説明

パターン形成方法

【課題】簡易な方法で自由度高く高精細でありながら、膜厚の厚いパターン形成が可能であるパターン形成方法を提供することを目的とする。
【解決手段】超微粒子を含むコロイド材料を接触させた基板上にエネルギービームを照射してパターン形成を行うパターン形成方法であって、基板上にパターンを形成する際に、基板上にコロイド材料でできた気泡を供給することで、基板上に気体とコロイド材料とを交互に供給することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等の基板上に形成されたパターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザー描画方式は基板に接触させた材料にレーザー照射を行うことで照射部分の材料の少なくとも一部を分解、乾燥、重合、結晶化させるなどして未照射部分との間に物性の差異を生じさせその結果パターン形成を行うものであって、商業印刷分野における版下の作製などにおいて実用化されている技術である。
【0003】
レーザーを用いてパターン形成される材料としては、直径数nmの銀の超微粒子を保護剤で被覆し適当な溶媒中に分散させたコロイド状液体材料を挙げることができ、上市品を試薬メーカー等から購入可能である。この材料は銀インクなどと称され、あたかも従来の印刷用インクのように基板上に塗布を行うことができ、塗布後に熱処理を行うことで銀の超微粒子を被覆していた保護剤が分解除去され銀の皮膜が形成されるといったものである。銀のほかにも金や銅、白金、パラジウム等の貴金属を中心とした金属類、透明導電体として知られているインジウム錫酸化物や絶縁体や光導波路材料としての酸化ケイ素や酸化チタン、さらには半導体材料としてのシリコン微粒子を分散した半導体インクなどが盛んに検討されている。
【0004】
これら機能性インクともいうべきコロイド材料群をレーザー描画法と組み合わせて使用することで、基板上に例えば銀インクを塗布してレーザーで処理することで所望のパターンの電気配線を形成することができる。これは、レーザーのエネルギーによって基板上のコロイド材料が熱分解され、残った銀粒子が融合して導電パターンを形成するというプロセスによる。
【0005】
このようなコロイドインクとレーザー描画を用いたパターン形成については例えば(特許文献1)に詳細が開示されている。
【特許文献1】特開2006−38999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の技術では、簡易な方法で自由度高く高精細なパターン形成を行うことができるものの、導電パターンを使った配線を形成する場合等に配線の抵抗値を下げるためにパターンの膜厚を厚くしようとしても、一度に厚いパターン膜を形成しようとするとパターンが不完全だったり、繰り返すことで厚いパターン膜を形成しようとすると煩雑になり、これを実現することは困難であった。
【0007】
そこで本発明は、簡易な方法で自由度高く高精細でありながら膜厚の厚いパターン形成が可能であるパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、超微粒子を含むコロイド材料を接触させた基板上にエネルギービームを照射してパターン形成を行うパターン形成方法であって、基板上にパターンを形成する際に、基板上に気体とコロイド材料とを交互に供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
これにより、簡易な方法で自由度高く高精細でありながら膜厚の厚いパターン形成が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の請求項1記載の発明は、超微粒子を含むコロイド材料を接触させた基板上にエネルギービームを照射してパターン形成を行うパターン形成方法であって、基板上にパターンを形成する際に、基板上に気体とコロイド材料とを交互に供給することを特徴とする。
【0011】
これにより、簡易な方法で自由度高く高精細でありながら膜厚の厚いパターン形成を行うことができる。
【0012】
本発明の請求項2記載の発明は、請求項1記載のパターン形成方法であって、エネルギービームは、基板上に供給されるコロイド材料側から照射されることにより、形成されるパターンにエネルギービームが邪魔されることなく、コロイド材料に照射されるため、効率よくパターン形成を行うことができる。
【0013】
本発明の請求項3記載の発明は、請求項1記載のパターン形成方法であって、気体とコロイド材料とを混合し泡状にして基板上に供給することにより、基板上にコロイド材料と気体を効率よく供給することができる。
【0014】
本発明の請求項1記載の発明は、請求項1記載のパターン形成方法であって、気体は、不活性のガスであることにより、パターン形成の際に存在する周りの影響を最小限にとどめることができる。
【実施例】
【0015】
以下に図面を参照して、この発明に係るパターン形成方法の実施例を詳細に説明する。
【0016】
(実施例)
図1は、本発明の実施例におけるパターン形成装置を示す概念図である。図1において、符号1はエネルギービーム源であり、本実施例においては波長450nm、最大出力500mwの青色の半導体レーザーである。本発明を実施可能なエネルギービームとして、このような可視光レーザーのほかに赤外線や紫外線レーザー、電子線、イオンビームなどを用いることができる。符号2はコリメータレンズやアナモルフィックプリズム等のビーム整形光学系である、コリメータレンズは広がりを持った半導体レーザーの放射光を平行光にするため、またアナモルフィックプリズムはビーム断面内で扁平なエネルギー分布をもった半導体レーザーの放射光を同心円状のガウシアン分布に近い形に整えるために用いられている。これらの光学要素は半導体レーザーを光源とする系においてよく用いられるものである。もちろん光源から放射されるビームのエネルギー分布が整形することなくともすでにガウシアン形状に近い形であるような場合にはより簡素な光学系を選択可能である。符号3は集光レンズである。符号4は基板ユニットであって後述するいくつかの構成要素でできている。符号5は基板上に形成されたパターン。符号6はビーム整形光学系2によって断面がガウシアン形状に近いエネルギー分布を持った平行光に整形されたエネルギービームの光束を表す仮想的な線、符号7は基板上に形成されるビームの焦点である照射点、符号8は光源を制御する制御部であって、光源のON/OFF制御のほか、出力の増減の制御も可能なものである。そして、符号9は照射点7をと基板ユニット4に対して移動させ、パターンを形成するために用いられる相対位置変更機構としての機械式可動ステージである。相対位置変更機構9の別の形として、光源1やビーム整形光学系2等を含む光源側をロボットアームなどを用いて可動に保持し、これを基板ユニット4に対して相対的に移動させるようなものや、レンズ3のみを可動に保持して、レンズ3を適切に移動させることによって照射点7の位置を基板ユニット4に対して移動させるといったものを用いても本発明を実現することができる。また、ポリゴンミラーなどを用いてビームを走査することも好ましい。
【0017】
ここで、本発明を実施するに当たり本質的ではないために図1に図示していない補助的な要素として、全体の機構を支えるための架台、各構成要素の保持調整機構、さらにはこれらの各要素を一貫して動作させるためのコンピューター等の制御機構とその制御を予め記述した制御プログラムなどを挙げることができる。
【0018】
次に、基板ユニット4の詳細構成を説明する。図2は、本発明の実施例における基板ユニットの詳細説明図である。
【0019】
図2において、符号10は基板、符号11は窓板である。本実施例における基板10は厚さ1.1mmの一般的な耐熱ガラスである。本発明を実施するにあたり、基板の形状や材料等に特に制限は無く、ガラス基板のほかにセラミックや金属、プラスチックなどでできた板、そして高分子フィルムなどの可とう性材料も使用することができる。窓板11は少なくともビーム6を十分に透過する程度に透明かつ散乱等によってビーム6の進行を妨げない程度に平滑である必要がある。本実施例では窓板11として厚さ0.5mmのガラス板を用いている。符号12は基板10と窓板11の間に挿入されているスペーサー、符号13は基板10と窓板11とスペーサー12によって構成されるセル状の空間、符号14はコロイド材料である。本実施例におけるコロイド材料14は銀の超微粒子を保護剤で被覆した後に界面活性剤を含む水に分散させたものである。詳細は後述するが、本発明においてはコロイド材料14で形成された気泡を用いるので、コロイド材料14は気泡形成が可能なものである必要がある。本実施例では、界面活性剤としてトリトンX100を10w%前後含んだ蒸留水中に前記コロイド材料14を混合し、金属銀の含有率を15〜20%に調整したものを用いている。水系の材料に銀の微粒子を保護剤と共に分散させたコロイド材料14は上市品として容易に入手可能である。次に符号15はセル13内に気泡を発生させるための気体を供給する気体供給部、符号16は気体をセル13まで搬送するためのチューブ、符号17は気体をセル13内に吹き込むための気孔、そして符号18はセル13内に発生した気泡である。このような基板ユニット4を使用して、実際に気泡を発生させたときの様子を図3に示す。図3は、本発明の実施例における基板ユニットの拡大図であり、気泡が発生した状態の基板ユニット4を窓板11側から見たものである。図をみると分かるように、下部のコロイド材料14に気体を供給することで、上部に気泡が隣接して形成されている。発生させる気泡の大きさや数、発生速度は気孔17の配置、大きさおよび送り込まれる気体の量によって制御することが可能である。
【0020】
ここで、本実施例ではコロイド材料14としてパターン形成後に導電性を持った銀の膜となるいわゆる銀インクを用いたが、もちろん本発明に係るパターン形成方法を用いてパターン化可能なものは銀インクに制限されるものではなく、金や白金、銅、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム等の金属およびそれらの合金や混合物、ITO(インジウム錫酸化物)やIZO(インジウム亜鉛酸化物)やSnO2(酸化錫)等の化合物系導電体材料、SiO2(二酸化珪素)やSiN(窒化珪素)やTiO2(チタン酸化物)やAl23(アルミナ)等のセラミックス系絶縁体材料、SiやGaN(窒化ガリウム)やCdSe(セレン化カドミウム)を始めとする半導体材料等々、前述したコロイド材料様の状態を実現可能なものはほとんど全てについて本発明を用いることが可能である。
【0021】
さて、本発明の要諦である厚膜の形成について説明を行う前に、従来の技術によるパターン形成の概要を説明し、何故従来の技術を用いていたのでは厚膜の形成を行うことが困難であるのかを明らかにする。
【0022】
従来の技術におけるパターン形成は、まず、ガラスなどの基板上に例えば金属コロイド材料をスピンコートやディップコート等の塗膜形成法を用いることで塗布し、次いでそれを乾燥させてコロイド材料の乾燥薄膜を形成し、この基板を可動式ステージに固定する等する。そしてレーザー光源等のエネルギービーム源からビームを射出すると共にステージを駆動してパターンを形成するための走査を行う。このとき、コロイド材料乾燥膜上のビームが照射された部位はコロイド材料を覆う保護剤がビームのエネルギーによって分解され金属膜への転化が生じる。そしてパターン形成が終了すると、基板はステージから取り外され、適切な溶媒を用いるなどしてビーム照射がなされなかった部分のコロイド材料を除去する現像工程に供される。溶媒によってビーム照射がなされなかった部位のコロイド材料は再溶解されて流れ去るが、金属膜に転化された部分はもはや溶解されることは無いので基板上残留する。このようにして基板上に所望のパターンが形成される。これが従来の技術によるパターン形成の概要である。
【0023】
次に従来の技術によるパターン形成方法では何故厚膜の形成が困難であるのかを説明する。すでに説明したようにパターン形成に用いられるコロイド材料は微細な粒子を含んでいる。これら微細な粒子はそのサイズゆえにバルク体とは異なる光学的な挙動を示し、その一つがプラズモン吸収といわれる強い光吸収である。例えば銀のインクを例に取ると、銀インクは液体状態では極めて濃い黒色をしている。これは銀の微粒子のプラズモン吸収に起因するものである。そして、このインクを基板上に塗布して乾燥膜を形成すると、その厚みが1μm程度であっても可視光を半分程度しか透過しない。よって厚膜を形成するために乾燥膜を厚くするとビームのエネルギーを膜の深部まで到達させることが難しくなり、膜厚全体にわたって金属膜への転化を行うことが困難になる。この現象はコロイド材料に含まれる微粒子の材料に起因するというよりも、その物理的なサイズに起因するものであるため、ほとんどのコロイド材料で共通に観察されるものである。また、微粒子が金属材料である場合は、ビームの照射によって形成された金属膜がエネルギービームを反射することも厚膜の形成をさらに難しくする。
【0024】
このような、厚膜を一度に形成する方法ではなく、薄膜のパターンを重ねて厚膜パターンを形成する方法、すなわち、基板にコロイド材料の塗布を行い、これを乾燥して乾燥膜とし、エネルギービームを用いてパターン形成し、現像を行い、再びこの基板にコロイド材料の塗布を行い、これを乾燥膜とし、といった過程を何度も繰り返す方法も考えられるが、これは大変煩雑であり、ビームを正確に同じ場所に当てるための位置あわせ精度にも限界があるなど、このような手段を選択することは事実上不可能といって良いほどに困難なものである。
【0025】
このように、従来の技術を用いたパターン形成では、形成できるパターンの膜厚に制限があり、銀インクを例にすると、得られる膜厚は高々数ミクロンである。パターンを電気配線に利用することを考慮すると、配線抵抗を低減するために膜厚は厚いほうが望ましく、高々数ミクロンという膜厚は高精細なパターン形成を行う多くの用途で十分とはいえないものである。
【0026】
次に本発明によるパターン形成の詳細について図1および図2を用いて説明する。
【0027】
本実施例の基板ユニット4は図2に示したような詳細構造をしている。図2において、コロイド材料14はセル13の一部、気孔17を塞ぐように少量が保持されている。この状態で基板ユニット4は相対位置変更機構9としてのステージに固定される。次いで気体供給部15から気体の供給が開始され、チューブ16と気孔17を経てセル13内に供給される気体によりコロイド材料14内部には気泡18が発生する。送り込まれる気体によって次から次に発生した気泡18は上方へ移動しながらセル13内を満たして行き、セル上端で破裂する。このような気泡18のセル13内の移動により、セル13を構成する基板10の内壁面はコロイド材料14が塗布される。次いでエネルギービームとしてのレーザー光が照射されると共にステージが駆動される。照射点7ではコロイド材料の分解とそれに次ぐ金属膜の形成が逐次行われていき、所望のパターン5が形成されていく。そしてこのとき、気泡18は次々と発生し、セル13内を移動しているため、金属膜となったパターン5上を再び通過し、パターン5上に新たなコロイド材料14の塗布を行う。従って、パターン5上の新たにコロイド材料が塗布された部位に再度レーザー光を照射することで、パターン5上に新たな金属膜層を形成することが可能となる。そして、このプロセスは気泡18を発生させ、レーザー光を照射を行う限り何度も繰り返し行うことができ、繰り返しの回数に応じた厚膜を形成することができることになる。
【0028】
このとき、パターン5上は気泡18を形成するための気体と、気泡18の壁面を成すコロイド材料14が交互に供給されることになる。そして気泡18が通過するたびに新たに供給されるコロイド材料14は、気泡18の壁面を形成している極めて微量のものであり、照射されるレーザーによって完全に金属膜への転化が可能な程度の薄膜をパターン5上に形成する。この様子を図4および図5を用いて詳しく説明する。図4(a)〜(e)は、パターン形成部位に気体とコロイド材料が交互に供給される様子を時間の経過に従って説明するための模式図であり、図5は、図4(e)のパターン形成部位を拡大した詳細説明図である。
【0029】
図4および図5において、符号20は気泡内の気体、符号21は気泡の基板面側壁面を構成するコロイド材料、符号Aは基板10と窓板11の間に形成される気泡の壁であってやはりコロイド材料によって構成されている。そして、符号B,Cは壁Aと同様に形成された別の気泡の壁である。そして、符号26はビーム6によって形成された一層目のパターン、符号27は一層目のパターン26上に新たに供給され、塗布されたコロイド材料、符号28は第一層目のパターンと第二層目のパターンの境界面を示す仮想的な線、符号29は第二層目のパターン、そして図4(a)〜(e)に記載された矢印は気泡の移動方向を示している。図4(a)〜(e)を用いて逐次行われるパターン形成の様子を詳細に説明する。
【0030】
まず、図4(a)は、基板ユニット4内に気泡が生成された初期の状態である。図4(a)の状態で、基板10の内側表面はコロイド材料21で覆われている。このコロイド材料21は壁Aの通過によって塗布されたものである。次に、図4(b)でビーム6が窓板11と窓板11内側のコロイド材料を介して入射し、基板10の内側表面に照射点7を形成する。照射点7ではすでに説明した過程を経て一層目のパターン26が形成される。ここで一層目のパターン26は基板上に形成される第一層目のパターンである。次に図4(c)において、形成された一層目のパターン26上を壁Bが通過していく。壁Bは一層目のパターン26上を通過する際に一層目のパターン26上に薄いコロイド材料の塗布膜27を新規に形成していく。そして図4(d)に示すように壁Bが通過した後の一層目のパターン26は新たに形成されたコロイド材料の塗布膜27で覆われる。そして次に図4(e)に示すように再びビーム6が入射し、一層目のパターン26の上に新たなパターンを形成していく。
【0031】
ここで、図4(e)のパターン形成部位の詳細を説明するための拡大図が図5である。図5に示すように、新たに塗布されたコロイド材料27はビーム6の照射によって金属に添加され一層目のパターン26の上に重なるように二層目のパターン29を形成する。このとき、パターンの厚さは二つの層の合計となる。そして、第一層目と第二層目のパターンは強固に結合して一体化する。
【0032】
このような過程を経て二層目までのパターンが形成される。そしてその後、さらに壁Cが二層目のパターン29の上に更なるコロイド材料の塗布膜を形成し、その部位にビーム6が照射され、といった過程を繰り返すことでさらに厚いパターンが形成されていくのである。
【0033】
以上説明した例は、コロイド材料の塗布とエネルギービームの照射によるパターン形成が逐次行われる場合であるが、気泡18の大きさ、ビーム6の太さ、ビームの走査速度と走査方向、気泡18の移動速度、等の条件によっては、ビーム6内を気泡の壁22が通過する、すなわちコロイド材料の塗布とエネルギービームの照射によるパターン形成が同時に行われることがある。そのような場合においても、ビーム6は集光レンズ3によって収束光となっているため照射点7以外の場所ではそのエネルギー密度は低く、照射点7以外の場所でコロイド材料を分解し金属に転化するような反応が生じることはない。また同様の理由により窓板11の内壁面に塗布されたコロイド材料が金属に転化されることも無い。さらに、ビーム6内を気泡の壁22が通過する際にはビーム6の一部が散乱されるが、この散乱は気泡の壁22がビーム6内を通過する極めて短時間のことであり、また散乱される光の量も微量であるので、望ましくない部位にパターンが形成されてしまうといったことも生じることは無い。
【0034】
なお、基板10上には、コロイド材料によって作成された気泡18が通過することで、コロイド材料と気泡18中の気体とが交互に供給されるようになっているが、照射点7上を見ると、気泡18の境界部分が接しているため、気泡18の境界部分つまりコロイド材料が供給されるようになっている。
【0035】
以上説明したように、本発明によれば、コロイド材料とエネルギービームを用いた簡易なパターン形成方法であっても、基板上に自由度高く厚膜を形成することが可能となる。
【0036】
本発明によって形成可能なパターンの膜厚には原理的に制限が無く、10μmを超えるような金属膜の形成も容易である。従って、電気配線のように配線抵抗を低下させるためにより膜厚の厚いパターンが必要となるような用途にも十分対応可能なパターン形成方法を提供することが可能である。
【0037】
厚膜を形成するためには複数回の正確なビーム走査が不可欠となるが、これはポリゴンミラーを用いたビーム走査を行うなどすることで容易に実現可能なものである。
【0038】
また、本発明は従来の技術で説明したようなコロイド材料の乾燥膜を形成することが無いため、パターン形成が行われなかった部位の余剰な材料を溶剤を用いて溶解除去するいわゆる現像工程も不要になるという利点もある。パターン形成を終了した後の基板は適切な溶媒を用いた簡易な洗浄を行えば十分である。
【0039】
また、エネルギービームをパターンが形成された裏側から照射するのではなく、パターン上に供給されるコロイド材料側からエネルギービームを照射するため、すでに形成されたパターンに影響されることなく、基板上に直接パターンを形成するときと同じエネルギービームの照射条件でパターン上に新たなパターンを効率よく形成することができる。
【0040】
また、コロイド材料を泡状にして、基板表面にコロイド材料を供給するようにしたため、コロイド材料側からエネルギービームを照射した際、エネルギービームの光路上にあるパターン形成に不必要なコロイド材料の影響を最小限に抑えることができ、エネルギービームの利用効率を高めることができる。
【0041】
本実施例ではコロイド材料として金属銀の微粒子を含むいわゆる銀インクを用いたが、銀インク以外の材料を用いても本発明の実施に本質的な違いは無い。むしろさらに好適なことに、例えば銅を始めとする比較的酸化されやすい材料を用いる場合に気泡を発生させるための気体として不活性な窒素やアルゴンなどを用いることで材料の酸化を抑え、あるいは逆に酸化物の微粒子を含むような材料において気体に酸素を用いることで材料の還元分解を防ぐなど、気泡を用いるパターン形成方法をより積極的に活用することすら可能である。
【0042】
最後に、本発明を実施する際のほかの要件を具体的に示す。ただし、これはあくまで一例であって、すでに言及しているようにパターン形成のための諸条件、すなわちコロイド材料の種類や組成、気体の種類と供給量、基板ユニットの構成、エネルギービームの種類と強度、走査速度等は互いに密接に関連しあっている。よって、ほかの条件による実施を行う場合には、本発明の本質を勘案しながら最適な条件を選定する必要がある。
【0043】
微粒子として銀を30w%含み、水と保護剤を混合した溶媒からなる銀インクと、10w%のトリトンX100を含む水を1:1で混合し15w%の金属銀を含むインクを調製した。これを厚さ5mmのシリコンゴム製スペーサーを挟んだ100mm角のガラス基板二枚で構成したセル内に4ml注入した。セルの底には直径およそ1mmの穴を20mm間隔で4箇所に開けたシリコンチューブを前述のインクに浸漬するように配置し、一端をセルの外へ引き出し、流量計を介してコンプレッザーに接続した。圧縮空気を400ml/分の流量で流し、発生する気泡によってガラス内壁面にインクの塗布を行った。このとき発生した気泡のサイズはおおよそ3〜10mmであった。このように構成した基板ユニットをXYステージに固定した。
【0044】
エネルギービームとして波長450nmの半導体レーザー光をコリメート光学系とアナモルフィックプリズムで平行光かつガウシアン形状に近い断面エネルギー分布を持ったビームに整形し、集光レンズによって照射点におけるスポットサイズが約30μmになるように集光して照射すると共に、線速度10mm/secで長さ10mmの直線範囲を往復するように走査してテストパターン形成を行った。照射点におけるレーザー光の強度は210mWであった。
【0045】
圧縮空気を送り、気泡を発生させながら1分間のパターン形成を行った結果、形成されたテストパターンは幅が約50μmのかまぼこ型で、触針式膜厚系を用いて測定された最も厚い部位の膜厚は12μmであった。
【0046】
一方で、微粒子として銀を30w%含むインクをスピンコートでガラス基板上に塗布し、乾燥後上記と同様の光源をエネルギービームとして用い、パターンを形成した。スピンコートによって形成されたインクの乾燥膜の膜厚はおよそ1μm、そして得られたパターンの膜厚はおよそ100nmであった。
【0047】
さらに別の試みとして、微粒子として銀を30w%含むインクをディスペンサを用いてスピンコートによるものよりも厚くなるようにガラス基板上に塗布し、乾燥膜を作製して同様のパターン化を行った。得られた乾燥膜の膜厚は約28μmであった。この乾燥膜に前述したレーザーを照射してパターン形成を行ったところ、現像を行うことによってパターンの略半分程度が剥離してしまった。残留している部分の膜厚を測定したところ、約5μmであった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上のように、本発明のパターン形成方法を用いれば、簡易な方法で自由度高く高精細でありながら膜厚の厚いパターン形成が可能であるパターン形成装置を提供することが可能となる。本発明によって得られるパターンは、高密度配線を持った電子回路基板や半導体等の電子デバイス、回折格子や光導波路などの光学要素など、広範な産業分野での利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施例におけるパターン形成装置を示す概念図
【図2】本発明の実施例における基板ユニットの詳細説明図
【図3】本実施の実施例における基板ユニットの拡大図
【図4】本発明の実施例におけるパターン形成部位に気体とコロイド材料が交互に供給される様子を説明するための模式図
【図5】本発明の実施例におけるパターン形成部位を拡大した詳細説明図
【符号の説明】
【0050】
1 エネルギービーム源
2 ビーム整形光学系
3 集光レンズ
4 基板ユニット
5 パターン
6 ビーム
7 照射点
8 制御部
9 相対位置変更機構
10 基板
11 窓板
12 スペーサー
13 セル
14 コロイド材料
15 気体供給部
16 チューブ
17 気孔
18 気泡
20 気泡内の気体
21 気泡の基板面側壁面を構成するコロイド材料
26 一層目のパターン
27 コロイド材料
29 二層目のパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超微粒子を含むコロイド材料を接触させた基板上にエネルギービームを照射してパターン形成を行うパターン形成方法であって、前記基板上に前記パターンを形成する際に、前記基板上に気体と前記コロイド材料とを交互に供給することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
前記エネルギービームは、前記基板上に供給される前記コロイド材料側から照射されることを特徴とする請求項1記載のパターン形成方法。
【請求項3】
前記気体と前記コロイド材料とを混合し泡状にして前記基板上に供給することを特徴とする請求項1記載のパターン形成方法。
【請求項4】
前記気体は、不活性のガスであることを特徴とする請求項1記載のパターン形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−190927(P2010−190927A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32194(P2009−32194)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】