐々に広がりながら外方に向かって傾斜する形状であってもよい。
【0046】
また、補強部57は、基部53の厚みよりも小さい厚みとなるように構成される。これにより、補強部57の上面に供給機構40から印刷材料が転写されることを防止することができる。補強部57の厚みは凸部551が押圧、すなわち印圧により基板90に押し込まれた際に、補強部57の上面が基板90に当接しない厚みであることが好ましい。こうすることで、仮に印刷材料が補強部57の上面に付着したとしても、基板90に補強部57から印刷材料が転写されることはないため、該印刷材料を基板90上から除去、あるいは該印刷材料が転写された領域を後工程において不使用にする必要がないため生産効率を高くすることができる。
【0047】
本実施形態では、凸部551は、図3(a)中の矢印で示す版胴33の回転方向に対して、基部53の一方側面531aから他方側面531bへ延設するように形成され、凸部551および凹部553でラインとスペースを形成している。補強部57は、該ラインとスペースの両端から所定の数の凸部551に相当する凸部551aに対して印圧による変形を抑制するように設けられている。例えば、両端から5〜10個程度の凸部551に対する変形を抑制することができる。
【0048】
具体的には、補強部57は凸部551が延設する方向に平行となる基部53の側面であって、画像形成領域55外に基部53と一体的に、すなわち、基部53と同一の材料により一体成型によって形成して設けられる。また、補強部57は基部53の厚み(図3(b)中のAの領域に相当)よりも小さい厚みとなっている。より好適には補強部57の厚み(図3(b)中のCの領域に相当)は基部53の厚みから凸部551の厚み(図3(b)中のBの領域に相当)の平均を減算した厚みとなることが好ましい。このような補強部57を形成することで、確実に基板90への当接を防ぐことができる。
【0049】
このように補強部57を設けることで、凸部551aの印圧による変形を効果的に抑制することができるとともに、補強部57の基板90への当接を防ぐことができるため、補強部57からの基板90への印刷材料の転写を防ぐことができる。よって、線幅や膜厚、印刷位置の精度の低下を防ぐことができる。
【0050】
このように基部53の両側部あるいは全周部に補強部57を形成することで、複数の所望の画像パターンからなる凸版印刷版50を構成することができる。よって、所望の画像パターンを1つの印刷版に効率良く多面付けすることが可能となり、有機ELデバイスなどの製造効率を高くすることができる。
【0051】
なお、上述した凸版印刷版50は公知の製造方法によって製造することができる。例えば、通常のフレキソ印刷版の製造方法が適用でき、例えば、ポリエチレンテレフタレート上に樹脂材料を塗布、硬化してレーザにより彫刻する方法、感光性樹脂材料にフォトマスクを使用したフォトリソ法などである。
【0052】
次に、パターン印刷装置1を用いて基板90上に所望の画像パターンを形成する動作について図2を参照しつつ説明する。パターン印刷装置1では、版胴33の外周面に凸版印刷版50が図示を省略する保持機構により保持される。また、処理対象の基板90がステージ10上に載置され、ステージ10に設けられている図示しないチャック機構により基板90がステージ10にて保持される。そして、版胴33に保持された凸版印刷版50は図2中の矢印の方向に回転しつつ、凸版印刷版50の表面に形成される所望の画像パターンに対応する凸部551に対して、供給ローラ43が図2中の矢印の方向に回転しながら当接することで印刷材料が凸部551に供給される。なお、供給ローラ43には供給部45と接続された供給機構40から印刷材料が供給される。
【0053】
印刷材料が供給された凸版印刷版50は基板90に対して版胴33に押圧されつつ当接する。そして、凸版印刷版50の表面に形成された所望の画像パターンに供給された印刷材料が基板90に転写される。その際、凸版印刷版50に形成される凸部551が押圧されることで圧縮されるように変形するが、このように凸版印刷版50を基板90に押圧する力が働くことで凸版印刷版50に形成されるパターン部55が全面にわたって確実に基板90に当接する。
【0054】
このように所望の画像パターンに対応する凸部551が押圧され変形した場合でも、基部53の両側部あるいは全周部に補強部57が形成されていることで、凸部551の両端から所定の数の凸部551に相当する凸部551aの変形を抑制し、基板90に所望の画像パターンを高精度に印刷することができる。
【0055】
次に、凸版印刷版50に印刷材料を供給した供給ローラ43は洗浄機構49によりその表面に付着した印刷材料を除去するため洗浄される。また、凸版印刷版50は、その表面に供給された印刷材料を基板90に転写した後、洗浄機構35によりその表面に付着した印刷材料を除去するため洗浄される。
【0056】
所望の画像パターンが印刷された基板90はチャック機構が解除され、ステージ10上から図示を省略する搬送ロボット等により搬送される。
【0057】
次に図4を用いて凸版印刷版50の第2の実施形態について説明する。図4において図3と共通する部分については同一の符号を割り当てている。そして、図3に図示された凸版印刷版50と異なる点は、補強部57が基部53の全周部にわたって同一材料で一体形成されている点である。したがって、同一である構成については説明を省略する。図4に示す形状を有する補強部57が形成されることで、延設する凸部551の両端から所定の数の凸部551に相当する凸部551aの変形を抑制するだけでなく、凸部551の延設する方向と直交する方向に対する凸部551の自重による鉛直方向の撓みを抑制することができる。よって、さらに高精度に所望の画像パターンを基板90に転写することが可能となる。
【0058】
上記、補強部57が基部53の全周部にわたって同一材料で一体形成される凸版印刷版50は第1の実施形態で説明したパターン印刷装置1に適用することができる。また、その動作についても同様であるためパターン印刷装置1の説明は省略する。前述した凸版印刷版50をパターン印刷装置1に適用することで、凸版印刷版50が基板90に当接する際、画像形成領域55が基板90に均一に当接するため、所望の画像パターン全面にわたって、線幅、膜厚、位置などの精度の低下を防ぎ高精細な画像パターンを印刷することができる。
【0059】
次に図5を用いて凸版印刷版50の第3の実施形態について説明する。図5においても図3と共通する部分については同一の符号を割り当てている。そして、図3に図示された凸版印刷版50と異なる点は、凸部551、補強部57を備える基部53をフィルム59上に複数配列している点である。なお、補強部57の形状は基部53の両側部あるいは全周部に形成するように構成してもよい。したがって、同一である構成については説明を省略する。また、図面上、所望の画像パターンに対応する凸部551や凹部553は省略している。図5に示すように、基部53の側部に補強部57を設けることで、これらをフィルム59上に複数配列することができ、効率良く複数の基部53を凸版印刷版50に配列することができる。なお、基部53は必ずしも整列配置されている必要はなく、また基部53が配列される個数が限定されるものではない。そして、第1の実施形態と同様に補強部57を基部53の両側部あるいは第2の実施形態と同様に基部53の全周部に形成するように構成したものでもよい。
【0060】
上記、複数の基部53が配列された凸版印刷版50は第1の実施形態で説明したパターン印刷装置1に適用することができる。また、その動作についても同様であるためパターン印刷装置1の説明は省略する。前述した凸版印刷版50をパターン印刷装置1に適用することで、高精細な画像パターンを印刷することができるとともに、1度の印刷で複数の所望の画像パターンを印刷することができる。これにより、生産効率の向上を行うことができる。
<変形例>
【0061】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記の実施の形態に限られるものではなく様々な変形が可能である。
【0062】
例えば、上記実施の形態では、ステージ10を水平移動させながら版胴33を回転させて印刷材料を転写しているが、ステージ10を固定して版胴33自体を水平方向に移動させながら回転させてもよい。版胴33とステージ10との少なくとも一方が相対的に水平方向に移動すれば、同様の印刷が可能であるためである。
【0063】
また、凸版印刷版50を版胴33に装着し基板90に押圧しているが、印刷版の裏面全体を押圧することでスタンプ印のごとく印刷版に形成された所望の画像パターンを基板に転写するように構成してもよい。このような印刷方法においても補強部を設けることで同様の効果を得ることができる。
【0064】
また、補強部57は基部53の側部に一体的に形成しているがこれに限られるものではなく、別体として補強部を形成し、基部の両側部あるいは全周部に固定的に配設してもよい。
【0065】
また、凸版印刷版50に形成される所望の画像パターンが基部53の一方端から他方端に延設される凸部551よって形成されているがこれに限られるものではなく、複数の凸部を離散的に配置するよう形成されていてもよい。この場合も、基部の両側部あるいは全周部に該凸部の変形を抑制するための補強部を形成することによって、同様の効果を得ることができる。
【0066】
さらに、上記実施形態および各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明に係るパターン印刷装置および印刷版は、有機EL材料を含む印刷材料を転写することによってガラス基板等に印刷する際、所定のパターンの印刷線幅、膜厚、位置精度などの印刷品質を向上させることができ、照明やディスプレイ等に利用される有機ELデバイスを製造する装置および印刷版として有用である。
【符号の説明】
【0068】
1 パターン印刷装置
10 ステージ
20 搬送機構
23 ガイド
30 転写機構
33 版胴
40 供給機構
43 供給ローラ
45 供給部
50 凸版印刷版
53 基部
531a 一方側面
531b 他方側面
55 画像形成領域
551 凸部
553 凹部
57 補強部
90 基板
A 基部の厚み
B 凸部の厚み
C 補強部の厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を水平に保持するステージと、
所望の形状の画像パターンが形成される印刷版と、
前記印刷版に印刷材料を供給する供給機構と、
前記印刷版を押圧し前記基板に前記画像パターンを転写する転写機構と、を備え、
前記印刷版は、
前記画像パターンに対応する凸部と、
前記凸部を一方面の画像形成領域に設ける基部と、
前記基部の側部で、前記画像形成領域外に設けられた前記基部の厚みよりも小さい厚みの補強部と、を備えることを特徴とするパターン印刷装置。
【請求項2】
前記補強部の厚みは、前記基部の厚みから前記凸部の厚みの平均を減算した厚みよりも小さい厚みである請求項1に記載するパターン印刷装置。
【請求項3】
前記凸部は、前記基部の一方端から他方端に延設されており、
前記補強部は、前記凸部が延設される方向と平行となる前記基部の少なくとも両側部で、前記画像形成領域外に設けられている請求項1または請求項2に記載のパターン印刷装置。
【請求項4】
前記補強部は、前記基部の全周部で、前記画像形成領域外に設けられている請求項1または請求項2に記載のパターン印刷装置。
【請求項5】
前記転写機構は、前記印刷版を外周面に装着する版胴を有し、
前記供給機構は、前記版胴と平行に配置され、前記印刷版の表面に印刷材料を供給する供給ローラと、
前記供給ローラの表面に印刷材料を供給する供給部と、を有し、
前記版胴を回転しつつ前記版胴の外周面に装着された前記印刷版を前記基板に押圧し、前記画像パターンを前記基板に転写する請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のパターン印刷装置。
【請求項6】
所望の形状の画像パターンに対応する凸部と、
前記凸部を一方面の画像形成領域に設ける基部と、
前記基部の側部で前記画像形成領域外に設けられた前記基部の厚みよりも小さい厚みの補強部と、を備えることを特徴とする凸版印刷版。
【請求項7】
前記補強部の厚みは、前記基部の厚みから前記凸部の厚みの平均を減算した厚みよりも小さい厚みである請求項7に記載する凸版印刷版。
【請求項8】
前記凸部は、前記基部の一方端から他方端に延設されており、
前記補強部は、前記凸部が延設される方向と平行となる前記基部の少なくとも両側部で、前記画像形成領域外に設けられている請求項6または請求項7に記載する凸版印刷版。
【請求項9】
前記補強部は、前記基部の全周部で、前記画像形成領域外に設けられている請求項6または請求項7に記載する凸版印刷版。
【請求項10】
前記凸部、前記基部および前記補強部は同一材料により一体形成されている請求項6ないし請求項9のいずれか一項に記載の凸版印刷版。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−207104(P2011−207104A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77974(P2010−77974)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】