パターン形成方法、及びパターン形成装置
【課題】飛行中の液滴にレーザ光を照射して該液滴を乾燥させて描画対象物に着弾させた場合に、液滴の濡れ広がりを抑制するパターン形成方法、パターン形成装置を提供する。
【解決手段】液滴吐出装置の制御部50のROM52には、着弾した液滴の着弾径と同液滴に照射されたレーザ光のレーザ光の強度とが関連付けられたレーザ光の強度データLPDが記憶されている。このレーザ光の強度データLPDに基づいて、所望の着弾径が得られるレーザ光の強度の上限強度PLを検出し、その上限強度PLよりも小さいレーザ光の強度の領域を使用禁止領域Aに設定する。描画情報Iaとともに入力される一対のレーザ光の総レーザ光の強度が前記使用禁止領域Aであることを条件に、その条件が成立する場合にはグリーンシートへの描画を禁止して、その条件が不成立である場合には入力させた総レーザ光の強度を選択してグリーンシートへの描画を許可する。
【解決手段】液滴吐出装置の制御部50のROM52には、着弾した液滴の着弾径と同液滴に照射されたレーザ光のレーザ光の強度とが関連付けられたレーザ光の強度データLPDが記憶されている。このレーザ光の強度データLPDに基づいて、所望の着弾径が得られるレーザ光の強度の上限強度PLを検出し、その上限強度PLよりも小さいレーザ光の強度の領域を使用禁止領域Aに設定する。描画情報Iaとともに入力される一対のレーザ光の総レーザ光の強度が前記使用禁止領域Aであることを条件に、その条件が成立する場合にはグリーンシートへの描画を禁止して、その条件が不成立である場合には入力させた総レーザ光の強度を選択してグリーンシートへの描画を許可する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行中の液滴に対してレーザ光を照射するパターン形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
低温焼成セラミックス(LTCC:Low Temperature Co−fired Ceramics)からなる多層基板は、優れた高周波特性と高い耐熱性を有するために、高周波モジュールの基板やICパッケージの基板等に広く利用される。このようなLTCC多層基板の製造技術としては、一般に回路パターンを有する複数のグリーンシートを積層して一括焼成することにより上記多層基板を製造する方法が検討されている。
【0003】
上記回路パターンを描画する工程においては、回路パターンの高密度化を図るために、金属インクを微小な液滴にして吐出する、所謂インクジェット法が提案されている(例えば、特許文献1)。このようなインクジェット法に利用される液滴は、一般に吐出ヘッドに列設された多数のノズルから1滴あたりの容量が数〜数十ピコリットルになるように吐出されており、こうした微小な液滴の吐出位置を変更することにより回路パターンのさらなる微細化や狭ピッチ化を可能にしている。
【0004】
上述するインクジェット法の吐出ヘッドは、ノズルへと連通する貯留室に金属インクを貯留し、該ノズル内に形成される気液界面(メニスカス)を振動させることにより金属インクを液滴として吐出する。このメニスカスにおいては、金属インクが外気に接しているため金属インクの分散媒が外気へと常時揮発する。それゆえ、分散媒が容易に揮発する場合にあっては、導電性微粒子がメニスカス近傍に析出してしまい、終には液滴の吐出不良を招く虞があった。そこで、こうしたインクジェット用のインクにあっては、従来から水溶性の多価アルコールなどからなる再溶解性成分をインクに添加し、この再溶解性成分と分散媒との相互作用により分散媒の揮発性を低減させるとともに、同再溶解性成分と導電性微粒子との相互作用により析出後の金属粒子を再び分散媒に分散させる(再溶解させる)提案がなされている。
【特許文献1】特開2005−57139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、インクジェット法を利用して高精細なパターンを形成するためには、吐出した液滴を速やかに乾燥させて、その基板上における濡れ広がりを抑制することが好ましい。こうした乾燥を促進させる一つの方法としては、吐出された飛行中の液滴に対してレーザ光を照射することにより該液滴の乾燥を飛行中に促進させる方法が検討されている。
【0006】
レーザ光を利用する液滴の乾燥法にあっては、飛行中の液滴にレーザ光を照射するために、液滴の表面が相対的に高温になり易く、こうした液滴の表面から優先的に分散媒が蒸発することにより該液滴表面には導電性微粒子が析出し易くなる。そして、液滴内部に含まれる分散媒の蒸発よりも上述する導電性微粒子の析出が支配的になる場合には、導電性微粒子からなる外殻が液滴の表面に形成されるようになる。こうした外殻を有する液滴が基板に着弾した際には、液滴内部に含まれる金属インクの流出が前記外殻により塞き止められて基板上における液滴の濡れ広がりを抑制するようになる。
【0007】
一方、飛行中の液滴の乾燥が不十分である場合には、着弾した液滴の内部に大量の再溶解性成分が残存するために、こうした再溶解性成分が前記外殻へ作用することにより同外殻が液滴の内部へと再溶解してしまう。このような外殻の再溶解は、液滴内部における導
電性微粒子が飽和するまで進行することから、終には導電性微粒子からなる外殻を決壊させて液滴の濡れ広がりを招いてしまう。図11(a)は外殻を有する液滴が着弾した状態を模式的に示した図であり、図11(b)は再溶解性成分による外殻の再溶解により同外殻が決壊した状態を模式的に示した図である。
【0008】
例えば、図11(a)に示されるように、飛行中の液滴の乾燥が十分である場合には、再溶解性成分の作用に抗した十分な厚さの外殻が形成されているため、液滴の濡れ広がりがこうした外殻により抑制されるようになる。一方、図10(b)に示されるように、飛行中の液滴の乾燥が不十分である場合には、再溶解性成分の作用により外殻が決壊してしまい、液滴内部に含まれる金属インクが基板表面で濡れ広がってしまう。
【0009】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、レーザ光を受けた液滴を描画対象物に着弾させてパターンを形成する場合に描画対象物上における液滴の濡れ広がりを抑制するパターン形成方法、及びパターン形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のパターン形成方法は、パターン形成材料を蒸発成分に分散させた液状体を吐出ヘッドのノズルから描画対象物の目標位置へ液滴にして吐出するとともに、前記描画対象物と前記吐出ヘッドとに挟まれた空間である前記液滴の飛行空間にレーザ光を照射し、飛行中の前記液滴から前記蒸発成分を蒸発させることにより前記飛行中の液滴を乾燥させて該乾燥させた液滴を前記描画対象物に着弾させることにより前記パターン形成材料からなるパターンを前記描画対象物に形成するパターン形成方法であって、前記蒸発成分に前記パターン形成材料を前記蒸発成分に再溶解させる再溶解成分が含まれる場合に、予め前記レーザ光の強度と前記液滴の着弾径とを関連づけて、前記レーザ光の強度が高くなるにつれて前記着弾径が拡大する前記レーザ光の強度範囲の上限値を設定し、当該上限値より大きい強度で前記レーザ光を照射することを要旨とする。
【0011】
パターン形成材料を再溶解させる再溶解性成分が液状体に含まれる場合、該液状体からなる液滴の乾燥状態が不十分であると、液滴の表面に形成される外殻が着弾後に決壊して液滴の濡れ広がりが発生する。こうした状態にあっては、液滴からの蒸発成分が多くなるほど、すなわち液滴に照射するレーザ光の強度が高くなるほど、描画対象物への蒸発成分の付着量が多くなり、描画対象物に対する液状体の濡れ性が高くなることによって、液滴の着弾径がかえって拡大してしまう。このパターン形成方法によれば、上述のようにレーザ光の強度が高くなるに連れて着弾径が拡大する強度の上限値を設定した上で、当該上限値よりも大きい強度でレーザ光を照射することから、着弾する液滴の濡れ広がりを抑制することができる。
【0012】
このパターン形成方法は、前記上限値よりも小さい強度の領域を使用禁止領域として設定して、描画条件におけるレーザ光の強度が前記使用禁止領域内であることを条件として前記描画対象物への描画を禁止し、前記条件が不成立である場合には前記描画対象物への描画を許可することを要旨とする。
【0013】
このパターン形成方法によれば、レーザ光の強度が高くなるに連れて着弾径が拡大する強度の上限値よりも小さい強度の領域が使用禁止領域として設定されることから、描画条件におけるレーザ光の強度が低く液滴の十分な乾燥が得られない場合には、たとえレーザ光の強度が入力された後であっても、そのレーザ光の強度の使用をして描画を禁止することにより、着弾する液滴の濡れ広がりを確実に抑制することができる。
【0014】
このパターン形成方法は、前記目標位置と前記ノズルとを結ぶ経路を挟んで相対向する一対のレーザ光を照射することを要旨とする。
このように飛行中の液滴に対してレーザ光を照射して分散媒を乾燥させる際には、一方からのみレーザ光を照射するよりも、両側から照射する方が効率よく液滴の分散媒を乾燥させることができる。すなわち、この発明によれば、液滴の分散媒が効率よく乾燥することから、液滴の濡れ広がりをさらに抑制することもできる。
【0015】
このパターン形成方法は、前記一対のレーザ光の強度が等しいことを要旨とする。
飛行中の液滴Dから分散媒が蒸発する際には、蒸発にともなう運動力に抗した反力が該液滴Dに対して作用する。そのため、蒸発率の高い方から低い方に沿った方向に上記反力が作用し、液滴Dの吐出方向を軸にして蒸発率が対称でない場合にあっては、その運動力に抗した反力によって液滴Dの飛行曲がりが誘発されて着弾位置の位置ずれが発生する。この発明によれば、液滴の蒸発率が吐出方向を軸にして対称にすることができ、上記運動力に抗した反力が打ち消しあうことから、液滴Dの飛行曲がりが生じ難くなり、着弾位置の位置ずれを抑制することもできる。
【0016】
このパターン形成方法は、前記蒸発成分に前記パターン形成材料を前記蒸発成分に再溶解させる再溶解成分が含まれない場合には、予め前記レーザ光の強度と前記液滴の着弾径とを関連づけて、前記着弾径に基づく前記レーザ光の強度で前記レーザ光を照射することを要旨とする。
【0017】
パターン形成材料を再溶解させる再溶解性成分が液状体に含まれない場合においては、液滴の表面に形成される外殻が着弾後に再溶解成分によって決壊して液滴の濡れ広がりが発生することはない。こうした状態にあっては、液滴からの蒸発成分が多くなるほど、すなわち液滴に照射するレーザ光の強度が高くなるほど、液滴の着弾径が小さくなる。このパターン形成方法によれば、上述のようにレーザ光の強度が高くなるに連れて着弾径が小さくなることから、所望の着弾径を得るべく選択されるレーザ光の強度範囲の自由度を拡大させることもできる。
【0018】
本発明のパターン形成装置は、パターン形成材料を分散媒に分散させた液状体を吐出ヘッドから描画対象物へ液滴にして吐出する吐出ヘッドと、前記描画対象物と前記吐出ヘッドとに挟まれた空間である前記液滴の飛行空間にレーザ光を照射するレーザ照射部とを備え、飛行中の前記液滴から前記分散媒を蒸発させることにより前記飛行中の液滴を乾燥させて該乾燥させた液滴を前記描画対象物に着弾させることにより前記パターン形成材料からなるパターンを前記描画対象物に形成するパターン形成装置であって、前記レーザ照射部は、前記蒸発成分に前記パターン形成材料を前記蒸発成分に再溶解させる再溶解成分が含まれる場合に、予め前記レーザ光の強度と前記液滴の着弾径とを関連づけて、前記レーザ光の強度が高くなるにつれて前記着弾径が拡大する前記レーザ光の強度範囲の上限値を設定し、当該上限値より大きい強度で前記レーザ光を照射することを要旨とする。
【0019】
パターン形成材料を再溶解させる再溶解性成分が液状体に含まれる場合、該液状体からなる液滴の乾燥状態が不十分であると、液滴の表面に形成される外殻が着弾後に決壊して液滴の濡れ広がりが発生する。こうした状態にあっては、液滴からの蒸発成分が多くなるほど、すなわち液滴に照射するレーザ光の強度が高くなるほど、描画対象物への蒸発成分の付着量が多くなり、描画対象物に対する液状体の濡れ性が高くなることによって、液滴の着弾径がかえって拡大してしまう。このパターン形成装置によれば、上述のようにレーザ光の強度が高くなるに連れて着弾径が拡大する強度の上限値を設定した上で、当該上限値よりも大きい強度でレーザ光を照射することから、着弾する液滴の濡れ広がりを抑制することができる。
【0020】
このパターン形成装置は、前記上限値よりも小さい強度の領域を使用禁止領域として規定する強度データが記憶させた記憶部を備え、入力された描画条件におけるレーザ光の強
度が前記使用禁止領域内であることを条件として前記描画対象物への描画を禁止し、前記条件が不成立である場合には前記描画対象物への描画を許可することを要旨とする。
【0021】
このパターン形成装置によれば、レーザ光の強度が高くなるに連れて着弾径が拡大する強度の上限値よりも小さい強度の領域が使用禁止領域として設定されることから、描画条件におけるレーザ光の強度が低く液滴の十分な乾燥が得られない場合には、たとえレーザ光の強度が入力された後であっても、そのレーザ光の強度の使用をして描画を禁止することにより、着弾する液滴の濡れ広がりを確実に抑制することができる。
【0022】
このパターン形成装置は、前記レーザ照射部は、前記蒸発成分に前記パターン形成材料を前記蒸発成分に再溶解させる再溶解成分が含まれない場合に、予め前記レーザ光の強度と前記液滴の着弾径とを関連づけて、前記着弾径に基づく前記レーザ光の強度で前記レーザ光を照射することを要旨とする。
【0023】
パターン形成材料を再溶解させる再溶解性成分が液状体に含まれない場合においては、液滴の表面に形成される外殻が着弾後に再溶解成分によって決壊して液滴の濡れ広がりが発生することはない。こうした状態にあっては、液滴に照射するレーザ光の強度が高くなるほど液滴の着弾径が小さくなる。このパターン形成装置によれば、再溶解性成分が液状体に含まれない場合においては、上述のようにレーザ光の強度が高くなるに連れて着弾径が小さくなることから、所望の着弾径を得るべく選択されるレーザ光の強度範囲の自由度を拡大させることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明のパターン形成装置を液滴吐出装置に具体化した一実施形態について図1〜図9を参照して説明する。図1は液滴吐出装置の斜視構造を模式的に示した図である。図2は、本実施形態の吐出ヘッドの斜視構造を示す斜視図であり、図3は同吐出ヘッドの内部断面構造を示す部分断面図である。また図4は描画対象物であるグリーンシートと吐出ヘッドとの配置の関係を示す平面図である。
【0025】
図1に示すように、パターン形成装置としての液滴吐出装置10の基台11には、該基台11の長手方向に沿って往復移動可能なステージ12が搭載されている。本実施形態では、基台11の長手方向であって、図1における右上方向を+X方向とし、+X方向の反対方向を−X方向と言う。また、+X方向と直交する水平方向であって、図2における左上方向を+Y方向とし、+Y方向の反対方向を−Y方向と言う。また、鉛直方向上方を+Z方向とし、+Z方向の反対方向を−Z方向と言う。
【0026】
基台11に搭載されるステージ12の上面には、描画対象物としてのグリーンシートGSが描画面GSaを上側にした状態でステージ12に位置決め固定されている。ステージ12は、基台11に設けられたステージモータ(図示せず)が正転又は逆転するとき、位置決めしたグリーンシートGSを所定の速度で+Y方向又は−Y方向へ走査する。
【0027】
基台11の上側には、門型に形成されたガイド部材13が+X方向に沿って架設されており、該ガイド部材13の上側には、液状体としての導電性インクIkを供給するインクタンク14が配設されている。インクタンク14は、導電性インクIkを貯留し、貯留する導電性インクIkを所定の圧力の下で所定の温度調整しつつ吐出ヘッド15へ供給する。
【0028】
この導電性インクIkは、パターン形成材料としての導電性微粒子と、蒸発成分としての分散媒とを含む態様が一般的であり、描画環境や描画用途に応じて、再溶解成分である多価アルコールを含むものがある。
【0029】
導電性微粒子は、数nm〜数十nmの粒径を有する微粒子であり、例えば銀、金、銅、白金、パラジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、イリジウム、鉄、錫、コバルト、ニッケル、クロム、チタン、タンタル、タングステン、インジウム等の金属、あるいはこれらの合金を用いることができる。
【0030】
分散媒は、上記導電性微粒子を均一に分散させるものであればよく、例えば水や水を主成分とする水溶液を用いることができる。また、分散媒には、導電性インクIkの粘度を調整するために、必要に応じて水溶性の有機溶媒を含んでもよい。水溶性有機溶媒には、例えば、エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルキルアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどのグリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、などのグリコールエーテル類を挙げることができ、これらを混合して用いてもよい。
【0031】
多価アルコールは、アルコールの価数が3〜6であり、標準状態(25℃、1気圧の状態)の下で固体のものを用いることができる。多価アルコールには、単糖類、二糖類、オリゴ糖及び多糖類のカルボニル基を還元した糖アルコール、2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,3−ヘプタントリオールなどを用いることができる。糖アルコールには、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ソルビトール、エリスリトール、スレイトール、リビトール、アラビニトール、キシリトール、アリトール、マニトール、ドルシトール、イディトール、グリコール、イノシトール、マルチトール、ラクチトールなどを挙げることができ、これらの混合物を用いてもよい。
【0032】
多価アルコールの濃度は、例えば導電性インクIkの全質量に対して5重量%〜20重量%であり、こうした多価アルコールの濃度は同多価アルコールによる保湿効果が得られ、かつ上記導電性微粒子の分散性が得られる範囲であればよい。これによって、ノズルN内では、多価アルコールと水との間の相互作用(例えば、水素結合やファンデルワールス結合など)により分散媒の乾燥が抑制される。また、ノズルN内では、多価アルコールと導電性微粒子との間の相互作用(例えば、配位結合など)により、一旦析出した導電性微粒子が再び導電性インクIkへと分散される(再分散させる)。こうした再溶解性成分の添加によりノズルNの目詰まりが抑制される。
【0033】
一方、ガイド部材13には、+X方向及び−X方向に移動可能なキャリッジ16が搭載されており、該キャリッジ16には吐出ヘッド15が搭載されている。キャリッジ16は、ガイド部材13に設けられたキャリッジモータ(図示せず)が正転又は逆転するとき、吐出ヘッド15を+X方向又は−X方向へ走査する。
【0034】
図2に示されるように、吐出ヘッド15は、キャリッジ16に位置決め固定されて+X方向に延びるヘッド基板17と、ヘッド基板17に支持されるヘッド本体20とを有する。ヘッド基板17は、−X方向の端部に接続端子17aを有しており、外部からの各種制御信号がこの接続端子17aからヘッド本体20へ入力されて、またヘッド本体20からの各種検出信号がこの接続端子17aから外部へ出力される。
【0035】
ヘッド本体20の底部には、グリーンシートGSと対向するように配置されるノズルプレート21が貼り付けられている。ノズルプレート21は、ヘッド本体20がグリーンシートGSの直上に配置されるとき、その底面(以下単に、ノズル形成面21aと言う)と
描画面GSaとが略平行になる態様で構成されており、これらノズル形成面21aと描画面GSaとによって挟まれた空間である液滴Dの飛行空間を形成する。またノズルプレート21は、ヘッド本体20がグリーンシートGSの直上に配置されるとき、ノズル形成面21aと描画面GSaとの間の距離であるプラテンギャップPGを所定の距離(図3参照、本実施形態では1000μm)に維持する。ノズルプレート21のノズル形成面21aには、ノズルプレート21をZ方向に貫通する複数個のノズルNがX方向に沿ってノズルピッチDxにて等間隔に配列されている。
【0036】
図3に示されるように、ヘッド本体20は、各ノズルNの上側にそれぞれキャビティ22と、振動板23と、圧力発生素子としての圧電素子PZを有する。各キャビティ22は、供給チューブ20Tを介して共通するインクタンク14に接続されており、これによりインクタンク14からの導電性インクIkを収容して、該導電性インクIkを各ノズルNに供給する。振動板23は、各キャビティ22に対向する領域がZ方向に振動することにより、該キャビティ22の容積を拡大及び縮小させて圧力変動を発生させ、これに伴ってノズルNのメニスカスを振動させる。各圧電素子PZには、その収縮量や収縮速度、伸張量や伸張速度を規定した電圧波形である駆動電圧が入力されるようになっており、こうした駆動電圧が圧電素子PZに入力されるたびに、該圧電素子PZがZ方向に収縮して伸張し、これにより振動板23がZ方向に振動する。
【0037】
こうした構成からなる吐出ヘッド15では、各圧電素子PZがZ方向に収縮及び伸張するときに、各キャビティ22に収容される導電性インクIkの一部が上記駆動電圧に応じたサイズや速度を有する液滴DとしてノズルNから吐出される。ノズルNから吐出される液滴Dは、上述する飛行空間を飛行してグリーンシートGSの描画面GSaに着弾する。
【0038】
この際、ノズルNから吐出された液滴Dは、該液滴Dに加わる外力の合力がZ方向にのみ作用することによってノズルNからZ方向に沿って飛行することが確実に可能となり、前記ノズルNを含んでZ方向に延びる仮想線である目標経路TLの上を飛行するようになる。一方、ノズルNから吐出された液滴Dは、該液滴Dに加わる外力の合力がZ方向と交差する方向に大きく作用する場合にあっては、該合力の作用に従って上記目標経路TLから外れた経路を飛行して、着弾位置の精度を損なう要因である所謂飛行曲がりを来たしてしまう。
【0039】
図4の一点鎖線で示されるように、グリーンシートGSの描画面GSaは二次元の矩形格子であるドットパターン格子DLによって仮想分割されている。ドットパターン格子DLは、+X方向の格子間隔と+Y方向の格子間隔とが、それぞれ所定の間隔で設定される仮想格子である。例えば、ドットパターン格子DLの+X方向の格子間隔は、ノズルピッチDxで規定されており、ドットパターン格子DLの+Y方向の格子間隔は、液滴Dの吐出周期とステージ12の走査速度との積から算出される吐出ピッチDyで規定されている。こうしたドットパターン格子DLが上記ステージ12により走査されるとき、上述する吐出ヘッド15は、ドットパターン格子DLの各格子点Tが目標経路TLを横切るかたちで配置されて、各ノズルNから描画面GSaに向けて液滴Dを吐出するか否かの選択が上記格子点Tごとに設定されるようになる。なお、図4ではドットパターン格子DLの各格子点Tを説明する便宜上、ドットパターン格子DLの格子間隔及び吐出ヘッド15のノズルピッチDxを十分拡大して示している。
【0040】
次に、上記飛行中の液滴Dにレーザ光を照射して該液滴Dを乾燥させる光学系について図5を参照して説明する。図5は、上記液滴吐出装置10に搭載されるレーザ照射部31の光学的構成を模式的に示した図であり、図6は各液滴Dに対するレーザ光の照射角度を模式的に示した図である。
【0041】
図5に示されるように、レーザ照射部31は、レーザ出射部としてのレーザ光源32、コリメートレンズ33、分岐部としてのハーフミラー34、及び反射ミラー35,36,37,38,39と、第1レーザ成形部40aと第2レーザ成形部40bとを備えている。
【0042】
レーザ光源32は、断面強度分布がガウシアン分布である基本レーザ光Leを出射する装置である。レーザ光源32は、所謂半導体レーザであって、導電性インクIkに対して所定の吸収率を有する波長に設定された基本レーザ光Leをコリメートレンズ33に入射させる。
【0043】
コリメートレンズ33は、その出射面側に所定の曲率を有する平凸レンズであって、レーザ光源32から出射された基本レーザ光Leの光束を光軸に対して平行な平行光に変換してハーフミラー34に入射させる。ハーフミラー34は、コリメートレンズ33から出射された基本レーザ光Leをエネルギーが等しい一対のレーザ光である第1レーザ光Le1と第2レーザ光Le2とに分割する。各反射ミラー35,36は、ハーフミラー34の透過光である第1レーザ光Le1を反射する反射面を有した平面ミラーであり、その反射光である第1レーザ光Le1を第1レーザ成形部40aに入射させる。各反射ミラー37〜39は、ハーフミラー34の反射光である第2レーザ光Le2を反射する反射面を有した平面ミラーであり、その反射光である第2レーザ光Le2を第2レーザ成形部40bに入射させる。
【0044】
第1レーザ成形部40aは、第1レーザ光Le1の光路上にシリンドリカルレンズ41aと第1強度変調素子42aとを備えている。第2レーザ成形部40bは、第2レーザ光Le2の光路上にシリンドリカルレンズ41bと第2強度変調素子42bとを備えている。シリンドリカルレンズ41a、42bは、それぞれ短手方向にのみ曲率を有する出射面を備えたレンズであって、コリメートレンズ33によって平行光に変換された第1レーザ光Le1と第2レーザ光Le2の断面を上記ノズル形成面21aに沿って延びる矩形状に変換する。なお、シリンドリカルレンズ41a、41bに入射する第1レーザ光Le1や第2レーザ光Le2は、Z方向に所定幅を有している。そのため、該レーザ光がシリンドリカルレンズ41a、41bにより成形されることなく飛行空間に照射される場合にあっては、該レーザ光におけるZ方向の端部が吐出ヘッド15やグリーンシートGS、ステージ12などに遮られてしまい、第1レーザ光Le1や第2レーザ光Le2のエネルギーの一部が損なわれてしまう。シリンドリカルレンズ41a、41bは、それぞれ対応する反射ミラーからの第1レーザ光Le1と第2レーザ光Le2のZ方向成分を変換して、第1レーザ光Le1及び第2レーザ光Le2のZ方向におけるビーム長を上記プラテンギャップPG(本実施形態では、1mm)と等しくなるように断面形状を成形する。これにより、第1レーザ光Le1及び第2レーザ光Le2のエネルギー損失を抑えつつ、液滴Dの目標経路TLに第1レーザ光Le1及び第2レーザ光Le2を導くことができる。
【0045】
第1及び第2強度変調素子42a、42bの光軸は、それぞれ目標経路TLの中間位置に位置するように配置されており、全てのノズルNから吐出される液滴Dに対して第1レーザ光Le1及び第2レーザ光Le2を照射すべく、ノズルNの配列方向(図5に示す一点鎖線方向)に対して所定の傾斜角θ(θ:0°<θ≦90°)だけ水平方向に傾斜している。この傾斜角θは、図6に示されるように、例えば液滴Dの直径を2rとしたときにsinθ≧2r/Dxを満足する範囲で選択される。こうした条件を満足する傾斜角θであれば、同じタイミングで吐出された各ノズルNからの液滴Dに対して第1レーザ光Le1及び第2レーザ光Le2を照射する場合であれ、相対的に第1強度変調素子42aに近い側の液滴Dが相対的に同第1強度変調素子42aから遠い側の液滴Dに対して第1レーザ光Le1及び第2レーザ光Le2を遮ることがない。それゆえ吐出ヘッド15から同時に吐出された全ての液滴Dに対して第1レーザ光Le1と第2レーザ光Le2とを均等に
照射することができる。しかも、sinθ=2r/Dxを満足する傾斜角θであった場合には、隣接するノズルNから吐出された液滴Dとのレーザ光の照射方向における隙間がなくなることから、液滴Dに照射されることなく飛行空間を通過してしまうレーザ光を最小限に抑えることができ、レーザ光の利用効率を向上させることもできる。また、sinθ>2r/Dxを満足するレーザ光であっても、第1及び第2強度変調素子42a、42bによって各ノズルNから吐出された液滴Dの飛行経路のそれぞれに対応するようにレーザ光を分割することにより、飛行空間を通過してしまうレーザ光を最小限に抑えることができ、レーザ光の利用効率を向上させることもできる。このように飛行中の液滴Dに対して両側からレーザ光を照射することにより、液滴Dの分散媒を効率よく乾燥させることもできる。第1強度変調素子42a及び第2強度変調素子42bは、それぞれシリンドリカルレンズ41a、41bにより成形された第1レーザ光Le1の強度及び第2レーザ光Le2の強度を所定の第1強度P1及び第2強度P2に変調して上記飛行空間へ照射する。
【0046】
このようにしてノズルNから吐出された液滴Dにレーザ光が照射されると、そのレーザ光から受けるエネルギーによって、まず液滴Dの温度が、液状体が沸騰しない範囲のなかで最も高い温度である目標温度付近、例えば分散媒の沸点まで昇温される。次いでレーザ光からのエネルギーが、昇温された液滴Dの沸騰しない状態を保ちながら該液滴Dの分散媒を円滑に気体へ相転移させる潜熱(気化熱)へと変換されて液滴Dの表面から分散媒が蒸発する。
【0047】
このようにして分散媒が蒸発すると、液滴Dの表面付近には導電性微粒子が順次析出するようになる。そして液滴Dの内部に含まれる分散媒の蒸発よりも上述する導電性微粒子の析出反応が支配的になる場合には、導電性微粒子からなる外殻が液滴Dの表面に形成されるようになる。再溶解成分である多価アルコールを含有する場合には、この分散媒の蒸発によって、液滴D表面付近に導電性微粒子及び多価アルコールが順次析出し、この析出した導電性微粒子及び多価アルコールは、表面から分散媒を蒸発させつつ液滴Dの表面に外殻を形成する。こうした液滴Dの外殻が厚く形成される場合にあっては、液滴Dの内側に導電性インクIkが残存している場合であれ、液滴DがグリーンシートGSに着弾した際に、同液滴Dの外殻によって導電性インクIkの流出が塞き止められて液滴Dの濡れ広がりが抑制される。
【0048】
上述するように液滴Dを乾燥させるためには、該液滴Dを目標温度まで昇温させるための第1熱量q1と、液滴Dに含まれている分散媒を気体へと相転移させるための第2熱量q2とが必要である。第1強度変調素子42a及び第2強度変調素子42bは、第1強度P1と第2強度P2との総和である照射強度Psがこれらの第1熱量q1と第2熱量q2との総和である総熱量qに相当するように第1強度P1と第2強度P2とを変調する。
【0049】
こうした熱量は、導電性インクIkの性状と、圧電素子PZに印加される駆動電圧COMと、液滴Dの容積とを用いた演算により推定することができ、また各種実験等に基づく直接測定よって決定することもできる。例えば上述する演算により上記第1熱量q1及び第2熱量q2を推定する場合には、導電性インクIkの性状から得られる分散媒及び導電性微粒子のモル分率と、分散媒及び導電性微粒子の比熱容量と、駆動電圧に基づいて得られる液滴Dの重量Wと、吐出時における液滴Dの温度とに基づいて行うことができる。
【0050】
また上述するような微小な液滴Dから蒸発した蒸発成分のなかには、液滴Dの表面から十分に離間した遠方へと拡散するものと、目標経路TLに残留して該経路上における蒸発成分の分圧を高くするものとがある。そのため、各温度における液滴の蒸発量は、目標経路TLに残留する蒸発成分の濃度が低くなるほど高くなり、逆に目標経路TLにおける蒸発成分の濃度が高くなるほど低くなる。そこで、液滴表面における蒸発成分の密度やその拡散などに基づく蒸発成分の物質移動流束を用いた液滴の物質収支に関わる微分方程式や
、液滴の気化熱を考慮した液滴の熱収支に関わる微分方程式、さらには液滴に対する空気抵抗を考慮した液滴の運動方程式などを解くことにより上記第1熱量q1及び第2熱量q2を推定することもできる。また上述する実験により上記第1熱量q1及び第2熱量q2決定する場合には、飛行中の液滴Dをハイスピードカメラで撮像しながら該液滴Dに対して異なる熱量の光を照射して、該液滴Dが沸騰しない状態を維持できる最も高い熱量を直接測定することにより第1熱量q1及び第2熱量q2を得ることもできる。
【0051】
また、飛行中の液滴Dから分散媒が蒸発する際には、蒸発にともなう運動力に抗した反力が該液滴Dに対して作用する。そのため、蒸発率の高い方から低い方に沿った方向に上記反力が作用し、液滴Dの吐出方向を軸にして蒸発率が対称でない場合にあっては、その運動力に抗した反力によって液滴Dの飛行曲がりが誘発されて着弾位置の位置ずれが発生する。そこで、第1強度変調素子42a及び第2強度変調素子42bは、上述のように設定される照射強度Psをそれぞれ相対向する第1レーザ光Le1と第2レーザ光Le2とに等分させる、すなわち第1強度P1及び第2強度P2をPs/2に設定する。これにより、液滴Dの蒸発率が吐出方向を軸にして対称となり、分散媒の蒸発にともなう運動力に抗した反力が打ち消しあうことから、液滴Dの飛行曲がりが生じ難くなり、着弾位置の位置ずれを抑制することもできる。
【0052】
次に上記のように構成した液滴吐出装置10の電気的構成について図7を参照して説明する。図7は、液滴吐出装置の電気的構成を示したブロック回路図である。
図7において、液滴吐出装置10の制御部50は、CPU51、記憶部としてのROM52、RAM53などを有し、格納された各種データ及び各種制御プログラムに従って、ステージ12及びキャリッジ16の搬送処理、吐出ヘッド15の液滴吐出処理、レーザ光源32のレーザ出射処理、第1強度変調素子42a及び第2強度変調素子42bによる強度変調処理等を実行する。
【0053】
制御部50には、起動スイッチや停止スイッチ、描画開始スイッチなどの操作スイッチや入出力画面54aなどを有した入出力装置54が電気的に接続されている。入出力装置54は、描画面GSaに対するドットパターン格子DLの格子点Tの位置座標に関する情報、駆動電圧COMに関する情報、導電性インクIkの性状に関する情報、前記照射強度Psに関する情報などを描画情報Iaとして制御部50に入力する。制御部50は、入出力装置54からの描画情報Iaを受け、描画情報IaをRAM53に格納するとともに、該描画情報Iaに基づいてビットマップデータBMDを生成してRAM53に格納する。
【0054】
ビットマップデータBMDは、各ビットの値(0あるいは1)に応じて各圧電素子PZのオンあるいはオフを規定するデータである。ビットマップデータBMDは、吐出ヘッド15の直下を通過する描画面GSa上の各格子点Tに、それぞれ液滴Dを吐出するか否かを規定するデータである。すなわち、ビットマップデータBMDは、ドットパターン格子DLに規定される各格子点Tに液滴Dを吐出させるためのデータである。
【0055】
制御部50には、キャリッジモータ駆動回路55が接続されており、制御部50からは該キャリッジモータ駆動回路55に対応する駆動制御信号が出力される。キャリッジモータ駆動回路55は、制御部50からの駆動制御信号に応答し、キャリッジ16移動させるためのキャリッジモータ56を正転又は逆転させる。キャリッジモータ駆動回路55には、キャリッジエンコーダ57が接続されて、キャリッジエンコーダ57からの検出信号が入力される。キャリッジモータ駆動回路55は、キャリッジエンコーダ57からの検出信号に基づいて、描画面GSaに対するキャリッジ16の移動方向及び移動量に関する信号、すなわちノズルNの移動方向及び移動量に関する信号を生成し、制御部50に出力する。
【0056】
制御部50には、ステージモータ駆動回路58が接続されており、制御部50からは該ステージモータ駆動回路58に対応する駆動制御信号が出力される。ステージモータ駆動回路58は、制御部50からの駆動制御信号に応答し、ステージ12を移動させるためのステージモータ59を正転又は逆転させる。ステージモータ駆動回路58には、ステージエンコーダ60が接続されて、ステージエンコーダ60からの検出信号が入力される。ステージモータ駆動回路58は、ステージエンコーダ60からの検出信号に基づいて、ステージ12の移動方向及び移動量に関する信号、すなわち格子点Tの移動方向及び移動量に関する信号を生成し、制御部50に出力する。制御部50は、ステージモータ駆動回路58からの信号に基づいて、描画面GSaに対する各格子点Tの相対位置を演算し、その相対位置が対応する格子点Tに位置するたびに吐出タイミング信号LTを出力する。
【0057】
制御部50には、吐出ヘッド駆動回路61が接続されており、制御部50からは各圧電素子PZを駆動するための駆動電圧COMが前記吐出タイミング信号LTと同期して出力される。また、制御部50は、ビットマップデータBMDに基づいて、所定のクロック信号に同期した吐出制御信号SIを生成し、吐出制御信号SIを吐出ヘッド駆動回路61にシリアル転送する。吐出ヘッド駆動回路61は、制御部50からの吐出制御信号SIを各圧電素子PZに対応させて順次シリアル/パラレル変換する。吐出ヘッド駆動回路61は、制御部50からの吐出タイミング信号LTを受けるたびに、シリアル/パラレル変換した吐出制御信号SIをラッチし、選択される各圧電素子PZにそれぞれ駆動電圧COMを供給する。
【0058】
制御部50には、レーザ光源駆動回路62が接続されており、制御部50からは基本レーザ光Leの照射動作を開始するための照射開始信号S1が出力され、また照射動作を終了するための照射停止信号S2が出力される。レーザ光源駆動回路62は、制御部50からの照射開始信号S1を受けてレーザ光源32に照射強度Psの基本レーザ光Leを出射させる。また、レーザ光源駆動回路62は、制御部50からの照射停止信号S2を受けてレーザ光源32に基本レーザ光Leの出射を停止させる。
【0059】
制御部50には、強度変調素子駆動回路63が接続されており、制御部50からは第1強度P1と第2強度P2とを規定するための第1出力信号LP1と第2出力信号LP2とが強度変調素子駆動回路63に出力される。強度変調素子駆動回路63は、上記第1出力信号LP1及び第2出力信号LP2が入力されると、第1レーザ光Le1と第2レーザ光Le2とがそれぞれ第1強度P1と第2強度P2となるように第1強度変調素子42aと第2強度変調素子42bとを制御する。
【0060】
ここで、使用する導電性インクIkに上記再溶解成分が含有されている場合においては、前記外殻の内側に残存している再溶解性成分が同外殻を形成している導電性微粒子に作用し、液滴の内部である導電性インクIkに導電性微粒子を再分散(再溶解)させる。そして飛行中の液滴Dに照射する照射強度Psが不十分である場合にあっては、外殻の厚みが薄いため、上述する再溶解反応の進行により外殻が決壊して液滴Dの濡れ広がりを来たしてしまう。そこで制御部50は、このような液滴Dの濡れ広がりを抑制すべく、導電性インクIkに再溶解成分が含有されている場合には、照射強度Psが不十分である強度の領域を使用禁止領域Aとして設定して、該使用禁止領域Aにある強度の使用を禁止する禁止領域設定処理を実行する。
【0061】
詳述すると、制御部50のROM52には、着弾した液滴Dの着弾径と照射強度Psとを関連付けたレーザ光の強度データLPDが、導電性インクIkの性状や駆動電圧COMごとに記憶されており、制御部50は、この強度データLPDを適宜読み出して上記の禁止領域設定処理を実行する。強度データLPDとは、予め実施した各種実験等により得られるデータであり、上述する外殻の決壊により濡れ広がりが発生するか否かを照射強度P
sごとに規定したデータである。図8は、レーザ光の強度データLPDの一例を示したグラフである。
【0062】
図8に示されるように、液滴Dに対する照射強度Psが低い領域にあっては、液滴Dの表面に薄い外殻が形成されるものの、再溶解に耐え得る十分な厚さが形成されていないがために、上述するような外殻の決壊を招いて液滴Dの着弾径を相対的に大きくしてしまう。また、このような状態にあっては、液滴Dから蒸発した蒸発成分が多くなるほど、すなわち照射強度Psが高くなるほど、描画面GSaに付着する蒸発成分が多くなり、描画面GSaの濡れ性が高くなることによって、かえって着弾径を拡大させてしまう。そして、その着弾径が最も大きい着弾径rLとなる照射強度を液滴Dに対する照射強度Psの閾値である上限強度PLと規定している。
【0063】
一方、液滴Dに対する照射強度Psが閾値である上限強度PLよりも高い領域においては、上述するような再溶解に耐え得る十分な厚さの外殻が形成されるために、上述するような高い濡れ性を有した描画面GSaであれ、液滴Dの着弾径を上限強度PLにおける着弾径rLよりも相対的に小さい値で維持できるようになる。
【0064】
上述する閾値である上限強度PLは、導電性インクIkに含まれる成分や粘度など、導電性インクIkに関わる性状や、液滴Dのサイズを規定する駆動電圧COMなどにより変動する。そこで上記強度データLPDにおいては、このように照射強度Psの増加とともに拡大する着弾径が急激に縮小するときの照射強度Psである上限強度PLが導電性インクIkの性状や駆動電圧COMごとに規定されるようになっている。
【0065】
制御部50は、描画情報Iaが入力されると、該描画情報Iaにおける導電性インクIkの性状に関する情報及び駆動電圧COMに関する情報と上記レーザ光の強度データLPDとに基づいて上限強度PLを取得し、これらをRAM53の所定領域に一時的に記憶する。制御部50は、上限強度PL未満の強度の領域を前記使用禁止領域Aとして設定してRAM53の所定領域に一時的に記憶し、この使用禁止領域Aを利用することにより、設定値である照射強度Psが使用可能か否かを判断する。
【0066】
そして制御部50は、描画情報Iaとともに照射強度Psが入力される場合であれ、描画情報Iaとは別個に照射強度Psが入力される場合であれ、その入力された照射強度Psが上記使用禁止領域A内であることを条件(描画禁止条件)として、描画禁止条件が成立する場合には入出力装置54に禁止信号S3を出力し、入出力画面54aにその旨を表示する。一方、描画禁止条件が不成立である場合には入力された総レーザ光の強度を選択し、入出力装置54にグリーンシートGSへの描画を許可する許可信号S4を出力し入出力画面54aにその旨を表示する。
【0067】
一方、使用する導電性インクIkに上記再溶解成分が含有されていない場合においては、レーザ強度を大きくするにつれて着弾径が小さくなることから、入力された総レーザ光の強度を選択し、入出力装置54にグリーンシートGSへの描画を許可する許可信号S4を出力し入出力画面54aにその旨を表示する。これにより、所望の着弾径を得るべく選択されるレーザ光の強度範囲の自由度を拡大させることもできる。
【0068】
次に、上述した構成からなる液滴吐出装置10を用いてパターンを形成する方法ついて以下に説明する。図9は、グリーンシートGSにパターンを描画するまでの一連の処理を示したフローチャートである。
【0069】
まず、液滴吐出装置10のステージ12の所定の位置にグリーンシートGSが載置されて、この状態から入出力装置54から照射強度Psに関する情報を含む描画情報Iaが入
力される(ステップS11)。
【0070】
描画情報Iaが入力されると、該描画情報Iaにおける導電性インクIkの性状に関する情報から、該導電性インクIkに再溶解成分が含有されているが否かの判断がなされる(ステップS12)。導電性インクIkに再溶解成分が含有されている場合には(ステップS12:YES)、導電性インクIkの性状に関する情報と、駆動電圧COMに関する情報と、前記強度データLPDとに基づいて、上限強度PLを取得する(ステップS13)。制御部50は、この取得した上限強度PL未満の強度領域では着弾後の濡れ広がりが大きいと判断し、該上限強度PL未満の強度領域を使用禁止領域Aとして設定する(ステップS14)。
【0071】
そして、描画情報Iaとともに入力された照射強度Psと使用禁止領域Aとに基づいて上記描画禁止条件が成立しているか否かの判断がなされる(ステップS15)。ここで描画禁止条件が成立している場合には(ステップS15:YES)、入力された照射強度Psでの描画を禁止するとともに入出力装置54に禁止信号S3を出力して(ステップS16)入出力画面54aにその旨を表示して、この処理を一旦終了する。すなわち、入力される照射強度Psを変更して再度描画情報Iaを入力する必要が生じるとともに、変更された照射強度Psにおいて上記描画禁止条件が成立する限り、グリーンシートGSへの描画が禁止される。
【0072】
このように照射強度Psに使用禁止領域Aを設定することによって、グリーンシートGSに着弾した液滴Dの濡れ広がりを確実に抑制することができ、高精細なパターンを描画することができる。また、再度描画情報Iaを入力する際に、照射強度Psにこの上限強度PLを選択することによって、着弾後の液滴Dの濡れ広がりを抑制しつつ、レーザ光のレーザ光の強度をも抑制することもできる。
【0073】
一方、導電性インクIkに再溶解成分が含有されていない場合や(ステップS12:NO)、上記描画禁止条件が不成立であった場合には(ステップS15:NO)、入力された照射強度Psを選択して(ステップS17)、入出力装置54に許可信号S4を出力して(ステップS18)入出力画面54aにその旨を表示する。そして、入出力装置54の描画開始スイッチを操作することによりグリーンシートGSへの描画が開始される。
【0074】
以上説明したように、上記実施形態の液滴吐出装置10によれば以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態によれば、描画情報IaとROM52に記憶したレーザ光の強度データLPDとに基づいて、着弾後の液滴Dの濡れ広がりが抑制される上限強度PLと取得した。この上限強度PL未満の領域を使用禁止領域Aとして設定し、入力される照射強度Psが上記使用禁止領域Aである場合には、入力された照射強度Psでの描画を禁止した。これにより、着弾した液滴Dの濡れ広がりを確実に抑制することができる。
【0075】
(2)上記実施形態によれば、飛行中の液滴Dには両側からレーザ光の強度の等しい一対のレーザ光が照射されることから、液滴Dの分散媒を効率よく乾燥させることができるとともに、液滴Dの飛行曲がりが生じ難くなり、着弾位置の位置ずれを抑制することもできる。
【0076】
尚、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態におけるレーザ照射部31では、第1及び第2レーザ成形部40a,40bによって飛行中の液滴Dにレーザ光の強度の等しい一対のレーザ光である第1及び第2レーザ光Le1,Le2を生成した。これに限らず、一対のレーザ光を照射する上では、異なるレーザ光の強度の第1及び第2レーザ光Le1,Le2を生成するようにしても
よい。
【0077】
・上記実施形態におけるレーザ照射部31の光学系では、1つのレーザ光源32から出射された基本レーザ光Leをハーフミラー34にて第1レーザ光Le1と第2レーザ光Le2とに分割することで、飛行中の液滴Dの両側から照射される一対のレーザ光を生成した。これに限らず、飛行中の液滴Dの両側からレーザ光を照射する上では、一対のレーザ光のそれぞれにレーザ光を出射させるレーザ光源を用いてもよい。この構成によれば、ハーフミラー34を割愛することができる。
【0078】
・上記実施形態におけるレーザ照射部31の光学系では、第1レーザ光Le1と第2レーザ光Le2の光軸をノズルNの配列方向に対して傾斜角θだけ傾斜させた。これに限らず、第1レーザ光Le1と第2レーザ光Le2の光軸をノズルNの配列方向に対して傾斜させずに、同配列方向と一致するようにしてもよい。このとき、吐出ヘッド15の各ノズルNからはそれぞれ異なる吐出タイミングで液滴Dを順次吐出することで、全ての液滴Dに対してレーザ光を照射することができる。
【0079】
・上記実施形態におけるレーザ照射部31の光学系では、飛行中の液滴Dに対して相対向する一対のレーザ光を照射した。これに限らず、上記描画禁止条件が不成立するのであれば、一対のレーザ光の光軸間に所定の角度を設けてもよいし、液滴Dの一方からのみレーザ光を照射するようにしてもよい。
【0080】
・上記実施形態では、吐出ヘッド15にはノズルNからなるノズル列を1列とした。これに限らず、吐出ヘッド15に複数のノズル列を形成してもよい。このとき、第1レーザ光Le1及び第2レーザ光Le2がノズルNから吐出される全ての液滴Dに照射されるように該レーザ光の光軸の傾斜角θを適宜変更するとよい。
【0081】
・上記実施形態では、レーザ光の強度データLPDを記憶する記憶部を制御部50のROM52とした。これに限らず、レーザ光の強度データLPDを記憶させる上では、描画情報Iaにレーザ光の強度データLPDを追加することによりRAM53を記憶部として機能させてもよい。
【0082】
・上記実施形態では、液滴Dに照射するレーザ光を半導体レーザとした。これに限らず、液滴Dにレーザ光を照射する上では、液体レーザやガスレーザ、YAGレーザなどの固体レーザであってもよい。なお、YAGレーザを用いた場合には、基本レーザ光の光路上にシャッターを配置し開閉制御することでレーザ光を飛行空間に照射するか否かを選択するようにするとよい。
【0083】
・上記実施形態では、レーザ光の照射強度の上限強度PLを最も大きい着弾径となる強度とした。これに限らず、レーザ光の強度が高くなるに連れて着弾径が拡大する範囲として、図10に示すようにレーザ光を照射しない場合で液滴Dを吐出した場合における着弾径を着弾径rLとして規定し、レーザ光を照射した場合に同じ着弾径rLとなるときのレーザ光の強度を上限強度PLとするようにしてもよい。
【0084】
・上記実施形態では、グリーンシートGSに導電性微粒子を含んだ導電性インクIkを吐出して金属配線を描画する液滴吐出装置10に具体化した。これに限らず、飛行中の液滴にレーザ光を照射して乾燥させるのであれば、例えば絶縁パターンを描画するパターン形成装置など、他の用途のパターン形成装置に適用することもできる。
【0085】
・上記実施形態では、圧電素子駆動方式の液滴吐出装置10に具体化した。これに限らず、吐出ヘッドから液滴を吐出するという観点からは、抵抗加熱方式や静電駆動方式の吐
出ヘッドを搭載した液滴吐出装置に具体化してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明にかかるパターン形成装置の一例を示す斜視図。
【図2】吐出ヘッドを示す斜視図。
【図3】吐出ヘッドの内部を示す要部断面図。
【図4】グリーンシートのドットパターン格子を示す模式図。
【図5】液滴吐出装置の光学的構成を示す模式図。
【図6】レーザ光と液滴との関係を説明するための模式図。
【図7】液滴吐出装置の電気的構成を示すブロック回路図。
【図8】レーザ光の強度データの一例を模式的に示したグラフ。
【図9】グリーンシートに描画されるまでの一連の処理を示したフローチャート。
【図10】変更例における上限強度を説明するためのグラフ。
【図11】(a)外殻が形成された液滴を模式的に示した模式図、(b)外殻が決壊した液滴を模式的に示した模式図。
【符号の説明】
【0087】
θ…傾斜角、A…使用禁止領域、BMD…ビットマップデータ、COM…駆動電圧、D…液滴、N…ノズル、T…格子点、DL…ドットパターン格子、Dx…ノズルピッチ、Dy…吐出ピッチ、GS…グリーンシート、GSa…描画面、Ia…描画情報、Ik…導電性インク、Le…基本レーザ光、Le1…第1レーザ光、Le2…第2レーザ光、LPD…レーザ光の強度データ、LT…吐出タイミング信号、P1,P2…レーザ光の強度、PG…プラテンギャップ、PL…上限強度、Ps…総レーザ光の強度、PZ…圧電素子、q…総熱量、q1…熱量、q2…熱量、rL…着弾径、S1…照射開始信号、S2…照射停止信号、S3…禁止信号、S4…許可信号、SI…吐出制御信号、TL…目標経路、10…液滴吐出装置、11…基台、12…ステージ、13…ガイド部材、14…インクタンク、15…吐出ヘッド、16…キャリッジ、17…ヘッド基板、17a…接続端子、20…ヘッド本体、20T…供給チューブ、21…ノズルプレート、21a…ノズル形成面、22…キャビティ、23…振動板、25…撮像カメラ、31…レーザ照射部、32…レーザ光源、32a…YAGレーザ発振器、32b…高調波ユニット、33…コリメートレンズ、34…ハーフミラー、35…反射ミラー、36…反射ミラー、37…反射ミラー、38…反射ミラー、39…反射ミラー、40a…第1レーザ成形部、40b…第2レーザ成形部、41a…シリンドリカルレンズ、41b…シリンドリカルレンズ、42a…光学素子、42b…光学素子、50…制御部、51…CPU、52…ROM、53…RAM、54…入出力装置、55…キャリッジモータ駆動回路、56…キャリッジモータ、57…キャリッジエンコーダ、58…ステージモータ駆動回路、59…ステージモータ、60…ステージエンコーダ、61…吐出ヘッド駆動回路、62…レーザ光源駆動回路、63…強度変調素子駆動回路。
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行中の液滴に対してレーザ光を照射するパターン形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
低温焼成セラミックス(LTCC:Low Temperature Co−fired Ceramics)からなる多層基板は、優れた高周波特性と高い耐熱性を有するために、高周波モジュールの基板やICパッケージの基板等に広く利用される。このようなLTCC多層基板の製造技術としては、一般に回路パターンを有する複数のグリーンシートを積層して一括焼成することにより上記多層基板を製造する方法が検討されている。
【0003】
上記回路パターンを描画する工程においては、回路パターンの高密度化を図るために、金属インクを微小な液滴にして吐出する、所謂インクジェット法が提案されている(例えば、特許文献1)。このようなインクジェット法に利用される液滴は、一般に吐出ヘッドに列設された多数のノズルから1滴あたりの容量が数〜数十ピコリットルになるように吐出されており、こうした微小な液滴の吐出位置を変更することにより回路パターンのさらなる微細化や狭ピッチ化を可能にしている。
【0004】
上述するインクジェット法の吐出ヘッドは、ノズルへと連通する貯留室に金属インクを貯留し、該ノズル内に形成される気液界面(メニスカス)を振動させることにより金属インクを液滴として吐出する。このメニスカスにおいては、金属インクが外気に接しているため金属インクの分散媒が外気へと常時揮発する。それゆえ、分散媒が容易に揮発する場合にあっては、導電性微粒子がメニスカス近傍に析出してしまい、終には液滴の吐出不良を招く虞があった。そこで、こうしたインクジェット用のインクにあっては、従来から水溶性の多価アルコールなどからなる再溶解性成分をインクに添加し、この再溶解性成分と分散媒との相互作用により分散媒の揮発性を低減させるとともに、同再溶解性成分と導電性微粒子との相互作用により析出後の金属粒子を再び分散媒に分散させる(再溶解させる)提案がなされている。
【特許文献1】特開2005−57139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、インクジェット法を利用して高精細なパターンを形成するためには、吐出した液滴を速やかに乾燥させて、その基板上における濡れ広がりを抑制することが好ましい。こうした乾燥を促進させる一つの方法としては、吐出された飛行中の液滴に対してレーザ光を照射することにより該液滴の乾燥を飛行中に促進させる方法が検討されている。
【0006】
レーザ光を利用する液滴の乾燥法にあっては、飛行中の液滴にレーザ光を照射するために、液滴の表面が相対的に高温になり易く、こうした液滴の表面から優先的に分散媒が蒸発することにより該液滴表面には導電性微粒子が析出し易くなる。そして、液滴内部に含まれる分散媒の蒸発よりも上述する導電性微粒子の析出が支配的になる場合には、導電性微粒子からなる外殻が液滴の表面に形成されるようになる。こうした外殻を有する液滴が基板に着弾した際には、液滴内部に含まれる金属インクの流出が前記外殻により塞き止められて基板上における液滴の濡れ広がりを抑制するようになる。
【0007】
一方、飛行中の液滴の乾燥が不十分である場合には、着弾した液滴の内部に大量の再溶解性成分が残存するために、こうした再溶解性成分が前記外殻へ作用することにより同外殻が液滴の内部へと再溶解してしまう。このような外殻の再溶解は、液滴内部における導
電性微粒子が飽和するまで進行することから、終には導電性微粒子からなる外殻を決壊させて液滴の濡れ広がりを招いてしまう。図11(a)は外殻を有する液滴が着弾した状態を模式的に示した図であり、図11(b)は再溶解性成分による外殻の再溶解により同外殻が決壊した状態を模式的に示した図である。
【0008】
例えば、図11(a)に示されるように、飛行中の液滴の乾燥が十分である場合には、再溶解性成分の作用に抗した十分な厚さの外殻が形成されているため、液滴の濡れ広がりがこうした外殻により抑制されるようになる。一方、図10(b)に示されるように、飛行中の液滴の乾燥が不十分である場合には、再溶解性成分の作用により外殻が決壊してしまい、液滴内部に含まれる金属インクが基板表面で濡れ広がってしまう。
【0009】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、レーザ光を受けた液滴を描画対象物に着弾させてパターンを形成する場合に描画対象物上における液滴の濡れ広がりを抑制するパターン形成方法、及びパターン形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のパターン形成方法は、パターン形成材料を蒸発成分に分散させた液状体を吐出ヘッドのノズルから描画対象物の目標位置へ液滴にして吐出するとともに、前記描画対象物と前記吐出ヘッドとに挟まれた空間である前記液滴の飛行空間にレーザ光を照射し、飛行中の前記液滴から前記蒸発成分を蒸発させることにより前記飛行中の液滴を乾燥させて該乾燥させた液滴を前記描画対象物に着弾させることにより前記パターン形成材料からなるパターンを前記描画対象物に形成するパターン形成方法であって、前記蒸発成分に前記パターン形成材料を前記蒸発成分に再溶解させる再溶解成分が含まれる場合に、予め前記レーザ光の強度と前記液滴の着弾径とを関連づけて、前記レーザ光の強度が高くなるにつれて前記着弾径が拡大する前記レーザ光の強度範囲の上限値を設定し、当該上限値より大きい強度で前記レーザ光を照射することを要旨とする。
【0011】
パターン形成材料を再溶解させる再溶解性成分が液状体に含まれる場合、該液状体からなる液滴の乾燥状態が不十分であると、液滴の表面に形成される外殻が着弾後に決壊して液滴の濡れ広がりが発生する。こうした状態にあっては、液滴からの蒸発成分が多くなるほど、すなわち液滴に照射するレーザ光の強度が高くなるほど、描画対象物への蒸発成分の付着量が多くなり、描画対象物に対する液状体の濡れ性が高くなることによって、液滴の着弾径がかえって拡大してしまう。このパターン形成方法によれば、上述のようにレーザ光の強度が高くなるに連れて着弾径が拡大する強度の上限値を設定した上で、当該上限値よりも大きい強度でレーザ光を照射することから、着弾する液滴の濡れ広がりを抑制することができる。
【0012】
このパターン形成方法は、前記上限値よりも小さい強度の領域を使用禁止領域として設定して、描画条件におけるレーザ光の強度が前記使用禁止領域内であることを条件として前記描画対象物への描画を禁止し、前記条件が不成立である場合には前記描画対象物への描画を許可することを要旨とする。
【0013】
このパターン形成方法によれば、レーザ光の強度が高くなるに連れて着弾径が拡大する強度の上限値よりも小さい強度の領域が使用禁止領域として設定されることから、描画条件におけるレーザ光の強度が低く液滴の十分な乾燥が得られない場合には、たとえレーザ光の強度が入力された後であっても、そのレーザ光の強度の使用をして描画を禁止することにより、着弾する液滴の濡れ広がりを確実に抑制することができる。
【0014】
このパターン形成方法は、前記目標位置と前記ノズルとを結ぶ経路を挟んで相対向する一対のレーザ光を照射することを要旨とする。
このように飛行中の液滴に対してレーザ光を照射して分散媒を乾燥させる際には、一方からのみレーザ光を照射するよりも、両側から照射する方が効率よく液滴の分散媒を乾燥させることができる。すなわち、この発明によれば、液滴の分散媒が効率よく乾燥することから、液滴の濡れ広がりをさらに抑制することもできる。
【0015】
このパターン形成方法は、前記一対のレーザ光の強度が等しいことを要旨とする。
飛行中の液滴Dから分散媒が蒸発する際には、蒸発にともなう運動力に抗した反力が該液滴Dに対して作用する。そのため、蒸発率の高い方から低い方に沿った方向に上記反力が作用し、液滴Dの吐出方向を軸にして蒸発率が対称でない場合にあっては、その運動力に抗した反力によって液滴Dの飛行曲がりが誘発されて着弾位置の位置ずれが発生する。この発明によれば、液滴の蒸発率が吐出方向を軸にして対称にすることができ、上記運動力に抗した反力が打ち消しあうことから、液滴Dの飛行曲がりが生じ難くなり、着弾位置の位置ずれを抑制することもできる。
【0016】
このパターン形成方法は、前記蒸発成分に前記パターン形成材料を前記蒸発成分に再溶解させる再溶解成分が含まれない場合には、予め前記レーザ光の強度と前記液滴の着弾径とを関連づけて、前記着弾径に基づく前記レーザ光の強度で前記レーザ光を照射することを要旨とする。
【0017】
パターン形成材料を再溶解させる再溶解性成分が液状体に含まれない場合においては、液滴の表面に形成される外殻が着弾後に再溶解成分によって決壊して液滴の濡れ広がりが発生することはない。こうした状態にあっては、液滴からの蒸発成分が多くなるほど、すなわち液滴に照射するレーザ光の強度が高くなるほど、液滴の着弾径が小さくなる。このパターン形成方法によれば、上述のようにレーザ光の強度が高くなるに連れて着弾径が小さくなることから、所望の着弾径を得るべく選択されるレーザ光の強度範囲の自由度を拡大させることもできる。
【0018】
本発明のパターン形成装置は、パターン形成材料を分散媒に分散させた液状体を吐出ヘッドから描画対象物へ液滴にして吐出する吐出ヘッドと、前記描画対象物と前記吐出ヘッドとに挟まれた空間である前記液滴の飛行空間にレーザ光を照射するレーザ照射部とを備え、飛行中の前記液滴から前記分散媒を蒸発させることにより前記飛行中の液滴を乾燥させて該乾燥させた液滴を前記描画対象物に着弾させることにより前記パターン形成材料からなるパターンを前記描画対象物に形成するパターン形成装置であって、前記レーザ照射部は、前記蒸発成分に前記パターン形成材料を前記蒸発成分に再溶解させる再溶解成分が含まれる場合に、予め前記レーザ光の強度と前記液滴の着弾径とを関連づけて、前記レーザ光の強度が高くなるにつれて前記着弾径が拡大する前記レーザ光の強度範囲の上限値を設定し、当該上限値より大きい強度で前記レーザ光を照射することを要旨とする。
【0019】
パターン形成材料を再溶解させる再溶解性成分が液状体に含まれる場合、該液状体からなる液滴の乾燥状態が不十分であると、液滴の表面に形成される外殻が着弾後に決壊して液滴の濡れ広がりが発生する。こうした状態にあっては、液滴からの蒸発成分が多くなるほど、すなわち液滴に照射するレーザ光の強度が高くなるほど、描画対象物への蒸発成分の付着量が多くなり、描画対象物に対する液状体の濡れ性が高くなることによって、液滴の着弾径がかえって拡大してしまう。このパターン形成装置によれば、上述のようにレーザ光の強度が高くなるに連れて着弾径が拡大する強度の上限値を設定した上で、当該上限値よりも大きい強度でレーザ光を照射することから、着弾する液滴の濡れ広がりを抑制することができる。
【0020】
このパターン形成装置は、前記上限値よりも小さい強度の領域を使用禁止領域として規定する強度データが記憶させた記憶部を備え、入力された描画条件におけるレーザ光の強
度が前記使用禁止領域内であることを条件として前記描画対象物への描画を禁止し、前記条件が不成立である場合には前記描画対象物への描画を許可することを要旨とする。
【0021】
このパターン形成装置によれば、レーザ光の強度が高くなるに連れて着弾径が拡大する強度の上限値よりも小さい強度の領域が使用禁止領域として設定されることから、描画条件におけるレーザ光の強度が低く液滴の十分な乾燥が得られない場合には、たとえレーザ光の強度が入力された後であっても、そのレーザ光の強度の使用をして描画を禁止することにより、着弾する液滴の濡れ広がりを確実に抑制することができる。
【0022】
このパターン形成装置は、前記レーザ照射部は、前記蒸発成分に前記パターン形成材料を前記蒸発成分に再溶解させる再溶解成分が含まれない場合に、予め前記レーザ光の強度と前記液滴の着弾径とを関連づけて、前記着弾径に基づく前記レーザ光の強度で前記レーザ光を照射することを要旨とする。
【0023】
パターン形成材料を再溶解させる再溶解性成分が液状体に含まれない場合においては、液滴の表面に形成される外殻が着弾後に再溶解成分によって決壊して液滴の濡れ広がりが発生することはない。こうした状態にあっては、液滴に照射するレーザ光の強度が高くなるほど液滴の着弾径が小さくなる。このパターン形成装置によれば、再溶解性成分が液状体に含まれない場合においては、上述のようにレーザ光の強度が高くなるに連れて着弾径が小さくなることから、所望の着弾径を得るべく選択されるレーザ光の強度範囲の自由度を拡大させることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明のパターン形成装置を液滴吐出装置に具体化した一実施形態について図1〜図9を参照して説明する。図1は液滴吐出装置の斜視構造を模式的に示した図である。図2は、本実施形態の吐出ヘッドの斜視構造を示す斜視図であり、図3は同吐出ヘッドの内部断面構造を示す部分断面図である。また図4は描画対象物であるグリーンシートと吐出ヘッドとの配置の関係を示す平面図である。
【0025】
図1に示すように、パターン形成装置としての液滴吐出装置10の基台11には、該基台11の長手方向に沿って往復移動可能なステージ12が搭載されている。本実施形態では、基台11の長手方向であって、図1における右上方向を+X方向とし、+X方向の反対方向を−X方向と言う。また、+X方向と直交する水平方向であって、図2における左上方向を+Y方向とし、+Y方向の反対方向を−Y方向と言う。また、鉛直方向上方を+Z方向とし、+Z方向の反対方向を−Z方向と言う。
【0026】
基台11に搭載されるステージ12の上面には、描画対象物としてのグリーンシートGSが描画面GSaを上側にした状態でステージ12に位置決め固定されている。ステージ12は、基台11に設けられたステージモータ(図示せず)が正転又は逆転するとき、位置決めしたグリーンシートGSを所定の速度で+Y方向又は−Y方向へ走査する。
【0027】
基台11の上側には、門型に形成されたガイド部材13が+X方向に沿って架設されており、該ガイド部材13の上側には、液状体としての導電性インクIkを供給するインクタンク14が配設されている。インクタンク14は、導電性インクIkを貯留し、貯留する導電性インクIkを所定の圧力の下で所定の温度調整しつつ吐出ヘッド15へ供給する。
【0028】
この導電性インクIkは、パターン形成材料としての導電性微粒子と、蒸発成分としての分散媒とを含む態様が一般的であり、描画環境や描画用途に応じて、再溶解成分である多価アルコールを含むものがある。
【0029】
導電性微粒子は、数nm〜数十nmの粒径を有する微粒子であり、例えば銀、金、銅、白金、パラジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、イリジウム、鉄、錫、コバルト、ニッケル、クロム、チタン、タンタル、タングステン、インジウム等の金属、あるいはこれらの合金を用いることができる。
【0030】
分散媒は、上記導電性微粒子を均一に分散させるものであればよく、例えば水や水を主成分とする水溶液を用いることができる。また、分散媒には、導電性インクIkの粘度を調整するために、必要に応じて水溶性の有機溶媒を含んでもよい。水溶性有機溶媒には、例えば、エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルキルアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどのグリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、などのグリコールエーテル類を挙げることができ、これらを混合して用いてもよい。
【0031】
多価アルコールは、アルコールの価数が3〜6であり、標準状態(25℃、1気圧の状態)の下で固体のものを用いることができる。多価アルコールには、単糖類、二糖類、オリゴ糖及び多糖類のカルボニル基を還元した糖アルコール、2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,3−ヘプタントリオールなどを用いることができる。糖アルコールには、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ソルビトール、エリスリトール、スレイトール、リビトール、アラビニトール、キシリトール、アリトール、マニトール、ドルシトール、イディトール、グリコール、イノシトール、マルチトール、ラクチトールなどを挙げることができ、これらの混合物を用いてもよい。
【0032】
多価アルコールの濃度は、例えば導電性インクIkの全質量に対して5重量%〜20重量%であり、こうした多価アルコールの濃度は同多価アルコールによる保湿効果が得られ、かつ上記導電性微粒子の分散性が得られる範囲であればよい。これによって、ノズルN内では、多価アルコールと水との間の相互作用(例えば、水素結合やファンデルワールス結合など)により分散媒の乾燥が抑制される。また、ノズルN内では、多価アルコールと導電性微粒子との間の相互作用(例えば、配位結合など)により、一旦析出した導電性微粒子が再び導電性インクIkへと分散される(再分散させる)。こうした再溶解性成分の添加によりノズルNの目詰まりが抑制される。
【0033】
一方、ガイド部材13には、+X方向及び−X方向に移動可能なキャリッジ16が搭載されており、該キャリッジ16には吐出ヘッド15が搭載されている。キャリッジ16は、ガイド部材13に設けられたキャリッジモータ(図示せず)が正転又は逆転するとき、吐出ヘッド15を+X方向又は−X方向へ走査する。
【0034】
図2に示されるように、吐出ヘッド15は、キャリッジ16に位置決め固定されて+X方向に延びるヘッド基板17と、ヘッド基板17に支持されるヘッド本体20とを有する。ヘッド基板17は、−X方向の端部に接続端子17aを有しており、外部からの各種制御信号がこの接続端子17aからヘッド本体20へ入力されて、またヘッド本体20からの各種検出信号がこの接続端子17aから外部へ出力される。
【0035】
ヘッド本体20の底部には、グリーンシートGSと対向するように配置されるノズルプレート21が貼り付けられている。ノズルプレート21は、ヘッド本体20がグリーンシートGSの直上に配置されるとき、その底面(以下単に、ノズル形成面21aと言う)と
描画面GSaとが略平行になる態様で構成されており、これらノズル形成面21aと描画面GSaとによって挟まれた空間である液滴Dの飛行空間を形成する。またノズルプレート21は、ヘッド本体20がグリーンシートGSの直上に配置されるとき、ノズル形成面21aと描画面GSaとの間の距離であるプラテンギャップPGを所定の距離(図3参照、本実施形態では1000μm)に維持する。ノズルプレート21のノズル形成面21aには、ノズルプレート21をZ方向に貫通する複数個のノズルNがX方向に沿ってノズルピッチDxにて等間隔に配列されている。
【0036】
図3に示されるように、ヘッド本体20は、各ノズルNの上側にそれぞれキャビティ22と、振動板23と、圧力発生素子としての圧電素子PZを有する。各キャビティ22は、供給チューブ20Tを介して共通するインクタンク14に接続されており、これによりインクタンク14からの導電性インクIkを収容して、該導電性インクIkを各ノズルNに供給する。振動板23は、各キャビティ22に対向する領域がZ方向に振動することにより、該キャビティ22の容積を拡大及び縮小させて圧力変動を発生させ、これに伴ってノズルNのメニスカスを振動させる。各圧電素子PZには、その収縮量や収縮速度、伸張量や伸張速度を規定した電圧波形である駆動電圧が入力されるようになっており、こうした駆動電圧が圧電素子PZに入力されるたびに、該圧電素子PZがZ方向に収縮して伸張し、これにより振動板23がZ方向に振動する。
【0037】
こうした構成からなる吐出ヘッド15では、各圧電素子PZがZ方向に収縮及び伸張するときに、各キャビティ22に収容される導電性インクIkの一部が上記駆動電圧に応じたサイズや速度を有する液滴DとしてノズルNから吐出される。ノズルNから吐出される液滴Dは、上述する飛行空間を飛行してグリーンシートGSの描画面GSaに着弾する。
【0038】
この際、ノズルNから吐出された液滴Dは、該液滴Dに加わる外力の合力がZ方向にのみ作用することによってノズルNからZ方向に沿って飛行することが確実に可能となり、前記ノズルNを含んでZ方向に延びる仮想線である目標経路TLの上を飛行するようになる。一方、ノズルNから吐出された液滴Dは、該液滴Dに加わる外力の合力がZ方向と交差する方向に大きく作用する場合にあっては、該合力の作用に従って上記目標経路TLから外れた経路を飛行して、着弾位置の精度を損なう要因である所謂飛行曲がりを来たしてしまう。
【0039】
図4の一点鎖線で示されるように、グリーンシートGSの描画面GSaは二次元の矩形格子であるドットパターン格子DLによって仮想分割されている。ドットパターン格子DLは、+X方向の格子間隔と+Y方向の格子間隔とが、それぞれ所定の間隔で設定される仮想格子である。例えば、ドットパターン格子DLの+X方向の格子間隔は、ノズルピッチDxで規定されており、ドットパターン格子DLの+Y方向の格子間隔は、液滴Dの吐出周期とステージ12の走査速度との積から算出される吐出ピッチDyで規定されている。こうしたドットパターン格子DLが上記ステージ12により走査されるとき、上述する吐出ヘッド15は、ドットパターン格子DLの各格子点Tが目標経路TLを横切るかたちで配置されて、各ノズルNから描画面GSaに向けて液滴Dを吐出するか否かの選択が上記格子点Tごとに設定されるようになる。なお、図4ではドットパターン格子DLの各格子点Tを説明する便宜上、ドットパターン格子DLの格子間隔及び吐出ヘッド15のノズルピッチDxを十分拡大して示している。
【0040】
次に、上記飛行中の液滴Dにレーザ光を照射して該液滴Dを乾燥させる光学系について図5を参照して説明する。図5は、上記液滴吐出装置10に搭載されるレーザ照射部31の光学的構成を模式的に示した図であり、図6は各液滴Dに対するレーザ光の照射角度を模式的に示した図である。
【0041】
図5に示されるように、レーザ照射部31は、レーザ出射部としてのレーザ光源32、コリメートレンズ33、分岐部としてのハーフミラー34、及び反射ミラー35,36,37,38,39と、第1レーザ成形部40aと第2レーザ成形部40bとを備えている。
【0042】
レーザ光源32は、断面強度分布がガウシアン分布である基本レーザ光Leを出射する装置である。レーザ光源32は、所謂半導体レーザであって、導電性インクIkに対して所定の吸収率を有する波長に設定された基本レーザ光Leをコリメートレンズ33に入射させる。
【0043】
コリメートレンズ33は、その出射面側に所定の曲率を有する平凸レンズであって、レーザ光源32から出射された基本レーザ光Leの光束を光軸に対して平行な平行光に変換してハーフミラー34に入射させる。ハーフミラー34は、コリメートレンズ33から出射された基本レーザ光Leをエネルギーが等しい一対のレーザ光である第1レーザ光Le1と第2レーザ光Le2とに分割する。各反射ミラー35,36は、ハーフミラー34の透過光である第1レーザ光Le1を反射する反射面を有した平面ミラーであり、その反射光である第1レーザ光Le1を第1レーザ成形部40aに入射させる。各反射ミラー37〜39は、ハーフミラー34の反射光である第2レーザ光Le2を反射する反射面を有した平面ミラーであり、その反射光である第2レーザ光Le2を第2レーザ成形部40bに入射させる。
【0044】
第1レーザ成形部40aは、第1レーザ光Le1の光路上にシリンドリカルレンズ41aと第1強度変調素子42aとを備えている。第2レーザ成形部40bは、第2レーザ光Le2の光路上にシリンドリカルレンズ41bと第2強度変調素子42bとを備えている。シリンドリカルレンズ41a、42bは、それぞれ短手方向にのみ曲率を有する出射面を備えたレンズであって、コリメートレンズ33によって平行光に変換された第1レーザ光Le1と第2レーザ光Le2の断面を上記ノズル形成面21aに沿って延びる矩形状に変換する。なお、シリンドリカルレンズ41a、41bに入射する第1レーザ光Le1や第2レーザ光Le2は、Z方向に所定幅を有している。そのため、該レーザ光がシリンドリカルレンズ41a、41bにより成形されることなく飛行空間に照射される場合にあっては、該レーザ光におけるZ方向の端部が吐出ヘッド15やグリーンシートGS、ステージ12などに遮られてしまい、第1レーザ光Le1や第2レーザ光Le2のエネルギーの一部が損なわれてしまう。シリンドリカルレンズ41a、41bは、それぞれ対応する反射ミラーからの第1レーザ光Le1と第2レーザ光Le2のZ方向成分を変換して、第1レーザ光Le1及び第2レーザ光Le2のZ方向におけるビーム長を上記プラテンギャップPG(本実施形態では、1mm)と等しくなるように断面形状を成形する。これにより、第1レーザ光Le1及び第2レーザ光Le2のエネルギー損失を抑えつつ、液滴Dの目標経路TLに第1レーザ光Le1及び第2レーザ光Le2を導くことができる。
【0045】
第1及び第2強度変調素子42a、42bの光軸は、それぞれ目標経路TLの中間位置に位置するように配置されており、全てのノズルNから吐出される液滴Dに対して第1レーザ光Le1及び第2レーザ光Le2を照射すべく、ノズルNの配列方向(図5に示す一点鎖線方向)に対して所定の傾斜角θ(θ:0°<θ≦90°)だけ水平方向に傾斜している。この傾斜角θは、図6に示されるように、例えば液滴Dの直径を2rとしたときにsinθ≧2r/Dxを満足する範囲で選択される。こうした条件を満足する傾斜角θであれば、同じタイミングで吐出された各ノズルNからの液滴Dに対して第1レーザ光Le1及び第2レーザ光Le2を照射する場合であれ、相対的に第1強度変調素子42aに近い側の液滴Dが相対的に同第1強度変調素子42aから遠い側の液滴Dに対して第1レーザ光Le1及び第2レーザ光Le2を遮ることがない。それゆえ吐出ヘッド15から同時に吐出された全ての液滴Dに対して第1レーザ光Le1と第2レーザ光Le2とを均等に
照射することができる。しかも、sinθ=2r/Dxを満足する傾斜角θであった場合には、隣接するノズルNから吐出された液滴Dとのレーザ光の照射方向における隙間がなくなることから、液滴Dに照射されることなく飛行空間を通過してしまうレーザ光を最小限に抑えることができ、レーザ光の利用効率を向上させることもできる。また、sinθ>2r/Dxを満足するレーザ光であっても、第1及び第2強度変調素子42a、42bによって各ノズルNから吐出された液滴Dの飛行経路のそれぞれに対応するようにレーザ光を分割することにより、飛行空間を通過してしまうレーザ光を最小限に抑えることができ、レーザ光の利用効率を向上させることもできる。このように飛行中の液滴Dに対して両側からレーザ光を照射することにより、液滴Dの分散媒を効率よく乾燥させることもできる。第1強度変調素子42a及び第2強度変調素子42bは、それぞれシリンドリカルレンズ41a、41bにより成形された第1レーザ光Le1の強度及び第2レーザ光Le2の強度を所定の第1強度P1及び第2強度P2に変調して上記飛行空間へ照射する。
【0046】
このようにしてノズルNから吐出された液滴Dにレーザ光が照射されると、そのレーザ光から受けるエネルギーによって、まず液滴Dの温度が、液状体が沸騰しない範囲のなかで最も高い温度である目標温度付近、例えば分散媒の沸点まで昇温される。次いでレーザ光からのエネルギーが、昇温された液滴Dの沸騰しない状態を保ちながら該液滴Dの分散媒を円滑に気体へ相転移させる潜熱(気化熱)へと変換されて液滴Dの表面から分散媒が蒸発する。
【0047】
このようにして分散媒が蒸発すると、液滴Dの表面付近には導電性微粒子が順次析出するようになる。そして液滴Dの内部に含まれる分散媒の蒸発よりも上述する導電性微粒子の析出反応が支配的になる場合には、導電性微粒子からなる外殻が液滴Dの表面に形成されるようになる。再溶解成分である多価アルコールを含有する場合には、この分散媒の蒸発によって、液滴D表面付近に導電性微粒子及び多価アルコールが順次析出し、この析出した導電性微粒子及び多価アルコールは、表面から分散媒を蒸発させつつ液滴Dの表面に外殻を形成する。こうした液滴Dの外殻が厚く形成される場合にあっては、液滴Dの内側に導電性インクIkが残存している場合であれ、液滴DがグリーンシートGSに着弾した際に、同液滴Dの外殻によって導電性インクIkの流出が塞き止められて液滴Dの濡れ広がりが抑制される。
【0048】
上述するように液滴Dを乾燥させるためには、該液滴Dを目標温度まで昇温させるための第1熱量q1と、液滴Dに含まれている分散媒を気体へと相転移させるための第2熱量q2とが必要である。第1強度変調素子42a及び第2強度変調素子42bは、第1強度P1と第2強度P2との総和である照射強度Psがこれらの第1熱量q1と第2熱量q2との総和である総熱量qに相当するように第1強度P1と第2強度P2とを変調する。
【0049】
こうした熱量は、導電性インクIkの性状と、圧電素子PZに印加される駆動電圧COMと、液滴Dの容積とを用いた演算により推定することができ、また各種実験等に基づく直接測定よって決定することもできる。例えば上述する演算により上記第1熱量q1及び第2熱量q2を推定する場合には、導電性インクIkの性状から得られる分散媒及び導電性微粒子のモル分率と、分散媒及び導電性微粒子の比熱容量と、駆動電圧に基づいて得られる液滴Dの重量Wと、吐出時における液滴Dの温度とに基づいて行うことができる。
【0050】
また上述するような微小な液滴Dから蒸発した蒸発成分のなかには、液滴Dの表面から十分に離間した遠方へと拡散するものと、目標経路TLに残留して該経路上における蒸発成分の分圧を高くするものとがある。そのため、各温度における液滴の蒸発量は、目標経路TLに残留する蒸発成分の濃度が低くなるほど高くなり、逆に目標経路TLにおける蒸発成分の濃度が高くなるほど低くなる。そこで、液滴表面における蒸発成分の密度やその拡散などに基づく蒸発成分の物質移動流束を用いた液滴の物質収支に関わる微分方程式や
、液滴の気化熱を考慮した液滴の熱収支に関わる微分方程式、さらには液滴に対する空気抵抗を考慮した液滴の運動方程式などを解くことにより上記第1熱量q1及び第2熱量q2を推定することもできる。また上述する実験により上記第1熱量q1及び第2熱量q2決定する場合には、飛行中の液滴Dをハイスピードカメラで撮像しながら該液滴Dに対して異なる熱量の光を照射して、該液滴Dが沸騰しない状態を維持できる最も高い熱量を直接測定することにより第1熱量q1及び第2熱量q2を得ることもできる。
【0051】
また、飛行中の液滴Dから分散媒が蒸発する際には、蒸発にともなう運動力に抗した反力が該液滴Dに対して作用する。そのため、蒸発率の高い方から低い方に沿った方向に上記反力が作用し、液滴Dの吐出方向を軸にして蒸発率が対称でない場合にあっては、その運動力に抗した反力によって液滴Dの飛行曲がりが誘発されて着弾位置の位置ずれが発生する。そこで、第1強度変調素子42a及び第2強度変調素子42bは、上述のように設定される照射強度Psをそれぞれ相対向する第1レーザ光Le1と第2レーザ光Le2とに等分させる、すなわち第1強度P1及び第2強度P2をPs/2に設定する。これにより、液滴Dの蒸発率が吐出方向を軸にして対称となり、分散媒の蒸発にともなう運動力に抗した反力が打ち消しあうことから、液滴Dの飛行曲がりが生じ難くなり、着弾位置の位置ずれを抑制することもできる。
【0052】
次に上記のように構成した液滴吐出装置10の電気的構成について図7を参照して説明する。図7は、液滴吐出装置の電気的構成を示したブロック回路図である。
図7において、液滴吐出装置10の制御部50は、CPU51、記憶部としてのROM52、RAM53などを有し、格納された各種データ及び各種制御プログラムに従って、ステージ12及びキャリッジ16の搬送処理、吐出ヘッド15の液滴吐出処理、レーザ光源32のレーザ出射処理、第1強度変調素子42a及び第2強度変調素子42bによる強度変調処理等を実行する。
【0053】
制御部50には、起動スイッチや停止スイッチ、描画開始スイッチなどの操作スイッチや入出力画面54aなどを有した入出力装置54が電気的に接続されている。入出力装置54は、描画面GSaに対するドットパターン格子DLの格子点Tの位置座標に関する情報、駆動電圧COMに関する情報、導電性インクIkの性状に関する情報、前記照射強度Psに関する情報などを描画情報Iaとして制御部50に入力する。制御部50は、入出力装置54からの描画情報Iaを受け、描画情報IaをRAM53に格納するとともに、該描画情報Iaに基づいてビットマップデータBMDを生成してRAM53に格納する。
【0054】
ビットマップデータBMDは、各ビットの値(0あるいは1)に応じて各圧電素子PZのオンあるいはオフを規定するデータである。ビットマップデータBMDは、吐出ヘッド15の直下を通過する描画面GSa上の各格子点Tに、それぞれ液滴Dを吐出するか否かを規定するデータである。すなわち、ビットマップデータBMDは、ドットパターン格子DLに規定される各格子点Tに液滴Dを吐出させるためのデータである。
【0055】
制御部50には、キャリッジモータ駆動回路55が接続されており、制御部50からは該キャリッジモータ駆動回路55に対応する駆動制御信号が出力される。キャリッジモータ駆動回路55は、制御部50からの駆動制御信号に応答し、キャリッジ16移動させるためのキャリッジモータ56を正転又は逆転させる。キャリッジモータ駆動回路55には、キャリッジエンコーダ57が接続されて、キャリッジエンコーダ57からの検出信号が入力される。キャリッジモータ駆動回路55は、キャリッジエンコーダ57からの検出信号に基づいて、描画面GSaに対するキャリッジ16の移動方向及び移動量に関する信号、すなわちノズルNの移動方向及び移動量に関する信号を生成し、制御部50に出力する。
【0056】
制御部50には、ステージモータ駆動回路58が接続されており、制御部50からは該ステージモータ駆動回路58に対応する駆動制御信号が出力される。ステージモータ駆動回路58は、制御部50からの駆動制御信号に応答し、ステージ12を移動させるためのステージモータ59を正転又は逆転させる。ステージモータ駆動回路58には、ステージエンコーダ60が接続されて、ステージエンコーダ60からの検出信号が入力される。ステージモータ駆動回路58は、ステージエンコーダ60からの検出信号に基づいて、ステージ12の移動方向及び移動量に関する信号、すなわち格子点Tの移動方向及び移動量に関する信号を生成し、制御部50に出力する。制御部50は、ステージモータ駆動回路58からの信号に基づいて、描画面GSaに対する各格子点Tの相対位置を演算し、その相対位置が対応する格子点Tに位置するたびに吐出タイミング信号LTを出力する。
【0057】
制御部50には、吐出ヘッド駆動回路61が接続されており、制御部50からは各圧電素子PZを駆動するための駆動電圧COMが前記吐出タイミング信号LTと同期して出力される。また、制御部50は、ビットマップデータBMDに基づいて、所定のクロック信号に同期した吐出制御信号SIを生成し、吐出制御信号SIを吐出ヘッド駆動回路61にシリアル転送する。吐出ヘッド駆動回路61は、制御部50からの吐出制御信号SIを各圧電素子PZに対応させて順次シリアル/パラレル変換する。吐出ヘッド駆動回路61は、制御部50からの吐出タイミング信号LTを受けるたびに、シリアル/パラレル変換した吐出制御信号SIをラッチし、選択される各圧電素子PZにそれぞれ駆動電圧COMを供給する。
【0058】
制御部50には、レーザ光源駆動回路62が接続されており、制御部50からは基本レーザ光Leの照射動作を開始するための照射開始信号S1が出力され、また照射動作を終了するための照射停止信号S2が出力される。レーザ光源駆動回路62は、制御部50からの照射開始信号S1を受けてレーザ光源32に照射強度Psの基本レーザ光Leを出射させる。また、レーザ光源駆動回路62は、制御部50からの照射停止信号S2を受けてレーザ光源32に基本レーザ光Leの出射を停止させる。
【0059】
制御部50には、強度変調素子駆動回路63が接続されており、制御部50からは第1強度P1と第2強度P2とを規定するための第1出力信号LP1と第2出力信号LP2とが強度変調素子駆動回路63に出力される。強度変調素子駆動回路63は、上記第1出力信号LP1及び第2出力信号LP2が入力されると、第1レーザ光Le1と第2レーザ光Le2とがそれぞれ第1強度P1と第2強度P2となるように第1強度変調素子42aと第2強度変調素子42bとを制御する。
【0060】
ここで、使用する導電性インクIkに上記再溶解成分が含有されている場合においては、前記外殻の内側に残存している再溶解性成分が同外殻を形成している導電性微粒子に作用し、液滴の内部である導電性インクIkに導電性微粒子を再分散(再溶解)させる。そして飛行中の液滴Dに照射する照射強度Psが不十分である場合にあっては、外殻の厚みが薄いため、上述する再溶解反応の進行により外殻が決壊して液滴Dの濡れ広がりを来たしてしまう。そこで制御部50は、このような液滴Dの濡れ広がりを抑制すべく、導電性インクIkに再溶解成分が含有されている場合には、照射強度Psが不十分である強度の領域を使用禁止領域Aとして設定して、該使用禁止領域Aにある強度の使用を禁止する禁止領域設定処理を実行する。
【0061】
詳述すると、制御部50のROM52には、着弾した液滴Dの着弾径と照射強度Psとを関連付けたレーザ光の強度データLPDが、導電性インクIkの性状や駆動電圧COMごとに記憶されており、制御部50は、この強度データLPDを適宜読み出して上記の禁止領域設定処理を実行する。強度データLPDとは、予め実施した各種実験等により得られるデータであり、上述する外殻の決壊により濡れ広がりが発生するか否かを照射強度P
sごとに規定したデータである。図8は、レーザ光の強度データLPDの一例を示したグラフである。
【0062】
図8に示されるように、液滴Dに対する照射強度Psが低い領域にあっては、液滴Dの表面に薄い外殻が形成されるものの、再溶解に耐え得る十分な厚さが形成されていないがために、上述するような外殻の決壊を招いて液滴Dの着弾径を相対的に大きくしてしまう。また、このような状態にあっては、液滴Dから蒸発した蒸発成分が多くなるほど、すなわち照射強度Psが高くなるほど、描画面GSaに付着する蒸発成分が多くなり、描画面GSaの濡れ性が高くなることによって、かえって着弾径を拡大させてしまう。そして、その着弾径が最も大きい着弾径rLとなる照射強度を液滴Dに対する照射強度Psの閾値である上限強度PLと規定している。
【0063】
一方、液滴Dに対する照射強度Psが閾値である上限強度PLよりも高い領域においては、上述するような再溶解に耐え得る十分な厚さの外殻が形成されるために、上述するような高い濡れ性を有した描画面GSaであれ、液滴Dの着弾径を上限強度PLにおける着弾径rLよりも相対的に小さい値で維持できるようになる。
【0064】
上述する閾値である上限強度PLは、導電性インクIkに含まれる成分や粘度など、導電性インクIkに関わる性状や、液滴Dのサイズを規定する駆動電圧COMなどにより変動する。そこで上記強度データLPDにおいては、このように照射強度Psの増加とともに拡大する着弾径が急激に縮小するときの照射強度Psである上限強度PLが導電性インクIkの性状や駆動電圧COMごとに規定されるようになっている。
【0065】
制御部50は、描画情報Iaが入力されると、該描画情報Iaにおける導電性インクIkの性状に関する情報及び駆動電圧COMに関する情報と上記レーザ光の強度データLPDとに基づいて上限強度PLを取得し、これらをRAM53の所定領域に一時的に記憶する。制御部50は、上限強度PL未満の強度の領域を前記使用禁止領域Aとして設定してRAM53の所定領域に一時的に記憶し、この使用禁止領域Aを利用することにより、設定値である照射強度Psが使用可能か否かを判断する。
【0066】
そして制御部50は、描画情報Iaとともに照射強度Psが入力される場合であれ、描画情報Iaとは別個に照射強度Psが入力される場合であれ、その入力された照射強度Psが上記使用禁止領域A内であることを条件(描画禁止条件)として、描画禁止条件が成立する場合には入出力装置54に禁止信号S3を出力し、入出力画面54aにその旨を表示する。一方、描画禁止条件が不成立である場合には入力された総レーザ光の強度を選択し、入出力装置54にグリーンシートGSへの描画を許可する許可信号S4を出力し入出力画面54aにその旨を表示する。
【0067】
一方、使用する導電性インクIkに上記再溶解成分が含有されていない場合においては、レーザ強度を大きくするにつれて着弾径が小さくなることから、入力された総レーザ光の強度を選択し、入出力装置54にグリーンシートGSへの描画を許可する許可信号S4を出力し入出力画面54aにその旨を表示する。これにより、所望の着弾径を得るべく選択されるレーザ光の強度範囲の自由度を拡大させることもできる。
【0068】
次に、上述した構成からなる液滴吐出装置10を用いてパターンを形成する方法ついて以下に説明する。図9は、グリーンシートGSにパターンを描画するまでの一連の処理を示したフローチャートである。
【0069】
まず、液滴吐出装置10のステージ12の所定の位置にグリーンシートGSが載置されて、この状態から入出力装置54から照射強度Psに関する情報を含む描画情報Iaが入
力される(ステップS11)。
【0070】
描画情報Iaが入力されると、該描画情報Iaにおける導電性インクIkの性状に関する情報から、該導電性インクIkに再溶解成分が含有されているが否かの判断がなされる(ステップS12)。導電性インクIkに再溶解成分が含有されている場合には(ステップS12:YES)、導電性インクIkの性状に関する情報と、駆動電圧COMに関する情報と、前記強度データLPDとに基づいて、上限強度PLを取得する(ステップS13)。制御部50は、この取得した上限強度PL未満の強度領域では着弾後の濡れ広がりが大きいと判断し、該上限強度PL未満の強度領域を使用禁止領域Aとして設定する(ステップS14)。
【0071】
そして、描画情報Iaとともに入力された照射強度Psと使用禁止領域Aとに基づいて上記描画禁止条件が成立しているか否かの判断がなされる(ステップS15)。ここで描画禁止条件が成立している場合には(ステップS15:YES)、入力された照射強度Psでの描画を禁止するとともに入出力装置54に禁止信号S3を出力して(ステップS16)入出力画面54aにその旨を表示して、この処理を一旦終了する。すなわち、入力される照射強度Psを変更して再度描画情報Iaを入力する必要が生じるとともに、変更された照射強度Psにおいて上記描画禁止条件が成立する限り、グリーンシートGSへの描画が禁止される。
【0072】
このように照射強度Psに使用禁止領域Aを設定することによって、グリーンシートGSに着弾した液滴Dの濡れ広がりを確実に抑制することができ、高精細なパターンを描画することができる。また、再度描画情報Iaを入力する際に、照射強度Psにこの上限強度PLを選択することによって、着弾後の液滴Dの濡れ広がりを抑制しつつ、レーザ光のレーザ光の強度をも抑制することもできる。
【0073】
一方、導電性インクIkに再溶解成分が含有されていない場合や(ステップS12:NO)、上記描画禁止条件が不成立であった場合には(ステップS15:NO)、入力された照射強度Psを選択して(ステップS17)、入出力装置54に許可信号S4を出力して(ステップS18)入出力画面54aにその旨を表示する。そして、入出力装置54の描画開始スイッチを操作することによりグリーンシートGSへの描画が開始される。
【0074】
以上説明したように、上記実施形態の液滴吐出装置10によれば以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態によれば、描画情報IaとROM52に記憶したレーザ光の強度データLPDとに基づいて、着弾後の液滴Dの濡れ広がりが抑制される上限強度PLと取得した。この上限強度PL未満の領域を使用禁止領域Aとして設定し、入力される照射強度Psが上記使用禁止領域Aである場合には、入力された照射強度Psでの描画を禁止した。これにより、着弾した液滴Dの濡れ広がりを確実に抑制することができる。
【0075】
(2)上記実施形態によれば、飛行中の液滴Dには両側からレーザ光の強度の等しい一対のレーザ光が照射されることから、液滴Dの分散媒を効率よく乾燥させることができるとともに、液滴Dの飛行曲がりが生じ難くなり、着弾位置の位置ずれを抑制することもできる。
【0076】
尚、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態におけるレーザ照射部31では、第1及び第2レーザ成形部40a,40bによって飛行中の液滴Dにレーザ光の強度の等しい一対のレーザ光である第1及び第2レーザ光Le1,Le2を生成した。これに限らず、一対のレーザ光を照射する上では、異なるレーザ光の強度の第1及び第2レーザ光Le1,Le2を生成するようにしても
よい。
【0077】
・上記実施形態におけるレーザ照射部31の光学系では、1つのレーザ光源32から出射された基本レーザ光Leをハーフミラー34にて第1レーザ光Le1と第2レーザ光Le2とに分割することで、飛行中の液滴Dの両側から照射される一対のレーザ光を生成した。これに限らず、飛行中の液滴Dの両側からレーザ光を照射する上では、一対のレーザ光のそれぞれにレーザ光を出射させるレーザ光源を用いてもよい。この構成によれば、ハーフミラー34を割愛することができる。
【0078】
・上記実施形態におけるレーザ照射部31の光学系では、第1レーザ光Le1と第2レーザ光Le2の光軸をノズルNの配列方向に対して傾斜角θだけ傾斜させた。これに限らず、第1レーザ光Le1と第2レーザ光Le2の光軸をノズルNの配列方向に対して傾斜させずに、同配列方向と一致するようにしてもよい。このとき、吐出ヘッド15の各ノズルNからはそれぞれ異なる吐出タイミングで液滴Dを順次吐出することで、全ての液滴Dに対してレーザ光を照射することができる。
【0079】
・上記実施形態におけるレーザ照射部31の光学系では、飛行中の液滴Dに対して相対向する一対のレーザ光を照射した。これに限らず、上記描画禁止条件が不成立するのであれば、一対のレーザ光の光軸間に所定の角度を設けてもよいし、液滴Dの一方からのみレーザ光を照射するようにしてもよい。
【0080】
・上記実施形態では、吐出ヘッド15にはノズルNからなるノズル列を1列とした。これに限らず、吐出ヘッド15に複数のノズル列を形成してもよい。このとき、第1レーザ光Le1及び第2レーザ光Le2がノズルNから吐出される全ての液滴Dに照射されるように該レーザ光の光軸の傾斜角θを適宜変更するとよい。
【0081】
・上記実施形態では、レーザ光の強度データLPDを記憶する記憶部を制御部50のROM52とした。これに限らず、レーザ光の強度データLPDを記憶させる上では、描画情報Iaにレーザ光の強度データLPDを追加することによりRAM53を記憶部として機能させてもよい。
【0082】
・上記実施形態では、液滴Dに照射するレーザ光を半導体レーザとした。これに限らず、液滴Dにレーザ光を照射する上では、液体レーザやガスレーザ、YAGレーザなどの固体レーザであってもよい。なお、YAGレーザを用いた場合には、基本レーザ光の光路上にシャッターを配置し開閉制御することでレーザ光を飛行空間に照射するか否かを選択するようにするとよい。
【0083】
・上記実施形態では、レーザ光の照射強度の上限強度PLを最も大きい着弾径となる強度とした。これに限らず、レーザ光の強度が高くなるに連れて着弾径が拡大する範囲として、図10に示すようにレーザ光を照射しない場合で液滴Dを吐出した場合における着弾径を着弾径rLとして規定し、レーザ光を照射した場合に同じ着弾径rLとなるときのレーザ光の強度を上限強度PLとするようにしてもよい。
【0084】
・上記実施形態では、グリーンシートGSに導電性微粒子を含んだ導電性インクIkを吐出して金属配線を描画する液滴吐出装置10に具体化した。これに限らず、飛行中の液滴にレーザ光を照射して乾燥させるのであれば、例えば絶縁パターンを描画するパターン形成装置など、他の用途のパターン形成装置に適用することもできる。
【0085】
・上記実施形態では、圧電素子駆動方式の液滴吐出装置10に具体化した。これに限らず、吐出ヘッドから液滴を吐出するという観点からは、抵抗加熱方式や静電駆動方式の吐
出ヘッドを搭載した液滴吐出装置に具体化してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明にかかるパターン形成装置の一例を示す斜視図。
【図2】吐出ヘッドを示す斜視図。
【図3】吐出ヘッドの内部を示す要部断面図。
【図4】グリーンシートのドットパターン格子を示す模式図。
【図5】液滴吐出装置の光学的構成を示す模式図。
【図6】レーザ光と液滴との関係を説明するための模式図。
【図7】液滴吐出装置の電気的構成を示すブロック回路図。
【図8】レーザ光の強度データの一例を模式的に示したグラフ。
【図9】グリーンシートに描画されるまでの一連の処理を示したフローチャート。
【図10】変更例における上限強度を説明するためのグラフ。
【図11】(a)外殻が形成された液滴を模式的に示した模式図、(b)外殻が決壊した液滴を模式的に示した模式図。
【符号の説明】
【0087】
θ…傾斜角、A…使用禁止領域、BMD…ビットマップデータ、COM…駆動電圧、D…液滴、N…ノズル、T…格子点、DL…ドットパターン格子、Dx…ノズルピッチ、Dy…吐出ピッチ、GS…グリーンシート、GSa…描画面、Ia…描画情報、Ik…導電性インク、Le…基本レーザ光、Le1…第1レーザ光、Le2…第2レーザ光、LPD…レーザ光の強度データ、LT…吐出タイミング信号、P1,P2…レーザ光の強度、PG…プラテンギャップ、PL…上限強度、Ps…総レーザ光の強度、PZ…圧電素子、q…総熱量、q1…熱量、q2…熱量、rL…着弾径、S1…照射開始信号、S2…照射停止信号、S3…禁止信号、S4…許可信号、SI…吐出制御信号、TL…目標経路、10…液滴吐出装置、11…基台、12…ステージ、13…ガイド部材、14…インクタンク、15…吐出ヘッド、16…キャリッジ、17…ヘッド基板、17a…接続端子、20…ヘッド本体、20T…供給チューブ、21…ノズルプレート、21a…ノズル形成面、22…キャビティ、23…振動板、25…撮像カメラ、31…レーザ照射部、32…レーザ光源、32a…YAGレーザ発振器、32b…高調波ユニット、33…コリメートレンズ、34…ハーフミラー、35…反射ミラー、36…反射ミラー、37…反射ミラー、38…反射ミラー、39…反射ミラー、40a…第1レーザ成形部、40b…第2レーザ成形部、41a…シリンドリカルレンズ、41b…シリンドリカルレンズ、42a…光学素子、42b…光学素子、50…制御部、51…CPU、52…ROM、53…RAM、54…入出力装置、55…キャリッジモータ駆動回路、56…キャリッジモータ、57…キャリッジエンコーダ、58…ステージモータ駆動回路、59…ステージモータ、60…ステージエンコーダ、61…吐出ヘッド駆動回路、62…レーザ光源駆動回路、63…強度変調素子駆動回路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターン形成材料を蒸発成分に分散させた液状体を吐出ヘッドのノズルから描画対象物の目標位置へ液滴にして吐出するとともに、前記描画対象物と前記吐出ヘッドとに挟まれた空間である前記液滴の飛行空間にレーザ光を照射し、飛行中の前記液滴から前記蒸発成分を蒸発させることにより前記飛行中の液滴を乾燥させて該乾燥させた液滴を前記描画対象物に着弾させることにより前記パターン形成材料からなるパターンを前記描画対象物に形成するパターン形成方法であって、
前記蒸発成分に前記パターン形成材料を前記蒸発成分に再溶解させる再溶解成分が含まれる場合に、予め前記レーザ光の強度と前記液滴の着弾径とを関連づけて、前記レーザ光の強度が高くなるにつれて前記着弾径が拡大する前記レーザ光の強度範囲の上限値を設定し、当該上限値より大きい強度で前記レーザ光を照射することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
前記上限値よりも小さい強度の領域を使用禁止領域として設定して、描画条件におけるレーザ光の強度が前記使用禁止領域内であることを条件として前記描画対象物への描画を禁止し、前記条件が不成立である場合には前記描画対象物への描画を許可する
請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項3】
前記目標位置と前記ノズルとを結ぶ経路を挟んで相対向する一対のレーザ光を照射する
請求項1または2に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
前記一対のレーザ光の強度が等しい
請求項3に記載のパターン形成方法。
【請求項5】
前記蒸発成分に前記パターン形成材料を前記蒸発成分に再溶解させる再溶解成分が含まれない場合には、予め前記レーザ光の強度と前記液滴の着弾径とを関連づけて、前記着弾径に基づく前記レーザ光の強度で前記レーザ光を照射する
請求項1〜4のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項6】
パターン形成材料を蒸発成分に分散させた液状体を吐出ヘッドから描画対象物へ液滴にして吐出する吐出ヘッドと、
前記描画対象物と前記吐出ヘッドとに挟まれた空間である前記液滴の飛行空間にレーザ光を照射するレーザ照射部と、
を備え、
飛行中の前記液滴から前記蒸発成分を蒸発させることにより前記飛行中の液滴を乾燥させて該乾燥させた液滴を前記描画対象物に着弾させることにより前記パターン形成材料からなるパターンを前記描画対象物に形成するパターン形成装置であって、
前記レーザ照射部は、
前記蒸発成分に前記パターン形成材料を前記蒸発成分に再溶解させる再溶解成分が含まれる場合に、
予め前記レーザ光の強度と前記液滴の着弾径とを関連づけて、前記レーザ光の強度が高くなるにつれて前記着弾径が拡大する前記レーザ光の強度範囲の上限値を設定し、当該上限値より大きい強度で前記レーザ光を照射すること
を特徴とするパターン形成装置。
【請求項7】
前記上限値よりも小さい強度の領域を使用禁止領域として規定する強度データが記憶させた記憶部を備え、
入力された描画条件におけるレーザ光の強度が前記使用禁止領域内であることを条件として前記描画対象物への描画を禁止し、前記条件が不成立である場合には前記描画対象物
への描画を許可する
請求項6に記載のパターン形成装置。
【請求項8】
前記レーザ照射部は、
前記蒸発成分に前記パターン形成材料を前記蒸発成分に再溶解させる再溶解成分が含まれない場合に、
予め前記レーザ光の強度と前記液滴の着弾径とを関連づけて、前記着弾径に基づく前記レーザ光の強度で前記レーザ光を照射する
請求項6または7に記載のパターン形成装置。
【請求項1】
パターン形成材料を蒸発成分に分散させた液状体を吐出ヘッドのノズルから描画対象物の目標位置へ液滴にして吐出するとともに、前記描画対象物と前記吐出ヘッドとに挟まれた空間である前記液滴の飛行空間にレーザ光を照射し、飛行中の前記液滴から前記蒸発成分を蒸発させることにより前記飛行中の液滴を乾燥させて該乾燥させた液滴を前記描画対象物に着弾させることにより前記パターン形成材料からなるパターンを前記描画対象物に形成するパターン形成方法であって、
前記蒸発成分に前記パターン形成材料を前記蒸発成分に再溶解させる再溶解成分が含まれる場合に、予め前記レーザ光の強度と前記液滴の着弾径とを関連づけて、前記レーザ光の強度が高くなるにつれて前記着弾径が拡大する前記レーザ光の強度範囲の上限値を設定し、当該上限値より大きい強度で前記レーザ光を照射することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
前記上限値よりも小さい強度の領域を使用禁止領域として設定して、描画条件におけるレーザ光の強度が前記使用禁止領域内であることを条件として前記描画対象物への描画を禁止し、前記条件が不成立である場合には前記描画対象物への描画を許可する
請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項3】
前記目標位置と前記ノズルとを結ぶ経路を挟んで相対向する一対のレーザ光を照射する
請求項1または2に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
前記一対のレーザ光の強度が等しい
請求項3に記載のパターン形成方法。
【請求項5】
前記蒸発成分に前記パターン形成材料を前記蒸発成分に再溶解させる再溶解成分が含まれない場合には、予め前記レーザ光の強度と前記液滴の着弾径とを関連づけて、前記着弾径に基づく前記レーザ光の強度で前記レーザ光を照射する
請求項1〜4のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項6】
パターン形成材料を蒸発成分に分散させた液状体を吐出ヘッドから描画対象物へ液滴にして吐出する吐出ヘッドと、
前記描画対象物と前記吐出ヘッドとに挟まれた空間である前記液滴の飛行空間にレーザ光を照射するレーザ照射部と、
を備え、
飛行中の前記液滴から前記蒸発成分を蒸発させることにより前記飛行中の液滴を乾燥させて該乾燥させた液滴を前記描画対象物に着弾させることにより前記パターン形成材料からなるパターンを前記描画対象物に形成するパターン形成装置であって、
前記レーザ照射部は、
前記蒸発成分に前記パターン形成材料を前記蒸発成分に再溶解させる再溶解成分が含まれる場合に、
予め前記レーザ光の強度と前記液滴の着弾径とを関連づけて、前記レーザ光の強度が高くなるにつれて前記着弾径が拡大する前記レーザ光の強度範囲の上限値を設定し、当該上限値より大きい強度で前記レーザ光を照射すること
を特徴とするパターン形成装置。
【請求項7】
前記上限値よりも小さい強度の領域を使用禁止領域として規定する強度データが記憶させた記憶部を備え、
入力された描画条件におけるレーザ光の強度が前記使用禁止領域内であることを条件として前記描画対象物への描画を禁止し、前記条件が不成立である場合には前記描画対象物
への描画を許可する
請求項6に記載のパターン形成装置。
【請求項8】
前記レーザ照射部は、
前記蒸発成分に前記パターン形成材料を前記蒸発成分に再溶解させる再溶解成分が含まれない場合に、
予め前記レーザ光の強度と前記液滴の着弾径とを関連づけて、前記着弾径に基づく前記レーザ光の強度で前記レーザ光を照射する
請求項6または7に記載のパターン形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−82505(P2010−82505A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251580(P2008−251580)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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